IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニチカ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】塗料および塗装方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/02 20060101AFI20240229BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20240229BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C09D175/02
C08G18/50 021
C08G18/73
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023560006
(86)(22)【出願日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2023020972
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022093415
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023050926
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂下 昌平
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-080555(JP,A)
【文献】特開2007-009102(JP,A)
【文献】特開2015-113370(JP,A)
【文献】特開2015-113369(JP,A)
【文献】特開平05-194695(JP,A)
【文献】特開平01-121380(JP,A)
【文献】特表2018-529794(JP,A)
【文献】特開昭64-001715(JP,A)
【文献】特開2023-026829(JP,A)
【文献】特開平07-145366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D 175/00-175/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物(a)を含有する成分(A)と、
芳香族ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)(ただし、アルキル基置換芳香族ポリアミンまたはジメチルチオトルエンジアミンを含有するものは除く)とを含有し、
ポリイソシアネート化合物(a)が、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を、50質量%を超える量で含有し、
芳香族ポリアミン化合物(b)が、下記一般式(1)で表される化合物であり
下記一般式(1)で表される化合物の含有量が、芳香族ポリアミン化合物(b)と他のアミン化合物の合計100質量部に対して80~100質量部であり、
[(NH-C5-m-COA-]R (1)
(式中、Rはn価の平均分子量80以上のポリアルキレン、ポリアルキレンエーテルまたはポリアルキレンポリエステルを表わし、Aは酸素原子、またはイミノ基を表わす。ただし、ポリアルキレンの中に不飽和結合を含んでいてもよい。また、mは1~3の整数を表わし、nは2~4の整数を表わす。)
下記条件(1)~(3)をすべて満たすポリウレア樹脂組成物を含有することを特徴とする塗料。
(1)成分(A)と成分(B)を混合した直後に、有機溶媒を含有しない状態で測定された粘度値が2倍になるまでの可使時間が10分以上である。
(2)ポリイソシアネート化合物(a)の25℃における粘度が、3,000mPa・s以下である。
(3)ポリイソシアネート化合物(a)が、脂肪族イソシアネート化合物またはその誘導体を含有する。
【請求項2】
ポリウレア樹脂組成物のチクソインデックス(TI値)が2~30であることを特徴とする請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
ポリイソシアネート化合物(a)のイソシアネート基含有率が、5~30%NCOであることを特徴とする請求項1または2に記載の塗料。
【請求項4】
さらに、有機溶媒を含有し、ポリウレア樹脂組成物における有機溶媒の含有量が、10質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗料。
【請求項5】
脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を、50質量%を超える量で含有するポリイソシアネート化合物(a)を含む成分(A)と、
下記一般式(1)で表される芳香族ポリアミン化合物(b)を含有し、下記一般式(1)で表される化合物の含有量が、芳香族ポリアミン化合物(b)と他のアミン化合物の合計100質量部に対して80~100質量部である成分(B)(ただし、アルキル基置換芳香族ポリアミンまたはジメチルチオトルエンジアミンを含有するものは除く)とを混合することで塗料を作製し、作製した塗料を塗装対象物に塗布することを特徴とする塗装方法。
[(NH-C5-m-COA-]R (1)
(式中、Rはn価の平均分子量80以上のポリアルキレン、ポリアルキレンエーテルまたはポリアルキレンポリエステルを表わし、Aは酸素原子、またはイミノ基を表わす。ただし、ポリアルキレンの中に不飽和結合を含んでいてもよい。また、mは1~3の整数を表わし、nは2~4の整数を表わす。)
【請求項6】
塗料を塗布する方法が、刷毛塗り、ローラー塗装、またはこて塗りであることを特徴とする請求項5に記載の塗装方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の塗料が塗布されてなることを特徴とする塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料およびポリウレア樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレア樹脂は、物性が優れ、また無溶剤で利用できる点から、老朽化した建築物や躯体に対する補強材料として、また、地震をはじめとした天災への耐久性を付与する材料として、利用されている。
ポリウレア樹脂の原料となるイソシアネート成分とアミン成分は、反応が極めて速いため、ポリウレア樹脂の塗工においては、これらの原料化合物を、衝突混合型の吹付装置を用いて混合し、吹付塗工されている。
