(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】表示装置及び表示システム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20240229BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H04N5/74 D
H04N5/74 C
G03B21/00 D
(21)【出願番号】P 2020017806
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰弘
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/163291(WO,A1)
【文献】特開2018-189956(JP,A)
【文献】特開2010-113008(JP,A)
【文献】特開2010-072365(JP,A)
【文献】特開2015-226296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
H04N 9/31
G03B 21/00
G09G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に設けられた光透過率を可変な調光部材に、投影機から画像を投影して画像表示を行う表示装置であって、
前記調光部材の周囲の環境光の明るさを検出可能な検出部から検出信号を入力する入力部と、
前記入力部で入力した前記検出信号を基に、前記調光部材の前記光透過率と前記投影機の作動との少なくとも一方を制御することにより、前記調光部材に投影される前記画像を前記環境光の明るさに応じた表示状態に調整する制御部と、を備え
、
前記投影機は、前記調光部材に前記画像を間欠表示し、
前記制御部は、前記画像が表示されないタイミングで検出された前記検出信号を基に前記表示状態の再調整を行い、前記再調整を規定のタイミングで繰り返し、
前記環境光の明るさ、前記調光部材の前記光透過率の制御に用いる第1指令値、及び前記投影機の作動の制御に用いる第2指令値の関係を示す制御マップと、前記検出信号の検出値、検出時に設定されている前記第1指令値の現在値、及び前記検出信号の換算値の関係を示す換算マップと、を予め記憶した記憶部を備え、
前記制御部は、前記第1指令値によって前記調光部材を制御している場合、前記換算マップを用いて、前記検出値及び前記現在値から、前記換算値を求め、求めた前記換算値を前記環境光の明るさとしたときに、この環境光の明るさに対応する新たな前記第1指令値及び前記第2指令値を、前記制御マップから求め、これら新たな指令値により、前記表示状態の前記再調整を行う表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記環境光の明るさが暗くなるに連れて前記調光部材の前記光透過率が上昇するように制御し、前記環境光の明るさが明るくなるに連れて前記調光部材の前記光透過率が低下するように制御する
請求項
1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記環境光の明るさが暗くなるに連れて前記投影機から投影される前記画像の画像明るさが暗くなるように制御し、前記環境光の明るさが明るくなるに連れて前記投影機から投影される前記画像の前記画像明るさが明るくなるように制御する
請求項1
又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記投影機の作動の制御として、前記調光部材へ投影される前記画像の画像データを加工する
請求項1から請求項
3のうちいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記調光部材は、車両のガラスに設けられている
請求項1から請求項
4のうちいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
基材に設けられ、光透過率を可変な調光部材と、前記調光部材に画像を投影する投影機と、を備え、前記調光部材への画像表示を行う表示システムであって、
