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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/16 20060101AFI20240229BHJP
   F02C 7/06 20060101ALI20240229BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240229BHJP
   F16C 23/06 20060101ALI20240229BHJP
   F16C 27/06 20060101ALI20240229BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20240229BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240229BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20240229BHJP
   F16C 33/32 20060101ALI20240229BHJP
   F16C 33/34 20060101ALI20240229BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20240229BHJP
   F16N 7/32 20060101ALI20240229BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F01D25/16 B
F02C7/06 Z
F01D25/00 F
F16C23/06
F16C27/06 B
F16C35/077
F16C19/06
F16C33/66 Z
F16C33/32
F16C33/34
F16C33/58
F16N7/32 B
F16N7/38 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020023237
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127733
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大▲桑▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 崇史
(72)【発明者】
【氏名】新井 篤典
(72)【発明者】
【氏名】廣田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 敦生
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/148890(WO,A1)
【文献】特開平05-280532(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0010648(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/16
F02C 7/06
F01D 25/00
F16C 23/06
F16C 27/06
F16C 35/077
F16C 19/06
F16C 33/66
F16C 33/32
F16C 33/34
F16C 33/58
F16N 7/32
F16N 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り入れた空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された空気に燃料を噴霧して燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器で発生した燃焼ガスのエネルギによって回転駆動されるタービンと、
前記圧縮機と前記タービンを連結する回転シャフトと、
インナーレース、アウターレース、及び、ボールを有する、ケージレスのボールベアリングであって、前記回転シャフトのタービン側の部分にインナーレースが固定されたリアベアリングと、
前記リアベアリングが取り付けられるハウジングと、
前記リアベアリングと前記ハウジングの間に介在し、前記ハウジングに固定されたリアベアリング保持部材であって、前記リアベアリングのアウターレースを当該リアベアリング保持部材に対して軸方向に移動可能に保持することにより、前記リアベアリングのアウターレースを前記ハウジングに対して軸方向に移動可能に保持するリアベアリング保持部材と、を備え
前記リアベアリング保持部材は、前記ハウジングよりも半径方向内側に位置し、半径方向に弾性変形可能に形成されているガスタービンエンジン。
【請求項2】
インナーレース、アウターレース、及び、ボールを有し、インナーレースが前記回転シャフトの圧縮機側の部分に固定され、アウターレースが前記ハウジングに対して軸方向に移動不能に前記ハウジングに固定されたフロントベアリングを備えている、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
前記リアベアリング保持部材は、前記リアベアリングが前記ハウジングに対して半径方向に移動できるように前記リアベアリングのアウターレースを保持している、請求項1又は2に記載のガスタービンエンジン。
【請求項4】
前記リアベアリング保持部材は、前記リアベアリングのアウターレースを保持する部分が前記ハウジングに対して半径方向に減衰しながら移動できるように構成されている、請求項3に記載のガスタービンエンジン。
【請求項5】
