(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】母乳搾乳器
(51)【国際特許分類】
A61M 1/06 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A61M1/06
(21)【出願番号】P 2022015349
(22)【出願日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】508337156
【氏名又は名称】カネソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】森藤 靖男
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 喜和
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-208902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0220744(US,A1)
【文献】特開2012-191965(JP,A)
【文献】特開2002-065813(JP,A)
【文献】登録実用新案第3191141(JP,U)
【文献】特開2004-276289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房に被せる搾乳カップと、ダイヤフラムの変形に伴い容積が増大、縮小し容積の増大によって負圧を発生する負圧室と、ダイヤフラムを変形作動させるダイヤフラム作動機構と、母乳容器の容器口の外周部に設けたネジ山に螺合するネジ溝が設けられ母乳容器が着脱可能に接続される接続口と、負圧室と接続口を連通する第1連通路と、搾乳カップと第1連通路を連通する第2連通路と、接続口に取り付けられ、負圧室の容積が拡大して負圧が作用したとき接続口を閉じ、容積が縮小して加圧したとき接続口を開く逆止弁を設け、
操作レバーの操作に伴い負圧室に発生した負圧を、第1連通路と第2連通路を通して搾乳カップを被せた乳房に作用させ、乳房から母乳を搾乳して逆止弁で接続口が閉じている第1連通路に溜め、さらなる操作レバーの操作に伴って、第1連通路と第2連通路内の空気は負圧室の容積の縮小に伴い加圧され、逆止弁が開いて接続口から母乳が母乳容器に注がれる母乳搾乳器であって、
前記ネジ溝として大径のネジ溝を設けるとともに、大径のネジ溝の奥に小径のネジ溝を設け、
大径のネジ山を設けた母乳容器を大径のネジ溝に接続し、又は小径のネジ山を設けた母乳容器を小径のネジ溝に接続することにより大小口径が異なる母乳容器を択一的に接続口に接続するようにしたことを特徴とする母乳搾乳
器。
【請求項2】
大径のネジ溝を設けた接続口の射出成形時に、小径のネジ溝を設けたネジ部品をインサート成形し、小径のネジ溝と、大径の異形状のネジ溝を形成したことを特徴とする請求項1に記載の母乳搾乳器。
【請求項3】
大径のネジ溝と小径のネジ溝の間にパッキンを装着したことを特徴とする請求項1に記載の母乳搾乳器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は母乳搾乳器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
母乳搾乳器の一形式として、特開2013-70742号公報や、実用新案登録第3225023号公報には、乳房に被せる搾乳カップと、ダイヤフラムの変形に伴う容積の増大によって負圧を発生する負圧室と、ダイヤフラムを変形作動させる操作レバーと、母乳容器が着脱可能に接続される接続口と負圧室を連通する第1連通路と、第1連通路と搾乳カップを連通する第2連通路を備えた母乳搾乳器が開示されている。
【0003】
この種の母乳搾乳器に使用される母乳容器の容器口の外周部にはネジ山が設けられ、接続口にはこのネジ山に螺合するネジ溝が設けられている。母乳容器はそのネジ山を接続口のネジ溝にねじ込んで母乳搾乳器に着脱可能に接続される。
【0004】
母乳搾乳器の接続口には逆止弁が取り付けられている。この逆止弁は負圧室の負圧が作用したとき接続口を閉じ、その負圧が消滅したとき接続口を開く。
【0005】
この母乳搾乳器によれば、操作レバーの操作に伴い負圧室に発生した負圧が第1連通路と第2連通路を通して搾乳カップを被せた乳房に作用し、乳房から母乳が搾乳される。搾乳された母乳は逆止弁で接続口が閉じているので、第1連通部に溜まる。さらに操作レバーを操作して負圧が消滅すると、逆止弁が開いて接続口から母乳が母乳容器に注がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-70742号公報