前記調光部材の周囲の環境光の明るさを検出可能な検出部と、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の表示装置と、を備える表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光透過率を可変な調光部材に投影機から画像を投影して画像表示を行う表示システムが知られている。特許文献1には、調光部材の光透過率を制御する表示システムが記載されている。調光部材は、投影された画像を映す場合には、不透明になるように制御され、画像を映さない場合には、透明になるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、投影された画像は、調光部材の周囲環境の明るさによって、画像を見るユーザに異なる印象を与える。したがって、周囲環境の明るさに応じて、視認し易い画像表示を行うニーズがあった。
【0005】
本発明の目的は、視認性を向上可能にした表示装置及び表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための表示装置は、基材に設けられた光透過率を可変な調光部材に、投影機から画像を投影して画像表示を行う表示装置であって、前記調光部材の周囲の環境光の明るさを検出可能な検出部から検出信号を入力する入力部と、前記入力部で入力した前記検出信号を基に、前記調光部材の前記光透過率と前記投影機の作動との少なくとも一方を制御することにより、前記調光部材に投影される前記画像を前記環境光の明るさに応じた表示状態に調整する制御部と、を備える。
【0007】
上記課題を解決するための表示システムは、基材に設けられ、光透過率を可変な調光部材と、前記調光部材に画像を投影する投影機と、を備え、前記調光部材への画像表示を行う表示システムであって、前記調光部材の周囲の環境光の明るさを検出可能な検出部と、前記検出部から検出信号を入力し、入力した前記検出信号を基に、前記調光部材の前記光透過率と前記投影機の作動との少なくとも一方を制御することにより、前記調光部材に投影される前記画像を前記環境光の明るさに応じた表示状態に調整する表示装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表示装置及び表示システムは、視認性を向上可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】表示スクリーンへの画像の投影を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、表示装置及び表示システムの一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、表示システム1は、表示スクリーン2と、表示スクリーン2に画像を投影する投影機3と、画像表示の制御を行う表示装置4とを備えている。投影機3は、例えばレーザプロジェクタである。表示装置4は、投影機3へ投影する画像の画像データDを出力する。投影機3は、入力した画像データDを、表示スクリーン2に投影する。本実施形態の場合、表示スクリーン2は、車両に設けられ、車両に乗車中のユーザに対して画像の表示を行う。なお、画像には、種々の情報を示す映像、静止画、動画、及び文字情報などを含む。
【0011】
図2に示すように、表示スクリーン2は、透明なガラスなどの透明部材からなる基材5と、光透過率を可変な調光部材6とを備えている。調光部材6は、基材5上に貼り合わされている。本実施形態の場合、基材5は、車両後部座席のサイドガラスなどの車両のガラス材である。調光部材6は、例えば印加電圧に応じて、光透過率が低下する液晶材料である。調光部材6は、例えば光透過率が低下して不透明になるに従い、投影機3から投影される画像を映し出しやすくなる。表示装置4は、調光部材6へ制御電圧Vを出力し、光透過率を制御する。
【0012】
投影機3は、車室内において、天井などに設けられ、表示スクリーン2に対して車室内側から画像を投影する。すなわち、投影機3は、表示スクリーン2に対して、ユーザと同じ側に配置されたフロントプロジェクション型である。投影機3は、画像データDを基に、表示スクリーン2へ画像光L1を照射する。画像光L1は、表示スクリーン2の調光部材6の光透過率に応じて、調光部材6によって拡散反射された反射光L2と、表示スクリーン2を透過する透過光L3とに分かれる。表示スクリーン2を見るユーザは、反射光L2を知覚し、表示スクリーン2上に映し出された画像を認識する。また、投影機3は、調光部材6に画像を間欠表示する。間欠表示では、画像の表示がない、すなわち投影機3から画像光L1の照射がないタイミングが、定期的、又は非定期的に生成される。
