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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】監視装置、監視方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20240229BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240229BHJP
   B61L 25/04 20060101ALI20240229BHJP
   B61K 13/00 20060101ALI20240229BHJP
   G01M 17/08 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
B60L3/00 N
B61L25/04
B61K13/00 A
G01M17/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019191949
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021067521
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】川内 章央
(72)【発明者】
【氏名】河野 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】星 光明
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-131136(JP,A)
【文献】特開平06-258176(JP,A)
【文献】特開2008-046072(JP,A)
【文献】特開2017-088024(JP,A)
【文献】特開2018-136270(JP,A)
【文献】特開2006-160153(JP,A)
【文献】特開平08-015099(JP,A)
【文献】特許第6476287(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
B60L 3/00
B61L 25/04
B61K 13/00
G01M 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って走行する車両の、座席又は床に生じる加速度データを取得する加速度取得部と、
前記加速度データに対し、複数の定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の加速度実効値を取得する加速度実効値取得部と、
前記各定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた各補正係数とに基づいて、補正加速度を算出する補正加速度算出部と、
前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出する異常検出部と、
を備え、
前記車両は前記軌道を毎回同じ速度で走行し、
前記異常検出部は、前記車両の速度が所定の速度範囲内にある場合に取得された前記加速度データに基づく前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出し、
前記各補正係数が、前記車両に乗っている人の快適性又は乗物酔いの評価に適するように規定されている監視装置。
【請求項2】
前記加速度取得部は、前記加速度データを3軸成分毎に取得し、
前記加速度実効値取得部は、前記3軸成分の加速度データに対し、前記定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の前記加速度実効値を前記3軸成分毎に取得し、
前記補正加速度算出部は、前記3軸成分毎の前記各定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた前記各補正係数と、前記3軸毎の方向倍率とに基づいて、前記補正加速度を前記3軸成分の合成値として算出する
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記加速度取得部は、前記加速度データを3軸成分毎に取得し、
前記加速度実効値取得部は、前記3軸成分の加速度データに対し、前記定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の前記加速度実効値を前記3軸成分毎に取得し、
前記補正加速度算出部は、前記3軸成分毎の前記各定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた前記各補正係数とに基づいて、前記補正加速度を前記3軸成分毎に算出し、
前記異常検出部は、前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を前記3軸成分毎に検出する
請求項1に記載の監視装置。
【請求項4】
前記軌道が複数の区間に分けられていて、
前記異常検出部が、前記区間毎に、前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出する
請求項1から3のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記補正加速度算出部は、複数種類の1又は複数の定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた各前記補正係数とに基づいて、前記種類毎に各前記補正加速度を算出し、
前記異常検出部は、前記種類毎に、各前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出する