一方、閉鎖空間での塗工や複雑形状への塗工などにおいては、吹付装置の利用ができないため、手作業で塗布(以下、手塗りと呼ぶ)することができる、可使時間が長いポリウレア樹脂が開発されている。
【0003】
アミン成分とイソシアネート成分との反応性を低減させ、混合後の硬化時間を確保したポリウレア樹脂組成物として、例えば、特許文献1には、ポリアルキレン、ポリアルキレンエーテル又はアルキレンポリエステルを有し、芳香環に結合したアミノ基を有するアミンと、ポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレア樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭60-32641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたポリウレア樹脂は、手塗りするには、可使時間が十分でないことがあり、また、塗工により得られた塗膜は、厚みの均一性が劣ることや、壁面に塗工したときに塗工液が垂れてしまい壁面塗工性が十分ではないことがあった。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するものであって、手作業での塗工作業が可能な可使時間を有し、塗工時に厚みの均一性や壁面塗工性にも優れ、かつ黄変も少ない塗膜を形成することができるポリウレア樹脂組成物および2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特定構造のイソシアネートと特定構造の芳香族ポリアミン化合物を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下の要旨は下記のとおりである。
【0008】
本発明の2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料は、ポリイソシアネート化合物(a)を含有する成分(A)と、芳香族ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを含有し、成分(A)と成分(B)とを混合した直後に、有機溶媒を含有しない状態で測定された粘度値が2倍になるまでの可使時間が10分以上であることを特徴とする。
本発明の2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料によれば、ポリイソシアネート化合物(a)が、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を、50質量%を超える量で含有し、芳香族ポリアミン化合物(b)が、下記一般式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。
[(NH-C5-m-COA-]R (1)
(式中、Rはn価の平均分子量80以上のポリアルキレン、ポリアルキレンエーテルまたはポリアルキレンポリエステルを表わし、Aは酸素原子、またはイミノ基を表わす。ただし、ポリアルキレンの中に不飽和結合を含んでいてもよい。また、mは1~3の整数を表わし、nは2~4の整数を表わす。)
本発明の2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料によれば、ポリイソシアネート化合物(a)の25℃における粘度が、3,000mPa・s以下であることが好ましい。
本発明の2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料によれば、ポリイソシアネート化合物(a)のイソシアネート基含有率が、5~30%NCOであることが好ましい。
本発明のポリウレア樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物(a)を含有する成分(A)と、芳香族ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを含有し、下記条件(1)~(3)をすべて満たすことを特徴とする。
(1)成分(A)と成分(B)を混合した直後に、有機溶媒を含有しない状態で測定された粘度値が2倍になるまでの可使時間が10分以上である。
(2)ポリイソシアネート化合物(a)の25℃における粘度が、3,000mPa・s以下である。
(3)ポリイソシアネート化合物(a)が、脂肪族イソシアネート化合物またはその誘導体を含有する。
本発明のポリウレア樹脂組成物によれば、チクソインデックス(TI値)が2~30であることが好ましい。
本発明のポリウレア樹脂組成物によれば、ポリイソシアネート化合物(a)が、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を、50質量%を超える量で含有し、芳香族ポリアミン化合物(b)が、下記一般式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。
[(NH-C5-m-COA-]R (1)
(式中、Rはn価の平均分子量80以上のポリアルキレン、ポリアルキレンエーテルまたはポリアルキレンポリエステルを表わし、Aは酸素原子、またはイミノ基を表わす。ただし、ポリアルキレンの中に不飽和結合を含んでいてもよい。また、mは1~3の整数を表わし、nは2~4の整数を表わす。)
本発明のポリウレア樹脂組成物によれば、ポリイソシアネート化合物(a)のイソシアネート基含有率が、5~30%NCOであることが好ましい。
本発明のポリウレア樹脂組成物によれば、さらに、有機溶媒を含有し、ポリウレア樹脂組成物における有機溶媒の含有量が、10質量%以下であることが好ましい。
本発明のポリウレア樹脂組成物の製造方法は、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を、50質量%を超える量で含有するポリイソシアネート化合物(a)を含有する成分(A)と、下記一般式(1)で表される芳香族ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを混合することを特徴とする。
[(NH-C5-m-COA-]R (1)
(式中、Rはn価の平均分子量80以上のポリアルキレン、ポリアルキレンエーテルまたはポリアルキレンポリエステルを表わし、Aは酸素原子、またはイミノ基を表わす。ただし、ポリアルキレンの中に不飽和結合を含んでいてもよい。また、mは1~3の整数を表わし、nは2~4の整数を表わす。)
本発明の塗料は、上記のポリウレア樹脂組成物を含有することを特徴とする。