前記リアベアリング保持部材は、前記ハウジングに対して軸方向及び半径方向に弾性変形可能な弾性部材を有し、当該弾性部材を介して前記リアベアリングを保持している、請求項3に記載のガスタービンエンジン。
【請求項6】
前記リアベアリングは、インナーレース、アウターレース、及び、ボールがセラミックス製であるセラミックベアリング、又は、インナーレース、及び、アウターレースが金属製であり、ボールがセラミックス製であるハイブリッドベアリングである、請求項1乃至5のうちいずれか一の項に記載のガスタービンエンジン。
【請求項7】
前記リアベアリングに潤滑油を噴射する非循環式の潤滑装置を備えている、請求項1乃至6のうちいずれか一の項に記載のガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、圧縮機とタービンを連結する回転シャフトを備えている。回転シャフトのタービン側の部分には、回転シャフトを受けるベアリング(リアベアリング)が取り付けられている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-2376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リアベアリングは、燃焼ガスが近くを通過するため高温になりやすく、構成品のうち特にボールやローラなどの転動体を保持するケージが焼き付きやすい。そのため、リアベアリングにケージレスのベアリングを採用することが考えられる。ただし、転動体がローラであるローラベアリングではケージを省略することは構造上不可能であり、ケージレスのベアリングは必然的にボールベアリングとなる。
【0005】
ここで、リアベアリングのアウターレースが固定されるハウジングは、インナーレースが固定される回転シャフトよりも熱伸びが大きい。そのため、ガスタービンエンジンの運転が始まるとアウターレースとインナーレースに軸方向の位置ずれが生じてしまう。そして、ボールベアリングをリアベアリングに採用した場合には、この位置ずれを吸収できないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、焼付きが生じにくいケージレスのボールベアリングをリアベアリングに採用可能なガスタービンエンジンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るガスタービンエンジンは、取り入れた空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気に燃料を噴霧して燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器で発生した燃焼ガスのエネルギによって回転駆動されるタービンと、前記圧縮機と前記タービンを連結する回転シャフトと、インナーレース、アウターレース、及び、ボールを有する、ケージレスのボールベアリングであって、前記回転シャフトのタービン側の部分にインナーレースが固定されたリアベアリングと、前記リアベアリングが取り付けられるハウジングと、前記リアベアリングと前記ハウジングの間に介在し、前記リアベアリングのアウターレースを前記ハウジングに対して軸方向に移動可能に保持するリアベアリング保持部材と、を備えている。
【0008】
この構成では、リアベアリングのアウターレースが、ハウジングに対して軸方向に移動可能に保持される。そのため、熱伸びによってハウジングと回転シャフトに軸方向の位置ずれが発生したとしても、リアベアリングにおいてアウターレースとインナーレースに大きな位置ずれは生じない。よって、上記の構成によれば、ケージレスのボールベアリングをリアベアリングに採用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、焼付きが生じにくいケージレスのボールベアリングをリアベアリングに採用可能なガスタービンエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ガスタービンエンジンの概略図である。
図2図2は、フロントベアリング及びその周辺を軸方向から見た図である。
図3図3は、リアベアリング及びその周辺を軸方向から見た図である。
図4図4は、変形例におけるリアベアリング及びその周辺を軸方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係るガスタービンエンジン(以下、単に「エンジン」と称する)100について説明する。図1は、エンジン100の概略図である。なお、以下では、図1の紙面左方を「前方」と称し、図1の紙面右方を「後方」と称する。
【0012】
本実施形態のエンジン100は前方から空気を取り込んで、後方に燃焼ガスを排出する。エンジン100は、1軸式のガスタービンエンジンであってもよく、2軸式のガスタービンエンジンであってもよい。図1に示すように、エンジン100は、圧縮機10と、燃焼器11と、タービン12と、回転シャフト13と、フロントベアリング14と、リアベアリング15と、ハウジング16と、潤滑装置17と、リアベアリング保持部材18と、を備えている。これらの構成要素について順に説明する。
【0013】
圧縮機10は、取り入れた空気を圧縮する部分である。圧縮機10は、前方から取り入れた空気を圧縮して後方に送り出す軸流式であってもよく、圧縮した空気を半径方向外方に送り出す遠心式であってもよく、これらを組み合わせてもよい。圧縮機10で圧縮された空気は、圧縮機10の下流に位置する燃焼器11に供給される。
【0014】
