(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】左官用マルチこて及びマルチこてセット
(51)【国際特許分類】
E04F 21/16 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E04F21/16 H
(21)【出願番号】P 2023150625
(22)【出願日】2023-09-18
【審査請求日】2024-01-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523355517
【氏名又は名称】有限会社ノゾミ工業
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】西畑 伸祐
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-120740(JP,U)
【文献】実開昭63-125046(JP,U)
【文献】登録実用新案第3045879(JP,U)
【文献】特開2000-248736(JP,A)
【文献】特許第3363801(JP,B2)
【文献】特許第4571042(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面の長手方向に背板が設けられ、前記背板にスライド溝が形成されたこて板と、
握り柄と、前記握り柄から下方に延びる首部と、前記首部の下端に前記こて板の前記スライド溝に差し込まれる差し込み部とを有する取っ手と、
前記背板の前記スライド溝に差し込まれた前記差し込み部を前記背板に密着して固定する固定部材と、からなり、
前記取っ手は、前記差し込み部に振動体が設けられた振動取っ手と、振動体が設けられない手動取っ手とを交換して前記こて板に取り付け可能であることを特徴とする左官用マルチこて。
【請求項2】
前記振動取っ手の前記握り柄に内部空間が形成され、前記内部空間に前記振動体に駆動電流を供給する電源が収容され、
前記振動取っ手の前記握り柄に、前記電源をオンオフする電源スイッチと、前記振動体の振動の強度を切り換える切換スイッチとが設けられ
前記振動取っ手の前記差し込み部に複数の前記振動体が長手方向に列設されていることを特徴とする請求項1に記載の左官用マルチこて。
【請求項3】
前記取っ手は、前記握り柄に着脱可能なグリップ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の左官用マルチこて。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の大、中、小の少なくとも3個の振動取っ手と、
請求項1又は3に記載の大、中、小の少なくとも3個の手動取っ手と、
請求項1に記載の大、中、小の少なくとも3種類の複数枚のこて板と、
が1つのケースに収納されていることを特徴とする左官用マルチこてセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は左官用マルチこて及びマルチこてセットに関する。
【背景技術】
【0002】
モルタルやコンクリートの打設時に表面の不陸を調整するのに左官用こてが使用され、モルタルやコンクリートの表面が乾かないうちに迅速に作業が行われる。近年、モルタルやコンクリートの表面に振動を与えて、空気を抜き、水を浮かせることにより、均し作業を効率良く迅速・容易にするため、電動こてが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1、6には、こて板に振動体を取り付け、取っ手に電池を収容した電動こてが記載されているが、振動体の取り付け位置が首部の付け根の回りにあるため、こて板全体に振動を伝えることができない。特許文献2、4、5、7には、取っ手内部に振動体と電池を設けた電動こてが記載されているが、取っ手内部の振動体の振動が取っ手を握る手に伝わるため、手がしびれるだけでなく、こて板の振動が不十分である。特許文献3には、こて板の左右両側にケーブルを介して外部電顕に接続された振動体を取り付けた電動こてが記載されているが、ケーブルが作業の邪魔になるという問題があった。
【0004】
特許文献8には、こて板に振動体を移動・着脱可能に設け、取っ手に電池を設けた左官こてが記載されているが、作業の状況に応じて振動体を移動させるのが煩雑である。
特許文献9には、振動モータと電池とスイッチをケースに収容した振動発生体をこて板に着脱可能に設けた左官用こてが記載されているが、振動発生体の取り付け位置が握り柄の先端に限定されているため、作業に応じて振動を発生させる位置を変えることができない等の問題があった。
【0005】
