(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】消音装置および移動体
(51)【国際特許分類】
F01N 1/00 20060101AFI20240229BHJP
F01N 1/18 20060101ALI20240229BHJP
F01N 1/14 20060101ALI20240229BHJP
F01N 1/02 20060101ALI20240229BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240229BHJP
G10K 11/175 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F01N1/00 A
F01N1/18
F01N1/14
F01N1/02 E
G10K11/16 100
G10K11/175
(21)【出願番号】P 2019112972
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 敏文
(72)【発明者】
【氏名】甲田 貴也
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祐一郎
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-292517(JP,A)
【文献】特開平6-88555(JP,A)
【文献】特開平2-199207(JP,A)
【文献】特開2001-123815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00
F01N 1/18
F01N 1/14
F01N 1/02
G10K 11/16
G10K 11/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスとは異なる気体
として空気を供給する気体供給源と、
前記排気ガスが流れる排気管および前記気体供給源に接続され、前記気体供給源から前記排気管へと供給される気体の流路を形成する配管と、
前記配管内に配置され、前記気体の流れ方向と垂直な回転軸を有し、前記配管の流路を開閉する回転式バルブと、
前記回転式バルブの回転を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記気体供給源から供給される気体の圧力を変化させることで前記配管から出力される音波の音圧を調整し、かつ、前記回転式バルブの回転数を調整し、周波数が1Hz以上200Hz以下の周波領域の音波を出力する消音装置。
【請求項2】
前記回転式バルブは、
互いに対向して設けられ、前記配管の内面に摺動自在な複数の当接部と、隣り合う前記当接部の間を延びる中間部とを有し、
前記配管の流路を開くときに前記当接部が前記内面から離れた位置に位置づけられると共に前記中間部と前記内面との間に隙間が形成され、前記配管の流路を閉じるときに前記当接部が前記配管の内面に摺動自在に当接する
請求項1に記載の消音装置。
【請求項3】
前記当接部は、円弧状に形成される請求項2に記載の消音装置。
【請求項4】
前記当接部は、先鋭形状に形成される請求項2に記載の消音装置。
【請求項5】
前記当接部は、互いに90度ずつ間隔を空けて4つ設けられる請求項4に記載の消音装置。
【請求項6】
前記回転式バルブは、
前記配管の流路を閉塞するバルブ本体と、前記バルブ本体に形成され、前記回転軸と直交する方向に延びる連通路とを有し、
前記配管の流路を開くときに前記連通路が前記配管の流路と連通し、前記配管の流路を閉じるときに前記連通路と前記配管の流路との連通を遮断する
請求項1に記載の消音装置。
【請求項7】
前記配管が接続される位置よりも前記排気ガスの流れ方向の下流側で、前記排気管に設けられた音響ダンパをさらに備える請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の消音装置。
【請求項8】
