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特許7445414アルコール飲料、及び、アルコール飲料の香味向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】アルコール飲料、及び、アルコール飲料の香味向上方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/06 20060101AFI20240229BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20240229BHJP
【FI】
C12G3/06
C12G3/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019207714
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021078389
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神部 真衣
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186794(JP,A)
【文献】特表2016-515812(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0257428(US,A1)
【文献】登録実用新案第3216210(JP,U)
【文献】特開2008-048691(JP,A)
【文献】Luca NICOLOTTI et al.,“Characterization of Key Aroma Compounds in a Commercial Rum and an Australian Red Wine by Means of a New Sensomics-Based Expert System (SEBES)-An Approach To Use Artificial Intelligence in Determining Food Odor Codes”,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2019年03月17日,Vol. 67, No. 14,p.4011-4022,DOI: 10.1021/acs.jafc.9b00708
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 3/06
C12G 3/04
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール度数が7~15v/v%のアルコール飲料(果実酒を除く)であって、
β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が5ppb以上、および、オイゲノールの含有量が5ppb以上のうち少なくとも1つを満たすアルコール飲料。
【請求項2】
前記β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が8~1500ppbである請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
前記オイゲノールの含有量が8~1500ppbである請求項1又は請求項2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
アルコール度数が10v/v%以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
前記β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量に対する前記オイゲノールの含有量の比率(=オイゲノールの含有量/β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量)が0.1~5.0である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
発泡性である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【請求項7】
アルコール度数が7~15v/v%のアルコール飲料(果実酒を除く)のアルコールの刺激感とアルコールの苦味とを低減させる香味向上方法であって、
前記アルコール飲料について、β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が5ppb以上、および、オイゲノールの含有量が5ppb以上のうち少なくとも1つを満たすようにするアルコール飲料の香味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料、及び、アルコール飲料の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料の中でも高アルコール飲料は、お酒に強い消費者や、手軽に酔いたいと考える消費者等からの需要があるため、アルコール飲料の市場において一定のシェアを獲得している。
そして、高アルコール飲料に関し、より市場のニーズに合致した商品を創出すべく、様々な研究開発が進められている。
【0003】
例えば、高アルコール飲料の製造方法について、特許文献1には、アルコール濃度が6~12v/v%である高アルコール飲料の製造過程において、飲料中に、果皮又は花、或いはハーブの抽出物を、0.0001~1w/v%の範囲で含有させることを特徴とするという方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-192667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る発明は、高アルコール飲料の香味に関する発明であり、高アルコールの味覚への影響を考慮して、アルコール感の抑制と、アルコール飲料の本来の香味を保持しつつ、味覚、キレ、後口をよくするということを課題に掲げている。
【0006】
