(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】液体封止カートリッジおよび送液方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20240229BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240229BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
G01N35/00 D
(21)【出願番号】P 2019176472
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391008537
【氏名又は名称】ASTI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】堀井 和由
(72)【発明者】
【氏名】中本 竣
(72)【発明者】
【氏名】小粥 教幸
(72)【発明者】
【氏名】戸田 泰広
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 公昭
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/175229(WO,A1)
【文献】特開2018-072131(JP,A)
【文献】特開2003-182754(JP,A)
【文献】実公昭48-027476(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0087570(US,A1)
【文献】米国特許第03029987(US,A)
【文献】特開2005-096866(JP,A)
【文献】特表2017-511191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00 - 99/00
B65D 35/44 - 35/54
B65D 83/00
B65D 83/08 - 83/76
G01N 1/00 - 1/44
G01N 35/00 - 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する液体貯留部と
、前記液体貯留部に貯留された前記液体を流す流路と
、前記液体貯留部の前記液体を封止する液体封止部と、を
含む本体部を備え、
前記液体封止部は、外周部と、前記外周部よりも中央側の中央側低強度部を有し、押圧されると前記中央側低強度部が
、押圧方向に直交する前記液体の送液方向に沿って破断し
、前記本体部を回転させることによって前記流路に対して前記本体部の中心側に配置された前記液体貯留部の前記液体を前記流路へ流通可能とするように構成される、液体封止カートリッジ。
【請求項2】
液体を貯留する液体貯留部と
、前記液体貯留部に貯留された前記液体を流す流路と
、前記液体貯留部の前記液体を封止する液体封止部と、を
含む本体部を備え、
前記液体封止部は、外周部と、前記外周部よりも中央側の中央側低強度部を有し、押圧されると前記中央側低強度部が、押圧方向に
直交する前記液体の送液方向と交差する方向に沿って破断し
、前記本体部を回転させることによって前記流路に対して前記本体部の中心側に配置された前記液体貯留部の前記液体を前記流路へ流通可能とするように構成される、液体封止カートリッジ。
【請求項3】
前記中央側低強度部は、前記液体封止部の中央部に設けられている、請求項1または2に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項4】
前記液体封止部は、押圧方向から見て、前記中央側低強度部に対して一方側に隣接する一方部と前記中央側低強度部に対して他方側に隣接する他方部とを含み、
前記一方部および前記他方部は、前記液体封止部の外周部から前記中央側低強度部まで連続し、押圧により押圧方向に変形するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項5】
前記中央側低強度部は、押圧により破断して、前記一方部および前記他方部の少なくとも一方に保持されるように形成されている、請求項4に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項6】
前記中央側低強度部は、隣接する領域よりも小さい厚みを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項7】
前記中央側低強度部は、押圧される方向から見て、線状、長方形状、十字形状、楕円形状の少なくともいずれかの平面形状を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項8】
前記外周部に形成され、前記中央側とは異なる外周側低強度部と、を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項9】
前記中央側低強度部は、前記外周側低強度部よりも強度が低い、請求項8に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項10】
前記液体封止部に対向するカバー部をさらに備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項11】
前記液体封止部は、前記カバー部を介して押圧される受圧面を有し、
前記中央側低強度部は、前記受圧面の裏側に形成された凹部により構成されている、請求項10に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項12】
前記液体封止部は、前記液体貯留部の上面に設けられ、
前記液体封止部の外周部から前記中央側低強度部までの長さが、前記液体封止部から前記液体貯留部の内底面までの深さよりも小さい、請求項1~11のいずれか1項に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項13】
前記液体貯留部、前記流路および前記液体封止部が形成された円盤状の
前記本体部を備え、
前記液体貯留部が前記流路に対して前記本体部の中心側に配置され、前記本体部を回転させることにより、前記液体貯留部の前記液体が前記流路へ流れる、請求項1~12のいずれか1項に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項14】
前記液体封止部は、前記液体貯留部と一体的に設けられている、請求項1~13のいずれか1項に記載の液体封止カートリッジ。
【請求項15】
液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部に貯留された前記液体を流す流路と、前記液体貯留部を封止する液体封止部と、
を含む本体部を備えた液体封止カートリッジの送液方法であって、
前記液体封止部の中央側低強度部を押圧し前記中央側低強度部を
、押圧方向に直交する前記液体の送液方向に沿って破断させるステップと、
前記本体部を回転させることにより、前記流路に対して前記本体部の中心側に配置された前記中央側低強度部が破断された前記液体貯留部から前記液体を流すステップと、を備える、送液方法。
【請求項16】
液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部に貯留された前記液体を流す流路と、前記液体貯留部を封止する液体封止部と、
を含む本体部を備えた液体封止カートリッジの送液方法であって、
前記液体封止部の中央側低強度部を押圧し前記中央側低強度部を、押圧方向に
直交する前記液体の送液方向と交差する方向に沿って破断させるステップと、
前記本体部を回転させることにより、前記流路に対して前記本体部の中心側に配置された前記中央側低強度部が破断された前記液体貯留部から前記液体を流すステップと、を備える、送液方法。
【請求項17】
前記中央側低強度部を押圧するステップにおいて、前記中央側低強度部に対して一方側の一方部と他方側の他方部とを押圧方向に変形させる、請求項15または16に記載の送液方法。
【請求項18】
前記中央側低強度部は、前記中央側低強度部と隣接する領域よりも小さい厚みを有する、請求項15~17のいずれか1項に記載の送液方法。
【請求項19】
前記中央側低強度部を押圧するステップにおいて、ピン状の押圧部材により、前記液体封止部に対向するカバー部を介して前記液体封止部の中央部付近を押圧する、請求項15~18のいずれか1項に記載の送液方法。
【請求項20】
前記液体封止部は、前記液体貯留部の上面に設けられ、
前記中央側低強度部を押圧するステップにおいて、前記液体封止部の上方から、前記液体封止部と前記液体貯留部の内底面との間の位置まで、前記カバー部を介して前記液体封止部を押圧する、請求項19に記載の送液方法。
【請求項21】
前記液体貯留部が
前記流路に対して前記液体封止カートリッジの中心側に配置されており、
前記液体を流すステップにおいて、前記液体貯留部の前記液体が押圧された前記中央側低強度部を介して前記流路へ流れるように、前記液体封止カートリッジを回転させる、請求項15~20のいずれか1項に記載の送液方法。
【請求項22】
前記中央側低強度部を押圧するステップの前に、前記液体貯留部と前記液体封止部が形成された
前記本体部および前記液体封止部を押圧する押圧部材の少なくとも一方を移動させることにより、前記液体封止部に対する押圧位置を合わせるステップをさらに備える、請求項15~21のいずれか1項に記載の送液方法。
【請求項23】
前記押圧位置を合わせるステップにおいて、前記本体部を移動させることにより、前記中央側低強度部に対する前記押圧部材の押圧位置を合わせる、請求項22に記載の送液方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が封止された液体封止カートリッジおよび液体封止カートリッジにおいて液体を移送する送液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、
図31に示すように、遮断要素901によって相互に分離された第1中空室902および第2中空室903と、第1中空室902を覆う被覆要素904と、取出し室905と、第2中空室903と取出し室905とを接続する管路906とが形成された微細構造が開示されている。第1中空室902には液体が充填されている。
【0003】
力が被覆要素904に加えられた場合、遮断要素901の第1端部907が破断される。遮断要素901の第2端部908が旋回可能に設けられるヒンジ区域を形成している。遮断要素901の第1端部907の破断により、第1中空室902内の液体が第2中空室903へ流入する。毛管力によって、液体は管路906および取出し室905へ搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の微細構造では、微小空間を有する第2中空室903内で遮断要素901を押圧することにより、遮断要素901の第1端部907を破断して遮断要素901を開封している。遮断要素901の第1端部907を確実に破断するためには、遮断要素901が可撓性を有しているため、遮断要素901を押圧する押圧部材の押し込み深さを十分大きくする必要がある。しかしながら、微小空間を有する第2中空室903は高さが低いため、遮断要素901が第2中空室903の内底面まで下降することにより、遮断要素901が第2中空室903の内底面に接触することがある(
図31の破線部参照)。
【0006】
上述した遮断要素901が第2中空室903の内底面まで下降して遮断要素901の第1端部が第2中空室903の内底面に接触した場合(
