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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】建材用手動走行式搬送台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20240229BHJP
   B62B 3/06 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B62B3/00 A
B62B3/06 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020019494
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021123280
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 武
(72)【発明者】
【氏名】山上 重雄
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3026771(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0066069(US,A1)
【文献】特開2010-095168(JP,A)
【文献】実公昭54-006216(JP,Y1)
【文献】実開昭51-135357(JP,U)
【文献】特開2006-168444(JP,A)
【文献】実開昭58-069570(JP,U)
【文献】特開2016-130055(JP,A)
【文献】実開平05-064038(JP,U)
【文献】特開平06-263036(JP,A)
【文献】実開昭49-056653(JP,U)
【文献】実開平03-102375(JP,U)
【文献】中国実用新案第203222012(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-0847573(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/00
B62B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材を搬送するために手動によって走行するための走行輪を備えている建材用手動走行式搬送台車において、
前記走行輪として、1個の主輪と、この主輪による走行方向両側のうち、少なくとも一方の側に配設された1個の副輪とを備えており、前記主輪の回転中心軸と前記副輪の回転中心軸とが平行になっているとともに、直立姿勢状態において、前記主輪の下端の高さ位置よりも前記副輪の下端の高さ位置は高くなっており、手動によって前記直立姿勢状態から傾斜姿勢状態となることにより前記主輪と前記副輪の両方が走行面に接して、手動により走行し、
前記主輪の前記回転中心軸の軸方向における前記主輪の配置位置と前記副輪の配置位置は、同じ位置又は略同じ位置となっており、
前記直立姿勢状態では、前記主輪の中心部を通る鉛直線を中心に回動自在となっていることを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項2】
請求項1に記載の建材用手動走行式搬送台車において、前記建材が載置される載置部材を備えており、前記建材を搬送する作業を行う作業者の手により、前記載置部材に載置された前記建材が握られ、前記手によって前記直立姿勢状態から前記傾斜姿勢状態に変更されるとともに、前記手からの押し力により走行することを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項3】
建材を搬送するために手動によって走行するための走行輪を備えている建材用手動走行式搬送台車において、
前記走行輪として、1個の主輪と、この主輪による走行方向両側のうち、少なくとも一方の側に配設された1個の副輪とを備えており、前記主輪の回転中心軸と前記副輪の回転中心軸とが平行になっているとともに、直立姿勢状態において、前記主輪の下端の高さ位置よりも前記副輪の下端の高さ位置は高くなっており、手動によって前記直立姿勢状態から傾斜姿勢状態となることにより前記主輪と前記副輪の両方が走行面に接して、手動により走行し、
前記主輪と前記副輪とに対して上下方向にスライド自在となっているスライド部材を備えており、このスライド部材が最下位置に達したときにおけるこのスライド部材の下端面の高さ位置は、前記主輪の前記下端の高さ位置と同じ又はこの高さ位置よりも低い位置となっていて、前記スライド部材の前記下端面の接地により、直立姿勢状態で自立可能となっており、
前記スライド部材には前記建材が載置される載置部材が配置され、この載置部材は、前記スライド部材から少なくとも一部が水平方向に露出する寸法で形成されている底面部を有しているとともに、この底面部の高さ位置は、前記スライド部材の前記下端面の高さ位置と同じ又は略同じになっていることを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項4】
請求項3に記載の建材用手動走行式搬送台車において、前記載置部材には、前記スライド部材を上下方向にスライドさせるために操作される操作器が取り付けられた前記建材が載置されることを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項5】
請求項4に記載の建材用手動走行式搬送台車において、前記操作器は、前記建材に吸着手段により取り付けられていることを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項6】
請求項5に記載の建材用手動走行式搬送台車において、前記吸着手段は、マグネットであることを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項7】
請求項3~6のいずれかに記載の建材用手動走行式搬送台車において、前記主輪が前記走行面に接触していて前記副輪が前記走行面に接触していないとともに前記スライド部材の下端面が前記走行面に接地していない前記直立姿勢状態では、前記主輪の中心部を通る鉛直線を中心に回動自在となっていることを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項8】
請求項3~7のいずれかに記載の建材用手動走行式搬送台車において、前記載置部材は前記スライド部材の外面に取り付けられており、前記底面部の全体が前記スライド部材から水平方向に露出していることを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項9】
請求項8に記載の建材用手動走行式搬送台車において、前記底面部からは、前記スライド部材の前記外面に結合された鉛直部が立ち上がっており、この鉛直部と、前記スライド部材の前記外面とに、前記載置部材に載置された前記建材を吸着してこの建材を不動状態とするための吸着手段が取り付けられていることを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項10】
