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特許7445409ビールテイスト飲料及びその製造方法、並びにビールテイスト飲料の香味を向上させる方法
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  • 特許-ビールテイスト飲料及びその製造方法、並びにビールテイスト飲料の香味を向上させる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料及びその製造方法、並びにビールテイスト飲料の香味を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
   C12C 5/02 20060101AFI20240229BHJP
   C12C 3/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C12C5/02
C12C3/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019203995
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021073926
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 進
(72)【発明者】
【氏名】町田 真梨子
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-178628(JP,A)
【文献】特開2018-093775(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029803(WO,A1)
【文献】特開2017-143808(JP,A)
【文献】特開2017-153419(JP,A)
【文献】J. Agric. Food Chem.,2018年10月26日,vol.66, no.46,pp.12285-12295
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 1/00-13/10
C12G 3/00-3/08
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料と水とを混合して調製された原料液を加熱することと、
加熱後の前記原料液を冷却することと、
ホップと酸性の処理液とを混合して煮沸することなくホップ懸濁液を調製することと、
前記ホップ懸濁液から上清を取得することと、
前記原料液の前記冷却後に、前記上清を添加することと、
を含む、ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項2】
前記原料液の前記調製後に、前記ホップ懸濁液から前記上清を取得する、
請求項1に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項3】
前記ホップ懸濁液からの前記上清の取得と、前記冷却後の前記原料液への前記上清の添加とを並行して行う、
請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項4】
底部に排出口を有する容器内で前記ホップ懸濁液を保持し、
前記容器の底部に沈降した前記ホップ懸濁液の固形分を前記排出口から排出することを含む操作により、前記ホップ懸濁液から前記上清を取得する、
請求項1乃至3のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項5】
ろ過器が配置された配管に接続された容器内に前記ホップ懸濁液を保持し、
前記容器から前記配管に前記ホップ懸濁液を流通させて、前記ホップ懸濁液を前記ろ過器でろ過することを含む操作により、前記ホップ懸濁液から前記上清を取得する、
請求項1乃至4のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項6】
遠心分離機を用いることを含む操作により、前記ホップ懸濁液から前記上清を取得する、
請求項1乃至5のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項7】
デカンテーションを含む操作により、前記ホップ懸濁液から前記上清を取得する、
請求項1乃至6のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項8】
前記処理液のpHは、6.0以下である、
請求項1乃至7のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項9】
下記(I)及び/又は(II):
(I)n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計に対する、ゲラン酸の含有量(μg/L)とネリン酸の含有量(μg/L)との合計の比が、3.0以下;、
(II)n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計に対する、ミルセンの含有量(μg/L)とリナロールの含有量(μg/L)とβ-シトロネロールの含有量(μg/L)とゲラニオールの含有量(μg/L)との合計の比が、5.0以下;
の特性を有する前記ビールテイスト飲料を製造する、
請求項1乃至8のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項10】
α酸の含有量(ppm)に対する、イソα酸の含有量(ppm)の比が10.0以上である前記ビールテイスト飲料を製造する、
請求項1乃至9のいずれかに記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項11】
原料と水とを混合して調製された原料液を加熱することと、加熱後の前記原料液を冷却することとを含むビールテイスト飲料の製造において、
ホップと酸性の処理液とを混合して煮沸することなくホップ懸濁液を調製し、
前記ホップ懸濁液から上清を取得し、
前記原料液の前記冷却後に、前記上清を添加することにより、
前記ビールテイスト飲料の香味を向上させる方法。
【請求項12】
下記(I)及び/又は(II):
(I)n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計に対する、ゲラン酸の含有量(μg/L)とネリン酸の含有量(μg/L)との合計の比が、3.0以下;、
(II)n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計に対する、ミルセンの含有量(μg/L)とリナロールの含有量(μg/L)とβ-シトロネロールの含有量(μg/L)とゲラニオールの含有量(μg/L)との合計の比が、5.0以下;
の特性を有する、ビールテイスト飲料。
【請求項13】
α酸の含有量(ppm)に対する、イソα酸の含有量(ppm)の比が10.0以上である、請求項12に記載のビールテイスト飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料及びその製造方法、並びにビールテイスト飲料の香味を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原料としてホップを用いて発酵麦芽飲料を製造する方法であって、当該ホップが、65℃以上90℃未満の温度で1分間以上60分間未満という条件下で予め加熱処理されたものであり、当該ホップが、当該方法に含まれる加熱操作を伴う全ての工程が終了し、加熱された原料混合物が冷却された後に、その原料混合物に添加される、方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、煮沸釜から、煮沸後の穀物溶液をワールプールに移送する工程と、当該移送する工程の完了後、当該穀物溶液にホップを投入する工程と、当該投入する工程の後に、当該穀物溶液を、70分以上、静置する工程と、当該静置する工程の後に、当該穀物溶液を冷却する工程と、当該冷却する工程の後に、当該穀物溶液を発酵させる工程と、を備えるビールテイスト発酵飲料の製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献3には、原料液を使用して飲料を製造する方法であって、酸処理が施されたホップを当該原料液に添加することを含む、飲料の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-132275号公報
