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特許7445416燃料電池システムの制御方法、及び、燃料電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】燃料電池システムの制御方法、及び、燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0662 20160101AFI20240229BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20240229BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20240229BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240229BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240229BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20240229BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240229BHJP
   H01M 8/04828 20160101ALI20240229BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20240229BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240229BHJP
【FI】
H01M8/0662
C01B3/38
H01M8/04014
H01M8/0432
H01M8/04537
H01M8/04701
H01M8/04746
H01M8/04828
H01M8/0612
H01M8/12 101
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019218251
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021089810
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 哲史
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183249(JP,A)
【文献】特開2015-041443(JP,A)
【文献】特開2005-203328(JP,A)
【文献】特開2004-011933(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188294(WO,A1)
【文献】特開2016-225103(JP,A)
【文献】特開2017-016816(JP,A)
【文献】特開2005-310530(JP,A)
【文献】特開2001-043873(JP,A)
【文献】特開2018-137080(JP,A)
【文献】特開2009-274886(JP,A)
【文献】特開2013-012444(JP,A)
【文献】特開2019-220367(JP,A)
【文献】特開2000-195534(JP,A)
【文献】特開2004-192958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給流路に設けられ、燃料ガスを改質してアノードガスを生成する改質器と、
前記改質器において生成された前記アノードガスと、外部から取り込まれるカソードガスとを反応させることで発電可能な燃料電池と、
前記燃料電池の排気流路に設けられ、アノードオフガスに含まれる未反応の前記アノードガスを、カソードオフガスによって燃焼させる排気燃焼器と、
前記排気燃焼器の下流にて前記排気流路から分岐し、前記改質器の上流の前記燃料供給流路へと合流する循環流路と、を備える燃料電池システムの制御方法であって、
前記排気燃焼器において、前記循環流路を用いて排出ガスを前記改質器へと循環させる場合には、前記循環流路を用いて前記排出ガスを循環させない場合よりも、前記アノードガスに対する前記カソードオフガスに含まれる前記カソードガスの比率である空燃比が小さくなるように、前記アノードオフガス及び前記カソードオフガスの流入量を制御する、燃料電池システムの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムの制御方法であって、
前記排気燃焼器は、前記アノードオフガスが個々に供給可能であり流れ方向に並設される燃焼箇所が複数設けられ、
上流側の前記燃焼箇所においては、下流側の前記燃焼箇所においてよりも、前記空燃比が小さくなるように、前記アノードオフガスの流入量を制御する、燃料電池システムの制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池システムの制御方法であって、
前記排気燃焼器から排出される前記排出ガスは、前記燃料電池システムが備える熱交換デバイスとの間で熱交換が可能に構成される、燃料電池システムの制御方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御方法であって、
前記排気流路と、前記改質器に供給される前記燃料ガスの流路とに跨るように設けられ、前記燃料ガスを前記排気流路に流れる前記排出ガスとの熱交換により加熱する熱交換器を、さらに備え、