【0013】
調光部材6の周囲には、画像光L1の他に、車両の外側及び内側の光源から発される環境光Eが照射される。環境光Eの一例は、車両外から照射される太陽光や車両外の照明による外光である。車両外からの環境光Eは、表示スクリーン2を通じて、車室内へと入射する。また、環境光Eの明るさAは、ユーザが知覚する画像の明るさに影響を与える。例えば、環境光Eの明るさAが反射光L2に対して明るい場合、投影された画像が暗く感じられ、環境光Eの明るさAが反射光L2に対して暗い場合、投影された画像が明るく感じられる。そのため、本実施形態の表示システム1は、環境光Eの明るさAに応じた画像の表示状態に制御する機能が設けられている。
【0014】
表示システム1は、調光部材6の周囲の環境光Eの明るさAを検出可能な検出部7を備えている。検出部7は、例えば、調光部材6の周囲の明るさAとして、車室内の照度を検出する照度計である。照度計は、例えば表示スクリーン2に照射される光の照度、又はユーザに照射される光の照度を検出するように設けられる。検出部7は、検出結果としての検出信号Sを、表示装置4へ出力する。
【0015】
図1に示す通り、表示装置4は、検出部7からの検出信号Sを入力する入力部11と、入力部11で入力した検出信号Sを基に、投影される画像の表示状態を調整する制御部12とを備えている。制御部12は、検出信号Sを基に、調光部材6の光透過率及び投影機3の作動の少なくとも一方を制御することにより、投影される画像を、環境光Eの明るさAに応じた表示状態に制御する。本実施形態の場合、制御部12は、制御電圧Vによって調光部材6の光透過率を制御するとともに、画像データDによって投影機3の作動を制御する。
【0016】
表示装置4は、各種データの書き込み及び読み出しが可能な記憶部としてのメモリ13を備えている。メモリ13には、画像の表示状態の調整に用いる制御マップが予め記憶されている。
【0017】
図3に示すように、制御マップには、環境光Eの明るさA、調光部材6へ出力する制御電圧Vの電圧値、及び投影機3から投影される画像の画像明るさDbの関係が示されている。制御電圧Vの電圧値が、調光部材6の制御に用いる「第1指令値」に該当する。また、画像明るさDbが、投影機3の制御に用いる「第2指令値」に該当する。画像明るさDbは、例えば投影機3に出力される画像データDにおける画素の輝度値である。なお、輝度値は、複数の画素間の最大値、最小値、又は平均値などの統計値であってもよい。
【0018】
制御部12は、検出信号Sを基に、環境光Eの明るさAを取得すると、制御マップを用いて、環境光Eの明るさAに対応する制御電圧V、及び画像明るさDbを求める。そして、制御部12は、求めた制御電圧V及び画像明るさDbによって、画像の表示状態の調整を行う。
【0019】
制御部12は、投影機3の間欠表示により画像の表示がないタイミングで検出された検出信号Sを基に、画像の表示状態の再調整を行う。なお、画像の表示がないタイミングは、制御部12によって画像データDの途中に黒色の画像データDを差し込むことなどにより、定期的に生成されてもよいし、画面の切り替わりなどにより、非定期的に生成されてもよい。また、制御部12は、再調整を規定のタイミングで繰り返す。例えば、制御部12は、間欠表示により画像が表示されないタイミングの度に、再調整を行う。表示装置4のメモリ13には、再調整に用いる換算マップが予め記憶されている。
【0020】
図4に示すように、換算マップには、検出信号Sの検出値Sa、及び検出時に設定されている制御電圧Vの現在値、検出信号Sの換算値Scの関係が示されている。制御部12は、制御電圧Vによって調光部材6を制御しているときに検出信号Sを入力すると、換算マップを用いて検出値Saを換算値Scへ換算し、この換算値Scを環境光Eの明るさAとする。そして、換算値Scにより取得した環境光Eの明るさAに対応する新たな制御電圧V及び画像明るさDbを、制御マップから求め、これら新たな制御電圧V及び画像明るさDbによって、画像の表示状態を再調整する。
