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特許7445415姿勢推定装置、異常検出装置、補正装置、および、姿勢推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】姿勢推定装置、異常検出装置、補正装置、および、姿勢推定方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/70 20170101AFI20240229BHJP
   G06T 7/80 20170101ALI20240229BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240229BHJP
   G06T 7/246 20170101ALI20240229BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240229BHJP
【FI】
G06T7/70 B
G06T7/80
G06T7/00 650A
G06T7/246
H04N23/60
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019215294
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2020198074
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2019100191
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 康司
(72)【発明者】
【氏名】垣田 直士
(72)【発明者】
【氏名】小笹 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】上林 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】三野 敦
(72)【発明者】
【氏名】松本 武生
【審査官】小池 正彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-165810(JP,A)
【文献】特開2018-160732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/70
G06T 7/80
G06T 7/00
G06T 7/246
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたカメラで撮影された撮影画像から路面上の第1特徴点及び第2特徴点を含む複数の特徴点を抽出
異なる時刻で撮影された2つの前記撮影画像から前記カメラの投影面上における前記第1特徴点の位置変化の始点及び終点と、前記第2特徴点の位置変化の始点及び終点を導出し、
前記第1特徴点の位置変化の始点及び前記第2特徴点の位置変化の始点と前記カメラの光学中心とが含まれる第1平面、前記第2特徴点の位置変化の始点及び終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第2平面、前記第1特徴点の位置変化の終点及び前記第2特徴点の位置変化の終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第3平面、並びに前記第1特徴点の位置変化の始点及び終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第4平面とし、
前記第1平面と前記第3平面の交線のベクトルと、前記第2平面と前記第4平面の交線のベクトルとの外積により路面の法線を算出し、
前記算出した路面の法線と実際の路面の法線である垂直方向との違いに基づき前記カメラの姿勢を推定する、
姿勢推定装置。
【請求項2】
前記異なる時刻は、前記移動体の直進移動中における時刻である、請求項1に記載の姿勢推定装置。
【請求項3】
記撮影画像において前記特徴点が他に比べて集中して存在する高密度領域の中から前記第1特徴点及び前記第2特徴点を抽出する、請求項1又は請求項2に記載の姿勢推定装置。
【請求項4】
前記第1特徴点及び前記第2特徴点は、コーナーらしさを示すコーナー度が所定のコーナー度閾値以上となる特定の特徴点である、請求項1~3のいずれか一項に記載の姿勢推定装置。
【請求項5】
定の条件を満たす特徴点を抽出対象から除外する、請求項1~4のいずれか一項に記載の姿勢推定装置。
【請求項6】
前記所定の条件の少なくとも一つは、前記移動体の移動に基づく条件である、請求項5に記載の姿勢推定装置。
【請求項7】
前記所定の条件の少なくとも一つは、各々の特徴点の履歴に基づく条件である、請求項5又は請求項6に記載の姿勢推定装置。
【請求項8】
前記所定の条件の少なくとも一つは、第1時刻から第2時刻までの複数の特徴点の各位置変化間の比較に基づく条件である、請求項5~7のいずれか一項に記載の姿勢推定装置。
【請求項9】
前記カメラのパラメータ、特徴点の密度、特徴点の位置変化を算出する処理の内容、前記移動体の状態、前記カメラのレンズの状態、及び特徴点の位置変化間のばらつきの少なくとも一つに基づき信頼度を変更
記信頼度に基づき処理内容を決定する、請求項1~8のいずれか一項に記載の姿勢推定装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の姿勢推定装置と、
記推定された前記カメラの姿勢に基づき、前記カメラの取付けのずれが生じた状態であるか否かを判定する、
常検出装置。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の姿勢推定装置と、
記推定された前記カメラの姿勢に基づき、前記カメラのパラメータを補正する、
補正装置。
【請求項12】
走行中の移動体に搭載されたカメラで撮影された撮影画像から、路面上における第1オプティカルフロー及び第2オプティカルフローを抽出して、前記カメラの投影面上の座標に変換し、
前記第1及び第2オプティカルフローの各始点と前記カメラの光学中心とが含まれる第1平面、前記第2オプティカルフローと前記カメラの光学中心とが含まれる第2平面、前記第1及び第2オプティカルフローの各終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第3平面、並びに前記第1オプティカルフローと前記カメラの光学中心とが含まれる第4平面により、
前記第1平面と前記第3平面の交線のベクトルと、前記第2平面と前記第4平面の交線のベクトルとの外積により前記路面の法線を算出し、