【文献】特開2016-054723号公報
【文献】特開2017-153419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、本発明の発明者らは、ビールテイスト飲料の香味を向上させるという課題を解決するための技術的手段について鋭意検討を行った。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、香味が効果的に向上したビールテイスト飲料及びその製造方法、並びにビールテイスト飲料の香味を効果的に向上させる方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、原料と水とを混合して調製された原料液を加熱することと、加熱後の前記原料液を冷却することと、ホップと酸性の処理液とを混合してホップ懸濁液を調製することと、前記ホップ懸濁液から上清を取得することと、前記原料液の前記冷却後に、前記上清を添加することと、を含む。本発明によれば、香味が効果的に向上したビールテイスト飲料の製造方法が提供される。
【0009】
前記方法においては、前記原料液の前記調製後に、前記ホップ懸濁液から前記上清を取得することとしてもよい。前記方法においては、前記ホップ懸濁液からの前記上清の取得と、前記冷却後の前記原料液への前記上清の添加とを並行して行うこととしてもよい。
【0010】
前記方法においては、底部に排出口を有する容器内で前記ホップ懸濁液を保持し、前記容器の底部に沈降した前記ホップ懸濁液の固形分を前記排出口から排出することを含む操作により、前記ホップ懸濁液から前記上清を取得することとしてもよい。前記方法においては、ろ過器が配置された配管に接続された容器内に前記ホップ懸濁液を保持し、前記容器から前記配管に前記ホップ懸濁液を流通させて、前記ホップ懸濁液を前記ろ過器でろ過することを含む操作により、前記ホップ懸濁液から前記上清を取得することとしてもよい。前記方法においては、遠心分離機を用いることを含む操作により、前記ホップ懸濁液から前記上清を取得することとしてもよい。前記方法においては、デカンテーションを含む操作により、前記ホップ懸濁液から前記上清を取得することとしてもよい。
【0011】
前記方法において、前記処理液のpHは、6.0以下であることとしてもよい。前記方法においては、下記(I)及び/又は(II):(I)n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計に対する、ゲラン酸の含有量(μg/L)とネリン酸の含有量(μg/L)との合計の比が、3.0以下;、(II)n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計に対する、ミルセンの含有量(μg/L)とリナロールの含有量(μg/L)とβ-シトロネロールの含有量(μg/L)とゲラニオールの含有量(μg/L)との合計の比が、5.0以下;の特性を有する前記ビールテイスト飲料を製造することとしてもよい。前記方法においては、α酸の含有量(ppm)に対する、イソα酸の含有量(ppm)の比が10.0以上である前記ビールテイスト飲料を製造することとしてもよい。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るビールテイスト飲料の香味を向上させる方法は、原料と水とを混合して調製された原料液を加熱することと、加熱後の前記原料液を冷却することとを含むビールテイスト飲料の製造において、ホップと酸性の処理液とを混合してホップ懸濁液を調製し、前記ホップ懸濁液から上清を取得し、前記原料液の前記冷却後に、前記上清を添加することにより、前記ビールテイスト飲料の香味を向上させる。本発明によれば、ビールテイスト飲料の香味を効果的に向上させる方法が提供される。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るビールテイスト飲料は、下記(I)及び/又は(II):(I)n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計に対する、ゲラン酸の含有量(μg/L)とネリン酸の含有量(μg/L)との合計の比が、3.0以下;、(II)n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計に対する、ミルセンの含有量(μg/L)とリナロールの含有量(μg/L)とβ-シトロネロールの含有量(μg/L)とゲラニオールの含有量(μg/L)との合計の比が、5.0以下;の特性を有する。本発明によれば、香味が効果的に向上したビールテイスト飲料が提供される。
【0014】
前記ビールテイスト飲料は、α酸の含有量(ppm)に対する、イソα酸の含有量(ppm)の比が10.0以上であることとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、香味が効果的に向上したビールテイスト飲料及びその製造方法、並びにビールテイスト飲料の香味を効果的に向上させる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る方法の一例に含まれる工程を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る方法の一例において使用される設備を模式的に示す説明図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る実施例において、レーザー回折・散乱法により、ホップ懸濁液の上清の粒子径分布を測定した結果の一例を示す説明図である。
図3B】本発明の一実施形態に係る実施例において、レーザー回折・散乱法により、ホップ懸濁液の粒子径分布を測定した結果の一例を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る実施例において、ビールテイスト飲料の香味を評価した結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0018】
図1には、本実施形態に係る方法(以下、「本方法」という。)の一例に含まれる工程を示す。図1に示すように、本方法の一側面は、原料と水とを混合して調製された原料液を加熱すること(S10)と、加熱後の当該原料液を冷却すること(S11)と、ホップと酸性の処理液とを混合してホップ懸濁液を調製すること(S20)と、当該ホップ懸濁液から上清を取得すること(S21)と、当該原料液の当該冷却後に、当該上清を添加すること(S12)と、を含む、ビールテイスト飲料を製造する(S13)方法である。
【0019】
上述のとおり、本発明の発明者らは、ホップを用いて従来にない香味をビールテイスト飲料に付与するという課題を解決するための技術的手段について鋭意検討を重ねた結果、意外にも、ホップと酸性の処理液とを混合して調製されたホップ懸濁液の上清を添加することにより、ビールテイスト飲料に、当該上清に特有の優れた香味を効果的に付与することができることを独自に見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
したがって、本方法は、他の側面として、原料と水とを混合して調製された原料液を加熱すること(S10)と、加熱後の当該原料液を冷却すること(S11)とを含むビールテイスト飲料の製造(S13)において、ホップと酸性の処理液とを混合してホップ懸濁液を調製し(S20)、当該ホップ懸濁液から上清を取得し(S21)、当該原料液の当該冷却後に、当該上清を添加すること(S12)により、当該ビールテイスト飲料の香味を向上させる方法を含む。
【0021】
本方法においては、図1に示すように、原料と水とを混合して調製された原料液を加熱し(S10)、当該加熱後の原料液を冷却する(S11)。原料液の原料は、ビールテイスト飲料の製造に使用されるものであれば特に限られないが、例えば、植物原料を含む。この場合、原料液は、植物原料を含む原料と水とを混合して調製される。
【0022】