【文献】実用新案登録第3225023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、母乳容器には、家で冷蔵庫に保管しておくのに適した容量が大きく、ミルクを入れやすいように容器口の口径を大きくしたものもあれば、容量が少なく軽量で、口径が小さいものがある。
上記した従来の母乳搾乳器では、接続口に設けたネジ溝の口径に適合するネジ山を容器口に設けた母乳容器しか装着できず、大小異なる口径の母乳容器を択一的に選択して装着することはできない。
本発明はかかる点に鑑み、大小異なる口径の母乳容器を択一的に選択して装着できる母乳搾乳器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
乳房に被せる搾乳カップと、ダイヤフラムの変形に伴い容積が増大、縮小し容積の増大によって負圧を発生する負圧室と、ダイヤフラムを変形作動させるダイヤフラム作動機構と、母乳容器の容器口の外周部に設けたネジ山に螺合するネジ溝が設けられ母乳容器が着脱可能に接続される接続口と、負圧室と接続口を連通する第1連通路と、搾乳カップと第1連通路を連通する第2連通路と、接続口に取り付けられ、負圧室の容積が拡大して負圧が作用したとき接続口を閉じ、容積が縮小して加圧したとき接続口を開く逆止弁を設け、
操作レバーの操作に伴い負圧室に発生した負圧を、第1連通路と第2連通路を通して搾乳カップを被せた乳房に作用させ、乳房から母乳を搾乳して逆止弁で接続口が閉じている第1連通路に溜め、さらなる操作レバーの操作に伴って、第1連通路と第2連通路内の空気は負圧室の容積の縮小に伴い加圧され、逆止弁が開いて接続口から母乳が母乳容器に注がれる母乳搾乳器であって、
前記ネジ溝として大径のネジ溝を設けるとともに、大径のネジ溝の奥に小径のネジ溝を設け、
大径のネジ山を設けた母乳容器を大径のネジ溝に接続し、又は小径のネジ山を設けた母乳容器を小径のネジ溝に接続することにより大小口径が異なる母乳容器を択一的に接続口に接続するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の母乳搾乳器において、
大径のネジ溝を設けた接続口の射出成形時に、小径のネジ溝を設けたネジ部品をインサート成形し、小径のネジ溝と、大径の異形状のネジ溝を形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の母乳搾乳器において、
大径のネジ溝と小径のネジ溝の間にパッキンを装着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る母乳搾乳器では、ネジ溝として大径のネジ溝を設けるとともに、大径のネジ溝の奥に小径のネジ溝を設けたので、大径のネジ山を設けた母乳容器を大径のネジ溝に接続し、小径のネジ山を設けた母乳容器を小径のネジ溝に択一的に接続できる。
本発明に係る母乳容器によれば、口径が大小異なる2種類の母乳容器を択一的に接続して使用できるので、使い勝手が良い。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、容器口に小径のネジ山を設けた母乳容器は口径が小さいので、ネジ溝が一条でも強く締め付けることにより母乳の漏れを防止できる。一方、大径のネジ山を設けた母乳容器はネジ口径が大きいためネジ溝が一条では母乳が漏れるおそれがあり、それを防ぐためにネジ溝を多条に形成する場合、小径のネジ溝と大径のネジ溝ではネジの種類が異なるため、射出成型の金型の構造上、小径のネジ溝と大径のネジ溝を一体成型することはできない。本発明によれば小径のネジ溝を設けたネジ部品をインサート成形するので、接続口に大径のネジ溝と小径のネジ溝を射出成形で設けることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、大径のネジ山を設けた母乳容器を接続するとき、より確実に母乳の漏れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例に係る母乳搾乳器を示す断面図である。
【実施例】
【0015】
以下に本発明を図面に基づき説明する。
図1及び
図2には本発明の一実施例に係る母乳搾乳器10が示されている。母乳搾乳器10は本体11と操作レバー12で構成されている。
本体12は硬質プラスチックの射出成型品で、上部には一端面を開口した筒部21が設けられ、下部には椀型の接続部22が設けられている。また、中間部の一側に搾乳カップ23が、他側に軸受部24が設けられている。
【0016】
筒部21の開口端面は軟質プラスチック製のダイヤフラム26で覆蓋されている。このダイヤフラム26はダイヤフラムプレート27に装着されている。ダイヤフラムプレート27の中心部にはフックピン28が一体に設けられている。
【0017】