算出した前記法線と実際の路面の法線との違いに基づき前記カメラの姿勢を推定する、
姿勢推定装置。
【請求項13】
移動体に搭載されたカメラで撮影された撮影画像から路面上の第1特徴点及び第2特徴点を含む複数の特徴点を抽出
異なる時刻で撮影された2つの前記撮影画像から前記カメラの投影面上における前記第1特徴点の位置変化の始点及び終点と、前記第2特徴点の位置変化の始点及び終点を導出し、
前記第1特徴点の位置変化の始点及び前記第2特徴点の位置変化の始点と前記カメラの光学中心とが含まれる第1平面、前記第2特徴点の位置変化の始点及び終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第2平面、前記第1特徴点の位置変化の終点及び前記第2特徴点の位置変化の終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第3平面、並びに前記第1特徴点の位置変化の始点及び終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第4平面とし、
前記第1平面と前記第3平面の交線のベクトルと、前記第2平面と前記第4平面の交線のベクトルの外積により路面の法線を算出し、
前記算出した路面の法線と実際の路面の法線である垂直方向との違いに基づき前記カメラの姿勢を推定する、
姿勢推定装置が行う姿勢推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの姿勢を推定する姿勢推定装置、カメラの異常を検出する異常検出装置、カメラのパラメータを補正する補正装置、および、カメラの姿勢を推定する姿勢推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載カメラを用いて、例えば車両の駐車支援等の運転支援が行われている。車載カメラは、車両を工場から出荷する前に、車両に固定状態で取り付けられる。しかしながら、車載カメラは、例えば不意の接触や経年変化等によって、工場出荷時の取付状態から位置ずれを起こすことがある。車載カメラの位置(車両のボディに対する車載カメラの相対位置)がずれると、カメラ画像を利用して判断されるハンドルの操舵量等に誤差が生じるために、車載カメラの位置ずれを検出することは重要である。
【0003】
特許文献1には、車載カメラの光軸ずれを検出する技術が開示される。特許文献1における車載カメラの光軸ずれ検出装置は、画像処理手段と判断手段とを備える。画像処理手段は、運転支援する車体部上のマーキングを含む範囲を撮影する車載カメラの撮影画像から該マーキングの位置情報を検出する。判断手段は、初期設定されたマーキング位置情報と、新たに検出されたマーキングの位置情報とを比較することにより、撮影光軸ずれを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-173037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載カメラの撮影画像には、車両周囲の風景等が映るために、例えばマーキングがボンネットの一部の特定形状である場合、当該特定形状を簡単に抽出できないことがある。当該特定形状が誤検出されると、車載カメラの光軸ずれが正確に判断されない可能性がある。なお、車載カメラの光軸ずれとは、車載カメラの姿勢が設計通りでないことを意味している。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて、カメラの姿勢を精度良く推定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る姿勢推定装置は、移動体に搭載されたカメラで撮影された撮影画像から路面上の第1特徴点及び第2特徴点を含む複数の特徴点を抽出、異なる時刻で撮影された2つの前記撮影画像から前記カメラの投影面上における前記第1特徴点の位置変化の始点及び終点と、前記第2特徴点の位置変化の始点及び終点を導出し、前記第1特徴点の位置変化の始点及び前記第2特徴点の位置変化の始点と前記カメラの光学中心とが含まれる第1平面、前記第2特徴点の位置変化の始点及び終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第2平面、前記第1特徴点の位置変化の終点及び前記第2特徴点の位置変化の終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第3平面、並びに前記第1特徴点の位置変化の始点及び終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第4平面とし、前記第1平面と前記第3平面の交線のベクトルと、前記第2平面と前記第4平面の交線のベクトルとの外積により路面の法線を算出し、前記算出した路面の法線と実際の路面の法線である垂直方向との違いに基づき前記カメラの姿勢を推定す構成(第1の構成)である。
【0008】
上記第1の構成の姿勢推定装置において、前記異なる時刻は、前記移動体の直進移動中における時刻である構成(第2の構成)であってもよい。
【0009】
上記第1又は第2の構成の姿勢推定装置において、記撮影画像において前記特徴点が他に比べて集中して存在する高密度領域の中から前記第1特徴点及び前記第2特徴点を抽出する構成(第3の構成)であってもよい。
【0010】
上記第1~第3いずれかの構成の姿勢推定装置において、前記第1特徴点及び前記第2特徴点は、コーナーらしさを示すコーナー度が所定のコーナー度閾値以上となる特定の特徴点である構成(第4の構成)であってもよい。
【0011】
上記第1~第4いずれかの構成の姿勢推定装置において、定の条件を満たす特徴点を抽出対象から除外す構成(第5の構成)であってもよい。
【0012】
上記第5の構成の姿勢推定装置において、前記所定の条件の少なくとも一つは、前記移動体の移動に基づく条件である構成(第6の構成)であってもよい。
【0013】
上記第5又は第6の構成の姿勢推定装置において、前記所定の条件の少なくとも一つは、各々の特徴点の履歴に基づく条件である構成(第7の構成)であってもよい。
【0014】
上記第5~第7いずれかの構成の姿勢推定装置において、前記所定の条件の少なくとも一つは、第1時刻から第2時刻までの複数の特徴点の各位置変化間の比較に基づく条件である構成(第8の構成)であってもよい。
【0015】
上記第1~第8いずれかの構成の姿勢推定装置において、前記カメラのパラメータ、特徴点の密度、特徴点の位置変化を算出する処理の内容、前記移動体の状態、前記カメラのレンズの状態、及び特徴点の位置変化間のばらつきの少なくとも一つに基づき信頼度を変更し、前記信頼度に基づき処理内容を決定する構成(第9の構成)であってもよい。