請求項9に記載の建材用手動走行式搬送台車において、前記鉛直部と、前記スライド部材の前記外面とに取り付けられている前記吸着手段は、マグネットであることを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項11】
請求項3~10のいずれかに記載の建材用手動走行式搬送台車において、前記載置部材に載置された前記建材は、この建材を搬送する作業を行う作業者の手により握られ、この手によって前記主輪が前記走行面に接触していて前記副輪が前記走行面に接触していないとともに前記スライド部材の下端面が前記走行面に接地していない前記直立姿勢状態から前記主輪と前記副輪の両方が前記走行面に接触している前記傾斜姿勢状態に変更されるとともに、前記手からの押し力により走行することを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の建材用手動走行式搬送台車において、前記副輪の個数は、前記主輪による前記走行方向両側に配設された2個となっていることを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【請求項13】
請求項12に記載の建材用手動走行式搬送台車において、前記主輪による走行方向における前記主輪からそれぞれの前記副輪までの距離は、同じ距離又は略同じ距離となっていることを特徴とする建材用手動走行式搬送台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動で走行させることができて、建材を建材設置場所等まで搬送するための建材用手動走行式搬送台車に係り、例えば、防火扉を含む開き戸や、引き戸、折れ戸、これらにより内側の出入口が開閉されるドア枠、さらには、パーティション、シャッター装置のシャッターカーテン、壁材、床材、天井材等の各種の建材を搬送するために用いることができるものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、建材を建材設置場所等の所定場所まで搬送するための建材用搬送台車が示されており、開き戸装置の開き戸やドア枠等の建材を搬送するために用いられるこの搬送台車は、手動によって走行するための走行輪を備えた手動走行式搬送台車となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-89381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手動により走行輪で走行して建材を搬送できるようにするためには、この建材が、例えば、防火扉等のような重量物であっても、建材用手動走行式搬送台車を、手動により軽快に走行させることができて、作業者の負担を軽減でき、建材の搬送作業を容易に行えるようにすることが求められる。
【0005】
本発明の目的は、手動により軽快に走行させることができて、作業者の負担を軽減でき、建材の搬送作業を容易に行えるようになる建材用手動走行式搬送台車を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る建材用手動走行式搬送台車は、建材を搬送するために手動によって走行するための走行輪を備えている建材用手動走行式搬送台車において、前記走行輪として、1個の主輪と、この主輪による走行方向両側のうち、少なくとも一方の側に配設された1個の副輪とを備えており、前記主輪の回転中心軸と前記副輪の回転中心軸とが平行になっているとともに、直立姿勢状態において、前記主輪の下端の高さ位置よりも前記副輪の下端の高さ位置は高くなっており、手動によって前記直立姿勢状態から傾斜姿勢状態となることにより前記主輪と前記副輪の両方が走行面に接して、手動により走行することを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る搬送台車によると、この搬送台車は、走行輪として、1個の主輪と、この主輪による走行方向両側のうち、少なくとも一方の側に配設された1個の副輪とを備えたものとなっていて、主輪の回転中心軸と副輪の回転中心軸とが平行になっており、直立姿勢状態において、主輪の下端の高さ位置よりも副輪の下端の高さ位置は高くなっているため、手動によって直立姿勢状態から傾斜姿勢状態とすることにより、主輪と副輪の両方が走行面に接することになり、このため、建材を搬送するためには、手動により直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更して、主輪と副輪の両方を走行面に接触させ、そして、手による押し力により手動で走行させればよい。
【0008】
そして、直立姿勢状態から傾斜姿勢状態にさせると、傾斜方向を走行させる方向である前側にした場合には、建材の重心を走行させる方向の前側へ移動させることができ、この重心移動により、手動によって軽快に走行させることができる。また、傾斜方向を走行させる方向とは反対側の後側にした場合には、手による押し力に持ち上げる方向の成分を生じさせて、この手は斜め上方に押すことになるため、これによっても搬送台車を手動により軽快に走行させることができ、これにより、作業者の負担を軽減して建材の搬送作業を容易に行えるようになる。
【0009】
以上の本発明に係る搬送台車において、主輪の回転中心軸の軸方向における主輪の配置位置と副輪の配置位置は、ずれていてもよく、あるいは、同じ位置又は略同じ位置となっていてもよい。
【0010】
これらのうち、後者のように主輪の回転中心軸の軸方向における主輪の配置位置と副輪の配置位置が、同じ位置又は略同じ位置となっていると、手動により直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更させて、主輪と副輪の両方を走行面に接触させることによって行う手動による走行作業を、本発明に係る搬送台車の全体を、主輪の回転中心軸の軸方向に傾けることなく、容易に行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る搬送台車に設ける副輪の個数は、主輪による走行方向両側のうち、一方の側に配設された1個でもよく、あるいは、主輪による走行方向両側に配設された2個でもよい。
【0012】
これらのうち、後者のように副輪の個数を、主輪による走行方向両側に配設された2個とすると、主輪による走行方向両側のうち、どちらの側へ走行させる場合であっても、手動により直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更させることにより、主輪と副輪の両方を走行面に接触させることができるため、主輪による走行方向両側のうちの任意の側への建材の搬送作業を容易に行えるようになる。
【0013】