請求項1からのいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項6】
前記異常検出部は、過去に算出された複数の前記補正加速度を1つのパラメータとする単位空間からのマハラノビスの距離に基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出する
請求項1からのいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項7】
軌道に沿って走行する車両の、座席又は床に生じる加速度データを取得するステップと、
前記加速度データに対し、複数の定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の加速度実効値を取得するステップと、
前記各定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた各補正係数とに基づいて、補正加速度を算出するステップと、
前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出するステップと、
を有し、
前記車両は前記軌道を毎回同じ速度で走行し、
前記異常を検出するステップにおいて、前記車両の速度が所定の速度範囲内にある場合に取得された前記加速度データに基づく前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出し、
前記各補正係数が、前記車両に乗っている人の快適性又は乗物酔いの評価に適するように規定されている監視方法。
【請求項8】
軌道に沿って走行する車両の、座席又は床に生じる加速度データを取得するステップと、
前記加速度データに対し、複数の定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の加速度実効値を取得するステップと、
前記各定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた各補正係数とに基づいて、補正加速度を算出するステップと、
前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出するステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記車両は前記軌道を毎回同じ速度で走行し、
前記異常を検出するステップにおいて、前記車両の速度が所定の速度範囲内にある場合に取得された前記加速度データに基づく前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出し、
前記各補正係数が、前記車両に乗っている人の快適性又は乗物酔いの評価に適するように規定されているプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視装置、監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の加速度等に基づき車両の異常状態の有無を判断する監視装置が開示されている。特許文献1に記載されている監視装置は、各車両に設置されている加速度センサが出力したセンサ信号に対して所定の周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタを適用した後、さらに窓フィルタを適用して固定の時間幅で二乗平均平方根値を求め、求めた車両毎の二乗平均平方根値を相対的に比較することで、異常状態(車両の脱線、車両又はインフラの不具合、蛇行動等)の有無を判断する。特許文献1に記載されている構成によれば、車両が走行するインフラ状態(軌道状態、地盤、気候等)や走行速度等に応じて細分化した閾値条件を用いずに、異常状態を検知することができる。
【0003】
また、非特許文献1は、ISO(国際標準化機構)2631-1:1997、「Mechanical vibration and shock Evaluation of human exposure to whole-body vibration Part 1: General requirements」を翻訳し、技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本産業規格であり、周期的、不規則的又は過渡的な全身振動の測定方法について規定する。また、非特許文献1は、人体暴露が許容できるか否かの判定につながる主要なファクタを示す。非特許文献1では、1/3オクターブバンド毎に規定された補正係数を用いて周波数補正された補正加速度実効値が評価対象とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6476287号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】JIS(日本産業規格)B 7760-2:2004、「全身振動―第2部:測定方法及び評価に関する基本的要求」、2004年03月20日制定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている監視装置では、1つのバンドパスフィルタを用いて周波数補正された加速度に基づき車両の状態監視が行われるので、車両に乗車している人に対して異常な振動が発生しているか否かを判断するのには適切ではない場合があるという課題がある。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、車両に乗車している人に対して異常な振動が発生しているか否かを適切に判断することができる監視装置、監視方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る監視装置は、軌道に沿って走行する車両の加速度データを取得する加速度取得部と、前記加速度データに対し、複数の定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の加速度実効値を取得する加速度実効値取得部と、前記各定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた各補正係数とに基づいて、補正加速度を算出する補正加速度算出部と、前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出する異常検出部と、を備える。