図31の破線部参照)、押圧力を加えてもそれ以上遮断要素901を押し込めなくなるため、押圧力を付与する装置の負荷の増大や第2中空室903の内底面が破損する恐れがある。
【0007】
この発明は、押圧を行う装置の負荷を抑制し、かつ、液体封止カートリッジの内底面の破損を抑制することに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明の第1の局面による液体封止カートリッジ(100)は、
図1に示すように、液体(90)を貯留する液体貯留部(10)と、液体貯留部(10)に貯留された液体(90)を流す流路(20)と、液体貯留部(10)の液体(90)を封止する液体封止部(30)と、を
含む本体部を備え、液体封止部(30)は、外周部(33)と、外周部(33)よりも中央側の中央側低強度部(31)を有し、押圧されると中央側低強度部(31)が
、押圧方向に直交する液体の送液方向に沿って破断して、
本体部を回転させることによって流路に対して前記本体部の中心側に配置された液体貯留部(10)の液体(90)を流路(20)へ流通可能とするように構成される。
この発明の第2の局面による液体封止カートリッジは、液体を貯留する液体貯留部と、液体貯留部に貯留された前記液体を流す流路と、液体貯留部の液体を封止する液体封止部と、を
含む本体部を備え、液体封止部は、外周部と、外周部よりも中央側の中央側低強度部を有し、押圧されると中央側低強度部が、押圧方向に
直交する液体の送液方向と交差する方向に沿って破断し
、本体部を回転させることによって流路に対して本体部の中心側に配置された液体貯留部の液体を流路へ流通可能とするように構成される。
【0009】
本明細書において、「低強度部」とは、液体封止部のうち、低強度部以外の部分と比較して機械的強度が低い部分をいう。また、「機械的強度が低い」とは、特に、押圧力によって破断しやすい性質を意味する。
【0010】
この発明による液体封止カートリッジ(100)では、上記のように、液体封止部(30)が押圧されると、液体封止部(30)の中央側低強度部(31)を境に、両側に割れるように破断する。このため、液体封止部(30)の両端部をそれぞれ旋回中心として、旋回部分の半径(R)を小さくできる。これにより、旋回部分の半径(R)を小さくできるので、液体封止部(30)が液体封止カートリッジ(100)の内底面(61)に接触する前に液体封止部(30)の押圧を終了できるか、液体封止部(30)が内底面(61)に接触する場合でも押圧力の増大を従来よりも抑制できる。これらの結果、押圧を行う装置の負荷を抑制し、かつ、液体封止カートリッジ(100)の内底面(61)の破損を抑制することができる。
【0011】
この発明の第3の局面による送液方法は、
図1に示すように、液体(90)を貯留する液体貯留部(10)と、
液体貯留部に貯留された液体を流す流路と、液体貯留部(10)を封止する液体封止部(30)と、を
含む本体部を備えた液体封止カートリッジ(100)の送液方法であって、液体封止部(30)の中央側低強度部(31)を押圧し中央側低強度部(31)を
、押圧方向に直交する液体の送液方向に沿って破断させるステップと、
本体部を回転させることにより、流路に対して本体部の中心側に配置された中央側低強度部(31)が破断された液体貯留部(10)から液体(90)を流すステップと、を備える。
この発明の第4の局面による送液方法は、液体を貯留する液体貯留部と、
液体貯留部に貯留された液体を流す流路と、液体貯留部を封止する液体封止部と、を
含む本体部を備えた液体封止カートリッジの送液方法であって、液体封止部の中央側低強度部を押圧し中央側低強度部を、押圧方向に
直交する液体の送液方向と交差する方向に沿って破断させるステップと、
本体部を回転させることにより、流路に対して本体部の中心側に配置された中央側低強度部が破断された液体貯留部から液体を流すステップと、を備える。
【0012】
この発明による送液方法では、上記発明と同様に、押圧により、液体封止部(30)の中央側低強度部(31)を境に、両側に割れるように破断させることができる。その結果、押圧に伴う液体封止部(30)の旋回部分の半径(R)を小さくできる。これにより、旋回部分の半径(R)を小さくできるので、液体封止部(30)が液体封止カートリッジ(100)の内底面(61)に接触する前に液体封止部(30)の押圧を終了できるか、液体封止部(30)が内底面(61)に接触する場合でも押圧力の増大を従来よりも抑制できる。これらの結果、押圧を行う装置の負荷を抑制し、かつ、液体封止カートリッジ(100)の内底面(61)の破損を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、押圧を行う装置の負荷を抑制し、かつ、液体封止カートリッジの内底面の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】液体封止カートリッジの模式図であって、開封前(A)、開封時(B)、開封後(C)の各々を説明するための図である。
【
図3】遠心力により送液する場合の液体封止カートリッジの一例を示した図である。
【
図4】液体封止部の構成例(A)~(F)を示した図である。
【
図5】液体封止部の他の構成例(A)~(E)を示した図である。
【
図6】液体封止部の第1の具体的な構成例を示す模式図である。
【
図7】
図6の液体封止部を裏面側から見た平面図(A)および受圧面側から見た平面図(B)である。
【
図9】
図7(A)の800-800線に沿った断面図である。
【
図10】
図7(A)の801-801線に沿った断面図である。
【
図11】液体封止部の第2の具体的な構成例を示す模式図である。
【
図12】
図11の液体封止部を裏面側から見た平面図(A)および受圧面側から見た平面図(B)である。
【
図14】
図12(A)の802-802線に沿った断面図である。
【
図15】
図12(A)の803-803線に沿った断面図である。
【
図16】液体封止部の断面形状に関する第1の構成例を示した図である。
【
図17】液体封止部の断面形状に関する第2の構成例を示した図である。
【
図18】液体封止部の断面形状に関する第3の構成例を示した図である。
【
図19】液体封止カートリッジの具体的構成例を示した平面図である。
【
図20】液体封止カートリッジを用いる検出装置の具体的を示す斜視図である。
【
図21】蓋部が閉じた状態の検出装置を示す斜視図である。
【
図22】検出装置の内部構造を示した模式的な断面図である。
【
図23】カートリッジに対する押圧部、撮像部および光検出器の位置を示した図である。
【
図24】検出装置の各構成要素と制御部との関係を示したブロック図である。
【
図25】検出装置の動作を説明するためのフロー図である。
【
図26】検出装置による送液処理を説明するためのフロー図である。
【
図27】押圧部の真下に液体封止部が配置された状態を示した模式図である。
【
図28】押圧部材が液体封止部を押圧している状態を示した模式図である。
【
図29】押圧部材により液体封止部の封止が解除された状態を示した模式図である。
【
図30】封止解除後に送液が行われる状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(液体封止カートリッジの概要)
図1を参照して、本実施形態による液体封止カートリッジ100について説明する。
【0017】
液体封止カートリッジ100は、液体90を内部に収容可能な空間が形成された容器である。液体封止カートリッジ100は、内部に収容した液体90を封止することができる。液体封止カートリッジ100は、カートリッジの外部からの操作によって、内部に収容した液体90の封止を解除することができる。封止の解除により、液体封止カートリッジ100内の液体90が、カートリッジ内の別の部位、またはカートリッジの外部に移送可能となる。
【0018】
液体封止カートリッジ100の外形形状は、特に限定されない。液体封止カートリッジ100は、たとえば板状形状を有する。
【0019】
液体封止カートリッジ100は、少なくとも1つの液体貯留部10と、少なくとも1つの流路20と、少なくとも1つの液体封止部30と、を備える。
【0020】
液体貯留部10は、液体90を貯留するように構成されている。すなわち、液体貯留部10は、所定量の液体90を貯留可能な容積を有した空間である。液体貯留部10は、内上面、内底面、内側面により区画される。液体貯留部10は、予め液体90を貯留している。液体貯留部10は、液体封止カートリッジ100の製造時点では空の状態で、液体封止カートリッジ100のユーザによって液体90が充填されてもよい。
【0021】
流路20は、液体貯留部10に貯留された液体90を流すように構成されている。流路20は、液体90を流通可能な中空の管状要素である。流路20は、少なくとも液体封止カートリッジ100の封止が解除された状態で、液体貯留部10と連通する。流路20は、封止が解除される前は、液体封止部30によって液体貯留部10との間が非連通状態で区画されうる。流路20は、たとえば液体封止部30を介して液体貯留部10につながる第1端と、液体90の移送先となる空間または液体封止カートリッジ100の外部につながる第2端と、を含む。
【0022】
液体封止部30は、液体貯留部10の液体90を封止するように構成されている。液体封止部30は、液体90が液体貯留部10から流路20に流れ込むことを阻止する。たとえば液体封止部30は、液体貯留部10と流路20との接続部分において、液体貯留部10と流路20とを遮断するように設けられる。液体封止部30は、1つの液体貯留部10に対して1つまたは複数設けられる。
【0023】
液体封止部30は、非可逆的に開封可能に構成されている。具体的には、液体封止部30は、押圧され、押圧力によって液体封止部30の一部が破断される。液体封止部30の破断によって、封止が解除される。たとえば液体封止部30の破断箇所を介して、液体90が流通可能となる。本明細書では、液体封止部30の一部が破断されて液体貯留部10の液体90が流通可能となることを、「開封」という。
【0024】
液体封止カートリッジ100は、これらの液体貯留部10、流路20および液体封止部30が形成された本体部50を有する。本体部50は、たとえば樹脂材料により構成される。樹脂材料はたとえばCOP(シクロオレフィンポリマー)が採用できる。液体貯留部10および流路20は、本体部50に形成された凹部または溝などにより形成される。液体貯留部10および流路20は、本体部50に形成された凹部または溝などがベースフィルム60により覆われることにより、液体封止カートリッジ100の内部空間として構築されうる。ベースフィルム60は、たとえば樹脂材料により構成される。樹脂材料はたとえばCOP(シクロオレフィンポリマー)が採用できる。ベースフィルム60は、液体貯留部10の内底面61を構成する。液体封止部30は、外周部33が本体部50に支持されている。
【0025】
図1の例では、液体封止カートリッジ100は、液体封止部30に対向するカバー部40をさらに備える。カバー部40は、液体封止部30を覆うように設けられている。カバー部40は、液体封止部30が開封された場合に、液体90が液体封止カートリッジ100の外部に流れ出ることを防止する。液体封止部30を開封する際には、液体封止カートリッジ100の外部から、カバー部40を介して液体封止部30に外力が付与される。そのため、カバー部40は、押圧部材361がカバー部40を介して液体封止部30を押圧できるように、外力により変形可能に構成されている。カバー部40は、たとえばフィルム状の部材であり、エラストマーやゴム等の弾性変形可能な材料により形成されている。カバー部40は、たとえばポリウレタンエラストマーにより形成されたフィルムである。本体部50が弾性変形可能である場合、液体封止カートリッジ100の外部から本体部50を介して液体封止部30を押圧できるので、別途カバー部40を設ける必要はない。