また、このように本発明に係る搬送台車に設ける副輪の個数を、主輪による走行方向両側に配設された2個とする場合には、主輪による走行方向における主輪からそれぞれの副輪までの距離を異ならせてもよく、あるいは、主輪による走行方向における主輪からそれぞれの副輪までの距離を同じ距離又は略同じ距離にしてもよい。
【0014】
これらのうち、後者のように主輪による走行方向における主輪からそれぞれの副輪までの距離を同じ距離又は略同じ距離にすると、主輪と、2個の副輪のうち、1個の副輪とを走行面に接触させて走行させるために、手動によって直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更させるための姿勢変更作業を、主輪による走行方向両側について、同じ傾き角度又は略同じ傾き角度にして実施できることになり、このため、この作業を容易に行える。
【0015】
また、本発明に係る搬送台車を、直立姿勢状態では、主輪の中心部を通る鉛直線を中心に回動自在とすることが好ましい。
【0016】
これによると、本発明に係る搬送台車を、直立姿勢状態では、主輪の中心部を通る鉛直線を中心に回動させることができるため、搬送台車の向きの変更を容易に行えることになり、これにより、搬送台車の向きの変更後に、前述したように手動により直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更して、主輪と1個の副輪とを走行面に接触させることにより、搬送台車を任意の方向へ走行させることができる。
【0017】
また、前述したように本発明に係る搬送台車を、手動により直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更することにより、主輪と1個の副輪とを走行面に接触させて走行させることができるようにするためには、本発明に係る搬送台車に、作業者の手で接触する手接触部を設け、この手接触部に接触した手により作業者が、直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更することにより、主輪と1個の副輪とを走行面に接触させて走行させることができるようにしてもよく、あるいは、本発明に係る搬送台車を、建材が載置される載置部材を備えたものとし、この載置部材に載置された建材が建材を搬送する作業を行う作業者の手により握られ、この手によって直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更するとともに、この手からの押し力により走行するようにしてもよい。
【0018】
これらのうち、後者によると、本発明に係る搬送台車に、作業者の手で接触する手接触部を設けなくても、本発明に係る搬送台車を、載置部材に載置された建材を握った作業者の手によって直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更できるとともに、この手からの押し力により走行させることができるため、本発明に係る搬送台車を、手接触部が設けられていない小型化された簡単な構造とすることができる。
【0019】
また、本発明に係る搬送台車を、主輪と副輪とに対して上下方向にスライド自在となったスライド部材を備えたものとし、このスライド部材が最下位置に達したときにおけるスライド部材の下端面の高さ位置を、主輪の下端の高さ位置と同じ又はこの高さ位置よりも低い位置とし、これにより、スライド部材の下端面の接地によって本発明に係る搬送台車を直立姿勢状態で自立可能としてもよい。
【0020】
これによると、前述したように本発明に係る搬送台車が直立姿勢状態となっているときにおいて、主輪の下端の高さ位置よりも副輪の下端の高さ位置が高くなっていても、スライド部材が最下位置に達したときにおけるこのスライド部材の下端面の高さ位置が、主輪の下端の高さ位置と同じ又はこの高さ位置よりも低い位置となっていることにより、スライド部材の下端面の接地により、本発明に係る搬送台車を直立姿勢状態で自立させることができるため、本発明に係る搬送台車の収納等を容易に行えるとともに、本発明に係る搬送台車を持ち上げて他の場所へ運ぶ作業等も容易に行える。
【0021】
そして、このように本発明に係る搬送台車を、主輪と副輪とに対して上下方向にスライド自在となったスライド部材を備えたものとし、このスライド部材が最下位置に達したときにおけるスライド部材の下端面の高さ位置を、主輪の下端の高さ位置と同じ又はこの高さ位置よりも低い位置とし、これにより、スライド部材の下端面の接地によって本発明に係る搬送台車を直立姿勢状態で自立可能とする場合には、スライド部材に、建材が載置される載置部材を配置し、この載置部材を、スライド部材から少なくとも一部が水平方向に露出する寸法で形成されている底面部を有するものとするとともに、この底面部の高さ位置を、スライド部材の下端面の高さ位置と同じ又は略同じにしてもよい。
【0022】
これによると、本発明に係る搬送台車が、スライド部材の下端面の接地によって直立姿勢状態で自立可能となっているときには、載置部材の底面部も接地又は略接地することになるため、この載置部材の底面部により、本発明に係る搬送台車を、直立姿勢状態で一層確実に自立させることができるようになる。
【0023】
なお、このように本発明に係る搬送台車に建材が載置される載置部材を配置し、この載置部材を、スライド部材から少なくとも一部が水平方向に露出する寸法で形成されている底面部を有するものとするとともに、この底面部の高さ位置を、スライド部材の下端面の高さ位置と同じ又は略同じにする場合には、この底面部の一部だけをスライド部材から水平方向に露出させてもよく、あるいは、載置部材をスライド部材の外面に取り付け、これにより、底面部の全体をスライド部材から水平方向に露出させてもよい。
【0024】
これらのうち、後者によると、載置部材の底面部の全体がスライド部材から水平方向に露出しているため、この底面部の全体が、スライド部材の下端面と同様に、接地又は略接地することになり、このため、本発明に係る搬送台車を、直立姿勢状態でさらに一層確実に自立させることができるようになる。
【0025】
また、上述のように載置部材の底面部の全体をスライド部材から水平方向に露出させる場合には、この底面部からスライド部材の外面に結合された鉛直部を立ち上がらせることにより、この鉛直部と、スライド部材の外面とに、載置部材に載置された建材を吸着してこの建材を不動状態とするための吸着手段を取り付けてもよい。
【0026】
これによると、本発明に係る搬送台車により建材を搬送するとき等において、載置部材の鉛直部とスライド部材の外面とに取り付けられた吸着手段の吸着作用により、載置部材に載置された建材を不動状態にできるため、搬送時等に建材が転倒等することを防止できる。
【0027】
なお、これらの吸着手段は、吸盤でもよく、あるいは、マグネットでもよい。吸着手段をマグネットとすると、少なくとも一部が磁性材料で形成されている建材の吸着を簡単に行うことができる。
【0028】