植物原料は、ビールテイスト飲料の製造に使用される、植物由来の原料であれば特に限られないが、例えば、下記(i)及び(ii)からなる群より選択される1以上を含んでもよい:(i)穀類(例えば、麦類、米類、とうもろこし及びこうりゃんからなる群より選択される1以上)、豆類及びイモ類からなる群より選択される1以上;、(ii)当該(i)に由来する成分。穀類、豆類及びイモ類は、発芽させたものであってもよいし、発芽させていないものであってもよいし、これら両方であってもよい。
【0023】
麦類は、例えば、大麦、小麦、燕麦及びライ麦からなる群より選択される1以上であってもよい。麦類を発芽させたものは、麦芽と呼ばれる。麦芽は、例えば、大麦、小麦、燕麦及びライ麦からなる群より選択される1以上の麦芽であってもよい。麦芽としては、麦芽エキスを用いてもよい。上記(ii)の成分は、上記(i)に由来する成分であれば特に限られないが、例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖類、脂質、ビタミン及びミネラルからなる群より選択される1以上であってもよい。
【0024】
原料液の原料は、ホップを含んでもよい。この場合、原料は、上記(i)及び(ii)からなる群より選択される1以上と、ホップとを含んでもよい。加熱の対象となる原料液の原料に含まれるホップの形態は、本発明の効果が得られるものであれば特に限られず、例えば、生ホップ、プレスホップ、ホップパウダー、ホップペレット、ホップエキス、イソ化ホップ、ローホップ、テトラホップ及びヘキサホップからなる群より選択される1以上であってもよい。このホップの品種は、特に限られないが、例えば、いわゆるケトルホッピングに使用されるホップが好ましく使用される。
【0025】
原料液の加熱は、当該原料液の温度を上昇させる操作であれば特に限られないが、例えば、当該原料液を30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、より一層好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上に加熱することであってもよい。
【0026】
原料液の加熱は、例えば、当該原料液の糖化を行うことを含んでもよい。糖化は、デンプンと消化酵素(例えば、デンプン分解酵素及び/又はタンパク質分解酵素)とを含む原料液を、当該消化酵素が働く温度(例えば、30℃以上、80℃以下)に加熱することにより行う。消化酵素は、例えば、植物原料に含まれる消化酵素(例えば、発芽した植物原料(例えば、麦芽)に含まれる消化酵素)、及び/又は、外的に添加される消化酵素(例えば、微生物に由来する消化酵素)が使用される。
【0027】
原料液がホップを含む原料を使用して調製される場合、当該原料液の加熱は、当該ホップを含む原料液を加熱することを含んでもよい。この場合、ホップを含む原料液を煮沸してもよい。
【0028】
原料液の加熱は、当該原料液の糖化と、当該糖化後にホップを含む当該原料液を加熱することを含んでもよい。この場合、まず原料液の糖化を行い、次いで、当該糖化後にホップを添加して、当該ホップを含む当該原料液の加熱を行う。
【0029】
加熱後の原料液の冷却は、当該原料液の温度を低下させる操作であれば特に限られないが、例えば、当該原料液を25℃以下(例えば、0℃超、25℃以下)、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下、より一層好ましくは12℃以下、特に好ましくは10℃以下に冷却してもよい。
【0030】
本方法は、冷却された原料液に酵母を添加してアルコール発酵を行うことを含んでもよい。アルコール発酵は、原料液に酵母を添加することにより開始する。アルコール発酵開始時の原料液における酵母の密度は、例えば、1×10個/mL~3×10個/mLであることとしてもよい。酵母は、アルコール発酵を行う酵母であれば特に限られず、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、焼酎酵母及び清酒酵母からなる群より選択される1以上であることとしてもよい。また、本方法は、アルコール発酵後に熟成を行うことをさらに含んでもよい。なお、本実施形態において、アルコール発酵は、ビール等の製造における主発酵又は前発酵に相当する。また、熟成は、ビール等の製造における貯酒又は後発酵に相当する。
【0031】
一方、本方法においては、図1に示すように、ホップと酸性の処理液とを混合してホップ懸濁液を調製し(S20)、当該ホップ懸濁液から上清を取得する(S21)。処理液と混合されるホップは、固形分を含む。ホップの固形分は、例えば、当該ホップの毬花の全部又は一部、及び/又は、その粉砕物である。
【0032】
処理液と混合されるホップの形態は、本発明の効果が得られるものであれば特に限られないが、例えば、生ホップ、プレスホップ、ホップパウダー、及びホップペレットからなる群より選択される1以上であることが好ましく、ホップペレットであることが特に好ましい。
【0033】
処理液と混合されるホップの品種は、本発明の効果が得られるものであれば特に限られないが、いわゆるフレーバーホップが好ましく使用される。具体的に、例えば、ソラチエース種、カスケード種、Galaxy種、Citra種、Polaris種、Apollo種、Saaz種、Traditon種、Sorachi Ace種、Barbe Rouge種、Mandarina Bavaria種、Mosaic種、Nelson Sauvin種、信州早生種、フラノ18号種及びリトルスター種からなる群より選択される1以上のホップが好ましく使用される。
【0034】
処理液と混合されるホップの品種は、上述した、加熱の対象となる原料液の調製に使用されるホップの品種と同一であってもよいし、異なってもよいが、異なることが好ましい。
【0035】
処理液は、酸性であってホップを懸濁できる溶媒であれば特に限られないが、例えば、酸を含む水溶液(すなわち、酸の添加によりpHを低下させた水溶液)であることが好ましい。処理液に含まれる酸は、添加により水溶液のpHを低下させるものであれば特に限られないが、例えば、乳酸、りん酸、りんご酸、無水亜硫酸、酒石酸、酢酸及びクエン酸からなる選択される1以上であることが好ましい。
【0036】
処理液のpHは、酸性の範囲(例えば、6.9以下)であれば特に限られないが、例えば、6.0以下であってもよく、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.5以下であることが特に好ましい。処理液のpHの下限値は特に限られないが、例えば、1.0以上であることとしてもよい。
【0037】
処理液は、例えば、エキスが10w/v%以下であることとしてもよく、5w/v%以下であることとしてもよく、エキスが1w/v%以下であることとしてもよい。処理液のエキス(w/v%)は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「7.2 エキス」に記載の方法に従い測定される。
【0038】
ホップと混合される処理液の量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、当該処理液の重量は、当該ホップの重量の5倍以上であってもよく、8倍以上であることが好ましく、12倍以上であることがより好ましく、15倍以上であることがより一層好ましく、18倍以上であることが特に好ましい。
【0039】
ホップと混合される処理液の量の上限は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、当該処理液の重量は、当該ホップの重量の30倍以下であることとしてもよく、20倍以下であることが好ましい。ホップと混合される処理液の量は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0040】
ホップ懸濁液は、ホップと酸性の処理液とを混合することにより調製される。酸性の処理液を使用する結果、酸性のホップ懸濁液が調製される。ホップ懸濁液のpHは、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、6.9以下であってもよく、6.5以下であってもよく、6.0以下であってもよく、5.5以下であってもよい。ホップ懸濁液のpHの下限値は、特に限られないが、例えば、1.0以上であることとしてもよい。