【0026】
液体封止部30を開封するため、液体封止カートリッジ100の外部から押圧部材361によって液体封止部30に押圧力が付与される。この際、押圧部材361は、まずカバー部40を液体封止部30に向けて押圧して弾性変形させる。押圧部材361は、カバー部40を介して液体封止部30に当接する。押圧部材361は、液体封止部30を押し込む方向へ移動し、液体封止部30を破壊することにより、液体封止部30の封止を解除する。押圧部材361は、たとえば棒状形状を有し、押圧を行う装置によって移動される。押圧を行う装置は、モータ、ボイスコイル、ばね、アキュムレータなどの押圧部材361を移動させる駆動源を有する。
【0027】
本実施形態では、液体封止部30は、外周部33と、外周部33よりも中央側の中央側低強度部31を有する。液体封止部30は、押圧されると中央側低強度部31が破断して、液体貯留部10の液体90を流路20へ流通可能とするように構成されている。
【0028】
具体的には、液体封止部30は、中央側低強度部31と、低強度部以外の部分である基体部32と、を含む。中央側低強度部31は、基体部32と比較して機械的強度が低い。つまり、中央側低強度部31は、開封のための押圧力が液体封止部30に作用した場合に、基体部32よりも破断し易い。中央側低強度部31は、基体部32と比較して、中央側低強度部31を破断させるために必要な外力が小さい。
【0029】
中央側低強度部31は、たとえば
図1に示したように、基体部32と比較して厚みが小さい。この他、たとえば、中央側低強度部31は、基体部32の構成材料よりも、機械的強度が低い材料により構成される。たとえば、中央側低強度部31は、内部が中空であるなど、基体部32と比較して密度が小さい構造を有する。
【0030】
中央側低強度部31は、液体封止部30の外周部33よりも中央側に配置され、中央側低強度部31の両側に基体部32が配置される。つまり中央側低強度部31と外周部33との間に基体部32が位置する。このため、
図1(A)のように液体封止部30がカバー部40を介して押圧されると、
図1(B)のように中央側低強度部31が破断する。中央側低強度部31が破断することにより、中央側の中央側低強度部31を境界として液体封止部30が割れる。つまり、中央側低強度部31の両側の基体部32の中央側端部が互いに離れる。押圧力により、中央側低強度部31の両側の基体部32は、両開きする扉のように互いに離れる方向へ押し拡げられる。
【0031】
図1(C)に示すように、押圧力の作用後、液体封止部30には、液体貯留部10を液体貯留部10の外部へ連通させる貫通孔THが形成される。貫通孔THの形成により、液体封止部30による封止が解除される。このように、液体封止部30は、中央側低強度部31が破断することにより液体貯留部10の液体90を流路20へ流通可能とするように構成されている。
【0032】
中央側低強度部31を境界として、中央側低強度部31の両側の基体部32が押圧部材361に押し拡げられる。両側の基体部32は、それぞれ、液体封止部30の外周部33を中心に旋回する。このため、基体部32の旋回半径Rは、液体封止部30の全幅Wの半分程度となる。したがって、液体封止部30の封止解除に必要とされる押圧部材361の押し込み深さは、全幅Wの液体封止部30の一方の端部を中心に液体封止部30の全体を旋回させる場合(つまり、旋回半径が全幅Wになる場合、
図31参照)と比べて、小さくなる。
【0033】
(液体封止カートリッジの効果)
本実施形態の液体封止カートリッジ100では、上記のように、液体封止部30が押圧されると、液体封止部30の中央側低強度部31を境に、両側に割れるように破断する。このため、液体封止部30の両端部をそれぞれ旋回中心として、旋回部分の半径Rを小さくできる。これにより、旋回部分の半径Rを小さくできるので、液体封止部30が液体封止カートリッジ100の内底面61に接触する前に液体封止部30の押圧を終了できるか、液体封止部30が内底面に接触する場合でも押圧力の増大を従来よりも抑制できる。これらの結果、押圧を行う装置の負荷を抑制し、かつ、液体封止カートリッジ100の内底面の破損を抑制することができる。
【0034】
また、液体封止部30に対向するカバー部40を備える構成では、カバー部40により液体封止部30を覆ったまま、カバー部40を介して液体封止部30を押圧することにより、液漏れを生じることなく液体封止部30を開封できる。この場合、押圧時の押し込み深さが大きくなると、カバー部40が破損する可能性が生じるが、本実施形態では押圧時の押し込み深さを小さくできるので、内底面61だけでなくカバー部40の破損を抑制できる。
【0035】
(液体封止カートリッジの付加的構成)
図1の例では、液体封止部30は、押圧方向から見て、中央側低強度部31に対して一方側に隣接する一方部32aと中央側低強度部31に対して他方側に隣接する他方部32bとを含んでいる。一方部32aおよび他方部32bは、基体部32の一部である。
【0036】
図1(B)および
図1(C)に示すように、一方部32aおよび他方部32bは、液体封止部30の外周部33から中央側低強度部31まで連続し、押圧により押圧方向に変形するように構成されている。一方部32aおよび他方部32bは、外周部33において完全に破断することなく、外周部33を中心に旋回するように塑性変形する。
【0037】
これにより、中央側低強度部31が破断しても、一方部32aと他方部32bとがいずれも液体封止部30の外周部33とつながったまま保持される。ここで、破断した箇所が液体封止部30から分離すると、分離した部分が液体貯留部10または流路20に脱落し、脱落する位置によっては送液の妨げになる可能性がある。これに対して、一方部32aおよび他方部32bが液体封止部30から分離することを抑制できる。なお、本実施形態の液体封止カートリッジ100では、一方部32aおよび他方部32bが完全に分離しなければ、一方部32aおよび他方部32bが部分的に破断してもよい。
【0038】
また、
図1(B)の例では、中央側低強度部31は、押圧により破断して、一方部32aおよび他方部32bの少なくとも一方に保持されるように形成されている。これにより、一方部32aおよび他方部32bのみならず、中央側低強度部31が破断して液体封止部30から分離することを回避できる。
【0039】
(送液方法)
次に、本実施形態の送液方法について説明する。本実施形態の送液方法は、液体90を貯留する液体貯留部10と、液体貯留部10を封止する液体封止部30と、を備えた液体封止カートリッジ100の送液方法である。
【0040】
図2に示すように、本実施形態の送液方法は、少なくとも、次のS1およびS2のステップを含む。(S1)液体封止部30の中央側低強度部31を押圧し中央側低強度部31を境に破断させる。(S2)中央側低強度部31が破断された液体貯留部10から液体90を流す。
【0041】
ステップS1では、押圧部材361を移動させることにより、液体封止部30の中央側低強度部31を押圧する。押圧により、中央側低強度部31が破断する。液体封止部30は、中央側低強度部31を境界として液体封止部30が割れて破断する。このため、中央側低強度部31の両側の基体部32が離れて、破断箇所に貫通孔THが形成される。押圧力により、中央側低強度部31の両側の基体部32は、両開きする扉のように互いに離れる方向へ押し拡げられる。ステップS1の詳細は、液体封止カートリッジ100について
図1で説明した通りである。
【0042】
ステップS2では、液体貯留部10内の液体90に外力を作用させて、中央側低強度部31が破断された液体貯留部10から液体90を流す。液体90に作用させる外力は、特に限定されない。液体90に作用させる外力は、たとえば重力、圧力、遠心力などでありうる。重力により、液体貯留部10から液体封止カートリッジ100内の液体貯留部10よりも低い位置へ、または液体貯留部10から液体封止カートリッジ100の外部へ、流せる。たとえば液体封止カートリッジ100に対して外部の圧力源から空圧または水圧を供給することにより、液体貯留部10から液体90を任意の位置へ流せる。
【0043】
図3の例では、液体貯留部10が流路20に対して液体封止カートリッジ100の中心側に配置されている。液体90を流すステップS2において、液体貯留部10の液体90が押圧された中央側低強度部31(
図1参照)を介して流路20へ流れるように、液体封止カートリッジ100を回転させる。
【0044】
すなわち、ステップS1による封止解除後、液体封止カートリッジ100を中心軸101周りに回転させ、液体貯留部10内の液体90に遠心力を作用させる。これにより、液体貯留部10から外周側の流路20へ液体90が移動する。
【0045】
(送液方法の効果)
本実施形態の送液方法では、上記のように、押圧により、液体封止部30の中央側低強度部31を境に、両側に割れるように破断させることができる。その結果、押圧に伴う液体封止部30の旋回部分の半径を小さくできる。これにより、旋回部分の半径を小さくできるので、液体封止部30が液体封止カートリッジ100の内底面61に接触する前に液体封止部30の押圧を終了できるか、液体封止部30が内底面61に接触する場合でも押圧力の増大を従来よりも抑制できる。これらの結果、押圧を行う装置の負荷を抑制し、かつ、液体封止カートリッジ100の内底面61の破損を抑制することができる。
【0046】
また、
図3に示した回転により送液をする構成によれば、液体封止カートリッジ100を回転させるだけで、液体90を送液できる。
【0047】
(液体封止カートリッジの構成例)
図3に示した例では、液体封止カートリッジ100が、液体貯留部10、流路20および液体封止部30が形成された円盤状の本体部50を備える。液体貯留部10が流路20に対して本体部50の中心側に配置されている。液体封止カートリッジ100は、本体部50を回転させることにより、液体貯留部10の液体90が流路20へ流れるように構成されている。これにより、液体封止カートリッジ100を回転させるだけで、液体90を送液できる。
【0048】
液体貯留部10には、半径方向外側の液体封止部30Aと、半径方向内側の液体封止部30Bと、が設けられている。半径方向内側の液体封止部30Bは、空気孔102につながっている。半径方向外側の液体封止部30Aは、流路20につながっている。液体封止部30A、30Bを開封することにより、送液時に、液体貯留部10の液体90が流路20へ流れると、空気孔102から液体貯留部10に空気が流入する。その結果、液体貯留部10の内部が負圧になって液体90の移動の妨げになることが回避できる。
【0049】
また、液体封止部30は、液体貯留部10と一体的に設けられている。これにより、液体封止部30と液体貯留部10とを別部品として設ける場合と比べて液体封止カートリッジ100の部品点数を抑制できる。また、部品間の隙間が形成されないので液体90の封止を確実に行える。
【0050】
(液体封止部の構成例)
次に、
図4~
図18を参照して、液体封止部30の構成例を説明する。
【0051】
〈低強度部の平面形状および配置〉
まず、液体封止部30の表面を平面的に見た場合の、低強度部の形状および配置の例を説明する。
図4および
図5では、便宜的に、低強度部にハッチングを付し、基体部32および基体部32の一部である一方部32a、他方部32bを、ハッチングなしの領域として図示している。
【0052】
図4(A)~