【0009】
本開示に係る監視方法は、軌道に沿って走行する車両の加速度データを取得するステップと、前記加速度データに対し、複数の定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の加速度実効値を取得するステップと、前記各定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた各補正係数とに基づいて、補正加速度を算出するステップと、前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出するステップと、を有する。
【0010】
本開示に係るプログラムは、軌道に沿って走行する車両の加速度データを取得するステップと、前記加速度データに対し、複数の定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の加速度実効値を取得するステップと、前記各定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた各補正係数とに基づいて、補正加速度を算出するステップと、前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の監視装置、監視方法及びプログラムによれば、車両に乗車している人に対して異常な振動が発生しているか否かを適切に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態に係る監視装置の構成例を模式的に示す側面図である。
図2図1に示す監視装置13の構成例を示すブロック図である。
図3図1に示す監視装置13の動作例を示すフローチャートである。
図4図1に示す監視装置13の動作例を説明するための模式図である。
図5図1に示す監視装置13の動作例を説明するための模式図である。
図6】非特許文献1に記載されている基本補正係数を示す図である。
図7】非特許文献1に記載されている基本補正係数を示す図である。
図8】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一実施形態>
(監視装置の構成)
以下、本開示の実施形態に係る監視装置について、図面を参照して説明する。なお、各図において、同一又は対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。図1は、本開示の第一実施形態に係る監視装置13の構成例を模式的に示す側面図である。図2は、図1に示す監視装置13が有する機能的構成要素の構成例を示すブロック図である。図1に示す構成例において監視装置13は、軌道2に沿って走行する車両1に搭載されている。ただし、監視装置13が有する構成の一部又は全部は、車両1外に設けられていてもよい。本実施形態において、車両1は、自動運転によって専用の軌道2上の図示していない案内軌条に沿ってゴムタイヤ11及び12で走行するゴムタイヤ式新交通システム(AGT(Automated Guideway Transit))用の車両である。ただし、監視装置13は、これに限定されず、自動運転又は有人運転で乗客や貨物を輸送する車一般に適用することができる。また、車両1は、複数の車両1が連結されている列車であってもよい。その場合、監視装置13は、例えば、2以上の車両1に搭載されている複数の加速度センサで検知された加速度を監視することができる。
【0014】
車両1は、床15と、床15に設置されている座席16を備える。また、車両1は、速度・位置センサ14と、加速度センサ17と、加速度センサ18を備える。
【0015】
速度・位置センサ14は、例えば、軌道2上の所定の位置に設置されている信号送信機21が送信した所定の信号を受信したり、タイヤ11の回転速度を検知したりすることで、車両1の位置と速度を検知する。速度・位置センサ14は、検知した位置と速度を示す信号を監視装置13に出力する。なお、速度・位置センサ14は、例えば、衛星測位システムを利用して位置や速度を検知したり、軌道2又は周囲を撮影した映像を用いて位置や速度を検知したりするものであってもよい。
【0016】
加速度センサ17は、座席16の着座面16aに生じる加速度(図1に示すxyz軸方向の3軸加速度)を検知して、検知した加速度を示す信号を監視装置13へ出力する。加速度センサ18は、床15に生じる加速度(図1に示すxyz軸方向の3軸加速度)を検知して、検知した加速度を示す信号を監視装置13へ出力する。
【0017】
なお、加速度センサの個数や設置位置や検知方向に限定はなく、例えば、1軸の加速度センサを用いたり、加速度センサの個数を1個または3個以上としたり、床15の複数個所に設置したり、座席16の背もたれ等に設定したりしてもよい。また、加速度センサは、並進的又は直進的な加速度に限らず、回転振動を検知するものを含んでいてもよい。
【0018】
また、人P1は、座席16に着席した状態で(すなわち座位で)車両1に乗車している。人P2は、床15に立った状態で(すなわち立位で)車両1に乗車している。
【0019】
