(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ロープガイド機構およびロープホイスト
(51)【国際特許分類】
B66D 1/38 20060101AFI20240229BHJP
B66D 3/20 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B66D1/38 B
B66D3/20 A
(21)【出願番号】P 2020568038
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019050900
(87)【国際公開番号】W WO2020153088
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2019008552
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三井 博貴
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特許第6265846(JP,B2)
【文献】実開昭62-056591(JP,U)
【文献】特開2011-157171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00-5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に一定リード角で形成されている螺旋状のロープ溝を有するロープドラムに巻き取られたワイヤロープの乱巻きを防止するロープガイド機構であって、
前記ロープ溝に螺合すると共に、前記ロープ溝に摺動する第1突条摺動面を備える第1突条が内周側に形成されている第1摺動部材と、
前記第1摺動部材と接続されてリング状のリング部材を形成し、前記ロープ溝に螺合すると共に、前記ロープ溝に摺動する第2突条摺動面を備える第2突条が内周側に形成されている第2摺動部材と、
連結部を備え、当該連結部を介して前記第1摺動部材に取り付けられて前記ワイヤロープが前記ロープドラムから引き出されるガイド開口部を形成すると共に、前記ロープドラムに巻き取られた前記ワイヤロープを外周方向から押さえ込むガイド部材と、
前記リング部材の回転を不能にする回転規制部材と、
前記リング部材に設けられていると共に、前記ロープ溝に巻き取った前記ワイヤロープの緩みを抑えるロープ緩み抑制部材と、
を備え、
前記第1摺動部材には
、前記ワイヤロープが前記ロープ溝から横ずれするのを抑えるロープ規制部が
、前記第1突条を形成すると共に前記ガイド開口部の周方向端部側の位置の突条形成部から、前記ロープ溝に巻き取った直後の前記ワイヤロープが位置する側に突出しつつ前記連結部と隣接して設けられている、
ことを特徴とするロープガイド機構。
【請求項2】
請求項1記載のロープガイド機構であって、
前記第1突条および前記第2突条が前記ロープ溝に螺合しているときに前記ロープドラムの中心線を含む平面で前記ロープ規制部を切断した切断面においては、前記ロープ規制部と前記ロープ溝に巻き取ったワイヤロープの間の距離は、隣り合う前記ロープ溝の配置間隔であるピッチから前記ワイヤロープのロープ径を減算した値以下である、
ことを特徴とするロープガイド機構。
【請求項3】
請求項1または2記載のロープガイド機構であって、
前記第1摺動部材に前記第1突条を形成する突条形成部が設けられていて、
前記第1突条および前記第2突条が前記ロープ溝に螺合しているときに、前記ロープ規制部は、前記ロープ溝への前記ワイヤロープの入り込みを妨げない状態で前記突条形成部より前記ロープ溝に巻き取った前記ワイヤロープに向かって突出している、
ことを特徴とするロープガイド機構。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のロープガイド機構であって、
前記ロープ規制部は、前記ロープドラムの軸方向と直交する径方向に対して傾斜した傾斜面を有していて、
前記第1突条および前記第2突条が前記ロープ溝に螺合しているときに、前記傾斜面は前記ロープ溝に巻き取られた前記ワイヤロープを挟んで前記ロープ溝に対向する、
ことを特徴とするロープガイド機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のロープガイド機構を用いることを特徴とするロープホイスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等の巻上機に用いられるロープホイストのロープガイド機構およびロープホイストに関する。
【背景技術】
【0002】
ロープホイストが備えるロープガイド機構としては、たとえば特許文献1に示すものが存在する。特許文献1には、同一形状の第1摺動部材と第2摺動部材とを用い、それらの一端接続部と他端接続部とが結合手段で結合された構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の
図11~
図13に示すように、ガイド開口部のうちワイヤロープが引き出される部位の近傍では、突条は、凸形状(山形状)の半分かそれ以下の寸法で切断されている。したがって、ロープドラムのドラム溝に入り込んでいるワイヤが、鉛直方向に対して斜め方向かつ突条に向かう方向に延出した状態で巻き取られる場合、ロープ溝の山部分にワイヤロープが乗り上げてしまう虞がある。そのようなワイヤロープの乗り上げが発生した場合、ロープガイド機構の破損の原因となる。
【0005】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、ワイヤロープをロープドラムに巻き取る際にワイヤロープがロープ溝間の頂部に乗り上げるのを抑制することでロープガイド機構の破損を防止可能なロープガイド機構およびロープホイストを提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、外周に一定リード角で形成されている螺旋状のロープ溝を有するロープドラムに巻き取られたワイヤロープの乱巻きを防止するロープガイド機構であって、ロープ溝に螺合すると共に、ロープ溝に摺動する第1突条摺動面を備える第1突条が内周側に形成されている第1摺動部材と、第1摺動部材と接続されてリング状のリング部材を形成し、ロープ溝に螺合すると共に、ロープ溝に摺動する第2突条摺動面を備える第2突条が内周側に形成されている第2摺動部材と、リング部材の回転を不能にする回転規制部材と、リング部材に設けられていると共に、ロープ溝に巻き取ったワイヤロープの緩みを抑えるロープ緩み抑制部材と、を備え、第1摺動部材には、ロープ溝に巻き取ったワイヤロープがロープ溝から横ずれするのを抑えるロープ規制部が設けられている、ことを特徴とするロープガイド機構が提供される。
【0007】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、第1突条および第2突条がロープ溝に螺合しているときにロープドラムの中心線を含む平面でロープ規制部を切断した切断面においては、ロープ規制部とロープ溝に巻き取ったワイヤロープの間の距離は、隣り合うロープ溝の配置間隔であるピッチからワイヤロープのロープ径を減算した値以下である、ことが好ましい。
【0008】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、第1摺動部材に第1突条を形成する突条形成部が設けられていて、第1突条および第2突条がロープ溝に螺合しているときに、ロープ規制部は、ロープ溝へのワイヤロープの入り込みを妨げない状態で突条形成部よりロープ溝に巻き取ったワイヤロープに向かって突出している、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、ロープ規制部は、ロープドラムの軸方向と直交する径方向に対して傾斜した傾斜面を有していて、第1突条および第2突条がロープ溝に螺合しているときに、傾斜面はロープ溝に巻き取られたワイヤロープを挟んでロープ溝に対向する、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の各発明に係るロープガイド機構を用いたロープホイストであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ワイヤロープをロープドラムに巻き取る際にワイヤロープが突条側へ移動するのを抑制することでロープガイド機構の破損を防止可能なロープガイド機構およびロープホイストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る正面側から見たときのロープホイストの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のロープホイストを前側から見たときの構成を示す正面図である。