図4(F)の例では、中央側低強度部31は、液体封止部30の中央部34に設けられている。これにより、中央部34を境に両側に2分割するように液体封止部30が破断する。そのため、液体封止部30の両端部をそれぞれ旋回中心とする旋回部分の半径を均一かつ最小限にできる。ここで、中央部34は、液体封止部30の中央に設けられている形態に限られず、外周部33よりも中央側に設けられていれば特に限定されない。
【0053】
中央側低強度部31の周囲に基体部32が形成されている。中央側低強度部31を境として一方部32aおよび他方部32bが両側に割れる形態で中央側低強度部31を破断できるように、中央側低強度部31は、正円形状などの等方的な形状ではなく、特定方向に向いた方向性を有する形状が好ましい。
【0054】
図4(A)~
図4(F)の例では、中央側低強度部31は、押圧される方向から見て、線状、長方形状、十字形状、楕円形状の少なくともいずれかの平面形状を有する。これにより、中央側低強度部31が所定方向に裂けるように破断するので、中央側低強度部31の破断方向を容易に制御できる。その結果、開封時に意図しない方向に破断することを抑制し、破断により形成される貫通孔THの形状のばらつきを抑制できる。
【0055】
図4(A)では、中央側低強度部31は、直線状または長方形状を有する。押圧部材361によって、押圧領域PAが押圧される。押圧領域PAは、押圧部材361からの押圧力が直接作用する領域であり、押圧時にカバー部40を介して押圧部材361と接触する領域である。中央側低強度部31は、少なくとも一部が押圧領域PAに含まれる。押圧力により、中央側低強度部31を境に、一方部32aと、他方部32bとの間が分離するように貫通孔THが形成される。
【0056】
図4(B)では、中央側低強度部31は、十字形状を有する。押圧領域PAが押圧されると、十字形状の中央側低強度部31が
図4(B)の縦方向または横方向に裂けるように破断する。あるいは、中央側低強度部31が十字に裂ける様に破断する。中央側低強度部31が十字に裂ける様に破断する場合、十字形状の四隅の基体部32が、4つの分割片としてそれぞれ分離するように貫通孔THが形成される。
【0057】
図4(C)では、中央側低強度部31は、楕円形状を有する。この場合、
図4(A)と同様に、中央側低強度部31を境に、一方部32aと、他方部32bとの間が分離するように貫通孔THが形成される。
【0058】
図4(A)~(C)では、中央側低強度部31が、押圧領域PAの内側に収まる。一方、
図4(D)では、中央側低強度部31は、液体封止部30の中央部34から、押圧領域PAよりも外側まで延びるように形成されている。中央側低強度部31は、外周部33付近まで延びている。これにより、貫通孔THをより大きく形成できるので、液体90の移送時に、開封後の液体封止部30が障害物となることに起因する液体90の残留量を低減できる。また、中央側低強度部31が大きい程、より小さい押圧力で開封できるため、押圧を行う装置の負荷を効果的に抑制できる。
【0059】
図4(E)では、中央側低強度部31は、液体封止部30の中央部34において第1方向A1に延びている。そして、第1方向A1が、液体封止部30を通過する液体90の送液方向に沿っている。
【0060】
これにより、中央側低強度部31が送液方向に沿って破断する。そのため、貫通孔THが、送液方向における液体封止部30の端部EPに近い位置まで形成できる。そのため、開封後の液体封止部30が壁になって液溜まりが形成される場合に、貫通孔THが端部EPに近い位置まで形成されていると、液溜まりの量を低減できる。つまり、送液時に、液体封止部30に起因する液体90の残留量が低減できるので好ましい。
【0061】
図4(F)に示すように、中央側低強度部31の第1方向A2が、送液方向と異なっていてもよい。
【0062】
図5(A)に示すように、中央側低強度部31は、液体封止部30の中央部34から液体封止部30の外周部33側に偏心した位置に形成されていてもよい。
図5(A)では、中央側低強度部31が、液体封止部30のうちの送液方向の端部EP側へ偏心して形成されている。この場合、
図4(E)と同様に、送液時の液体90の残留量を低減できるので好ましい。
【0063】
図5(B)に示すように、液体封止部30に中央側低強度部31-1と、外周部33に形成され、中央側低強度部31-1とは異なる外周側低強度部31-2が設けられていてもよい。
図5(B)では、中央側低強度部31-1と、外周側低強度部31-2と、を含む。
【0064】
液体封止部30が押圧されると、中央側低強度部31-1および外周側低強度部31-2が破断するが、中央側低強度部31-1と外周側低強度部31-2との間の基体部32も幅が狭くなっていることから破断し易くなる。これにより、開封時に、中央側低強度部31-1の貫通孔THと外周側低強度部31-2の貫通孔THとがつながって、送液方向に沿って液体封止部30の中央部34から外周部33まで延びる大型の貫通孔THが形成される。そのため、開封後の液体封止部30に起因する液体90の残留量を低減できる。
【0065】
また、破断前の状態では、中央側低強度部31-1と外周側低強度部31-2とが離れていて、両者の間に基体部32が介在するので、中央側低強度部31-1と外周側低強度部31-2が直接押圧されない場合の機械的強度を確保できる。そのため、外部からの衝撃等による意図しない開封を抑制できる。
【0066】
図5(C)に示す例では、中央側低強度部31-1と外周側低強度部31-2とが、送液方向に沿って並ぶように形成されている。これによると、開封時に、中央側低強度部31-1の貫通孔THと外周側低強度部31-2の貫通孔THとがつながって、送液方向に沿って液体封止部30の中央部34から外周部33まで延びる大型の貫通孔THが形成される。そのため、開封後の液体封止部30に起因する液体90の残留量を低減できる。
【0067】
図5(D)に示す例では、中央側低強度部31は、液体封止部30の中央部34から外周部33までつながって延びる。つまり、1つの中央側低強度部31が、中央部34に配置された第1部分31Aと、液体封止部30の外周部33に沿う第2部分31Bとを一体的に含んでいる。これによっても、大型の貫通孔THが形成されるので、液体90の残留量を低減できる。また、中央側低強度部31が液体封止部30の一端から他端まで連続しているので、小さい押圧力で容易に封止を解除できる。
【0068】
低強度部のうちで、相対的に強度の高い部分と相対的に強度の低い部分とが設けられてもよい。
図5(E)に示す例では、中央側低強度部31-1は、外周側低強度部31-2よりも強度が低い。たとえば中央側低強度部31-1の厚みが、外周側低強度部31-2の厚みよりも小さい。
図5(E)では、強度の相違を、ハッチングの相違により示している。なお、中央側低強度部31-1および外周側低強度部31-2は、基体部32よりも強度が低い。
【0069】
このように強度の分布を設けることによって、破断順序をコントロールできる。その結果、たとえば機械的な誤差や、液体封止カートリッジ100の寸法誤差等によって、中央側低強度部31-1に対する押圧位置のずれが生じても、形成される貫通孔THの形状がばらつくことを抑制できる。
【0070】
(液体封止部の第1の具体的構成例)
図6~
図10は、液体封止部30の具体的な構成例の1つを示す。
【0071】
図6に示す第1の具体的構成例では、液体封止部30は円形状の平面形状を有する。中央側低強度部31-1は、液体封止部30の中央部34に十字状に形成されている。外周側低強度部31-2は、液体封止部30の外周部33に形成されている。外周側低強度部31-2は、中央部34を取り囲むように円環状に形成されている。基体部32が、外周側低強度部31-2の内側で中央側低強度部31-1を取り囲むように形成されている。つまり、中央側低強度部31-1と外周側低強度部31-2との間の部分が基体部32である。
【0072】
図9、
図10に示すように、液体封止部30は、流路20の底面の一部を構成する。流路20の上面開口は、本体部50の一方表面51に設けられたカバー部40により覆われる。
【0073】
図7(B)および
図8に示すように、液体封止部30は、カバー部40(
図9、
図10参照)を介して押圧される受圧面35aを有する。受圧面35aは、液体封止部30のカバー部40側の面である。また、液体封止部30は、押圧部材361によって押圧される凸部35cを有する。凸部35cは、カバー部40に向けて突出している。凸部35cは、液体封止部30の中央部34に形成されている。受圧面35aのうち凸部35cの形成部分が、液体封止部30の押圧領域PAになる。凸部35cがカバー部40側へ突出していることにより、より小さい押し込み深さで、押圧部材361がカバー部40を介して液体封止部30を押圧できる。
【0074】
図9、
図10に示すように、液体封止部30は、液体貯留部10の上面の一部を構成する。液体貯留部10の底面開口は、本体部50の他方表面52に設けられたベースフィルム60により覆われる。
図7(A)および
図8に示すように、液体封止部30の受圧面35aとは反対側の裏面35bに、非貫通の凹部36が形成されている。
図9、
図10に示すように、液体封止部30において、凹部36の形成箇所の厚みが小さくされている。液体封止部30の中央部34に設けられた中央側低強度部31-1は、凹部36によって構成されている。
【0075】
このように、中央側低強度部31-1は、受圧面35aの裏側に形成された凹部36により構成されている。ここで、凹部36が受圧面35a側にある場合(
図16参照)、中央側低強度部31が破断され基体部32が旋回する際に、受圧面35aに形成された凹部36の角部36a(
図16参照)同士が接触して、旋回の妨げになる可能性がある。これに対して、
図10のように凹部36を受圧面35aの裏側に設ける場合、角部36a同士が離れる方向に旋回するので、角部36a同士の接触を防止できる。
【0076】
図9および
図10に示すように、中央側低強度部31-1は、厚みt1を有する。突出した凸部35cの形成領域において、凹部36が形成されていない領域が、基体部32である。基体部32は、厚みt2を有する。中央側低強度部31の厚みt1は、基体部32の厚みt2よりも小さい。
【0077】
図9および
図10の例では、液体封止部30は、外周部33に外周側低強度部31-2を有する。外周側低強度部31-2は、外周部33と凸部35cとの間を接続している。外周側低強度部31-2は、厚みt3を有する。厚みt3は、基体部32の厚みt2よりも小さい。
【0078】
このように、低強度部(31-1、31-2)は、隣接する領域よりも小さい厚みを有する。これにより、液体封止部30の厚みを小さくするだけで、容易に低強度部を形成できる。
【0079】
(液体封止部の第2の具体的構成例)
図11~
図15は、液体封止部30の第2の具体的な構成例を示す。
【0080】
図11に示す第2の具体的な構成例では、液体封止部30は、円形状の平面形状を有する。中央側低強度部31-1が、X方向に延びる直線形状を有する。一対の外周側低強度部31-2が、外周部33に形成されている。一対の外周側低強度部31-2は、中央側低強度部31-1の延長線と外周部33との交点から周方向の両側へ延びている。中央側低強度部31-1と、一対の外周側低強度部31-2とは、X方向において最も近接している。基体部32は、X方向と直交するY方向において、液体封止部30の外周部33から中央側低強度部31-1の位置まで連続している。
【0081】
押圧領域PAが押圧されると、まず押圧領域PAにある中央側低強度部31-1が破断して、次に一対の外周側低強度部31-2が破断する。この過程で、X方向における中央側低強度部31-1と、一対の外周側低強度部31-2との間の部分BAが破断して、中央側低強度部31-1の破断箇所と一対の外周側低強度部31-2の各破断箇所とがつながる。この結果、開封後は、基体部32のうち一方部32aと他方部32bとの2つの部分がY方向に向けて押し拡げられる。