次に、図2を参照して、図1に示す監視装置13が有する機能的構成要素について説明する。図1に示す監視装置13は、内部に図示していないコンピュータとそのコンピュータの入出力装置、通信装置、電源装置等の周辺装置とを有し、そのコンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアと、そのコンピュータ及び周辺装置からなるハードウェアとの組み合わせで構成される、図2に示す機能的構成要素を有する。図2に示す監視装置13は、機能的構成要素として、加速度取得部31、加速度実効値取得部32、補正加速度算出部33、異常検出部34、及び記憶部35を有する。また、記憶部35は、補正係数テーブル36と、速度範囲テーブル37と、補正加速度38と、加速度39等を記憶する。
【0020】
加速度取得部31は、軌道2に沿って走行する車両1に搭載された加速度センサ17及び18からの加速度データ(加速度の瞬時値)を所定の周期で繰り返し取得する。本実施形態において、加速度取得部31は、加速度センサ17及び18から3軸成分の加速度データ(加速度の時刻暦データ)を取得する。加速度取得部31は、例えば、図4に示すように、加速度センサ17又は18が検知した加速度a(t)の3軸成分の瞬時値a(t)、a(t)、及びa(t)を取得する。図4は、図1に示す監視装置13の動作例を説明するための模式図である。加速度取得部31は、例えば、駅間毎あるいは予め決めた区間毎に、加速度センサ17及び18から所定の周期で繰り返し取得した加速度の時刻暦データを、加速度39として記憶部35に記憶する。ここで区間とは、軌道2を距離、位置等に基づいて分割した部分である。
なお、本実施形態において、「加速度データ」とは、車両1に搭載された加速度センサ17及び18から直接計測されたデータそのものであるものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限られない。他の実施形態においては、「加速度データ」は、変位計もしくは速度計による計測値から微分や2階微分によって算出されたデータであってもよい。
【0021】
加速度実効値取得部32は、加速度取得部31が取得した加速度データに対し、例えば複数の1/3オクターブバンド毎等の複数の定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の加速度実効値を取得する。本実施形態において加速度実効値取得部32は、例えば、加速度取得部31が取得した3軸成分の加速度データに対し、定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の加速度実効値(図4に示すaxi、ayi、及びazi)を3軸成分毎に取得する。ここで、図4に示すaxi、ayi、及びaziは、図6に示すi番目の1/3オクターブバンドのx軸方向、y軸方向及びz軸方向の加速度実効値である。周波数分析は、分析の際に用いるバンドパスフィルタの帯域幅の構成の仕方によって定比帯域幅分析と定周波数幅分析に分類することができる。本実施形態では加速度実効値取得部32において定比帯域幅分析を用いている。加速度実効値取得部32における定比帯域幅分析では、例えば1/1オクターブバンド、1/3オクターブバンド、1/Nオクターブバンド(Nは自然数)等の定比帯域幅毎の複数のバンドパスフィルタを用いることができる。定比帯域幅分析は、例えば、感覚量評価を行うための周波数分析に用いることができる。加速度実効値取得部32では、1/1オクターブ、1/3オクターブ等の規格に従った複数のバンドパスフィルタを通して各バンドの加速度が計測(算出)される。本実施形態において加速度実効値取得部32は、例えば、図6及び図7に示すように0.02~400Hzの周波数帯域を定比分割した44個の周波数バンド(1/3オクターブバンド)毎に加速度実効値を取得する。図6及び図7は、非特許文献1に記載されている基本補正係数を示す図である。図6は非特許文献1の「表3」の内容の一部を示し、図7は非特許文献1の「図2」の内容(ただし、横軸の対数目盛を一部変更している)を示す。図6において周波数バンド番号iは、IEC(国際電気標準会議)61260によるバンド番号である。
【0022】
補正加速度算出部33は、各1/3オクターブバンド(各定比帯域幅)の各加速度実効値(axi、ayi、及びazi)と、各1/3オクターブバンド(各定比帯域幅)に対応して予め定められた各補正係数(W)とに基づいて、下式(9)を用いて、オーバーオールの補正加速度実効値を成分毎に(x、y及びz成分毎に)算出する。補正加速度算出部33は、例えば、図4に示すawx、awy、及びawzを算出する。
【0023】
【数1】
【0024】
式(9)は、非特許文献1に規定されている式(9)と同一である。aは、補正加速度実効値(m/s)であり、x軸方向の補正加速度実効値awx、y軸方向の補正加速度実効値awy、及びz軸方向の補正加速度実効値awzや、回転振動の補正加速度実効値に対応する方向(並進方向又は回転方向)を限定しない数式である。aはi番目の1/3オクターブバンドの加速度実効値である。加速度実効値aはx軸方向、y軸方向及びz軸方向の加速度実効値axi、ayi、及びaziに対応する。Wは例えば図6に示す1/3オクターブのi番目の補正係数である。例えば、補正係数Wは、図6に示す補正係数W、補正係数W、及び補正係数Wに対応する。図6に示す補正係数Wは、健康、快適性及び振動知覚に関する基本補正係数であり、立位及び座位におけるz軸方向(及び仰臥位状態での鉛直方向)に対する補正係数である。補正係数Wは、健康、快適性及び振動知覚に関する基本補正係数であり、立位及び座位におけるx軸方向及びy軸方向(並びに仰臥位状態での水平方向)に対する補正係数である。補正係数Wは、乗物酔いに関する基本補正係数であり、立位及び座位におけるz軸方向に対する補正係数である。なお、非特許文献1において、健康、快適性及び振動知覚に関する評価対象の周波数範囲は0.5Hz~80Hzであり、乗物酔いに関する評価対象の周波数範囲は0.1Hz~0.5Hzである。
