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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/12 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01P5/12 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021010735
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114476
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】安江 俊哉
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-170017(JP,A)
【文献】特開2020-051755(JP,A)
【文献】特開2000-329599(JP,A)
【文献】特開平04-029017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0250276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/10 - 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
流量検知用抵抗素子を備えた第1のセンサ素子と、
温度補償用抵抗素子を備えた第2のセンサ素子と、を有し、
前記第1のセンサ素子及び前記第2のセンサ素子は、夫々、一対のリード線を介して、前記基板の表面から離間して支持され、
前記第1のセンサ素子は、前記第2のセンサ素子よりも高い位置に配置されており、
前記第1のセンサ素子及び前記第2のセンサ素子が、互いに、内側を向くように、前記一対のリード線に接続されており、
前記第1のセンサ素子に接続される前記一対のリード線の間隔は、前記第2のセンサ素子に接続される前記一対のリード線の間隔より広いことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記第1のセンサ素子は、前記第2のセンサ素子に接続された前記リード線よりも高い位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記第1のセンサ素子に接続された第1のリード線の線径は、前記第2のセンサ素子に接続された第2のリード線の線径と同じか、或いはそれよりも小さいことを特徴とする請求項1又は請求項に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記第1のセンサ素子及び前記第2のセンサ素子は、高さ方向に長い形状であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、風速を計測可能なセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱した流量検知用抵抗素子を流体に曝し、その際の放熱作用に基づいて流体の流量を検出する熱式のセンサ装置が知られている。センサ装置は、流量検知用抵抗素子の他に温度補償用抵抗素子を備えており、流量検知用抵抗素子と温度補償用抵抗素子が、ブリッジ回路に組み込まれている。流量検知用抵抗素子が流体を受けると、流量検知用抵抗素子の温度が低下して抵抗が変化し、これにより、ブリッジ回路より差動出力を得ることができる。この作動出力に基づいて、流体の流量を検出することができる。
【0003】
例えば、特許文献1では、流量検知用抵抗素子を備えた第1センサ素子、及び温度補償用抵抗素子を備えた第2センサ素子が、夫々、リード線を介して絶縁基板から離間して支持されている。特許文献1では、第1センサ素子と第2センサ素子とが、対向して配置されている(図1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-215163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1では、第1センサ素子と第2センサ素子が対向して配置されているため、流量検知用抵抗素子を備えた第1センサ素子の径方向に向けて風が作用したときに、径方向360度の流量検知が低下する。
【0006】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、流量検知用抵抗素子を備えた第1のセンサ素子に対する径方向360度の流量検知を高精度に行うことができるセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明におけるセンサ装置は、基板と、流量検知用抵抗素子を備えた第1のセンサ素子と、温度補償用抵抗素子を備えた第2のセンサ素子と、を有し、前記第1のセンサ素子及び前記第2のセンサ素子は、夫々、一対のリード線を介して、前記基板の表面から離間して支持され、前記第1のセンサ素子は、前記第2のセンサ素子よりも高い位置に配置されており、前記第1のセンサ素子及び前記第2のセンサ素子が、互いに、内側を向くように、前記一対のリード線に接続されており、前記第1のセンサ素子に接続される前記一対のリード線の間隔は、前記第2のセンサ素子に接続される前記一対のリード線の間隔より広いことを特徴とする。