このような電動左官こては、コストが高いうえ、振動体を作動させずに一般の左官こてとして使用するには重く使いにくく、こて板の大きさが変えられないため、色々な場面に対応できないという問題があった。また、従来の左官用こては、取っ手とこて板が一体であるため、従来の木製岡持や、プラスチック製の左官道具箱に収納するのに嵩張り、ケースが大型になる反面、あまり多くの道具を収納できないという問題があった。
【0006】
特許文献10には、握り柄に対してこて板部を取り替え得るようにした左官こてが記載されているが、ホルダと差し入れ部の係合が外れやすく、力圧を加えて作業をする間にガタ付いたり、揺れて、損傷が生じやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-351058号公報
【文献】特開2002-89031号公報
【文献】特開2000-17827号公報
【文献】実用新案登録第3045879号明細書
【文献】特開平9-57179号公報
【文献】特開平9-49314号公報
【文献】実開平4-36046号公報
【文献】実開平4-86849号公報
【文献】特開平3-241170号公報
【文献】特開平9-324527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、振動取っ手と手動取っ手を容易に交換することができる左官用マルチこて、こて板に対して取っ手が外れにくい左官用マルチこて、振動体の振動がこて板に伝わりやすい左官用マルチこて、及び複数のこて板及び複数の取っ手を嵩張らずに収納し、これらを任意に組み合わせて使用することができる左官用マルチこてセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため手段は以下の通りである。
(1)背面の長手方向に背板が設けられ、前記背板にスライド溝が形成されたこて板と、
握り柄と、前記握り柄から下方に延びる首部と、前記首部の下端に前記こて板の前記スライド溝に差し込まれる差し込み部とを有する取っ手と、
前記背板の前記スライド溝に差し込まれた前記差し込み部を前記背板に密着して固定する固定部材と、からなり、
前記取っ手は、前記差し込み部に振動体が設けられた振動取っ手と、振動体が設けられない手動取っ手とを交換して前記こて板に取り付け可能である。
【0010】
手段1によれば、固定部材により差し込み部の全体が背板に密着して固定されるので、こて板に対して取っ手が外れにくいうえ、振動体の振動が背板を介してこて板の全体にいきわたり、振動を施工面に確実に伝えることができる。
また、こて板から取っ手を取り外すことで、嵩張らずに収納することができる。
さらに、振動取っ手と手動取っ手を交換可能であるので、従来の手動こての取っ手を振動取っ手に交換すれば、高価な振動ごてを購入する必要がなくなり、安価なコストで、振動こてとして使用できる。
【0011】
(2)手段1において、
前記振動取っ手の前記握り柄に内部空間が形成され、前記内部空間に前記振動体に駆動電流を供給する電源が収容され、
前記振動取っ手の前記握り柄に、前記電源をオンオフする電源スイッチと、前記振動体の振動の強度を切り換える切換スイッチとが設けられ
前記振動取っ手の前記差し込み部に複数の前記振動体が長手方向に列設されている。
この手段2によれば、複数の振動体は長手方向に列設されているので、振動体の振動をこて板全体にいきわたらせることで、効率のよい均し作業を行うことができる。
【0012】
(3)手段1又は2において、
前記取っ手は、前記握り柄に着脱可能なグリップ部が設けられている。
この手段3によれば、グリップ部を取り外して、新しいものと交換したり、自部好みのグリップ形状や材質のものにすることができる。
【0013】
(4)手段1から3のいずれかの大、中、小の少なくとも3個の振動取っ手と、
手段1又は3の大、中、小の少なくとも3個の手動取っ手と、
手段1に記載の大、中、小の少なくとも3種類の複数枚のこて板と、
が1つのケースに収納されている。
この手段4によれば、こて板と取っ手のセットは、こて板から取っ手を取り外した状態で収納できるので、従来の2分の1から3分の1以下の容量のケースに収納することができる。逆に十従来と同じケースには、従来よりも多くのこてを収納することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、振動取っ手と手動取っ手を容易に交換することができ、こて板に対して取っ手が外れにくい。また、振動体の振動がこて板全体に伝わりやすいことから、色々な状況に対応できる。さらに、複数のこて板及び複数の取っ手を嵩張らずに収納し、これらを任意に組み合わせて使用することができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る左官用こての分解斜視図及びA-A部断面図。
【
図7】グリップ部を装着した振動取っ手用握り柄の断面図(a)及び主塔取っ手用握り柄の断面図(b)。
【
図8】本発明の実施形態に係る左官用こてセットの斜視図。
【