本発明の塗装方法は、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を、50質量%を超える量で含有するポリイソシアネート化合物(a)を含む成分(A)と、下記一般式(1)で表される芳香族ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを混合することで塗料を作製し、作製した塗料を塗装対象物に塗布することを特徴とする。
[(NH-C5-m-COA-]R (1)
(式中、Rはn価の平均分子量80以上のポリアルキレン、ポリアルキレンエーテルまたはポリアルキレンポリエステルを表わし、Aは酸素原子、またはイミノ基を表わす。ただし、ポリアルキレンの中に不飽和結合を含んでいてもよい。また、mは1~3の整数を表わし、nは2~4の整数を表わす。)
本発明の塗装方法によれば、塗料を塗布する方法が、刷毛塗り、ローラー塗装、またはこて塗りであることが好ましい。
本発明の塗膜は、上記塗料が塗布されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料は、有機溶媒などで希釈せずとも良好な可使時間を有しており、壁面への塗工性にも優れる。かつ、得られた塗膜は、塗膜の厚みの均一性にも優れ、黄変が少ないため、雨水や日光に長時間さらされるような用途においても、基材から剥落したり、ひび割れを起こしたりすることなく、基材を視覚的にも物理的にも長期的に保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ポリウレア樹脂組成物>
本発明におけるポリウレア樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物(a)を含有する成分(A)と、芳香族ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを含有する。
【0011】
本発明において、樹脂組成物を構成するポリイソシアネート化合物(a)は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であり、その形態は、モノマー、オリゴマー、ポリマーの何れであってもよい。
【0012】
ポリイソシアネート化合物(a)は、50質量%を超える量で、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を含有することが好ましい。ポリイソシアネート化合物(a)は、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を、50質量%を超える量で含有することで、芳香族ポリアミン化合物(b)との反応性が抑制され、硬化までの時間を確保することができる。また、得られた塗膜は、厚みが均一で、日光にさらされた際の黄変を低減することができる。
【0013】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、2,5-または2,6-ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、芳香族系ポリイソシアネートを水素添加したものなどが挙げられる。
【0014】
脂肪族ポリイソシアネート化合物の誘導体としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリアミンまたはポリオールとを反応して得られるイソシアネート末端プレポリマーや、アロファネート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、およびイソシアヌレート変性体、並びに、水分散型に変性されたものなどが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物(a)が、イソシアネート末端プレポリマーや変性体などの脂肪族ポリイソシアネート化合物の誘導体を含有すると、得られる塗膜は、引張強度などの特性が向上する。
上記イソシアネート末端プレポリマーは、例えば、公知の方法でポリイソシアネートモノマーと、ポリオールまたはポリアミンとを、窒素ガス雰囲気下で、さらに必要により溶剤やジオクチルチンジラウレート等の公知の触媒の存在下で、60~100℃で反応させることによって得ることができる。
【0015】
ポリイソシアネート化合物(a)は、脂肪族ポリイソシアネート化合物以外に、物性や可使時間などの目的とする性能に合わせて、他のイソシアネート化合物を含有することができる。例えば、芳香族系ポリイソシアネートの、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネートなどが例示できる。
【0016】
中でも、脂肪族ポリイソシアネート化合物として1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を使用する場合、HDI以外のイソシアネート化合物は、HDIとの相溶性や芳香族ポリアミン化合物(b)との相溶性の観点から、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が好ましく、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートであることがより好ましい。また、これらは2種類以上を併用してもよい。
【0017】
ポリイソシアネート化合物(a)は、25℃における粘度が3,000mPa・s以下であることが好ましい。ポリイソシアネート化合物(a)の、25℃における粘度が、3,000mPa・sを超えると、ポリウレア樹脂組成物を含有する塗料は、手塗りできないことがある。
【0018】
また、ポリイソシアネート化合物(a)は、イソシアネート基含有率が、5~30%NCOであることが好ましい。ポリイソシアネート化合物(a)におけるイソシアネート基の割合が上記範囲より低いと、ポリウレア樹脂組成物は、十分な物性が得られないことがあり、また、上記範囲より高いと、十分な可使時間が得られないことがある。
【0019】
本発明の樹脂組成物を構成する芳香族ポリアミン化合物(b)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
[(NH-C5-m-COA-]R (1)
(式中、Rはn価の平均分子量80以上のポリアルキレン、ポリアルキレンエーテルまたはポリアルキレンポリエステルを表わし、Aは酸素原子、またはイミノ基を表わす。ただし、ポリアルキレンの中に不飽和結合を含んでいてもよい。また、mは1~3の整数を表わし、nは2~4の整数を表わす。)