【発明の効果】
【0008】
本発明のセンサ装置においては、流量検知用抵抗素子を備えた第1のセンサ素子に対する径方向360度の流量検知を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】第1の実施の形態におけるセンサ装置の部分側面図である。
図1B】第1の実施の形態におけるセンサ装置の部分平面図である。
図2】本実施の形態のセンサ素子の断面図である。
図3】本実施の形態のセンサ装置の回路図である。
図4】第1のセンサ装置を用いて行った、風速と角度指向特性との関係を示す実験結果である。
図5】比較例におけるセンサ装置の部分側面図である。
図6】比較例のセンサ装置を用いて行った、風速と角度指向特性との関係を示す実験結果である。
図7】第2の実施の形態におけるセンサ装置の部分側面図である。
図8】第2の実施の形態のセンサ装置を用いて行った、風速と角度指向特性との関係を示す実験結果である。
図9】第3の実施の形態におけるセンサ装置の部分側面図である。
図10】第3の実施の形態のセンサ装置を用いて行った、風速と角度指向特性との関係を示す実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
<第1の実施の形態のセンサ装置の説明>
図1Aは、第1の実施の形態におけるセンサ装置1の部分側面図である。図1Bは、第1の実施の形態におけるセンサ装置1の部分平面図である。図2は、本実施の形態の第1のセンサ素子3の断面図である。図3は、本実施の形態のセンサ装置1の回路図である。
【0012】
図1Bに示されるX1-X2方向及びY1-Y2方向は、平面内にて直交する2方向を示し、図1Aに示すZ1-Z2方向は、X1-X2方向及びY1-Y2方向に互いに直交する高さ方向を指す。
【0013】
図1Aに示す第1の実施の形態のセンサ装置1は、基板2と、流量検知用抵抗素子を備えた第1のセンサ素子3と、温度補償用抵抗素子を備えた第2のセンサ素子4と、を有して構成される。
【0014】
基板2は、絶縁基板であり、特に限定するものではないが、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させた一般的なプリント基板であることが好ましく、例えば、FR4基板を提示することができる。
【0015】
図1Aに示すように、第1のセンサ素子3は、一対の第1のリード線6a、6bを介して、基板2の表面2aからZ1方向に離間して支持される。なお、以下では、第1のリード線6a、6bを区別せず、まとめて、「第1のリード線6」と表現することがある。
【0016】
また、図1Aに示すように、第2のセンサ素子4は、一対の第2のリード線8a、8bを介して、基板2の表面2aから第1のセンサ素子3と同じようにZ1方向に離間して支持される。なお、以下では、第2のリード線8a、8bを区別せず、まとめて、「第2のリード線8」と表現することがある。このように、第1のセンサ素子3及び第2のセンサ素子4は、基板2から見て同じ側に配置されている。これにより、第1のセンサ素子3と第2のセンサ素子4に作用する環境温度を一致させることができ、検知精度の向上を図ることができるとともに、小型化に寄与することができる。
【0017】
第1のセンサ素子3の内部構造について、図2を用いて説明する。図2に示すように、第1のセンサ素子3は、流量検知用抵抗素子10と、流量検知用抵抗素子10の両側に配置された電極キャップ11と、流量検知用抵抗素子10及び電極キャップ11を被覆する絶縁膜12と、を有して構成される。
【0018】
流量検知用抵抗素子10は、例えば、セラミック等の円柱基板の表面に抵抗被膜が形成されて成る。図示しないが、流量検知用抵抗素子10の抵抗被膜の表面には、トリミングが施されて、抵抗調整がされている。
第1のセンサ素子3の外面は、流量検知面として機能する素子表面5aと、素子表面5aの上下に位置する上面5b及び下面5cとを備える。
【0019】
図2に示すように、下面5c側に位置する電極キャップ11から第1のリード線6aがZ2方向に延出している。また、上面5b側に位置する電極キャップ11から第1のリード線6bが一旦、Z1方向に延び、途中で折り曲げられてZ2方向に向け延出している。このため、図2に示すように、一対の第1のリード線6a、6bは、X1-X2方向に所定の間隔を空けて対向し、ともにZ2方向に向けて延出している。そして、図1に示すように、一対の第1のリード線6a、6bの端部が基板2の表面2aに接続されている。
【0020】