【
図3】
図1のロープホイストにおけるロープドラムの構成を示す側面図であり、ロープドラム付近およびドラム用モータ付近を断面で示している。
【
図4】
図1のロープホイストにおけるロープガイド機構付近を示すためのロープドラムの部分的な側面図である。
【
図5】
図1のロープホイストにおけるロープガイド機構の構成を示す斜視図である。
【
図6】
図5のロープガイド機構の構成を示す分解斜視図である。
【
図7】
図5のロープガイド機構におけるリング部材を構成する2つの摺動部材を示す斜視図である。
【
図8】
図5のロープガイド機構におけるロープドラムのロープ溝と突条の形状を示す断面図であり、ワイヤロープがロープ溝から離れ出す直前の部位における断面を示す図である。
【
図9】
図5のロープガイド機構のガイド開口部付近の構成を示す断面図である。
【
図10】比較例に係るロープガイド機構におけるロープ溝と突条の形状を示す断面図であり、ワイヤロープがロープ溝から離れ出す直前の部位における断面を示す図である。
【
図11】比較例に係るロープガイド機構におけるロープ溝と突条の形状を示す断面図であり、ワイヤロープが頂部に乗り上がった状態を示す図である。
【
図12】比較例に係るロープガイド機構におけるロープ溝と突条の形状を示す断面図であり、ワイヤロープが溝飛びした状態を示す図である。
【
図13】本発明の変形例に係るロープ規制部を示す断面図である。
【
図14】本発明の変形例に係るロープ規制部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係るロープホイスト10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じてXYZ直交座標系を用いて説明することとする。XYZ直交座標系においてX方向とはロープドラム110の軸方向を指し、X2側とはロープホイスト10の長手方向のうちドラム用モータ120および横行用モータ32が位置する側(前側)を指し、X1側とはそれとは逆のドラム用モータ120および横行用モータ32が位置する側とは反対側(後側)を指す。Z方向とは鉛直方向を指し、Z1側とは上方側(すなわちフックブロック60から見てレールRが位置する側)を指し、Z2側とはそれとは逆の下側を指す。また、Y方向とはX方向およびZ方向に直交する方向(レールRの幅方向)を指し、Y1側とはロープドラム機構100から見てトロリ機構30が位置する側を指し、Y2側とはそれとは逆側を指す。本実施の形態では、ロープドラム110のX2側の外周端部に、巻き取るワイヤロープWの端末を固定し、ロープドラム110を正逆回転させることで、ワイヤロープWの巻き上げ・巻き下げ(巻き取り・巻き戻し)を行う。
【0014】
<1.ロープホイスト10の全体構成について>
図1は、正面側から見たときのロープホイスト10の全体構成を示す斜視図である。
図2は、前側から見たときのロープホイスト10の構成を示す正面図である。
【0015】
図1および
図2に示すように、ロープホイスト10は、フレーム構造20と、トロリ機構30と、中間シーブ体40と、ロープ固定部材50と、フックブロック60と、カウンタウェイト70と、制御部80と、制動抵抗器90と、ロープドラム機構100とを備えている。
【0016】
フレーム構造20は、一対の前後フレーム21と、連結バー22と、その他の各フレーム部分を有していて、これらによってロープホイスト10の全体が支持される。前後フレーム21は、レールRの延伸方向(X方向)を長手として延伸するフレームであり、レールRを挟んで左右(Y1側とY2側)にそれぞれ設けられている。
【0017】
また、フレーム構造20は、連結バー22を有している。連結バー22は、幅方向(Y方向)に沿って延伸する部分である。連結バー22は、前後フレーム21の差込孔21aに、
図1等に示すようなマウント部材23を介して差し込まれることで、前後フレーム21に取り付けられる。なお、連結バー22の他端側(Y2側)には、一対の前後フレーム21のうち他方の前後フレーム21が固定されている。また、連結バー22の中途部分には、一方側の前後フレーム21が固定されていて、さらに連結バー22の一端側(Y1側)には、カウンタウェイト70が固定されている。
【0018】
また、ロープホイスト10は、トロリ機構30を有している。トロリ機構30は、フレーム構造20の前後フレーム21に取り付けられている複数の(
図1では合計4つの)車輪31と、横行用モータ32とを備えている。車輪31は、レールRのフランジ部R1に乗架されている。そのため、横行用モータ32の作動によって車輪31が駆動されることで、ロープホイスト10がレールRに沿って移動可能となっている。なお、横行用モータ32は、幅方向の一方側(Y1側)に位置する前後フレーム21に取り付けられている。
【0019】
また、ロープホイスト10のフレーム構造20には、中間シーブ体40が取り付けられている。中間シーブ体40は、ワイヤロープWが掛けられる中間シーブ(滑車;図示省略)を備えている。かかる中間シーブの存在により、中間シーブ体40は、後述するフックブロック60の隣り合うフックシーブの間でワイヤロープWを中継することを可能としている。
【0020】
また、ロープホイスト10のフレーム構造20には、ロープ固定部材50が取り付けられている。ロープ固定部材50は、ワイヤロープWの一端側を留めるための部材である。なお、ワイヤロープWの他端側は、後述するロープ押さえ金具112を用いてロープドラム110に固定されている。かかるロープ固定部材50とロープ押さえ金具112でワイヤロープWの端部をそれぞれ固定していることにより、ロープドラム110の回転に伴ってワイヤロープWをロープドラム110から送り出してフックブロック60を下降させたり、ワイヤロープWをロープドラム110に巻き取ってフックブロック60を上昇させる。
【0021】
また、
図1および
図2に示すように、ロープホイスト10は、フックブロック60を備えている。フックブロック60は、ワイヤロープWの一端側と他端側の間の中途部分に吊り下げられている。このフックブロック60は、図示を省略する一対のフックシーブ(滑車)を備えていて、そのフックシーブにワイヤロープWが掛け回されている。また、フックブロック60は、荷を掛ける部分であるフック61を備えている。
【0022】
また、ロープホイスト10には、例えば厚肉の鋼材等から構成されるカウンタウェイト70が設けられている。カウンタウェイト70は、ロープホイスト10の幅方向(Y方向)におけるバランスを取るために設けられている。すなわち、ロープホイスト10の幅方向(Y方向)の他端側(Y2側)には、ロープドラム機構100が設けられていて、その重量は比較的大きなものとなっている。かかるロープドラム機構100との重量バランスを取るために、連結バー22の幅方向(Y方向)の一端側(Y1側)には、カウンタウェイト70が連結されている。
【0023】
また、ロープホイスト10には、制御部80が設けられている。制御部80は、ドラム用モータ120や横行用モータ32等を始めとして、ロープホイスト10の駆動を制御する部分である。そのため、制御部80には、これらの制御を実行するための制御機器が内部に配置されている。また、制御部80には、制動抵抗器90に電流を流す際の制御を行うための制動回路も設けられている。
【0024】
また、ロープホイスト10には、制動抵抗器90が設けられている。制動抵抗器90は、ドラム用モータ120をインバータ制御するために設けられており、ドラム用モータ120を下降運転(巻き下げ運転)する際に、回生制動能力を発揮させることを可能としている。この制動抵抗器90は抵抗体(図示省略)を備え、その抵抗体にドラム用モータ120が巻き下げ運転によって発電した電気エネルギを流すことで、電気エネルギを熱に変換して放出する。