図9】本発明の実施形態に係る左官用マルチこてセットが収納されるケースの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る左官用マルチこて(以下、単に、「左官用こて」という。)1を示す。左官用こて1は、こて板2と、取っ手3と、固定部材4とで構成されている。取っ手3は、振動取っ手3aと手動取っ手3bの2種類あり、これらはこて板2に対し交換可能になっている。
【0018】
こて板2は、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム等の金属板、木板、プラスチック板等からなり、厚さは金属板の場合0.3~1mm、木板、プラスチック板の場合は3mm程度の薄板で形成されている。こて板2の幅は100~150mm、長さは100~450mmmで、先端部の形状は半円形であるが、三角形でもよいし、長手方向に直交する直線状の縁でもよい。
【0019】
こて板2の背面の長手方向中心線上に、背板5が設けられている。背板5は、ステンレス、アルミニウム等の金属製であり、背板5の長さは、こて板2の全長の60~100%で、こて板2を補強するとともに、取っ手3を取り付ける基部の役割を果たしている。背板5には、上面に長手方向に延びるスライド溝6が形成されている。スライド溝6は、底面6aと、底面6aの両側端から上方に立ち上がる両側面6b、6cと、両側面6b、6cの上端から底面6aに平行に中心線の手前まで延びる天面6d、6eとで形成され、矩形の断面を有している。スライド溝6の形状は、矩形断面に限るものではなく、両側面6b、6cが底面6aから斜めに延びる台形(蟻溝)であってもよい。スライド溝6の底面6aには、
図6に示すように、後述する固定部材(蝶ボルト)4がねじ込まれるねじ穴7が形成されている。スライド溝6の両縁側には、後述する固定部材(蝶ボルト)4の頭が入るように切欠き7aが形成されている。スライド溝6の前端は背板5と一体の形成された前壁部8で閉じられ、後端は開口している。
【0020】
振動取っ手3aは、握り柄9と、首部10と、差し込み部11とを有している。
【0021】
握り柄9は、木製又はプラスチック製であり、長さ120~180mm、外径30~36mmの略円形断面の円筒形を有し、内部には電源となる電池12の収容空間13が設けられている。電池12は、後述する振動体17に駆動電流を供給するもので、乾電池等の一次電池、充電式電池、蓄電池等の二次電池を使用することができる。電池12は握り柄9の後端に設けられた蓋14を取り外して交換可能になっている。握り柄9の先端には、握った手の指でオン・オフ操作可能な電源スイッチ15が設けられ、握り柄9の先端部上面には、握った手の指で操作可能な振動強度の切換スイッチ16が設けられている。
【0022】
首部10は、金属製であり、握り柄9から下方に延びる円柱状又は角柱状を有し、こて板2の長さに応じて1つ又は2つ設けられている。首部10が2つの場合は、首部10の間隔は、握り柄が握れるように約120mmとなっている。首部10の上端は、握り柄9に固定され、首部10の下端は差し込み部11の上面に固定されている。首部10は後述する振動体17のリード線を配線できるように内部空間又は溝を有していてもよい。
【0023】
差し込み部11は、首部10の下端に握り柄9と平行に設けられている。差し込み部11は、こて板2の背板5のスライド溝6に後端から差し込み可能な、ステンレス又はアルミニウム等の金属製の細長い板で形成されている。差し込み部11は、底面11aと、両側面11b、11cと、天面11dとで形成され、スライド溝6にスライド可能で、スライド溝6の底面6a、両側面6b、6c、天面6d、6eに密着する矩形の断面を有している。差し込み部11の長さは、こて板2の背板5のスライド溝6と同じ長さを有している。
【0024】
差し込み部11には、先端部と、後端部と、中間部に、複数(実施例では3つ)の振動体17が長手方向に列設されている。振動体17は、径10mm前後、厚さ2~3mmのマイクロ振動モータが好ましい。振動体17は、差し込み部11に埋設され、背板5を介してこて板2に振動を確実に伝えられるようになっている。振動体17のリード線は、差し込み部11と首部10の内部に配線され、握り柄9の電池12に接続されている。差し込み部11には、スライド溝6のねじ穴7と対応し、振動体17と重ならない位置に、後述する固定部材(蝶ボルト)4が貫通する貫通孔18が形成されている。
【0025】
3つの振動体17をそれぞれ単独で作動させるか、前方の2つ、前方と後方の2つ、後方の2つを組合せる、あるいは3つ全て作動させることが可能であり、さらに、各電池12への供給電流を調整することが可能な制御部19が、振動取っ手3aの握り柄9の内部に設けられている。
【0026】
手動取っ手3bは、振動取っ手3aに設けられる電池12、電源スイッチ15、強度切換スイッチ15、振動体17、貫通孔18及び制御部19を有しない以外は、振動取っ手3aと同じ外観形状を有しているので、対応する部分には同一符号を附して説明を省略する。