燃焼器11は、圧縮機10で圧縮された空気に燃料を噴霧して燃焼させる部分である。エンジン100で使用する燃料は特に限定されず、燃焼器11の形式も特に限定されない。燃焼器11では燃料が燃焼することで高温高圧の燃焼ガスが発生し、この燃焼ガスは燃焼器11の下流に位置するタービン12に供給される。
【0015】
タービン12は、燃焼器11で発生した燃焼ガスのエネルギによって回転駆動される。タービン12は、前方から燃焼ガスが流入して後方に向かって流れる軸流式であってもよく、燃焼ガスが半径方向外方に向かって流れる遠心式であってもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0016】
回転シャフト13は、圧縮機10とタービン12を連結する部材である。回転シャフト13はエンジン100の軸方向(前後方向)に延びている。本実施形態の回転シャフト13は一体に形成されているが、複数のシャフトを連結して形成されていてもよい。
【0017】
フロントベアリング14は、回転シャフト13の圧縮機10側の部分に取り付けられたベアリングである。本実施形態のフロントベアリング14は、圧縮機10よりも前方に位置している。ただし、フロントベアリング14の軸方向位置は、圧縮機10の軸方向位置と重複していてもよい。つまり、フロントベアリング14は圧縮機10の半径方向内側に位置していてもよい。空気の流れを基準とすると、フロントベアリング14は燃焼器11よりも上流側の部分の周辺に位置し、フロントベアリング14の周囲には圧縮機10が取り入れた空気が流れている。そのため、フロントベアリング14は、周囲に燃焼ガスが流れる後述のリアベアリング15に比べて高温になりにくい。
【0018】
図2は、フロントベアリング14及びその周辺を軸方向から見た図である。図2に示すように、フロントベアリング14は、インナーレース27、アウターレース28、及び、ボール29を有し、内部でボール29を保持するケージを有しないケージレスのボールベアリングである。なお、フロントベアリング14は、ケージを有していてもよく、ローラベアリングであってもよい。ただし、ローラベアリングではケージを省略することは構造上不可能であり、ケージレスのベアリングは必然的にボールベアリングとなる。
【0019】
さらに、本実施形態のフロントベアリング14は、インナーレース27、アウターレース28、及び、ボール29がセラミックス製であるセラミックベアリングであるか、又は、インナーレース27、及び、アウターレース28が金属製であり、ボール29がセラミックス製であるハイブリッドベアリングである。ただし、インナーレース27、アウターレース28、及び、ボール29の全てが金属製であってもよい。
【0020】
フロントベアリング14は、インナーレース27が回転シャフト13に固定されており、アウターレース28がハウジング16(フロントハウジング23)に固定されている。そのため、フロントベアリング14は、回転シャフト13及びハウジング16に対して、軸方向に移動することができない。つまり、回転シャフト13とハウジング16は、フロントベアリング14に対応する部分が基準点となり、当該基準点において軸方向の位置ずれは生じない。
【0021】
リアベアリング15は、回転シャフト13のタービン12側の部分に取り付けられたベアリングである。図1に示すように、本実施形態のリアベアリング15は、タービン12よりも後方に位置している。ただし、リアベアリング15の軸方向位置は、タービン12の軸方向位置と重複していてもよい。つまり、リアベアリング15はタービン12の半径方向内側に位置していてもよい。燃焼ガスの流れを基準とすると、リアベアリング15は燃焼器11よりも下流側の部分の周辺に位置し、リアベアリング15の周囲には燃焼ガスが流れている。そのため、リアベアリング15は高温になりやすい。
【0022】
図3は、リアベアリング15及びその周辺を軸方向から見た図である。図3に示すように、リアベアリング15は、インナーレース31、アウターレース32、及び、ボール33を有し、ボール33を保持するケージを有しないケージレスのボールベアリングである。ケージを省略することで、ケージの焼き付きがなくなり、リアベアリング15全体としての焼き付きを抑制することができる。
【0023】
さらに、本実施形態のリアベアリング15は、インナーレース31、アウターレース32、及び、ボール33がセラミックス製であるセラミックベアリングであるか、又は、インナーレース31、及び、アウターレース32が金属製であり、ボール33がセラミックス製であるハイブリッドベアリングである。なお、インナーレース31、アウターレース32、及び、ボール33の全てが金属性であってもよい。ただし、リアベアリング15をセラミックベアリング又はハイブリッドベアリングとすることで、リアベアリング15の焼き付きをより一層抑制することができる。
【0024】
なお、本実施形態に係るエンジン100では、フロントベアリング14及びリアベアリング15によって回転シャフト13を支持しているが、エンジン100はこれらのベアリングに加えて回転シャフト13を支持する別のベアリングを備えていてもよい。つまり、エンジン100は、3つ以上のベアリングを備えていてもよい。
【0025】
ハウジング16は、図1に示すように、エンジン100の外郭を形成するアウターハウジング21と、アウターハウジング21の内側に位置するインナーハウジング22と、を有している。アウターハウジング21及びインナーハウジング22は、空気及び燃焼ガスの流路を形成している。さらに、インナーハウジング22は、圧縮機10よりも前方に位置する中空状のフロントハウジング23と、タービン12よりも後方に位置する中空状のリアハウジング24を有している。なお、アウターハウジング21とインナーハウジング22は、それらの間で半径方向に延びる支柱又は静翼によって連結されている。