【0082】
第2の具体的構成例において、
図12(B)に示す液体封止部30の受圧面35a側の構造は、
図7に示した第1の具体的構成例と同様である。
【0083】
図12(A)および
図13に示す例では、液体封止部30の裏面35bに、直線状の凹部36が形成されている。液体封止部30の中央部34に設けられた中央側低強度部31-1は、凹部36によって構成されている。
【0084】
液体封止部30の裏面35bには、さらに液体封止部30の外周部33に沿う一対の凹部37が形成されている。一対の凹部37は、円弧状に延びている。一対の凹部37によって、外周部33に形成された一対の外周側低強度部31-2が構成されている。
【0085】
図14および
図15に示すように、中央側低強度部31-1は、厚みt5を有する。中央側低強度部31-1に隣接する基体部32は、厚みt6を有する。中央側低強度部31-1の厚みt5は、基体部32の厚みt6よりも小さい。
【0086】
図14および
図15の例では、外周側低強度部31-2は、厚みt7を有する。外周側低強度部31-2とX方向に隣接する基体部32は、厚みt8を有する。厚みt7は、厚みt8よりも小さい。厚みt8は厚みt6よりも小さく、ある程度の柔軟性を示し、開封時に本体部50とつながったままヒンジの役割を果たす。
【0087】
図15に示すように、液体封止部30は、液体貯留部10の上面に設けられ、液体封止部30の外周部33から中央側低強度部31-1までの長さRが、液体封止部30から液体貯留部10の内底面61までの深さHよりも小さい。
【0088】
これにより、外周部33を旋回中心として長さRの範囲が最大限旋回しても、液体貯留部10の内底面61に接触することがない。そのため、液体貯留部10の内底面61の破損を、より確実に抑制できる。
【0089】
(低強度部の断面形状)
第1および第2の具体的構成例では、液体封止部30の裏面35bに形成された凹部36によって中央側低強度部31-1が構成される例を示したが、これに限られない。
図16では、中央側低強度部31が、液体封止部30のカバー部40側の受圧面35aに形成された凹部36によって構成されている。
【0090】
上記のように、凹部36の幅が狭いと、一方部32aと他方部32bとが旋回する際に、受圧面35aに形成された凹部36の角部36a同士が接触して、旋回の妨げになる可能性がある。そのため、
図16のように角部36aに面取りを施すか、凹部36の幅を十分に大きくすることが好ましい。
【0091】
図9、
図10、
図14および
図15に示した例では、液体封止部30が、本体部50の一方表面51および他方表面52に平行な板状形状を有する。一方、
図17では、液体封止部30の外周部33が傾斜している例を示す。
【0092】
図17では、液体封止部30の外周部33が、液体封止カートリッジ100の内底面61側に向けて傾斜している。これにより、液体封止部30の外周部33が、予め押圧方向の奥側へ傾いているので、小さいストロークで容易に開封できる。
【0093】
また、
図18では、液体封止部30のカバー部40側の受圧面35aが、液体封止カートリッジ100の内底面61側に向けて傾斜している。液体封止部30の受圧面35aは、外周部33側から中央部34側に向かうに従って、内底面61に近付くように傾斜している。
図18では、受圧面35aは傾斜した平面であるが、曲面でもよい。これにより、押圧時に、液体封止部30の中央部34の中央側低強度部31に荷重を集中させることができる。また、誤差等により、矢印で示す押圧部材361の押圧位置が液体封止部30の中央部34から僅かにずれても、傾斜した受圧面35aがガイドとして機能するので、確実に押圧力を中央側低強度部31に作用させることができる。
【0094】
(液体封止カートリッジの具体的構成例)
次に、液体封止カートリッジ100の具体的な構成例を説明する。
【0095】
図19に示す液体封止カートリッジ100は、被検物質を含む測定試料から生じる光を検出するための検出装置300(
図20参照)に設置され、測定試料から生じる光の検出に用いるカートリッジである。
【0096】
被検物質は、たとえば被検者であるヒトから採取された検体に含まれる物質である。検体は、血液(全血、血清または血漿)、尿、組織液その他の液体試料、または、採取された液体試料に所定の前処理を施して得られた試料などである。検体は、主成分として液体を含み、細胞などの固体成分を含み得る。被検物質は、たとえば、抗原または抗体などのタンパク質、ペプチド、細胞および細胞内物質、DNA(デオキシリボ核酸)などの核酸であり得る。
【0097】
測定試料は、被検物質を含むとともに、光を発生する物質を含む。被検物質自体が、光を発生する物質であり得る。測定試料は、被検物質と試薬との混合液でありうる。試薬は、たとえば、被検物質の量に応じて発光する。発光は、たとえば化学発光または蛍光である。試薬は、たとえば被検出物質と特異的に結合する標識物質を含む。標識物質は、化学発光物質または蛍光物質であり得る。たとえば、標識物質が酵素を含み、試薬が酵素と反応する発光基質を含む。測定試料から生じる光を検出することにより、測定項目に応じた被検物質の有無、被検物質の量または濃度、粒子状の被検物質であれば大きさや形状などが測定されうる。測定項目によって、測定試料に混合される試薬の種類が異なる。測定項目毎に、複数種類の液体封止カートリッジ100のバリエーションがあり得る。液体封止カートリッジ100は、異なる複数の測定項目を測定可能であってもよい。
【0098】
液体封止カートリッジ100は、抗原抗体反応を利用して検体中の被検物質を検出するための処理を実行可能な検体処理カートリッジとして構成されている。そして、測定試料の調製に用いられる試薬である液体90が、液体貯留部10に収容され、液体封止部30A、液体封止部30Bにより封止されている。
【0099】
図19の例では、液体封止カートリッジ100は平板形状を有する。液体封止カートリッジ100は、回転軸321を中心に回転される。具体的には、液体封止カートリッジ100は、円盤形状の本体部50により構成されたディスク型のカートリッジである。
【0100】
図19の例では、本体部50は、後述するヒータ371による液体封止カートリッジ100の温度調節が容易となるような厚みを有する。たとえば、本体部50の厚みは、数mmとされ、具体的には約1.2mmとされる。本体部50の直径は、直径数cmから十数cmとされ、たとえば約12cmとされる。
【0101】
図19に示す液体封止カートリッジ100は、カートリッジの内部で検体の処理が行われる処理領域110を備えている。
図19の例では、液体封止カートリッジ100が1つの処理領域110を備える。
図19の例では、処理領域110は、本体部50の中心から約120度の範囲で扇状に拡がる領域として形成されている。
【0102】
液体封止カートリッジ100は、回転軸321を中心に回転される平板形状を有している。液体封止カートリッジ100は、本体部50の中心において本体部50を貫通する孔55を有する。液体封止カートリッジ100は、孔55の中心が、回転軸321の中心に一致するように検出装置300(
図20参照)に設置される。
【0103】
(処理領域)
処理領域110には、導入口111と、分離部112と、回収部113と、6つのチャンバ121~126と、流路131~135と、7つの液体貯留部10と、を含む。7つの液体貯留部10の各々に、液体封止部30A、30Bが設けられている。導入口111に検体が注入される。検体は、被検者から採取された全血の血液検体である。
【0104】
分離部112、回収部113、チャンバ121~126は、それぞれ、液体を収容可能な空間部である。分離部112、回収部113、チャンバ121~126は、それぞれ、壁部53によって区画されている。分離部112、回収部113、チャンバ121~126は、本体部50の外周端部近傍において周方向に並んでいる。
【0105】
分離部112は、流路131を介して、導入口111に接続している。導入口111から注入された検体は、液体封止カートリッジ100の回転により発生する遠心力によって、流路131を介して分離部112に移送される。
【0106】
回収部113は、分離部112よりも径方向外側に配置されており、流路132を介して分離部112に接続している。流路131から分離部112に流入する検体は、遠心力によって、径方向外側から順に溜まっていく。分離部112内に溜まった検体が流路132に到達すると、それ以上の量の検体が、遠心力の作用によって回収部113に移動される。これにより、分離部112内に貯留される検体が一定量に定量される。
【0107】
分離部112内の検体は、液体封止カートリッジ100の回転により発生する遠心力によって、液体成分である血漿と、固体成分である血球その他の非液体成分に遠心分離される。分離部112で分離された血漿は、毛細管現象により、流路133に移動する。流路133は、チャンバ121の直前の接続部で内径が絞られている。血漿は、チャンバ121の直前まで流路133内を満たす。
【0108】
流路133は、チャンバ121に接続している。血漿が流路133内を満たした状態で、液体封止カートリッジ100の回転により遠心力が加えられると、流路133内の血漿がチャンバ121に移送される。流路133の容積によって、チャンバ121に移送すべき所定量の血漿が定量される。
【0109】
図19の構成例では、チャンバ121~126が、互いに隣り合うように周方向に並んで配列されており、周方向に延びる流路134を介して接続されている。後述するように、これらチャンバ121~126の間では、一方側(チャンバ121側)から他方側(チャンバ126側)に向けて、被検物質が流路134を介して1つずつ順番に移送されていく。また、チャンバ121~126の各々には、対応する液体貯留部10に収容された試薬が流路135を介して個別に移送される。
【0110】
チャンバ121には、流路133を介して、被検物質を含む液体が移送される。チャンバ121には、磁性粒子MPが封入されている。チャンバ121において、検体に含まれる被検物質は、磁性粒子MPとの複合体とされる。そのため、チャンバ121以降は、液体封止カートリッジ100の回転と磁力の作用との組み合わせにより、磁性粒子MPと結合した被検物質が流路134を介して他のチャンバへ移送される。
【0111】
流路134は、径方向に延びた6つの径方向領域134aと、周方向に延びた円弧状の周方向領域134bと、を含む。周方向領域134bは、6つの径方向領域134aと繋がっている。6つの径方向領域134aは、対応する6つのチャンバ121~126にそれぞれ繋がっている。
【0112】
7つの液体貯留部10は、それぞれ径方向の流路135を介して流路134に繋がっている。チャンバ121~125に対してそれぞれ1つずつ、6つの液体貯留部10が設けられている。チャンバ126には、2つの液体貯留部10が設けられている。7つの液体貯留部10は、それぞれ対応するチャンバ121~126と径方向に並んで配置されている。合計7つの液体貯留部10が液体封止カートリッジ100の内周側に配置され、チャンバ121~126が液体封止カートリッジ100の外周側に配置されている。
【0113】
液体貯留部10は、液体90である試薬を収容する。液体貯留部10は、径方向の両端部に2つずつ液体封止部30A、30Bを備える。液体封止部30A、30Bが開封されると、液体貯留部10内の試薬が流路135に流通可能になる。試薬は、液体封止カートリッジ100が回転されると、遠心力により対応するチャンバ121~126に移動する。
【0114】