【0041】
ホップ懸濁液の調製は、ホップを酸性の処理液中に浸漬して保持する、当該ホップの酸処理である。ホップ懸濁液を保持する時間(すなわち、ホップを酸性の処理液中に浸漬して保持する時間)は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、3分以上であってもよく、30分以上であることが好ましく、50分以上であることがより好ましく、90分以上であることがより一層好ましく、150分以上であることが特に好ましい。
【0042】
ホップ懸濁液を保持する時間の上限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該時間は、例えば、30時間以下であることとしてもよく、20時間以下であることが好ましい。ホップ懸濁液を保持する時間は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0043】
ホップ懸濁液を保持する温度(すなわち、ホップを酸性の処理液中に浸漬して保持する温度)は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、1℃以上、100℃以下であってもよい。
【0044】
ホップ懸濁液を比較的低い温度で保持することにより、低コストで簡便な操作により、ホップの酸処理を行うことができる。この場合、ホップ懸濁液を保持する温度は、例えば、3℃以上、40℃以下であってもよく、5℃以上、30℃以下であってもよく、5℃以上、25℃以下であってもよい。また、ホップ懸濁液を加熱することなく保持してもよい。
【0045】
一方、ホップ懸濁液を比較的高い温度で保持することにより、短時間でホップの酸処理を行うことができる。この場合、ホップ懸濁液を保持する温度は、例えば、40℃以上、95℃以下であってもよく、45℃以上、85℃以下であってもよく、50℃以上、75℃以下であってもよい。また、ホップ懸濁液を加熱して保持してもよい。
【0046】
ホップ懸濁液を保持する条件は、上述した当該ホップ懸濁液を保持する時間の範囲のいずれかと、上述した当該ホップ懸濁液を保持する温度の範囲のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0047】
そして、本方法においては、上述のように調製したホップ懸濁液の上清を取得する。ホップ懸濁液は、上述のとおり、固形分を含むホップと処理液とを混合して調製されるため、当該ホップに由来する固形分を含む。ホップ懸濁液の上清は、当該ホップ懸濁液に含まれる固形分と分離された、当該ホップ懸濁液の一部である。
【0048】
ホップ懸濁液から採取された上清の濁度は、当該ホップ懸濁液の濁度(具体的には、十分に撹拌されたホップ懸濁液の濁度)より小さい。すなわち、90°散乱光法により測定波長660nmにて測定される、ホップ懸濁液の濁度に対する、当該ホップ懸濁液の上清の濁度の比(当該上清の濁度を当該ホップ懸濁液の濁度で除して算出される比)は、例えば、0.50以下であってもよく、0.45以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましく、0.35以下であることがより一層好ましく、0.30以下であることが特に好ましい。
【0049】
また、90°散乱光法により測定波長660nmにて測定される、ホップ懸濁液の上清の濁度は、例えば、1500(°EBC)以下であってもよく、1300(°EBC)以下であることが好ましく、1200(°EBC)以下であることがより好ましく、1100(°EBC)以下であることがより一層好ましく、1000(°EBC)以下であることが特に好ましい。
【0050】
また、ホップ懸濁液の上清は、レーザー回折・散乱法により測定される粒子径分布によっても、当該ホップ懸濁液と区別される。すなわち、例えば、レーザー回折・散乱法により測定される、ホップ懸濁液の粒子径分布における濃度の最大値に対する、当該ホップ懸濁液の上清の粒子径分布における濃度の最大値の比(当該上清の最大値を、当該ホップ懸濁液の最大値で除して算出される比)は、0.90以下であってもよく、0.80以下であることが好ましく、0.70以下であることがより好ましく、0.60以下であることが特に好ましい。
【0051】
上述のとおり、ホップ懸濁液は酸性であることから、当該ホップ懸濁液の上清もまた酸性となる。ホップ懸濁液の上清のpHは、例えば、6.9以下であってもよく、6.5以下であってもよく、6.0以下であってもよく、5.5以下であってもよい。
【0052】
ホップ懸濁液から上清を取得する方法は、本発明の効果が得られる方法であれば特に限られないが、例えば、通常のビールテイスト飲料の製造に使用される設備を適宜改良して利用することとしてもよい。
【0053】
図2には、本方法の一例において使用される設備を模式的に示す。図2に示す例では、原料液を保持する第一の容器100と、ホップ懸濁液を保持する第二の容器200と、当該ホップ懸濁液の上清が添加された原料液を保持する第三の容器300とを使用する。
【0054】
第一の容器100と第三の容器300とは第一の配管110により接続されており、原料液は当該第一の配管110を介して当該第一の容器100から当該第三の容器300に移送される。一方、第二の容器200と第三の容器300とは第二の配管210により接続されており、ホップ懸濁液の上清は当該第二の配管210を介して当該第二の容器200から当該第三の容器300に移送される。
【0055】
本方法においては、例えば、原料と水との混合による原料液の調製後に、ホップ懸濁液から上清を取得することとしてもよい。すなわち、この場合、加熱の対象となる原料液の調製後、ホップ懸濁液からの上清の分離を行う。
【0056】
具体的に、ホップ懸濁液から上清を取得するタイミングは、原料液の調製後であれば、例えば、当該原料液の加熱開始前であってもよいし、当該原料液の加熱中であってもよいし、当該原料液の加熱後、冷却前であってもよいし、当該原料液の冷却中であってもよいし、当該原料液の冷却後であってもよい。
【0057】
例えば、図2に示す設備において、第一の容器100(例えば、ワールプール)で加熱後の原料液を保持し、第二の容器200(例えば、ホップ懸濁液調製用のタンク)でホップ懸濁液を保持し、当該第一の容器100から第三の容器300(例えば、発酵槽)に当該原料液を移送しながら当該原料液の冷却及び酵母の添加を行うとともに、当該第二の容器200からホップ懸濁液の上清を取得して、当該上清を当該第三の容器300に移送し、当該第三の容器300において当該冷却された酵母を含む原料液と当該上清とを混合することとしてもよい。
【0058】
本方法においては、例えば、底部に排出口220を有する第二の容器200内でホップ懸濁液を保持し、当該第二の容器200の底部に沈降した当該ホップ懸濁液の固形分を当該排出口220から排出することを含む操作により、当該ホップ懸濁液から上清を取得することとしてもよい。
【0059】
この場合、図2に示すように、ホップ懸濁液を保持する第二の容器200は、その底部に排出口220を有している。このため、まず第二の容器200内でホップ懸濁液を静置することにより、当該ホップ懸濁液中の固形分を当該第二の容器200の底部に沈降させ、次いで、当該底部に沈降した固形分を、当該排出口220から当該第二の容器200外に排出することができる。
【0060】
そして、固形分の排出後又は固形分の排出と並行して、第二の容器200からホップ懸濁液の上清を当該第二の容器200外に取り出す。この場合、上清は、第二の容器200の上部から好ましく取り出すことができる。
【0061】
また、例えば、ろ過器が配置された第二の配管210に接続された第二の容器200内にホップ懸濁液を保持し、当該第二の容器200から当該第二の配管210に当該ホップ懸濁液を流通させて、当該ホップ懸濁液を当該ろ過器でろ過することを含む操作により、当該ホップ懸濁液から上清を取得することとしてもよい。
【0062】
この場合、図2に示す第二の配管210には、図示しないろ過器が配置されている。ろ過器は、第二の配管210内を流通するホップ懸濁液が当該ろ過器を通過するように当該第二の配管210の途中に配置されている。
【0063】