なお、以上のようにスライド部材の外面に結合された載置部材の鉛直部とスライド部材の外面とに吸着手段を取り付ける場合には、これらの吸着手段と共に、ゴムや、多孔質弾性材、軟質合成樹脂等による緩衝部材を、載置部材の鉛直部とスライド部材の外面とに取り付けることにより、建材の損傷を防止するようにしてもよく、あるいは、載置部材の鉛直部とスライド部材の外面とに上記緩衝部材のみを取り付けてもよい。
【0029】
また、本発明に係る搬送台車を、前述したように主輪と副輪とに対して上下方向にスライド自在となったスライド部材を備えたものとし、このスライド部材が最下位置に達したときにおけるスライド部材の下端面の高さ位置を、主輪の下端の高さ位置と同じ又はこの高さ位置よりも低い位置とするとともに、スライド部材に、建材が載置される載置部材を配置し、この載置部材を、スライド部材から少なくとも一部が水平方向に露出する寸法で形成されている底面部を有するものとし、この底面部の高さ位置を、スライド部材の下端面の高さ位置と同じ又は略同じにする場合には、載置部材に載置された建材を、この建材を搬送する作業を行う作業者の手によって握り、この手によって本発明に係る搬送台車を直立姿勢状態から前記傾斜姿勢状態に変更するとともに、作業者の手からの押し力により本発明に係る搬送台車を走行させるようにしてもよい。
【0030】
これによると、本発明に係る搬送台車に、この搬送台車を直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更して、作業者の手からの押し力により走行させるための手接触部を設けなくても、本発明に係る搬送台車を、載置部材に載置された建材を握った作業者の手によって直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更することができて、この手からの押し力により走行させることができるため、本発明に係る搬送台車を、手接触部が設けられていない小型化された簡単な構造とすることができる。
【0031】
以上説明した本発明に係る搬送台車は、任意の建材を搬送するために用いることができ、この建材は、例えば、防火扉を含む開き戸でもよく、あるいは、引戸装置の引き戸でもよく、あるいは、折れ戸装置の折れ戸でもよく、あるいは、これらにより内側の出入口が開閉されるドア枠でもよく、さらには、パーティションでもよく、あるいは、シャッター装置のシャッターカーテンでもよく、あるいは、パネル式シャッターカーテンについてはパネルでもよく、あるいは、壁材でもよく、あるいは、床材でもよく、あるいは、天井材等でもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、手動により軽快に走行させることができて、作業者の負担を軽減でき、建材の搬送作業を容易に行えるようになるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る建材用手動走行式搬送台車を示す正面側斜視図である。
図2図2は、建材用手動走行式搬送台車を示す背面側斜視図である。
図3図3は、建材用手動走行式搬送台車の正面図である。
図4図4は、建材用手動走行式搬送台車の右側面図である。
図5図5は、建材用手動走行式搬送台車の背面図である。
図6図6は、建材用手動走行式搬送台車の底面図である。
図7図7は、図1等で示されたベース部材と副輪用ブラケットを透視し、連結部材と補強部材を断面で示した図3と同様の図である。
図8図8は、建材用手動走行式搬送台車のスライド部材が建材を上昇させるために上動したときを示す図3と同様の図である。
図9図9は、図8のときにおける図4と同様の図である。
図10図10は、載置部材に載置された建材を作業者が搬送するために建材用手動走行式搬送台車を走行させる作業のときを示す斜視図である。
図11図11は、図10の作業を行うときに、建材用手動走行式搬送台車を直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更したときを示す正面図である。
図12図12は、建材が開き戸の防火扉である場合に、防火扉に取り付けた操作器の操作により作業者が、建材用昇降装置ともなっている建材用手動走行式搬送台車に建材を載置するために設けられている載置部材を上下動させて、ドアヒンジの開き戸側羽根板部材にドア枠側羽根板部材のピンを挿入するための作業を示す斜視図である。
図13図13は、別実施形態に係る建材用手動走行式搬送台車を示す図3と同様の図である。
図14図14は、図13の実施形態に係る建材用手動走行式搬送台車を示す図4と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1図2には、本発明の一実施形態に係る建材用手動走行式搬送台車1の正面斜視図と背面斜視図が示されており、図3図4図5及び図6は、建材用昇降装置ともなっている本実施形態の搬送台車1の正面図と、右側面図と、背面図及び底面図である。この搬送台車1は、走行輪として図1及び図3に示されているように、1個の主輪2と、2個の副輪3とを備えたものとなっており、それぞれの副輪3は、副輪用ブラケット4に回転中心軸3Aを中心に回転自在に取り付けられている。これらの副輪用ブラケット4は、主輪2の配置箇所と対応する箇所に配置されたベース部材5に結合されており、このベース部材5は、図6に示されているように、搬送台車1の幅方向である左右方向の幅寸法を有する主部5Aと、この主部5Aの両端部から搬送台車1の表裏方向である前後方向のうち、後方へ延出した延出部5Bとからなる平面視でコ字形状のものとなっており、これらの延出部5Bに副輪用ブラケット4が結合されている。これにより、本実施形態に係る搬送台車1は、走行輪として、1個の主輪2と、この主輪2による走行方向両側に2個の副輪3とを備えたものとなっている。
【0035】
図7には、副輪用ブラケット4とベース部材5を透視した搬送台車1の正面図が示されている。この図7から分かるように、2個の副輪3の間に配置された主輪2は、上下方向の長さを有する内筒部材6の下端に連結部材7を介して連結されている主輪用ブラケット8に回転自在に取り付けられ、この主輪用ブラケット8に架設されていて、主輪2を回転自在としている回転中心軸2Aは、図6に示されているように、副輪3の回転中心軸3Aと平行となっている。また、主輪2の回転中心軸2Aの軸方向における主輪2の配置位置とそれぞれの副輪3の配置位置は、同じ又は略同じになっており、さらに、図3からも分かるように、主輪2による走行方向における主輪2からそれぞれの副輪3までの距離は、同じ距離又は略同じ距離となっている。
【0036】
図7で示されている連結部材7は、底部7Aと、この底部7Aにおける搬送台車1の幅方向両端部から立ち上がっている2個の立上部7Bとを有するものであり、底部7Aに内筒部材6の下端がブラケット7Cを介してされている。また、図6に示されているように、連結部材7の外側には、この連結部材7と結合一体化された補強部材9が配置され、この補強部材9は、搬送台車1の幅方向における両端部の2個のフランジ部9Aと、これらのフランジ部9Aを結合し、搬送台車1の表面側に配置されている結合部9Bとからなる平面視でコ字形状のものである。補強部材9の結合部9Bは、ベース部材5の主部5Aに結合され、これにより、このベース部材5に内筒部材6が、補強部材9と連結部材7とを介して取り付けられている。
