IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジキンの特許一覧

<>
  • 特許-濃度測定装置 図1
  • 特許-濃度測定装置 図2
  • 特許-濃度測定装置 図3
  • 特許-濃度測定装置 図4
  • 特許-濃度測定装置 図5
  • 特許-濃度測定装置 図6
  • 特許-濃度測定装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021514858
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2020014744
(87)【国際公開番号】W WO2020213385
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019080464
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】田中 一輝
(72)【発明者】
【氏名】滝本 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/021311(WO,A1)
【文献】特開2018-096983(JP,A)
【文献】特開2007-216030(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002167(WO,A1)
【文献】特開2015-215196(JP,A)
【文献】特開2018-025499(JP,A)
【文献】特開平07-103895(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0257646(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/61
G01J 1/00-G01J 1/60
G01J 3/00-G01J 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源および光検出器を有する電気ユニットと、測定セルを有する流体ユニットと、前記電気ユニットと前記流体ユニットとを接続する第1光ファイバおよび第2光ファイバであって、前記光源と前記測定セルとを接続する第1光ファイバおよび前記光検出器と前記測定セルとを接続する第2光ファイバとを備え、前記光源から前記測定セルに入射し前記測定セルから出射した光を前記光検出器で検出することによって前記測定セル内の流体の濃度を測定するように構成された濃度測定装置であって、
前記電気ユニットにおいて、前記光源と一体的に形成された第1光接続部に前記第1光ファイバが接続されており、前記光検出器と一体的に形成された第2光接続部に前記第2光ファイバが接続されており、
前記電気ユニットは、前記光源および前記光検出器を収容する筐体を有し、前記第1光接続部および第2光接続部は、前記筐体の外側面において並んで配置され、前記光源および前記光検出器は、前記筐体の内側面において前記第1光接続部および前記第2光接続部と隣接して配置されており、
前記光源は、第1発光素子と、第2発光素子と、前記第1発光素子および第2発光素子からの光が照射されるハーフミラーと、前記ハーフミラーからの光を受ける第1集光手段と、前記第1発光素子および第2発光素子からの光の一部を受ける参照光検出器とを有し、
前記第1発光素子、前記第2発光素子、前記第1集光手段、および、前記参照光検出器は、前記ハーフミラーを内側に有し光路用の穴が形成されたブロックの周囲に固定されており、前記第1発光素子と前記参照光検出器とが前記ハーフミラーを挟んで対向するように配置され、前記第2発光素子と前記第1集光手段とが前記ハーフミラーを挟んで対向するように配置され、前記第1集光手段の前方に前記第1光接続部が固定されている、濃度測定装置。
【請求項2】
前記第1光ファイバおよび前記第2光ファイバは、いずれも、FCコネクタが設けられた光ファイバであり、前記第1光接続部の外周ネジに前記第1光ファイバのFCコネクタが着脱可能にネジ締め固定され、前記第2光接続部の外周ネジに前記第2光ファイバのFCコネクタが着脱可能にネジ締め固定される、請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記第1発光素子および前記第2発光素子は、発光ダイオードであり、
前記光検出器は、フォトダイオードと、前記フォトダイオードの前に配置された第2集光手段とを有し、前記第2光接続部に接続された前記第2光ファイバの端面は、前記第2集光手段に対面する、請求項1または2に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
前記流体はガスであり、前記測定セルを流れるガスの圧力を測定する圧力センサと、前記測定セルを流れるガスの温度を測定する温度センサと、前記光検出器、前記圧力センサおよび前記温度センサに接続された処理部とをさらに有し、