前記熱交換器は、前記排気流路の側において、前記燃料ガスとは異なる燃料が供給可能に構成され、該燃料を酸化させる触媒を備える、燃料電池システムの制御方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御方法であって、
前記排気流路と、前記燃料電池へと供給される前記カソードガスの流路とに跨るように設けられ、前記カソードガスを前記排気流路に流れる前記排出ガスとの熱交換により加熱する熱交換器を、さらに備え、
前記熱交換器は、前記排気流路の側において、前記燃料ガスとは異なる燃料が供給可能に構成され、該燃料を酸化させる触媒を備える、燃料電池システムの制御方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御方法であって、
さらに、前記排気燃焼器の温度が前記排気燃焼器の備える触媒の劣化温度を下回るように、前記循環流路を介した前記排出ガスの循環量を制御する、燃料電池システムの制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池システムの制御方法であって、
前記排気燃焼器において、さらに、前記改質器において炭素析出が発生しないように、前記循環流路を用いて前記改質器へと循環される前記排出ガスの水分比率を制御する、燃料電池システムの制御方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御方法であって、
前記排気燃焼器における空燃比は、前記燃料供給流路に供給される前記燃料ガスの量と、燃料電池システムに取り込まれる前記カソードガスの量との比率により求められる、燃料電池システムの制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池が発電を行っている場合には、前記燃料供給流路に供給される前記燃料ガスの量、及び、燃料電池システムに取り込まれる前記カソードガスの量から、前記燃料電池の発電量に応じた前記燃料ガス及び前記カソードガスの消費量を控除することで、前記排気燃焼器に流入する前記燃料ガス及び前記カソードガスの量を算出し、該算出された前記燃料ガス及び前記カソードガスの量に基づいて、前記排気燃焼器における空燃比を求める、燃料電池システムの制御方法。
【請求項10】
燃料供給流路に設けられ、燃料ガスを改質してアノードガスを生成する改質器と、
前記改質器において生成された前記アノードガスと、外部から取り込まれるカソードガスとを反応させることで発電可能な燃料電池と、
前記燃料電池の排気流路に設けられ、アノードオフガスに含まれる未反応の前記アノードガスを、カソードオフガスによって燃焼させる排気燃焼器と、
前記排気燃焼器の下流にて前記排気流路から分岐し、前記改質器の上流の前記燃料供給流路へと合流する循環流路と、
前記燃料供給流路に供給される燃料と、燃料電池システムに取り込まれる前記カソードガスとを制御可能なコントローラと、を備える燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記循環流路を用いて排出ガスを前記改質器へと循環させる場合には、前記循環流路を用いて前記排出ガスを循環させない場合よりも、前記アノードガスに対する前記カソードオフガスに含まれる前記カソードガスの比率である空燃比が小さくなるように、前記アノードオフガス及び前記カソードオフガスの流入量を制御する、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの制御方法、及び、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムが備える燃料電池は、燃料を改質することにより得られるアノードガスと、空気などのカソードガスとの反応により発電を行う。このような燃料電池システムにおいて、燃料電池から排出されるアノードオフガスに含まれる未反応のアノードガスを再利用するために、アノードオフガスを燃料の改質を行う改質器に還流させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。このようにアノードオフガスを改質器に還流させることにより、燃料の利用効率の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-203328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体酸化物型の燃料電池(SOFC)においては、燃料を改質してアノードガスを生成する際に水が必要とされる。そのため、改質器に十分に水分が供給されない場合には、改質が適切に進行せず、アノードガスの生成量が低下するおそれがある。一方、燃料電池から排出されるアノードオフガスは、アノードオフガス中の未使用のアノードガスが排気燃焼器において酸化された後に、排出ガスとして燃料電池システム外へと排出される。排気燃焼器においてアノードガスが酸化される際に、副生成物として水分が発生するため、燃料電池システムからの排出ガスには、水分が含まれることになる。
【0005】
そこで、特許文献1に開示された技術を適用して、水分が含まれる排出ガスを改質器に還流することにより、アノードガスの生成量の低下を抑制することが考えられる。しかしながら、排出ガスの水分比率が低ければ、燃料の改質が適切に進行せず、アノードガスの生成量の低下を抑制できないという課題がある。
【0006】
