(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
F01D 25/18 20060101AFI20240229BHJP
F01D 25/16 20060101ALI20240229BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20240229BHJP
F02K 3/04 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F01D25/18 A
F01D25/16 E
F02C7/00 F
F02K3/04
(21)【出願番号】P 2020023236
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前里 晃
(72)【発明者】
【氏名】藤井 崇史
(72)【発明者】
【氏名】大▲桑▼ 達也
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0025033(US,A1)
【文献】特開2014-163236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/18
F01D 25/16
F02C 7/00
F02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油を貯留するオイルタンクと、
圧縮機、燃焼器、及び、タービンを収容する円筒状の外部ケースと、
複数のファンブレードを有し、前記外部ケースに収容されたファンと、を備え、
前記オイルタンクは、前記外部ケースの外周面に沿って、前記外部ケースを囲むように配置されて
おり、かつ、前記ファンに対応する軸方向位置に配置されている、ガスタービンエンジン。
【請求項2】
前記オイルタンクは前記外部ケースの周方向全周にわたって配置されている、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
前記オイルタンクは、潤滑油が密閉され伸縮可能な液室と、前記液室に隣接する空気室とを内部に有し、前記空気室の圧力を高くすることにより前記液室の容積が縮小して前記液室内の潤滑油が排出されるように構成されている、
請求項1又は2に記載のガスタービンエンジン。
【請求項4】
前記液室は前記オイルタンクの内部で環状に形成されている、
請求項3に記載のガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機等の動力源として用いられるガスタービンエンジンは、圧縮機、燃焼器、及び、タービンを収容する円筒状のケース(外部ケース)を備えており、外部ケースの周りには種々の補機が取り付けられている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、航空機用のガスタービンエンジンであれば、機体搭載時の空気抵抗を抑えるために前面投影面積を極力小さくし、補機も含めた全体の小径化が望まれている。しかし、現状の航空機用ガスタービンエンジンでは、ケーシングの外周面に設けられる補機が大きいために、ガスタービンエンジンの半径方向外方に多く突出し前面投影面積が大きくなる。
【0005】
そこで、本発明は、小径化が可能なガスタービンエンジンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るガスタービンエンジンは、潤滑油を貯留するオイルタンクと、圧縮機、燃焼器、及び、タービンを収容する円筒状の外部ケースと、を備え、前記オイルタンクは、前記外部ケースの外周面に沿って、前記外部ケースを囲むように配置されている。
【0007】
この構成では、オイルタンクが半径方向外方に大きく突出するのを防ぐことができる。したがって、ガスタービンエンジンの前面投影面積を低減することができ、ガスタービンエンジンの小径化が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小径化が可能なガスタービンエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ガスタービンエンジンの概略図である。
【
図2】
図2は、ガスタービンエンジンの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るガスタービンエンジン(以下、単に「エンジン」と称する)100について説明する。本実施形態のエンジン100は、航空機用の2軸式のターボファンエンジンである。ただし、エンジン100の形式及び用途は特に限定されない。
図1は、エンジン100の概略図である。以下では、
図1の紙面左方を「前方」と称し、
図1の紙面右方を「後方」と称する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係るエンジン100は、ファン10と、圧縮機20と、燃焼器30と、タービン40と、外部ケース50と、潤滑装置60と、オイルタンク70と、を備えている。以下、これらの構成要素について順に説明する。
【0012】
ファン10は、複数のファンブレード11を有しており、回転することで取り込んだ空気を圧縮機20に供給するとともに、圧縮機20の半径方向外側に位置するバイパス流路52に供給する。ファンブレード11が破損すると、その一部が外部ケース50を突き抜けてエンジン100の外部に飛散するおそれがある。そのため、エンジン100にはファンブレード11の飛散防止対策(コンテインメント対策)を施す必要がある。ファンブレード11の飛散防止対策については後述する。