前記処理部は、測定ガスに関連付けられた吸光係数αを用いて、下記の式に基づいて混合ガス中の測定ガスの体積濃度Cvを求めるように構成されており、下記の式において、Iは前記測定セルに入射する入射光の強度、Iは前記測定セルを通過した光の強度、Rは気体定数、Tは前記測定セル内のガス温度、Lは前記測定セルの光路長、Ptは前記測定セル内のガス圧力である、請求項1から3のいずれかに記載の濃度測定装置。
Cv=(RT/αLPt)・ln(I/I)
【請求項5】
前記光源および前記光検出器の姿勢を、直交する3軸について調整するための3軸調整機構をさらに有する、請求項1から3のいずれかに記載の濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度測定装置に関し、特に、測定セル内の流体を透過した光の強度に基づいて流体の濃度を測定する濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機金属(MO)等の液体材料や固体材料から形成された原料ガスを半導体製造装置へと供給するガス供給ラインに組み込まれ、ガス供給ラインを流れるガスの濃度を測定するように構成された濃度測定装置(いわゆるインライン式濃度測定装置)が知られている。
【0003】
この種の濃度測定装置では、測定ガスが流れる測定セルに、光入射窓を介して光源から所定波長の光を入射させ、測定セル内を通過した透過光を受光素子で受光することによって吸光度を測定している。また、測定した吸光度から、ランベルト・ベールの法則に従って測定ガスの濃度を求めることができる(例えば、特許文献1~3)。
【0004】
なお、本明細書において、流体の濃度を検出するために用いられる種々の透過光検出構造を広く、測定セルと呼んでいる。測定セルには、流体供給ラインから分岐して別個に配置された測定セルだけでなく、特許文献1~3に示されるような流体供給ラインの途中に設けられたインライン式の透過光検出構造も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-219294号公報
【文献】国際公開第2017/029792号
【文献】国際公開第2018/021311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インライン式の濃度測定装置は、流体供給ラインに組み込まれる測定セルと、測定セルと離れた場所に配置される電気ユニットとによって構成されている。測定セルが高温(例えば150℃)にまで加熱される場合、高温耐性の低い光学素子や回路素子は、測定セルから離れた電気ユニットに設置されることが好ましい。
【0007】
特許文献3に記載の反射型の濃度測定装置では、測定セルから離された電気ユニットに、測定セルへの入射光を発生する光源と、測定セルを透過した光を受光する光検出器とが設けられている。この装置において、光源と測定セルとの間、および、光検出器と測定セルとの間は、光ファイバを用いて光学的に接続されている。
【0008】
また、本願出願人による比較例の濃度測定装置では、測定セルから延びる光ファイバケーブルの端部にFCコネクタなどの光コネクタが設けられており、この光コネクタは、電気ユニットの筐体に取り付けられたアダプタの一方側(筐体外側)に接続されていた。また、狭体内の光源や光検出器から延びる光ファイバケーブルにもFCコネクタなどの光コネクタが設けられており、この光コネクタは、アダプタの他方側(筐体内側)に接続されていた。FCコネクタ用のアダプタでは、光ファイバおよびこの端部を覆うフェルールの端面同士が、貫通孔内に配された割スリーブ内で突き合せられて位置精度よく光接続される。フェルールおよび割スリーブは、典型的にはジルコニア(ZrO2)製である。
【0009】
図7(a)~(c)は、比較例による、FCコネクタを用いた測定セルと光検出器との接続形態を示す。図7(a)に示すように、光検出器90から延びる光ファイバケーブル91は、電気ユニットの筐体92に取り付けられたアダプタ93に、FCコネクタ94によって固定されている。このとき、アダプタ93の貫通孔の内部(より詳細には、図示しない割スリーブの内側)では、光ファイバ97aおよびフェルール97bの端面が露出している。
【0010】
また、測定セル(図示せず)から延びる光ファイバケーブル95の端部にもFCコネクタ96が取り付けられており、このFCコネクタ96は、図7(b)に示すように、アダプタ93の反対側、すなわち電気ユニットの筐体92の外側でアダプタ93に取り付けられる。このとき、アダプタ93の貫通孔の内部には、光ファイバ98aおよびフェルール98bが挿入される。そして、これらの端面は、光検出器90に接続された光ファイバケーブル91の光ファイバ97aおよびフェルール97bの端面と突き合せられる。
【0011】