【0026】
また、ハウジング16の材料と回転シャフト13の材料は異なる。そのため、ハウジング16と回転シャフト13は熱膨張率が異なり、ハウジング16と回転シャフト13とでは熱伸びによる軸方向寸法の変化量が異なる。そのため、エンジン100が始動すると回転シャフト13とハウジング16に軸方向の位置ずれが生じる。つまり、エンジン100の運転前において回転シャフト13とハウジング16の互いに同じ軸方向位置に位置していた部分が、エンジン100の運転後において互いに異なる軸方向位置に位置することになる。上記の位置ずれは、基準点であるフロントベアリング14に対応する部分から離れるに従って大きくなる。なお、ハウジング16と回転シャフト13の材料が同じだとしても、両者の温度が異なれば、熱伸びによる軸方向の位置ずれは生じる。
【0027】
潤滑装置17は、フロントベアリング14及びリアベアリング15に潤滑油を供給する装置である。本実施形態の潤滑装置17は、フロントベアリング14及びリアベアリング15に使い捨ての潤滑油を噴射する非循環式の潤滑装置である。具体的には、潤滑装置17は、圧縮機10から抽気した圧縮空気に潤滑油を混合して、フロントベアリング14及びリアベアリング15に噴射する。なお、潤滑装置17は、圧縮空気と混合せずに潤滑油を噴射してもよく、使用した潤滑油を回収して再利用する循環式であってもよい。
【0028】
本実施形態の潤滑装置17は潤滑油を循環させる機構を設ける必要がないため安価に製造することができる一方、循環式の潤滑装置に比べて各ベアリング14、15に供給できる潤滑油の量は少ない。そのため、本実施形態では潤滑油によって各ベアリング14、15を冷却する冷却能力は限られており、特に温度が高くなるリアベアリング15では焼き付きが生じやすくなる。ただし、上記のとおり、本実施形態のリアベアリング15として、ハイブリッドベアリング、かつ、ケージレスのボールベアリングを採用することで、リアベアリング15の焼き付きを抑制している。ただし、ボールベアリングはローラベアリングに比べてインナーレースとアウターレースの軸方向の位置ずれに起因して破損が生じやすいという問題がある。
【0029】
また、リアベアリング15に供給される潤滑油の量が少ないと、リアベアリング15の半径方向における振動減衰効果が得られないという問題も生じうる。つまり、リアベアリング15に十分な量の潤滑油が共有される場合、リアベアリング15とハウジング16の間に潤滑油が侵入し、潤滑油がスクイーズフィルムダンパとして機能するが、リアベアリング15に供給される潤滑油の量が少ないとスクイーズフィルムダンパの効果が期待できない。これらの問題を解決すべく、本実施形態に係るエンジン100は、リアベアリング保持部材18を備えている。
【0030】
リアベアリング保持部材18は、リアベアリング15とハウジング16の間に介在し、リアベアリング15を保持する部材である。本実施形態のリアベアリング保持部材18は、金属製の板材で形成されている。図3に示すように、リアベアリング保持部材18は、軸方向から見て多角形である筒状の形状を有している。リアベアリング保持部材18はハウジング16に内接しており、リアベアリング15に外接している。つまり、リアベアリング保持部材18の多角形の頂点にあたる部分はハウジング16に接触しており、隣接する頂点の中間に位置する部分がリアベアリング15のアウターレース32に接触している。
【0031】
リアベアリング保持部材18は、ハウジング16に固定されている。また、リアベアリング保持部材18は、リアベアリング15のアウターレース32を保持している。より具体的には、リアベアリング保持部材18は、リアベアリング15のアウターレース28を軸方向に摺動可能に保持している。そのため、熱伸びによってハウジング16と回転シャフト13に軸方向の位置ずれが発生したとしても、リアベアリング15のアウターレース32はハウジング16に対して軸方向に移動し、リアベアリング15のアウターレース32とインナーレース31に大きな位置ずれは生じない。これにより、リアベアリング15の破損を回避することができる。
【0032】
また、リアベアリング保持部材18は弾性変形し、ハウジング16との摩擦等により、リアベアリング15を保持する部分(リアベアリング15と接触する部分)がハウジング16に対して半径方向に減衰しながら移動する。すなわち、リアベアリング保持部材18は、リアベアリング15をハウジング16に対して半径方向に減衰させながら移動可能に保持する。したがって、リアベアリング保持部材18は、リアベアリング15の半径方向における振動を減衰させるダンパとして機能する。
【0033】
なお、リアベアリング保持部材18は、図3に示す構成に限定されない。例えば、リアベアリング保持部材18は、図4に示すような構成であってもよい。図4は、変形例におけるリアベアリング保持部材18及びその周辺を軸方向から見た図である。変形例におけるリアベアリング保持部材18は、複数の弾性部材34を有している。各弾性部材34は、いわゆるコイルスプリングであって、リアベアリング15の周方向に等間隔で配置されている。各弾性部材34はリアベアリング15とハウジング16の間に位置し、両端部がそれぞれリアベアリング15のアウターレース32とハウジング16に固定されている。つまり、各弾性部材34は、リアベアリング15のアウターレース32とハウジング16を連結している。
【0034】