【0025】
また、補正加速度算出部33は、3軸成分毎の各1/3オクターブバンド(各定比帯域幅)の各加速度実効値と、各1/3オクターブバンド(各定比帯域幅)に対応して予め定められた各補正係数と、3軸毎の方向倍率とに基づいて、下式(10)を用いて、補正加速度実効値を3軸成分の合成値として算出する。
【0026】
【数2】
【0027】
式(10)は、非特許文献1に規定されている式(10)と同一である。aは、補正加速度実効値の3軸成分の合成値(合成補正値ともいう)である。k、k、及びkは、x、y及びz軸方向の方向倍率(無次元倍率)である。例えば、健康については、座位の場合、補正係数Wのx軸方向の方向倍率kが1.4、補正係数Wのy軸方向の方向倍率kが1.4、補正係数Wのz軸方向の方向倍率kが1である。また、例えば、快適性については、座位の場合と立位の場合で、補正係数Wのx軸方向の方向倍率kが1、補正係数Wのy軸方向の方向倍率kが1、補正係数Wのz軸方向の方向倍率kが1である。また、例えば、振動知覚については、x軸方向の方向倍率kが1、y軸方向の方向倍率kが1、z軸方向の方向倍率kが1である。
【0028】
なお、本実施形態において、補正加速度実効値(補正加速度ともいう。)は、補正加速度実効値a(補正加速度実効値awx、awy、及びawz)と合成補正値aを含むものとする。
【0029】
異常検出部34は、補正加速度算出部33が算出した補正加速度実効値の大きさに基づいて、車両1又は軌道2の異常を検出する。異常検出部34は、補正加速度実効値の3軸成分の合成値(合成補正値)の大きさに基づいて、車両1又は軌道2の異常を検出する。あるいは、異常検出部34は、補正加速度実効値の大きさに基づいて、車両1又は軌道2の異常を3軸成分毎に検出する。異常検出部34は、例えば、補正加速度実効値が所定の閾値を超えた場合に、異常が発生したと判断することができる。閾値は、正常な場合の値と異常な場合とを相対的に区別することができる値とすることができ、例えば、異常がない場合に計測された加速度の実績値(最大値等)や、設計上の計算値等に、一定のマージンを加えた値等にすることができる。
【0030】
また、軌道2が複数の区間に分けられている場合、異常検出部34は、区間毎に、補正加速度の大きさに基づいて、車両1又は軌道2の異常を検出することができる。また、異常検出部34は、車両1の速度が所定の速度範囲内にある場合に取得された加速度データに基づく補正加速度の大きさに基づいて、車両1又は軌道2の異常を検出するようにしてもよい。なお、異常検出部34は、例えば、軌道2上の異なる位置で同一の車両1で複数回異常が検出された場合、車両1に異常があると判断することができる。また、異常検出部34は、例えば、軌道2上の同一位置で複数回異常が検出された場合、あるいは異なる複数の車両1で軌道2上の同一位置で異常が検出された場合に、軌道2に異常があると判断することができる。
【0031】
なお、本実施形態において異常状態検出部34は、異常状態検出部34での判断に用いる速度、位置等のデータを取得する機能、速度等が異常状態を判断する条件を満たしているか否かを判断する機能等を有しているものとする。
【0032】
記憶部35が記憶する補正係数テーブル36は、図6に示すように、車両に乗っている人の健康、快適性、振動知覚又は乗物酔いの評価に適するように規定された1又は複数種類の複数の補正係数を、1/3オクターブバンド(定比帯域幅)毎に定義するテーブルである。補正係数テーブル36は、例えば、図6に示す周波数バンドの値を変数とする関数として定義されていてもよいし、補正加速度実効値(補正加速度)を算出する関数に(関数を表すプログラムの一部として)含まれていてもよい。
【0033】
速度範囲テーブル37は、軌道2上の位置(区間)と、車両1の通常走行時の速度範囲とを対応づけるテーブルである。
【0034】
補正加速度38は、当該車両1又は他の車両1の補正加速度算出部33が算出した過去の補正加速度実効値の実績値を含むファイル(データ)である。補正加速度実効値の実績値は、例えば、取得日時、取得位置、取得時の速度、取得時の車両1(又は乗客)の重量等に対応づけて、補正加速度38として記憶部35に記憶される。なお、取得時の車両1(又は乗客)の重量は、例えば、タイヤ11及び12に掛かる荷重(歪み)の計測結果に基づいて算出したり、加減速時の動力源(モータ等)の動特性に基づいて推定したりすることができる。
【0035】
加速度39は、加速度センサ17及び18が出力した所定時間分の最新の加速度データを含むファイル(データ)である。加速度データは、例えば、取得日時等に対応づけて、補正加39として記憶部35に記憶される。
【0036】
(監視装置の動作例)
次に、図3を参照して、図1及び図2等を参照して説明した監視装置13の動作例について説明する。図3は、図1及び図2に示す監視装置13の動作例を示すフローチャートである。図3に示す処理は、例えば車両1の運行中に駅毎あるいは所定の区間毎に繰り返し実行される。
【0037】
図3に示す処理が開始されると、図2に示す異常状態検出部34が、加速度センサ17及び18が検知した加速度データの3軸成分の駅間毎あるいは予め決めた区間毎の最新の時刻暦データを記憶部35(加速度39)から取得する(ステップS11)。次に、異常状態検出部34が、速度・位置センサ14から、位置情報を取得するとともに(ステップS12)、速度情報を取得する(ステップS13)。
【0038】
次に、異常状態検出部34は、ステップS12で取得した位置情報に基づき速度範囲テーブル37を参照し、ステップS13で取得した車両速度が通常範囲内であるか否かを判断する(ステップS14)。
【0039】