さらに、図7(c)に示すように、FCコネクタ96のカップリングナットを締めることによって、アダプタ93内で光ファイバ97a、98aの端面同士が押圧接続されるとともに、光ファイバケーブル95はアダプタ93に堅固に固定される。
【0012】
しかしながら、上記のような光コネクタ用のアダプタを用いて光ファイバの端面同士での接続を行うと、端面における接続損失や反射減衰の発生が避けられないという問題がある。光ファイバとフェルールの端面を球面状に研磨し、端面同士を圧接するPC(Physical Contact)接続等によって反射減衰量を低減する技術も開発されているが、濃度測定装置においては、光ファイバ同士の接続によって生じる光信号のロスが、測定精度に無視できない影響を与え得る。
【0013】
また、濃度測定装置は、信頼性試験の実施などのために電気ユニットを取り外して移動させることがあり、FCコネクタの抜き差しも行われる状況にある。そして、FCコネクタの抜き差しを行う場合、光ファイバの端面間にゴミなどが侵入することがあり、再度アダプタを用いて光接続を行ったときに、光ファイバの端面での反射成分が多くなることがある。また、光ファイバの端面同士の圧接を繰り返すことによっても反射成分は増加し得る。したがって、アダプタを用いての光ファイバ同士の接続では、濃度測定装置の測定誤差が増加し得る。
【0014】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、利便性を確保しながら、測定精度を向上させることができる濃度測定装置を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施形態による濃度測定装置は、光源および光検出器を有する電気ユニットと、測定セルを有する流体ユニットと、前記電気ユニットと前記流体ユニットとを接続する光ファイバとを備え、前記光源から前記測定セルに入射し前記測定セルから出射した光を前記光検出器で検出することによって前記測定セル内の流体の濃度を測定するように構成されており、前記電気ユニットにおいて、前記光ファイバが接続される光接続部と、前記光源または前記光検出器とが一体的に設けられている。この構成において、光接続部と光源または光検出器との間には光ファイバを設ける必要がなく、測定セルから延びる光ファイバと光接続部と、光源または光検出器から延びる光ファイバとの端面同士の接続を避けることができる。
【0016】
ある実施形態において、前記電気ユニットは、前記光源および前記光検出器を収容する筐体を有し、前記光接続部は、前記筐体の外側面に配置され、前記光源または前記光検出器は、前記筐体の内側面に前記光接続部と隣接して配置されている。
【0017】
ある実施形態において、前記光源と前記測定セルとを接続する第1光ファイバと、前記光検出器と前記測定セルとを接続する第2光ファイバとを含み、前記電気ユニットにおいて、前記光源と一体的に形成された第1光接続部に前記第1光ファイバが接続され、前記光検出器と一体的に形成された第2光接続部に前記第2光ファイバが接続される。
【0018】
ある実施形態において、前記第1光ファイバおよび前記第2光ファイバは、いずれも、FCコネクタが設けられた光ファイバであり、前記第1光接続部の外周ネジに前記第1光ファイバのFCコネクタが着脱可能にネジ締め固定され、前記第2光接続部の外周ネジに前記第2光ファイバのFCコネクタが着脱可能にネジ締め固定される。
【0019】
ある実施形態において、前記光源は、複数の発光ダイオードと、前記複数の発光ダイオードからの光が照射されるハーフミラーと、前記ハーフミラーからの光を受ける第1集光手段とを有し、前記第1光接続部に接続された前記第1光ファイバの端面は、前記第1集光手段に対面し、前記光検出器は、フォトダイオードと、前記フォトダイオードの前に配置された第2集光手段とを有し、前記第2光接続部に接続された前記第2光ファイバの端面は、前記第2集光手段に対面する。
【0020】
ある実施形態において、前記流体はガスであり、前記測定セルを流れるガスの圧力を測定する圧力センサと、前記測定セルを流れるガスの温度を測定する温度センサと、前記光検出器、前記圧力センサおよび前記温度センサに接続された処理部とをさらに有し、前記処理部は、測定ガスに関連付けられた吸光係数αaを用いて、下記式に基づいて混合ガス中の測定ガスの体積濃度Cvを求めるように構成されており、下記式において、I0は前記測定セルに入射する入射光の強度、Iは前記測定セルを通過した光の強度、Rは気体定数、Tは前記測定セル内のガス温度、Lは前記測定セルの光路長、Ptは前記測定セル内のガス圧力である。
Cv=(RT/αaLPt)・ln(I0/I)
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によれば、測定誤差の原因となる光ファイバの端面同士が接触する接続をなくして、向上した精度で濃度測定を行い得る光学式の濃度測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る濃度測定装置の全体構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る濃度測定装置が備える電気ユニットの内部を示す平面図である。
