(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部品
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H01L21/68 R
(21)【出願番号】P 2019231224
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岐部 太一
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3219636(JP,U)
【文献】特表2015-515760(JP,A)
【文献】特開2016-152414(JP,A)
【文献】特開2007-194616(JP,A)
【文献】特開2013-258270(JP,A)
【文献】特表2015-501538(JP,A)
【文献】特表2019-537262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略直交する第1の表面を有すると共に、前記第1の方向視で前記第1の表面の周囲を囲む環状の第1の凹所が形成されている第1の板状部材であって、前記第1の凹所は前記第1の表面側と前記第1の板状部材の外周面側との両方に開口している、第1の板状部材と、
前記第1の板状部材の前記第1の表面側に位置する第2の表面を有すると共に、前記第1の方向視で前記第2の表面の周囲を囲む環状の第2の凹所が形成されている第2の板状部材であって、前記第2の凹所は前記第2の表面側と前記第2の板状部材の外周面側との両方に開口している、第2の板状部材と、
前記第1の表面と前記第2の表面との間に配置され、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とを接合する樹脂製の接合部と、
前記第1の凹所と前記第2の凹所とによって形成される、前記第1の方向視で環状の空間内において前記接合部の外周面を囲むように配置され、前記第1の方向に沿って扁平な環状の保護バンドと、
を備える半導体製造装置用部品において、
前記保護バンドにおける前記第1の方向の一端は、前記第1の凹所内に位置し、かつ、前記第1の凹所を形成する内壁面のうちの第1の曲面部分または前記第1の曲面部分より前記接合部側の部分に接触しており、
前記保護バンドにおける前記第1の方向の他端は、前記第2の凹所内に位置し、かつ、前記第2の凹所を形成する内壁面のうちの第2の曲面部分または前記第2の曲面部分より前記接合部側の部分に接触して
おり、
前記保護バンドにおける前記一端は、前記第1の曲面部分に接触していることと、前記保護バンドにおける前記他端は、前記第2の曲面部分に接触していることと、の少なくとも一方の要件を満たしている、
ことを特徴とする半導体製造装置用部品。
【請求項2】
請求項
1に記載の半導体製造装置用部品において、
前記保護バンドは、前記第1の凹所を形成する前記第1の板状部材の内壁面のうち前記第1の曲面部分より接合部側の部分と、前記第2の凹所を形成する内壁面のうちの第2の曲面部分より前記接合部側の部分とに接触している、
ことを特徴とする半導体製造装置用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、半導体製造装置用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用部品として、例えば、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内で半導体ウェハを保持する静電チャックが知られている。静電チャックは、セラミックス部材と、例えば金属製のベース部材と、セラミックス部材とベース部材とを接合する接合部と、セラミックス部材の内部に設けられたチャック電極とを備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、セラミックス部材の表面(吸着面)にウェハを吸着して保持する。
【0003】
従来、セラミックス部材とベース部材とを接合する接合部の側面(外周面)に、接合部をエッチングガスやプラズマ等から保護するための環状の保護部材が配置された静電チャックが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、セラミックス部材およびベース部材のそれぞれ凹部が形成されており、ベース部材の凹部を構成する底面に接触するように保護部材が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保護部材を備える上記従来の構成では、保護部材が、セラミックス部材に形成された凹部内まで達していないため、保護部材とセラミックス部材との隙間から接合部へとエッチングガス等が侵入しやすい。また、保護部材の下面が、ベース部材の凹部を構成する底面に接触しているため、該底面と凹部を構成する側面との間の曲面状の角部の存在により、保護部材と接合部との間に隙間が形成されやすい。このため、保護部材によるシール機能が十分に発揮されておらず、エッチングガス等が接合部に侵入する可能性が高い。
【0006】