【0020】
上記芳香族アミン化合物(b)のうち、m=1、n=2で、Rがポリエーテルの市販製品として、「エラスマー1000P」(クミアイ化学工業社製、アミン価80~90)、「VERSALINKP-1000」(エアプロダクツジャパン社製、アミン価80~90)、「ポレア SL-100A」(クミアイ化学工業社製)などが挙げられる。
【0021】
本発明のポリウレア樹脂組成物には、塗膜物性や可使時間を調節する目的で、芳香族ポリアミン化合物(b)以外の他のアミン化合物を含有してもよい。
他のアミン化合物としては、4,4′-ジアミノ-3,3′-ジクロロジフェニルメタンやジエチルトルエンジアミンなどの芳香族アミン化合物、O,O′-ビス(2-アミノプロピル)プロピレングリコールなどのポリエーテルアミン化合物、ヘキサメチレンジアミンやノナンジアミン、α,β-不飽和カルボニル化合物と1級アミンのマイケル付加体(アスパルテート型アミン)、エポキシ化合物と1級アミンの反応体などの脂肪族アミン化合物などが挙げられる。その他のアミン化合物は、1級アミン、2級アミンいずれも使用することができる。
【0022】
上記の他のアミン化合物の含有量は、芳香族ポリアミン化合物(b)との合計100質量部に対して0~20質量部であることが好ましい。他のアミン化合物の含有量が20質量部を超えると、ポリウレア樹脂組成物は、十分な可使時間を得られない場合がある。
【0023】
本発明の樹脂組成物において、ポリイソシアネート化合物(a)のイソシアネート基と、芳香族ポリアミン化合物(b)のアミノ基との当量比(NCO/NH2)は、0.6~1.5であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましく、0.9~1.1であることがさらに好ましく、0.95~1.05であることが特に好ましい。当量比が0.6未満であると、得られるポリウレア樹脂塗膜の物性が低下する場合があり、一方、1.5を超えると、得られるポリウレア樹脂塗膜の物性が低下するとともに、発泡などの副反応が起こりやすくなる場合がある。
【0024】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、粘度が100~500,000mPa・sであることが好ましく、500~300,000mPa・sであることがより好ましく、1,000~200,000mPa・sであることが特に好ましい。粘度が100mPa・sを下回ると、十分な厚みを有する塗膜が得られにくくなる場合があり、500,000mPa・sを超えると、樹脂組成物中の気泡が抜けにくくなったり、手塗りでの塗工作業が困難になったりする場合がある。
【0025】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、チクソインデックス(TI値)が、2~30であることが好ましく、3~25であることがより好ましい。TI値が2未満であると、壁面塗工性が低下する場合があり、30を超えると、レベリング性が低下する場合がある。
なお、本発明におけるTI値は、B型粘度計を用いて、(スピンドル回転数0.3rpmにおける粘度)÷(スピンドル回転数6rpmにおける粘度)で求める。
【0026】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、得られる塗膜物性を向上させたり、可使時間や硬化温度を調節したりするために、触媒を含有してもよい。
触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、2-ジメチルアミノエチルエーテル、ジアザビシクロウンデセン、N-メチルモルホリンなどの3級アミン、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ラウレート、3-ジアセトキシテトラブチルスタノキサン、オクテン酸錫、塩化錫、三塩化錫ブチル、三塩化ビスマス、オクテン酸ビスマス、テトラキス(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラブトキシチタン、アセト酢酸の金属塩などの金属系触媒、テトラメチルアンモニウムクロリドなどの4級アンモニウム塩、塩酸、硫酸、酢酸、コハク酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸性化合物などが挙げられる。
【0027】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、例えば、塩基性無機化合物、pH調整剤、金属酸化物微粒子、粘着付与剤、ワックス類、紫外線吸収剤、表面調整剤、消泡剤、チキソトロピー付与剤、着色料、分散剤、充填剤、希釈剤などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、ポリイソシアネート化合物(a)や芳香族ポリアミン化合物(b)とあらかじめ混合しておくこともできる。
添加剤の添加量は、目的に応じて適宜決めることができる。
【0028】
塩基性無機化合物としては、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸(水素)塩などが挙げられる。中でも、安定性や粘度への影響の観点から、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物がより好ましい。
【0029】
pH調整剤としては、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸カルシウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウムなど、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機酸塩などが挙げられる。
【0030】
金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化第一鉄、酸化第二鉄、四酸化三鉄、酸化アルミニウム、酸化バナジウム、酸化銅などが挙げられる。
【0031】
粘着付与剤としては、キサンタンガムやグァーガムなどの多糖類、ロジン樹脂およびその誘導体、テルペン樹脂およびその誘導体、脂肪族系樹脂およびその誘導体、芳香族系樹脂およびその誘導体などが挙げられる。
【0032】
ワックス類としては、パラフィン系ワックス、アマイド系ワックス、オレフィン系ワックス、酸化オレフィン系ワックス、モンタンワックス、コポリマーワックスなどが挙げられる。
【0033】
紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン系、ケイヒ酸系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、トリアゾール系などが挙げられる。
【0034】
表面調整剤としては、シリコーン系、アクリルポリマー系、ビニル系、アセチレン系、フッ素系、アルキレンオキシド系などが挙げられる。
【0035】
消泡剤としては、鉱油系、アマイド系、金属石鹸系、シリコーン系、高級アルコールおよびその誘導体、脂肪酸誘導体、ポリオレフィン系などが挙げられる。中でも、消泡性と耐薬品性の観点から、ポリオレフィン系がより好ましい。
【0036】
チキソトロピー付与剤としては、アクリル系重合物、有機ウレア化合物およびその変性体、ヒュームドシリカ、ベントナイト、有機クレイ、層状ケイ酸塩などが挙げられる。中でも、添加量に対する効果の観点から、有機ウレア化合物およびその変性体がより好ましい。
【0037】
着色料としては、無機顔料、有機顔料、染料のいずれも使用することができる。無機顔料の例としては、赤土、黄土、緑土、黒鉛、紺青、亜鉛華、コバルト青、ビリジャン、チタン白などが挙げられ、有機顔料の例としては、アルカリブルー、リゾールレッド、ジスアゾエロー、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、イソインドリンエローなどが挙げられ、染料の例としては、茜、蘇芳、インディゴなどが挙げられる。
【0038】
分散剤としては、アクリルポリマー、ポリカルボン酸化合物、ホスホン酸化合物、スルホン酸化合物およびその中和化合物、4級アンモニウム塩化合物、アマイド化合物、ポリエーテル化合物などが挙げられる。
【0039】
充填剤としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの無機化合物、タルク、カオリン、アパタイト、層状ケイ酸塩などの無機鉱物、ガラスビーズ、ガラス繊維、シリカなどが挙げられる。中でも、添加量と粘度の観点から、タルク、ガラスビーズ、シリカが好ましい。
【0040】
希釈剤は、ポリイソシアネート化合物(a)との反応性を有さないものであれば、一般的な有機溶媒を使用することができる。
希釈剤として使用できる有機溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの炭化水素化合物や、アセトン、2-ブタノン、イソホロンなどのカルボニル化合物、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル化合物などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を混合してもよい。
ポリウレア樹脂組成物における有機溶媒の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。有機溶媒の含有量が10質量%を超えると、得られる塗膜の物性が低下するおそれがあるだけでなく、無溶剤で製造できるポリウレア樹脂の本来の利点が失われることがある。
【0041】
<2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料>
本発明の2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料は、ポリイソシアネート化合物(a)を含有する成分(A)と、芳香族ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを含有するものであり、成分(A)と成分(B)とを混合した直後に、有機溶媒を含有しない状態で測定された粘度値が2倍になるまでの時間が10分以上である。
上記、粘度値が2倍になるまでの時間を10分以上とする方法として、成分(A)を構成するポリイソシアネート化合物(a)に、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を、50質量%を超える量で含有するものを使用し、また、成分(B)を構成する芳香族ポリアミン化合物(b)に、下記一般式(1)で表される化合物を含有するものを使用する方法が挙げられる。
[(NH-C5-m-COA-]R (1)
(式中、Rはn価の平均分子量80以上のポリアルキレン、ポリアルキレンエーテルまたはポリアルキレンポリエステルを表わし、Aは酸素原子、またはイミノ基を表わす。ただし、ポリアルキレンの中に不飽和結合を含んでいてもよい。また、mは1~3の整数を表わし、nは2~4の整数を表わす。)
また、ポリイソシアネート化合物(a)は、25℃における粘度が、3,000mPa・s以下であることが好ましく、イソシアネート基含有率が、5~30%NCOであることが好ましい。
【0042】
<ポリウレア樹脂組成物の製造>
本発明のポリウレア樹脂組成物の製造方法は、
脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を、50質量%を超える量で含有するポリイソシアネート化合物(a)を含む成分(A)と、
下記一般式(1)で表される芳香族ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを含有する2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料を使用して、上記成分(A)と上記成分(B)とを混合する方法である。
[(NH-C5-m-COA-]R (1)
(式中、Rはn価の平均分子量80以上のポリアルキレン、ポリアルキレンエーテルまたはポリアルキレンポリエステルを表わし、Aは酸素原子、またはイミノ基を表わす。ただし、ポリアルキレンの中に不飽和結合を含んでいてもよい。また、mは1~3の整数を表わし、nは2~4の整数を表わす。)
成分(A)と成分(B)は、それぞれ、有機溶媒などの前記添加物を含有してもよい。
【0043】
上記2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料は、ポリイソシアネート化合物(a)を含む成分(A)と、芳香族ポリアミン化合物(b)を含む成分(B)とから構成されるため、成分(A)と成分(B)を混合した直後であって、有機溶媒を含有しない状態で測定された粘度値が2倍になるまでの時間(可使時間)を10分以上とすることができ、可使時間が長いポリウレア樹脂組成物を得ることができる。可使時間は、10~360分であることが好ましく、20~180分であることがより好ましく、30~120分であることがさらに好ましい。