【0025】
<2.ロープドラム機構100について>
次に、ロープドラム機構100について説明する。
図1および
図2に示すように、ロープドラム機構100は、ロープドラム110と、ドラム用モータ120と、減速機構130と、ロープガイド機構140とを主要な構成要素としている。
【0026】
図3は、ロープドラム110の構成を示す側面図であり、ロープドラム110付近およびドラム用モータ120付近を断面で示している。
図3に示すように、ロープドラム110は、ワイヤロープWを巻き取るドラム状の部材であり、その外周側には、ワイヤロープWを一重に整列して巻き取るための凹溝状のロープ溝111が形成されている。ロープ溝111は、ロープドラム110の外周に一定リード角(等ピッチ)の螺旋状に形成されていて、ワイヤロープWのロープ径に対応して形成されている。
【0027】
なお、ロープドラム110の一端側(前側;X2側)には、ワイヤロープWの一端側を固定するためのロープ押さえ金具112が取り付けられる。ロープ押さえ金具112は、ワイヤロープWを位置させる凹部112aを備え、その凹部112aにワイヤロープWを位置させた状態で、締結手段であるネジ112bをロープドラム110に強固に捻じ込む。それにより、ワイヤロープWの一端側がロープドラム110に固定される。
【0028】
また、ロープドラム110の一端側(前側;X2側)および他端側(後側;X1側)には、それぞれ軸支部113,114が取り付けられている。
図3に示すように、一端側(前側;X2側)の軸支部113には、たとえばスプライン結合によってドラム回転軸115が連結されている。このドラム回転軸115は、一対のギヤハウジング116a,116bに対し軸受としてのベアリング117a,117bを介して取り付けられている。
【0029】
また、ロープドラム110の他端側(後側;X1側)の軸支部114のうち、径方向中央側の環状凸部114aには、ベアリング114bが取り付けられ、そのベアリング114bの外周側は、取付フレーム118に取り付けられる。それにより、ロープドラム110の他端側も、回転自在に支持される。なお、
図1等に示すように、ロープドラム110は、カバーフレーム(図示省略)によって上方側が覆われている。
【0030】
また、
図3に示すように、ギヤハウジング116a,116bには、ドラム用モータ120が取り付けられている。ドラム用モータ120は、ロープドラム110を回転させる駆動力を与えるものである。このドラム用モータ120の出力軸121には、減速機構130を構成するピニオンギヤ131が取り付けられていて、そのピニオンギヤ131の駆動力は、ギヤ輪列132を介してドラム回転軸115に伝達される。なお、出力軸121もギヤハウジング116a,116bに対し軸受としてのベアリング122a,122bを介して取り付けられている。
【0031】
<3.ロープガイド機構140について>
図4は、ロープガイド機構140付近を示すためのロープドラム110の部分的な側面図である。
図5は、ロープガイド機構140の構成を示す斜視図である。
図6は、ロープガイド機構140の構成を示す分解斜視図である。
【0032】
ロープガイド機構140は、ワイヤロープWの巻き取り動作を行うにつれて、軸方向(X方向)に移動する機構である。また、ロープガイド機構140は、ロープドラム110に巻き取られたワイヤロープWがロープ溝111から緩んで、ワイヤロープWの乱巻きが生じるのを防止する機構である。以下、このロープガイド機構140の構成の詳細について、以下に説明する。
【0033】
<3-1.ロープガイド機構140の全体的な構成について>
図3から
図5に示すように、ロープガイド機構140は、ロープドラム110に巻き取られたワイヤロープWの緩みを防止するため、ロープドラム110の回転に伴い、案内軸Gによりロープドラム110と供回りすることなくガイドされつつ、ロープドラム110の螺旋状のロープ溝111にリング部材150を構成する摺動部材160,170が螺合している。そのため、ワイヤロープWの巻き取り位置の移動に追従して軸方向(前後方向;X方向)に移動する部材である。このロープガイド機構140は、移動する巻き取り部分(巻き取り直後の部分)のワイヤロープWの緩みを、ワイヤロープWを外周方向から押さえ込むことで、その緩みを抑制する部材である。
【0034】
なお、案内軸Gは、たとえば上述したギヤハウジング116aおよび取付フレーム118によって支持されていて、ロープガイド機構140の摺動を良好にガイド可能としている。案内軸Gは、たとえば3つ等、複数設けられている。また、複数の案内軸Gがギヤハウジング116bおよび取付フレーム118に取り付けられることにより、これらがロープドラム110を支持するドラム支持構造を構成する。
【0035】
図5および
図6に示すように、ロープガイド機構140は、リング部材150と、ガイド部材180と、スペーサ190と、押圧ローラ体200とを主要な構成要素としている。押圧ローラ体200は、ロープ溝111に対し、ロープドラム110に巻き取られたワイヤロープWを外周方向から押圧し、それによってロープドラム110において巻き取ったワイヤロープWの緩みを抑制し、ワイヤロープWの乱巻きを防止するものである。この押圧ローラ体200は、ロープドラム110の巻取り直後のワイヤロープWを押圧するため、ワイヤロープWの巻き取り位置の移動に追従するように構成されている。なお、押圧ローラ体200は、後述するロープガイド部163,173と共に、或いは単独でロープ緩み抑制部材に対応する。
【0036】
また、リング部材150は、押圧ローラ体200、ガイド部材180と共に、ワイヤロープWの緩みを拡大しないようにワイヤロープWの位置を規制し、それによってワイヤロープWの乱巻きを防止する部材である。また、リング部材150は、ロープガイド機構140自身をワイヤロープWの巻き取り位置の移動に追従させる機能も有しており、押圧ローラ体200と共に巻き取り直後のワイヤロープWの緩みを抑制することで、ワイヤロープWの乱巻きを防止している。
【0037】
図5および
図6に示すように、リング部材150は、2つの半周状の摺動部材160,170を接続することにより、リング状に形成されている。これら2つの摺動部材160,170のうち、一方の摺動部材160には、円弧状のガイド部材180が取り付けられている。ガイド部材180は、ワイヤロープWが緩まないようにロープドラム110に巻き取られたワイヤロープWを外周方向から押さえ込む部材である。そして、摺動部材160とガイド部材180の間には、ワイヤロープWがロープドラム110から引き出されるガイド開口部141が設けられている。なお、ガイド開口部141は、ロープドラム110に巻き取るワイヤロープWをロープ溝111にガイドしつつ案内するための開口部分であり、ワイヤロープWの巻き取り・巻き戻しの支障とならないように長孔の開口形状に設けられている。また、摺動部材160とガイド部材180によりガイド開口部141の周囲が形成されている。ここで、摺動部材160からガイド部材180を取り外し可能とすることにより、ワイヤロープWからリング部材150を取り外し可能となることから、ガイド部材の点検・交換を容易にしている。また、同様の理由でリング部材150を2つの摺動部材160、170に分割できるようにしている。なお、摺動部材160,170およびガイド部材180は、たとえば樹脂を材質とした射出形成によって形成されている。
【0038】
<3-2.ガイド部材180について>
図5および
図6に示すように、ガイド部材180は、摺動部材160のうち、後述する突条形成部161に対して図を省略するボルトやナット等を介して取り付けられている。このガイド部材180には、円弧状部181と、連結部182と、軸係合部183とが設けられている。円弧状部181は、ロープドラム110の外周に倣うように円弧状に設けられている。また、連結部182は、円弧状部181の両端側に位置すると共に、突条形成部161に当接する部分である。かかる突条形成部161への当接を可能とするため、連結部182は、円弧状部181よりも幅方向(X方向)の寸法が大きく設けられている。なお、連結部182は、ロープドラム110のロープ溝111に巻き取られたワイヤロープWに外周方向から対向する面である内周面PS1を有していて、ワイヤロープWの緩みによる乱巻きを防止している(