ろ過器は、ホップ懸濁液に含まれる固形分を捕捉できるものであれば特に限られないが、例えば、ストレーナーと呼ばれるろ過器が好ましく用いられる。具体的に、ろ過器は、例えば、金属製の網部材及び/又はパンチングメタルを含むこととしてもよい。
【0064】
ろ過器の空間率は、ホップ懸濁液の固形分を捕捉できる範囲であれば特に限られないが、例えば、55%以下であることとしてもよく、50%以下であることとしてもよく、45%以下であることとしてもよく、40%以下であることとしてもよい。ろ過器の空間率の下限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、20%以上であることとしてもよい。
【0065】
なお、図2に示すように、ホップ懸濁液を保持する第二の容器200が、その底部に排出口220を有している場合には、当該ホップ懸濁液の固形分を当該排出口220から排出するとともに、当該ホップ懸濁液を第二の配管210内のろ過器でろ過することを含む操作により、当該ホップ懸濁液の上清を取得することとしてもよい。
【0066】
また、例えば、遠心分離機を用いることを含む操作により、ホップ懸濁液から上清を取得することとしてもよい。この場合、図2に示す設備において、図示しない遠心分離機を用いてホップ懸濁液から上清を取り出す。
【0067】
具体的に、例えば、第二の容器200に接続された第二の配管210の途中に遠心分離機を設け、当該第二の容器200から当該遠心分離機にホップ懸濁液を移送し、当該遠心分離機により当該ホップ懸濁液から上清を分離し、分離された上清を第三の容器300に移送する。
【0068】
遠心分離機は、ホップ懸濁液から固形分を除去できるものであれば特に限られないが、例えば、通常のビール製造において、麦汁に含まれるホップの固形分を除去するために用いられる遠心分離機を好ましく利用することができる。
【0069】
なお、遠心分離機は、上述した、第二の容器200の排出口からのホップ懸濁液の固形分の除去、及び/又は、第二の配管210に配置されたろ過器によるホップ懸濁液のろ過と併用してもよい。
【0070】
また、例えば、デカンテーションを含む操作により、ホップ懸濁液から上清を取得することとしてもよい。この場合、図2に示す設備において、デカンテーションにより、第二の容器200の上部からホップ懸濁液の上清を取り出す。
【0071】
具体的に、例えば、第二の容器200と第三の容器300とを接続する第二の配管210は、当該第二の容器200内のホップ懸濁液の上方部分(例えば、ホップ懸濁液の液面付近の上澄み部分)を当該第二の容器200外に送出できるように設けられている。
【0072】
より具体的に、例えば、第二の配管210の第二の容器200との接続部分として可撓性のホース(不図示)を採用し、当該ホースの先端を当該第二の容器200内のホップ懸濁液の上方部分に浸漬して、当該ホースの先端から当該ホップ懸濁液の上清を吸引して取得することとしてもよい。
【0073】
また、例えば、第二の配管210の第二の容器200との接続部分として、当該第二の容器200の高さが異なる位置にそれぞれ配置された複数の吸引配管(不図示)を採用し、当該複数の吸引配管のうち、当該第二の容器200内のホップ懸濁液から上清を取得できる位置に配置されている吸引配管から当該上清を吸引して取得することとしてもよい。
【0074】
このように、第二の配管210を介して、デカンテーションにより、第二の容器200内のホップ懸濁液から上清を取得し、当該上清を第三の容器300に移送することができる。なお、第二の容器200内のホップ懸濁液から第二の配管210内への上清の吸い上げは、図示しないポンプを用いて好ましく行われる。
【0075】
そして、本方法においては、上述した原料液の冷却後に、上述のようにして取得したホップ懸濁液の上清を添加する。ホップ懸濁液の上清を添加するタイミングは、図1に示すように、原料液を加熱し(S10)、次いで、原料液を冷却した(S11)後であれば特に限られない。
【0076】
すなわち、本方法において、冷却された原料液に酵母を添加してアルコール発酵を行う場合、上清を添加するタイミングは、例えば、原料液の冷却後、アルコール発酵の開始前であってもよいし、アルコール発酵の開始時であってもよいし、アルコール発酵中であってもよいし、アルコール発酵の終了時であってもよいし、アルコール発酵の終了後であってもよいが、アルコール発酵の開始時以降に上清を添加することが好ましく、アルコール発酵の開始時以降、アルコール発酵の終了時までの間(アルコール発酵中)に上清を添加することがより好ましい。
【0077】
具体的に、図2に示す設備において、第三の容器300内でアルコール発酵を行う場合、例えば、第一の容器100から第三の容器300に原料液を移送する途中で、当該原料液を冷却し、第三の容器300において、当該冷却された原料液と、第二の容器200から取り出されたホップ懸濁液の上清とを混合してもよい。
【0078】
この場合、酵母を添加するタイミングは特に限られず、例えば、第一の容器100から第三の容器300に原料液を移送する途中で冷却後の当該原料液に酵母を添加してもよいし、第三の容器300に酵母を添加してもよい。
【0079】
本方法においては、例えば、ホップ懸濁液からの上清の取得と、冷却後の原料液への当該上清の添加とを並行して行うこととしてもよい。この場合、ホップ懸濁液から上清を取得しながら、当該上清を冷却後の原料液に添加する。
【0080】
具体的に、例えば、図2に示す設備において、ホップ懸濁液を保持する第二の容器200から、当該ホップ懸濁液の上清を取得する操作と並行して、当該上清を第三の容器300に移送して、当該第三の容器300において、冷却後の原料液に当該上清を添加する。すなわち、この場合、第二の容器300からホップ懸濁液の上清を取得する操作と、第三の容器300において当該上清を冷却後の原料液に添加する操作とが並行して行われる。
【0081】
本方法においては、図1に示すように、上清の添加(S12)後、当該上清が添加された原料液を使用して、最終的に、ビールテイスト飲料を得る(S13)。
【0082】
すなわち、本方法においては、例えば、冷却後の原料液と、ホップ懸濁液の上清と、酵母とを混合し、アルコール発酵を行って、ビールテイスト飲料を得る。この場合、アルコール発酵後の原料液(アルコール発酵後に熟成を行う場合には、当該熟成後の原料液)にろ過処理を施して、ビールテイスト飲料を得ることとしてもよい。
【0083】
また、本方法においては、例えば、アルコール発酵を行うことなく、冷却後の原料液と、ホップ懸濁液の上清と、他の成分とを混合して、ビールテイスト飲料を得ることとしてもよい。この場合、冷却後の原料液と、ホップ懸濁液の上清と、他の成分との混合後にろ過処理を行って、ビールテイスト飲料を得ることとしてもよい。
【0084】
本方法において、上述のろ過処理を行う場合、ホップ懸濁液の上清は、当該ろ過処理の前に添加することが好ましい。本方法においては、ホップ懸濁液の上清を添加するため、当該上清に代えて当該ホップ懸濁液を添加する場合に比べて、ろ過処理の効率が効果的に向上する。
【0085】
本方法においては、上清の添加後、原料液を所定温度以上に加熱しないこととしてもよい。すなわち、この場合、冷却された原料液と、ホップ懸濁液の上清とを混合した後、当該上清が添加された原料液を所定温度以上に加熱することなく、ビールテイスト飲料を得る。具体的に、例えば、上清の添加後、原料液を90℃以上に加熱しないこととしてもよいし、80℃以上に加熱しないこととしてもよいし、70℃以上に加熱しないこととしてもよいし、60℃以上に加熱しないこととしてもよい。
【0086】
本実施形態に係るビールテイスト飲料(以下、「本飲料」という。)は、上述した本方法により好ましく製造される。本飲料は、ホップ懸濁液の上清を添加して製造されるため、当該上清に含まれるホップ由来成分を含む。ホップ由来成分は、例えば、ホップ由来の芳香成分である。ホップ由来の芳香成分は、テルペン類であることとしてもよい。テルペン類は、例えば、ミルセン、フムレン、リナロール、β-シトロネロール及びゲラニオールからなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。
【0087】