【0016】
本発明に係る異常検出装置は、上記第1~第9いずれかの構成の姿勢推定装置と、前記推定された前記カメラの姿勢に基づき、前記カメラの取付けのずれが生じた状態であるか否かを判定す構成(第10の構成)である。
【0017】
本発明に係る補正装置は、上記第1~第9のいずれかの構成の姿勢推定装置と、前記推定された前記カメラの姿勢に基づき、前記カメラのパラメータを補正す構成(第11の構成)である。
【0018】
本発明の他の局面に係る姿勢推定装置は、走行中の移動体に搭載されたカメラで撮影された撮影画像から、路面上における第1オプティカルフロー及び第2オプティカルフローを抽出して、前記カメラの投影面上の座標に変換し、前記第1及び第2オプティカルフローの各始点と前記カメラの光学中心とが含まれる第1平面、前記第2オプティカルフローと前記カメラの光学中心とが含まれる第2平面、前記第1及び第2オプティカルフローの各終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第3平面、並びに前記第1オプティカルフローと前記カメラの光学中心とが含まれる第4平面により、前記第1平面と前記第3平面の交線のベクトルと、前記第2平面と前記第4平面の交線のベクトルとの外積により前記路面の法線を算出し、算出した前記法線と実際の路面の法線との違いに基づき前記カメラの姿勢を推定する構成(第12の構成)である。また、本発明に係る姿勢推定方法は、移動体に搭載されたカメラで撮影された撮影画像から路面上の第1特徴点及び第2特徴点を含む複数の特徴点を抽出、異なる時刻で撮影された2つの前記撮影画像から前記カメラの投影面上における前記第1特徴点の位置変化の始点及び終点と、前記第2特徴点の位置変化の始点及び終点を導出し、前記第1特徴点の位置変化の始点及び前記第2特徴点の位置変化の始点と前記カメラの光学中心とが含まれる第1平面、前記第2特徴点の位置変化の始点及び終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第2平面、前記第1特徴点の位置変化の終点及び前記第2特徴点の位置変化の終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第3平面、並びに前記第1特徴点の位置変化の始点及び終点と前記カメラの光学中心とが含まれる第4平面とし、前記第1平面と前記第3平面の交線のベクトルと、前記第2平面と前記第4平面の交線のベクトルの外積により路面の法線を算出し、前記算出した路面の法線と実際の路面の法線である垂直方向との違いに基づき前記カメラの姿勢を推定する、姿勢推定装置が行う構成(第1の構成)である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、カメラの姿勢を精度良く推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】異常検出システムの構成を示すブロック図
図2】車載カメラが車両に配置される位置を例示する図
図3】姿勢推定装置によるカメラの姿勢推定フローの一例を示すフローチャート
図4】特徴点を抽出する手法を説明するための図
図5】第1特徴点のオプティカルフロー及び第2特徴点のオプティカルフローを導出する手法を説明するための図
図6】オプティカルフローから仮想的に形成される四角形を示す図
図7】所定の平面との交線が互いに平行になる面の組を2組特定する手法を説明するための図
図8】特定した面の組の一方に基づき、面同士の交線の方向を求める手法を説明するための図
図9】特定した面の組の他方に基づき、面同士の交線の方向を求める手法を説明するための図
図10】補正システムの構成を示すブロック図
図11】姿勢推定装置の変形例の概要を示すブロック図
図12】姿勢推定装置の他の変形例の概要を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、移動体として車両を例にとり説明するが、移動体は車両に限定されない。車両には、例えば自動車、電車、無人搬送車等の車輪のついた乗り物が広く含まれる。車両以外の移動体として、例えば船舶や航空機等が挙げられる。
【0022】
また以下の説明では、車両の直進進行方向であって、運転席からハンドルに向かう方向を「前方向」とする。また、車両の直進進行方向であって、ハンドルから運転席に向かう方向を「後方向」とする。また、車両の直進進行方向及び鉛直線に垂直な方向であって、前方向を向いている運転者の右側から左側に向かう方向を「左方向」とする。また、車両の直進進行方向及び鉛直線に垂直な方向であって、前方向を向いている運転者の左側から右側に向かう方向を「右方向」とする。
【0023】
<1.異常検出システム>
図1は、実施形態に係る異常検出システムSYS1の構成を示すブロック図である。本実施形態において、異常は、カメラの取付けのずれが生じた状態である。すなわち、異常検出システムSYS1は、車両に搭載されたカメラ(車載カメラ)の取付けのずれを検出するシステムである。図1に示すように、異常検出システムSYS1は、異常検出装置1及び撮影部2を備える。
【0024】
異常検出装置1は、車載カメラで撮影された撮影画像に基づいて異常を検出する装置である。異常検出装置1は、車載カメラを搭載する車両ごとに備えられる。本実施形態では、異常検出装置1は、撮影部2から撮影画像を取得する。
【0025】
撮影部2は、車両周辺の状況を監視する目的で設けられる。撮影部2は、4つのカメラ21~24を備える。4つのカメラ21~24は、車載カメラである。図2は、4つの車載カメラ21~24が車両4に配置される位置を例示する図である。
【0026】
車載カメラ21は車両4の前端に設けられる。このため、車載カメラ21をフロントカメラ21とも呼ぶ。フロントカメラ21の光軸21aは上からの平面視で車両4の前後方向に沿っている。フロントカメラ21は車両4の前方向を撮影する。車載カメラ22は車両4の後端に設けられる。このため、車載カメラ22をバックカメラ22とも呼ぶ。バックカメラ22の光軸22aは上からの平面視で車両4の前後方向に沿っている。バックカメラ22は車両4の後方向を撮影する。フロントカメラ21及びバックカメラ22の取付位置は、車両4の左右中央であることが好ましいが、左右中央から左右方向に多少ずれた位置であってもよい。
【0027】