内燃機関と、前記内燃機関から排出される排気ガスが流れる排気管と、前記配管が前記排気管に接続された請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の消音装置とを備える移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消音装置および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から排出される排気ガスが流れる排気管内の騒音を低減するための技術として、アクティブノイズコントロールが知られている。アクティブノイズコントロールでは、打ち消したい周波数帯の音をスピーカーで出力することで、騒音を低減する。特許文献1には、スピーカーの一例として、供給された電気信号に応じて音を再生する回動式音響トランスデューサ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、排気ガスが流れる排気管内の騒音低減においては、特に低周波音を良好に低減することが求められる。そこで、例えば特許文献1に記載されたスピーカーを排気管に適用し、アクティブノイズコントロールによる低周波音の低減を図ることが考えられる。しかしながら、低周波音を出力するためにスピーカーの大型化を招き、装置全体の大型化につながる可能性がある。同様に、排気管に吸音材を用いた吸音ダクトを取り付けた場合、低周波音を低減させるためには、吸音ダクトが大型化しがちである。また、排気管内の騒音を低減するために、マフラー(消音機)を用いた場合、マフラーにおいて圧力損失が生じ、内燃機関の性能低下を招く可能性がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、装置全体の小型化および内燃機関の性能維持を図りつつ、内燃機関の排気管内の低周波音を良好に低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の消音装置は、内燃機関から排出される排気ガスとは異なる気体を供給する気体供給源と、前記排気ガスが流れる排気管および前記気体供給源に接続され、前記気体供給源から前記排気管へと供給される気体の流路を形成する配管と、前記配管内に配置され、前記気体の流れ方向と垂直な回転軸を有し、前記配管の流路を開閉する回転式バルブとを備える。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の移動体は、内燃機関と、前記内燃機関から排出される排気ガスが流れる排気管と、前記配管が前記排気管に接続された上記消音装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる消音装置および移動体は、装置全体の小型化および内燃機関の性能維持を図りつつ、内燃機関の排気管内の低周波音を良好に低減することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第一実施形態にかかる消音装置を備えた移動体としての車両の要部を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、回転式バルブの回転角度に応じた隙間の開口面積の変化の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、回転式バルブの回転角度に応じた配管から出力される音圧の変化の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、配管内に配置された回転式バルブを示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す回転式バルブを用いた消音装置において、配管から出力される空気の圧力波形の実験結果を示す説明図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す回転式バルブを用いた消音装置による排気管内の圧力変動の実験結果を示す説明図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態にかかる消音装置の回転式バルブを示す模式図である。
【
図8】
図8は、第二実施形態にかかる消音装置において、配管から出力される空気の圧力波形の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、第三実施形態にかかる消音装置の回転式バルブを示す模式図である。
【
図10】
図10は、第三実施形態にかかる消音装置において、配管から出力される空気の圧力波形の一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、第四実施形態にかかる消音装置を備えた移動体としての車両の要部を示す概略構成図である。
【
図12】
図12は、第四実施形態にかかる消音装置による排気管内の騒音低減効果の解析結果の一例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、第五実施形態にかかる消音装置の回転式バルブを示す模式図である。
【
図14】