図3】(a)は図2の左方向から見たときの側面図、(b)は図2の右方向から見たときの側面図、(c)は図2の下方向から見たときの側面図である。
図4】(a)は、電気ユニットが備える光接続部付の光源を示す縦断面図であり、(b)は電気ユニットが備える光接続部付の光検出器を示す縦断面図である。
図5】電気ユニットが備える筐体を示す分解斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る電気ユニットが備える光検出器に、測定セルからの光ファイバを接続する様子を示す図であり、(a)は接続前の状態、(b)は接続後の状態を示す。
図7】比較例の電気ユニットが備える光検出器に、測定セルからの光ファイバを接続する様子を示す図であり、(a)接続前の状態、(b)は接続直前の状態、(c)は接続後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下には測定対象がガスである濃度測定装置を説明するが、他の実施形態において測定対象は液体などのガス以外の流体であってもよい。
【0024】
図1は、本発明の実施形態で用いられる濃度測定装置100の全体構成を示す図である。濃度測定装置100は、ガス供給ラインに組み込まれる測定セル1を有する流体ユニット10と、流体ユニット10と離間して配置される電気ユニット20とを備えている。流体ユニット10と電気ユニット20とは、光ファイバを芯線として含む入射用の光ファイバケーブル11(第1光ファイバ)、光ファイバを芯線として含む出射用の光ファイバケーブル12(第2光ファイバ)、および、センサケーブル(図示せず)によって、光学的および電気的に接続されている。
【0025】
流体ユニット10は、測定ガスの種類によって例えば100℃~150℃程度にまで加熱される可能性がある。ただし、流体ユニット10は、常温(室温)や常温以下のガスを用いる場合は、高温にならない状態で使用する場合もある。また、流体ユニット10と離間する電気ユニット20は、通常は室温に維持されている。電気ユニット20には、濃度測定装置100に動作制御信号を送信したり、濃度測定装置100から測定濃度信号を受信したりするための外部制御装置が接続されていてもよい。
【0026】
流体ユニット10には、測定ガスの流入口、流出口およびこれらが接続された長手方向に延びる流路を有する測定セル1が設けられている。測定セル1の一方の端部には、流路に接する透光性の窓部2(ここでは透光性プレート)が設けられ、測定セル1の他方の端部には反射部材4が設けられている。図示する態様と異なり、窓部2の近傍に流入口が配置され、反射部材4の近傍に流出口が配置されていてもよく、長手方向に延びる流路はガスGの全体の流れ方向に対して直交する方向に延びていなくてもよい。また、本明細書において、光とは、可視光線のみならず、少なくとも赤外線、紫外線を含み、任意の波長の電磁波を含み得る。また、透光性とは、測定セルに入射させる前記の光に対する内部透過率が濃度測定を行い得る程度に十分に高いことを意味する。
【0027】
測定セル1の窓部2の近傍には、2本の光ファイバケーブル11、12が接続されたコリメータ3が取り付けられている。コリメータ3は、コリメートレンズを有しており、光源からの光を測定セル1に平行光として入射させるとともに、反射部材4からの反射光を受光するように構成されている。反射部材4の反射面は、入射光の進行方向または流路の中心軸に対して垂直になるように設けられている。測定セル1の流路は、測定光の光路としても利用される。
【0028】
窓部2としては、紫外光等の濃度測定に用いる検出光に対して耐性および高透過率を有し、機械的・化学的に安定なサファイアプレートが好適に用いられるが、他の安定な素材、例えば石英ガラスを用いることもできる。測定セル1の本体(流路形成部)は例えばSUS316L製である。また、反射部材4は、例えばサファイアプレートの裏面に反射層としてのアルミニウム層や誘電体多層膜が設けられたものであってもよい。反射層として誘電体多層膜を用いれば、特定波長域の光(例えば近紫外線)を選択的に反射させることができる。誘電体多層膜は、屈折率の異なる複数の光学被膜の積層体(高屈折率薄膜と低屈折率薄膜との積層体)によって構成されるものであり、各層の厚さや屈折率を適宜選択することによって、特定の波長の光を反射したり透過させたりすることができる。また、誘電体多層膜は、任意の割合で光を反射させることができるため、一部(例えば10%)は透過するようにし、反射部材4の下部に設置した光検出器を用いて反射部材4を透過した光を参照光として利用していもよい。
【0029】