車載カメラ23は車両4の左側ドアミラー41に設けられる。このため、車載カメラ23を左サイドカメラ23とも呼ぶ。左サイドカメラ23の光軸23aは上からの平面視で車両4の左右方向に沿っている。左サイドカメラ23は車両4の左方向を撮影する。車載カメラ24は車両4の右側ドアミラー42に設けられる。このため、車載カメラ24を右サイドカメラ24とも呼ぶ。右サイドカメラ24の光軸24aは上からの平面視で車両4の左右方向に沿っている。右サイドカメラ24は車両4の右方向を撮影する。なお、車両4がいわゆるドアミラーレス車である場合には、左サイドカメラ23は左サイドドアの回転軸(ヒンジ部)の周辺にドアミラーを介することなく取り付けられ、右サイドカメラ24は右サイドドアの回転軸(ヒンジ部)の周辺にドアミラーを介することなく取り付けられる。
【0028】
各車載カメラ21~24の水平方向の画角θは180度以上である。このため、車載カメラ21~24によって、車両4の水平方向における全周囲を撮影することができる。また、車載カメラ21~24によって撮影される画像には、車載カメラ21~24を搭載する車両4のボディが映り込む。
【0029】
なお、本実施形態では、車載カメラの数を4つとしているが、この数は適宜変更されてよく、複数であっても単数であってもよい。例えば、車両4がバックで駐車することを支援する目的で車載カメラが搭載されている場合には、車載カメラは、バックカメラ22、左サイドカメラ23、右サイドカメラ24の3つで構成されてもよい。
【0030】
図1に戻って、本実施形態では、ステアリングホイール(ハンドル)の回転角を検出する舵角センサ3の出力は、CAN(Controller Area Network)バス等の通信バスB1を介して異常検出装置1に入力される。
【0031】
<2.異常検出装置>
図1に示すように、異常検出装置1は、取得部11と、制御部12と、記憶部13と、を備える。
【0032】
取得部11は、車載カメラ21~24からアナログ又はデジタルの撮影画像を所定の周期(例えば、1/30秒周期)で時間的に連続して取得する。すなわち、取得部11によって取得される撮影画像の集合体が車載カメラ21~24で撮影された動画像である。そして、取得した撮影画像がアナログの場合には、取得部11は、そのアナログの撮影画像をデジタルの撮影画像に変換(A/D変換)する。取得部11は、取得した撮影画像、或いは、取得及び変換した撮影画像を制御部12に出力する。取得部11から出力される1つの撮影画像が1つのフレーム画像となる。
【0033】
制御部12は、例えばマイクロコンピュータであり、異常検出装置1の全体を統括的に制御する。制御部12は、不図示のCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部13は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリであり、各種の情報を記憶する。記憶部13は、ファームウェアとしてのプログラムや各種のデータを記憶する。
【0034】
制御部12は、抽出部121、特定部122、推定部123、及び判定部124を備える。なお、制御部12の抽出部121、特定部122、推定部123、及び判定部124の少なくともいずれか一つは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。また、抽出部121、特定部122、推定部123、及び判定部124は、概念的な構成要素である。1つの構成要素が実行する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてよい。また、取得部11は、制御部12のCPUがプログラムに従って演算処理を行うことによって実現される構成でもよい。
【0035】
抽出部121は、各車載カメラ21~24からの撮影画像から第1特徴点及び第2特徴点を含む複数の特徴点を抽出する。特徴点は、撮影画像中のエッジの交点など、撮影画像において際立って検出できる点である。特徴点は、例えば路面に描かれた白線のエッジ、路面上のひび、路面上のしみ、路面上の砂利などである。特徴点は、通常、1つの撮影画像の中に多数存在する。抽出部121は、例えば、ハリスオペレータ等の公知の手法を用いて特徴点を抽出する。抽出部121は、路面上の特徴点の中から第1特徴点及び第2特徴点を選定する。なお、本実施形態では、所定の平面として路面を想定する。
【0036】
特定部122は、異なる時刻で撮影された2つの撮影画像から抽出された第1特徴点及び第2特徴点の各オプティカルフローを導出する。オプティカルフローは、異なる時刻で撮影された2つの撮影画像間における特徴点の動きを示す動きベクトルである。異なる時刻の間隔は、取得部11のフレーム周期と同一であってもよく、取得部11のフレーム周期の複数倍であってもよい。
【0037】
特定部122は、第1特徴点及び第2特徴点の各オプティカルフローを用いて、異なる時刻で撮影された2つの撮影画像から抽出された第1特徴点及び第2特徴点の各位置変化を算出する。
【0038】
特定部122は、第1特徴点の位置変化及び第2特徴点の位置変化に基づき、所定の平面との交線が互いに平行となる面の組を2組特定する。
【0039】
推定部123は、特定部122で特定した面の組に基づきカメラの姿勢(カメラの取付け角度)を推定する。例えば抽出部121がフロントカメラ21から第1特徴点及び第2特徴点を抽出した場合、推定部123はフロントカメラ21の姿勢(カメラの取付け角度)を推定する。
【0040】
判定部124は、推定部123によって推定されたカメラの姿勢に基づき、カメラの取付けのずれが生じた状態であるか否かを判定する。カメラの取付けのずれが生じた状態であると判定されると、異常検出装置1がカメラの異常を検出したことになる。例えば、この異常を異常検出装置1が車両4のユーザに報知することで、車両4のユーザはディーラによるカメラの取付調整を依頼する等の対策をとることが可能となる。
【0041】
取得部11、抽出部121、特定部122、及び推定部123によって姿勢推定装置14が構成される。言い換えると、異常検出装置1は姿勢推定装置14を備える。図3は、姿勢推定装置14によるカメラの姿勢推定フローの一例を示すフローチャートである。以下、フロントカメラ21の姿勢を推定する場合を例に挙げて説明する。
【0042】
図3に示すように、まず、制御部12は、フロントカメラ21を搭載する車両4が直進しているか否かを監視する(ステップS1)。車両4が直進しているか否かは、例えば、舵角センサ3から得られるステアリングホイールの回転角情報に基づいて判断することができる。例えば、ステアリングホイールの回転角がゼロのときに車両4が完全にまっすぐに進むとした場合に、回転角がゼロの場合だけでなく、回転角がプラス方向とマイナス方向の一定範囲内の値である場合を含めて、車両4が直進していると判断してよい。なお、直進には、前方方向の直進と、後退方向の直進との両方が含まれる。
【0043】