図8等参照)。
【0039】
また、軸係合部183は、湾曲したフック形状に設けられていて、その湾曲の内側である凹部183aにおいて案内軸Gに接触している。かかる凹部183aに案内軸Gが嵌まることにより、ロープドラム110の回転につれて供回りするのを防止し、かつロープガイド機構140が前後方向(X方向)に良好に移動可能となる。回転規制部材に対応する軸係合部183は、ガイド部材180ではなくリング部材150に設けても良い。しかしながら、ガイド部材180に軸係合部183を設けることで、ガイド部材180をリング部材150から取り外すと、ワイヤロープWと軸係合部183との係合も解除され、かつ、軸係合部183が案内軸Gに係合していることで回転が規制されていたリング部材150の回転規制も解除される。それにより、リング部材150の点検・交換が容易となっている。なお、回転規制部材には、軸係合部183と共に案内軸Gが対応するものとしても良い。
【0040】
また、円弧状部181には、後述するガイド斜面164と同様のガイド斜面184が設けられている。なお、ガイド斜面184の詳細については、後述するガイド斜面164の部分で説明する。
【0041】
<3-3.摺動部材160,170について>
再び摺動部材160,170について説明する。なお、摺動部材160は第1摺動部材に対応すると共に、摺動部材170は第2摺動部材に対応する。
図7は、リング部材150を構成する2つの摺動部材160,170を示す斜視図である。
図5から
図7に示すように、摺動部材160には、突条形成部161と、ロープガイド部163とが設けられている。また、摺動部材170にも、摺動部材160と同様に、突条形成部171と、ロープガイド部173とが設けられている。突条形成部161,171は、その内周側に突条162、172を形成している部分である。そのため、突条形成部161,171の径方向における寸法(外径と内径の差)は、ロープガイド部163,173よりも大きく設けられている。
【0042】
図8は、本実施の形態のロープ溝111と突条162,172の形状を示す断面図であり、ワイヤロープWがロープ溝111から離れ出す直前の部位における断面を示す図である。
図5から
図8に示すように、突条形成部161,171の内周側には、ロープドラム110のロープ溝111に嵌まりつつ突条摺動面162a,172aで摺動する突条162,172が設けられている。上述のようにロープドラム110のロープ溝111は螺旋状に形成されている。したがって、ロープ溝111に良好に嵌め込まれる突条162,172も、ロープ溝111の螺旋軌道に沿って(それぞれ螺旋軌道の一部をなすように)形成され、摺動部材160,170を連結してリング部材150を形成したときに、ロープ溝111に螺合するように形成されている。
【0043】
なお、突条162は第1突条に対応し、突条172は第2突条に対応する。また、突条摺動面162aは第1突条摺動面に対応し、突条摺動面172aは第2突条摺動面に対応する。
【0044】
ここで、突条162,172は、ロープ溝111の断面形状に対応して、略半円状の凸形状に設けられている。本実施の形態では、ロープガイド機構140(ロープドラム110)の軸方向(X方向)において、2つの突条162が並ぶように(ロープ溝111の2周分に螺合するように)設けられている。しかも、上記の断面形状が略半円をなす2つの突条162の略半円の円弧部分は、軸方向(X方向)の中途で切断されずに、略半円状の終端部である突条形成部161の内周面側にまで到達している。なお、
図8に示すように、上記の略半円状の終端部は、隣り合うロープ溝111の間の頂部111bと若干離れるように(頂部111bよりもロープドラム110の外径側に)位置している。
【0045】
しかしながら、突条162の周方向における一部分において、その突条162の略半円の円弧部分は中途で切断されていても良い。なお、
図8に示す構成では、突条172の一部分は、略半円の円弧部分の中途で切断されている。
【0046】
また、
図5から
図8に示すように、摺動部材160,170には、ロープガイド部163,173が設けられている。ロープガイド部163,173は、突条形成部161,171から軸方向(X方向)の一方側(X2側)に突出している部分である。このロープガイド部163,173は、突条162,172の近傍に位置すると共にロープ溝111に巻き付いているワイヤロープWが、外径側に移動することで、ロープ溝111へのワイヤロープWの巻き付けが緩むのを抑えるための部材である。詳述すると、ガイド部材180の内周面PS1は、ロープ溝111と対向している。この内周面PS1は、摺動部材160,170の径方向において、ロープ溝111の底部111a(ロープ溝111の最も深い部位)からワイヤロープWのロープ径に若干の余裕分を加えた距離だけ離間している。しかも、隣り合うロープ溝111の間に位置する頂部111bと、内周面PS1の間の距離は、ワイヤロープWのロープ径(直径)よりも小さく設けられている。それにより、押圧ローラ体200で抑制しきれなかったワイヤロープWのロープドラム110への巻き付きの緩み(ロープ溝111に対するワイヤロープWの周方向の移動)によってワイヤロープWがロープ溝111の底部111aから離れても、ワイヤロープWが頂部111bを乗り越えられないようにして、ロープ溝111からワイヤロープWが外れるのを防止している。
【0047】
内周面PS1と頂部111bの間の距離が、このような間隔に設定されていることにより、ワイヤロープWがロープ溝111から外径側に移動してロープ溝111から外れるのを防止している。また、内周面PS1と頂部111bの間の距離が、上記のような間隔に設定されることで、ロープドラム110に巻き取られたワイヤロープWが何らかの拍子に緩んだ際に、その緩みを所定の範囲内に抑えることができる。それにより、緩んだワイヤロープWが乱巻きされるのを防止可能となっている。
【0048】
なお、ロープガイド部163,173は、複数巻き分(たとえば、
図8では3巻き分のワイヤロープW)のワイヤロープWの巻いたもの(巻き)が外径側に膨らむのを抑えるように構成されている。しかしながら、複数巻き分ではなく一巻き分のワイヤロープWの巻きが外径側に膨らむのを抑えるようにしても良い。なお、ロープガイド部163,173は、押圧ローラ体200と共に、或いは単独でロープ緩み抑制部材に対応する。
【0049】
ここで、ロープガイド部163は、摺動部材160の周方向においてガイド開口部141を挟み込むように設けられているので、一対のロープガイド部163の間に、ガイド開口部141が存在する状態となっている。また、ロープガイド部173は、摺動部材170の周方向の両端側に設けられている。したがって、一対のロープガイド部173の間の部位は、ロープガイド部173よりも軸方向(X方向)で他方側(X1側)に向かい窪んだ部分となるが、その窪んだ部位には押圧ローラ体200が配置されている。押圧ローラ体200は、ロープドラム110のロープ溝111に巻き取られた直後(巻き取られてから約半周(1/3から2/3周の位置))のワイヤロープWをロープ溝111の底部111aに向かって押圧している。
【0050】
また、突条形成部161は、周方向の他端側(
図7における右側)に位置するロープガイド部163(以下、ロープガイド部163aとする)よりも周方向の他端側に突出し、その突出部分を軸方向に貫くように挿通孔161aが設けられている。なお、摺動部材160の周方向の他端側は、突条形成部161とロープガイド部163aの周方向における寸法の差異により、段違い状に設けられている。
【0051】
また、摺動部材170の周方向の一端側(
図7における左側)に位置するロープガイド部173(ロープガイド部173aとする)には、周方向の一端側に位置する突条形成部171よりも周方向の一端側に突出している部分が存在し、その突出部分を軸方向(X方向)に貫くように挿通孔173a1が設けられている。なお、摺動部材170周方向の一端側は、突条形成部171とロープガイド部173aの周方向における寸法の差異により、段違い状に設けられている。