操作レバー12は軸ピン29で本体11の軸受部24に回動可能に組み付けられている。操作レバー12には係止部30が設けられ、係止部30にダイヤフラムプレート27のフックピン28の先端部が係止している。ダイヤフラム26はダイヤフラムプレート27を介して操作レバー12と連結されているので、操作レバー12を
図1及び
図2に二点鎖線で示すように回動操作するとダイヤフラム26が変形し、筒部21とダイヤフラム26で区画形成された負圧室31の容積が拡大して負圧室31に負圧が発生する。
【0018】
椀型の接続部22の内部の中央部には容量の大きい母乳容器41と容量の小さい母乳容器42のいずれかが着脱可能に接続される接続口32が設けられ、接続口32にはゴム製の逆止弁33が装着されている。そして、本体11の内部には接続口32と負圧室31を連通する第1連通路34と、第1連通路34と搾乳カップ23を連通する第2連通路35が形成されている。
【0019】
接続部22の内壁には接続口32を囲むように2条の大径のネジ溝36と、大径のネジ溝36の奥に一条の小径のネジ溝37が形成されている。小径のネジ溝37は本体11とは別のネジ部品として射出成形され、本体11の成形時にこのネジ部品がインサート成形されている。大径のネジ溝36と小径のネジ溝37の間にはパッキン38を装着する隙間39が形成されている。大径のネジ溝36は母乳容器41の容器口に形成された大径のネジ山が螺合するように形成され、小径のネジ溝36は母乳容器42の容器口に形成された小径のネジ山に螺合するように形成されている。
なお、符号40は搾乳カップ23に装着したパッドである。
【0020】
本実施例に係る母乳搾乳器10の構造は以上の通りであって、母乳容器41を使用する場合、
図1に示すように母乳容器41の容器口のネジ山を大径のネジ溝36にネジ付けて母乳容器41を接続口32に装着する。母乳容器41を接続口32に装着するときはパッキン38を母乳容器41の容器口に装着するのが好ましい。
【0021】
図1に二点鎖線で示すように操作レバー12を時計方向に回動操作すると、ダイヤフラム26が変形して負圧室31が拡大するので、負圧室31に負圧が発生する。発生した負圧は第1連通路34と第2連通路35を通して搾乳カップ23を被せた乳房に作用し、乳房から母乳が搾乳される。搾乳された母乳は逆止弁33で接続口32が閉じているので、第1連通部34に溜まる。操作レバー12を
図1に実線で示す元の位置へ戻すと負圧室31が縮小し負圧が消滅すると共に密閉された第1連通路と第2連通路内の空気は加圧に転じ、それに伴い逆止弁33が開いて接続口32から母乳が母乳容器41に注がれる。
【0022】
母乳容器42を使用する場合、
図2に示すように母乳容器42の容器口のネジ山を小径のネジ溝37にネジ付けて母乳容器42を接続口32に装着する。
本実施例に係る母乳搾乳器10によれば、接続部22にネジ溝として大径のネジ溝36を設けるとともに、大径のネジ溝36の奥に小径のネジ溝37を設けたので、大径のネジ山を設けた母乳容器41を大径のネジ溝36に接続し、小径のネジ山を設けた母乳容器42を小径のネジ溝37に択一的に接続でき、口径が大小異なる2種類の母乳容器41,42を択一的に接続して使用できる。
【0023】
容器口に小径のネジ山を設けた母乳容器42は口径が小さいので、ネジ溝37が一条でも強く締め付けることにより母乳の漏れを防止できる。一方、大径のネジ山を設けた母乳容器41はネジ口径が大きいためネジ溝36が一条では母乳が漏れるおそれがあり、それを防ぐためにネジ溝36を2条に形成した。しかし、小径のネジ溝37と大径のネジ溝36ではネジの種類が異なるため、射出成型に用いる金型の構造上、小径のネジ溝37と大径のネジ溝36を一体成型することはできない。本発明によれば小径のネジ溝37を設けたネジ部品をインサート成形するので、接続口に大径のネジ溝36と小径のネジ溝37を射出成形で設けることができる。
【0024】
大径のネジ溝36と小径のネジ溝37の間に設けた隙間39にパッキンを装着することにより、大径のネジ山を設けた母乳容器41を接続するとき、より確実に母乳の漏れを防止できる。
【0025】
なお、本実施例ではパッキン38を装着するための隙間39を形成したが、この隙間39を無くしても母乳の搾乳は可能である。
また、ダイヤフラムを変形作動させるダイヤフラム作動機構として、操作レバーを設けたが、電動式のダイヤフラム作動機構を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0026】
10…母乳搾乳器
11…本体
12…操作レバー
21…筒部
22…接続部
23…搾乳カップ
24…軸受部
26…ダイヤフラム
27…ダイヤフラムプレート
28…フックピン
29…軸ピン
30…係止部
31…負圧室
32…接続口
33…逆止弁
34…第1連通路
35…第2連通路
36…大径のネジ溝
37…小径のネジ溝
38…パッキン
39…隙間
40…パッド
41、42…母乳容器