このような上記課題を解決するために、本発明は、改質器に還流される排出ガスの水分比率を高めることにより、燃料の改質を適切に進行させ、アノードガスの生成量の低下の抑制を図る燃料電池システムの制御方法、及び、燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、燃料電池システムの制御方法は、燃料供給流路に設けられ、燃料ガスを改質してアノードガスを生成する改質器と、改質器において生成されたアノードガスと、外部から取り込まれるカソードガスとを反応させることで発電可能な燃料電池と、燃料電池の排気流路に設けられ、アノードオフガスに含まれる未反応のアノードガスを、カソードオフガスによって燃焼させる排気燃焼器と、排気燃焼器の下流にて排気流路から分岐し、改質器の上流の燃料供給流路へと合流し、排出ガスを改質器へと循環させる循環流路と、を備える燃料電池システムに関し、排気燃焼器において、前記循環流路を用いて排出ガスを循環させる場合には、前記循環流路を用いて排出ガスを循環させない場合よりも、アノードガスに対するカソードオフガスに含まれる酸素の比率である空燃比が小さくなるように、アノードオフガス及びカソードオフガスの流入量を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、改質器に還流される排出ガスの水分比率を高めることにより、燃料の改質を適切に進行させ、アノードガスの生成量の低下の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態における燃料電池システムの概略構成図である。
図2図2は、空気過剰率λと、排出ガス中の水分比率、酸素比率、及び、燃焼温度との関係を示すグラフである。
図3図3は、排出ガスの循環率と、空気過剰率λ、水分比率、及び、酸素分率との関係を示すグラフである。
図4図4は、第2実施形態における燃料電池システムの概略構成図である。
図5図5は、第3実施形態における燃料電池システムの概略構成図である。
図6図6は、第4実施形態における燃料電池システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による燃料電池システム100の構成の概略を示す図である。
【0012】
燃料電池システム100は、例えば車両に搭載可能に構成されたシステムであって、図示されるように、燃料電池スタック1と、燃料電池スタック1の発電に用いられる液体燃料を蓄える燃料タンク2とを備える。
【0013】
燃料電池スタック1は、燃料タンク2に貯蔵される燃料を改質することにより生成されるアノードガスと、空気などの酸化剤ガスであるカソードガスとの供給を受けて発電する。燃料電池スタック1は、複数の燃料電池又は燃料電池単位セルを積層して構成され、発電源である個々の燃料電池は、例えば固体酸化物型燃料電池(SOFC)である。
【0014】
燃料電池スタック1には、燃料電池のアノード極にアノードガスを供給する燃料供給流路11と、アノード極から排出される電気化学反応後のアノードオフガスが流れるアノードオフガス流路12とが接続されている。なお、燃料供給流路11とアノードオフガス流路12とは、燃料電池スタック1内のアノード極通路(不図示)を介して連通する。また、アノードオフガス流路12は、途中で分岐し、燃料電池スタック1に対して反対側において2つの分岐路が構成される。
【0015】
さらに、燃料電池スタック1には、燃料電池のカソード極にカソードガスを供給する空気供給流路13と、カソード極から排出される空気を含むカソードオフガスが流れるカソードオフガス流路14とが接続されている。空気供給流路13とカソードオフガス流路14とは、燃料電池スタック1内のカソード極通路(不図示)を介して連通する。
【0016】
燃料電池システム100には、燃料電池スタック1よりも下流に、触媒燃焼器である第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42が設けられている。アノードオフガス流路12の一方の分岐路、及び、カソードオフガス流路14は、第1排気燃焼器41と接続される。第1排気燃焼器41においては、アノードオフガスに含まれる未反応のアノードガスがカソードオフガスを用いて酸化される。第1排気燃焼器41の後段に設けられる第2排気燃焼器42には、アノードオフガス流路12の他方の分岐路が接続され、第1排気燃焼器41で燃焼されなかったアノードガスと、他方の分岐路から新たに供給されるアノードオフガスとが酸化される。
【0017】
第2排気燃焼器42から排出される排出ガスは、排出ガス流路15を経て、燃料電池システム100外へと排出される。さらに、本実施形態においては、排出ガス流路15から燃料供給流路11へと排出ガスを循環させる循環流路16が設けられている。
【0018】
以下においては、まず、燃料電池システム100における燃料供給流路11に係る構成の詳細について説明する。
【0019】
燃料タンク2は、原燃料である液体燃料を貯蔵する。液体燃料は、例えば、水と炭化水素系アルコール(メタノール、エタノール等)からなる燃料である。なお、液体燃料は、含水エタノールに限られず、ガソリン又はメタノール等を含む液体燃料であってもよい。
【0020】
そして、燃料電池スタック1と燃料タンク2とは、燃料供給流路11を介して接続されている。燃料供給流路11には、流れの方向に関して上流側から順に、蒸発器21、燃料熱交換器22、及び、改質器23が設けられている。
【0021】
燃料タンク2と蒸発器21との間には、蒸発器21への液体燃料の供給量を調節する燃料噴射装置2Aが設けられている。燃料噴射装置2Aはコントローラ50により制御可能に構成されており、燃料電池システム100へ投入される燃料を制御することができる。
【0022】
蒸発器21は、燃料噴射装置2Aから供給された液体燃料を加熱により蒸発させて、燃料ガスを生成する。蒸発器21は、排出ガス流路15を通じて排出される高温の排出ガスとの熱交換により、液体燃料を加熱する。なお、蒸発器21の下流には、燃料供給流路11内のガス圧を測定する圧力センサ21Pが設けられている。