【0021】
以下、本実施形態の作用について説明する。ここでは、表示装置4から制御電圧V及び画像データDが出力されていない未制御の状態であるとする。また、未制御時は、投影機3から画像光L1が照射されていないものとする。
【0022】
図5に示すように、S101(Sはステップの略、以下同様)では、表示装置4は、画像の投影開始処理を行う。投影開始処理は、例えばユーザの操作に基づいて行われる。投影開始処理では、例えば、投影する画像データDの取り込み、又は表示装置4に予め記憶されていた画像データDの読み出し等が行われる。
【0023】
S102では、検出部7は、調光部材6の周囲の環境光Eの明るさAを検出する。本実施形態の検出部7は、車室内の照度を検出し、検出した検出値Saを含んだ検出信号Sを、表示装置4に出力する。
【0024】
S103では、表示装置4の制御部12は、入力部11によって入力した検出信号Sを基に、画像の表示状態を調整する。制御部12は、検出信号Sを入力すると、制御マップを用いて、制御電圧V及び画像明るさDbを求め、これら制御電圧V及び画像明るさDbによって、画像の表示状態を調整する。
【0025】
画像の表示状態の考え方について、以下に説明する。
調光部材6の光透過率は、画像の表示状態に関係する。環境光E及び画像光L1の明るさが一定であると仮定すれば、調光部材6の光透過率が上昇した場合、反射光L2が減少し、透過光L3が増加するため、表示スクリーン2に映し出される画像の表示状態は、暗くなる。また、調光部材6の光透過率が低下した場合、反射光L2が増加し、透過光L3が減少するため、表示スクリーン2に映し出される画像の表示状態は、明るくなる。
【0026】
したがって、制御マップでは、環境光Eの明るさAが明るくなるに従って、調光部材6の光透過率が低下するように、環境光Eの明るさAに制御電圧Vが紐付けられている。このように、制御部12は、環境光Eの明るさAが暗くなるに連れて、調光部材6の光透過率が上昇するように制御し、環境光Eの明るさAが明るくなるに連れて、調光部材6の光透過率が低下するように制御する。
【0027】
また、画像明るさDbも、画像の表示状態に関係する。環境光Eの明るさA及び調光部材6の光透過率が一定であると仮定すれば、画像明るさDbが明るくなった場合、画像の表示状態は、明るくなり、画像明るさDbが暗くなった場合、画像の表示状態は、暗くなる。
【0028】
したがって、制御マップでは、環境光Eの明るさAが明るくなるに従って、画像明るさDbが明るくなるように、環境光Eの明るさAに画像明るさDbが紐付けられている。このように、制御部12は、環境光Eの明るさAが暗くなるに連れて、投影機3から投影される画像の画像明るさDbが暗くなるように制御し、環境光Eの明るさAが明るくなるに連れて、画像明るさDbが明るくなるように制御する。
【0029】
図3に示す通り、制御マップには、上記の通り、環境光Eの明るさA、制御電圧V及び画像明るさDbの関係が示されている。制御部12は、未制御の状態下で、検出信号Sを入力すると、検出信号Sに含まれる検出値Saを、環境光Eの明るさAとして取得する。制御部12は、制御マップを用いて、環境光Eの明るさAに対応する、制御電圧V及び画像明るさDbを求める。制御部12は、例えば環境光Eの明るさAが、「A1」であった場合、「V1」及び「Db1」を、それぞれ制御電圧V及び画像明るさDbとして求める。制御部12は、制御電圧Vが「V1」となるように調光部材6へ出力し、光透過率を制御する。また、制御部12は、画像明るさDbが「Db1」となるように、画像データDを加工し、加工した画像データDを投影機3へ出力する。
【0030】
図5に戻り、S104では、投影機3は、加工された画像データDを、表示スクリーン2の調光部材6へ投影して画像表示を行う。投影される画像の明るさは、制御電圧Vによって制御された調光部材6の光透過率と、画像データDの画像明るさDbとに応じた明るさとなっている。このように、画像の表示状態は、制御マップを用いて、環境光Eの明るさAに対して紐づけられた制御電圧V及び画像明るさDbによって調整されるので、環境光Eの明るさAに応じた画像の表示状態に制御することができる。
【0031】
ここで、