なお、各液体貯留部10は、いずれも、1回分の測定が可能な試薬を予め収容している。つまり、液体封止カートリッジ100は、被検物質に対する1回分の測定が可能な試薬を収容した液体貯留部10を備えている。
【0115】
液体封止カートリッジ100では、チャンバ121において磁性粒子MPに被検物質を担持させた後、それぞれのチャンバ122、123、124、125で被検物質が試薬と混合される。チャンバ121~125における処理は、被検物質を検出するためのアッセイに応じて設定される。たとえば、試薬による処理は、被検物質と標識物質とを結合させる。最終的に、被検物質と標識物質とを担持した磁性粒子MPがチャンバ126に移動される。チャンバ126において、発光する測定試料の調製が完了する。検出装置300の光検出器331(
図22参照)によって測定試料から生じる光が検出される。
【0116】
なお、
図19の例では、本体部50に1つの処理領域110が形成されている。しかしながら、これに限らず、処理領域110が2つ以上形成されてもよい。たとえば本体部50を120度ずつ3等分するように、3つの処理領域110が形成されてもよい。
【0117】
また、チャンバおよび流路の数および形状は、
図19に示したものに限られない。処理領域110の各部の構成は、処理領域110において実行される検体処理アッセイの内容に応じて決定されるものである。
【0118】
(液体貯留部および液体封止部)
液体貯留部10および液体封止部30の詳細な構成について説明する。
図19に示した液体封止カートリッジ100では、液体貯留部10が本体部50の中心側に設けられている。液体貯留部10は、半径方向に直線状に延びる。半径方向における液体貯留部10の外側端部と内側端部とに、それぞれ液体封止部30Aと液体封止部30Bとが設けられている。
【0119】
液体貯留部10の径方向内側の端部は、液体封止部30Bを介して空気孔115に接続されている。空気孔115は、液体封止カートリッジ100の外部に開口している。液体貯留部10の径方向外側の端部は、液体封止部30Aを介して流路135と接続されている。
【0120】
流路135は、半径方向に向けて延びている。流路135は、半径方向における内側端部が、液体貯留部10のうち1つと液体封止部30Aを介して接続され、外側端部がチャンバ121~126のうち1つと接続されている。このように、1つの液体貯留部10、1つの流路135および1つのチャンバが、本体部50の径方向に沿って内周側から順に並んでいる。
【0121】
1つの液体貯留部10に設けられた2つの液体封止部30Aおよび液体封止部30Bが開封されると、液体貯留部10は、内側端部が液体封止カートリッジ100の外部に連通し、外側端部が流路135を介して対応するチャンバに連通する。
【0122】
液体封止カートリッジ100の回転に伴う遠心力により、液体貯留部10内の液体90が、液体封止部30Aを通って流路135へ流出し、流路135を通ってチャンバ内に流入する。液体貯留部10内の液体90が流出する際、空気孔115および液体封止部30Bを介してカートリッジの外部の空気が流れ込む。
【0123】
液体封止部30Aおよび液体封止部30Bの構造は、上記した各種の構成例のいずれでもよい。たとえば一例として、
図11~
図15に示した構成例が、液体封止部30Aおよび液体封止部30Bに採用されている。
【0124】
(検出装置の概要)
次に、本実施形態による検出方法を実施する検出装置300の具体的な構成例について説明する。
【0125】
検出装置300は、ディスク型の液体封止カートリッジ100(
図19参照)を用いて測定を行う。
図20~
図24に示す例では、検出装置300は、液体封止カートリッジ100を用いて、抗原抗体反応を利用して検体中の被検物質を検出し、検出結果に基づいて被検物質を測定する免疫測定装置である。
【0126】
図20および
図21の構成例では、検出装置300は、液体封止カートリッジ100を収容可能な筐体310を備える。
【0127】
筐体310は、所定容積の内部空間を有する箱状部材や、フレームと外装板との組み合わせなどにより構成される。筐体310は、卓上設置が可能な小型の箱状形状を有する。
【0128】
筐体310は、基台部311と蓋部312とを備える。基台部311の上面部には、液体封止カートリッジ100が配置される配置部313が設けられている。蓋部312は、基台部311に対して上下に回動し、
図20に示す配置部313を開放した状態と、
図21に示す配置部313を覆う状態とに、開閉可能に設けられている。
【0129】
なお、カートリッジの設置方法としては、蓋部312を開放して配置部313に載置する方式以外に、筐体310に形成された挿入口から液体封止カートリッジ100を挿入するスロットローディング方式や、筐体310の内外に移動するトレイに液体封止カートリッジ100を載置するトレイローディング方式を採用してもよい。
【0130】
図22に示すように、検出装置300は、回転機構320と、測定部330と、撮像部340と、照明部341と、を備える。また、検出装置300は、磁石駆動部350と、押圧部360と、ヒータ371および温度センサ372と、クランパ373と、を備える。これらの各部は、筐体310内に収容されている。
【0131】
配置部313には、液体封止カートリッジ100を下方から支持する支持部材314が配置されている。支持部材314は、たとえば、ターンテーブルにより構成される。支持部材314は、回転機構320の回転軸321の上端部に設けられている。支持部材314は、液体封止カートリッジ100を、予め決められた相対回転角度となる状態で支持するように構成されている。
【0132】
クランパ373は、蓋部312が閉じられた状態で、支持部材314上に設置された液体封止カートリッジ100の上面の中心部を回転可能に支持する。
【0133】
回転機構320は、回転軸321と、電動モータなどの駆動部322とを備える。回転機構320は、駆動部322を駆動させて、支持部材314に設置された液体封止カートリッジ100を、回転軸321を中心に回転させる。回転機構320は、駆動部322の回転角度を検出するためのエンコーダ323と、回転角度の原点位置を検出する原点センサ324とを含む。原点センサ324による検出位置を基準として、エンコーダ323の検出角度に基づいて駆動部322が駆動されることにより、液体封止カートリッジ100を任意の回転位置に移動させることが可能である。
【0134】
回転機構320は、回転軸321を介して液体封止カートリッジ100を保持する。回転軸321は、たとえば検出装置300の設置状態で、鉛直方向に向く。液体封止カートリッジ100は、水平方向に沿う姿勢で、回転機構320に支持される。
【0135】
駆動部322が回転軸321を軸中心に回転させることにより、液体封止カートリッジ100が回転軸321を中心に回転する。この結果、液体封止カートリッジ100のチャンバ121~126および液体貯留部10などの各部は、それぞれの配置位置から回転軸321までの径方向の距離に相当する回転半径の円周軌道で、回転軸321回りの周方向に移動する。
【0136】
磁石駆動部350は、磁石351を備え、液体封止カートリッジ100の内部の磁性粒子MPを径方向に移動させる機能を有する。磁石駆動部350は、配置部313の下方に配置され、磁石351を、径方向に移動させるように構成されている。磁石駆動部350は、磁石351を、液体封止カートリッジ100に対して近接または離隔する方向に移動させるように構成されている。磁石351を液体封止カートリッジ100に近づけることにより、液体封止カートリッジ100内の磁性粒子MPが集磁され、磁石351を液体封止カートリッジ100から遠ざけることにより、磁性粒子MPの集磁が解除される。
【0137】
押圧部360は、押圧部材361と、押圧部材361を上下方向に移動させる押圧駆動部362とを含む。押圧部材361は、上下方向に延びる棒状のピン部材であり、液体封止部30A、液体封止部30Bの押圧領域PAに対応させた外径を有する。押圧駆動部362は、電動モータなどの駆動源と、駆動源の回転を上下運動に変換するカム機構との組み合わせにより構成される。押圧部360は、1つの液体貯留部に対して2箇所ずつ設けられた液体封止部30A、液体封止部30Bを開栓できるように、2つ設けられている。
図23に示すように、平面視において、2つの押圧部360の回転軸321からの各距離が、液体貯留部10に設けられた2つの液体封止部30A、液体封止部30Bの回転軸321からの各距離と略一致する。
【0138】
押圧部360は、配置部313に配置された液体封止カートリッジ100の上方から、液体封止カートリッジ100に向けて押圧部材361を下方へ移動させて液体封止カートリッジ100と当接させる。押圧部360は、押圧部材361によりカバー部40を介して液体封止部30A、液体封止部30Bを押圧させる。押圧部360は、押圧により液体封止カートリッジ100内の液体封止部30A、液体封止部30Bの封止を解除する。開栓後、押圧部360は、押圧部材361を、液体封止カートリッジ100から上方へ離れて非接触となる退避位置へ移動させる。
【0139】
ヒータ371は、配置部313に配置された液体封止カートリッジ100の直下の位置、および、液体封止カートリッジ100の直上の位置に、それぞれ設けられている。ヒータ371は、液体封止カートリッジ100内に収容された試料を所定の反応温度に加温して、検体と試薬との反応を促進させる。温度センサ372は、赤外線により液体封止カートリッジ100の温度を検出する。
【0140】
測定部330は、基台部311に形成された開口を介して、配置部313に配置された液体封止カートリッジ100と対向する位置に、光検出器331を備えている。光検出器331は、検出位置332(
図23参照)に移動された測定試料から生じる光を検出する。光検出器331により、光子すなわちフォトンの受光に応じたパルス波形が出力される。測定部330は、内部に回路を備えており、光検出器331の出力信号に基づいて、一定間隔でフォトンを計数し、カウント値を出力する。
【0141】
光検出器331は、配置部313に配置された液体封止カートリッジ100の直下の位置に配置されている。
図23に示すように、回転機構320は、液体封止カートリッジ100を、回転軸321を中心に回転させることにより、チャンバ126を、光検出器331の直上の検出位置332に配置する。これにより、測定部330は、チャンバ126内から生じた光を光検出器331により検出する。
【0142】
撮像部340は、支持部材314上に設置された液体封止カートリッジ100の上面に対向するように設けられ、液体封止カートリッジ100の画像を取得するように構成されている。得られた画像により、液体封止カートリッジ100の内部の処理が適正に行われたか否かを確認することが可能である。撮像部340は、たとえば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなどを含む。照明部341は、たとえば発光ダイオードにより構成され、撮像時の照明光を発生する。
【0143】
撮像部340は、蓋部312に設けられた孔を介して、液体封止カートリッジ100の上面に直接的に対向する。照明部341は、蓋部312に設けられた孔を介して、液体封止カートリッジ100の上面に直接的に対向する。撮像部340の撮像範囲342(
図23参照)は、配置部313に配置された液体封止カートリッジ100が回転する場合に、チャンバ121~126、流路141~145などの一部または全部が通過するように設定されている。撮像部340は、照明光を利用して、液体封止カートリッジ100の内部の液体や磁性粒子MPの画像を取得する。
【0144】
また、