第2のセンサ素子4に関しても図2と同様の構造であるが、流量検知用抵抗素子10の代わりに、温度補償用抵抗素子14が内蔵されている。
【0021】
図1に示すように、第1のセンサ素子3及び第2のセンサ素子4は、一方向に長い形状となっている。ここで、「一方向に長い」とは、一方向に対して直交するどの方向の長さよりも長い状態を指す。具体的には、第1のセンサ素子3及び第2のセンサ素子4は、X1-X2方向及びY1-Y2方向よりもZ1-Z2方向に長く形成されている。限定するものではないが、第1のセンサ素子3及び第2のセンサ素子4は、円柱状で形成される。
【0022】
図1Bに示すように、第1のセンサ素子3、第2のセンサ素子4、第1のセンサ素子3に対しX1側の側方に延出する第1のリード線6b、及び、第2のセンサ素子4に対しX1側の側方に延出する第2のリード線8bは、X1-X2方向に一列に配列されている。
【0023】
図3に示すように、流量検知用抵抗素子10は、温度補償用抵抗素子14とともに、ブリッジ回路を構成する。図3に示すように、流量検知用抵抗素子10と、温度補償用抵抗素子14と、抵抗器16、17とでブリッジ回路18を構成している。図3に示すように、流量検知用抵抗素子10と抵抗器16とで第1の直列回路19を構成し、温度補償用抵抗素子14と抵抗器17とで第2の直列回路20を構成している。そして、第1の直列回路19と第2の直列回路20とが、並列に接続されてブリッジ回路18を構成している。
【0024】
図3に示すように、第1の直列回路19の出力部21と、第2の直列回路20の出力部22とが、夫々、差動増幅器(アンプ)23に接続されている。ブリッジ回路18には、差動増幅器23を含めたフィードバック回路24が接続されている。フィードバック回路24には、トランジスタ(図示せず)等が含まれる。
【0025】
抵抗器16、17は、流量検知用抵抗素子10、及び温度補償用抵抗素子14よりも抵抗温度係数(TCR)が小さい。流量検知用抵抗素子10は、例えば、所定の周囲温度よりも所定値だけ高くなるように制御された加熱状態で、所定の抵抗値Rs1を有し、また、温度補償用抵抗素子14は、例えば、前記の周囲温度にて、所定の抵抗値Rs2を有するように制御されている。なお、抵抗値Rs1は、抵抗値Rs2よりも小さい。流量検知用抵抗素子10と第1の直列回路19を構成する抵抗器16は、例えば、流量検知用抵抗素子10の抵抗値Rs1と同様の抵抗値R1を有する固定抵抗器である。また、温度補償用抵抗素子14と第2の直列回路20を構成する抵抗器17は、例えば、温度補償用抵抗素子14の抵抗値Rs2と同様の抵抗値R2を有する固定抵抗器である。
【0026】
流量検知用抵抗素子10は、周囲温度よりも高い温度となるように調整されており、第1のセンサ素子3が風を受けると、発熱抵抗である流量検知用抵抗素子10の温度は低下する。このため、流量検知用抵抗素子10が接続された第1の直列回路19の出力部21の電位が変動する。これにより、差動増幅器23により差動出力が得られる。そして、フィードバック回路24では、差動出力に基づいて、流量検知用抵抗素子10に駆動電圧を印加する。そして、流量検知用抵抗素子10の加熱に要する電圧の変化に基づき、マイコン(図示せず)にて風速を換算し出力することができる。なお、マイコンは、例えば、基板2の表面に設置され、各センサ素子3、4と、各リード線6、8を介して電気的に接続されている。
【0027】
また、温度補償用抵抗素子14は、流体そのものの温度を検知し、流体の温度変化の影響を補償する。このように、温度補償用抵抗素子14を備えることで、流体の温度変化が流量検知に影響するのを低減でき、流量検知を精度よく行うことができる。上記したように、温度補償用抵抗素子14は、流量検知用抵抗素子10よりも十分に抵抗が高く、且つ、温度が周囲温度付近に設定されている。このため、温度補償用抵抗素子14が風を受けても、温度補償用抵抗素子14が接続された第2の直列回路20の出力部22の電位は、ほとんど変化しない。したがって、出力部22の電位を基準電位として、流量検知用抵抗素子10の抵抗変化に基づく差動出力を精度よく得ることができる。
なお、図3に示す回路構成は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0028】
図1Aに示すように、第1の実施の形態のセンサ装置1では、流量検知用抵抗素子10を備えた第1のセンサ素子3が、温度補償用抵抗素子14を備えた第2のセンサ素子4よりも高い位置に配置されている。すなわち、第1のセンサ素子3は、第2のセンサ素子4よりも基板2の表面2aからZ1方向に離れている。
【0029】
これに対し、図5の比較例のセンサ装置30では、流量検知用抵抗素子10を備えた第1のセンサ素子3と、温度補償用抵抗素子14を備えた第2のセンサ素子4とが同じ高さに配置されている。すなわち、図5では、第1のセンサ素子3と第2のセンサ素子4とが高さ方向に対して直交する水平方向であるX1―X2方向にて対向している。
【0030】