図2に示した通り、環境光Eには、例えば車室外からの外光が含まれている。外光の明るさは、車両の走行や時間の経過などによって変化する。そのため、環境光Eの明るさAも、表示装置4の使用中に変化する。このような環境光Eの明るさAの変化に対して、本実施形態の表示装置4は、表示状態の再調整を行う。
【0032】
図6に示すように、S201では、投影機3は、画像表示を行っている間、画像の間欠表示を行う。間欠表示では、画像光が投影されないタイミングが生成される。投影機3は、例えば制御部12が画像データDに差し込む黒色画像によって、定期的に間欠表示を行う。なお、間欠表示の表示時間は、ユーザが知覚できないほど極短時間であることが好ましい。
【0033】
S202では、検出部7は、画像が表示されないタイミングで環境光Eの明るさAを検出し、検出信号Sにより検出値Saを表示装置4へ出力する。検出部7は、例えば、間欠表示の画像が表示されないタイミングで環境光Eの明るさAを検出するように、制御部12によって制御される。これにより、制御部12は、画像が表示されないタイミングで検出された検出信号Sを入力する。
【0034】
S203では、制御部12は、検出信号Sの検出時に設定されていた制御電圧Vの現在値を確認する。制御部12は、例えば前回、制御マップから求めた制御電圧Vの電圧値を再度読み出し、これを現在値として確認する。
【0035】
S204では、制御部12は、換算マップを用いて、検出値Saを換算する。制御部12は、換算マップを用いて、検出信号Sに含まれる検出値Sa及び制御電圧Vの現在値に対応する換算値Scを求める。制御部12は、求めた換算値Scを環境光Eの明るさAとして取得する。
【0036】
以下、換算値Scの考え方について説明する。
環境光Eの明るさAを検出する際の調光部材6の光透過率は、環境光Eの明るさAの検出値Saに影響を与える。例えば画像光L1が照射されていないことを前提に、調光部材6の光透過率が上昇した場合、表示スクリーン2を通って車室内へと入射する環境光Eが増加し、環境光Eの明るさAが明るくなる。また、調光部材6の光透過率が低下した場合、表示スクリーン2を通って車室内へと入射する環境光Eが減少し、環境光Eの明るさAが暗くなる。
【0037】
図4に示すように、換算マップには、検出値Sa、制御電圧Vの現在値、及び換算値Scの関係が示されている。本実施形態の場合、換算マップでは、検出値Saが明るくなるのに従って、換算値Scが明るくなるように、検出値Sa及び換算値Scが紐付けられている。また、同じ検出値Saのとき、光透過率が低くなる方向に制御電圧Vの現在値が変化すると、換算値Scが明るくなるように、制御電圧Vの現在値、及び換算値Scが紐付けられている。
【0038】
制御部12は、換算マップを用いて、検出値Sa及び制御電圧Vの現在値から、換算値Scを求める。例えば、検出値Saが「Sa1」で、制御電圧Vの現在値が「V1」だった場合、換算値Scとして「Sc11」を求める。また、例えば検出値Saが「Sa1」で、制御電圧Vの現在値が「V2」だった場合、換算値Scとして、「Sc12」を求める。制御部12は、求めた換算値Scを、制御マップの環境光Eの明るさAとして取得する。
【0039】
図6に戻り、S205では、制御部12は、換算値Scから取得した環境光Eの明るさAに対応する新たな制御電圧V及び画像明るさDbを求め、これら新たな制御電圧V及び画像明るさDbによって、画像の表示状態を再調整する。
【0040】
S206では、投影機3は、再調整により加工された画像データDを、表示スクリーン2の調光部材6へ投影する。投影される画像の明るさは、制御電圧Vによって制御された調光部材6の光透過率と、画像データDの画像明るさDbとに応じた明るさとなっている。
【0041】
制御部12は、S201~S206の再調整の処理を規定のタイミングで繰り返す。例えば、制御部12は、間欠表示により画像が表示されないタイミングの度に、再調整を行う。このように、画像表示を行っている間の環境光Eの明るさAの変化に対して、再調整を行うため、環境光Eの明るさAに応じた画像の表示状態に制御することができる。
【0042】
上記のように、制御部12は、制御マップを用いて、調光部材6に投影される画像を環境光Eの明るさAに応じた表示状態に調整するので、調光部材6の周囲の環境光Eの明るさAに応じて、ユーザが感じる画像の明るさを調整することができる。また、環境光Eの明るさAが変化した場合にも、表示状態を再調整することができる。