【0044】
<塗膜>
本発明の塗膜は、本発明のポリウレア樹脂組成物を含有する塗料が塗布されてなるものである。
本発明の塗膜は、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を、50質量%を超える量で含有するポリイソシアネート化合物(a)を含む成分(A)と、下記一般式(1)で表される芳香族ポリアミン化合物(b)を含む成分(B)とを混合することで塗料を作製し、作製した塗料を塗装対象物に塗布する塗装方法によって形成することができる。
[(NH-C5-m-COA-]R (1)
(式中、Rはn価の平均分子量80以上のポリアルキレン、ポリアルキレンエーテルまたはポリアルキレンポリエステルを表わし、Aは酸素原子、またはイミノ基を表わす。ただし、ポリアルキレンの中に不飽和結合を含んでいてもよい。また、mは1~3の整数を表わし、nは2~4の整数を表わす。)
【0045】
本発明のポリウレア樹脂組成物は十分な硬化時間を有しているため、塗料を塗布する方法としては公知の方法を用いることができる。目的の厚みや被塗布物の形状などによって適宜選択すればよいが、例としては、浸漬塗装(どぶ漬け、ディッピング塗装)、ワイヤーバー、ベーカー式アプリケーター、グラビアロール、ポッティング、刷毛塗り、ローラー塗装、またはこて塗りなどの方法が挙げられる。
また、3Dプリンター等により3次元的に硬化物を形成することも可能である。
【0046】
塗膜の厚みは、目的とする物性や基材の材料などにより適宜選択することができるが、通常、経済性と物性の観点から10~10,000μmが好ましく、50~8,000μmがより好ましく、100~5,000μmがさらに好ましい。
また、上記厚みを得るための方法としては、一度に塗布してもよく、複数回に分けて重ね塗りをしてもよい。
【0047】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、良好な物理強度、伸び率、耐薬品性を有しているため、基材の保護もしくは特定物質の侵入防止層などとして好適に利用することができる。具体例としては、塗り床、ライニング、屋上防水、外壁塗装、橋梁床版防水、防水塗料、防食塗料、鋼管・金属管・タンク内外の保護塗料、建築物の補強・補修、樹脂部品・金属部品の保護、ため池などが挙げられる。
【0048】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、繊維(長繊維、短繊維いずれも含む)、不織布(長繊維、短繊維いずれも含む)、布、金網、メッシュ、パンチングメタルなどの平面体と複合化することもできる。
複合化の方法は公知のものを利用することができる。
上記平面体と複合化する際の塗布量は、目的とする物性や基材の材料などにより適宜選択することができるが、通常、経済性と物性の観点から、0.01~5kg/mが好ましく、0.03~4kg/mがより好ましく、0.05~3kg/mがさらに好ましい。
【0049】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、金枠に流し込んで、成形体を製造することもできる。
金枠とポリウレア樹脂組成物の離型性を向上させるため、離型剤を用いることもできる。離型剤としては公知のものを利用することができ、ポリウレア樹脂組成物を流し込む前に金枠へ塗布してもよく、ポリイソシアネート化合物(a)と、芳香族ポリアミン化合物(b)を混合するときに混合してもよい。また、離型剤がポリウレア樹脂組成物との反応性を有しない場合、ポリイソシアネート化合物(a)または芳香族ポリアミン化合物(b)の片方もしくは両方にあらかじめ混合しておくこともできる。
【0050】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、常温での反応性を有するため、加熱は通常必要ないが、塗工などの後の硬化を早めるために、加熱してもよい。硬化温度は、施工方法や硬化時間から適宜決めることができるが、安全性の観点から、40~80℃であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物を加熱するための装置として、得られるポリウレア樹脂の粘度や被着物の形状などに鑑みて、公知のものを使用することができる。加熱装置の具体例としては、加熱ローラー、ローラーヒーター、ポリイミドヒーター、赤外線放射ヒーター、空気高温加熱器、ヒートガン、ドライヤー、乾燥炉、焼付炉、恒温乾燥機、恒温炉などが挙げられる。
硬化時間は材料、機械、工程の特性を鑑みて適宜選択すればよいが、生産性の観点から3時間未満が好ましく、2時間未満がより好ましく、1時間未満がさらに好ましい。
硬化時間を調節するためには、上述の触媒を利用することもできる。
【実施例
【0051】
実施例および比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
実施例および比較例において用いた各原料を以下に示す。なお、原料は精製や蒸留を行わずそのまま使用した。
【0052】
<ポリイソシアネート化合物(a)>
・HDI:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業社製、49.9%NCO、粘度3mPa・s)
・24A-100:ビウレット変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成工業社製「デュラネート 24A-100」、23.5%NCO、粘度1,800mPa・s)
・WL72-100:水分散型変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成工業社製「デュラネート WL72-100」、21.3%NCO、粘度1,000mPa・s)
・WT20-100:水分散型変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成工業社製「デュラネート WT20-100」、14.1%NCO、粘度1,400mPa・s)
・WB40-100:水分散型変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成工業社製「デュラネート WB40-100」、16.6%NCO、粘度4,500mPa・s)
・HXR:ヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー社製「コロネートHXR」、21.9%NCO、粘度1,500mPa・s)
・PP-45:下記の方法で合成したイソシアネート末端HDIプレポリマー(4.5%NCO、粘度3,000mPa・s)