図14は、第五実施形態にかかる消音装置の回転式バルブを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる消音装置および移動体の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、第一実施形態にかかる消音装置を備えた移動体としての車両の要部を示す概略構成図である。車両1は、内燃機関10と、排気管12と、消音装置20と、制御装置30とを備える。車両1は、例えば自動車である。なお、消音装置20は、内燃機関と排気管とを備える設備であれば、例えば列車といった他の車両に適用されてもよいし、船舶やガスタービンといった車両以外の移動体、設備に適用されてもよい。本実施形態において、内燃機関10は、例えばガソリンを燃料とするガソリンエンジンである。内燃機関10は、ディーゼルエンジン等であってもよい。排気管12は、内燃機関10に接続されており、
図1に白抜き矢印で示すように、内燃機関10から排出される排気ガスを車両1の外部(大気空間)へと案内する。
【0012】
(消音装置)
消音装置20は、気体供給源22と、配管24と、回転式バルブ40とを有する。気体供給源22は、車両1に搭載され、内燃機関10から排出される排気ガスとは異なる気体を供給する。本実施形態において、気体は、空気である。気体は、排気管12内で排気ガスと混合されて車両1の外部(大気空間)へと排出可能なものであれば、空気以外の気体であってもよい。また、気体供給源22は、図示しないポンプといった空気を圧送する装置を含むものであってもよい。
【0013】
配管24は、排気管12および気体供給源22に接続される。配管24は、気体供給源22から排気管12へと供給される空気の流路Lを形成する。配管24の内部には、
図1に示すように回転式バルブ40が配置されている。配管24は、回転式バルブ40が配置される位置において、流路Lの面積を確保するために拡径されてもよい(例えば
図14参照)。
【0014】
回転式バルブ40は、流路L内における空気の流れ方向と垂直な軸回りに回転自在とされており、配管24内で回転することで、流路Lを開く開状態(
図1に実線で示す状態)と、流路Lを閉じる閉状態(
図1に破線で示す状態)とを切り替える。より詳細には、閉状態では、回転式バルブ40と配管24との間に隙間Sが形成されることで、回転式バルブ40の上流側および下流側が隙間Sにより連通され、隙間Sを介して空気が流路L内を流通する。その結果、配管24から排気管12へと空気が送られる。すなわち、配管24から排気管12へと空気振動による音波が出力される。一方、閉状態では、回転式バルブ40と配管24との間の隙間Sが遮断され、回転式バルブ40の上流側および下流側の連通が遮断される。
【0015】
制御装置30は、回転式バルブ40の回転を制御する。より詳細には、制御装置30は、例えば内燃機関10の回転数を取得し、取得した内燃機関10の回転数に基づいて、回転式バルブ40の回転数(回転速度)を制御する。
【0016】
(消音装置の動作)
図1に示す消音装置20の動作の一例について、
図2および
図3を参照して説明する。
図2は、回転式バルブの回転角度に応じた隙間の開口面積の変化の一例を示す説明図であり、
図3は、回転式バルブの回転角度に応じた配管から出力される音圧の変化の一例を示す説明図である。以下の説明では、
図1に実線で示す状態を回転式バルブ40の回転角度が0(deg)の状態であるとする。
【0017】
回転式バルブ40の回転角度が0(deg)の状態であるとき、
図2に示すように、隙間Sの開口面積が最も大きくなる。この状態から回転式バルブ40の回転角度が増加していくと、隙間Sの開口面積が徐々に小さくなり、隙間Sの開口面積が0となると流路Lの閉状態となる。その後、回転式バルブ40の回転角度がさらに増加すると、再び隙間Sの開口面積が増加し始め、回転角度が180(deg)の状態で
図1に実線で示す状態となる。したがって、第一実施形態では、
図2に示すように、回転式バルブ40が1回転する間に、流路Lの開状態と閉状態とが2回ずつ形成される。
図3に示すように、配管24かは、隙間Sの開口面積と同様に、流路Lが開状態とされる区間において音波が出力される挙動を示す。
【0018】