【0052】
このような突条形成部161の周方向の他端側と、ロープガイド部173aのうち周方向の一端側に突出している部分を重ね合わせ、さらに挿通孔161aと挿通孔173a1にボルトを挿通させ、該ボルトにナットを捻じ込むことで、摺動部材160の他端側と摺動部材170の一端側が固定されている。また、上記の挿通孔161a,173a1(ボルト)を支点として、摺動部材160と摺動部材170とを相対的に回動させることができる。
【0053】
また、
図7に示すように、摺動部材160の周方向の一端側に位置するロープガイド部163(ロープガイド部163bとする)には、突条形成部161の周方向における一端部よりも周方向の一端側に突出している部分が存在する。以下の説明では、この突出している部分を、一端側接続部163cとする。この一端側接続部163cの軸方向における寸法は、該一端側接続部163c以外のロープガイド部163bと突条形成部161との軸方向における合計寸法と同程度に設けられているが、異なる寸法に設けられていても良い。
【0054】
また、摺動部材170の周方向の他端側に位置するロープガイド部173(ロープガイド部173bとする)にも、突条形成部171の周方向における一端部よりも周方向の一端側に突出している部分が存在する。以下の説明では、この突出している部分を、他端側接続部173cとする。他端側接続部173cの軸方向における寸法も、該他端側接続部173c以外のロープガイド部173bと突条形成部171との軸方向における合計寸法と同程度に設けられているが、異なる寸法に設けられていても良い。
【0055】
ここで、一端側接続部163cおよび他端側接続部173cには、それぞれ接続端面163d,173dが設けられている。これら接続端面163d,173dの間には、後述するスペーサ190が所定の枚数分だけ配置される。しかしながら、スペーサ190を接続端面163d,173dの間に配置せずに、互いに直接突き合わせるようにしても良い。
【0056】
また、一端側接続部163cおよび他端側接続部173cには、それぞれ連結孔163e,173eが形成されている。連結孔163e,173eは、それぞれ接続端面163d,173dに露出するように設けられている。また、摺動部材160の他端側と摺動部材170の一端側がボルトやナットで固定されている状態では、連結孔163eの中心軸と連結孔173eの中心軸とは、同一の直線に沿うように形成されている。なお、連結孔163e,173eのうち、接続端面163d,173dとは反対側の端部は、ロープガイド部163b,173bの外周側に露出している。そのため、連結孔163eと連結孔173eとを位置合わせした後にボルトを挿入し、該ボルトにナットを捻じ込むことで、一端側接続部163cと他端側接続部173cとが連結される。
【0057】
<3-4.ガイド斜面164について>
図9は、ロープガイド機構140のガイド開口部141付近の構成を示す断面図である。
図9に示すように、突条形成部161のうち、ガイド開口部141に面する部位には、ガイド斜面164が設けられている。ガイド斜面164は、摺動部材160(ロープガイド機構140)の径方向に対して斜めに傾斜した傾斜面であり、突条162から径方向の外径側に向かうと、軸方向の他方側(X1側;すなわち摺動部材160のうち軸方向(X方向)においてガイド開口部141とは反対側)に向かうように傾斜している。
【0058】
このガイド斜面164にワイヤロープWが接触しない範囲内でワイヤロープWが傾斜しても、ワイヤロープWとガイド斜面164との間には摺動負荷が作用しないので、ロープドラム110に対してワイヤロープWが良好に巻き取られたり、その逆にワイヤロープWがロープドラム110から良好に巻き出される。
【0059】
なお、ガイド斜面164にワイヤロープWが接触する場合でも、ロープドラム110に対してワイヤロープWが巻き取られたり、その逆にワイヤロープWがロープドラム110から巻き出されることは可能である。しかしながら、この場合には、ガイド斜面164とワイヤロープWとが接触する分だけ、ワイヤロープWとガイド斜面164,184の間、および、突条162,172とロープ溝111の間の摺動負荷が増加する。また、摺動負荷の増加で突条162,172の磨耗が増加し、ワイヤロープWがガイド斜面164に接触することで、ガイド斜面164に摩耗が生じる。このため、ガイド斜面164およびガイド斜面184にワイヤロープWが接触しないことが望ましいが、ワイヤロープWに負荷がかかっていない状況では、ガイド斜面164,184にワイヤロープWが接触しても良い程度以上の耐久性は有している。これによって、ロープ点検作業など張力が掛かっていないワイヤロープWの巻き取りでも、ガイド斜面164,184によってワイヤロープWをロープ溝111にガイドして、ワイヤロープWの乱巻きを防止している。
【0060】
このガイド斜面164は、本実施の形態では、現状の摺動部材のガイド斜面よりも鉛直方向(または径方向)に対する傾斜角度θ1が大きく設けられている。具体的には、ガイド斜面164の傾斜角度θ1は、25~35度の範囲内に設けられていて、その傾斜角度θ1の一例としては、たとえば25度とするものがある。このように、ガイド斜面164の傾斜角度θ1を従来のガイド斜面の傾斜角度θ2(後述)よりも大きくすることで、ワイヤロープWが傾斜可能な範囲を拡大している。
【0061】
なお、ガイド部材180の円弧状部181にも、ガイド斜面184が設けられている。ガイド斜面184も、ロープガイド機構140の径方向に対して斜めに傾斜した傾斜面であり、上記の径方向の外径側に向かうと、軸方向の一方側(X2側;すなわち既にロープドラム110にワイヤロープWが巻き取られている側)に向かうように傾斜している。このガイド斜面184の傾斜角度は、上述したガイド斜面164の傾斜角度θ1と同様の傾斜角度としても良いが、傾斜角度θ1より大きくしても良く、それとは逆に傾斜角度θ1より小さくしても良い。
【0062】
<3-5.ロープ規制部165について>
また、
図8に示すように、摺動部材160には、ロープ規制部165が設けられている。ロープ規制部165は、突条形成部161から軸方向(X方向)の一方側(X2側)に向かうように突出している部分である。
図8に示す構成では、ロープ規制部165は、突条形成部161のうち、ガイド開口部141の周方向の端部側に設けられている。したがって、ロープ規制部165は、ガイド部材180の連結部182と隣接して設けられている。このロープ規制部165は、ガイド部材180とロープドラム110の間のガイド空間Pに位置するワイヤロープWが、軸方向(X方向)の他方側(X1側)に移動(横ずれ)しようとする際に、該ワイヤロープWに当接する部分である。
【0063】
そのため、ロープ規制部165は、
図8に示すような切断面においては、ロープドラム110のロープ溝111に巻き取り直後のワイヤロープWと隣接している突条162(X2側の突条)よりも軸方向(X方向)の一方側(X2側)に突出するように設けられている。
【0064】
なお、ロープ規制部165が存在するのは、ロープドラム110のロープ溝111に巻き取り直後のワイヤロープWに対向する部分(巻き始め部分)である。この部位は、上述のように、ガイド開口部141の周方向の端部側であり、
図6から
図8では、ロープガイド部163bが存在しない部位となっているが、ロープ規制部165は、ガイド開口部141の周方向の端部側と共に、突条形成部161のうちロープガイド部163bと連続する境界部分に存在しても良い。また、ロープ規制部165は、突条形成部161のうちロープガイド部163bと連続する境界部分のみに存在しても良い。
【0065】
ここで、従来のロープガイド機構140Hにおける、ロープガイド機構140Hのガイド開口部141H付近の構成を
図10に示す。
図10は、比較例に係るロープガイド機構140Hのガイド開口部141H付近の構成を示す断面図である。なお、
図10においては、比較例に係るロープガイド機構140Hでは、符号にアルファベット「H」を付している。
【0066】
図10に示すように、比較例に係るロープガイド機構140Hでは、摺動部材160Hのガイド斜面164Hが鉛直方向に対してなす傾斜角度θ2は、