ステップS14において異常状態検出部34が、車両速度が通常範囲内でないと判断した場合、異常状態検出部34は、図3に示す処理を終了する。
【0040】
他方、ステップS14において異常状態検出部34が、車両速度が通常範囲内であると判断した場合、加速度実効値取得部32と補正加速度算出部33が1/3オクターブ分析を実行する(ステップS15)。ステップS15において、加速度実効値取得部32は、加速度取得部31が取得して記憶部35に記憶し、異常状態検出部34が記憶部35から取得した加速度データの加速度データ(時刻暦データ)に対し、複数の1/3オクターブバンド毎のバンドパスフィルタを適用してバンド毎の加速度実効値を取得する。また、ステップS15において、補正加速度算出部33は、3軸成分毎の各1/3オクターブバンドの各加速度実効値と、各1/3オクターブバンドに対応して予め定められた各補正係数と、3軸毎の方向倍率とに基づいて、式(10)を用いて、補正加速度実効値を3軸成分の合成値として算出する。あるいは、ステップS15において、補正加速度算出部33は、各1/3オクターブバンドの各加速度実効値と、各1/3オクターブバンドに対応して予め定められた各補正係数とに基づいて、式(9)を用いて、オーバーオールの補正加速度実効値を成分毎に(x、y及びz成分毎に)算出する。
【0041】
次に、異常状態検出部34は、ステップS15で算出された補正加速度実効値を参照し(ステップS16)、補正加速度実効値と所定の閾値とを比較する(ステップS17)。ステップS17において異常状態検出部34は、ステップS15で算出された合成補正値aと、予め定められた閾値とを、加速度センサ毎に比較する。あるいは、ステップS17において異常状態検出部34は、ステップS15で算出されたx軸方向の補正加速度実効値awx、y軸方向の補正加速度実効値awy、及びz軸方向の補正加速度実効値awzと、各軸方向に対して予め定められた各閾値とを、加速度センサ毎に比較する。
【0042】
ステップS17において補正加速度実効値awx、awy、及びawz及び合成補正値aがすべて各閾値未満であった場合、異常状態検出部34は、異常がなかったとして、図3に示す処理を終了する。
【0043】
他方、ステップS17において補正加速度実効値awx、awy、及びawz又は合成補正値aの少なくとも一つが対応する閾値以上であった場合、異常状態検出部34は、異常ありとして、異常検知処理を実行する(ステップS18)。ステップS18の異常検知処理は、異常状態検出部34が異常を検出した場合に実行する処理であり、例えば、異常を検出したことを通知したり、記録したり、異常の内容を分析したりする処理等を含む。例えば、異常を検出したことの通知としては、異常状態検出部34は、監視装置13が有するモニタや音響装置を用いて所定の信号を出力したり、監視装置13の外部の端末等に対して所定の情報を送信したりする。異常を検出したことの記録としては、異常状態検出部34は、記憶部35にその旨を記録したり、外部のサーバ等にその旨を記録したりする。
【0044】
また、異常状態検出部34が行う異常の内容の分析としては、例えば次のようなものがある。すなわち、異常状態検出部34は、例えば、複数の車両、編成で同じ区間(位置)で異常と判別される場合は軌道2の異常、1つの車両1でのみ異常と判別される場合は車両1の異常として判別する。また、異常状態検出部34は、例えば、軌道2が異常と判別された場合、上下方向と左右方向のどちらが異常と判別されるかで、路面が悪いか、ガイドレールが悪いかを判断する。また、異常状態検出部34は、車両1が異常と判別される場合も、上下方向の場合は例えばタイヤ、空気ばね等に異常があるか、左右方向の場合はガイドレールに押し当てる案内輪が悪い等の判別が可能である。
【0045】
(第一実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態によれば、車両に搭載された加速度センサを用いて車両構体等の加速度を分析することで、例えば、乗客が不快となる(加速度による乗り心地の悪い)区間や車両がないかを監視することができる。
【0046】
また、本実施形態では、時刻歴で取得した加速度データについて、例えばISO2631-1:1997(JIS B 7760-2:2004)に従って分析し、3軸方向の補正加速度実効値や3軸方向の加速度を合成した合成補正値を算出する。ISOに従った分析をする際、1/3オクターブバンドごとの加速度値を使用するため、加速度計のノイズ等の影響等による、乗り心地に寄与しない周波数成分の加速度の考慮はされなくなる。ただし、ISO2631-1:1997(JIS B 7760-2:2004)でなくても、乗り心地への寄与度の高い低周波数成分の重みを高くし、寄与度の低い高周波数成分の重みを低くするようなフィルタ、補正係数を使って処理してもよい。
【0047】
分析に用いる加速度について、3軸方向の合成補正値ではなく、方向ごとの補正加速度実効値を分析に利用した場合、軌道2が異常と判別された場合、上下方向と左右方向のどちらが異常と判別されるかで、路面が悪いか、ガイドレールが悪いかを判断できる。車両1が異常と判別される場合も、上下方向の場合は例えばタイヤ、空気ばね等に異常があるか、左右方向の場合はガイドレールに押し当てる案内輪が悪い等の判別が可能である。
【0048】
また、例えばAGTでは車両1は軌道2を毎回同じ速度で走行する。本実施形態では、異なる運転モードやある閾値以上に平均速度に差があるような走行を行っている場合等、速度の違いによる発生加速度の差の影響を考慮しないために、分析する区間の平均速度が閾値より外れている場合は、加速度の分析は行わない。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、加速度の時刻歴データに対して乗り心地等への寄与度の高い成分が主となるようなフィルタ処理を行った上で評価することで、乗り心地等の悪化が無いかを適切に監視可能となる。本実施形態によれば、車両に乗車している人に対して異常な振動が発生しているか否かを適切に判断することができる。