【0037】
また、図7に示されているように、上下方向の長さを有する内筒部材6の外周には外筒部材10が上下方向に摺動自在に嵌合されているとともに、この外筒部材10の上部には電動モータ11が取り付けられており、図3に示されているように、外筒部材10の上部は、電動モータ11の上部と共に、スライド部材12に架設されているブリッジ部材13にブラケット13Aを介して連結されている。ブリッジ部材13が結合されているこのスライド部材12は、本実施形態に係る搬送台車1の本体ともなっているものであり、スライド部材12は、図6に示されているように、平面視でリップ付きチャンネル状のものであるため、このスライド部材12は、搬送台車1の裏面側のウエブ部12Aと、このウエブ部12Aにおける搬送台車1の幅方向両端側のフランジ部12Bと、これらのフランジ部12Bの先端部に形成されているリップ部12Cとからなる。
【0038】
これにより、図7に示されているように、スライド部材12の内部空間Sに、主輪2や内筒部材6、主輪用ブラケット8、外筒部材10等が収納されており、また、このスライド部材12にブリッジ部材13を介して取り付けられている電動モータ11は、外筒部材10に対して建材用昇降装置1の表面側に配置されているため、この電動モータ11の一部は、図4及び図6に示されているように、内部空間Sからスライド部材12の外部に露出している。このため、電動モータ11のメンテナンス作業等の作業を容易に行うことができる。
【0039】
図6に示されているように、スライド部材12と補強部材9の間には、副輪3やベース部材5、補強部材9等に対してスライド部材12を上下方向にスライド自在とするための案内手段となっているスライドレール14が配置され、このスライドレール14は、スライド部材12のフランジ部12Bに取り付けられた第1レール部材14Aと、補強部材9のフランジ部9Aに取り付けられた第2レール部材14Bと、これらの第1レール部材14Aと第2レール部材14Bの間に転動自在に介設されたボール14C等からなるものである。
【0040】
図4に示されているように、上向きとなっている電動モータ11の駆動軸11Aには駆動歯車15が取り付けられ、この駆動歯車15には、外筒部材10の上部の内部に高さ位置が不動となって回転自在に配置されている被動歯車16が噛合しており、この被動歯車16は、外筒部材10の内部に回転自在に挿入されている雄ねじ棒部材17の上端に結合されている。この雄ねじ棒部材17は、外筒部材10の内部に上方へ長く挿入されている内筒部材6の内部の下部まで達する長さ寸法を有しており、内筒部材6の内部には、高さ位置が不動となって固定配置された雌ねじ部材18が収納配置されているとともに、この雌ねじ部材18の内部に雄ねじ棒部材17が螺入挿通されている。
【0041】
このため、電動モータ11の駆動軸11Aが正回転すると、この正回転が、駆動歯車15、被動歯車16を介して雄ねじ棒部材17に伝達されることにより、この雌ねじ部材18が高さ位置が不動となって固定配置されている内筒部材6に対して外筒部材10が上動し、これにより、外筒部材10に結合されている電動モータ11や、外筒部材10にブリッジ部材13を介して結合されているスライド部材12も上動し、これらの上動は、内筒部材6の下端に連結部材7や主輪用ブラケット8を介して取り付けられている主輪2や、ベース部材5、及びこのベース部材5に副輪用ブラケット4を介して取り付けられている副輪3に対して行われる。このような上動が行われた状態は、図8及び図9に示されている。
【0042】
また、電動モータ11の駆動軸11Aが逆回転すると、この逆回転が上述と同様にして雄ねじ棒部材17に伝達されることにより、外筒部材10が下動し、このため、電動モータ11やスライド部材12も下動し、これらの下動は、主輪2や副輪3に対して行われる。
【0043】
図3に示されているように、スライド部材12の表面上部にはカバー部材20が取り付けれ、このカバー部材20で塞がれているスライド部材12の上部の内部空間には、電動モータ11を制御する制御装置21や、電動モータ11に電力を供給するバッテリー22が収納され、カバー部材20には、電源スイッチ23と充電端子24が設けられている。
【0044】
図2に示されているように、本実施形態に係る搬送台車1の本体ともなっているスライド部材12の裏面には、この搬送台車1によって搬送される建材を載置するための載置部材25が結合されている。上述したように主輪2と副輪3とに対して上下方向にスライド自在となっているスライド部材12に配置されているこの載置部材25は、水平の底面部25Aと、この底面部25Aにおけるスライド部材12側の端部から立ち上がった鉛直部25Bと、底面部25Aにおけるスライド部材12側とは反対側の端部から傾斜して上方へ延出している延出部25Cとからなる。鉛直部25Bには、少なくとも表面がスチール等の磁性材料で形成されている建材を吸着するための吸着手段となっている板状のマグネット26が取り付けられ、スライド部材12の裏面にも、載置部材25よりも上方において、吸着手段となっている板状のマグネット27が取り付けられている。
【0045】
図3に示されているように、本実施形態に係る搬送台車1が直立姿勢状態となっているときにおいて、主輪2の下端の高さ位置と、2個の副輪3の下端の高さ位置は、同じになっておらず、主輪2の下端の高さ位置に対してそれぞれの副輪3の下端の高さ位置は、上下寸法H分だけ高くなっている。このため、搬送台車1は、図11に示されているように、直立姿勢状態から傾斜姿勢状態となることにより、主輪2と、2個の副輪3のうち、傾いた側に配置されている1個の副輪3とが、床面等の走行面28に接触することになり、これらの主輪2を副輪3とが走行輪となって走行させることができるようになる。
【0046】
また、図3に示されているように、主輪2だけが走行面28に接触し、2個の副輪3が走行面28に接触していない直立姿勢状態に搬送台車1がなっているときであって、スライド部材12の下端面12Dが走行面28に接触していないときには、この搬送台車1は、主輪2の中心部を通る鉛直線Nを中心に回動自在となっている。このため、このときには、鉛直線Nを中心に搬送台車1を回動させることにより、搬送台車1を任意の方向に向けることができる。
【0047】