制御部12は、車両4の直進を検出するまで、ステップS1の監視を繰り返す。言い換えると、制御部12は、車両4が直進しない限り、カメラの姿勢を推定しない。これによれば、移動体の直進移動中における第1特徴点の位置変化及び第2特徴点の位置変化を用いてカメラの姿勢を推定することになり、車両4の進行方向が曲がっている場合の情報を用いてカメラの姿勢推定が行われないので、カメラの姿勢を推定するための情報処理、より詳細には後述するステップS3の処理が複雑になることを避けることができる。
【0044】
なお、後述するステップS3の処理において、互いに重なっていない第1特徴点のオプティカルフローと第2特徴点のオプティカルフローが導出できればカメラの姿勢を推定することができるので、本実施形態とは異なり車両4の進行方向が曲がっているときにカメラの姿勢を推定してもよい。
【0045】
本実施形態では、車両4が直進していると判断される場合(ステップS1でYES)、抽出部121によって特徴点の抽出が行われる(ステップS2)。
【0046】
図4は、第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2を抽出する手法を説明するための図である。図4は、フロントカメラで撮影される撮影画像Pを模式的に示している。撮影画像Pは、車両4のボディが映り込む領域BOを含む。第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2は路面RS上に存在する。図4においては、路面に描かれている制限速度を示す数字の部分に第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2が存在する。
【0047】
第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2が抽出されると、特定部122は、第1特徴点FP1のオプティカルフローOF1と、第2特徴点FP2のオプティカルフローOF2と、を導出する(ステップS3)。
【0048】
図5は、第1特徴点FP1のオプティカルフローOF1及び第2特徴点FP2のオプティカルフローOF2を導出する手法を説明するための図である。図5は、図4と同様に便宜的に示された模式図である。図5は、図4に示す撮影画像(前フレームP)の撮影後、所定時間が経過した後にフロントカメラ21で撮影された撮影画像(現フレームP’)である。図4に示す撮影画像Pの撮影後、所定時間が経過するまでの間に、車両4は前方に直進している。図5に示す丸印FP1Pは、図4に示す撮影画像Pの撮影時点における第1特徴点FP1の位置を示す。図5に示す丸印FP2Pは、図4に示す撮影画像Pの撮影時点における第2特徴点FP2の位置を示す。
【0049】
図5に示すように、車両4が前方に直進すると、車両4の前方に存在する第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2は車両4に近づく。すなわち、第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2は、現フレームP’と前フレームPとで異なる位置に現れる。特定部122は、現フレームP’の第1特徴点FP1と前フレームPの第1特徴点FP1とを、その近傍の画素値に基づいて対応付け、対応付けた第1特徴点FP1のそれぞれの位置に基づいて、第1特徴点FP1のオプティカルフローOF1を導出する。同様に、特定部122は、現フレームP’の第2特徴点FP2と前フレームPの第2特徴点FP2とを、その近傍の画素値に基づいて対応付け、対応付けた第2特徴点FP2のそれぞれの位置に基づいて、第2特徴点FP2のオプティカルフローOF2を導出する。
【0050】
第1特徴点FP1のオプティカルフローOF1と第2特徴点FP2のオプティカルフローOF2が導出されると、特定部122は、特徴点に対し、記憶部13に記憶されているフロントカメラ21に内部パラメータを用いて座標変換を行う。座標変換では、フロントカメラ21の収差補正と、歪補正とが行われる。収差補正は、フロントカメラ21の光学系の収差による歪みを補正するために行われる。具体的には樽型歪みや糸巻歪みなど歪曲収差の補正である。歪み補正は、フロントカメラ21の光学系そのものの歪みを補正するために行われる。具体的には魚眼補正などである。座標変換により、特徴点の座標は、被写体が透視投影によって撮影された場合に二次元画像上で得られる座標に変換される。
【0051】
特徴点の座標変換が行われると、特定部122は、図6に示すように、第1特徴点FP1のオプティカルフローOF1の始点を頂点SP1、第1特徴点FP1のオプティカルフローOF1の終点を頂点EP1、第2特徴点FP1のオプティカルフローOF2の始点を頂点SP2、及び第2特徴点FP2のオプティカルフローOF2の終点を頂点EPとする四角形QLを仮想的に形成する(ステップS4)。以降、説明のために四角形や、該四角形の辺などの幾何的要素を仮想的に形成して用いる。しかし、実際の処理では、特徴点の座標や直線の方向などのベクトル演算に基づき、同等の作用を持つ幾何的要素に基づかない処理としてもよい。
【0052】
四角形QLが仮想的に形成されると、特定部122は、四角形QLと、記憶部13に記憶されているフロントカメラ21の内部パラメータとを用いて、三次元空間におけるフロントカメラ21の投影面IMG上に四角形QLを移動させ、投影面IMG上での四角形QL1を仮想的に生成する(ステップS5)。
【0053】
なお説明のため、以下のように辺を定義する。四角形QL1の第1辺SD1は、四角形QLにおいて、頂点SP1および頂点SP2を結んだ辺に対応する。つまり、前フレームPにおける第1特徴点FP1と第2特徴点FP2を結んだ辺に相当する。同様に、四角形QL1の第2辺SD2は、四角形QLにおいて、頂点SP2および頂点EP2を結んだ辺に対応する。つまり、第2特徴点FP2のオプティカルフローOF2に相当する。同様に、四角形QL1の第3辺SD3は、四角形QLにおいて、頂点EP1および頂点EP2を結んだ辺に対応する。つまり、現フレームP’における第1特徴点FP1と第2特徴点FP2とを結んだ辺に相当する。同様に、四角形QL1の第4辺SD4は、四角形QLにおいて、頂点SP1および頂点EP1を結んだ辺に対応する。つまり、第1特徴点FP1のオプティカルフローOF1に相当する。
【0054】
また、以下のように面を定義する(図7参照)。四角形QL1の第1辺SD1とフロントカメラ21の光学中心OCとが含まれる面を第1面F1とする。同様に、四角形QL1の第2辺SD2とフロントカメラ21の光学中心OCとが含まれる面を第2面F2とする。同様に、四角形QL1の第3辺SD3とフロントカメラ21の光学中心OCとが含まれる面を第3面F3とする。同様に、四角形QL1の第4辺SD4とフロントカメラ21の光学中心OCとが含まれる面を第4面F4とする。