【0050】
<第二実施形態>
第一実施形態の監視装置13では、異常検出部34が、オーバーオールの補正加速度実効値(合成補正値aあるいは補正加速度実効値a(補正加速度実効値awx、awy、及びawz))に基づいて、異常の有無を検出する。これに対し、第二実施形態の監視装置13では、異常検出部34が、特定の周波数(1/3オクターブバンド帯)成分に基づいて、異常の有無を検出する。なお、第一実施形態と第二実施形態の構成と動作については、補正加速度算出部33と異常検出部34の一部の動作が異なり、以下、その点について説明する。
【0051】
第二実施形態において、補正加速度算出部33は、複数種類の1又は複数の1/3オクターブバンド(定比帯域幅)の各加速度実効値と、各1/3オクターブバンド(定比帯域幅)に対応して予め定められた各補正係数とに基づいて、種類毎に各補正加速度を算出し、異常検出部34は、種類毎に、各補正加速度の大きさに基づいて、車両1又は軌道2の異常を検出する。ここで、複数種類の1又は複数の1/3オクターブバンドとは、図4に示すように、例えば、z軸方向の1つのバンド(fA)(種類Aとする)、x軸方向とy軸方向の各3個のバンド(fB)(種類Bとする)というように、異なる方向や周波数帯域で分類された周波数バンドである。異常検出部34は、例えば、車両構体の上下振動やピッチング振動数に近いバンド帯のみを評価することで、乗り心地への寄与が高い、車両の空気ばねに異常が発生しているか否かを評価する。
【0052】
(第二実施形態の作用効果)
第二実施形態によれば、分析パラメータは増えるが、例えば軸方向の分析を行うことで、異常の要因の絞り込むことが可能である。
【0053】
<第三実施形態>
第三実施形態の監視装置13では、異常検出部34が、過去に算出された複数の補正加速度(合成補正値aあるいは補正加速度実効値awx、awy、及びawz)を1つのパラメータとする単位空間からのマハラノビスの距離に基づいて、車両1又は軌道2の異常を検出する。なお、第三実施形態と第一及び第二実施形態の構成と動作については、異常検出部34の一部の動作が異なり、以下、その点について説明する。
【0054】
車両1において発生する加速度は、例えば車両の速度や重量によって異なるため、速度や乗客重量に応じて異常判断の基準とする閾値を異ならせて設定することが望ましい場合がある。しかし、例えば、乗客重量や速度ごとに加速度の閾値を設定するのは手間がかかる。そこで、第三実施形態では、乗客重量、速度、補正加速度(合成加速度値等)をパラメータとして、例えば、区間ごとにMT法(マハラノビスタグチメソッド)等によりデータを学習し、各データの単位空間からのマハラノビスの距離を所定の閾値と比較することで、異常検出部34が異常の有無を判断する。図5は、図1に示す監視装置13の動作例を説明するための模式図であり、乗客重量と速度と補正加速度の分布の例を示す。各軸は乗客重量と速度と補正加速度の正規化値(平均値との差分を標準偏差で除した値)を表す。単位空間は正常時のデータ(基準データ)が占める空間である。この場合、評価対象の計測値の単位空間からのマハラノビスの距離は、原点Oからの距離で表すことができる。
【0055】
学習データは、車両/軌道に異常がないと点検等で明らかになっている場合のみ、正常データとして追加する。異常検出部34は、新たに取得したデータが、異常(マハラノビス距離が閾値以上)かを判別する。閾値は例えば3~4程度に設定し、それ以上であれば異常とする。また、第二実施形態で述べたある特定のバンドの加速度実効値を用いて、乗客重量、速度、加速度実効値、合成加速度値をパラメータとして適用してもよい。なお、パラメータは、例えば、乗客重量と補正加速度の2つとしたり、速度と補正加速度の2つとしたりしてもよい。
【0056】
(第三実施形態の作用効果)
第三実施形態によれば、加速度の異常の閾値を設定しなくても、正常データ(これまで取得しているデータ)に比べて差異が大きくないかのみを評価することで、異常の発生有無を判断することができる。
【0057】
(第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態の作用効果)
第一実施形態、第二実施形態、及び第三実施形態によれば、乗り心地への悪影響がある加速度が発生していないかを監視するために、例えば、走行速度が予め定めた条件を満たすデータのみを用いることで、軌道や車両異常以外の要因による加速度の変動要因を除いて異常判別を行うことができる。
【0058】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、異常状態の判断対象を、走行速度が所定範囲内にある場合に限定するのに代えて(あるいはそれに加えて)乗客重量が所定の範囲内にある場合に限定してもよい。
【0059】
〈コンピュータ構成〉
図8は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、インタフェース94を備える。
上述の監視装置13は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0060】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、又は他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、又は上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部又は全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0061】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94又は通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0062】