さらに、スライド部材12は、通常時において、電動モータ11の駆動を停止させる図示外のリミットスイッチ等の作動により、最下位置に達しており、この最下位置に達しているときにおけるスライド部材12の下端面12Dの高さ位置は、図3に示されているように、主輪2の下端の高さ位置と同じ位置又はこの高さ位置よりも低い位置となっている。このため、上述のように主輪2の下端の高さ位置に対してそれぞれの副輪3の下端の高さ位置が高くなっていても、通常時における搬送台車1は、スライド部材12の下端面12Dが走行面28に接地することによって自立するようになっており、これにより、スライド部材12の上端に設けた把持部材29を把持することにより、搬送台車1を収納場所等に運ぶことにより自立状態で収納等することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る搬送台車1では、図4に示されているように、載置部材25の底面部25Aの高さ位置が、スライド部材12の下端面12Dの高さ位置と同じ又は略同じになっている。このため、スライド部材12の下端面12Dにより搬送台車1を自立させるときには、スライド部材12の下端面12Dも走行面28に接地又は略接地することになり、これにより、搬送台車1の自立を一層有効に行わせることができる。
【0049】
さらに、載置部材25はスライド部材12の外面となっている裏面に結合されているため、載置部材25の底面部25Aの全体がスライド部材12から水平方向に露出していることになる。このため、搬送台車1の自立を、この底面部25Aの全体を利用してさらに一層有効に行わせることができる。
【0050】
なお、載置部材25をスライド部材12に対してビス等により取り付け、取り外し可能とするとともに、載置部材として、搬送台車1の幅方向における寸法や前後方向における寸法が異なる各種のものを予め用意しておき、搬送台車1によって搬送する建材の大きさや厚さ等に応じて、スライド部材12に取り付ける載置部材を交換できるようにしてもよい。
【0051】
本実施形態に係る搬送台車1により搬送される建材は、開き装置の開き戸となっている防火扉30であり、この防火扉30は、図12で示されている壁31の開口部31Aに配置されているドア枠32にドアヒンジ33で回動自在に取り付けられることにより、ドア枠32の内側の出入口を開閉する。ドアヒンジ33は、ドア枠32に結合されたドア枠側羽根板部材33Aと、防火扉30に結合された開き戸側羽根板部材33Bと、これらの羽根板33A,33Bのうち、いずれか一方に固定されたピン33Cとからなり、図12では、このピン33Cはドア枠側羽根板部材33Aに上向きに設けられている。
【0052】
また、本実施形態に係る搬送台車1の電動モータ11は、図10及び図12で示されている操作器35からの信号が入力する図3の制御装置21により駆動制御されるものとなっており、操作器35からの信号は、本実施形態では、無線信号として制御装置21に入力する。なお、操作器35と搬送台車1とを電気ケーブルで接続し、この電気ケーブルにより操作器35からの信号が制御装置21に入力するようにしてもよい。
【0053】
本実施形態に係る操作器35は、表面に、操作されるボタン等の操作部35Aが配置されていて、裏面に、操作器35を防火扉30に吸着させる吸着手段が設けられたものとなっており、この吸着手段は、本実施形態では、全体又は略全体が磁性材料のスチールで形成されている防火扉30の表面に磁力で吸着するマグネット36となっている。
【0054】
本実施形態に係る搬送台車1により防火扉30をドア枠32の配置場所まで搬送する作業を行うときには、はじめに載置部材25の底面部25Aに防火扉30を載置するとともに、防火扉30を前述した吸着手段となっている板状のマグネット26,27で吸着することにより、載置部材25に対して防火扉30を直立した不動状態とする。防火扉30を載置部材25に載置するためのこの作業を行うときには、操作器35の操作部35Aを操作することにより、電動モータ11を駆動させてスライド部材12を最下位置まで下降させることで本実施形態に係る搬送台車1を自立した直立姿勢状態としておき、これにより、この作業を容易に実施できるようにしておいてもよい。
【0055】
また、この作業を行う以前に、あるいは、この作業を行った後に、図10に示されているように、操作器35の裏面に設けられているマグネット36により、防火扉30の表面にこの操作器35を取り付ける。この防火扉30における操作器35の取付位置は、作業者37の左右の両手38,39によって握られる防火扉30の左右両端部のうち、一方の端部に近い位置としておく。
【0056】
次いで、作業者37は、操作器35の操作部35Aを操作することにより、電動モータ11を駆動させてスライド部材12を上動させ、この上昇により、図8及び図9に示されているように、載置部材25も上動して、防火扉30は上昇する。これにより、防火扉30の左右両端部を握っている作業者37の両手38,39により、搬送台車1を、主輪2だけが走行面28に接触した直立姿勢状態とする。この後に、作業者37は、防火扉30の左右両端部を握っている両手38,39による押し引き操作により、搬送台車1を、図3で示した主輪2の中心部を通る鉛直線Nを中心に回動させ、これにより、この搬送台車1の向きを、搬送台車1を走行させるべき向きとする。次いで、作業者37は、図10に示されているように、両手38,39により防火扉30を、搬送台車1を走行させる側へ傾けることにより、図11に示されているように、搬送台車1を、直立姿勢状態から、搬送台車1を走行させる側へ傾いた傾斜姿勢状態へ変更させる。これにより、主輪2と、この主輪2による走行方向両側に2個配置されている副輪3のうち、搬送台車1を走行させる側に配置されている副輪3とが、走行面28に接触することになる。
【0057】
この後に、作業者37は、両手38,39のうち、搬送台車1を走行させる側とは反対側の手(図11では、搬送台車1を左側へ走行させるため、図10で示されている右手38)によって防火扉30に押し力を付与することにより、搬送台車1を、主輪2と1個の副輪3により走行させる。このように搬送台車1を走行輪となっている主輪2と1個の副輪3により走行面28を走行させる際には、搬送台車1は、直立姿勢状態から、搬送台車1を走行させる方向となっている前側へ傾いた傾斜姿勢状態へ変更されているため、防火扉30の全体重心は、搬送台車1を走行させる方向である前側へ移動していることになる。このため、この重心移動により、作業者37は、両手38,39のうちの片手で防火扉30を押すことによる手動により、搬送台車1を軽快に走行させることができ、これにより、作業者37の負担を軽減して、防火扉30の搬送作業を容易に行えるようになる。
【0058】
なお、以上の作業とは異なり、作業者37が防火扉30の左右両端部を握った両手38,39により搬送台車1を直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更することを、搬送台車1を走行させる方向とは反対側の後側へ搬送台車1を傾けることによって行い、この後に、作業者37が、搬送台車1を走行させる側とは反対側の手による押し力を防火扉30に付与することにより、搬送台車1を走行させてもよい。これによると、作業者37の両手38,39のうち、防火扉30を押す手は、防火扉30を持ち上げる方向の成分を生じさせて、防火扉30を斜め上方へ押すことになるため、これによっても作業者37は、搬送台車1を手動により軽快に走行させることができ、これにより、作業者37の負担を軽減して、防火扉30の搬送作業を容易に行える。