なお、このような課題は、静電引力を利用してウェハを保持する静電チャックに限らず、2つの板状部材が接合部によって接合された構成を有する半導体製造装置用部品に共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される半導体製造装置用部品は、第1の方向に略直交する第1の表面を有すると共に、前記第1の方向視で前記第1の表面の周囲を囲む環状の第1の凹所が形成されている第1の板状部材であって、前記第1の凹所は前記第1の表面側と前記第1の板状部材の外周面側との両方に開口している、第1の板状部材と、前記第1の板状部材の前記第1の表面側に位置する第2の表面を有すると共に、前記第1の方向視で前記第2の表面の周囲を囲む環状の第2の凹所が形成されている第2の板状部材であって、前記第2の凹所は前記第2の表面側と前記第2の板状部材の外周面側との両方に開口している、第2の板状部材と、前記第1の表面と前記第2の表面との間に配置され、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とを接合する樹脂製の接合部と、前記第1の凹所と前記第2の凹所とによって形成される、前記第1の方向視で環状の空間内において前記接合部の外周面を囲むように配置され、前記第1の方向に沿って扁平な環状の保護バンドと、を備える半導体製造装置用部品において、前記保護バンドにおける前記第1の方向の一端は、前記第1の凹所内に位置し、かつ、前記第1の凹所を形成する内壁面のうちの第1の曲面部分または前記第1の曲面部分より前記接合部側の部分に接触しており、前記保護バンドにおける前記第1の方向の他端は、前記第2の凹所内に位置し、かつ、前記第2の凹所を形成する内壁面のうちの第2の曲面部分または前記第2の曲面部分より前記接合部側の部分に接触している。
【0010】
本半導体製造装置用部品では、保護バンドにおける第1の方向の両端は、それぞれ、各板状部材に形成された凹所内に位置している。すなわち、保護バンドにおける第1の方向の両端は、いずれも、接合部の外周面の第1の方向の両端よりも外側に位置している。このため、接合部の外周面は、保護バンドによって確実に覆われている。また、保護バンドにおける第1の方向の各端は、各凹所を形成する内壁面のうちの曲面部分または曲面部分より接合部側(内側)の部分に接触している。このため、保護バンドによるシール性が向上し、例えば外部から接合部へのガス等の侵入等を抑制することができる。
【0011】
(2)上記半導体製造装置用部品において、前記保護バンドにおける前記一端は、前記第1の曲面部分に接触していることと、前記保護バンドにおける前記他端は、前記第2の曲面部分に接触していることと、の少なくとも一方の要件を満たしている構成としてもよい。本半導体製造装置用部品によれば、保護バンドにおける両端のいずれも、凹所を形成する内壁面のうちの曲面部分に接触していない構成に比べて、保護バンドの端と各板状部材との密着性が高いため、保護バンドによるシール性を、より効果的に向上させることができる。
【0012】
(3)上記半導体製造装置用部品において、前記保護バンドは、前記第1の凹所を形成する前記第1の板状部材の内壁面のうち前記第1の曲面部分より接合部側の部分と、前記第2の凹所を形成する内壁面のうちの第2の曲面部分より前記接合部側の部分とに接触している構成としてもよい。本半導体製造装置用部品によれば、保護バンドが第1の曲面部分より接合部側の部分と第2の曲面部分より前記接合部側の部分とのいずれか一方から離間した構成に比べて、外部から接合部へのガス等の侵入等を、より効果的に抑制することができる。
【0013】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば加熱装置、静電チャック、保持装置、半導体製造装置用部品、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図3】接合部30の側面31の周辺の詳細構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、
図2は、本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0016】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス部材10およびベース部材20を備える。セラミックス部材10とベース部材20とは、セラミックス部材10の下面S2(
図2参照)とベース部材20の上面S3(
図2参照)とが、後述する接合部30を挟んで上記配列方向に対向するように配置される。すなわち、ベース部材20は、ベース部材20の上面S3がセラミックス部材10の下面S2側に位置するように配置される。なお、セラミックス部材10は、特許請求の範囲における第1の板状部材に相当し、ベース部材20は、特許請求の範囲における第2の板状部材に相当する。セラミックス部材10の下面S2は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、ベース部材20の上面S3は、特許請求の範囲における第2の表面に相当する。