第1の実施の形態のセンサ装置1と、比較例のセンサ装置30を用いて、水平360度から風を作用させたときの流量検知について実験を行った。なお、以下では、第1の実施の形態のセンサ装置1を用いた実験を「実施例1」として説明する。
【0031】
ここで、「水平方向」とは、図1Bに示すX1-X2方向及びY1-Y2方向からなる平面内にて形成される方向である。この水平方向は、図1、5に示すように、Z1-Z2方向に直立した第1のセンサ素子3の径方向であり、例えば、第1のセンサ素子3の断面が円であれば、第1のセンサ素子3の軸中心を通る垂線方向を意味する。そして、「水平360度」とは、第1のセンサ素子3の軸中心に向けた平面内の全方向を指し、第1のセンサ素子3に対する「径方向360度」と同義である。
【0032】
実験では、センサ装置1、20に対し、水平360度から風を作用させた。風速は、インバータの運動周波数を3Hz、7Hz、10Hz、及び14Hzの4段階に制御した。運動周波数が高いほど風速が大きくなる。これら風速を、センサ装置1、20で測定した。
【0033】
実施例1の実験結果は図4に、比較例の実験結果は図6に示されている。図4図6に示すように、風配図を模した円形グラフの外周の数値は、中心に位置するセンサ装置1、30に向けての風の方向を示している。
【0034】
円グラフ内の0、2、6、8、10、12の数値は風速値である。また、円グラフ内に太く表示された複数の曲線は、インバータの運動周波数を3Hz、7Hz、10Hz、及び14Hzに調整し、水平360度からの風を各センサ装置1、30にて測定した際に計測された風速の実測値である。図4図6には、インバータの運動周波数を14Hzに調整した際に理想的な測定値としての理想値も示した。
【0035】
図4図6に示すように、インバータの運動周波数が3Hzのとき、実施例1に比べて、比較例では、約72度~約100度の方向からの風、及び、約250度~約290度の方向からの風に対し流量検知が大幅に低下することがわかった。また、インバータの運動周波数が7Hzのとき、実施例1に比べて、比較例では、約72度~約102度の方向からの風、及び、約250度~約285度の方向からの風に対し流量検知が大幅に低下することがわかった。また、インバータの運動周波数が10Hzのとき、実施例1に比べて、比較例では、約72度~約105度の方向からの風、及び、約250度~約288度の方向からの風に対し流量検知が大幅に低下することがわかった。また、実施例1に比べて、比較例では、インバータの運動周波数を14Hzとしたときの実測値が理想値から、65度~86度近辺、及び245度~270度近辺で大幅に外れることがわかった。
【0036】
90度近辺及び270度近辺からの風は、約X1-X2方向からの風であるが、これは、第1のセンサ素子3と第2のセンサ素子4の並び方向に概略一致している。比較例では、第1のセンサ素子3と第2のセンサ素子4は高さ方向に一致するため、特に、並び方向であるX1-X2方向近辺の風の検知については強く影響しあい、検知精度が大幅に低下すると考えられる。
【0037】
これに対して、実施例1では、図1Aに示すように、第1のセンサ素子3が、第2のセンサ素子4よりも高い位置に配置されている。このため、第2のセンサ素子4の影響は、比較例よりも小さくなり、図4に示すように、90度及び270度の方向近辺から作用する風に対する検知精度を、比較例に比べて改善できることがわかった。
【0038】
以上より、第1の実施の形態のセンサ装置1によれば、水平360度の風量検知精度を向上させることができる。
【0039】
第1の実施の形態では、第1のセンサ素子3は、第2のセンサ素子4に接続された第2のリード線8bよりも高い位置に配置されることが好ましい。図1Aに示すように、第2のリード線8bは、第2のセンサ素子4より高い位置にまで延びている。このため、第1のセンサ素子3は、第2のセンサ素子4のみならず、第2のリード線8bともX1-X2方向で対向しないように、第1のセンサ素子3を、第2のリード線8bより高い位置に配置する。これにより、水平360度の風量検知精度をより高めることができる。
【0040】
第1の実施の形態では、図1A及び図1Bに示すように、第1のセンサ素子3は、X1-X2方向に間隔を空けてZ1-Z2方向に延びる一対の第1のリード線6a、6bのX2側で接続されている。同じように、第2のセンサ素子4は、X1-X2方向に間隔を空けてZ1-Z2方向に延びる一対の第2のリード線8a、8bのX2側で接続されている。このように第1のセンサ素子3及び第2のセンサ素子4は、ともに、一対のリード線6、8の同じ側で接続されている。これにより、第1のセンサ素子3と第2のセンサ素子4が離れすぎない構造にできる。図示していないが、各センサ素子3、4に対して保護構造を用いた際、各センサ素子3、4を近くに配置することで、各センサ素子3、4に対する保護構造の影響を弱め、或いは影響のばらつきを小さくできると考えられる。
【0041】
<第2の実施の形態のセンサ装置の説明>