流体ユニット10は、さらに、測定セル1内を流れる測定ガスの圧力を検出するための圧力センサ5と、測定ガスの温度を測定するための温度センサ6とを備えている。圧力センサ5および温度センサ6の出力は、図示しないセンサケーブルを介して電気ユニット20に送られる。圧力センサ5および温度センサ6の出力は、後述するように、ガス濃度を測定するために用い得る。
【0030】
なお、流体ユニット10の構成としては、種々の態様のものを採用し得る。上記には、反射部材を用いてセル内で測定光を一往復させる反射型の流体ユニットを説明したが、これに限らず、特許文献2などに記載されるような透過型の流体ユニットを用いることもできる。透過型の流体ユニットでは、測定セルの一方の側に配置した入射窓から測定光を入射させ、反射部材の代わりに配置した出射窓からセル内を通過した透過光を出射させる。入射光と透過光とは、測定セルの両端に接続された別々の光ファイバケーブルを用いて伝送される。
【0031】
また、本実施形態の濃度測定装置100において、電気ユニット20は、測定セル1内に入射させる光を発生する光源22と、測定セル1から出射した光を受光する光検出器24と、光検出器24が出力する検出信号(受光した光の強度に応じた検出信号)に基づいて測定ガスの濃度を演算する処理部28とを備えている。光源22、光検出器24および処理部28は、箱型の筐体26内に収容されている。
【0032】
光源22は、互いに異なる波長の紫外光を発する2つの発光素子(ここではLED)23a、23bを用いて構成されている。発光素子23a、23bには、発振回路を用いて異なる周波数の駆動電流が流され、周波数解析(例えば、高速フーリエ変換やウェーブレット変換)を行うことによって、光検出器24が検出した検出信号から、各波長成分に対応した光の強度を測定することができる。発光素子23a、23bとしては、LED以外にも、LD(レーザダイオード)を用いることもできる。また、複数の異なる波長の合波光を光源に用いる代わりに、単一波長の光源を利用することもでき、この場合、合波器や周波数解析回路は省略することができる。なお、紫外光(例えば波長200nm~400nm)は、例えばトリメチルガリウムなどの有機金属ガスの濃度測定のために好適に用いられる。
【0033】
発光素子23a、23bは、ハーフミラー23cに対していずれも45°の角度で光を照射するように配置されている。また、ハーフミラー23cを挟んで一方の発光素子23bと対面するように、参照光検出器25が設けられている。光源22からの光の一部は、参照光検出器25に入射され、光学素子の劣化等を調べるために用いられる。残りの光は、ボールレンズ23dによって集光されてから、入射光用の光ファイバケーブル11に入射される。光検出器24および参照光検出器25を構成する受光素子としては、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタが用いられる。
【0034】
処理部28は、例えば、回路基板上に設けられたプロセッサやメモリなどによって構成され、入力信号に基づいて所定の演算を実行するコンピュータプログラムを含み、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実現され得る。なお、図示する態様では処理部28は、電気ユニット20に内蔵されているが、その構成要素の一部(CPUなど)または全部が電気ユニット20の外側の装置に設けられていてもよいことはいうまでもない。
【0035】
本実施形態の電気ユニット20では、光源22と光検出器24とのいずれもが、電気ユニット20の筐体26の内側面に近接して配置されている。また、光源22と一体的に設けられた光接続部(ここでは、FCコネクタ用の接続部)が、筐体26に設けられた開口部を介して外側に配置され、同様に、光検出器24と一体的に設けられた光接続部(FCコネクタ用の接続部)も、筐体26に設けられた開口部を介して外側に配置されている。
【0036】
なお、上記の「一体的」とは、光接続部と光源22(または光検出器24)とが隣接して固定された状態であることを意味し、着脱不能に相互接続されたものに限られず、ネジ止めなどによって着脱可能に相互接続されたものであってもよい。また、光接続部と光源22(または光検出器24)との界面において筐体26などの薄板部材が挟まれていてもよい。
【0037】
そして、流体ユニット10の測定セル1から延びる入射用の光ファイバケーブル11の端部に設けられた光コネクタ(ここではFCコネクタ13)が、光源22と一体的に設けられた光接続部に接続され、同様に、測定セル1から延びる出射用の光ファイバケーブル12の端部に設けられた光コネクタ(FCコネクタ14)が、光検出器24と一体的に設けられた光接続部に接続されている。以下、電気ユニット20の詳細について説明する。
【0038】