【0017】
セラミックス部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という)S1を有する部材であり、例えばセラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。セラミックス部材10の直径は例えば50mm以上、500mm以下(通常は200mm以上、350mm以下)であり、セラミックス部材10の厚さは例えば1mm以上、10mm以下である。なお、本実施形態では、セラミックス部材10の下側部分の外周には、セラミックス部材10の径方向外側に突出するフランジ部14が形成されている。フランジ部14は、セラミックス部材10の全周にわたって形成されている。フランジ部14の直径は、ベース部材20の直径と略同一である。Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」という。
【0018】
図2に示すように、セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示せず)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス部材10の吸着面S1に吸着固定される。
【0019】
セラミックス部材10の内部には、また、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)を含む発熱抵抗体により構成されたヒータ電極50が配置されている。ヒータ電極50に電源(図示せず)から電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱することによってセラミックス部材10が温められ、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが温められる。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0020】
ベース部材20は、例えばセラミックス部材10と同径の、または、セラミックス部材10より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm以上、550mm以下(通常は220以上、350mm以下)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm以上、40mm以下である。
【0021】
ベース部材20は、セラミックス部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接合部30によって、セラミックス部材10に接合されている。接合部30は、樹脂材料(接着材料)を含んでいる。本実施形態では、接合部30は、樹脂材料を主成分として含んでいる。なお、本明細書において、主成分とは、体積含有率が50vol%より大きい成分を意味する。接合部30に含まれる樹脂材料としては、シリコーン樹脂やフッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の種々の樹脂材料を用いることができるが、耐熱性が高く、かつ、柔軟な樹脂材料であるシリコーン樹脂やフッ素樹脂を用いることが好ましい。接合部30は、これらの樹脂材料を、弾性変形でき、かつ、永久ひずみが残らない範囲で含むことが好ましい。そのようにすれば、温度の変化によって各部材が伸縮しても、接合部30に永久ひずみによる皺や弛み等が生じることを抑制することができる。また、接合部30は、樹脂材料に加えて、例えばセラミックスの充填材(フィラー)を含んでいてもよい。接合部30の厚さは、例えば0.1mm以上、1mm以下である。
【0022】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20とセラミックス部材10との間の伝熱(熱引き)によりセラミックス部材10が冷却され、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0023】
A-2.接合部30の周辺の詳細構成:
接合部30の側面(外周面)31の周辺の詳細構成について説明する。
図3は、接合部30の側面31の周辺の詳細構成を示す説明図である。
図3には、
図2のX1部のXZ断面構成が拡大して示されている。
【0024】
A-2-1.収容部70について:
図2および
図3に示すように、静電チャック100の外周面には、後述する保護バンド60を収容するための収容部70が形成されている。収容部70は、接合部30の側面31の周囲を囲むように形成された凹所(空間)である。
【0025】
具体的には、セラミックス部材10には、上側凹所16が形成されている。上側凹所16の上下方向(Z軸方向)視での形状は、セラミックス部材10の下面S2の周囲を囲む環状(円環状)である。また、上側凹所16は、セラミックス部材10の下面S2側(ベース部材20側)と、セラミックス部材10の外周面側との両方に開口している。ベース部材20には、下側凹所26が形成されている。下側凹所26の上下方向視での形状は、ベース部材20の上面S3の周囲を囲む環状(円環状)である。また、下側凹所26は、ベース部材20の上面S3側(セラミックス部材10側)と、ベース部材20の外周面側との両方に開口している。