また、ホップを含む原料を使用して調製された原料液を使用する場合、本飲料は、当該ホップに由来する成分も含む。この場合、本飲料は、上記芳香成分に加えて、ホップ由来の苦味成分を含む。ホップ由来の苦味成分は、例えば、イソα酸である。また、本飲料は、ホップ由来のα酸を含むこととしてもよい。
【0088】
本飲料は、例えば、下記(I)及び/又は(II):(I)n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計に対する、ゲラン酸の含有量(μg/L)とネリン酸の含有量(μg/L)との合計の比が、3.0以下;、(II)n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計に対する、ミルセンの含有量(μg/L)とリナロールの含有量(μg/L)とβ-シトロネロールの含有量(μg/L)とゲラニオールの含有量(μg/L)との合計の比が、5.0以下;の特性を有する。
【0089】
本飲料の上記(I)の比は、例えば、2.5以下であることとしてもよく、2.0以下であることとしてもよい。本飲料の上記(I)の比の下限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該比は、例えば、1.0以上であってもよい。
【0090】
本飲料の上記(II)の比は、例えば、4.5以下であることとしてもよく、4.0以下であることとしてもよく、3.5以下であることとしてもよく、3.0以下であることとしてもよく、2.5以下であることとしてもよい。本飲料の上記(II)の比の下限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該比は、例えば、1.0以上であってもよい。
【0091】
本飲料は、例えば、そのn-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計の、ホップ懸濁液の上清に代えて当該ホップ懸濁液の全部を添加した以外は同一の条件で製造されたビールテイスト飲料の当該合計に対する比が、0.70以上であってもよく、0.75以上であってもよく、0.80以上であってもよい。
【0092】
本飲料の上記n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計に関する比の上限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該比は、例えば、1.00以下であってもよい。
【0093】
本飲料は、例えば、そのゲラン酸の含有量(μg/L)とネリン酸の含有量(μg/L)との合計の、ホップ懸濁液の上清に代えて当該ホップ懸濁液の全部を添加した以外は同一の条件で製造されたビールテイスト飲料の当該合計に対する比が、0.60以下であってもよく、0.55以下であってもよく、0.50以下であってもよく、0.45以下であってもよい。
【0094】
本飲料の上記ゲラン酸の含有量(μg/L)とネリン酸の含有量(μg/L)との合計に関する比の下限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該比は、例えば、0.10以上であってもよい。
【0095】
本飲料は、例えば、そのミルセンの含有量(μg/L)とリナロールの含有量(μg/L)とβ-シトロネロールの含有量(μg/L)とゲラニオールの含有量(μg/L)との合計の、ホップ懸濁液の上清に代えて当該ホップ懸濁液の全部を添加した以外は同一の条件で製造されたビールテイスト飲料の当該合計に対する比が、0.50以下であってもよく、0.45以下であってもよく、0.40以下であってもよく、0.35以下であってもよい。
【0096】
本飲料の上記ミルセンの含有量(μg/L)とリナロールの含有量(μg/L)とβ-シトロネロールの含有量(μg/L)とゲラニオールの含有量(μg/L)との合計に関する比の下限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該比は、例えば、0.05以上であってもよい。
【0097】
本飲料は、α酸の含有量(ppm)に対する、イソα酸の含有量(ppm)の比(以下、「イソα酸/α酸比」という。)が10.0以上であることとしてもよい。
【0098】
本飲料のイソα酸/α酸比は、例えば、15.0以上であってもよく、20.0以上であってもよく、25.0以上であってもよく、30.0以上であってもよい。本飲料のイソα酸/α酸比の上限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該イソα酸/α酸比は、例えば、50.0以下であってもよい。
【0099】
本飲料は、例えば、そのイソα酸含有量(ppm)の、ホップ懸濁液の上清に代えて当該ホップ懸濁液の全部を添加した以外は同一の条件で製造されたビールテイスト飲料のイソα酸含有量(ppm)に対する比が、0.90以下であってもよく、0.85以下であってもよい。本飲料の上記イソα酸含有量に関する比の下限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該比は、例えば、0.50以上であってもよい。
【0100】
本飲料は、例えば、そのα酸含有量(ppm)の、ホップ懸濁液の上清に代えて当該ホップ懸濁液の全部を添加した以外は同一の条件で製造されたビールテイスト飲料のα酸含有量(ppm)に対する比が、0.50以下であってもよく、0.40以下であってもよく、0.30以下であってもよく、0.20以下であってもよく、0.10以下であってもよい。本飲料の上記α酸含有量に関する比の下限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該比は、例えば、0.03以上であってもよい。
【0101】
本飲料は、苦味を有する飲料であることとしてもよい。すなわち、本飲料の苦味価(BU)は、例えば、5以上であることとしてもよく、10以上であることが好ましく、15以上であることが特に好ましい。本飲料のBUの上限値は特に限られないが、当該BUは、例えば、50以下であってもよく、40以下であることが好ましく、35以下であることが特に好ましい。本飲料のBUは、上記下限値のいずれか一つと、上記上限値のいずれか一つとを任意に組み合わせて特定してもよい。なお、ビールテイスト飲料のBUは、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.15 苦味価(IM)」に記載の方法により測定される。
【0102】
本飲料は、例えば、そのBUの、ホップ懸濁液の上清に代えて当該ホップ懸濁液の全部を添加した以外は同一の条件で製造されたビールテイスト飲料のBUに対する比が、0.90以下であってもよく、0.85以下であってもよく、0.80以下であってもよく、0.75以下であってもよく、0.70以下であってもよい。本飲料の上記BUに関する比の下限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該比は、例えば、0.40以上であってもよい。
【0103】
本実施形態において、ビールテイスト飲料は、ビール様の香味を有する飲料である。ビールテイスト飲料は、その製造時の条件(例えば、麦類の使用の有無、ホップの使用の有無、アルコール発酵の有無)に関わらず、ビール様の香味を有する飲料であれば特に限られない。
【0104】
ビールテイスト飲料は、アルコール飲料であることとしてもよい。アルコール飲料は、アルコール含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の飲料である。アルコール飲料のアルコール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1体積%以上、20体積%以下であることとしてもよい。なお、本方法において、アルコール発酵を行わない場合、例えば、原料液にエタノール、スピリッツ、発酵液等のアルコール含有組成物を添加することにより、アルコール飲料を得ることができる。
【0105】
ビールテイスト飲料は、ノンアルコール飲料であることとしてもよい。ノンアルコール飲料は、アルコール含有量が1体積%未満の飲料である。ノンアルコール飲料のアルコール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.5体積%未満であってもよく、0.05体積%未満であってもよく、0.005体積%未満であってもよい。なお、本方法において、アルコール発酵を行う場合、例えば、当該アルコール発酵後の原料液に、アルコール含有量を低減する処理を施すことにより、ノンアルコール飲料を得ることができる。