【0013】
圧縮機20は、ファン10から流入した空気を圧縮する部分である。圧縮機20は、前方から取り入れた空気を圧縮して後方に送り出す軸流式であってもよく、前方から取り入れた空気を圧縮して半径方向外方に送り出す遠心式であってもよく、これらを組み合わせてもよい。圧縮機20で圧縮された空気は、圧縮機20の下流に位置する燃焼器30に供給される。
【0014】
燃焼器30は、圧縮機20で圧縮された空気に燃料を噴霧して燃焼させる部分である。エンジン100で使用する燃料は特に限定されず、燃焼器30の形式も特に限定されない。燃焼器30では燃料が燃焼することで高温高圧の燃焼ガスが発生し、この燃焼ガスは燃焼器30の下流に位置するタービン40に供給される。
【0015】
タービン40は、燃焼器30で発生した燃焼ガスのエネルギによって回転駆動される部分である。タービン40は、前方から燃焼ガスが流入して後方に向かって流れる軸流式であってもよく、前方から燃焼ガスが流入して半径方向外方に向かって流れる遠心式であってもよく、これらを組み合わせてもよい。本実施形態のタービン40は、高圧タービン41と、低圧タービン42とを有している。
【0016】
高圧タービン41は、外部シャフト43を介して圧縮機20に連結されている。そのため、上記の燃焼ガスによって高圧タービン41が回転駆動されると、これに伴って圧縮機20が回転する。外部シャフト43は、第1ベアリング44と第2ベアリング45に回転可能に支持されている。
【0017】
低圧タービン42は、内部シャフト46を介してファン10に連結されている。そのため、上記の燃焼ガスによって低圧タービン42が回転駆動されると、これに伴ってファン10が回転する。内部シャフト46は、外部シャフト43の内部を貫通し、外部シャフト43とは独立して回転する。内部シャフト46は、第3ベアリング47と第4ベアリング48に回転可能に支持されている。
【0018】
外部ケース50は、ファン10、圧縮機20、燃焼器30、及び、タービン40を収容する円筒状のケースである。外部ケース50の内側には、外部ケース50と軸心が一致する円筒状の内部ケース51が設けられている。内部ケース51は、ファン10、圧縮機20、燃焼器30、及び、タービン40のうちファン10以外の部分を収容している。外部ケース50と内部ケース51の間には、ファン10が取り込んだ空気が流れる環状のバイパス流路52が形成されている。
【0019】
潤滑装置60は、潤滑対象に潤滑油を供給する装置である。本実施形態の潤滑装置60は非循環式であって、圧縮機20から抽気した圧縮空気に潤滑油を混合したエアオイル、又は、オイルミストを、潤滑対象である第1ベアリング44、第2ベアリング45、第3ベアリング47、及び、第4ベアリング48に噴射する。ただし、潤滑装置60は、使用した潤滑油を回収して再利用する循環式であってもよい。
【0020】
オイルタンク70は、潤滑油を貯留する部分である。オイルタンク70は、外部ケース50の外周面に設けられており、ファン10に対応する軸方向位置に配置されている。つまり、オイルタンク70はファン10と軸方向位置が重複している。本実施形態ではファン10の軸方向範囲(軸方向における前端から後端までの範囲)の全てが、オイルタンク70の軸方向範囲に含まれている。ただし、ファン10の軸方向範囲の一部が、オイルタンク70の軸方向範囲と重複していてもよい。
【0021】
このように、本実施形態のオイルタンク70は、ファン10に対応する軸方向位置に配置されているため、ファンブレード11が破損したときに飛散したファンブレード11をブロックすることができる。つまり、本実施形態に係るエンジン100では、ファンブレード11が外部ケース50の外方へ飛び出すことを防止するためにオイルタンク70をファン10に対応する軸方向位置に配置している。その結果、ファンブレード11の飛散防止用として一般的に用いられているコンテイメントリングを省略することができる。したがって、コンテイメント性を確保しつつ、エンジン100を軽量化することができる。
【0022】
図2は、エンジン100の概略正面図である。
図2に示すように、オイルタンク70は、外部ケース50の外周面に沿って、外部ケース50を囲むように配置されている。オイルタンク70をこのように配置することにより、エンジン100の正面から見て(軸方向から見て)、オイルタンク70が半径方向外方に大きく突出するのを防ぐことができる。その結果、エンジン100の小径化が可能となる。オイルタンク70は、外部ケース50の周方向において、例えば180度以上の領域に配置されていれば、上記の効果を得ることができる。
【0023】
ただし、本実施形態では、オイルタンク70は外部ケース50の周方向全周にわたって環状に配置されている。オイルタンク70をこのように配置することにより、ファンブレード11の飛散を確実に防止することができる。なお、本実施形態のオイルタンク70は一体に形成されているが、複数の円弧状のタンクを周方向に連結して形成されていてもよい。
【0024】
また、オイルタンク70は、軸方向から見たとき半径方向の厚みXが周方向において一定である。つまり、軸方向から見たとき、オイルタンク70の半径方向の厚みXは周方向位置にかかわらず一定である。このように、軸方向から見たときのオイルタンク70の半径方向の厚みXを周方向において一定とすれば、オイルタンク70が半径方向に大きく突出することはないため、エンジン100をより一層小径化することができる。