【0023】
燃料熱交換器22は、第2排気燃焼器42から排出される高温の排出ガスとの熱交換により、蒸発器21から供給される燃料ガスをさらに加熱する。
【0024】
改質器23は、改質用触媒を内蔵し、第1排気燃焼器41から排出される高温の排出ガスとの熱交換により加熱される。加熱された改質用触媒においては、燃料熱交換器22で加熱された燃料ガスが改質されることによりアノードガスが生成され、生成されたアノードガスが燃料電池スタック1に供給される。なお、改質器23の下流には、燃料電池スタック1へと供給されるアノードガスの温度を測定する温度センサ23Tが設けられている。
【0025】
次に、燃料電池システム100における空気供給流路13に係る構成について説明する。
【0026】
空気供給流路13の燃料電池スタック1に対して反対側の端部には、エアブロワ31が設置されている。エアブロワ31は、コントローラ50により制御可能に構成されており、エアクリーナー31Aを介して、外部からカソードガスを空気供給流路13に吸入する。またエアブロワ31の下流側には流量センサ31Bが設けられており、燃料電池システム100に取り込まれるカソードガスの流量を取得することができる。コントローラ50は、流量センサ31Bの取得値に基づいてエアブロワ31を制御することで、燃料電池システム100に取り込まれるカソードガスの流量を制御できる。
【0027】
また、空気供給流路13には、エアブロワ31と燃料電池スタック1との間に、空気熱交換器32が設けられている。空気熱交換器32は、排出ガス流路15を通じて供給される排出ガスとの熱交換により、空気供給流路13を流れるカソードガスを加熱する。このように構成されることで、加熱されたカソードガスが燃料電池スタック1に供給される。
【0028】
次に、燃料電池システム100におけるアノードオフガス流路12、カソードオフガス流路14、及び、排出ガス流路15に係る構成について説明する。
【0029】
燃料電池スタック1のアノード極出口には、アノードオフガス流路12の一端が接続され、カソード極出口にはカソードオフガス流路14の一端が接続されている。
【0030】
また、アノードオフガス流路12の他端側の2つの分岐路のうち、一方の分岐路が第1排気燃焼器41と接続され、他方の分岐路が第2排気燃焼器42と接続される。なお、第1排気燃焼器41と接続される一方の分岐路には、弁12Aが設けられ、第2排気燃焼器42と接続される他方の分岐路には、弁12Bが設けられている。弁12A、12Bをコントローラ50により制御することで、第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42へ流入されるアノードオフガスの流量を制御することができる。
【0031】
カソードオフガス流路14の燃料電池スタック1に対して反対側に位置する他端は、第1排気燃焼器41と接続されている。燃料電池スタック1から排出されたカソードオフガスは、第1排気燃焼器41を経て、第2排気燃焼器42へと供給される。また、カソードオフガス流路14には、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスの温度を測定する温度センサ14Tが設けられている。
【0032】
第1排気燃焼器41、及び、第2排気燃焼器42は、アノードオフガス流路12を流れるアノードオフガスに含まれる未反応のアノードガスと、カソードオフガス流路14を流れるカソードオフガス(空気)とを触媒燃焼により酸化させる。
【0033】
なお、第1排気燃焼器41と第2排気燃焼器42との間のアノードオフガス流路12には、改質器23が設けられる。改質器23は、第1排気燃焼器41から排出される高温の排出ガスとの熱交換により、改質器23内に設けられた改質用触媒を加熱することができる。
【0034】
そして、第2排気燃焼器42の下流には、排出ガス流路15が設けられる。この排出ガス流路15を介して、第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42において未使用のアノードガスが燃焼された排出ガスが、燃料電池システム100の外へと排出される。
【0035】
排出ガス流路15には、燃料熱交換器22、蒸発器21、及び、空気熱交換器32が、排出ガスと熱交換可能に設けられている。燃料熱交換器22と蒸発器21との間には、排出ガスの温度を測定する温度センサ22Tが設けられている。
【0036】
さらに、排出ガス流路15において空気熱交換器32の下流から分岐する循環流路16が設けられている。循環流路16は、排出ガスの一部を、燃料供給流路11の燃料熱交換器22の上流側へと還流させることができる。循環流路16には弁16A、流量センサ16B、及び、ブロア16Cが設けられており、燃料供給流路11へと還流される排出ガスは、弁16A、及び、ブロア16Cにより流量を制御できる。なお、弁16A、流量センサ16B、及び、ブロア16Cの順は、任意に設計できる。
【0037】
ここで、燃料電池システム100における燃料についての化学反応について説明する。なお、以下においては、炭化水素系燃料の一例として、メタンに関する反応を説明する。
【0038】
改質器23においては、燃料熱交換器22において加熱された燃料ガスが改質されることで、アノードガスが生成される。改質器23における改質には、水蒸気改質(SR:Steam Reforming)と部分酸化改質(POX:Partial OXidation)との2通りの改質があり、それぞれの改質反応は以下に示す式により表される。
SR :CH4+ 2H2O→4H2+CO2
POX:CH4+1/2O2 →2H2+CO