このように、配管24から排気管12へと音波を出力することで、排気管12を流れる排気ガスによる騒音を打ち消すアクティブノイズコントロールを行うことができる。排気管12内を流れる排気ガスの振動に起因した騒音のうち、打ち消したい周波数に応じた基調周波数の音波を配管24から出力することで、所望の周波数の騒音を低減させることができる。配管24から出力される音波の基調周波数は、回転式バルブ40の回転数(回転速度)を変化させることで調整することができる。それにより、例えば周波数が1(Hz)以上200(Hz)以下の低周波領域の音波を出力し、低周波領域の騒音を低減させることが可能となる。また、配管24から出力される音波の音圧は、気体供給源22から供給される気体の圧力と、隙間Sの大きさとを変化させることで調整することができる。
【0019】
(回転式バルブの具体例)
次に、
図4を参照しながら回転式バルブの具体例について説明する。
図4は、配管内に配置された回転式バルブを示す模式図である。以下の説明では、流路L内の空気の流れ方向(
図4の実線矢印方向)に沿った方向を「方向X」と称し、方向Xと直交する方向を「方向Y」と称し、方向Xおよび方向Yと直行する方向を「方向Z」と称する。
【0020】
回転式バルブ40は、軸部材42(回転軸)と、バルブ本体44とを有する。軸部材42は、バルブ本体44の中心に取り付けられた回転軸である。軸部材42は、方向Yに沿って延び、配管24に回転自在に支持される。したがって、方向Yは、回転式バルブ40が回転する際の回転中心となる軸方向と一致する。なお、回転式バルブ40の回転方向は、図中に白抜き矢印で示す方向とは反対方向であってもよい。
【0021】
バルブ本体44は、方向Yにおける端面が配管24の内面24Aに摺動自在に当接しており、軸部材42を介して配管24に回転自在に支持される。バルブ本体44は、
図4に示すように、複数の当接部442と、複数の中間部444とを有する。第一実施形態において、当接部442および中間部444は、2つずつ設けられている。2つの当接部442は、方向Yと直交するX-Z断面上で互いに対向して設けられる。当接部442は、円弧状に形成されている。同様に、配管24の内面24Aも、当接部442と対応する位置において、円弧状に形成されている。それにより、当接部442は、
図4に破線で示すように、流路Lの閉状態で配管24の内面24Aに摺動自在に当接する。
【0022】
2つの中間部444は、隣り合う当接部442の間を互いに対向しながら延びる。言い換えると、中間部444は、各当接部442の端部同士の間を延びる。第一実施形態において、中間部444は、直線状に形成されている。中間部444は、
図4に実線で示すように、流路Lの開状態で配管24の内面24Aとの間に隙間Sを形成する。なお、中間部444は、湾曲した形状であってもよいし、複数の直線部と屈曲部とを有する形状であってもよい。
【0023】
この構成により、
図4に実線で示すように、当接部442が配管24の内面24Aから離れた位置に位置づけられると共に、中間部444と内面24Aとの間に隙間Sが形成された状態では、回転式バルブ40の上流側と下流側とが連通されて流路Lが開状態となる。一方、
図4に破線で示すように、当接部442が配管24の内面24Aに当接した状態では、隙間Sが形成されないため、回転式バルブ40の上流側と下流側との連通が遮断されて流路Lが閉状態となる。また、第一実施形態では、当接部442が円弧状に形成されており、円弧状部分の所定範囲内において配管24の内面24Aに当接し、当接部442が内面24Aに当接している間は流路Lの閉状態が継続される。
【0024】
(具体例における実験結果)
図5は、
図4に示す回転式バルブを用いた消音装置において、配管から出力される空気の圧力波形の実験結果を示す説明図である。
図5では、回転式バルブ40の回転角度に応じて、配管24から出力される空気の圧力を実験により計測した値をプロットしている。
【0025】
図4に示す回転式バルブ40を用いた場合、回転式バルブ40の回転角度が0(deg)、180(deg)、360(deg)である状態で、隙間Sの開口面積が最も大きくなる。そのため、
図5に示すように、配管24から出力される空気の圧力は、回転式バルブ40の回転角度が0(deg)、180(deg)、360(deg)のときにピークとなり、これを基調周波数とする音波を出力できる。加えて、
図5に示す実験結果の例では、流路Lが閉状態となる範囲において、圧力が負圧まで低下した後、いったん正圧に増加し、再び負圧まで低下するといった挙動を示す。流路Lの閉状態においても圧力が正圧となることは、圧力が負圧に低下したことによる反動および回転式バルブ40と配管24との間を流れる空気が完全には遮断されないことによる影響であると考えられる。したがって、
図4に示す回転式バルブ40を用いた場合、回転式バルブ40が1回転する間に、閉状態の範囲においても配管24から音波が出力されるという実験結果を得た。
【0026】
図6は、