【0106】
ビールテイスト飲料は、発泡性飲料であることとしてもよい。発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料であることが好ましい。なお、本方法において、アルコール発酵を行うことなく発泡性飲料を製造する場合、例えば、炭酸ガスの吹き込み及び炭酸水の使用からなる群より選択される1以上により、発泡性を付与することができる。
【0107】
発泡性飲料は、そのNIBEM値が50秒以上であってもよく、80秒以上であることが好ましく、150秒以上であることがより好ましく、200秒以上であることが特に好ましい。発泡性飲料のNIBEM値は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.29 泡-NIBEM-Tを用いた泡持ち測定法-」に記載の方法により測定される。
【0108】
発泡性飲料は、その炭酸ガス圧が1.0kg/cm以上であってもよく、1.5kg/cm以上であってもよく、2.0kg/cm以上であってもよい。発泡性飲料の炭酸ガス圧の上限値は、特に限られないが、当該炭酸ガス圧は、例えば、3.0kg/cm以下であってもよい。発泡性飲料の炭酸ガス圧は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.21 ガス圧」に記載の方法により測定される。
【0109】
ビールテイスト飲料は、発泡性アルコール飲料であってもよい。この場合、ビールテイスト飲料は、ビール、発泡酒、及び、発泡酒と他のアルコール成分(例えば、焼酎、ウォッカ、ウイスキー、ブランデー、その他のスピリッツ、清酒、果実酒、甘味果実酒、雑酒及び粉末酒からなる群より選択される1以上)とを含有する発泡性アルコール飲料、からなる群より選択される発泡性アルコール飲料であってもよい。
【0110】
ビールテイスト飲料は、発酵飲料であってもよい。発酵飲料は、アルコール発酵を経て製造された飲料である。すなわち、本方法において、アルコール発酵を行う場合、本方法により製造されるビールテイスト飲料は、発酵飲料である。発酵飲料は、アルコール発酵に由来する成分(例えば、酵母により生成された成分)を含む。
【0111】
ビールテイスト飲料は、麦類飲料であってもよい。麦類飲料は、麦類を使用して製造された飲料である。すなわち、本方法において、麦類を含む原料を使用して調製された原料液を使用する場合、本方法により製造されるビールテイスト飲料は、麦類飲料である。麦類飲料は、麦類に由来する成分を含む。
【0112】
麦類飲料は、麦芽飲料であってもよい。麦芽飲料は、麦類の少なくとも一部として麦芽を使用して製造された飲料である。すなわち、本方法において、麦芽を含む原料を使用して調製された原料液を使用する場合、本方法により製造されるビールテイスト飲料は、麦芽飲料である。麦芽飲料は、麦芽に由来する成分を含む。
【0113】
本発明によれば、ビールテイスト飲料の香味を効果的に向上させることができる。すなわち、本発明によれば、従来のドライホッピングでは達成できない、ホップ懸濁液の上清の使用に特有の香味をビールテイスト飲料に付与することができる。
【0114】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例
【0115】
[実施例1-1]
まず醸造用水に乳酸を添加して、pHが約2.7の酸性水溶液である処理液を調製した。次いで、ホップ処理用容器内で、ソラチエース品種のホップ(具体的には、ホップペレット)と、当該ホップの重量の10倍の重量の処理液(約10℃)とを混合して、pHが3.5~4.0程度のホップ懸濁液を調製した。このホップ懸濁液を約10℃で1時間、穏やかに撹拌し続けた。その後、ホップ懸濁液を1時間静置して、固形分を沈降させた。
【0116】
一方、大麦麦芽と水とを混合して混合液を調製し、加熱して糖化を行った。次いで、糖化後の混合液に、ソラチエース品種とは異なる品種のホップを添加し、さらに加熱して煮沸を行った。煮沸後の混合液を冷却して約18℃の原料液を得た。
【0117】
そして、上述のようにして1時間静置したホップ懸濁液から、デカンテーションにより、上清(約20℃)を採取し、冷却された原料液と、当該上清と、ビール酵母とを混合し、アルコール発酵を開始した。なお、ホップ懸濁液の上清は、ホップ処理用容器の底部に固形分が沈降した当該ホップ懸濁液から、当該固形分が舞い上がらないように注意しながら静かに採取した。
【0118】
アルコール発酵後には、さらに熟成を行った。熟成後の原料液にろ過処理を施し、ビールテイスト飲料を得た。製造されたビールテイスト飲料は、アルコール含有量が5.7体積%~5.8体積%の発泡性アルコール飲料(ビール)であった。
【0119】
[実施例1-2]
ホップ懸濁液の撹拌を24時間行ったこと以外は上述の実施例1-1と同様にして、ビールテイスト飲料を製造した。
【0120】
[実施例1-3]
ホップと、当該ホップの重量の20倍の重量の処理液とを混合して、ホップ懸濁液を調製したこと以外は上述の実施例1-1と同様にして、ビールテイスト飲料を製造した。
【0121】
[比較例1]
ホップ懸濁液の上清に代えて、上清及び固形分を含むホップ懸濁液の全部を添加したこと以外は上述の実施例1-1と同様にして、ビールテイスト飲料を製造した。
【0122】
[実施例2-1]
ホップ懸濁液の撹拌を、65℃で10分行ったこと以外は上述の実施例1-1と同様にして、ビールテイスト飲料を製造した。
【0123】
[比較例2]
ホップ懸濁液の上清に代えて、上清及び固形分を含むホップ懸濁液の全量を添加した以外は上述の実施例2-1と同様にして、ビールテイスト飲料を製造した。
【0124】
[濁度の測定]
市販の濁度計(VOS ROTA 90/25、HAFFMANS社製)を用いて、ホップ懸濁液及びその上清の濁度を測定した。すなわち、まず、上述の実施例1-1で1時間静置したホップ懸濁液から採取した上清を水で1000倍に希釈して、希釈上清を調製した。次いで、この希釈上清の濁度を、90°散乱光法により、測定波長660nmにて測定した。この測定で得られた希釈上清の濁度の値に1000倍を乗じて算出された値を、希釈前の上清の濁度として得た。こうして測定された上清の濁度は、804(°EBC)であった。
【0125】
また、上清を採取することなく、十分に撹拌して固形分を分散させたホップ懸濁液について、同様に測定された濁度は、3110(°EBC)であった。すなわち、ホップ懸濁液の濁度に対する、当該ホップ懸濁液の上清の濁度の比は、約0.26であった。
【0126】
[粒子径分布の測定]
市販のナノ粒子径分布測定装置(SALD-7500nano、株式会社島津製作所製)を用いて、レーザー回折・散乱法により、ホップ懸濁液及びその上清の粒子径分布を測定した。具体的に、回分セルを用いて純水を標準液として、ホップ懸濁液及びその上清の粒子径分布を測定した。
【0127】
図3Aには、ホップ懸濁液の上清について得られた粒子径分布を示す。図3Aにおいて、横軸は粒子径(μm)を示し、縦軸は各粒子径を有する粒子の濃度(頻度)を示す。図3Bには、同様にして、ホップ懸濁液について得られた粒子径分布を示す。
【0128】
図3A及び図3Bに示すように、いずれの粒子径分布においても、粒子径0.932μmを有する粒子の濃度(頻度)が最大値を示した。具体的には、ホップ懸濁液の粒径分布における濃度の最大値は87866個/mLであり、上清の粒径分布における最大値は50739個/mLであった。すなわち、ホップ懸濁液の粒径分布における濃度の最大値に対する、上清の粒径分布における最大値の比は、約0.58であった。
【0129】
[分析]
各例で製造されたビールテイスト飲料の苦味価(BU)を測定した。また、各例で製造されたビールテイスト飲料のイソα酸、α酸、n-プロピルアルコール、イソブチルアルコール、ゲラン酸、ネリン酸、ミルセン、リナロール、β-シトロネロール、及びゲラニオールの含有量を測定した。これらの成分の測定は、GC/MS/MSにより行った。
【0130】
[官能検査]