【0055】
次に、特定部122は、所定の平面との交線が互いに平行になる面の組を2組特定する(ステップS6)。所定の平面とはあらかじめ平面の法線が分かっている面である。具体的には車両が移動を行っている平面であり、つまり路面である。所定の平面は、厳密な平面でなくてもよく、特定部122が所定の平面との交線が互いに平行になる面の組を2組特定する際に平面とみなすことができるものであればよい。
【0056】
本実施形態では、異常検出装置1は、車両4が直進している場合に、異なる時刻に撮影された2つの画像から特徴点を抽出し、該特徴点のオプティカルフローを算出する。また、該特徴点は路面などの所定の平面上に位置している静止物から抽出される。したがって、算出されるオプティカルフローは実世界上では、車両4に対する静止物の相対的な位置変化を表す。つまり向きが逆となった車両4の移動ベクトルである。
【0057】
四角形QL1の第2辺SD2と第4辺SD4とは、共に特徴点のオプティカルフローに対応するので、共に実世界上では車両4の移動ベクトルに相当する。したがって、路面上では互いに平行となると想定される。
【0058】
また、四角形QL1の第1辺SD1と第3辺SD3とは、共に特徴点同士の位置関係なので、実世界上では車両4の移動に伴う静止物同士の位置関係に相当する。移動前の位置関係が第1辺SD1に相当し、移動後の位置関係が第3辺SD3に相当する。このとき静止物の位置は変わらないため、移動前後で位置関係は変わらない。したがって、路面上ではこれも互いに平行となると想定される。
【0059】
したがって、特定部122は、路面との交線が平行な面として、第2面F2と第4面F4との組と、第1面F1と第3面F3との組と、の2つの組を特定する。つまり、特定部122は、オプティカルフローを含む面同士を1つの組とし、同時刻に撮影された特徴点を含む面同士を他の組として、計2つの組を特定する。
【0060】
なお、図7において四角形QL2は、現フレームP’の撮影時点での第1特徴点FP1の3次元空間(実世界)上の位置、現フレームP’の撮影時点での第2特徴点FP2の3次元空間上の位置、前フレームPの撮影時点での第1特徴点FP1の3次元空間上の位置、及び前フレームPの撮影時点での第2特徴点FP2の3次元空間上の位置を頂点とする四角形である。第1面F1は、四角形QL2の第1辺SD11を含む。同様に、第2面F2は四角形QL2の第2辺SD12を含み、第3面F3は四角形QL2の第3辺SD13を含み、第4面F4は四角形QL2の第4辺SD14を含む。このとき、上記のように四角形QL2は路面上に形成される平行四辺形であると想定される。
【0061】
次に、推定部123は、路面の法線を算出する(ステップS7)。まず、推定部123は、特定部122で特定した面の組の一方である第1面F1と第3面F3とに基づき、面同士の交線の方向を求める。詳細には、第1面F1と第3面F3との交線CL1の向きを求める(図8参照)。交線CL1の方向ベクトルV1は、第1面F1の法線ベクトル及び第3面F3の法線ベクトルそれぞれと垂直なベクトルである。したがって、推定部123は、第1面F1の法線ベクトルと第3面F3の法線ベクトルとの外積により、交線CL1の方向ベクトルV1を求める。第1面F1と第3面F3は、路面との交線が平行となるため、方向ベクトルV1は路面と平行になる。
【0062】
同様に、推定部123は、特定部122で特定した面の組の他方である第2面F2と第4面F4との交線の方向を求める。詳細には第2面F2と第4面F4との交線CL2の向きを求める(図9参照)。交線CL2の方向ベクトルV2は、第2面F2の法線ベクトル及び第4面F4の法線ベクトルそれぞれと垂直なベクトルである。したがって、推定部123は、第2面F2の法線ベクトルと第4面F4の法線ベクトルとの外積により、交線CL2の方向ベクトルV2を求める。第2面F2と第4面F4も同様に、路面との交線が平行となるため、方向ベクトルV2は路面と平行になる。
【0063】
推定部123は、方向ベクトルV1と方向ベクトルV2との外積により、四角形QL2の面の法線、すなわち路面の法線を算出する。推定部123が算出した路面の法線はフロントカメラ21のカメラ座標系で算出されるため、実際の路面の法線である垂直方向との違いから3次元空間の座標系を求め、路面に対するフロントカメラ21の姿勢を推定することができる。その推定結果から推定部123は車両4に対するフロントカメラ21の姿勢を推定する(ステップS8)。なお、ステップS7の算出処理は、例えば公知のARToolkitを利用して実行することができる。
【0064】
ステップS8におけるフロントカメラ21の姿勢推定が終了すると、図5に示すフローが終了する。
【0065】
姿勢推定装置14は、車両4の移動を利用して、自律的に所定の平面との交線が互いに平行になる面の組を2組特定することで、特徴点の抽出誤差のみが推定精度に影響するカメラの姿勢推定を行うことができる。すなわち、姿勢推定装置14は、誤差要因が少ないカメラの姿勢推定を行うことができる。したがって、姿勢推定装置14は、カメラの姿勢を精度良く推定することができる。
【0066】
なお、例えば路面RSがコンクリートで構成される場合、特徴点が抽出され難い。このため、特徴点の抽出誤差が大きくなり易い。しかしながら、例えば、コンクリートで構成される路面RSに汚れが存在する場合、その汚れ部分から第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2を抽出すると、特徴度が高い特徴点を第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2として選定することになり、第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2の抽出誤差を抑制できると考えられる。
【0067】
汚れに限らず、特徴点が他に比べて集中して存在する高密度領域が存在する場合、その高密度領域の中から、第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2を抽出することにより、第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2の抽出誤差を抑制できると考えられる。したがって、特徴点が他に比べて集中して存在する高密度領域が存在する場合、その高密度領域の中から、第1特徴点FP1及び第2特徴点FP2が抽出部121によって抽出されてもよい。
【0068】