図4に示す回転式バルブを用いた消音装置による排気管内の圧力変動の実験結果を示す説明図である。
図6において、破線は、比較例として回転式バルブ40を用いず、図示しない加振器により配管24から排気管12へと音波を出力した場合の排気管12内の圧力変動を示す。また、
図6において、実線は、比較例の構成に加えて、配管24内に
図4に示す回転式バルブ40を配置して、配管24から排気管12へと音波を出力した場合の排気管12内の圧力変動を示す。なお、図示しない加振器は、内燃機関10から排気管12への排気を模擬的に出力するためのダミー音源である。図示するように、実線で示す第一実施形態の消音装置20では、回転式バルブ40により所望の周波数の音波を出力させることで、周波数が70(Hz)近傍において、比較例よりも配管24内の圧力変動を低減させることができるという実験結果を得た。
【0027】
以上説明したように、第一実施形態にかかる消音装置20は、内燃機関10から排出される排気ガスとは異なる空気(気体)を供給する気体供給源22と、排気ガスが流れる排気管12および気体供給源22に接続され、気体供給源22から排気管12へと供給される空気の流路Lを形成する配管24と、配管24内に配置され、空気の流れ方向と垂直な軸部材42(回転軸)を有し、配管24の流路Lを開閉する回転式バルブ40とを備える。
【0028】
この構成により、回転式バルブ40を配管24内で回転させ、空気の流路Lの開状態と閉状態とを切り替えれば、回転式バルブ40の回転数(回転速度)に応じて、気体供給源22から配管24を介して排気管12へと、所望の周波数の音波を出力することができる。その結果、スピーカーを用いることなく、アクティブノイズコントロールを実現することが可能となる。したがって、一般的に低周波音を生成するために大型化しやすいスピーカーを用いたアクティブノイズコントールを行う場合、あるいは、吸音材を用いた吸音ダクトを排気管12に取り付ける場合に比べて、装置全体を小型化することができる。また、例えば消音装置としてマフラー(消音機)を用いる場合に比べて、圧力損失の発生を抑制することができ、内燃機関10の性能低下を抑制することができる。したがって、第一実施形態の消音装置20および車両1によれば、装置全体の小型化および内燃機関10の性能維持を図りつつ、内燃機関10の排気管12内の低周波音を良好に低減することができる。
【0029】
また、回転式バルブ40は、互いに対向して設けられ、配管24の内面24Aに摺動自在な複数の当接部442と、隣り合う当接部442の間を延びる中間部444とを有し、配管24の流路Lを開くときに当接部442が内面24Aから離れた位置に位置づけられると共に中間部444と内面24Aとの間に隙間Sが形成され、配管24の流路Lを閉じるときに当接部442が配管24の内面24Aに摺動自在に当接する。
【0030】
この構成により、回転式バルブ40を簡易な構成とすることができる。また、回転式バルブ40の当接部442と配管24とが接触する部分の面積を小さくすることができる。その結果、流路Lを閉状態としたとき、当接部442と配管24の内面24Aとの間から空気が漏れ出ることを良好に抑制することができる。
【0031】
また、当接部442は、円弧状に形成される。この構成により、当接部442と配管24の内面24Aとが当接する時間、つまり、流路Lを閉状態とする時間を当接部442の長さを変化させることで調整することができる。そして、
図5に示すように、流路Lの閉状態においても、配管24内に生じる圧力変動を利用して、配管24から出力される音波の波形を調整することが可能となる。その結果、流路Lの閉状態において配管24から出力される音波を利用することができる。すなわち、基調周波数よりも高い周波数の音波を出力できる。言い換えると、同じ周波数の音波を出力するとき、回転式バルブ40の回転数をより小さくすることができる。したがって、回転式バルブ60の制御性をより向上させることが可能となる。
【0032】
なお、
図4に一点鎖線で示すように、バルブ本体44の下流側に、空気の流れを整流するための整流部46を設けても良い。
【0033】
図7は、第二実施形態にかかる消音装置の回転式バルブを示す模式図であり、
図8は、第二実施形態にかかる消音装置において、配管から出力される空気の圧力波形の一例を示す説明図である。第二実施形態にかかる消音装置200は、第一実施形態の回転式バルブ40に代えて、回転式バルブ50を備えている。消音装置200の他の構成は、消音装置20と同様であるため、説明を省略し、同一の構成要素には同一の符号を付す。
【0034】