図2は、電気ユニット20の内部を示す平面図である。また、図3(a)は、電気ユニット20の内部を左方向から見たときの側面図であり、図3(b)は右方向から見たときの側面図であり、図3(c)は下方向から見たときの側面図である。なお、図2には、図1に示した電気ユニット20を90°左回転させた状態が示されており、図面における上側に、図1に示した測定セル1から延びる光ファイバケーブル11、12(より具体的には、FCコネクタ13、14)との光接続部が配置されている。
【0039】
図2および図3(a)~(c)からわかるように、電気ユニット20において、FCコネクタ13との接続を行う光接続部32(第1光接続部)と光源22とは一体的に設けられ、光接続部32は筐体26の外側面に配置され、光源22は筐体26の内側面に光接続部32と隣接して配置されている。本実施形態では、光接続部32と光源22とは強固に相互接続されており、光接続部32は、筐体26に設けられた開口部42(図5参照)を通して、筐体26の外側に配置されている。また、光接続部32には、外周ネジ32Sが設けられており、FCコネクタ13のカップリングナットをネジ締めすることによって、光ファイバケーブル11が光接続部32に強固に固定される。
【0040】
同様に、FCコネクタ14との接続を行う光接続部34(第2光接続部)と光検出器24とは一体的に設けられ、光接続部34は筐体26の外側面に配置され、光検出器24は筐体26の内側面に光接続部34と隣接して配置されている。本実施形態では、光接続部34と光検出器24とは強固に相互接続されており、光接続部34は、筐体26に設けられた開口部44(図5参照)を通して、筐体26の外側に配置されている。また、光接続部34には、外周ネジ34Sが設けられており、FCコネクタ14のカップリングナットをネジ締めすることによって、光ファイバケーブル12が光接続部34に強固に固定される。
【0041】
図3(a)~(c)に示すように、光源22および光検出器24は、本実施形態では台26a上に配置されており、筐体26の前面板にのみ近接するように配置されている。台26aの下の空間には、図示しない回路基板が収容されていてよく、この回路基板に図1に示した処理部28を設けることができる。
【0042】
以上の説明からわかるように、電気ユニット20において、FCコネクタ13と光源22とは直接的に接続され、光接続部32と光源22との間には光ファイバが設けられていない。また、FCコネクタ14と光検出器24とは直接的に接続され、光接続部34と光検出器24との間には光ファイバが設けられていない。このように、本実施形態では、図7に示した比較例のように、アダプタを用いて光ファイバ同士の端面接続を行うのではなく、光接続部32および光接続部34を有した光源22および光検出器24の光学素子に対して、光ファイバの端面を対面させるように接続している。
【0043】
図4(a)は、光源22の断面図を示す。図4(a)に示されるように、光源22には、発光素子23a、23b、ハーフミラー23c、ボールレンズ23d、参照光検出器を構成するフォトダイオード25aが設けられている。ボールレンズ23dは、平凸レンズ等他の集光手段(第1集光手段)であっても構わない。発光素子23a、23b、フォトダイオード25aの背面から延びる配線は、処理部28(図1参照)に接続されている。また、光接続部32には、ハーフミラー23cに向かって延びる貫通孔32Hが設けられている。貫通孔32Hには、FCコネクタ13の先端部が挿入される。本実施形態では、光源22は、WDM方式の合波器を含むものであり、光路用の穴が形成されたSUS316製またはSUS304製の金属ブロックに各素子を取り付けることによって構成されている。
【0044】
この構成において、光ファイバの端面は、ボールレンズ23dに対面することになり、ハーフミラー23cからの光は、ボールレンズ23dで集光されて、FCコネクタ13の先端部で露出する光ファイバの端面に入射する。なお、FCコネクタ13において、光ファイバの先端は、通常のコネクタと同様に、ジルコニアなどから形成されるフェルールによって覆われていてよい。
【0045】
図4(b)は、光検出器24の断面図を示す。図4(b)に示されるように、光検出器24には、フォトダイオード27と、フォトダイオード27の前に配置された両凸レンズ29とが設けられている。両凸レンズ29は、平凸レンズ等他の集光手段(第2集光手段)であっても構わない。フォトダイオード27の背面から延びる配線は、処理部28(図1参照)に接続されている。また、光接続部34には、両凸レンズ29に向かって延びる貫通孔34Hが設けられている。貫通孔34Hには、FCコネクタ14の先端部が挿入される。光検出器24も、光路用の穴が形成されたSUS316製またはSUS304製の金属ブロックに各素子を取り付けることによって構成されている。
【0046】