【0026】
また、上下方向視で、接合部30の側面31の位置は、セラミックス部材10における最大外径部分(フランジ部14)の側面15の位置、および、ベース部材20における最大外径部分の側面25の位置のいずれよりも、セラミックス部材10の径方向内側に位置している。なお、本実施形態では、接合部30の側面31の位置は、セラミックス部材10における接合部30に隣接する部分の側面11の位置、および、ベース部材20における接合部30に隣接する部分の側面22の位置と略一致している。このような構成により、収容部70は、上側凹所16と下側凹所26と接合部30の側面31によって形成されている。上側凹所16は、特許請求の範囲における第1の凹所に相当し、下側凹所26は、特許請求の範囲における第2の凹所に相当する。
【0027】
A-2-2.保護バンド60について:
図1および
図2に示すように、静電チャック100は、さらに保護バンド60を備える。保護バンド60は、上下方向(Z軸方向)に沿って偏平(板状)な環状の部材である。保護バンド60の形成材料は、エッチングガスやプラズマ等が接合部30側に侵入することを抑制可能な材料であることが好ましく、例えばフッ素系樹脂(テフロン(登録商標)樹脂)であることが特に好ましい。また、保護バンド60のヤング率は、接合部30のヤング率より大きいことが好ましい。なお、上下方向視で、保護バンド60の外周面は、全周にわたって、セラミックス部材10のフランジ部14の外形線およびベース部材20の外形線の両方の内側に位置している。これにより、保護バンド60がセラミックス部材10等より径方向外側に突出する構成に比べて、保護バンド60が損傷することを抑制することができる。保護バンド60の厚さ(径方向の寸法)は、接合部30の厚さ(上下方向の長さ)より薄く、例えば0.4mm程度であり、保護バンド60の幅(上下方向の長さ)は、例えば1.9mm程度である。
【0028】
保護バンド60は、次の第1の要件および第2の要件の両方を満たす。
第1の要件:「保護バンド60における上端は、上側凹所16内に位置し、かつ、上側凹所16を形成する内壁面のうちの上側曲面部分18または上側曲面部分18より接合部30側の部分に接触している。」
図3に示すように、上側曲面部分18は、上側凹所16を形成する下面19(下側凹所26を構成する上面29と対向する面)と、セラミックス部材10の側面11との間に存在する角部である。上側曲面部分18の表面形状は、曲面状(R面状)である。具体的には、上下方向に平行な断面において、上側曲面部分18の形状は、曲線状である。
図3では、保護バンド60の上端のエッジが、セラミックス部材10の全周にわたって、上側曲面部分18に接触している。保護バンド60の上端のエッジの曲率(1/R)は、上側曲面部分18の曲率より大きい。上側曲面部分18は、特許請求の範囲における第1の曲面部分に相当する。
【0029】
第2の要件:「保護バンド60における下端は、下側凹所26内に位置し、かつ、下側凹所26を形成する内壁面のうちの下側曲面部分28または下側曲面部分28より接合部30側の部分に接触している。」
図3に示すように、下側曲面部分28は、下側凹所26を形成する上面29(上側凹所16を構成する下面19と対向する面)と、ベース部材20の側面22との間に存在する角部である。下側曲面部分28の表面形状は、曲面状(R面状)である。具体的には、上下方向に平行な断面において、下側曲面部分28の形状は、曲線状である。
図3では、保護バンド60の下端のエッジが、ベース部材20の全周にわたって、下側曲面部分28に接触している。保護バンド60の下端のエッジの曲率は、下側曲面部分28の曲率より大きい。下側曲面部分28は、特許請求の範囲における第2の曲面部分に相当する。
【0030】
なお、保護バンド60は、次の要件A~Cの全てを満たすことが好ましい。これにより、収容部70内に配置された保護バンド60と接合部30とについて周方向の相対位置関係が変位したとしても、上記第1の要件および第2の要件を満たす。
要件A:「保護バンド60の幅D4(上下方向の長さ)の最小値 ≧ セラミックス部材10の上側凹所16の深さD1(上下方向の長さ)の最大値 + 接合部30の厚さD3(上下方向の長さ)の最大値」
要件B:「保護バンド60の幅D4の最小値 ≧ ベース部材20の下側凹所26の深さD2の最大値 + 接合部30の厚さD3の最大値」
要件C:「上側凹所16の深さD1の最小値+ 下側凹所26の深さD2の最小値 + 接合部30の厚さD3の最小値 ≧ 保護バンド60の幅D4の最大値」
なお、幅等の最大値とは、幅等が最大である部位における幅等を意味し、幅等の最小値とは、幅等が最小である部位における幅等を意味する。なお、本実施形態では、保護バンド60は、セラミックス部材10の側面11から離間しており、ベース部材20の側面22から離間しており、接合部30の側面31から離間している。