一方、本発明者は、飲料を高アルコールとした際の影響を詳細に検討した結果、飲料を飲んでいる最中に口腔内においてピリピリとした刺激的な感じを受けてしまうという感覚の側面に関する問題点を確認した。加えて、本発明者は、飲料を高アルコールとした際、アルコール特有の苦味を強く受けてしまうという味覚の側面に関する問題点も確認した。
【0007】
そこで、本発明は、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とが低減されたアルコール飲料、及び、アルコール飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)アルコール度数が7~15v/v%のアルコール飲料(果実酒を除く)であって、β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が5ppb以上、および、オイゲノールの含有量が5ppb以上のうち少なくとも1つを満たすアルコール飲料。
(2)前記β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が8~1500ppbである前記1に記載のアルコール飲料。
(3)前記オイゲノールの含有量が8~1500ppbである前記1又は前記2に記載のアルコール飲料。
(4)アルコール度数が10v/v%以上である前記1から前記3のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
(5)前記β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量に対する前記オイゲノールの含有量の比率(=オイゲノールの含有量/β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量)が0.1~5.0である前記1から前記4のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
(6)発泡性である前記1から前記5のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
(7)アルコール度数が7~15v/v%のアルコール飲料(果実酒を除く)のアルコールの刺激感とアルコールの苦味とを低減させる香味向上方法であって、前記アルコール飲料について、β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が5ppb以上、および、オイゲノールの含有量が5ppb以上のうち少なくとも1つを満たすようにするアルコール飲料の香味向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るアルコール飲料は、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とが低減している。
本発明に係るアルコール飲料の香味向上方法は、アルコール度数が所定値以上のアルコール飲料について、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るアルコール飲料、及び、アルコール飲料の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0011】
[アルコール飲料]
本実施形態に係るアルコール飲料は、アルコール度数が所定値以上の高アルコール飲料であって、β-メチル-γ-オクタラクトン、および、オイゲノールのうち少なくとも1つを所定値以上の含有量となるように含有する飲料である。
ここで、アルコール飲料とは、アルコールを含有する飲料であり、特定の種類の飲料に限定されないものの、例えば、チューハイテイスト飲料が挙げられる。そして、このチューハイテイスト飲料とは、チューハイのような味わいを呈する飲料、つまり、チューハイの香味が感じられるように香味設計された飲料である。なお、チューハイの香味には、サワーやカクテルといった香味も含まれる。
以下、本実施形態に係るアルコール飲料を構成する各要素について説明する。
【0012】
(アルコール)
本実施形態に係るアルコール飲料は、アルコールを含有している。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ類(例えばジン、ウォッカ、ラム等のスピリッツ、及び、原料用アルコール等)、リキュール類、焼酎等、さらには清酒、甘味果実酒、ビール等の醸造酒を使用することができ、これらの中でも、特に、蒸留酒であるウォッカ、原料用アルコールのうちの1種以上が好ましい。アルコールとして、蒸留酒であるウォッカ、原料用アルコールのうちの1種以上を使用することで本発明の課題(アルコールの刺激感とアルコールの苦味)がより明確化する。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0013】
(アルコール度数)
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、7v/v%以上であるのが好ましく、8v/v%以上、9v/v%以上、10v/v%以上、10.5v/v%以上、11v/v%以上、11.5v/v%以上、12v/v%以上であるのがより好ましい。アルコール度数が所定値以上であることによって、前記した課題(アルコールの刺激感とアルコールの苦味)がより明確化する。
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、20v/v%以下であるのが好ましく、15v/v%以下、13v/v%未満、12.5v/v%以下であるのがより好ましい。アルコール度数が所定値以下であることによって、本発明の効果(アルコールの刺激感とアルコールの苦味の低減)をしっかりと発揮させることができる。
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計・ガスクロマトグラフ分析法)に基づいて測定することができる。
【0014】
(β-メチル-γ-オクタラクトン)
β-メチル-γ-オクタラクトン(β-Methyl-γ-octanolactone)とは、ラクトン化合物の一種である。