図7は、第2の実施の形態のセンサ装置40の部分側面図である。図1Aに示すセンサ装置1との相違点を中心に記載すると、第1の実施の形態では、各センサ素子3、4に接続される一対のリード線6、8が同じ線径であった。これに対し、第2の実施の形態では、第1のセンサ素子3に接続される一対の第1のリード線6の線径が、第2のセンサ素子4に接続される一対の第2のリード線8の線径よりも細い。
【0042】
図8は、第2の実施の形態のセンサ装置を用いて行った、風速と角度指向特性との関係を示す実験結果である。ここで、第2の実施の形態のセンサ装置40を用いて行った実験を「実施例2」とする。
【0043】
図8に示すように、実施例2では、図4に示す実施例1よりも水平360度の風量検知精度がより向上したことがわかった。特に、約72度~約150度方向からの風に対する風量検知精度が大幅に改善され、ほぼ理想値に一致した。これは、第1のセンサ素子3に対する第1のリード線6の影響が弱まったからである。すなわち、図7に示すように第1のセンサ素子3と、第1のリード線6bとは、X1-X2方向で対向している。このため、特に図示右側から左方向に向けて作用する風は、第1のセンサ素子3に到達する前に第1のリード線6bの影響を受ける。そこで、第1のリード線6を第2のリード線8よりも細くすることで、風量検知の際、第1のセンサ素子3に対する第1のリード線6の影響を弱めることができる。その結果、図4に比べて、X1―X2方向近辺から作用する風の検知精度をより高めることができ、ひいては、水平360度の検知精度をより効果的に高めることができる。
【0044】
<第3の実施の形態のセンサ装置の説明>
図9は、第3の実施の形態のセンサ装置50の部分側面図である。図1Aに示すセンサ装置1との相違点を中心に記載すると、第1の実施の形態では、各センサ素子3、4が同じ側を向くように、一対のリード線6、8に接続される。すなわち、第1のセンサ素子3及び第2のセンサ素子は、互いに、X2側に位置する第1のリード線6a及び第2のリード線8aに接続されている。これに対し、第3の実施の形態では、各センサ素子3、4が互いに内側を向くように、一対のリード線6、8に接続される。すなわち、第1のセンサ素子3は、X2側に位置する第1のリード線6aに接続されており、第2のセンサ素子4は、X1側に位置する第2のリード線8bに接続される。
【0045】
また、第1のセンサ素子3が接続された一対の第1のリード線6a、6bの間隔T1は、第2のセンサ素子4に接続された一対の第2のリード線8a、8bの間隔T2より広い。例えば、外側に位置する第1のリード線6bと第2のリード線8aとの間の中心位置に、第1のリード線6aに接続された第1のセンサ素子3を配置することができる。例えば、基板2の中心Oに第1のセンサ素子3を配置し、第1のセンサ素子3からX1側及びX2側に等間隔の位置に第1のリード線6b及び第2のリード線8aを配置することができる。
【0046】
図10は、第3の実施の形態のセンサ装置を用いて行った、風速と角度指向特性との関係を示す実験結果である。ここで、第3の実施の形態のセンサ装置50を用いて行った実験を「実施例3」とする。
【0047】
図10に示すように、実施例3では、図4に示す実施例1よりも水平360度の風量検知精度がより向上したことがわかった。80度~90度付近に多少の落ち込みがみられるものの、実施例1に比べて、約43度~約140度方向からの風に対する風量検知精度を大幅に改善できることがわかった。これは、第1のセンサ素子3と第1のリード線6bとの間の間隔T2が広くなったこと、及び第1のセンサ素子3を基板2の中心Oに配置できたことで、第1のセンサ素子3に適切に水平360度からの風が作用したことによる。また、第1のセンサ素子3と第2のセンサ素子4とをできる限り近くに配置できる。その結果、図4に比べて、X1―X2方向近辺から作用する風の検知精度をより高めることができ、ひいては、水平360度の検知精度をより効果的に高めることができる。
【0048】
上記では、センサ装置1は、風を検知するものとして説明したが、検知する流体としては、風以外にガスや、液体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明では、水平360度検知を高精度に行うことができ、様々なアプリケーションに適用することができる。例えば、空調設備や、風の制御系、分析用などに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1、30、40、50 センサ装置
2 基板
2a 表面
3 第1のセンサ素子
4 第2のセンサ素子
6、6a、6b 第1のリード線
8、8a、8b 第2のリード線
10 流量検知用抵抗素子
11 電極キャップ
12 絶縁膜
14 温度補償用抵抗素子
16 抵抗器
17 抵抗器
18 ブリッジ回路
19 第1の直列回路
20 第2の直列回路
21 出力部
22 出力部
23 差動増幅器
24 フィードバック回路
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10