【0031】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック100では、保護バンド60における上下方向(Z軸方向)の両端は、それぞれ、セラミックス部材10およびベース部材20に形成された凹所(上側凹所16、下側凹所26)内に位置している(
図3参照)。すなわち、保護バンド60の両端は、いずれも、接合部30の側面31の上下方向の両端よりも外側に位置している。このため、接合部30の側面31は、保護バンド60によって確実に覆われている。また、保護バンド60における各端は、各凹所を形成する内壁面のうちの曲面部分(上側曲面部分18、下側曲面部分28)または曲面部分より接合部側(内側)の部分に接触している。このため、保護バンド60によるシール性が向上し、例えば外部から接合部30へのガス等の侵入等を抑制することができる。
【0032】
本実施形態によれば、保護バンド60における両端のいずれも、凹所を形成する内壁面のうちの曲面部分に接触していない構成に比べて、保護バンド60の端と各部材(セラミックス部材10、ベース部材20)との密着性が高いため、保護バンド60によるシール性を、より効果的に向上させることができる。なお、上述したように、保護バンド60は、偏平状であるため、断面が円状のOリング等に比べて、接合部30等との間に隙間が生じやすい。これに対して、本発明を適用することにより、保護バンド60によるシール性を、より効果的に向上させることができる。
【0033】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0034】
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、保護バンド60の上端のエッジが、セラミックス部材10の全周にわたって、上側曲面部分18に接触していたが、保護バンド60の上端の少なくとも一部が、上側曲面部分18より接合部30側の部分(側面11)に接触していてもよい。上記実施形態では、保護バンド60の下端のエッジが、ベース部材20の全周にわたって、下側曲面部分28に接触していたが、保護バンド60の下端の少なくとも一部が、下側曲面部分28より接合部30側の部分(側面22)に接触していてもよい。
【0035】
上記実施形態において、保護バンド60は、セラミックス部材10の側面11と、ベース部材20の側面22と、接合部30の側面31との少なくとも1つに接触していてもよい。特に、保護バンド60が、全周にわたって、セラミックス部材10の側面11とベース部材20の側面22との両方に接触している構成であれば、接合部30が、保護バンド60とセラミックス部材10とベース部材20とによって形成される閉空間内に配置されることになるから、外部から接合部30へのガス等の侵入等を、より効果的に抑制することができる。
【0036】
上記実施形態では、セラミックス部材10の内部にチャック電極40やヒータ電極50が配置されているが、必ずしもセラミックス部材10の内部にチャック電極40とヒータ電極50との少なくとも一方は配置されている必要はない。また、上記実施形態では、ベース部材20に冷媒流路21が形成されているが、必ずしもベース部材20に冷媒流路21が形成されている必要はない。上記実施形態において、セラミックス部材10は、フランジ部14を備えない構成であってもよい。
【0037】
上記実施形態では、セラミックス部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、セラミックス部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。
【0038】
上記実施形態の静電チャック100における各部材の形成材料は、あくまで一例であり、任意に変更可能である。例えば、上記実施形態では、第1の板状部材として、セラミックス部材10を例示したが、セラミックス以外の材料(例えば、樹脂材料や導電性材料)により形成された板状部材であってもよい。また、上記実施形態では、第2の板状部材として、ベース部材20を例示したが、金属以外の材料(例えば、樹脂材料)により形成された板状部材であってもよい。なお、上記実施形態のように、第2の板状部材(ベース部材20)の熱膨張係数(熱膨張率)は、第1の板状部材(セラミックス部材10)の熱膨張係数とは異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0039】
本発明は、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック100に限らず、第1の板状部材と、第2の板状部材と、接合部とを備える半導体製造装置用部品(例えば、真空チャック、シャワーヘッド等)にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10:セラミックス部材 14:フランジ部 16:上側凹所 18:上側曲面部分 19:下面 20:ベース部材 21:冷媒流路 26:下側凹所 28:下側曲面部分 29:上面 30:接合部 31:側面 40:チャック電極 50:ヒータ電極 60:保護バンド 70:収容部 100:静電チャック S1:吸着面 W:ウェハ