図9に示すガイド斜面164よりも大幅に小さく設けられている。具体的には、ガイド斜面164Hの傾斜角度θ2は、8度程度となっている。したがって、ロープガイド機構140Hでは、本実施の形態のロープガイド機構140よりもワイヤロープWが傾斜可能な範囲は狭くなっている。
【0067】
このように、
図9に示すような本実施の形態のロープガイド機構140では、ワイヤロープWが傾斜可能な範囲がロープガイド機構140Hよりも広く、ワイヤロープWが傾斜する傾斜角度を大きくすることができる。したがって、ワイヤロープWは突条162側に移動しようとする力が大きくなる場合がある。このような状態で、荷を巻き上げることは、『斜め引き』と呼ばれているが、誤ってそのような斜め引きの状態で、ワイヤロープWを巻き取ると、ロープ溝111に巻き取り直後のワイヤロープWが、突条162側(これからワイヤロープWが巻き取られるロープ溝111側)にずれてしまう。それにより、
図11に示すように、ロープ溝111間の頂部111bにワイヤロープWが乗り上がる。それにより、ガイド部材180の連結部182及び摺動部材160の一端側接続部163cを外周方向に押し上げるので、ロープガイド機構140の破損の原因となる。または、ワイヤロープWが
図12に示すように正規の位置から溝飛びして、隣のロープ溝111に巻き付く。すると、摺動部材160をX軸の他方向に押圧し、ロープガイド機構140を破損させる原因となる。
【0068】
ワイヤロープWは、正規の巻き取り状態ではロープ溝111のワイヤロープWをロープ溝111の中心に整列させる作用によってワイヤロープWはロープ溝111の中心に巻き付く。しかしながら、ワイヤロープWが緩んだ状態やワイヤロープWを斜め引きする状態でワイヤロープWを巻き取った場合には、ロープ溝111の整列作用だけではワイヤロープWをロープ溝111の中心に巻き取ることができない。そのため、ロープ溝111に直交する横方向にワイヤロープWがずれて巻き付く。一旦、ロープ溝中心からずれて巻き付いたワイヤロープWは、ずれた方向に横ずれし易くなり、ロープ溝111の頂部111bに乗り上がる。これにより、ガイド部材180およびロープガイド部163,173を外側に押し広げることとなり、ガイド部材180およびロープガイド部163,173はこの力に耐え切れず破損または異常磨耗することになる。
【0069】
しかしながら、本実施の形態のロープガイド機構140においては、摺動部材160のうち、周方向の一端側に位置するロープガイド部163bには、ロープ規制部165が設けられている。したがって、ワイヤロープWがロープ溝111の中心から突条162側に横ずれするのが抑制され、それによってワイヤロープWがロープ溝111から隣り合うロープ溝111の間の頂部111bに乗り上げることが抑制される。そのため、ロープ溝111の巻き取り直後の位置に位置するワイヤロープWが、突条162側にずれて突条162とロープ溝111の間にワイヤロープWが入り込むことが防止される。あるいは、ワイヤロープWがロープ溝111に巻き付こうとするか、巻き付いたワイヤロープWが、ロープ溝111から隣り合うロープ溝111の間の頂部111bに乗り上げようとすることで、ガイド部材180およびロープガイド部163,173が外周方向に押し広げられることが防止される。それにより、ロープガイド機構140が破損してしまうのが防止される。
【0070】
なお、隣り合うロープ溝111の間の頂部111bの幅を幅L1とすると、頂部111bのいずれかの位置から径方向の外径側に向かうと、ロープ規制部165の端面に突き当たるように、突条162からロープ規制部165が突出していることが好ましい。すなわち、軸方向(X方向)の一方側(X2側)におけるロープ規制部165の位置は、軸方向(X方向)における頂部111bのいずれかの位置と同じ位置となっている。その場合には、突条162とロープ溝111の間に、ワイヤロープWが入り込んでしまうのを良好に防止可能となる。しかしながら、ロープ規制部165の形態はこれには限られない。
【0071】
たとえば、
図13に示すように、突条162がロープ溝111に嵌まり込んでいるときにロープドラム110の中心線を含む平面で切断した切断面(ロープドラム110の軸方向(X方向)沿う断面図)においては、次のような関係が成り立つものとしても良い。すなわち、突条162の突条摺動面162aの最小半径をR1、ロープ溝111の湾曲面の半径をR2、ワイヤロープWのロープ径をdとする。また、ロープ溝111に巻き取り直後の位置に位置するワイヤロープWに対向する突条形成部161の端面162bと同ワイヤロープWとの間に存在する隙間の寸法(ロープ規制部165とロープ溝111に巻き取ったワイヤロープWの間の隙間である最小距離)をAとする。また、
図13の切断面において隣り合うワイヤロープWの間に存在する隙間の寸法(ワイヤロープW間の距離)をBとする。また、ワイヤロープWとガイド部材180の間の隙間の寸法をSとする。なお、ロープ溝111のピッチ(溝ピッチ)をPとすると、B=P-dの関係が成り立つ。すなわち、ロープ溝111の配置間隔(ピッチ)であるPからワイヤロープWのロープ径dを減算した値が、Bとなっている。
【0072】
ここで、
図13に示す構成では、A≦Bの関係がある。また、A<Sの関係もある。ただし、A≧Sの関係が成り立っていても良い。なお、ロープ溝111の底部111aから頂部111bまでの深さをCとすると、S<Cの関係が成り立っている。ただし、Cとdには、C<d/2の関係も成り立っている。
【0073】
なお、
図13に示す場合、突条162の一方側(X2側)の端面162bがロープ規制部を兼用している。
【0074】
なお、ロープ規制部165は、次のように構成しても良い。
図14は、本発明の変形例に係るロープ規制部165を示す断面図である。
図14に示すロープ規制部165は、傾斜面165bを有している。この傾斜面165bは、摺動部材160(ロープガイド機構140)の径方向に対して斜めに傾斜した面である。また、傾斜面165bには、頂部111bのうち、軸方向(X方向)の他方側(X1側)の端部よりも、軸方向(X方向)の一方側(X2側)に位置する部位が存在している。
図14では、傾斜面165bの一方側(X2側)の端部165b1は、頂部111bよりも軸方向(X方向)の一方側(X2側)に突出している。しかしながら、ワイヤロープWがロープ溝111に入り込んでいる状態では、傾斜面165bはワイヤロープWに接触しない状態に設けられている。
【0075】
このような構成の場合にも、ワイヤロープWが突条162側(X1側)に移動する移動量が低減される。したがって、突条162とロープ溝111の間にワイヤロープWが入り込むことで、ロープガイド機構140が破損してしまうのが防止される。
【0076】
なお、
図8および
図13に例示する実施の形態においては、ロープ規制部165には、ワイヤロープの真横から対向する面が形成されている。これらのロープ規制部165では、巻き取られたワイヤロープWのロープ溝111からの浮き上りを直接的に押えることはできない。しかしながら、
図14に例示する実施の形態においては、傾斜面165bがワイヤロープWを挟んでロープ溝111に対向するように形成されている。このため、
図14に示す構成では、このワイヤロープWの横ずれと共に浮き上りも抑えることが可能となる。これによって、ロープ規制部165および摺動部材160への負担が増加するものの、ガイド部材180への負担は軽減させることが可能となる。
【0077】
<3-6.スペーサ190について>
次に、スペーサ190について説明する。
また、
図5および
図6に示すように、一方の摺動部材160の一端側と、他方の摺動部材170の他端側の間の部位S1には、スペーサ190が配置されている。スペーサ190は、金属を材質とする所定の厚みの板状部材であり、そのスペーサ190の枚数によって、一方の摺動部材160と他方の摺動部材170の間の間隔が調整される。
【0078】
すなわち、一方の摺動部材160と他方の摺動部材170の間の部位S1にスペーサ190が存在しない場合には、スペーサ190が存在する場合よりも一方の摺動部材160と他方の摺動部材170の間の間隔が狭まる。そのため、スペーサ190が部位S1に存在する場合よりも、突条162,172がロープ溝111に深く入り込む。しかしながら、部位S1に存在するスペーサ190の枚数を増やすにつれて、一方の摺動部材160と他方の摺動部材170の間の間隔が広がり、突条162,172がロープ溝111に入り込む深さが浅くなる。