そして、β-メチル-γ-オクタラクトンは、甘い香りを呈する物質であるが、驚くべきことに、本発明者は、この物質が、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とを低減させることを見出した。また、本発明者は、β-メチル-γ-オクタラクトンが、舌当たりの柔らかさを増強(柔らかさのレベルが増強し、より柔らかく感じるとの意味)させることも見出した。
【0015】
β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量は、5ppb以上が好ましく、8ppb以上、10ppb以上、50ppb以上、100ppb以上、150ppb以上、180ppb以上、200ppb以上がより好ましい。β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が所定値以上であることによって、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とを低減することができる。
β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量は、1500ppb以下が好ましく、1000ppb以下、600ppb以下、550ppb以下、500ppb以下、400ppb以下、300ppb以下がより好ましい。β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が所定値以下であることによって、甘味の口残りが強くなりすぎるのを回避することができる。
なお、本明細書において、「ppb」という単位は「μg/L」と同義である。
【0016】
(オイゲノール)
オイゲノール(eugenol)とは、フェニルプロパノイドの一種である。
そして、オイゲノールは、ハーブやスパイス様の香味を呈する物質であり、前記したβ-メチル-γ-オクタラクトンとは全く異なる香味タイプの成分であるにも関わらず、本発明者は、この物質が、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とを低減させることを見出した。また、本発明者は、オイゲノールが、舌当たりの柔らかさも増強させることも見出した。加えて、本発明者は、オイゲノールが、β-メチル-γ-オクタラクトンを含むアルコール飲料に含有することで、β-メチル-γ-オクタラクトンに基づく甘味の口残りを低減することも見出した。
【0017】
オイゲノールの含有量は、5ppb以上が好ましく、8ppb以上、10ppb以上、50ppb以上、70ppb以上、80ppb以上、90ppb以上、100ppb以上がより好ましい。オイゲノールの含有量が所定値以上であることによって、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とを低減することができる。
オイゲノールの含有量は、1500ppb以下が好ましく、1000ppb以下、600ppb以下、550ppb以下、500ppb以下、400ppb以下、300ppb以下がより好ましい。オイゲノールの含有量が所定値以下であることによって、飲料としての総合評価を好ましい状態とすることができる。
【0018】
(オイゲノールの含有量/β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量)
本実施形態に係るアルコール飲料がβ-メチル-γ-オクタラクトンとオイゲノールとの両者を含む場合、両者の含有量は、其々、前記した数値範囲を満たせばよいが、両者の含有量の比率は、例えば、以下のとおりである。
オイゲノールの含有量(ppb)/β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量(ppb)は、0.1以上が好ましく、0.3以上、0.4以上、0.5以上がより好ましい。この比率が所定値以上であることによって、アルコールの刺激感の低減、アルコールの苦味の低減、舌当たりの柔らかさの増強という効果を発揮しつつ、さらに、甘味の口残りを低減することもできる。
オイゲノールの含有量(ppb)/β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量(ppb)は、5.0以下が好ましく、4.0以下、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.0以下、0.8以下がより好ましい。この比率が所定値以下であることによって、各効果(アルコールの刺激感の低減、アルコールの苦味の低減、舌当たりの柔らかさの増強)をより確実に発揮させることができる。
【0019】
なお、β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量、及び、オイゲノールの含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で既知の方法により測定することができる。
【0020】
(発泡性)
本実施形態に係るアルコール飲料は、炭酸ガスを含有する発泡性のもの、つまり、炭酸飲料であるのが好ましい。ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧(全圧)が0.5kg/cm以上であることをいい、1.0kg/cm以上が好ましく、1.5kg/cm以上、2.0kg/cm以上、3.0kg/cm以上、3.5kg/cm以上がより好ましい。
【0021】
(その他)
本実施形態に係るアルコール飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を含有していてもよい。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトースなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
そして、前記したβ-メチル-γ-オクタラクトン、オイゲノールについては、由来は特に限定されず、香気成分として含有されていても、樽熟成したアルコール類(例えば、ウイスキー、焼酎等)として含有されていても、香料や後記する果汁として含有されていてもよい。
【0022】