回転式バルブ50は、軸部材52と、バルブ本体54とを有する。軸部材52は、第一実施形態の軸部材42と同じ構成であるため、説明を省略する。バルブ本体54は、第一実施形態と同様に、互いに対向する2つの当接部542と、互いに対向する2つの中間部544とを有する。
【0035】
当接部542は、
図7に示すように、先鋭形状に形成されている。「先鋭形状」は、当接部542が配管24の内面24Aに向けて尖った形状であることを意味する。当接部542は、バルブ本体54の強度、剛性等を維持しつつ、X-Z断面上において内面24Aにできる限り点接触に近い状態で当接するように形成される。中間部544は、2つの当接部542の間を円弧状に延びる。したがって、バルブ本体54は、X-Z断面において略楕円形状を呈している。なお、中間部544の形状は、これに限られず、複数の直線部と屈折部とを有するものであってもよい。
【0036】
回転式バルブ50は、
図7に実線で示す回転角度が0(deg)の状態から回転角度が増加していくと、回転角度が90(deg)、270(deg)の状態で当接部542が配管24の内面24Aに当接する。すなわち、中間部544と内面24Aとの隙間Sが閉じられて流路Lの閉状態が形成される。このとき、
図7に破線で示すように、先鋭形状に形成された当接部542が、X-Z断面において、配管24の内面24Aに点接触に近い状態で当接する。そのため、当接部542が内面24Aに当接する時間、つまり流路Lの閉状態の時間をできる限り短くすることができる。その結果、
図8に示すように、配管24から出力される空気の圧力波形を基調周波数の正弦波に近づけることができる。したがって、所望の周波数の騒音を、基調周波数の正弦波に近い音波によって、より精度良く打ち消すことが可能となる。
【0037】
図9は、第三実施形態にかかる消音装置の回転式バルブを示す模式図であり、
図10は、第三実施形態にかかる消音装置において、配管から出力される空気の圧力波形の一例を示す説明図である。第三実施形態にかかる消音装置300は、第二実施形態の回転式バルブ40に代えて、回転式バルブ60を備えている。消音装置300の他の構成は、消音装置200と同様であるため、説明を省略し、同一の構成要素には同一の符号を付す。
【0038】
回転式バルブ60は、軸部材62と、バルブ本体64とを有する。軸部材62は、軸部材42と同じ構成であるため、説明を省略する。バルブ本体64は、
図9に示すように、X-Z断面において、四角形状に形成されている。つまり、バルブ本体64は、互いに対向する2つの当接部642を2組有し、隣り合う当接部642の間を互いに対向しながら延びる2つの中間部644を2組有する。当接部642は、第二実施形態と同様に、先鋭形状に形成されている。中間部544は、隣り合う当接部642の間を直線状に延びる。なお、中間部644は、湾曲した形状であってもよいし、複数の直線部と屈曲部とを有する形状であってもよい。
【0039】
回転式バルブ60は、
図9に実線で示す回転角度が0(deg)の状態から回転角度が増加していくと、
図9に破線で示すように、回転角度が45(deg)、135(deg)、225(deg)、315(deg)の状態で、当接部642が配管24の内面24Aに当接する。すなわち、中間部544と内面24Aとの隙間Sが閉じられて流路Lの閉状態が形成される。このように、当接部642が90度ずつ間隔を空けて4つ設けられることで、
図10に示すように、回転式バルブ60が1回転する間に、流路Lの開状態と閉状態とを4回形成することができる。つまり、
図8に示す例に対して、2倍の周波数の音波を出力することができる。言い換えると、同じ周波数の音波を出力するとき、回転式バルブ60の回転数をより小さくすることができる。したがって、回転式バルブ60の制御性をより向上させることが可能となる。
【0040】
図11は、第四実施形態にかかる消音装置を備えた移動体としての車両の要部を示す概略構成図である。第四実施形態にかかる消音装置400は、第一実施形態にかかる消音装置20の構成に加えて、排気管12に設けられた音響ダンパ80を備えている。消音装置400の他の構成は、消音装置20と同様であるため、説明を省略し、同一の構成要素には同一の符号を付す。なお、消音装置400は、第二実施形態にかかる消音装置200または第三実施形態にかかる消音装置300の構成に加えて、音響ダンパ80を備えるものであってもよい。
【0041】