【0043】
制御部12は、画像表示を行っている間、画像の間欠表示によって画像が表示されないタイミングで検出された検出信号Sを基に、画像の再調整を行う。これにより、投影機3から照射される画像光L1が検出部7の検出結果に影響を及ぼすことがないので、環境光Eの明るさAを正しく検出することができる。
【0044】
制御部12は、制御マップを用いて、調光部材6の光透過率と、投影機3の作動との両方を制御する。これによれば、調光部材6の光透過率と、投影機3の作動とのいずれかを制御する場合と比較して、画像の明るさの度合いを広い範囲で制御できる。
【0045】
制御部12は、換算マップを用いて、検出信号Sの検出値、及び制御電圧Vの現在値から、検出信号Sの換算値Scを求める。そして、換算値Scを環境光Eの明るさAとして、制御マップを用いて新たな制御電圧V及び画像明るさDbを求め、これら新たな制御電圧V及び画像明るさDbによって、画像の表示状態の再調整を行う。これによれば、調光部材6を制御している場合に、調光部材6の光透過率によって変化する検出部7の検出値Saを、換算マップを用いて換算し、換算した換算値Scを基に、制御マップを用いて再調整することで、画像の表示状態を好適に再調整できる。
【0046】
制御部12は、投影機3の作動の制御として、調光部材6へ投影される画像の画像データDを加工するので、投影機3側は、入力した画像データDを投影するだけでよく、投影機3側での処理を簡略にできる。
【0047】
以下、本実施形態の効果について説明する。
(1)表示装置4は、調光部材6の周囲の環境光Eの明るさAを検出可能な検出部7から検出信号Sを入力する入力部11を備える。また、表示装置4は、入力部11で入力した検出信号Sを基に、調光部材6の光透過率と投影機3の作動との少なくとも一方を制御することにより、調光部材6に投影される画像を環境光Eの明るさAに応じた表示状態に調整する制御部12とを備える。この構成によれば、ユーザが感じる画像の明暗を、調光部材6の周囲の環境光Eの明るさAに応じて調整できる。これにより、視認性を向上できる。
【0048】
(2)投影機3は、調光部材6に画像を間欠表示する。また、制御部12は、画像が表示されないタイミングで検出された検出信号Sを基に表示状態の再調整を行い、再調整を規定のタイミングで繰り返す。この構成によれば、表示装置4の使用中における環境光Eの明るさAの変化に対して、再調整を行う。そのため、環境光Eの明るさAの変化に応じた画像の表示状態に制御することができる。また、画像が表示されないタイミングで検出された検出信号Sを基に画像の再調整を行うことで、投影機3から照射される画像光L1が検出部7の検出結果に影響を及ぼすことがないので、環境光Eの明るさAを正しく検出することができる。これにより、画像の表示状態を精度よく再調整できる。これにより、視認性を向上できる。
【0049】
(3)制御部12は、制御電圧Vによって調光部材6を制御している場合、換算マップを用いて、検出値Sa及び制御電圧Vの現在値から、換算値Scを求める。さらに、制御部12は、求めた換算値Scを環境光Eの明るさAとしたときに、この環境光Eの明るさAに対応する新たな制御電圧V及び画像明るさDbを、制御マップから求め、これら新たな制御電圧V及び画像明るさDbにより、表示状態の再調整を行う。この構成によれば、調光部材6を制御している場合に、調光部材6の光透過率によって変化する検出部7の検出値Saを、換算マップを用いて換算し、換算した換算値Scを基に、制御マップを用いて再調整することで、画像の表示状態を好適に再調整できる。これは、視認性の向上に寄与できる。
【0050】
(4)制御部12は、環境光Eの明るさAが暗くなるに連れて調光部材6の光透過率が上昇するように制御し、環境光Eの明るさAが明るくなるに連れて調光部材6の光透過率が低下するように制御する。この構成によれば、環境光Eの明るさAが暗い場合に、光透過率を上昇させて画像の表示状態を暗くするので、画像が明るくて眩しさ感じさせることを抑制できる。また、環境光Eの明るさAが明るい場合に、光透過率を低下させて画像の表示状態を明るくするので、画像が暗くて見難くなることを抑制できる。これらにより、視認性を向上できる。
【0051】