<付記>
各実施形態に記載の監視装置13は、例えば以下のように把握される。
【0063】
(1)第1の態様に係る監視装置13は、軌道2に沿って走行する車両1の加速度データを取得する加速度取得部31と、前記加速度データに対し、複数の定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の加速度実効値を取得する加速度実効値取得部32と、前記各定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた各補正係数とに基づいて、補正加速度を算出する補正加速度算出部33と、前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両1又は前記軌道2の異常を検出する異常検出部34と、を備える。
【0064】
この構成によれば、車両1に乗車している人P1、P2に対して異常な振動が発生しているか否かを適切に判断することができる。
【0065】
(2)第2の態様に係る監視装置13は、(1)の監視装置13であって、前記各補正係数が、前記車両1に乗っている人P1及びP2の快適性又は乗物酔いの評価に適するように規定されている。
【0066】
(3)第3の態様に係る監視装置13は、(1)又は(2)の監視装置13であって、前記加速度取得部31は、前記加速度データを3軸成分毎に取得し、前記加速度実効値取得部32は、前記3軸成分の加速度データに対し、前記定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の前記加速度実効値を前記3軸成分毎に取得し、前記補正加速度算出部33は、前記3軸成分毎の前記各定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた前記各補正係数と、前記3軸毎の方向倍率とに基づいて、前記補正加速度を前記3軸成分の合成値として算出する。
【0067】
この構成によれば、車両1に乗車している人P1、P2に対して異常な振動が発生しているか否かを3軸成分の合成値に基づいて適切に判断することができる。
【0068】
(4)第4の態様に係る監視装置13は、(1)又は(2)の監視装置13であって、前記加速度取得部31は、前記加速度データを3軸成分毎に取得し、前記加速度実効値取得部32は、前記3軸成分の加速度データに対し、前記定比帯域幅毎のバンドパスフィルタを適用して得られる複数の前記加速度実効値を前記3軸成分毎に取得し、前記補正加速度算出部33は、前記3軸成分毎の前記各定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた前記各補正係数とに基づいて、前記補正加速度を前記3軸成分毎に算出し、前記異常検出部34は、前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を前記3軸成分毎に検出する。
【0069】
この構成によれば、車両1に乗車している人P1、P2に対して異常な振動が発生しているか否かを3軸の各成分に基づいて適切に判断することができる。
【0070】
(5)第5の態様に係る監視装置13は、(1)~(4)のいずれか監視装置13であって、前記軌道2が複数の区間に分けられていて、前記異常検出部34が、前記区間毎に、前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出する。
【0071】
(6)第6の態様に係る監視装置13は、(1)~(5)のいずれか監視装置13であって、前記異常検出部34は、前記車両1の速度が所定の速度範囲内にある場合(ステップS14で「通常範囲内」の場合)に取得された前記加速度データに基づく前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両1又は前記軌道2の異常を検出する。
【0072】
この構成によれば、異常状態の有無の誤検出を避けやすくなる。
【0073】
(7)第7の態様に係る監視装置13は、(1)~(6)のいずれか監視装置13であって、前記補正加速度算出部33は、複数種類の1又は複数の定比帯域幅の各加速度実効値と、前記各定比帯域幅に対応して予め定められた各前記補正係数とに基づいて、前記種類毎に各前記補正加速度を算出し、前記異常検出部34は、前記種類毎に、各前記補正加速度の大きさに基づいて、前記車両又は前記軌道の異常を検出する。
【0074】
この構成によれば、異常状態をより詳細に分析することができる。
【0075】
(8)第8の態様に係る監視装置13は、(1)~(7)のいずれか監視装置13であって、前記異常検出部34は、過去に算出された複数の前記補正加速度を1つのパラメータとする単位空間からのマハラノビスの距離に基づいて、前記車両1又は前記軌道2の異常を検出する。
【0076】
この構成によれば、異常状態の有無の判断基準を、手間を掛けずに設定することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 車両
2 軌道
11、12 タイヤ
13 監視装置
14 速度・位置センサ
15 床
16 座席
17、18 加速度センサ
P1、P2 人
31 加速度取得部
32 加速度実効値取得部
33 補正加速度算出部
34 異常検出部
35 記憶部
36 補正係数テーブル
37 速度範囲テーブル
38 補正加速度
39 加速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8