【0027】
固定部材4は、
図6に示すように、スプリングワッシャー付きの蝶ボルトである。固定部材4は、差し込み部11の貫通孔18と、背板5のスライド溝6のねじ穴7にねじ込まれて、差し込み部11の全体を背板5に密着させて固定するようになっている。
【0028】
振動取っ手3aは、
図2に示すように、差し込み部11をこて板2のスライド溝6に差し込み、固定部材4を締め付けることでこて板2に一体に取り付けられる。
同様に、手動取っ手3bは、
図3に示すように、差し込み部11をこて板2のスライド溝6に差し込み、固定部材4を締め付けることでこて板2に一体に取り付けられる。
【0029】
図7は、交換可能なグリップ部21a、21bを示す。
図7(a)に示すように、振動取っ手3aの円筒状の握り柄9の外面には、スポンジ、ラバー、木等の振動が手に伝わりにくい材料からなり、ユーザの好みの形状を有するグリップ部21aが交換可能に被せられている。手動取っ手3bの握り柄9は、
図7(b)に示すように、逆台形状の断面の芯部22にグリップ部21bが、交換可能に被せられている。このようにグリップ部21a、21bを交換可能に設けることにより、自分だけのカスタマイズが可能である。
【0030】
次に、本発明の実施形態に係る左官用こて1を土間工事において使用する方法をその作用とともに説明する。
【0031】
土間工事において、型枠、ワイヤメッシュを設置し、コンクリートを流し込んで、締固めを行った後、本実施形態の振動取っ手3aを取り付けた左官用こて1を使用して、トンボと併用しながら、均し作業を行う。ここで、振動取っ手3aの電源スイッチ15をオンすると、振動取っ手3aの振動体17が振動し、その振動は差し込み部11から、背板5、こて板2を経てコンクリートに伝わる。コンクリートに振動を与えることで、コンクリート中のジャリを沈め、レベル出し、不陸の調整を行うことができる。また、均し場所やコンクリートの状況に応じて、3つの振動体17の組み合わせや供給電流を調整することで、均し作業を効率良く行うことができる。この間、本実施形態の手動取っ手3bを取り付けた木ごてを使用してブリーディング水を取り除く。均しが終了すると、本実施形態の手動取っ手3bを取り付けた金ごてを使用して、押さえ、および仕上げ作業を行う。
【0032】
このような土間工事のほか、石畳等のインターロッキング施工作業の下地処理において、本発明の実施形態に係る左官用こて1を使用することで、砕石、砂地等の締め固めや、目地砂の均し等の作業を迅速・容易に、且つ効率よく行うことができる。
【0033】
このように、本実施形態の左官用こて1によれば、固定部材4により差し込み部11の全体が背板5に密着して固定されるので、こて板2に対して取っ手3が外れにくいうえ、振動体17の振動が背板5を介してこて板2の全体にいきわたり、振動を施工面に確実に伝えることができる。
また、こて板2から取っ手3を取り外すことで、嵩張らずに収納することができる。
さらに、振動取っ手3aと手動取っ手3bを交換可能であるので、従来の手動こての取っ手を振動取っ手3aに交換すれば、高価な振動ごてを購入する必要がなくなり、安価なコストで、振動こてとして使用できる。
【0034】
複数の振動体17は長手方向に列設されているので、振動体17の振動をこて板2の全体にいきわたらせることができる。また、複数の振動体17を組み合わせて、こて板2の前端部、後端部、あるいは全体を振動させることで、施工場所の状況に応じて効率よい均し作業を行うことができる。
【0035】
グリップ部21a、21bを取り外して、新しいものと交換したり、自部好みのグリップ形状や材質のものにすることができる。
【0036】
図8は、こて板2と取っ手3の組合せセットの一例を示す。
こて板2は、振動取っ手3a用に、長さが300~450mmの大、長さが150~250mmの中、長さが120mm前後の小の3種類、また、手動取っ手用3bに、長さが300~450mmの大、長さが150~250mmの中、長さが120mm前後の小の3種類、合計6個が設けられている。
取っ手3は、振動取っ手3aとして、握り柄9の長さが180mm前後の大、大と同じ180mm前後の中、100mmm前後の小の3種類、また手動取っ手3bとして、握り柄9の長さが180mm前後の大、大と同じ180mm前後の中、100mmm前後の小の3種類、合計6個が設けられている。
【0037】
これらのこて板2と取っ手3のセットは、こて板2から取っ手3を取り外した状態で収納できるので、従来の2分の1から3分の1以下の容量のケースに収納することができる。逆に従来と同じ容量のケースには、従来よりも多くのこてを収納することができる。
【0038】
図9は、本発明の実施形態に係る左官用マルチこてセットが収納されるケース30を示す。ケース30は、本体部31と、蓋部32と、内カバー33とで構成されている。