ポリプロピレンポリオール(ADEKA社製 アデカポリエーテルP-1000、分子量1000、2官能、水酸基価110)47.2質量部と、ポリエチレングリコール(東京化成工業社製 ポリエチレングリコール4000、分子量3200、2官能、水酸基価35)42.5質量部とを混合し、これに、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成工業社製 デュラネート50M-HDI、50.0%NCO)10.2質量部を加え、窒素雰囲気下80℃で3時間混合攪拌して合成した。
・D-370N:イソシアヌレート変性1,5-ペンタンジイソシアネート(三井化学社製「スタビオ D-370N」、25.0%NCO、粘度2,000mPa・s)
・MR-200:ジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製「ミリオネート MR-200」、30.9%NCO、粘度は固体のため測定不可)
・TDI:トルエンジイソシアネート(2,4-、2,6-混合品)(東京化成工業社製、48.2%NCO、粘度3mPa・s)
・IPDI:イソホロンジイソシアネート(異性体混合品)(東京化成工業社製、37.8%NCO、粘度14mPa・s)
【0053】
<芳香族ポリアミン化合物(b)>
・SL-100A:ポリ(テトラメチレン/3-メチルテトラメチレンエーテル)グリコールビス(4-アミノベンゾエート)(クミアイ化学社製「ポレア SL-100A」、アミン価87mgKOH/g、分子量1238、粘度7,500mPa・s)
・250P:ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート(クミアイ化学社製「エラスマー 250P」、アミン価221mgKOH/g、分子量488、粘度205,000mPa・s)
・650P:ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート(クミアイ化学社製「エラスマー 650P」、アミン価126mgKOH/g、分子量888、粘度8,000mPa・s)
・1000P:ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート(クミアイ化学社製「エラスマー 1000P」、アミン価84mgKOH/g、分子量1238、粘度6,000mPa・s)
・HMBA:下記の方法で合成したヘプタメチレン-1,7-ビス(4-アミノベンズアミド)(アミン価317mgKOH/g、分子量354、粘度100,000mPa・s)
特公昭60-32641号公報の合成例を参考に、ポリテトラメチレングリコールを1,7-へプタメチレンジアミンに変更した以外は同様の操作を行い、ヘプタメチレン-1,7-ビス(4-アミノベンズアミド)を合成した。
【0054】
<その他のアミン化合物>
・DETDA:2,4-または2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエンの混合物(クミアイ化学社製「ハートキュア10」、アミン価629mgKOH/g、分子量178)
・MBCA:4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)の異性体混合物(東京化成社製、アミン価534mgKOH/g、分子量210)
・D-230:O,O′-ビス(2-アミノプロピル)プロピレングリコール(三井化学ファイン社製「ポリエーテルアミン D-230」、アミン価467mgKOH/g、分子量230)
【0055】
<添加剤>
・PFA-250:脂肪酸アマイドワックス(楠本化成社製「ディスパロン PFA-250」)
・1958:フィロケイ酸塩(BYK社製「GARAMITE1958」)
【0056】
各種物性の測定は以下の評価方法で行った。
(1)イソシアネート基含有率(%NCO)
JIS K 7301のジノルマルブチルアミンの塩酸逆滴定法に準じて求めた。
【0057】
(2)アミン価
JIS K 7237の指示薬滴定法に準じて求めた。
【0058】
(3)NCO/NH2の当量比
上記(1)および(2)で求めた、イソシアネート基含有率とアミン価より算出した。
【0059】
(4)粘度
B型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABORATORIES,INC.社製、BROOKFIELD DIAL VISCOMETER Model LVT)を用い、温度25℃における回転粘度(mPa・s)を測定した。
【0060】
(5)可使時間
成分(A)と成分(B)とを、ガラス製容器(100mL容)に入れ、25℃において、均一に見えるまで、金属製の撹拌棒を使用して素早く混合した。その後、上述の粘度の測定方法と同様の操作を行い、混合直後の粘度値から2倍になるまでの時間を求め、これを可使時間とした。可使時間は、以下の基準で判定した。
4:可使時間が30分以上、120分以下
3:可使時間が20分以上、30分未満、または120分を超え、180分以下
2:可使時間が10分以上、20分未満、または180分を超え、360分以下
1:可使時間が10分未満、または360分を超える
実用上、可使時間は「2」以上の評価が必要であり、「3」以上であることがより好ましい。
【0061】
(6)チクソインデックス(TI値)
BROOKFIELD社製B型粘度計「DV-I」を用いて、スピンドル回転速度6rpmでポリウレア樹脂組成物の粘度を測定した。次に、同組成のポリウレア樹脂を新たに調製し、スピンドル回転速度0.3rpmでポリウレア樹脂組成物の粘度を測定した。下記計算式により、TI値を算出した。
(スピンドル回転速度0.3rpmのときの粘度)÷(スピンドル回転速度6rpmのときの粘度)
なお、「-」は可使時間が短すぎて測定できなかったことを表す。
【0062】
(7)塗膜の表面均一性
JIS K 5400に基づくレベリング評価と、気泡の有無を目視で評価した。
(レベリング評価)
成分(A)と成分(B)とを、ガラス製容器(100mL容)に入れ、25℃において、均一に見えるまで、金属製の撹拌棒を使用して素早く混合した。これを200×100×2mmのガラス板に広げ、試験板にレベリングテスター(すきま寸法4mm)を押し付けながら均等な速さで移動させた。25℃24時間で硬化させたのちに、レベリングテスターによって作られた塗膜の凹凸が見本品と同等かそれより小さい場合に「1」、そうでない場合は「0」とした。また、可使時間が短すぎ、試験前に硬化したため評価できない場合は「-」とした。なお、見本品は実施例1で作製した硬化物とした。