これらの式に示されるように、水(H2O)が十分にある場合には水蒸気改質(SR)が進行する。また、水素ガス(H2)の生成効率は、水蒸気改質の方が部分酸化改質(POX)よりも高い。そのため、改質器23へ供給される水分量を多くすることで、水蒸気改質が進行しやすくなり、より効率よくアノードガスを生成することができる。
【0039】
一方で、改質器23において改質により生成されたアノードガスは、燃料電池スタック1において電気化学反応により消費される。そして、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスは、アノードオフガス流路12を介して、第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42に供給される。
【0040】
燃料電池スタック1、第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42においては、酸化反応が進行する。そのため、燃料電池システム100に供給される燃料ガスは、最終的には以下の酸化反応を経て、排出ガス流路15から排出される。なお、以下の式においては、燃料ガスの改質工程が省略されており、燃料ガス(CH4)が直接的に酸化反応される場合の反応式が示されている。
CH4+ 2O2→CO2+2H2
この式に示されるように、排出ガス流路15から排出される排出ガスには水(H2O)が含まれる。そこで、循環流路16を用いて排気を燃料供給流路11の燃料熱交換器22の上流側へと還流させることにより、改質器23へより多くの水分を供給することができる。その結果、水蒸気改質(SR)によって、効率よく水素ガス(H2)を生成することができる。
【0041】
以下においては、排出ガスの燃料供給流路11への還流量を決定する方法について説明する。
【0042】
燃料電池システム100の全体において、燃料電池スタック1が発電をしていない場合には、単位時間あたりに投入される燃料ガス(CH4)の量は、燃料噴射装置2Aからの燃料の噴射量から算出できる。また、燃料電池システム100に取り込まれるカソードガスの量は、エアブロワ31の下流側に設けられる流量センサ31Bによって求めることができる。なお、燃料電池スタック1が発電している場合には、発電量に応じた燃料とカソードガスの消費量をさらに控除することで、2つの触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)における酸化反応に用いられる燃料量とカソードガス量とが求められる。
【0043】
ここで、投入される燃料とカソード(空気)とが、いずれか一方を余すことなく完全に反応する完全燃焼が進行する場合における燃焼反応は、以下の式で示される。なお、空気中の酸素と窒素の比率は、約21%:79%であるものとする。なお、アノードガスに対するカソードガスの比率は空燃比と称される。完全燃焼の場合における空燃比を完全空燃比と称し、ある条件で燃焼する場合の空燃比を完全空燃比で除したものを、空気過剰率λと称するものとし、完全燃焼が進行する場合にはλ=1となる。また、以下の式においては、空気中において、酸素量を2とした場合には窒素量は7.5となることを前提とされている。
CH4+2O2+7.5N2→CO2+2H2O+7.5N2 (λ=1)
すなわち、λ=1の場合には、燃料と酸素とが完全燃焼するため、排出ガスには酸素は含まれておらず、酸素比率は0%である。一方で、水分比率は、生成物における水のモル比である約19.0%となる。また、λ=1で完全燃焼が進行する場合の触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)における燃焼温度は、約2000度であるものとする。
【0044】
一方で、カソードガスが過剰であり、燃料ガスがその2倍のモル量の酸素と反応する場合にはλ=2となり、その燃焼反応は、以下の式で示される。
CH4+4O2+15N2→CO2+2H2O+2O2+15N2 (λ=2)
すなわち、λ=2の場合には、排出ガスにおいて、酸素比率は約10%であり、水分比率は約10%となる。また、λ=2で燃焼反応が進行する場合の触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)における燃焼温度は、約1200度であるものとする。
【0045】
このように、燃料噴射装置2A、及び、エアブロワ31を制御することで、触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)における空気過剰率λ及び燃焼温度を制御する。そして、このような制御を行った場合において、λ=1~5の場合のそれぞれにおける燃焼温度、排出ガス中の酸素比率、及び、水分比率は、図2に示される値となる。すなわち、排出ガス流路15及び循環流路16を流れる排出ガスの水分比率は、λ=1の場合には19%となり、λ=5の場合には5%となる。
【0046】
このような水分を含む排出ガスの一部を燃料供給流路11に循環させることにより、改質器23において水蒸気改質が進行しやすくなる。そこで、触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)における燃焼温度が800℃となるとともに、燃料電池スタック1における発電量が10KWとなるように燃料を安定的に投入するという条件で、排出ガスの循環量を変化させた場合の、排出ガス中の水分比率及び酸素比率の変化をシミュレーションにより求めた。
【0047】