【0079】
なお、摺動部材160,170の回動の支点となる挿通孔161a,171a(ボルト)から周方向に90度離れた部位では、部位S1における摺動部材170の配置枚数により、突条162,172がロープ溝111に入り込む深さが最も大きく変動する。しかしながら、上記の周方向における他の部位でも、摺動部材170の配置枚数により、突条162,172がロープ溝111に入り込む深さが変動する。
【0080】
このように、スペーサ190の配置枚数により、摺動部材160の一端側と摺動部材170の他端側の間では、リング部材150の周方向における間隔が調整可能となる。したがって、突条162,172の摩耗量に応じて、スペーサ190の配置枚数を変更することで、突条162,172とロープ溝111の間のガタ付きを低減することができる。また、ロープドラム110にロープガイド機構140を組み付けた際に、それらの間に組み付け誤差等が生じていても、スペーサ190の配置枚数を変更することで、上記の組み付け誤差を吸収可能となる。
【0081】
ここで、
図6に示すように、スペーサ190にはボルトを挿通させるための一対の切欠部191が設けられている。切欠部191は、上述した連結孔163e,173eと連通する部分であり、これら切欠部191と連結孔163e,173eを位置合わせした後に、ボルトが挿入される。一対の切欠部191は、
図6に示すようなU字状の切欠きのほか,丸穴の切欠き、または、丸穴の切欠きとU字状の切欠きの組み合わせでも良い。
【0082】
<3-7.押圧ローラ体200について>
また、
図5および
図6に示すように、他方の摺動部材170には、押圧ローラ体200が取り付けられている。たとえば、ロープホイスト10において、ワイヤロープWを巻き下げすぎてフックブロック60が床等に着床すると、ワイヤロープWの張力がワイヤロープWの自重だけになる。そこで、ワイヤロープWの張力が小さくなった場合でも、ロープドラム110に巻き付けられたワイヤロープWがロープ溝111から外れないように、押圧ローラ体200はワイヤロープWをロープ溝111に向けて押さえ付け、ワイヤロープWとロープ溝111の間に所定の摩擦力を作用させて、ワイヤロープWのロープ溝111への巻き付けが緩むのを抑制している。
【0083】
この押圧ローラ体200は、一対のローラ支持具201と、ローラ202と、付勢バネ203と、取付軸204を有している。そして、ガイド開口部141を通ってロープ溝111に巻き取ったワイヤロープWをローラ202で押さえることで、そのワイヤロープWが緩むことを抑え、乱巻き状態となるのを防止している。
【0084】
押圧ローラ体200のうち、ローラ支持具201は、それぞれ基底部201aと、一対の対向壁部201bとを有していて、これらが略U字形状をなしている。ただし、一対のローラ支持具201のうちの一方は、ローラ支持具201の他方よりも幅広に設けられていて、一方のローラ支持具201の内側に、他方のローラ支持具201を位置させることを可能としている。そして、これら2つのローラ支持具201は、取付軸204を介して連結されている。
【0085】
それぞれの基底部201aから突出する細片部(符号省略)には、付勢バネ203の端部側がそれぞれ支持されている。そのため、2つの基底部201aの間に付勢バネ203が位置可能なように、基底部201aの長さは、対向壁部201bの長さよりも短く設けられ、それによって2つの基底部201aの間に開口部(符号省略)が形成されている。なお、付勢バネ203は圧縮バネであり、それぞれのローラ202に対してワイヤロープWをロープ溝111に押し付ける向きの付勢力を与えている。
【0086】
また、対向壁部201bには、軸孔201b1が設けられていて、この軸孔201b1によってローラ202の支持軸が回転自在に支持されている。また、対向壁部201bには、2つのローラ支持具201を連結するための連結孔201b2も設けられている。そして、外側に位置するローラ支持具201の連結孔201b2と、内側に位置するローラ支持具201との連結孔201b2を位置合わせし、これらの連結孔201b2に取付軸204を挿通させる。また、取付軸204は、他方の摺動部材170の突条形成部171と連結される。それにより、ローラ支持具201が、取付軸204を介して他方の摺動部材170に取り付けられる。
【0087】
ここで、本実施の形態では、ローラ202は、ローラ202の縁部でワイヤロープWを押圧しないような幅に設けられている。ここで、頂部111bの幅B1が、頂部111bの幅の0.2倍程度である場合、ローラ202の幅は、ロープ溝111の幅の少なくとも1.3倍以上であることが好ましく、さらにローラ202の幅は、ロープ溝111の幅の1.5倍以上であることがさらに好ましい。
【0088】
以上のようなロープガイド機構140の構成により、ワイヤロープWは、ガイド開口部141を介してロープドラム110のロープ溝111に巻き取られることを可能としている。また、ロープ溝111からガイド開口部141を介して、ワイヤロープWをロープ溝111に巻き取ったり、ワイヤロープWを巻き戻したりするのを可能としている。このとき、ガイド開口部141に対して周方向の反対側に押圧ローラ体200が設けられているので、ロープドラム110に巻き取られたワイヤロープWをロープ溝111に外周方向から押圧することができ、それによってロープドラム110に巻き取ったワイヤロープWの緩みを抑制し、ワイヤロープWの乱巻きを防止している。
【0089】
<4.作用効果>
以上のような構成のロープガイド機構140およびロープホイスト10によると、ロープ溝111に螺合すると共に、ロープ溝111に摺動する突条摺動面162a(第1突条摺動面)を備える突条162(第1突条)が内周側に形成されている摺動部材160(第1摺動部材)と、摺動部材160(第1摺動部材)と接続されてリング状のリング部材150を形成し、ロープ溝111に螺合すると共に、ロープ溝111に摺動する突条摺動面172a(第2突条摺動面)を備える突条172(第2突条)が内周側に形成されている摺動部材170(第2摺動部材)と、リング部材150の回転を不能にする軸係合部183(回転規制部材)と、リング部材150に設けられていると共に、ロープ溝111に巻き取ったワイヤロープWの緩みを抑える押圧ローラ体200およびロープガイド部163,173(ロープ緩み抑制部材)とを備えている。
【0090】
さらに、摺動部材160(第1摺動部材)には、ロープ溝111に巻き取ったワイヤロープWがロープ溝111から横ずれするのを抑えるロープ規制部165が設けられている。
【0091】
このため、ワイヤロープWが突条162(第1突条)側(X1側)にロープ溝111の中心から横ずれしようとしても、ワイヤロープWはロープ規制部165で横ずれ(移動)が規制され、ロープガイド機構140が破損してしまうのを防止することができる。
【0092】
特に、ワイヤロープWがロープドラム110から離れるにつれて、軸方向(X方向)の他方側(X1側;ワイヤロープWが未だ巻かれていないロープ溝111が存在する側)に向かうように、ロープドラム110の径方向(鉛直方向)に対して傾斜した方向にワイヤロープWが引き出された状態で巻き取られる、いわゆる斜め引きがされる場合もある。そのような斜め引きの場合、突条162(第1突条)に隣接しているロープ溝111に巻き取られたワイヤロープWには、上記の斜め引きによって、突条162(第1突条)側(X1側)に向かうような、ロープ溝111の中心から横ずれさせる力が作用する。
【0093】
しかしながら、上述のように、ワイヤロープWが突条162(第1突条)側(X1側)に向かってロープ溝111から横ずれしようとしても、ワイヤロープWはロープ規制部165によりワイヤロープWをロープ溝111の中心位置に戻すように、あるいはロープ溝111から所定以上の横ずれをさせないように位置規制する。そのため、ワイヤロープWの巻き取り時に、ワイヤロープWが突条162側(X1側)へ所定以上横ずれするのを防止することができ、突条162とロープ溝111の間にワイヤロープWが入り込むのを防止し、さらにワイヤロープWがロープ溝111の頂部111bに乗り上がるのを防止して、ロープガイド機構140が破損してしまうのを防止することができる。