この構成において、光ファイバの端面は、両凸レンズ29に対面することになり、光ファイバケーブル12を介して測定セル1から伝送された光は、FCコネクタ14の先端部で露出する光ファイバの端面から両凸レンズ29に向けて出射される。なお、FCコネクタ13において、光ファイバの先端は、通常のFCコネクタと同様に、ジルコニアなどから形成されるフェルールによって覆われていてよい。
【0047】
上記の構成において、光ファイバの端面は、光源22または光検出器24が備える光学素子(本実施形態では、ボールレンズ23dおよび両凸レンズ29)に対面しているが、測定精度を向上させるためには、測定光の光量が最大となるように光学系が配置されていることが好ましい。このためには、光検出器24の出力を確認しながら、光源22および光検出器24の姿勢をX軸、Y軸、Z軸の3軸について微調整し、光検出器24の出力が最大となったところで姿勢を固定すればよい。
【0048】
図5は、電気ユニット20の筐体26の構成を示す図である。本実施形態の筐体26は、前面および底面を備える断面略L字型の第1部材261と、両側面、上面および後面を備える第2部材262とによって構成されている。第1部材261と第2部材262とは組み合わせられて、内部に収容空間が設けられた箱型筐体を形成する。第1部材261と第2部材262とは、各所に設けられたネジなどによって互いに対して固定される。電気ユニット20の製作においては、第1部材261の底面に設けた台上に、光源22や光検出器24等を固定し、その後、第2部材262をカバーのようにしてかぶせてから第1部材261に固定すればよい。
【0049】
第1部材261の前面には、光源22の光接続部32を外側に出すための開口部42と、光検出器24の光接続部34を外側に出すための開口部44とが設けられている。これらにより、光接続部32および光接続部34を容易に筐体26の外に配置することができ、FCコネクタ13、14を簡単に接続することができる。
【0050】
以上に説明した本実施形態の濃度測定装置100では、光ファイバケーブル11および12の端面を光源22および光検出器24の光学素子に対し、対面させるように接続されているので、光ファイバ端面同士の接続をなくして迷光の発生を抑制することができる。また、光ファイバケーブル11および12は、FCコネクタ13および14を用いて光源22および光検出器24に着脱可能にネジ締め固定されているので、必要なときはこれを取り外して、電気ユニット20を分離することができる。このため、電気ユニット20の信頼性試験も容易に実施することができる。また、再接続したときにも、光ファイバの端面同士が接触して傷等の損所をきたすことはなく、また、端面間にゴミが侵入するようなことは生じないので、これに起因する測定誤差の発生を防止することができる。
【0051】
図6(a)および(b)は、光検出器24の光接続部34に、光ファイバケーブル12を接続する態様を示す図である。なお、光源22の光接続部32に光ファイバケーブル11を接続する態様も同様である。
【0052】
図6(a)に示すように、光検出器24の光接続部34は筐体26の外側に配置されており、光接続部34に設けられた貫通孔34Hは、フォトダイオード27の前の両凸レンズ29に通じている。そして、FCコネクタ14が設けられた光ファイバケーブル12の先端部が光接続部34の貫通孔34Hに挿入される。FCコネクタ14の先端では光ファイバ15およびこれを覆うフェルール16が棒状に延びている。また、カップリングナット17は、内側にネジを有しており、光ファイバケーブル12を軸中心として回転可能である。
【0053】
次に、図6(b)に示すように、光ファイバ15およびフェルール16が光接続部34の貫通孔を通過して、両凸レンズ29に対面する位置まで挿入され、さらに、カップリングナット17を外周ネジ34Sに対して締め付けることによって、光ファイバケーブル12が光検出器24に強固に固定される。
【0054】
以下、濃度測定装置100における濃度測定方法について説明する。測定セル1において、測定セル1内を往復する光の光路長Lは、窓部2と反射部材4との距離の2倍によって規定することができる。濃度測定装置100において、測定セル1に入射され、その後、反射部材4によって反射された波長λの光は、ガスの濃度に依存して吸収される。そして、処理部28は、光検出器24からの検出信号を周波数解析することによって、当該波長λでの吸光度Aλを測定することができ、さらに、以下の式(1)に示すランベルト・ベールの法則に基づいて、吸光度Aλからモル濃度CMを算出することができる。
Aλ=-log10(I/I0)=α’LCM ・・・(1)
【0055】
上記の式(1)において、I0は測定セルに入射する入射光の強度、Iは測定セル内のガス中を通過した光の強度、α’はモル吸光係数(m2/mol)、Lは測定セルの光路長(m)、CMはモル濃度(mol/m3)である。モル吸光係数α’は物質によって決まる係数である。I/I0は、一般に透過率と呼ばれており、透過率I/I0が100%のときに吸光度Aλは0となり、透過率I/I0が0%のときに吸光度Aλは無限大となる。なお、上記式における入射光強度I0については、測定セル1内に吸光性のガスが存在しないとき(例えば、紫外光を吸収しないガスが充満しているときや、真空に引かれているとき)に光検出器24によって検出された光の強度を入射光強度I0とみなしてよい。