また、弾性部材34は、リアベアリング15の軸方向及び半径方向に弾性変形可能に形成されている。そのため、弾性部材34のリアベアリング15に連結された部分は、ハウジング16に対して軸方向に移動可能である。ただし、この構成は、図3に示す構成に比べて半径方向の振動減衰効果が小さいため、振動減衰効果の観点からは図3に示す構成の方が望ましい。さらに、リアベアリング保持部材18は、図3及び図4に示す構成以外の構成を備えていてもよい。例えば、リアベアリング15の軸方向に弾性変形する部材と半径方向に弾性変形する部材を組み合わせて、リアベアリング保持部材18を構成してもよい。
【0035】
以上のとおり、本実施形態に係るガスタービンエンジンは、取り入れた空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気に燃料を噴霧して燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器で発生した燃焼ガスのエネルギによって回転駆動されるタービンと、前記圧縮機と前記タービンを連結する回転シャフトと、インナーレース、アウターレース、及び、ボールを有する、ケージレスのボールベアリングであって、前記回転シャフトのタービン側の部分にインナーレースが固定されたリアベアリングと、前記リアベアリングが取り付けられるハウジングと、前記リアベアリングと前記ハウジングの間に介在し、前記リアベアリングのアウターレースを前記ハウジングに対して軸方向に移動可能に保持するリアベアリング保持部材と、を備えている。
【0036】
このように、本実施形態に係るガスタービンエンジンでは、リアベアリングのアウターレースが、ハウジングに対して軸方向に移動可能に保持されている。そのため、熱伸びによってハウジングと回転シャフトに軸方向の位置ずれが発生したとしても、リアベアリングにおいてアウターレースとインナーレースに大きな位置ずれは生じず、リアベアリングの破損を回避することができる。よって、本実施形態に係るガスタービンエンジンによれば、焼付きが生じにくいケージレスのボールベアリングをリアベアリングに採用することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るガスタービンエンジンは、インナーレース、アウターレース、及び、ボールを有し、インナーレースが前記回転シャフトの圧縮機側の部分に固定され、アウターレースが前記ハウジングに対して軸方向に移動不能に前記ハウジングに固定されたフロントベアリングを備えている。
【0038】
このように、本実施形態に係るガスタービンエンジンでは、リアベアリングがハウジングに対して軸方向に移動可能であるが、フロントベアリングをハウジングに対して軸方向に移動不能に固定することで、回転シャフトを安定して保持することができる。
【0039】
また、本実施形態に係るガスタービンエンジンでは、前記リアベアリング保持部材は、前記リアベアリングが前記ハウジングに対して半径方向に移動できるように前記リアベアリングのアウターレースを保持している。
【0040】
そのため、リアベアリング保持部材は、リアベアリングが振動等によって半径方向に移動してもリアベアリングを保持することができる。
【0041】
また、本実施形態に係るガスタービンエンジンでは、前記リアベアリング保持部材は、前記リアベアリングのアウターレースを保持する部分が前記ハウジングに対して半径方向に減衰しながら移動できるように構成されている。
【0042】
この構成によれば、リアベアリング保持部材は、リアベアリングをハウジングに対して軸方向及び半径方向の両方向に移動可能に保持することができる。その結果、ガスタービンエンジンの運転時におけるリアベアリングの破損を防ぐことができるとともに、リアベアリングの半径方向における振動を減衰させることができる。
【0043】
また、本実施形態の変形例に係るガスタービンエンジンでは.前記リアベアリング保持部材は、前記ハウジングに対して軸方向及び半径方向に弾性変形可能な弾性部材を有し、当該弾性部材を介して前記リアベアリングを保持している。
【0044】
この構成であっても、リアベアリング保持部材は、リアベアリングをハウジングに対して軸方向及び半径方向の両方向に移動可能に保持することができる。その結果、ガスタービンエンジンの運転時におけるリアベアリングの破損を防ぐことができる。
【0045】
また、本実施形態に係るガスタービンエンジンでは、前記リアベアリングは、インナーレース、アウターレース、及び、ボールがセラミックス製であるセラミックベアリング、又は、インナーレース、及び、アウターレースが金属製であり、ボールがセラミックス製であるハイブリッドベアリングである。
【0046】
このようにリアベアリングをセラミックベアリング又はハイブリッドベアリングとすることで、リアベアリングの焼き付きを一層抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るガスタービンエンジンは、前記リアベアリングに潤滑油を噴射する非循環式の潤滑装置を備えている。
【0048】
このように、潤滑装置が非循環式の場合は、潤滑装置の製造コストを抑えることができる。また、潤滑装置が非循環式の場合は、リアベアリングに供給する潤滑油の量が少なくなることで種々の問題が生じやすくなるが、ガスタービンエンジンが上記のリアベアリング保持部材を備えるため、これらの問題を解決することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 圧縮機
11 燃焼器
12 タービン
13 回転シャフト
14 フロントベアリング
15 リアベアリング
16 ハウジング
17 潤滑装置
18 リアベアリング保持部材
31 アウターレース
32 インナーレース
33 ボール
34 弾性部材
100 ガスタービンエンジン(エンジン)
図1
図2
図3
図4