図23に示すように、撮像部340は、液体封止カートリッジ100の上面に設けられた識別子400を撮像する。識別子400は、バーコードや二次元コードなどの、画像から読取可能な情報記録媒体である。回転機構320は、液体封止カートリッジ100を回転させることにより、撮像範囲342内に識別子400を位置付ける。識別子には、測定項目を特定するための情報、試薬に関する情報、液体封止カートリッジ100を特定するための情報等が記録されている。
【0145】
この他、
図22に示す検出装置300は、蓋部312を開く際のユーザの操作を受け付ける操作部374、蓋部312の開閉を検知する検知部375、閉状態の蓋部312と係合して蓋部312をロックするロック機構376等を備える。
【0146】
図24は、
図22に示した検出装置300の各構成要素と、これらを制御信号により制御する制御部380と、の関係をブロック図で示している。
【0147】
検出装置300は、制御部380を備える。制御部380は、たとえば、プロセッサとメモリを含む。プロセッサは、たとえば、CPU、MPUなどにより構成される。メモリは、たとえば、ROMおよびRAMなどにより構成される。制御部380は、検出装置300の各部から信号を受信し、検出装置300の各部を制御する。
【0148】
検出装置300は、記憶部381を備える。記憶部381には、測定結果データが記憶される。記憶部381は、たとえば、フラッシュメモリ、ハードディスクなどにより構成される。
【0149】
検出装置300は、通信部382を備える。通信部382は、外部機器への情報の送信および外部機器からの情報の受信が可能である。通信部382は、たとえば通信モジュール、外部接続用のインターフェースなどを含む。通信部382は、有線または無線通信により、検出装置300と通信が可能な端末との通信、およびネットワークを介したサーバとの通信が可能である。通信により、測定結果データを含むログの送信や、検量線などの測定処理に関連するデータの取得が可能である。端末は、たとえば、タブレット型端末や、スマートフォンなどの携帯情報端末、PC(パーソナルコンピュータ)などの情報端末を含む。制御部380は、端末に表示させたユーザーインターフェースを介して、ユーザの操作入力を受け付けることが可能である。
【0150】
(検出装置の動作説明)
次に、
図25を参照して、検出装置300の動作について説明する。以下の説明において、検出装置300の構造については
図22および
図23を参照するものとする。液体封止カートリッジ100の構造については
図19を参照するものとする。
【0151】
まず、準備作業として、ユーザは、被検者から採取された血液検体を液体封止カートリッジ100の導入口111から注入する。ユーザは、導入口111に、測定対象となる検体を注入する。液体封止カートリッジ100の測定項目の一例として、B型肝炎表面抗原(HBsAg)の測定例を示す。血液検体中の被検物質は、抗原を含む。抗原は、B型肝炎表面抗原(HBsAg)である。測定項目は、前立腺特異抗原(PSA)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(FT4)などであってもよい。
【0152】
液体封止カートリッジ100において、チャンバ121の径方向に位置する液体貯留部10には、R1試薬が収容されている。チャンバ121内には、磁性粒子MPを含むR2試薬が収容されている。チャンバ122の径方向に位置する液体貯留部10には、R3試薬が収容されている。チャンバ123~125の径方向に位置する各液体貯留部10には、洗浄液が収容されている。チャンバ126の径方向に位置する液体貯留部10には、R4試薬が収容されている。チャンバ126の径方向に位置するもう1つの液体貯留部10には、R5試薬が収容されている。
【0153】
図25のステップS11において、制御部380は、測定を開始するための初期動作を実行する。
【0154】
具体的には、制御部380は、検知部375の信号に基づいて、蓋部312が閉じられていることを検知する。制御部380は、識別子400の読み取り動作を実行させる。識別子400が撮像部340により撮像されることにより、制御部380は、測定に用いられる各種情報を取得する。また、制御部380は、原点センサ324により検出される原点位置と、識別子400の読取位置とに基づいて、各チャンバ121~126、7つの液体貯留部10に設けられた7対の液体封止部30A、液体封止部30Bの回転位置を取得する。
【0155】
制御部380は、ステップS12以降、検出装置300による検体の処理動作を開始させる。また、各ステップの度に、制御部380は、検体処理が実行された箇所を回転機構320によって撮像部340の撮像範囲342に位置付け、撮像部340に撮影させる。制御部380は、撮像部340の撮像画像に基づいて検体処理が正常に実行されたか否かを監視する。なお、正常に実行されなかった場合、制御部380は所定のエラー処理を実行するが、ここでは説明を省略する。
【0156】
ステップS12において、制御部380は、検体を液体成分と固体成分とに分離する処理を実施する。制御部380は、回転機構320により液体封止カートリッジ100を高速回転させ、遠心力により、検体を流路131から分離部112に移動させる。このとき、所定量を超える余剰の検体が、回収部113へ移動する。また、分離部112内では、遠心力により、検体が血漿である液体成分と血球などの固体成分とに分離される。分離された血漿は、流路133内に移動して流路133を満たす。
【0157】
ステップS13において、制御部380は、血漿と試薬をチャンバに移送させる。すなわち、制御部380は、
図26のステップS31~S33を実行することにより、押圧部360により6つの液体貯留部10の液体封止部30A、液体封止部30Bを順番に開封させ、液体封止カートリッジ100を回転させて、チャンバ121~126の径方向に位置する6つの液体貯留部10に収容された液体90を、流路135を介して、それぞれチャンバ121~126に移送する。また、液体封止カートリッジ100の回転により、流路133内の血漿が、チャンバ121に移送される。6つの液体貯留部10から移送される液体90は、R1試薬、R2試薬、R3試薬、洗浄液、R4試薬である。ステップS31~S33の詳細については、後述する。
【0158】
これにより、チャンバ121には、R1試薬および血漿が移送され、チャンバ121において、血漿と、R1試薬と、R2試薬とが混合される。チャンバ122には、R3試薬が移送される。チャンバ123~125には、洗浄液が移送される。チャンバ126には、R4試薬が移送される。
【0159】
ステップS12における試薬の移送が終わると、制御部380は、さらに攪拌処理を行う。具体的には、制御部380は、所定の方向に回転させながら、異なる2つの回転速度を所定の時間間隔で切り替えるよう、回転機構320を駆動する。これにより、チャンバ121~126内の液体が攪拌される。攪拌処理は、ステップS13だけでなく、ステップS14~S19の最後にも、同様に行われる。
【0160】
ここで、R1試薬は、被検物質と結合する捕捉物質を含む。捕捉物質は、たとえば、被検物質と結合する抗体を含む。抗体は、たとえば、ビオチン結合HBsモノクローナル抗体である。R2試薬は、磁性粒子MPを含む。磁性粒子MPは、たとえば、表面がアビジンでコーティングされたストレプトアビジン結合磁性粒子である。ステップS13において、血漿と、R1試薬と、R2試薬とが混合され、攪拌処理が行われると、被検物質とR1試薬は、抗原抗体反応により結合する。そして、抗原-抗体反応体と磁性粒子MPとの反応により、R1試薬の捕捉物質と結合した被検物質が、捕捉物質を介して磁性粒子MPと結合する。その結果、被検物質と磁性粒子MPとが結合した状態の複合体が生成される。
【0161】
次に、ステップS14において、制御部380は、チャンバ121内の複合体を、チャンバ121からチャンバ122へ移送する。
【0162】
複合体の移送の際、制御部380は、磁石駆動部350を駆動して、磁石351を液体封止カートリッジ100に近付けて、チャンバ121内に広がる複合体を集める。制御部380は、磁石駆動部350の駆動による磁石351の径方向移動と、回転機構320による液体封止カートリッジ100の周方向移動とを組み合わせ、複合体を流路134に沿って移動させる。すなわち、制御部380は、チャンバ121内から、
図23の経路PT1の径方向内側移動、経路PT2の周方向移動、経路PT3の径方向外側移動の順で、チャンバ122まで複合体を移動させる。制御部380は、複合体の移動後、攪拌処理を行う。なお、チャンバ123~126の各々への複合体の移動は、同様の手法で実施されるので、詳細な説明は省略する。
【0163】
チャンバ122への複合体の移送により、チャンバ122において、チャンバ121で生成された複合体と、R3試薬とが混合される。ここで、R3試薬は、標識物質を含む。標識物質は、被検物質と特異的に結合する捕捉物質と、標識とを含む。たとえば、標識物質は、捕捉物質として抗体が用いられた標識抗体である。ステップS14において、チャンバ121で生成された複合体と、R3試薬とが混合され、攪拌処理が行われると、チャンバ121で生成された複合体と、R3試薬に含まれる標識抗体とが反応する。その結果、被検物質と、捕捉抗体と、磁性粒子MPと、標識抗体とが結合した複合体がチャンバ122内で生成される。
【0164】
ステップS15において、制御部380は、チャンバ122内の複合体を、チャンバ122からチャンバ123へ移送する。これにより、チャンバ123において、チャンバ122で生成された複合体と、洗浄液とがチャンバ123内で混合される。ステップS15において、攪拌処理が行われると、チャンバ123内で複合体と未反応物質とが分離される。すなわち、チャンバ123では、洗浄により未反応物質が除去される。
【0165】
ステップS16において、制御部380は、チャンバ123内の複合体を、チャンバ123からチャンバ124へ移送する。これにより、チャンバ124において、チャンバ122で生成された複合体と、洗浄液とが混合される。チャンバ124においても、洗浄により未反応物質が除去される。
【0166】
ステップS17において、制御部380は、チャンバ124内の複合体を、チャンバ124からチャンバ125へ移送する。これにより、チャンバ125において、チャンバ122で生成された複合体と、洗浄液とが混合される。チャンバ125においても、洗浄により未反応物質が除去される。
【0167】
ステップS18において、制御部380は、チャンバ125内の複合体を、チャンバ125からチャンバ126へ移送する。これにより、チャンバ126において、チャンバ122で生成された複合体と、R4試薬とが混合される。ここで、R4試薬は、チャンバ122で生成された複合体を分散させるための試薬である。R4試薬は、たとえば緩衝液である。ステップS18において、攪拌処理が行われると、チャンバ122で生成された複合体が、チャンバ126内でR4試薬中に分散される。
【0168】
ステップS19において、制御部380は、R5試薬をチャンバ126に移送する。具体的には、制御部380は、
図26のステップS31~S33を実行することにより、液体貯留部10の液体封止部30A、液体封止部30Bの封止を解除させ、液体封止カートリッジ100の回転により、液体貯留部10に収容されたR5試薬をチャンバ126に移送させる。これにより、チャンバ126において、ステップS18で生成された混合液に、さらにR5試薬が混合される。
【0169】
ここで、R5試薬は、複合体に結合された標識抗体との反応により光を生じる発光基質を含む。ステップS19において、ステップS18で生成された混合液と、追加で移送されたR5試薬とが混合され、攪拌処理が行われると、測定試料が調製される。測定試料は、複合体に結合された標識物質と、発光基質とが反応することにより、化学発光する。