(5)制御部12は、環境光Eの明るさAが暗くなるに連れて投影機3から投影される画像の画像明るさDbが暗くなるように制御し、環境光Eの明るさAが明るくなるに連れて投影機3から投影される画像の画像明るさDbが明るくなるように制御する。この構成によれば、環境光Eの明るさAが暗い場合に、画像明るさDbを暗くして画像の表示状態を暗くするので、画像が明るくて眩しさ感じさせることを抑制できる。また、環境光Eの明るさAが明るい場合に、画像明るさDbを明るくして画像の表示状態を明るくするので、画像が暗くて見難くなることを抑制できる。これらにより、視認性を向上できる。
【0052】
(6)制御部12は、投影機3の作動の制御として、調光部材6へ投影される画像の画像データDを加工する。この構成によれば、投影機3側は、入力した画像データDを投影するだけでよく、投影機3側での処理を簡略にでき、それだけ投影機3の構成を簡易にできる。
【0053】
(7)調光部材6は、車両のガラスに設けられている。この構成によれば、この構成によれば、車両のガラスに表示された画像の視認性を向上できる。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・制御部12は、投影機3の作動の制御として、画像データDを加工することに限定されず、投影機3の光源の照射強度を制御してもよい。
・制御部12は、環境光Eの明るさAが明るい場合に、画像の表示状態を暗くし、環境光Eの明るさAが暗い場合に、画像の表示状態を明るくするように制御してもよい。
【0055】
・画像明るさDbは、投影される画像の明るさに関係する値であればよい。例えば、画像データDの画素の輝度値でもよいし、投影機3の光源の照射強度でもよいし、明るさフィルタの強度でもよい。
【0056】
・調光部材6の光透過率の制御に用いる第1指令値は、本実施形態に限定されない。
・投影機3の作動の制御に用いる第2指令値は、本実施形態に限定されない。
・制御部12は、制御電圧Vの現在値の確認において、出力している制御電圧Vの電圧値を検出して、確認してもよい。
【0057】
・制御部12は、未制御の状態において、制御電圧Vの現在値を確認し、換算値Scを求めてもよい。すなわち、画像の表示状態を制御する際に、毎回制御電圧Vの現在値を確認し、換算値Scを求めてもよい。
【0058】
・制御マップにおいて、環境光Eの明るさAに応じて、制御電圧V及び画像明るさDbのうち一方のみで制御を行い、他方を変化させない領域があってもよい。すなわち、制御マップにおいて、環境光Eの明るさAが或る領域にあるとき、制御電圧V及び画像明るさDbのうち一方のみが変化し、他方が変化しないように、紐付けられていてもよい。
【0059】
・換算マップにおいて、制御電圧Vと換算値Scとの関係は本実施形態に限定されず、例えば、光透過率が低下する方向に制御電圧Vが変化するに連れて、換算値Scが暗くなるように紐付けられていてもよい。
【0060】
・換算マップにおいて、換算前の検出値Saと、換算後の換算値Scとが同じであってもよい。
・制御マップにおいて、環境光Eの明るさA、制御電圧V、及び画像明るさDbの関係は、特に限定されず、適宜変更可能である。
【0061】
・換算マップにおいて、検出値Sa、制御電圧Vの現在値、及び換算値Scの関係は、特に限定されず、適宜変更可能である。
・制御部12による制御は、制御マップ及び換算マップを用いることに限定されず、例えば環境光Eの明るさに応じて制御電圧V又は画像明るさDbをインクリメント又はディクリメントするように制御してもよい。
【0062】
・制御部12は、制御電圧Vによって調光部材6を制御している場合、検出信号Sの検出タイミングを確認し、画像が表示されないタイミングで検出された検出信号Sを識別してもよい。すなわち、画像が表示されないタイミングにおける環境光Eの明るさAを検出できれば、その検出方法は特に限定されない。
【0063】
・制御部12は、画像を投影している期間において、間欠表示により画像が表示されないタイミングで検出された検出信号Sを基に制御を行うことに限定されない。画像光が照射されている間に検出された検出信号Sを基に再調整を行ってもよい。
【0064】
・制御部12は、調光部材6の光透過率と投影機の作動とのいずれか一方のみを制御してもよい。すなわち、制御部12は、調光部材6の光透過率と投影機の作動との少なくとも一方を制御すればよい。