【0059】
搬送台車1の走行により、防火扉30が設置される図12のドア枠32の配置場所まで防火扉30を運んだ後に、作業者37は、防火扉30の左右両端部を握った両手38,39により、搬送台車1を傾斜姿勢から直立姿勢状態に戻す。次いで、作業者37は、両手38,39のうち、防火扉30の表面にマグネット36で取り付けられている操作器35に近い位置にある手(図12では、右手38)の指38Aによって操作器35の操作部35Aを操作することにより、電動モータ11の駆動による載置部材25の上下動によって防火扉30を昇降動させ、これにより、防火扉30の高さ位置を、この防火扉30に取り付けられている開き戸側羽根板部材33Bがドア枠32に取り付けられているドア枠側羽根板部材33Aのピン33Cよりも高くなる高位置へ調整するための作業を行う。
【0060】
この後に、作業者37は、上述の指38Aによって操作器35の操作部35Aを操作することにより、電動モータ11の駆動によって載置部材25を徐々に下動させて、防火扉30も徐々に下降させ、これにより、開き戸側羽根板部材33Bに設けられているピン挿入孔にドア枠側羽根板部材33Aのピン33Cを挿入することにより、このピン33Cを開き戸側羽根板部材33Bの内部に挿入し、防火扉30をドア枠32にドアヒンジ33を中心に開閉自在に設置する。
【0061】
次いで作業者37は、指38Aによって操作器35の操作部35Aを操作することにより、電動モータ11の駆動によって載置部材25をさらに下動させ、これにより、載置部材25の底面部25Aから防火扉30を離脱させる。さらに、作業者37は手動によって搬送台車1を走行させることにより、この搬送台車1を防火扉30の設置場所から離れた所定の場所に移動させる。また、作業者37は、防火扉30の表面にマグネット36で取り付けられていた操作器35を取り外す作業を行い、これにより、搬送台車1を用いた全部の作業が終了する。
【0062】
以上説明した本実施形態に係る搬送台車1によると、この搬送台車1は主輪2と2個の副輪3による走行輪を備えているため、建材である防火扉30を、この防火扉30を設置すべき場所まで走行させて防火扉30を搬送することができるとともに、上述したように主輪2の回転中心軸2Aと副輪3の回転中心軸3Aとが平行になっていて、直立姿勢状態では、主輪2の下端の高さ位置よりも2個の副輪3の下端の高さ位置は高くなっているため、手動によって直立姿勢状態から傾斜姿勢状態とすることにより、主輪2と、2個の副輪3のうち、1個の副輪3とが走行面28に接することになる。このため、防火扉30を搬送するために、手動により直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更して、そのまま手動によって走行させる作業を行うと、前述したように搬送台車1の傾斜方向を、搬送台車1を走行させる方向となっている前側とした場合には、防火扉30の重心が走行方向である前側へ移動することによる重心移動により、手動によって搬送台車1を軽快に走行させることができる。また、搬送台車1の傾斜方向を、搬送台車1を走行させる方向とは反対側の後側とした場合には、搬送台車1を走行させるために防火扉30を押す手は、防火扉30を持ち上げる方向の成分を生じさせて、防火扉30を斜め上方へ押すことになるため、これによっても搬送台車1を手動により軽快に走行させることができ、これにより、いずれの場合でも、作業者の負担を軽減して防火扉30の搬送作業を容易に行えるようになる。
【0063】
また、主輪2の回転中心軸2Aの軸方向における主輪2の配置位置と副輪3の配置位置は、同じ位置又は略同じ位置となっているため、搬送台車1を手動により直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更して、主輪2と、2個の副輪3のうち、1個の副輪3とを走行面28に接触させることによって行う手動による走行作業を、搬送台車1の全体を、主輪2の回転中心軸2Aの軸方向に傾けることなく、容易に行うことができる。
【0064】
また、副輪3の個数は、主輪2による走行方向両側に配設された2個となっているため、主輪2による走行方向両側のうち、搬送台車1をどちらの側へ走行させる場合でもあっても、搬送台車1を手動により直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更して、主輪2と、2個の副輪3のうち、1個の副輪3とを走行面28に接触させることができるため、主輪2による走行方向両側のうちの任意の側への防火扉30の搬送作業を容易に行えるようになる。
【0065】
また、主輪2による走行方向における主輪2からそれぞれの副輪3までの距離は、同じ距離又は略同じ距離になっているため、主輪2と、2個の副輪3のうち、1個の副輪3とを走行面28に接触させて搬送台車1を走行させるときに、搬送台車1を手動によって直立姿勢状態から傾斜姿勢状態に変更させるための姿勢変更作業を、主輪2による走行方向両側について、同じ傾き角度又は略同じ傾き角度にして実施できることになり、このため、この作業を容易に行える。
【0066】
さらに、スライド部材12の下端面12Dが走行面28に接地していないで、主輪2だけが走行面28に接地している直立姿勢状態では、搬送台車1は、主輪2の中心部を通る鉛直線Nを中心に回動自在となっているため、この鉛直線Nを中心する回動作業を行うことにより、搬送台車1の向きを、この搬送台車1を走行させる側の向きに変更するための作業を容易に実施することができる。
【0067】
また、このように搬送台車1の向きを、この搬送台車1を走行させる側の向きに変更するための作業や、搬送台車1の直立姿勢状態を傾斜姿勢状態に変更する作業、さらに、防火扉30を搬送するために主輪2と1個の副輪3とにより搬送台車1を走行させるための作業は、載置部材25に載置された防火扉30の左右両端部を作業者37が手38,39で握って行うため、搬送台車1には、作業者37が手38,39で接触してこれらの作業を行うための手接触部を設ける必要がなく、このため、搬送台車1を、手接触部が設けられていない小型化された簡単な構造にすることができる。
【0068】
また、防火扉30を載置する載置部材25には、底面部25Aから立ち上がっていて、スライド部材12の外面となっている裏面に結合されている鉛直部25Bが設けられ、この鉛直部25Bと、スライド部材12の裏面におけるこの鉛直部25Bよりも上方の箇所には、防火扉30を吸着してこの防火扉30を載置部材25に対して不動状態の直立状態とするための吸着手段となっているマグネット26,27が設けられているため、防火扉30を搬送台車1の走行により搬送するときや、載置部材25の上下動により防火扉30を昇降動させるとき等において、防火扉30が転倒等することを防止でき、防火扉30の不動状態を確保してこれらの作業を一層確実に実施することができる。