このシミュレーションにおいては、λ=5である状態において、循環率を0%から30%へと増加させた場合の、排出ガス中の水分比率及び酸素比率を算出した。その結果、排出ガスの循環率と、空気過剰率λ、水分比率、及び、酸素分率の関係は、図3に示されるような関係となった。なお、循環率は、第2排気燃焼器42から排出される排出ガスに対する、循環流路16へと還流させる排出ガスの占める割合である。
【0048】
この図によれば、循環率が0%である場合には水分比率は約4%であり、循環率が30%である場合には水分比率は約6%となる。このようにして、排出ガスの循環率を制御することによっても、所望の水分比率となるように制御することができる。すなわち、弁16A、及び、ブロア16Cの操作により排出ガスの循環率を大きくすることで、改質器23へと還流される水分量を増大させることができる。
【0049】
このように、改質器23へと流入する水分量を増加させることにより、改質器23において水蒸気改質が進行しやすくなり、アノードガスの生成効率を向上させることができる。
【0050】
なお、2つの触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)のうち、前段の第1排気燃焼器41は、後段の第2排気燃焼器42よりも、空気過剰率λが大きくなるとともに、全体としてはλ=2に近づくように制御される。これは、第1排気燃焼器41において空気過剰率λが小さい場合には、第1排気燃焼器41からの排出ガスが高温となってしまい、改質器23を必要以上に加熱してしまい、触媒の劣化温度まで到達するおそれがある。そのため、第1排気燃焼器41における空気過剰率λを大きくすることで、改質器23の劣化を抑制することができる。
【0051】
ここで、燃料電池システム100における発熱量について説明する。
【0052】
まず、改質器23における水蒸気改質と部分酸化改質とのそれぞれが進行する場合における発熱量は、以下のように示される。
SR :CH4+ 2H2O→4H2+CO2-165[kJ/mol]
POX:CH4+1/O2 →2H2+CO+35.9[kJ/mol]
ここで、燃料電池スタック1が発電を行っていないと仮定して、改質器23における水蒸気改質と部分酸化改質の比率をα、βとすると、水蒸気改質が吸熱反応であり、部分酸化改質が発熱反応であるため、α、βに応じて発熱量を制御することができる。
【0053】
具体的には、第1排気燃焼器41の後段に設けられる温度センサ22Tにより、排出ガスの温度を取得することができるため、第1排気燃焼器41の後段に設けられる温度センサ22Tにより取得される排出ガスの温度が、改質器23の温度が改質用触媒の劣化温度を下回るように、α、βを制御する。
【0054】
最終的に、循環流路16を介して循環流路16から燃料供給流路11へと還流される排出ガスの流量は、弁16A、及び、ブロア16Cを用いて、改質器23の温度が改質用触媒の劣化温度を下回るように制御される。また、改質器23においては、水分が多いと炭素析出が生じてしまう。そのため、炭素析出を抑制するために、循環される排出ガスにおける水分比率が大きくならないように、また、排出ガスの循環量が大きくならないように制御してもよい。
【0055】
第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0056】
第1実施形態の燃料電池システム100によれば、排出ガス流路15の第1排気燃焼器41の下流にて分岐し、燃料供給流路11の改質器23の上流に合流する循環流路16を備える。この循環流路16により、触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)からの排出ガスを循環させることができる。さらに、触媒燃焼器において、循環流路16を用いて排出ガスを循環させる場合には、排出ガスを循環させない場合よりも、アノードガスに対するカソードガスの比率を示す空燃比が小さくなるように、アノードオフガス及びカソードオフガスの流入量を制御する。
【0057】
そこで、図2、3に示されるように、燃料噴射装置2A、及び、エアブロワ31を制御することで空気過剰率λを制御し、同時に、弁16A、及び、ブロア16Cを制御することで排出ガスの循環量を制御することにより、最終的に循環される排出ガスにおける水分比率を制御できる。そして、改質器23へと循環させる排出ガス中の水分量を増加させることにより、改質器23において水蒸気改質が進行しやすくなるので、アノードガスの生成効率を向上させることができる。
【0058】
第1実施形態の燃料電池システム100によれば、2つの触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第1排気燃焼器41)が設けられており、前段の第1排気燃焼器41の空燃比は、後段の第2排気燃焼器42の空燃比よりも大きくなるように、アノードオフガス及びカソードオフガスの流入量を制御する。
【0059】
第1排気燃焼器41は、空気過剰率λが大きくなることで燃焼温度が低くなるので、第1排気燃焼器41からの排出ガスの温度上昇を抑制することができる。そのため、第1排気燃焼器41からの排出ガスとの熱交換により加熱される改質器23の温度上昇が抑制され、改質用触媒の高温による劣化を抑制できる。
【0060】
さらに、第1排気燃焼器41からの排出ガスは、第2排気燃焼器42に流入する前に、改質器23における熱交換によって温度が低下する。そのため、第2排気燃焼器42に流入する排出ガスの温度の上昇が抑制されるので、第2排気燃焼器42の高温による劣化を抑制できる。このように、全体的な温度上昇を抑制しながら、第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42の制御を安定的に行うことができる。
【0061】