【0065】
・環境光Eは、車両の外から表示スクリーン2を通過して車内に入射する光に限定されず、車室内にある光源からの光を含んでもよいし、表示スクリーン2とは別のガラスを通じて入射する外光を含んでもよい。
【0066】
・検出部7は、調光部材6の周囲として、車室内の環境光の明るさを検出することに限定されず、調光部材6の車室外側の環境光の明るさを検出してもよい。
・検出部7は、照度を検出することに限定されない。例えば、表示スクリーン2側からユーザへと照射される光の輝度を検出してもよい。
【0067】
・検出部7は、車室内に設けられた照度計でもよいし、ユーザに向けられたカメラなどでもよく、明るさを検出することができる種々の機器が適用できる。
・表示スクリーン2の基材5は、透明部材に限定されず、例えば鏡などでもよい。例えば、表示スクリーン2は、サイドミラーやルームミラーなどであってもよい。
【0068】
・表示システム1には、ユーザ操作により投影される画像の明るさを変更可能な操作部が設けられていてもよい。また、操作部は、物理的なスイッチなどでもよいし、タッチ操作されるタッチ操作部でもよいし、ジェスチャ操作を検出するカメラなどでもよい。
【0069】
・調光部材6は、印加電圧が無い時に透明で、印加電圧に従って光透過率が低下するものでもよいし、印加電圧が無い時に不透明で、印加電圧に従って光透過率が上昇するものであってもよい。
【0070】
・調光部材6は、液晶材料でもよいし、エレクトロクロミック材料でもよいし、フォトクロミック材料でもよい。
・投影機3は、表示スクリーン2に対して、ユーザと同じ側から画像を投影するフロントプロジェクション型でもよいし、ユーザと反対側から画像を投影するリアプロジェクション型でもよい。
【0071】
・投影機3は、レーザプロジェクタに限定されず、種々のプロジェクタを適用可能である。
・投影機3の搭載位置は、特に限定されず、例えば車両において、車室内及び車室外のいずれに設けられてもよく、車室内の天井に設けられてもよいし、車室外のサイドミラーに設けられてもよい。
【0072】
・画像の投影開始のトリガは、ユーザの操作でもよいし、車両の電源遷移でもよいし、他の機器との通信でもよく、特に限定されない。
・投影される画像の内容は特に限定されない。例えば、ナビゲーションシステムやオーディオなどの車載機器に連動して各種の情報や映像などを表示するものでもよいし、道路情報や周辺施設の情報及び広告などを表示するものでもよい。
【0073】
・投影される画像には、映像、静止画、動画、及び文字情報などが含まれてもよい。
・表示システム1は、車両に適用されることに限定されず、種々の機器や装置、又は建造物や設備に設けられてもよい。
【0074】
・表示装置4は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはそれらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)並びに、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0075】
次に、上記実施形態及び変形例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記基材は、透明材料である表示装置。この構成によれば、この構成によれば、透明ガラスなどの透明材料に表示された画像の視認性を向上できる。
【0076】
(ロ)基材に設けられた光透過率を可変な調光部材に、投影機から画像を投影して画像表示を行う表示装置であって、前記調光部材の周囲の環境光の明るさを検出可能な検出部から検出信号を入力することと、入力した前記検出信号を基に、前記調光部材の前記光透過率と前記投影機の作動との少なくとも一方を制御することにより、前記調光部材に投影される前記画像を前記環境光の明るさに応じた表示状態に調整することと、を行うように構成された回路を備える表示装置。
【符号の説明】
【0077】
1…表示システム、2…表示スクリーン、3…投影機、4…表示装置、5…基材、6…調光部材、7…検出部、11…入力部、12…制御部、13…メモリ、D…画像データ、E…環境光、L1…画像光、S…検出信号、V…制御電圧。