音響ダンパ80は、配管24が接続される位置よりも排気ガスの流れ方向の下流側で、排気管12に設けられている。音響ダンパ80は、排気管12の外周面に沿って形成される。音響ダンパ80は、ハウジング82の内部に音響部を形成する通路84が形成されている。通路84は、一端が排気管12側で開口している。排気管12には、内部を流れる排気ガスによる空気振動を通過させる図示しない複数の貫通孔が形成されている。それにより、音響ダンパ80は、排気管12の内部を排気ガスが流通する際、排気ガスによる空気振動が貫通孔を通過して通路84内に取り込まれる。そして、通路84を伝搬した空気振動が共鳴し、排気管12内の圧力変動が減衰される。なお、排気管12の複数の貫通孔が形成される位置に、排気ガスを音響ダンパ80へと導く空間を形成してもよい。
【0042】
音響ダンパ80による減衰を狙う圧力変動の周波数は、通路84の長さ等を変化させることで調整することができる。本実施形態では、気体供給源22、配管24および回転式バルブ40により、低周波数帯(例えば1(Hz)以上200(Hz)以下)の騒音低減を狙い、音響ダンパ80により、上記の低周波数帯よりも高い周波数帯(例えば200(HZ)以上500(Hz)以下など)の騒音低減を狙う。
【0043】
図12は、第四実施形態にかかる消音装置による排気管内の騒音低減効果の解析結果の一例を示す説明図である。
図12において、実線は、第四実施形態にかかる消音装置400を用いた場合の解析結果を示し、破線は、消音装置400から音響ダンパ80を省略した場合の解析結果を示している。図示するように、消音装置400を用いた場合には、上述した気体供給源22、配管24および回転式バルブ40による消音機能と、音響ダンパ80による消音機能とを組み合わせることで、比較例に比べて、特に100(Hz)以上の周波数の領域で圧力が低下していることがわかる。したがって、第四実施形態によれば、排気管12内で発生する騒音を、より効果的に低減させることが可能となる。
【0044】
図13および
図14は、第五実施形態にかかる消音装置の回転式バルブを示す模式図である。第五実施形態にかかる消音装置500は、第一実施形態の回転式バルブ40に代えて、回転式バルブ70を備えている。消音装置500の他の構成は、消音装置20と同様であるため、説明を省略し、同一の構成要素には同一の符号を付す。
【0045】
第五実施形態において、配管24は、
図13および
図14に示すように、回転式バルブ70が配置される位置において拡径されており、回転式バルブ70を収容する収容部241を有している。
【0046】
回転式バルブ70は、軸部材72と、バルブ本体74とを有する。軸部材72は、軸部材42と同様の構成であるため、説明を省略する。バルブ本体74は、方向Yに沿って延びる円柱形状に形成されており、収容部241の内面に摺動自在に当接する。
図14では、収容部241を指し示すために、バルブ本体74と収容部241との間に空隙を記載しているが、実際には、バルブ本体74と収容部241の内面とは当接している。また、バルブ本体74は、
図14に示すように、方向Yにおける端面が配管24の内面24Aに摺動自在に当接しており、軸部材72を介して配管24に回転自在に支持される。そして、バルブ本体74は、
図13および
図14に示すように、方向Yと直交する方向に延びる連通路76を有している。連通路76は、バルブ本体74の中心部において、方向Yと直交する方向にバルブ本体74を直線状に貫通する孔部である。連通路76は、
図13に示すように、配管24の流路Lと同じ径に形成される。
【0047】
回転式バルブ70は、
図13に実線で示す回転角度が0(deg)の状態では、連通路76と流路Lとが連通することで、流路Lが開かれた開状態となる。その後、回転角度が増加していくと、連通路76の開口面積(すなわち連通路76と流路Lとが連通している位置の面積)が小さくなっていく。連通路76が、
図13に一点鎖線で示す位置まで回転式バルブ70が回転すると、連通路76と流路Lとの連通が遮断され、流路Lが閉じられた閉状態となる。そして、さらに回転式バルブ70の回転角度が増加すると、再び連通路76と流路Lとが連通されて流路Lの開状態となる。この構成によっても、回転式バルブ70を配管24内で回転させることで、流路Lを開閉させ、配管24から排気管12へと所望の周波数での音波を出力させることが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 車両
10 内燃機関
12 排気管
20,200,300,400,500 消音装置
22 気体供給源
24 配管
24A 内面
30 制御装置
40,50,60,70 回転式バルブ
42,52,62,72 軸部材
44,54,64,74 バルブ本体
76 連通路
80 音響ダンパ
442,542,642 当接部
444,544,644 中間部
L 流路
S 隙間