(気泡の有無)
成分(A)と成分(B)とを、ガラス製容器(100mL容)に入れ、25℃において、均一に見えるまで、金属製の撹拌棒を使用して素早く混合した。これを200×100×2mmのガラス板に広げ、25℃24時間で硬化させた。得られた硬化物の気泡の有無を、以下の基準で目視で評価した。
4:気泡が確認できない、もしくは微細な気泡により塗膜がわずかに濁る
3:微細な気泡により塗膜の濁りが確認できる
2:目視で気泡の存在が確認できるが、塗膜の厚みは均一なままである
1:気泡によるクレーターが表面に存在し、均一な厚みとならない
-:可使時間が短すぎ、試験前に硬化したため評価できない
実用上、「2」以上の評価が必要であり、「3」以上であることがより好ましい。
【0063】
(8)壁面塗工性(たるみ性)
JIS K 5551に基づいて、たるみ性により壁面塗工性を評価した。
サグテスター(塗膜厚み100、200、300、400、500μm)を用いて塗料組成物を200mm×150mmの金属板に塗布し、ただちに塗膜の厚い方を下に、サグテスターの軌跡線が水平になるように金属板を鉛直に立て、硬化させた。液の流れ(たるみ)が観測されない厚みを以下の基準で評価した。
1:軌跡線は塗膜厚み200μm以下でもたるみが生じた
2:軌跡線は塗膜厚み200μmまではたるみが生じず、300μmではたるみが生じた
3:軌跡線は塗膜厚み300μmまではたるみが生じず、400μmではたるみが生じた
4:軌跡線は塗膜厚み400μmまではたるみが生じず、500μmではたるみが生じた
5:軌跡線は塗膜厚み500μmでもたるみが生じなかった
実用上、「2」以上の評価が必要であり、「3」以上の評価であることがより好ましい。
なお、「-」は可使時間が短すぎて測定できなかったことを表す。
【0064】
(9)引張強度および破断時伸び
ポリウレア樹脂組成物を30cm×30cmの金枠に流し込み、25℃24時間で硬化させ、厚さ1mmの硬化物を得た。これを試験片打ち抜き刃で打ち抜き、JIS K7139に定めるダンベル形引張試験片(タイプA1)を得た。この試験片を、インテスコ社製万能試験機を用いて23℃、試験速度5mm/分、チャック間距離115mmの条件で引張強度と破断時伸びを求めた。評価は以下の基準で行った。
(引張強度)
4:30MPa以上
3:20MPa以上、30MPa未満
2:10MPa以上、20MPa未満
1:10MPa未満
(破断時伸び)
3:5%以上
2:3%以上、5%未満
1:3%未満
実用上、「2」以上の評価が必要である。
【0065】
(10)耐酸性
ポリウレア樹脂組成物をベーカー式アプリケーターにて金属板に厚みが1mmになるよう塗工し、25℃24時間で硬化させた。その後、硬化物を金属板から剥離し、20mm×20mm×1mmに切り出して試験片とし、10質量%の硫酸水溶液に25℃で60日浸漬した。その後、試験片にふくれ、割れ、軟化、溶出がいずれも発生していない場合を「1」、いずれか1つ以上が発生した場合を「0」とした。
【0066】
(11)耐有機酸性
上記(10)と同様にして得た試験片を、5質量%の酢酸水溶液に25℃で60日浸漬した。その後、試験片にふくれ、割れ、軟化、溶出がいずれも発生していない場合を「1」、いずれか1つ以上が発生した場合を「0」とした。
【0067】
(12)耐アルカリ性
上記(10)と同様にして得た試験片を、水酸化カルシウムの飽和水溶液に25℃で60日浸漬した。その後、試験片にふくれ、割れ、軟化、溶出がいずれも発生していない場合を「1」、いずれか1つ以上が発生した場合を「0」とした。
【0068】
(13)耐黄変性
ポリウレア樹脂組成物をベーカー式アプリケーターにて厚みが1mmになるようコンクリートブロック上に塗工し、25℃24時間で硬化させた。その後、JIS K 5600-7-7のキセノンランプ法によって、促進耐候性および促進耐光性試験を行った(放射強度60W/m、波長300~400nm、サイクルA、300時間)。試験前後の試験片を確認し、黄変が確認できなかった場合を「1」、黄変が確認された場合を「0」とした。
【0069】
実施例1
ポリイソシアネート化合物(a)がHDIである成分(A)と、芳香族ポリアミン化合物(b)がSL-100Aである成分(B)とを、当量比(NCO/NH2)が1.05になるように、均一な外観となるまで、25℃で金属製の撹拌棒を使用して混合した。
その後、得られたポリウレア樹脂組成物を、上述の評価試験に記載の方法で基材に塗布し、硬化させて塗膜を得た。
【0070】
実施例2~23、比較例1~6
表1、3に記載の構成になるように、成分(A)と成分(B)とをそれぞれ調製した以外は、実施例1と同様にして、成分(A)と成分(B)とを混合し、ポリウレア樹脂組成物と塗膜を得た。
【0071】
実施例24~28
表3に記載の含有量となるように、添加剤としてのPFA-250、1958を混合した以外は、実施例3と同様にして、ポリウレア樹脂組成物と塗膜を得た。
【0072】
実施例、比較例におけるポリウレア樹脂組成物製造原料の構成と、得られたポリウレア樹脂組成物の特性を表1~4に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
実施例のポリウレア樹脂組成物は、可使時間が長く、手作業での塗工作業が可能なものであった。また、塗膜とした場合の表面が均一であった。ポリウレア樹脂組成物を構成する脂肪族ポリイソシアネート化合物がヘキサメチレンジイソシアネート、またはイソシアネート化合物の変性体であると、得られる塗膜は、塗膜とした場合の均一性や各種物性によりいっそう優れていた。
ポリウレア樹脂組成物を構成するポリイソシアネート化合物が脂肪族ポリイソシアネート化合物を含有しないか、脂肪族ポリイソシアネート化合物の含有量が少ない比較例1~3、また、ポリウレア樹脂組成物が芳香族ポリアミン化合物を含有しない比較例4~6では、可使時間が短く、手作業での塗工作業が困難である場合があり、得られた塗膜は、耐酸性、耐有機酸性、耐アルカリ性、耐黄変性等の特性をすべて満足できるものではなかった。
【要約】
ポリイソシアネート化合物(a)を含有する成分(A)と、芳香族ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを含有する2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料であって、成分(A)と成分(B)とを混合した直後に、有機溶媒を含有しない状態で測定された粘度値が2倍になるまでの可使時間が10分以上であることを特徴とする2成分混合型ポリウレア樹脂組成物製造原料。