また、コーナー度が高い特徴点の抽出では、抽出誤差が小さくなる。したがって、記第1特徴点及び前記第2特徴点を、コーナーらしさを示すコーナー度が所定のコーナー度閾値以上となる特定の特徴点としてもよい。コーナーとは2つのエッジが交わる部分である。コーナーでは、コーナー度が高くなる。コーナー度は、例えばHarrisオペレータやKLT(Kanade-Lucas-Tomasi)トラッカーなどの公知の検出手法を用いて求めることができる。
【0069】
なお、上記の説明ではフロントカメラ21の光学中心OCと、四角形QL1の1つの辺を含む平面を特定するとしたがこの限りではない。当該平面の法線方向の特定をもって平面を特定するとしてもよい。例えば光学中心OCから各頂点への方向ベクトルの外積により平面の法線方向を求め、該法線方向によって面を特定するとしてもよい。この場合、第1面F1の法線方向と第3面F3の法線方向とを1つの組とし、第2面F2の法線方向と第4面F4の法線方向とを他の組として2つの組を特定するとよい。
【0070】
また、面は平行移動させてもよい。例えば第1面F1の代わりに、第1面F1を平行移動させた面を第3面F3と組としてもよい。平行移動しても所定の平面との交線の向きは変わらないからである。
【0071】
<3.補正システム>
図10は、実施形態に係る補正システムSYS2の構成を示すブロック図である。図10において、図1と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。図10に示すように、補正システムSYS2は、補正装置1’及び撮影部2を備える。
【0072】
補正装置1’は、図1に示す異常検出装置1から判定部124を取り除き補正部125を追加した構成と同一である。すなわち、補正装置1’は、姿勢推定装置14及び補正部125を備える。
【0073】
補正部125は、推定部123によって推定されたカメラの姿勢に基づき、カメラのパラメータを補正する。これにより、カメラの取付けのずれが生じても、そのずれに応じたカメラのキャリブレーションが実行されることになり、カメラの取付けのずれが撮影画像に及ぼす悪影響を抑制することができる。
【0074】
<4.留意事項>
本明細書における実施形態や実施例の構成は、本発明の例示にすぎない。実施形態や変形例の構成は、本発明の技術的思想を超えない範囲で適宜変更されてもよい。また、複数の実施形態及び変形例は、可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0075】
例えば、図11に示すように、姿勢推定装置14(図11において不図示)に設けられる抽出部121が、所定の条件を満たす特徴点を抽出対象から除外する除外部121aを有するようにしてもよい。これにより、特定部122において誤ったオプティカルフローが導出されることを抑制することができ、推定部123での推定精度を向上させることができる。
【0076】
上記所定の条件の少なくとも一つを、例えば車両4の移動に基づく条件にするとよい。これにより、比較的大きく誤ったオプティカルフローが導出されることを抑制することができる。
【0077】
具体的には、第1時刻から第2時刻までの或る特徴点のオプティカルフローを路面上の座標系に変換した結果(変換後のベクトルの大きさ)と、第1時刻から第2時刻までの車両4の移動量との差が第1所定値以上である場合に、除外部121aは、当該或る特徴点を上記所定の条件を満たす特徴点として抽出対象から除外すればよい。同様に、第1時刻から第2時刻までの或る特徴点のオプティカルフローを路面上の座標系に変換した結果(変換後のベクトルの向き)と、第1時刻から第2時刻までの車両4の移動方向の逆方向との差が第2所定値以上である場合に、除外部121aは、当該或る特徴点を上記所定の条件を満たす特徴点として抽出対象から除外すればよい。なお、上述した第1時刻及び第2時刻は、互いに異なる時刻である。
【0078】
除外部121aは、例えばCANバス等の通信バスB1(図11において不図示)を用いて、車両4の移動量及び移動方向に関する情報を取得すればよい。しかしながら、CANバス等の通信バスB1(図11において不図示)を用いて取得された車両4の移動量及び移動方向に関する情報は、車両4の車速の誤差を含んでおり、且つ、撮影画像から得られるデータとの間に遅延量の差が生じる。したがって、車両4の移動に基づく条件を用いた場合には、比較的大きく誤ったオプティカルフローが導出されることしか抑制することができない。
【0079】
そこで、上記所定の条件の少なくとも一つを、例えば各々の特徴点の履歴に基づく条件にすることが望しい。これにより、比較的小さく誤ったオプティカルフローが導出されることも抑制することができる。
【0080】
具体的には、第1時刻から第2時刻までの或る特徴点のオプティカルフローの大きさと第2時刻から第3時刻までの或る特徴点のオプティカルフローの大きさとの差が第1所定値以上である場合に、除外部121aは、当該或る特徴点を上記所定の条件を満たす特徴点として抽出対象から除外すればよい。同様に、第1時刻から第2時刻までの或る特徴点のオプティカルフローの向きと第2時刻から第3時刻までの或る特徴点のオプティカルフローの向きとの差が第2所定値以上である場合に、除外部121aは、当該或る特徴点を上記所定の条件を満たす特徴点として抽出対象から除外すればよい。なお、上述した第1時刻、第2時刻、第3時刻はそれぞれ異なる時刻であり、上述した第2時刻は、上述した第1時刻より後であり、上述した第3時刻より前の時刻である。
【0081】
また、上記所定の条件の少なくとも一つを、例えば第1時刻から第2時刻までの複数の特徴点の各位置変化間の比較に基づく条件にしてもよい。これにより、比較的小さく誤ったオプティカルフローが導出されることも抑制することができる。
【0082】
具体的には、第1時刻から第2時刻までの或る特徴点のオプティカルフローの大きさと第1時刻から第2時刻までの他の或る特徴点のオプティカルフローの大きさとの差が第1所定値以上である場合に、除外部121aは、当該或る特徴点を上記所定の条件を満たす特徴点として抽出対象から除外すればよい。同様に、第1時刻から第2時刻までの或る特徴点のオプティカルフローの向きと第1時刻から第2時刻までの他の或る特徴点のオプティカルフローの向きとの差が第2所定値以上である場合に、除外部121aは、当該或る特徴点及び当該他の或る特徴点を上記所定の条件を満たす特徴点として抽出対象から除外すればよい。なお、上述した第1時刻及び第2時刻は、互いに異なる時刻である。ここでは、2つの特徴点のオプティカルフロー同士を比較したが、3つ以上の特徴点のオプティカルフロー同士を比較するようにし、他の特徴点と比較してオプティカルフローの大きさや向きが或るレベル以上異なっている特徴点のみが除外されるようにしてもよい。