第1実施形態の燃料電池システム100によれば、燃料供給流路11に設けられる改質器23、及び、燃料熱交換器22は、排出ガス流路15を流れる排出ガスと熱交換可能に構成される。このように構成されることにより、排出ガス流路15を流れる排出ガスの温度の低下が促進されるので、循環流路16を経由して改質器23に流入するガスの温度上昇が抑制され、改質器23の備える改質触媒の高温による劣化を抑制できる。また、燃料電池システム100からの排出ガスの温度が低くなるので、周囲部品への熱害を緩和することができる。
【0062】
第1実施形態の燃料電池システム100によれば、さらに、改質器23の温度が改質用触媒の劣化温度を下回るように、循環流路16を介した排出ガスの循環量を制御する。このように、燃料供給流路11へと還流される排出ガスの流量を制御することで、改質器23の備える改質触媒の高温による劣化を抑制することができる。
【0063】
第1実施形態の燃料電池システム100によれば、さらに、改質器23においては、循環流路16を経由して供給される排出ガスに含まれる水分が流入する。また、改質器23においては、水分の比率が高くなると、燃料ガスの改質過程において炭素析出をするおそれがある。そこで、水分比率が過度に高くならないように、排出ガスの循環率を制御することで改質器23における炭素析出の発生を抑制することができる。なお、排出ガスの循環率に替えて、燃料電池システム100へ投入される燃料を減少させる制御を行ってもよい。
【0064】
第1実施形態の燃料電池システム100によれば、2つの触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)における空燃比は、燃料供給流路11に供給される燃料と、燃料電池システム100にエアブロワ31を介して取り込まれるカソードガスとの比率により求められる。そこで、燃料噴射装置2Aからの燃料の噴射量と、流量センサ31Bにより取得されるカソードガスの流量とに基づいて空燃比を制御することにより、改質器23へと還流させる排出ガスにおける水分比率を適切に制御することができる。
【0065】
第1実施形態の燃料電池システム100によれば、燃料電池スタック1が発電を行っている場合には、燃料電池スタック1においてアノードガスとカソードガスとの反応が進行する。この燃料電池スタック1における燃料とカソードの消費量は、燃料電池スタック1の発電量により推定することができる。
【0066】
そこで、燃料電池スタック1の発電中においては、燃料噴射装置2A、及び、流量センサ31Bから得られる燃料電池システム100に取り込まれる燃料とカソード量から、発電量に応じて発電に使用された燃料及びカソードの量を控除することにより、触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)に流入する燃料及びカソードの量を求めることができる。その結果、燃料電池スタック1の発電中であっても、求められた燃料及びカソードの量を用いて、触媒燃焼器における空燃比を精度よく推定することができる。その結果、空燃比の制御精度が向上し、改質器23におけるアノードガスの生成効率をさらに向上させることができる。
【0067】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、2つの触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)が別体として設けられている例について説明したが、これに限らない。第2実施形態においては、2つの触媒燃焼器が一体となって構成されている例について説明する。
【0068】
図4は、第2実施形態における燃料電池システム100の概略構成図である。
【0069】
この図によれば、第1実施形態の燃料電池システム100と比較すると、第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42に替えて、排気燃焼器43が設けられている。
【0070】
排気燃焼器43は、流れ方向において上流側の側面の一部において熱交換板を備え、この接触部において改質器23と熱交換を行う。一方、下流側の側面においては、改質器23と接触されていない。
【0071】
そして、排気燃焼器43においては、上流側の熱交換板との接触部においてアノードオフガス流路12の一方の他端が接続されるとともに、下流側の非接触部に、アノードオフガス流路12の他方の他端が接続されている。すなわち、流れ方向に沿って2つのアノードオフガスの供給口が、上流側と下流側とに設けられ、その結果、2つの燃焼箇所が設けられる。
【0072】
このような排気燃焼器43においては、排気燃焼器43の上流部分においては、下流部分よりも、空燃比が大きくなるように、弁12A、12Bが制御される。そのため、排気燃焼器43には、上流部と下流部とのそれぞれの燃焼箇所において、個々に空燃比を制御することができる。なお、排気燃焼器43は、改質器23との接触部と非接触部との境界に、マニホールドが構成されていてもよい。
【0073】
このような第2実施形態の燃料電池システム100によれば、1つの排気燃焼器43において、改質器23との接触部の近傍と非接触部の近傍とに2つの燃焼箇所が設けられ、それぞれにおいて、異なる空燃比で燃焼反応を制御することができる。このような1つの排気燃焼器43を用いることにより、2つの触媒燃焼器を用いる場合と比較すると、製造コストの低減を図ることができる。
【0074】
(第3実施形態)
第3実施形態においては、さらに、第1排気燃焼器41の下流に設けられる蒸発器21、及び、空気熱交換器32において、その排出ガス流路15の側において酸化触媒を備えるとともに、それらの酸化触媒に対して、燃料タンク2から燃料が供給可能に構成されている例について説明する。