【0170】
ステップS20において、制御部380は、回転機構320により、チャンバ126を光検出器331の直上の検出位置332に位置付ける。光検出器331は、チャンバ126から放射される光を検出する。
【0171】
ステップS21において、制御部380は、光検出器331により検出した光に基づいて、免疫に関する測定処理を行う。測定部330は、フォトンを計数し、カウント値を出力する。制御部380は、測定部330から出力されたカウント値と、検量線とに基づいて、被検物質の有無および量などを測定し、測定結果を生成する。
【0172】
測定結果が得られると、制御部380は、ステップS22において、測定結果データを記憶部381に記録する。また、制御部380は、通信部382により、測定結果データを端末またはサーバに送信する。
【0173】
以上により、検出装置300の測定動作が完了する。
【0174】
(送液処理)
次に、
図26を参照して、検出装置300による送液処理について説明する。
図26の送液処理は、
図25のステップS13およびS19において実行される。
図26の送液処理は、本実施形態の送液方法によって行われる。
【0175】
本実施形態の送液方法は、中央側低強度部31を押圧するステップS32の前に、液体貯留部10と液体封止部30A、液体封止部30Bが形成された本体部50および液体封止部30A、液体封止部30Bを押圧する押圧部材361の少なくとも一方を移動させることにより、液体封止部30A、液体封止部30Bに対する押圧位置を合わせるステップS31を備える。
【0176】
これにより、液体封止部30A、液体封止部30Bのうち中央側低強度部31を、より確実に押圧できる。中央側低強度部31に押圧力を直接加えることによって、より小さい負荷(押圧力)で、液体封止部30A、液体封止部30Bを開封できる。
【0177】
具体的には、押圧位置を合わせるステップS31において、本体部50を移動させることにより、中央側低強度部31に対する押圧部材361の押圧位置を合わせる。つまり、制御部380は、回転機構320を駆動して液体封止カートリッジ100を回転させ、
図27に示すように、径方向に並ぶ液体封止部30A、液体封止部30Bを、2つの押圧部材361の直下に位置付ける。
【0178】
これにより、液体封止カートリッジ100を押圧部材361に対して移動させるので、押圧を行う装置を固定しておくことができる。押圧を行う装置を移動させる構成と比べて、押圧時の負荷に対しても容易に対応できる。
【0179】
次に、ステップS32において、制御部380は、2つの押圧部360を降下させて、液体封止部30A、液体封止部30Bを押圧させる。押圧により、液体封止部30A、液体封止部30Bを開封する。
図28に示すように、押圧部材361が、カバー部40を弾性変形させながらカバー部40を介して液体封止部30A、液体封止部30Bの受圧面35aと接触する。
【0180】
図28に示したように、中央側低強度部31を押圧するステップS32において、ピン状の押圧部材361により、液体封止部30A、液体封止部30Bに対向するカバー部40を介して液体封止部30A、液体封止部30Bの中央部34付近を押圧する。
【0181】
これにより、カバー部40により覆ったまま、カバー部40を介して液体封止部30A、液体封止部30Bを押圧することにより、液漏れを生じることなく液体封止部30A、液体封止部30Bを開封できる。この場合、押圧時の押し込み深さが大きくなると、カバー部40が破損する可能性が生じるが、本実施形態では押圧時の押し込み深さを小さくできるので、内底面61だけでなくカバー部40の破損を抑制できる。
【0182】
ステップS32では、制御部380は、押圧部360をさらに駆動させ、押圧部材361によって液体封止部30A、液体封止部30Bに押圧力を付与させると、
図29のように、液体封止部30A、液体封止部30Bが中央側低強度部31を境に破断する。そして、中央側低強度部31を押圧するステップS32において、中央側低強度部31に対して一方側の一方部32aと他方側の他方部32bとを押圧方向に変形させる。一方部32aと他方部32bとが互いに離れる方向に旋回して貫通孔THが押し拡げられる。
【0183】
これにより、中央側低強度部31を破断させて貫通孔THを形成しつつ、一方部32aと他方部32bとを変形させて貫通孔THを押し拡げることができる。一方部32aと他方部32bとが変形するだけで液体封止部30A、液体封止部30Bから分離させないで済むので、一方部32aまたは他方部32bが液体貯留部10内に脱落し、送液の妨げになることを抑制できる。
【0184】
制御部380は、押圧部材361を下限位置まで移動させた後、押圧部材361を液体封止カートリッジ100よりも上方の上限位置まで上方へ移動させる。押圧部材361の下限位置は、液体封止部30A、液体封止部30Bと液体貯留部10の内底面61との間の位置である。
【0185】
このように、中央側低強度部31を押圧するステップS32において、液体封止部30A、液体封止部30Bの上方から、液体封止部30A、液体封止部30Bと液体貯留部10の内底面61との間の位置まで、カバー部40を介して液体封止部30A、液体封止部30Bを押圧する。これにより、押圧部材361が液体貯留部10の内底面61に接触する前に押圧を停止できるので、より確実に、内底面61の破損を抑制できる。
【0186】
以上により、
図30のように、液体封止部30A、液体封止部30Bによる封止が解除される。つまり、液体貯留部10が空気孔115と流路135とに連通する。
【0187】
制御部380は、
図25のステップS13の場合、このような開封動作を繰り返し行って、チャンバ121~126の径方向に位置する6つの液体封止部30Aと6つの液体封止部30Bを開封する。制御部380は、
図25のステップS19の場合、R5試薬を収容した液体貯留部10の液体封止部30Aおよび液体封止部30Bを開封する。
【0188】
次に、ステップS33において、制御部380は、回転機構320により、液体貯留部10の液体90が押圧された中央側低強度部31を介して流路20へ流れるように、液体封止カートリッジ100を回転させる。
図30に示すように、液体封止カートリッジ100の回転により、液体貯留部10に収容された液体90が、流路135へ流れる。その結果、液体貯留部10内の試薬が、流路135を介して、対応するチャンバへ移動する。
【0189】
送液処理は、以上のようにして行われる。
【0190】
なお、上記実施形態において、化学発光とは、化学反応によるエネルギーを利用して発せられる光であり、たとえば、化学反応により分子が励起されて励起状態になり、そこから基底状態に戻る時に放出される光である。化学発光は、たとえば、酵素と基質との反応により生じさせたり、電気化学的刺激を標識物質に与えることにより生じさせたり、LOCI法(Luminescent Oxygen Channeling Immunoassay)に基づいて生じさせたり、生物発光に基づいて生じさせたりすることができる。本実施形態では、いずれの化学発光が行われてもよい。所定波長の光が照射されると蛍光が励起される物質と被検物質とが結合して複合体が構成されてもよい。この場合、チャンバ126に光を照射するための光源が配置される。光検出器は、光源からの光によって複合体に結合した物質から励起された蛍光を検出する。
【0191】
なお、磁性粒子MPとしては、磁性を有する材料を基材として含み、通常の免疫測定に用いられる粒子であればよい。たとえば、基材としてFe2O3および/またはFe3O4、コバルト、ニッケル、フィライト、マグネタイトなどを用いた磁性粒子が利用できる。磁性粒子は、被検物質と結合するための結合物質がコーティングされていてもよいし、磁性粒子と被検物質とを結合させるための捕捉物質を介して被検物質と結合してもよい。捕捉物質は、磁性粒子および被検物質と相互に結合する抗原または抗体などである。
【0192】
また、捕捉物質は、被検物質と特異的に結合すれば特に限定されない。たとえば、捕捉物質は、被検物質と抗原抗体反応により結合する。より具体的に、捕捉物質は抗体であるが、被検物質が抗体である場合、捕捉物質は、その抗体の抗原であってもよい。また、被検物質が核酸である場合、捕捉物質は、被検物質と相補的な核酸であってもよい。標識物質に含まれる標識としては、たとえば、酵素、蛍光物質などが挙げられる。酵素としては、アルカリホスファターゼ(ALP)、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼなどが挙げられる。化学発光として、電気化学発光をする場合、標識としては、電気化学的刺激により発光する物質であれば特に限定されないが、たとえばルテニウム錯体が挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェリンなどが利用できる。
【0193】
また、標識が酵素である場合、酵素に対する発光基質は、用いる酵素に応じて適宜公知の発光基質を選択すればよい。たとえば、酵素としてアルカリホスファターゼを用いる場合の発光基質としては、CDP-Star(登録商標)、(4-クロロ-3-(メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2'-(5'-クロロ)トリクシロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イル)フェニルリン酸2ナトリウム)、CSPD(登録商標)(3-(4-メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2-(5'-クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イル)フェニルリン酸2ナトリウム)などの化学発光基質;p-ニトロフェニルホスフェート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)、4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBT)、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)などの発光基質;4-メチルウムベリフェニル・ホスフェート(4MUP)などの蛍光基質;5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)、5-ブロモ-6-クロロ-インドリルリン酸2ナトリウム、p-ニトロフェニルリンなどの発色基質などが利用できる。
【0194】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0195】
たとえば、上記実施形態では、本体部50と押圧部材361とのうち、本体部50を移動させることにより、液体封止部30に対する押圧位置を合わせる例を示したが、これに代えて、押圧部材361を液体封止部30の直上まで移動させることにより押圧位置を合わせてもよいし、本体部50と押圧部材361との両方を移動させて押圧位置を合わせてもよい。
【符号の説明】
【0196】
10:液体貯留部、20:流路、30、30A、30B:液体封止部、31:中央側低強度部、31-1:中央側低強度部、31-2:外周側低強度部、32a:一方部、32b:他方部、33:外周部、34:中央部、35a:受圧面、36、37:凹部、40:カバー部、50:本体部、61:内底面、90:液体、100:液体封止カートリッジ、145:流路、360:押圧部、361:押圧部材