各例で製造されたビールテイスト飲料について、ビールテイスト飲料の香味について識別能力のある5人の熟練したパネリストによる官能検査を行った。官能検査においては、「おだやかなレモン香」、「白ワイン的な口当たり」及び「ふくらみのある後味」の3項目の各々について、1.0点から5.0点まで、1点刻みで点数が付与された。各項目について、香味が好ましいほど大きな点数が付与された。
【0131】
また、上記3項目の各々について、比較例1で得られたビールテイスト飲料を基準として、その点数が「1.2」となるように、他の例で得られたビールテイスト飲料の香味を評価した。そして、各項目について、各パネリストから付与された点数の合計を、パネリストの人数で除して得られた算術平均値を、最終的に付与された点数として評価した。
【0132】
[結果]
図4には、各例について、ホップ処理の条件、ビールテイスト飲料の成分の分析結果、及び官能検査結果を示す。なお、図4において「対比較例比」欄には、比較例1の測定値に対する、実施例1-1、実施例1-2又は実施例1-3の測定値の比、及び、比較例2の測定値に対する、実施例2-1の測定値の比を示す。
【0133】
「イソα酸/α酸比」欄は、α酸の含有量(ppm)に対するイソα酸の含有量(ppm)の比を示す。「B/A比」欄には、n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計(A)に対する、ゲラン酸の含有量(μg/L)とネリン酸の含有量(μg/L)との合計(B)の比を示す。「C/A比」欄には、n-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計(A)に対する、ミルセンの含有量(μg/L)とリナロールの含有量(μg/L)とβ-シトロネロールの含有量(μg/L)とゲラニオールの含有量(μg/L)との合計(C)の比を示す。
【0134】
図4に示すように、官能検査においては、上清及び固形分を含むホップ懸濁液の全部を添加した比較例1及び比較例2のビールテイスト飲料に比べて、当該上清のみを添加した実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3及び実施例2-1のビールテイスト飲料について、おだやかなレモン香、白ワイン的な口当たり、及びふくらみのある後味の全ての項目で顕著に高い点数が付与された。
【0135】
すなわち、ビールテイスト飲料の製造において、冷却された原料液にホップ懸濁液の上清を添加することにより、当該上清に代えて固形分を含む当該ホップ得懸濁液の全部を添加して得られるビールテイスト飲料の香味とは異質な、当該上清の添加に特有の香味が付与されたビールテイスト飲料が得られた。なお、ホップ懸濁液の保持を10℃で行った実施例1-1と、ホップ懸濁液の保持を65℃で行った実施例2-1とでは、官能検査結果に大きな差はなかった。
【0136】
一方、ホップ懸濁液の保持を24時間行った実施例1-2のビールテイスト飲料については、おだやかなレモン香、白ワイン的な口当たり、及びふくらみのある後味の全ての項目において、ホップ懸濁液の保持を1時間行った実施例1-1のビールテイスト飲料に比べて、さらに高い点数が付与された。
【0137】
また、ホップの重量の20倍の重量の処理液を用いてホップ懸濁液を調製した実施例1-3のビールテイスト飲料については、おだやかなレモン香、白ワイン的な口当たり、及びふくらみのある後味の全ての項目において、ホップの重量の10倍の重量の処理液を用いてホップ懸濁液を調製した実施例1-1のビールテイスト飲料に比べて、さらに高い点数が付与された。
【0138】
また、ホップ懸濁液の上清を添加した実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3及び実施例2におけるビールテイスト飲料の製造においては、当該ホップ懸濁液の全部を添加した比較例1及び比較例2に比べて、熟成後の原料液のろ過処理をより効率的に行うことができた。
【0139】
図4に示すように、ホップ懸濁液の上清を添加して製造された実施例1-1、実施例1-2、及び実施例1-3のビールテイスト飲料のBUは、ホップ懸濁液の全部を添加して製造された比較例1、及び比較例2のビールテイスト飲料のBUに比べて低かった。
【0140】
すなわち、ホップ懸濁液の上清を添加して製造された実施例1-1のビールテイスト飲料のBUの、当該上清に代えて当該ホップ懸濁液の全部を添加した以外は同一の条件で製造された比較例1のビールテイスト飲料のBUに対する比は、0.64であった。同様に、実施例2-1のビールテイスト飲料のBUの、比較例2のビールテイスト飲料のBUに対する比は、0.66であった。
【0141】
実施例1-1のビールテイスト飲料のイソα酸含有量の、比較例1のビールテイスト飲料のイソα酸含有量に対する比は、0.74であった。同様に、実施例2-1のビールテイスト飲料のイソα酸含有量の、比較例2のビールテイスト飲料のイソα酸含有量に対する比は、0.78であった。
【0142】
実施例1-1のビールテイスト飲料のα酸含有量の、比較例1のビールテイスト飲料のα酸含有量に対する比は、0.07であった。同様に、実施例2-1のビールテイスト飲料のα酸含有量の、比較例2のビールテイスト飲料のα酸含有量に対する比は、0.08であった。
【0143】
比較例1及び比較例2のビールテイスト飲料におけるイソα酸/α酸比は、3.0~3.5であったのに対し、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3及び実施例2のイソα酸/α酸比は、31.5~34.3であった。
【0144】
実施例1-1のビールテイスト飲料のn-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計の、比較例1のビールテイスト飲料の当該合計に対する比は、0.86であった。同様に、実施例2-1のビールテイスト飲料のn-プロピルアルコール(mg/L)の含有量とイソブチルアルコールの含有量(mg/L)の合計の、比較例2のビールテイスト飲料の当該合計に対する比は、0.91であった。
【0145】
実施例1-1のビールテイスト飲料のゲラン酸の含有量(μg/L)とネリン酸の含有量(μg/L)との合計の、比較例1のビールテイスト飲料の当該合計に対する比は、0.41であった。同様に、実施例2-1のビールテイスト飲料のゲラン酸の含有量(μg/L)とネリン酸の含有量(μg/L)との合計の、比較例2のビールテイスト飲料の当該合計に対する比は、0.37であった。
【0146】
実施例1-1のビールテイスト飲料のミルセンの含有量(μg/L)とリナロールの含有量(μg/L)とβ-シトロネロールの含有量(μg/L)とゲラニオールの含有量(μg/L)との合計の、比較例1のビールテイスト飲料の当該合計に対する比は、0.19であった。
【0147】
同様に、実施例2-1のビールテイスト飲料のミルセンの含有量(μg/L)とリナロールの含有量(μg/L)とβ-シトロネロールの含有量(μg/L)とゲラニオールの含有量(μg/L)との合計の、比較例2のビールテイスト飲料の当該合計に対する比は、0.19であった。
【0148】
このように、ホップ懸濁液の上清を添加して製造されたビールテイスト飲料のホップ由来芳香成分の含有量は、当該上清に代えて、固形分を含む当該ホップ得懸濁液の全部を添加した以外は同一の条件で製造されたビールテイスト飲料のそれとは明確に異なっていた。
【0149】
また、比較例1及び比較例2のビールテイスト飲料におけるB/A比は、3.6~3.9であったのに対し、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3及び実施例2のB/A比は、1.6~1.8であった。
【0150】
比較例1及び比較例2のビールテイスト飲料におけるC/A比は、5.6~5.9であったのに対し、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3及び実施例2のB/A比は、1.1~2.1であった。
【0151】
このように、ホップ懸濁液の上清を添加して製造されたビールテイスト飲料のホップ由来芳香成分の含有量比は、当該上清に代えて固形分を含む当該ホップ得懸濁液の全部を添加した以外は同一の条件で製造されたビールテイスト飲料のそれとは明確に異なっていた。

図1
図2
図3A
図3B
図4