【0075】
図5は、第3実施形態における燃料電池システム100の概略構成図である。
【0076】
蒸発器21は、燃料供給流路11と排出ガス流路15との間で熱交換可能に構成され、空気熱交換器32は、空気供給流路13と排出ガス流路15との間で熱交換可能に構成されている。蒸発器21、及び、空気熱交換器32は、排出ガス流路15の側において酸化触媒を備えることで、排出ガス中の未反応のアノードガスを酸化することができる。さらに、蒸発器21、及び、空気熱交換器32において、排出ガス流路15の一部となる箇所に燃料弁が設けられており、排出ガスに燃料タンク2から燃料を供給可能に構成されている。なお、蒸発器21、及び、空気熱交換器32は、熱交換デバイスの一例である。
【0077】
このような第3実施形態の燃料電池システム100によれば、排出ガス流路15を流れる排出ガスとの熱交換により燃料ガスを加熱する蒸発器21や、カソードガスを加熱する空気熱交換器32が設けられている。そして、これらの蒸発器21や空気熱交換器32において、酸化用触媒が設けられるとともに、排出ガス流路15の一部となる箇所に燃料タンク2から燃料を供給可能に構成する。
【0078】
このように構成されることで、燃料タンク2から燃料を供給し、その燃料が酸化用触媒によって酸化されることで、循環流路16を介して循環される排出ガスにおける水分比率や酸素比率を変化させることが可能になる。その結果、改質器23における改質効率を向上させるための制御手段が増えるので、制御制度の向上を図ることができる。
【0079】
例えば、燃料電池システム100の起動直後などにおいては、触媒燃焼部(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)に対して、未反応のアノードガスの供給が十分でない場合がある。このような場合には、排出ガス流路15を流れる排出ガスにおける水分量が低いので、循環流路16を介して燃料供給流路11へと還流される水分量が少なくなり、改質器23における改質が進行しにくい。
【0080】
ここで蒸発器21、及び、空気熱交換器32の排出ガス流路15に燃料を供給することにより、排出ガスにおける水分比率や酸素比率などの組成を変化させることができる。その結果、燃料電池システム100の起動直後であっても、改質器23に対して水分を含む排出ガスを還流させることができるので、改質器23における燃料の改質効率の向上を図ることができる。
【0081】
(第4実施形態)
第1実施形態においては、改質器23に対して、排出ガス流路15からの排出ガスを還流させる例について説明した。本実施形態においては、さらに、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスを改質器23へと還流させる例について説明する。
【0082】
図6は、第3実施形態における燃料電池システム100の概略構成図である。
【0083】
この図によれば、第1実施形態の燃料電池システム100と比較すると、第1排気燃焼器41へと接続されるアノードオフガス流路12の一方の分岐路において、さらに分岐し、循環流路16へと合流する分岐流路17が設けられている。また、分岐流路17には、バルブ17Aが設けられる。
【0084】
ここで、燃料電池スタック1が運転している場合には、燃料電池スタック1においてアノードガスの電気化学反応が進行しているので、アノードオフガスにおいて未反応のアノードガスが少なく、水分比率が高い。そこで、この水分比率の高いアノードオフガスを改質器23へと還流させるために、触媒燃焼部(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)の上流から分岐し、循環流路16を介して燃料供給流路11へと接続される分岐流路17が設けられている。
【0085】
このような構成において、弁16A、及び、ブロア16Cの操作による排出ガスの循環流量の制御に加えて、バルブ17Aの操作によるアノードオフガスの循環流量の制御を行う。その結果、燃料電池システム100の起動直後において改質器23への水分の供給が可能になるので、燃料ガスの改質を効率よく行うことができる。
【0086】
なお、燃料電池スタック1の運転中においては、燃料噴射装置2Aからの燃料の噴射量と、流量センサ31Bにより取得されるカソードガスの流量とから求められる燃料電池システム100に取り込まれる燃料及びカソードガスの量から、燃料電池スタック1における発電量に応じて消費される燃料及びカソードガスの量が控除された値を用いて、触媒燃焼器(第1排気燃焼器41及び第2排気燃焼器42)における空燃比の制御が行われる。
【0087】
このような第4実施形態の燃料電池システム100によれば、燃料電池スタック1の発電中において、改質器23に対して、燃料ガスの改質に必要な水分を、排出ガスに加えてアノードオフガスからも供給することができるので、アノードガスの生成効率の向上を図ることができる。
【0088】
また、上記各実施形態及び各変形例は、当業者が想定し得る範囲で適宜、組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 燃料電池スタック
2 燃料タンク
11 燃料供給流路
12 アノードオフガス流路
13 空気供給流路
14 カソードオフガス流路
15 排出流路
16 循環流路
17 分岐流路
21 蒸発器
22 燃料熱交換器
23 改質器
32 エアブロワ
41 第1排気燃焼器
42 第2排気燃焼器
43 排気燃焼器
50 コントローラ
100 燃料電池システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6