【0039】
本体部31は、例えば幅600mm×奥行450mm×深さ150mmの矩形の容器で、内側の底面、側面にポリウレタン、ポリエチレン製のスポンジからなる緩衝材34が設けられている。長手方向及び短手方向の側面の緩衝材34には、
図10に示すように、深さ方向に延びる仕切溝35が長手方向及び短手方向に複数形成されている、仕切溝35には、
図11に示すような仕切り板36a、36b、36c、36dが装着されるようになっている。仕切り板36a、36b、36c、36dは、カッターナイフや鋏で切り出すことが可能な柔軟性を有するポリプロピレン、ポリスチレン製等のプラスチック板で形成されている。長手方向の仕切り板36a、36bには、
図11(a)、11(b)に示すように、上端から切込み37aが形成され、短手方向の仕切り板36c、36dには、
図11(c)、11(d)に示すように、下端から切込み37bが形成され、長手方向の仕切り板36a、36bと短手方向の仕切り板36c、36dを格子状に組み合わせるとで、本体部31に複数のこて板2をその大きさに応じて収容可能な複数のこて板収容部38を形成することができる。
【0040】
蓋部32は、例えば幅600mm×奥行450mm×深さ100mmの矩形の容器で、本体部31の長手方向の開口縁にヒンジ39により開閉可能に取り付けられている。蓋部32は、内側の底面、側面にポリウレタン、ポリエチレン製のスポンジからなる緩衝材40が設けられている。蓋部32は、長手方向に取っ手収容部41と、特殊こてや、極小こて、クリップ等の小物収容部42とに区画されている。取っ手収容部41には、ポリウレタン、ポリエチレン製のスポンジからなる保持部43が設けられ、保持部43には、6筋のスリット44と各スリット44の底面側に凹部44aが形成され、
図12に示すように取っ手3の首部10と差し込み部11を差し込んで、握り柄9を露出した状態で保持することができるようになっている。
【0041】
内カバー33は、蓋部32のヒンジ39と反対側の縁に取り付けられ、蓋部32の内寸法より小さいプラスチック板で形成されている。内カバー33には、蓋部32のヒンジ39側に設けた係合部45に係合するフック46が設けられている。蓋部32を本体部31に閉じる前に、内カバー33のフック46を蓋部32の係合部45に係合して、蓋部32を覆うことで、蓋部32に収容した取っ手3や小物が本体部31内に落ちないようになっている。内カバー33を蓋部32のヒンジ39側に取り付けると、内カバー33で本体部31又は蓋部32が塞がれて収納や取出しが不便になるが、本実施形態では、内カバー33は、蓋部32のヒンジ39と反対側の縁に取り付けられているので、内カバー33を開けば本体部31と蓋部32の収容物を同時に見ることができて、収納や取出し作業が迅速・容易になる。内カバー33は、蓋部32のヒンジ39と直交する両側のいずれかの縁に取り付けてもよい。
【0042】
本実施形態のケース30によれば、蓋部32の取っ手収容部41に、大、中、小の3種類の振動取っ手3aと、大、中、小の3種類の手動取っ手3bとを収容し、本体部31のこて板収容部38にこれらの取っ手3a、3bと組み合わせて取り付けることが出来る各種のこて板2を収容することができるので、作業に必要な取っ手3とこて板2を選択し、これらを迅速に組み合わせて、作業を行うことができる。
【0043】
本発明は前記実施形態に限るものではなく、発明の要旨を変更することなく、変更や修正が可能である。
例えば、こて板2の長さや形は任意の形状にすることができる。また、固定部材は、蝶ボルトに限らず、任意の固定手段を使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…左官用こて
2…こて板
3…取っ手
4…固定部材
5…背板
6…スライド溝
9…握り柄
10…首部
11…差し込み部
12…電池
15…電源スイッチ
16…振動強度切換スイッチ
17…振動体
19…制御部
21a、21b…グリップ部
22…芯部
30…ケース
【要約】
【課題】振動取っ手と手動取っ手を容易に交換することができ、こて板に対して取っ手が外れにくく、振動体の振動がこて板に伝わりやすい左官用マルチこて、及び複数のこて板及び複数の取っ手を嵩張らずに収納し、これらを任意に組み合わせて使用することができる左官用マルチこてセットを提供する。
【解決手段】背面の長手方向に背板5が設けられ、背板5にスライド溝6が形成されたこて板2と、握り柄9と、握り柄9から下方に延びる首部10と、首部10の下端にこて板2のスライド溝6に差し込まれる差し込み部11とを有する取っ手3と、背板5のスライド溝6に差し込まれた差し込み部11の全体を背板5に密着させて固定する固定部材4とからなる。取っ手3は、差し込み部11に振動体17が設けられた振動取っ手3aと、振動体が設けられない手動取っ手3bとを交換して前記こて板2に取り付け可能である。
【選択図】
図1