【0069】
さらに、載置部材25を上下動させるために搬送台車1に配置されている電動モータ11は、操作器35からの信号が入力する制御装置21により駆動制御され、この操作器35は、この操作器35に設けられた吸着手段となっているマグネット36により防火扉30に取り付け、取り外し可能となっているため、操作器35を防火扉30にマグネット36で取り付けることにより、作業者37は、両手38,39のうち、片手38の指38Aによって操作器35の操作部35Aを操作することで載置部材25の上下動で防火扉30を昇降動させる作業を行えることになる。
【0070】
そして、この作業は、図12に示されているように、作業者37が防火扉30の近傍に立って行えるため、この作業を、作業者37は、防火扉30に取り付けられている操作器35を操作することによって載置部材25を徐々に下降させているときに、そのときどきの防火扉30の高さ位置を容易に確認しながら実施できることになる。これにより、前述したように、開き戸側羽根板部材33Bに設けられているピン挿入孔にドア枠側羽根板部材33Aのピン33Cを挿入することにより、防火扉30をドア枠32にドアヒンジ33を中心に開閉自在に設置するための作業を容易かつ短時間で実施できる。
【0071】
また、本実施形態の操作器35は、防火扉30の表面のうち、任意の箇所にマグネット36で取り付け可能となっているため、操作器35を取り付ける防火扉30の箇所を、図12に示されているように、防火扉30の左右両端部のうち、一方の端部の近傍箇所とすることにより、この図12から分かるように、防火扉30の左右両端部は、作業者37の両手38,39により握ることができる部分となっていることから、両手38,39により防火扉30の左右両端部を握りながら、片手38の指38Aにより操作器35の操作部35Aを操作することもでき、これにより、載置部材25の上下動による防火扉30の昇降動を、作業者37が両手38,39によって防火扉30の転倒等を一層有効に防止した状態で行える。
【0072】
また、本実施形態に係る操作器35の操作部35Aは、操作器35の表面に配置されており、マグネット36は、操作器35の裏面に設けられているため、作業者37は、マグネット36の影響を受けることなく、操作部35Aの操作を容易に行える。
【0073】
さらに、搬送台車1を走行させることにより、防火扉30をドア枠32が配置されている場所まで搬送する作業と、この場所において、操作器35の操作による載置部材25の上下動により防火扉30を昇降動させ、防火扉30を高位置から徐々に下降させることにより、ドアヒンジ33の開き戸側羽根板部材33Bに設けられているピン挿入孔にドア枠側羽根板部材33Aのピン33Cを挿入して、防火扉30をドア枠32にドアヒンジ33を中心に開閉自在に設置するための作業とを、作業者37が両手38,39のうち、少なくとも一方の手38によって行うことができるため、作業者37は、これらの作業を連続性が確保された一連の作業として容易に実施することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、ドアヒンジ33のピン33Cはドア枠側羽根板部材33Aに上向きに設けられているが、このピン33Cが開き戸側羽根板部材33Bに下向きに設けられている場合であっても、防火扉30をドア枠32にドアヒンジ33を中心に開閉自在に設置するための作業を、前述と同様にして容易かつ短時間で実施できる。
【0075】
図13は、別実施形態に係る搬送台車101の正面図であり、図14は、この搬送台車101の右側面図である。この搬送台車101の本体となっているスライド部材112は、図13に示されているように、前記実施形態の搬送台車1のスライド部材12よりも左右方向の幅寸法が大きくなっており、このため、スライド部材112の内部空間Sに、電動モータ111の全体と、この電動モータ111の左右両側に配置された2本の外筒部材110とが収納され、これらの外筒部材110は、これらの外筒部材110ごとに設けられた内筒部材106の外周に上下方向に摺動自在に嵌合されている。また、電動モータ111の駆動軸111Aに取り付けられた駆動歯車115には、それぞれの外筒部材110の上部の内部に高さ位置が不動となって回転自在に配置された被動歯車116が噛合し、これらの被動歯車116は、それぞれの外筒部材110の内部に回転自在に挿入されている雄ねじ棒部材117の上端に結合されている。内筒部材106の内部の下部まで達する長さ寸法を有しているこれらの雄ねじ棒部材117は、内筒部材106の内部に高さ位置が不動となって固定配置された雌ねじ部材118に螺入挿通されている。
【0076】
このため、この実施形態に係る搬送台車101でも、電動モータ111の駆動軸111Aの正逆回転は、駆動歯車115、被動歯車116を介して雄ねじ棒部材117に伝達され、これにより、内筒部材106に対してそれぞれの外筒部材110が上下動し、これにより、外筒部材110に結合されている電動モータ111や、外筒部材110に結合されているスライド部材112、このスライド部材112に結合されている載置部材125(図14を参照)は、主輪102と2個の副輪103に対して上下動する。
【0077】
この実施形態に係る搬送台車101では、電動モータ111の全体は、上述したように、搬送台車101の本体となっているスライド部材112の内部空間Sに収納されているため、この電動モータ111を予期しない外力等からを保護することができる。また、この実施形態のスライド部材112も、図6で示した前記実施形態のスライド部材12と同様に、平面視でリップ付きチャンネル状のものとなっているため、前方に向かって開口していて、内部空間Sを外部空間と連通させている開口部を有しており、このため、この開口部から電動モータ111についてのメンテナンス作業等の作業を容易に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば、防火扉を含む開き戸等の建材を、手動による走行により建材設置場所等まで搬送するために利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1,101 建材用手動走行式搬送台車
2,102 主輪
2A 主輪の回転中心軸
3,103 副輪
3A 副輪の回転中心軸
12,112 スライド部材
12D スライド部材の下端面
25,125 載置部材
25A 載置部材の底面部
25B 載置部材の鉛直部
26 載置部材の鉛直部に取り付けられた吸着手段であるマグネット
27 スライド部材の外面に取り付けられた吸着手段であるマグネット
28 走行面
30 建材である防火扉
37 作業者
38,39 作業者の手
H 主輪の下端部の高さ位置と副輪の下端部の高さ位置の上下方向のずれ寸法
N 主輪の中心部を通る鉛直線
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11
図12
図13
図14