本実施形態に係るアルコール飲料は、チューハイテイスト飲料とする場合、フルーツフレーバー(フルーツ様の香りを付与するフレーバー)、果汁(果実を搾った汁)、果実エキスを含有させることもできる。そして、果汁としては、例えば、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの)、これらの希釈液、濃縮液、混合液などを用いることができる。また、果実エキスとは、果実(又は果汁)から水やアルコールなどを用いて当該果実の有効成分を抽出した抽出物である。
果汁の由来となる果実(および、果実フレーバーや果実エキスの果実種)は、柑橘類果実である、レモン、ライム、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、シークワーサー等や、バラ科果実である、梅、リンゴ、イチゴ、桃等、これら以外にも、ぶどう、プラム、ざくろ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、マキベリー、いちご、アップル、ピーチ、マンゴー、パイナップル、キウイ、梨等といった従来公知の果実も挙げることができる。
なお、本発明の効果(アルコールの刺激感の低減、アルコールの苦味の低減)は、フレーバー・果汁・果実エキスの香味タイプや香味の強弱から直接的な影響は受けないとともに、当該効果が消失してしまうといったことはないと考えることから、フレーバーなどによる香味タイプは前記のとおり多様であってもよく、含有量についても特に限定されない。
ただ、本実施形態に係るアルコール飲料としては、当然、果汁を含有しない飲料であってもよく、前記したような果汁から作られた果実酒ではない態様であってもよく、前記した樽熟成したアルコール類を含まない態様であってもよい。
【0023】
(容器詰めアルコール飲料)
本実施形態に係るアルコール飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にアルコール飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0024】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料は、β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が所定値以上、および、オイゲノールの含有量が所定値以上のうち少なくとも1つを満たすことから、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とが低減している。
また、本実施形態に係るアルコール飲料は、舌当たりの柔らかさが増強しているとともに、甘味の口残りが低減している。
【0025】
[アルコール飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
【0026】
混合工程では、混合タンクに、水、β-メチル-γ-オクタラクトン、オイゲノール、飲用アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量やオイゲノールの含有量などが前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0027】
そして、後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにおいて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
【0028】
なお、混合工程及び後処理工程において行われる各処理は、RTD飲料などを製造するために一般的に用いられている設備によって行うことができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が所定値以上、および、オイゲノールの含有量が所定値以上の少なくとも1つを満たす工程を含むことから、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とが低減したアルコール飲料を製造することができる。
【0030】
[アルコール飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、アルコール度数が所定値以上のアルコール飲料のアルコールの刺激感とアルコールの苦味とを低減させる香味向上方法であって、アルコール飲料にβ-メチル-γ-オクタラクトン、および、オイゲノールのうち少なくとも1つを含有させる方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「アルコール飲料」において説明した値と同じである。そして、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、アルコール飲料のβ-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が所定値以上、および、オイゲノールの含有量が所定値以上のうち少なくとも1つを満たすように調製してもよい。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、アルコール飲料にβ-メチル-γ-オクタラクトン、および、オイゲノールのうちの少なくとも1つを含有させることによって、アルコール飲料のアルコールの刺激感とアルコールの苦味とを低減させることができる。
【実施例
【0032】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0033】
[サンプルの準備]
表に示す量となるように、ウォッカ、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製「ファイバーソル2」)、β-メチル-γ-オクタラクトン、オイゲノール、炭酸水、イオン交換水を適宜配合してサンプルを準備した。
なお、各サンプルの20℃におけるガス圧(全圧)は3.0kg/cmとし、各サンプルのエキス分は難消化性デキストリンの量によって2.4w/v%に調製した。
【0034】
[試験内容]