【0094】
また、本実施の形態のロープガイド機構140では、突条162(第1突条)がロープ溝111に螺合しているときにロープドラム110の中心線を含む平面でロープ規制部165を切断した切断面においては、ロープ規制部165とロープ溝111に巻き取ったワイヤロープWの間の距離(最少距離)は、隣り合うロープ溝111の配置間隔であるピッチ(寸法A)からワイヤロープWのロープ径(d)を減算した値(寸法B)以下である。ここで、摺動部材160(第1摺動部材)には、突条形成部161と、ロープガイド部163とが設けられていて、突条形成部161の内周側には、突条162(第1突条)が設けられている。すなわち、A≦Bの式が成り立つ関係となっている。
【0095】
このような構成により、ロープ溝111の巻き取り直後の位置に位置するワイヤロープWの横ずれを所定量以内に規制し、ロープガイド機構140の破損を防止することができる。
【0096】
また、本実施の形態のロープガイド機構140では、
図8に示すように、突条162(第1突条)および突条172(第2突条)がロープ溝111に螺合しているときに、ロープ規制部165は、ロープ溝111へのワイヤロープWの入り込みを妨げない状態で突条形成部161よりロープ溝111に巻き取ったワイヤロープWに向かって突出する構成とすることもできる。
【0097】
このように構成する場合、ロープ規制部165は突条形成部161よりもロープ溝111に巻き取ったワイヤロープW側に突出しているので、ロープ溝111に巻き取り直後のワイヤロープWが、斜め引き等によってロープ規制部165側にずれてしまうのを防止することができる。それにより、
図11に示すように、ロープ溝111間の頂部111bにワイヤロープWが乗り上がるのを防止可能となる。または、
図12に示すように、ワイヤロープWが
図12に示すように正規の位置から溝飛びして、隣のロープ溝111に巻き付くのを防止可能となる。したがって、ロープガイド機構140が破損するのを防止可能となる。
【0098】
また、本実施の形態のロープガイド機構140では、
図14に示すように、ロープ規制部165は、ロープドラム110の軸方向(X方向)と直交する径方向に対して傾斜した傾斜面165bを有していて、突条162(第1突条)およびび突条172(第2突条)がロープ溝111に螺合しているときに、傾斜面165bはロープ溝111に巻き取られたワイヤロープWを挟んでロープ溝111に対向する構成とすることができる。
【0099】
このように構成する場合、
図14に示すように、ワイヤロープWが軸方向(X方向)の他方側(X1側)に向かって移動しようとした場合、ワイヤロープWは傾斜面165bと衝突する。そのため、ワイヤロープWが軸方向(X方向)の他方側(X1側)に向かって移動するのを防止できる。特に、ワイヤロープWが軸方向(X方向)の他方側(X1側)に向かって移動した際には、ワイヤロープWには内径側に向かう力が作用するので、ワイヤロープWは、自身が入り込んでいるロープ溝111から外れない状態とすることができる。それにより、ワイヤロープWの巻き取り時に、突条162とロープ溝111の間にワイヤロープWがロープ溝111の正規の位置(中心)に巻き取られるのを良好に防止することができる。このため、特にロープガイド機構140が破損してしまうのを良好に防止することができる。
【0100】
<13.変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0101】
また、上述の実施の形態では、スペーサ190は板状に設けられていて、そのような板状のスペーサ190を複数枚重ねて配置している。しかしながら、スペーサは板状には限られず、ブロック状を始めとして、種々の形状を採用することができる。
【0102】
また、上述の実施の形態では、リング部材150は、摺動部材160(第1摺動部材)と摺動部材170(第2摺動部材)を連結することで、リング状に設けられている。しかしながら、リング部材150は、かかる形状には限られない。たとえば、3つの摺動部材を連結することで、リング部材がリング状に形成されても良く、4つ以上の摺動部材を連結することで、リング部材がリング状に形成されても良い。また、1つの摺動部材からリング部材がリング状に形成されていても良い。
【0103】
また、上述の実施の形態では、平面状に設けられているロープ規制部165について説明しているが、ロープ規制部165は曲面状に設けられていても良く、その他種々の凹凸を有する形状に設けられていても良い。また、ロープ規制部165と突条摺動面162aの間には、R形状が存在していても良いが、その他、C面取り形状としても良く、その他種々の曲面形状としても良い。
【0104】
また、上述の実施の形態では、横行用モータ32を有するトロリ機構30を備えるロープホイスト10について説明している。しかしながら、横行用モータ32を備えない、手動式のトロリ機構を備えるロープホイストであっても、或いは、据え置き型のロープホイストであっても、本発明を適用しても良い。
【0105】
また、上述の実施の形態におけるロープホイスト10は、ワイヤロープWの一端はロープドラム110に固定され、ワイヤロープWの他端はロープ固定部材50に固定され、その間に中間シーブ体40が配置された、いわゆる4/1掛けタイプのものとなっている。しかしながら、本発明は、4/1掛けタイプのみに適用されるものではない。たとえば、ワイヤロープWの一端はロープドラム110に固定され、ワイヤロープWの他端はロープ固定部材50に固定されるものの、中間シーブ体を用いない、いわゆる2/1掛けタイプのものに本発明を適用しても良い。また、ワイヤロープWの一端は一方のロープドラム110に固定され、ワイヤロープWの他端は他方のロープドラム(このロープドラムのロープ溝は、ロープドラム110とは逆向きとなっている)に固定され、その間に中間シーブ体40が配置された、いわゆる4/2掛けタイプのものに本発明を適用しても良い。或いは、中間シーブとフックシーブを持たない、シングルタイプのロープホイストに本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0106】
10…ロープホイスト、20…フレーム構造、21…前後フレーム、21a…差込孔、22…連結バー、23…マウント部材、30…トロリ機構、31…車輪、32…横行用モータ、40…中間シーブ体、50…ロープ固定部材、60…フックブロック、61…フック、70…カウンタウェイト、80…制御部、90…制動抵抗器、100…ロープドラム機構、110…ロープドラム、111…ロープ溝、111a…底部、111b…頂部、112…ロープ押さえ金具、112a…凹部、112b…ネジ、113,114…軸支部、114a…環状凸部、114b…ベアリング、115…ドラム回転軸、116a,116b…ギヤハウジング、117a,117b…ベアリング、118…取付フレーム、120…ドラム用モータ、121…出力軸、130…減速機構、131…ピニオンギヤ、132…ギヤ輪列、140…ロープガイド機構、141…ガイド開口部、150…リング部材、160…摺動部材(第1摺動部材に対応)、161…突条形成部、161a,171a…挿通孔、162…突条(第1突条に対応)、162a…突条摺動面(第1突条摺動面に対応)、163,163a,163b,173,173a,173b…ロープガイド部(ロープ緩み抑制部材の一部に対応)、163c…一端側接続部、163d,173d…接続端面、163e,173e…連結孔、164…ガイド斜面、165…ロープ規制部、170…摺動部材(第2摺動部材に対応)、171…突条形成部、172…突条(第2突条に対応)、172a…突条摺動面(第1突条摺動面に対応)、173a1…挿通孔、173c…他端側接続部、180…ガイド部材、181…円弧状部、182…連結部、183…軸係合部(回転規制部材に対応)、183a…凹部、184…ガイド斜面、190…スペーサ、191…切欠部、200…押圧ローラ体(ロープ緩み抑制部材の一部に対応)、201…ローラ支持具、201a…基底部、201b…対向壁部、201b1…軸孔、201b2…連結孔、202…ローラ、203…付勢バネ(付勢手段に対応)、204…取付軸、G…案内軸、R…レール、R1…フランジ部、S1…部位