【0025】
さらに、本実施形態ではオイルタンク70の外径Yは、外部ケース50の最大外径Zよりも小さい。つまり、軸方向から見たとき、オイルタンク70全体が、外部ケース50の外縁で形成される範囲(以下、「投影範囲」と称する)に含まれている。また、本実施形態では軸方向から見たとき、潤滑装置60も外部ケース50の投影範囲に含まれている。軸方向から見たとき、オイルタンク70及び潤滑装置60の両方が外部ケース50の投影範囲に含まれていなくても良いが、オイルタンク70及び潤滑装置60の両方又は一方が外部ケース50の投影範囲に含まれていれば、エンジン100を一層小径化することができる。なお、外部ケース50にフランジ等が形成されている場合は、フランジ等を含む外部ケース50全体の外縁によって形成される範囲が投影範囲となる。
【0026】
また、オイルタンク70は、潤滑油が密閉され伸縮可能な液室71と、液室71に隣接する空気室72とを内部に有する密閉式膨張タンクである。より詳細には、オイルタンク70は、液室71がゴム製で袋状に形成されたブラダー式である。ただし、オイルタンク70は、内部がダイヤフラムによって液室71と空気室72に仕切られたダイヤフラム式であってもよい。
【0027】
本実施形態では、オイルタンク70の空気室72に圧縮機20から抽出した圧縮空気が供給される。これにより、空気室72の圧力が高くなり、液室71の容積が縮小して液室71内の潤滑油が排出される。なお、オイルタンク70の排出口は、いずれの周方向位置に設けてもよい。また、オイルタンク70は、排出口を1つ有していてもよく、複数有していてもよい。
【0028】
ここで、例えば、エンジン100の姿勢が大きく変化する場合、仮に、オイルタンク70が単純な容器であり、排出口が底面付近にある場合、エンジン100の姿勢が変化して上下が逆になると、オイルタンク70から潤滑油を排出することができなくなる。ところが、本実施形態のように、オイルタンク70が密閉式膨張タンクであれば、エンジン100の姿勢にかかわらず潤滑油を排出することができる。
【0029】
また、オイルタンク70の液室71は、オイルタンク70の内部で環状に形成されている。液室71を環状に形成することにより、液室71内の潤滑油の残量が減ったとしても、液室71の形状が維持されやすい。その結果、液室71内の潤滑油を残さず排出することができる。さらに、本実施形態の液室71及び空気室72は、それぞれ1つの部屋で形成されている。ただし、液室71はそれぞれ互いに独立した複数の部屋で形成されていてもよく、空気室72もそれぞれ互いに独立した複数の部屋で形成されていてもよい。
【0030】
以上のとおり、本実施形態に係るガスタービンエンジンは、潤滑油を貯留するオイルタンクと、圧縮機、燃焼器、及び、タービンを収容する円筒状の外部ケースと、を備え、前記オイルタンクは、前記外部ケースの外周面に沿って、前記外部ケースを囲むように配置されている。
【0031】
本実施形態に係るガスタービンエンジンは、このように構成されているため、オイルタンクが半径方向外方に大きく突出するのを防ぐことができる結果、ガスタービンエンジンの小径化が可能となる。
【0032】
また、本実施形態に係るガスタービンエンジンでは、前記オイルタンクは前記外部ケースの周方向全周にわたって配置されている。
【0033】
本実施形態に係るガスタービンエンジンは、このように構成されているため、必要な潤滑油量に対して、オイルタンクの半径方向の突出量を低減することができる。また、タービンブレードが設けられている場合は、タービンブレードの飛散を確実に防止することができる。
【0034】
また、本実施形態に係るガスタービンエンジンでは、複数のファンブレードを有し、前記外部ケースに収容されたファンを備え、前記オイルタンクは、前記ファンに対応する軸方向位置に配置されている。
【0035】
本実施形態に係るガスタービンエンジンは、このように構成されているため、ファンブレードの飛散防止用のコンテイメントリングを省略することができる結果、コンテイメント性を確保しつつ、ガスタービンエンジンを軽量化できる。
【0036】
また、本実施形態に係るガスタービンエンジンでは、前記オイルタンクは、潤滑油が密閉され伸縮可能な液室と、前記液室に隣接する空気室とを内部に有し、前記空気室の圧力を高くすることにより前記液室の容積が縮小して前記液室内の潤滑油が排出されるように構成されている。
【0037】
本実施形態に係るガスタービンエンジンは、このように構成されているため、ガスタービンエンジンの姿勢にかかわらず潤滑油を排出することができる。
【0038】
また、本実施形態に係るガスタービンエンジンでは、前記液室はオイルタンクの内部で環状に形成されている。
【0039】
本実施形態に係るガスタービンエンジンは、このように構成されているため、液室内の潤滑油の残量が減ったとしても、液室の形状が維持されやすい結果、液室内の潤滑油を残さず排出することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 ファン
11 ファンブレード
20 圧縮機
30 燃焼器
40 タービン
44 第1ベアリング(潤滑対象)
45 第2ベアリング(潤滑対象)
47 第3ベアリング(潤滑対象)
48 第4ベアリング(潤滑対象)
50 外部ケース
70 オイルタンク
71 液室
72 空気室
100 ガスタービンエンジン(エンジン)