【0056】
また、濃度測定装置100は、測定セル1を流れるガスの圧力および温度も考慮して、ガスの濃度を求めるように構成されていてもよい。以下、具体例を説明する。上記のランベルト・ベールの式(1)が成り立つが、上記のモル濃度CMは、単位体積当たりのガスの物質量であるので、CM=n/Vと表すことができる。ここで、nはガスの物質量(mol)すなわちモル数であり、Vは体積(m3)である。そして、測定対象がガスであるので、理想気体の状態方程式PV=nRTから、モル濃度CM=n/V=P/RTが導かれ、これをランベルト・ベールの式に代入し、また、-ln(I/I0)=ln(I0/I)を適用すると、下記の式(2)が得られる。
ln(I0/I)=αL(P/RT) ・・・(2)
式(2)において、Rは気体定数=0.0623(Torr・m3/K/mol)であり、Pは圧力(Torr)であり、Tは温度(K)である。また、式(2)のモル吸光係数は、透過率の自然対数に対するαであり、式(1)のα’に対して、α’=0.434αの関係を満たすものである。
【0057】
ここで、圧力センサが検出できる圧力は、測定ガスとキャリアガスとを含む混合ガスの全圧Pt(Torr)である。一方、吸収に関係するガスは、測定ガスのみであり、上記の式(2)における圧力Pは、測定ガスの分圧Paに対応する。そこで、測定ガスの分圧Paを、ガス全体中における測定ガス濃度Cv(体積%)と全圧Ptとによって表した式であるPa=Pt・Cvを用いて式(2)を表すと、圧力および温度を考慮した測定ガスの濃度(体積%)と吸光度との関係は、測定ガスの吸光係数αaを用いて、下記の式(3)によって表すことができる。
ln(I0/I)=αaL(Pt・Cv/RT) ・・・(3)
【0058】
また、式(3)を変形すると、下記の式(4)が得られる。
Cv=(RT/αaLPt)・ln(I0/I) ・・・(4)
【0059】
したがって、式(4)によれば、各測定値(ガス温度T、全圧Pt、および透過光強度I)に基づいて、測定光波長における測定ガス濃度(体積%)を演算により求めることが可能である。このようにすれば、ガス温度やガス圧力も考慮して混合ガス中における吸光ガスの濃度を求めることができる。なお、測定ガスの吸光係数αaは、既知濃度(例えば100%濃度)の測定ガスを流したときの測定値(T、Pt、I)から、式(3)または(4)に従って予め求めておくことができる。このようにして求められた吸光係数αaはメモリに格納されており、式(4)に基づいて未知濃度の測定ガスの濃度演算を行うときは、吸光係数αaをメモリから読み出して用いることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態による濃度測定装置を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定解釈されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、測定に用いられる光としては、ガスの種類に応じて、紫外領域以外の波長領域の光(例えば可視光や近赤外線)を利用することも可能である。
【0061】
また、上記には、光源22および光検出器24の両方に一体的な光接続部が設けられた態様を説明したが、いずれか一方のみであってもよい。さらに、反射式の濃度測定装置において、入射光と出射光とを一本の共用の光ファイバケーブルで接続する場合にも、光検出器が取り付けられた分波モジュールに一体的な光接続部を設け、これを電気ユニットの外側に配置すればよい。この場合にも、分波モジュールおよび光検出器と光接続部との間の光ファイバを省略することができ、光ファイバの端面同士の接続による迷光の発生を抑制することができる。さらに、測定セルからの光ファイバは、FCコネクタ以外の他の光コネクタを、対応する光接続部に接続するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の実施形態に係る濃度測定装置は、半導体製造装置などに対して用いられ、種々の流体の濃度を測定するために好適に利用される。
【符号の説明】
【0063】
1 測定セル
2 窓部
3 コリメータ
4 反射部材
5 圧力センサ
6 温度センサ
10 流体ユニット
11 光ファイバケーブル(入射用)
12 光ファイバケーブル(出射用)
13、14 FCコネクタ
15 光ファイバ
20 電気ユニット
22 光源
24 光検出器
25 参照光検出器
26 筐体
28 処理部
32、34 光接続部
100 濃度測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7