【0083】
また例えば、図12に示すように、姿勢推定装置14(図12において不図示)に設けられる変更部126が信頼度に関する情報を推定部124に供給するようにしてもよい。この場合、変更部126が、カメラのパラメータ、抽出部121によって抽出される特徴点の密度、特徴点の位置変化を算出する処理の内容、車両4の状態、カメラのレンズの状態、及び複数の特徴点の位置変化間のばらつきの少なくとも一つに基づき信頼度を変更し、推定部123が、上述した信頼度に基づき処理内容を決定すればよい。これにより、画素レベルでの誤差によって特徴点のオプティカルフローの導出結果の精度が低下し、カメラの姿勢の推定精度が低下することを防止することができる。
【0084】
例えば、変更部126が、カメラのシャッター速度(カメラのパラメータの一例)が遅いほど、信頼度を低下させるとよい。カメラのシャッター速度が遅ければ、画像がぼやけ易くなり、特徴点の抽出や追跡の精度が低下するためである。なお、シャッターとは、メカシャッターに限定されず、電子シャッターを含む。
【0085】
具体的には、変更部126が、カメラのシャッター速度と信頼度との関係を式やデータテーブルの形式で予め記憶しておき、カメラのシャッター速度に関する情報を取得すればよい。なお、カメラが、カメラ周辺の照度に応じてシャッター速度を調整する構成である場合には、変更部126が、カメラのシャッター速度に関する情報の代わりに、カメラ周辺の照度に関する情報を取得するようにしてもよい。すなわち、変更部126が、カメラ周辺の照度を間接的なカメラのパラメータとして用いてもよい。
【0086】
例えば、変更部126が、カメラのAGC(Auto Gain Control)によるゲイン(カメラのパラメータの一例)の変化率が大きいほど、信頼度を低下させるとよい。ゲインの変化率が大きいと、特徴点の輝度が急激に変化するため特徴点の追跡精度が低下するためである。
【0087】
具体的には、変更部126が、カメラのAGCによるゲインの変化率と信頼度との関係を式やデータテーブルの形式で予め記憶しておき、カメラのAGCによるゲインの変化率に関する情報を取得すればよい。
【0088】
例えば、変更部126が、特徴点の密度(特定範囲内に存在する特徴点の個数)が多いほど、信頼度を低下させるとよい。特徴点同士の距離が近いと、追跡対象とは別の特徴点を誤って追跡してしまう可能性が高まり、特徴点の追跡精度が低下するためである。
【0089】
具体的には、変更部126が、特徴点の密度と信頼度との関係を式やデータテーブルの形式で予め記憶しておき、特徴点の密度に関する情報を取得すればよい。
【0090】
例えば、変更部126が、特徴点のオプティカルフローを算出する際の収束回数(特徴点の位置変化を算出する処理の内容の一例)が多いほど、信頼度を低下させるとよい。収束回数が多いと、無理にオプティカルフローを算出しており、オプティカルフローの算出精度が低下するためである。
【0091】
具体的には、変更部126が、特徴点のオプティカルフローを算出する際の収束回数と信頼度との関係を式やデータテーブルの形式で予め記憶しておき、特徴点のオプティカルフローを算出する際の収束回数に関する情報を取得すればよい。
【0092】
例えば、変更部126が、車両4の車速(車両4の状態の一例)が速いほど、信頼度を低下させるとよい。車両4の車速が速ければ、画像がぼやけ易くなり、特徴点の抽出や追跡の精度が低下するためである。
【0093】
具体的には、変更部126が、車両4の車速と信頼度との関係を式やデータテーブルの形式で予め記憶しておき、車両4の車速に関する情報を取得すればよい。
【0094】
例えば、変更部126が、車両4の舵角(車両4の状態の一例)が大きいほど、信頼度を低下させるとよい。車両4の舵角が大きければ、仮想的に生成する四角形の形状精度が低下するためである。
【0095】
具体的には、変更部126が、車両4の舵角と信頼度との関係を式やデータテーブルの形式で予め記憶しておき、車両4の舵角に関する情報を取得すればよい。
【0096】
例えば、変更部126が、カメラのレンズの汚れ(カメラのレンズの状態の一例)がひどいほど、信頼度を低下させるとよい。カメラのレンズの汚れがひどければ、画像がぼやけ易くなり、特徴点の抽出や追跡の精度が低下するためである。
【0097】
具体的には、変更部126が、カメラのレンズの汚れと信頼度との関係を式やデータテーブルの形式で予め記憶しておき、カメラのレンズの汚れに関する情報を取得すればよい。カメラのレンズの汚れ度合いは、例えば撮影画像の全画素に対する、撮影画像の複数フレーム間において輝度変化が所定範囲内である画素の割合とすることができる。
【0098】
例えば、変更部126が、連続する3つ以上のフレームにおける隣接フレーム間での特徴点の各オプティカルフローの長さのばらつき(特徴点の位置変化間のばらつきの一例)が大きいほど、信頼度を低下させるとよい。特徴点の位置変化間のばらつきが大きければ、特徴点の抽出や追跡の精度が低下している可能性が高いためである。
【0099】
具体的には、変更部126が、連続する3つ以上のフレームにおける隣接フレーム間での特徴点の各オプティカルフローの長さのばらつきと信頼度との関係を式やデータテーブルの形式で予め記憶しておき、連続する3つ以上のフレームにおける隣接フレーム間での特徴点の各オプティカルフローの長さのばらつきに関する情報を取得すればよい。
【0100】
推定部123は、例えば信頼度が所定レベル以上であれば推定処理を実行し、信頼度が所定レベル未満であれば推定処理を実行しないようにすればよい。この場合、信頼度が低ければカメラの姿勢が推定されないので、カメラの姿勢の推定精度が低下することを防止することができる。
【0101】
また、推定部123は、例えば信頼度が所定レベル以上であれば異なる時刻や異なる特徴点を用いてM回の角度推定を実行してM回の角度推定に基づく角度推定結果(例えばM回の平均)を求め、信頼度が所定レベル未満であれば異なる時刻や異なる特徴点を用いてN(>M)回の角度推定を実行してN回の角度推定に基づく角度推定結果(例えばN回の平均)を求めてもよい。この場合、信頼度が低くても、統計的処理によってカメラの姿勢の推定精度が低下することを防止することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 異常検出装置
1’ 補正装置
14 姿勢推定装置
21~24 車載カメラ
11 取得部
121 抽出部
121a 除外部
122 特定部
123 推定部
124 判定部
125 補正部
126 変更部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12