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル6名が下記評価基準に則って「アルコールの刺激感」、「アルコールの苦味」、「舌当たりの柔らかさ」、「甘味の口残り」、「飲料としての総合評価」について、1~5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0035】
(アルコールの刺激感:評価基準)
アルコールの刺激感の評価は、サンプル0-1とサンプル0-2の2つを基準とし、「アルコールのピリピリとした刺激感を全く感じない(サンプル0-1と同程度である)」場合を1点、「アルコールのピリピリとした刺激感を強く感じる(サンプル0-2と同程度である)」場合を5点と評価した。そして、アルコールの刺激感については、点数が低いほど低減されており、好ましいと判断できる。
ここで、「アルコールの刺激感」とは、サンプルを飲んでいる最中に、口腔内において感じるピリピリとした感覚である。
【0036】
(アルコールの苦味:評価基準)
アルコールの苦味の評価は、サンプル0-1とサンプル0-2の2つを基準とし、「アルコールの苦味を全く感じない(サンプル0-1と同程度である)」場合を1点、「アルコールの苦味を強く感じる(サンプル0-2と同程度である)」場合を5点と評価した。そして、アルコールの苦味については、点数が低いほど低減されており、好ましいと判断できる。
ここで、「アルコールの苦味」とは、アルコールに由来したアルコール特有の苦味である。
【0037】
(舌当たりの柔らかさ:評価基準)
舌当たりの柔らかさの評価は、サンプル0-2を基準とし、「舌で感じる味が全く柔らかに感じない(サンプル0-2と同程度である)」場合を1点、「舌で感じる味が非常に柔らかく感じる」場合を5点と評価した。そして、舌当たりの柔らかさについては、点数が高いほど、好ましいと判断できる。
ここで、「舌当たりの柔らかさ」とは、サンプルを飲んでいる最中に舌で感じる味全体の柔らかさである。
【0038】
(甘味の口残り:評価基準)
甘味の口残りの評価は、サンプル0-2を基準とし、「甘味が全く口に残らない(サンプル0-2と同程度である)」場合を1点、「甘味がダラダラと口に残る」場合を5点と評価した。そして、甘味の口残りについては、点数が低いほど、好ましいと判断できる。
ここで、「甘味の口残り」とは、甘味が口にダラダラと残る様子を示している。なお、この評価点数が低い場合には、甘味が口に残らずに短時間でスッとなくなる場合だけでなく、そもそも甘味自体が感じられないために甘味が口に残らない場合も含んでいる。
【0039】
(飲料としての総合評価:評価基準)
飲料としての総合評価については、「アルコール飲料の香味として悪いと感じる」場合を1点、「アルコール飲料の香味として良いと感じる」場合を5点と評価した。
なお、アルコール飲料の香味として良いか悪いかについては、香味のバランスに基づいて判断しており、例えば、特定成分に基づく薬品的な香味が強く感じられることで香味のバランスが崩れている場合は、悪いとの判断となる。
【0040】
表に、各サンプルの配合量等を示すとともに、各評価の結果を示す。なお、表に示す各成分の数値および指標は、最終製品における含有量および指標である。
そして、表中の「オイゲノール/β-メチル-γ-オクタラクトン」は、厳密には、「オイゲノールの含有量(ppb)/β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量(ppb)」である。
【0041】
【表1】
【0042】
(結果の検討)
表1のサンプル0-1、0-2の結果から、アルコール飲料のアルコール度数が高くなると、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とが明確に感じる(強く感じる)状態となることが確認できた。
【0043】
表1のサンプル0-2、1-1~1-3の結果から、β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が所定値以上となると、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とが低減されることが確認できた。また、β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が所定値以上となると、舌当たりの柔らかさが増強するとともに、飲料としての総合評価の点数も高くなることが確認できた。
そして、全ての評価を考慮すると、サンプル0-2、1-1~1-3の中でも、サンプル1-1~1-3(特に、サンプル1-2、1-3)について非常に好ましい結果が得られた。
【0044】
また、表1のサンプル0-2、1-1~1-3の結果から、β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が多すぎると、甘味の口残りが若干強く感じることが確認できた。
本願では課題としては掲げていないものの、「甘味の口残り」の評価に基づくと、サンプル1-1~1-3を比較した場合、サンプル1-3よりもサンプル1-1、1-2の方が好ましいという結果が得られた。
【0045】
表1のサンプル0-2、2-1~2-3の結果から、オイゲノールの含有量が所定値以上となると、アルコールの刺激感とアルコールの苦味とが低減されることが確認できた。また、オイゲノールの含有量が所定値以上となると、舌当たりの柔らかさが増強するとともに、飲料としての総合評価の点数も高くなることが確認できた。
そして、全ての評価を考慮すると、サンプル0-2、2-1~2-3の中でも、サンプル2-1~2-3(特に、サンプル2-2、2-3)について非常に好ましい結果が得られた。
【0046】
表1のサンプル3-1~3-3の結果から、β-メチル-γ-オクタラクトンの含有量が所定値以上の飲料に対して、さらに、オイゲノールを含有させることによって、各効果(アルコールの刺激感の低減、アルコールの苦味の低減、舌当たりの柔らかさの増強)が発揮されるだけでなく、サンプル1-2において強く感じられた「甘味の口残り」も低減できることが確認できた。
そして、全ての評価を考慮すると、サンプル3-1~3-3の中でも、サンプル3-2~3-3(特に、サンプル3-2)について非常に好ましい結果が得られた。