(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】報知システム
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20240229BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20240229BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B66C23/88 Z
B66C13/00 D
B66C15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020024352
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】原田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】松永 勇雄
(72)【発明者】
【氏名】出口 明
(72)【発明者】
【氏名】藤重 敏明
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0017867(US,A1)
【文献】特開2016-210607(JP,A)
【文献】特開2018-095373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00
15/00
23/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのフックの近傍に取付けられた第1検出手段であって、前記フック周辺の風速及び風向を検出する第1検出手段と、
前記クレーンにおける前記第1検出手段の取付け部分以外の部分に取付けられた第2検出手段であって、前記クレーン周辺の風速及び風向を検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段から取得された第1検出データと、前記第2検出手段から取得された第2検出データとに基づいて、前記クレーンの操作者に対してクレーン操作の注意喚起を示す注意喚起情報を報知する報知手段と、を
備え、
ワイヤーを介して前記クレーンのブームの先端と接続されたフック支持部であって、前記フックが取り付けられているフック支持部に、前記第1検出手段を取り付けた、
報知システム。
【請求項2】
前記報知手段は、
前記第1検出データの風速又は前記第2検出データの風速の少なくともいずれか一方が閾値以上であるか否か、又は所定時間の間に取得した前記第1検出データの風速と前記第2検出データの風速との差異が生じた回数が所定回数以上であるか否かに基づいて、前記注意喚起を行うか否かを判定し、
前記閾値以上である場合又は前記所定回数以上である場合には、前記注意喚起を行うと判定して、前記注意喚起情報を報知し、
前記閾値以上でない場合及び前記所定回数以上でない場合には、前記注意喚起を行わないと判定して、前記注意喚起情報を報知しない、
請求項1に記載の報知システム。
【請求項3】
前記フックに吊られた吊荷を撮像する撮像手段であって、前記フック支持部の前記フック側の部分に取り付けられた撮像手段を備え、
前記報知手段は、前記第1検出手段から取得された前記第1検出データと、前記第2検出手段から取得された前記第2検出データと、前記撮像手段から取得された撮像データとに基づいて、前記注意喚起情報を報知する、
請求項1又は2に記載の報知システム。
【請求項4】
前記報知手段は、
前記撮像データにおける前記フック又は前記吊荷の振れ幅を特定し、当該特定した振れ幅が閾値以上であるか否かに基づいて、前記注意喚起を行うか否かを判定し、
前記特定した振れ幅が前記閾値以上である場合には、前記第1検出データ及び前記第2検出データに基づいた前記注意喚起を行うか否かの判定の結果に関わらず、前記注意喚起を行うと判定して、前記注意喚起情報を報知する、
請求項3に記載の報知システム。
【請求項5】
基準高さから前記フックに至る高さを測定する測定手段を備え、
前記報知手段は、
前記第1検出手段から取得された前記第1検出データと、前記第2検出手段から取得された前記第2検出データと、前記撮像手段から取得された前記撮像データと、前記測定手段から取得された測定データとに基づいて、前記注意喚起情報を報知し、
前記撮像データにおける前記フック又は前記吊荷の振れ幅を特定すると共に、所定のフックの振れ角に基づいて前記測定データにおける前記高さに対応する許容振れ幅を算出し、
前記特定した振れ幅が前記許容振れ幅以上であるか否かに基づいて、前記注意喚起を行うか否かを判定し、
前記許容振れ幅以上である場合には、前記第1検出データ及び前記第2検出データに基づいた前記注意喚起を行うか否かの判定の結果に関わらず、前記注意喚起を行うと判定して、前記注意喚起情報を報知する、
請求項3に記載の報知システム。
【請求項6】
前記注意喚起情報は、前記撮像手段から取得された前記撮像データを含む、
請求項3から5のいずれか一項に記載の報知システム。
【請求項7】
前記クレーンの旋回角を検出する旋回角検出手段を備え、
前記注意喚起情報は、前記第1検出手段から取得された前記第1検出データと、前記旋回角検出手段から取得された旋回角検出データとを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の報知システム。
【請求項8】
前記第1検出手段にて過去に検出された前記フック周辺の風速及び風向を示す過去風速風向情報を格納する過去風速風向情報格納手段と、
前記過去風速風向情報格納手段にて格納されている前記過去風速風向情報と、所定方法で取得された施工情報であって、構造物の施工段階を示す施工情報とに基づいて、所定の施工段階における前記フック周辺の風速及び風向を予測する予測手段と、を備え、
前記注意喚起情報は、前記予測手段の予測結果を示す予測データを含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の施工現場において、タワークレーンの操作者に対して風の状況を報知するための技術の一つとして、タワークレーンのタワーポストに装着した風向・風速検知器から取得した検出結果を示す情報を、クレーンの運転台に設けられた表示盤に表示する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、上述したように、風向・風速検知器から取得した検出結果を示す情報を表示盤に表示するものに過ぎないので、タワークレーンの操作者が上記表示された検出結果に基づいてタワークレーンの操作に対する注意を払うべきか否かを正確に認識することが難しかった。これにより、例えば風速が比較的強い状況にあるにも関わらず、タワークレーンを無理に操作してしまうおそれがあることから、タワークレーンの如きクレーンの操作の安全性を高める観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、クレーン操作の安全性を高めることが可能となる、報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の報知システムは、クレーンのフックの近傍に取付けられた第1検出手段であって、前記フック周辺の風速及び風向を検出する第1検出手段と、前記クレーンにおける前記第1検出手段の取付け部分以外の部分に取付けられた第2検出手段であって、前記クレーン周辺の風速及び風向を検出する第2検出手段と、前記第1検出手段から取得された第1検出データと、前記第2検出手段から取得された第2検出データとに基づいて、前記クレーンの操作者に対してクレーン操作の注意喚起を示す注意喚起情報を報知する報知手段と、を備え、ワイヤーを介して前記クレーンのブームの先端と接続されたフック支持部であって、前記フックが取り付けられているフック支持部に、前記第1検出手段を取り付けた。
【0007】
請求項2に記載の報知システムは、請求項1に記載の報知システムにおいて、前記報知手段は、前記第1検出データの風速又は前記第2検出データの風速の少なくともいずれか一方が閾値以上であるか否か、又は所定時間の間に取得した前記第1検出データの風速と前記第2検出データの風速との差異が生じた回数が所定回数以上であるか否かに基づいて、前記注意喚起を行うか否かを判定し、前記閾値以上である場合又は前記所定回数以上である場合には、前記注意喚起を行うと判定して、前記注意喚起情報を報知し、前記閾値以上でない場合及び前記所定回数以上でない場合には、前記注意喚起を行わないと判定して、前記注意喚起情報を報知しない。
【0008】
請求項3に記載の報知システムは、請求項1又は2に記載の報知システムにおいて、
前記フックに吊られた吊荷を撮像する撮像手段であって、前記フック支持部の前記フック側の部分に取り付けられた撮像手段を備え、前記報知手段は、前記第1検出手段から取得された前記第1検出データと、前記第2検出手段から取得された前記第2検出データと、前記撮像手段から取得された撮像データとに基づいて、前記注意喚起情報を報知する。
【0009】
請求項4に記載の報知システムは、請求項3に記載の報知システムにおいて、前記報知手段は、前記撮像データにおける前記フック又は前記吊荷の振れ幅を特定し、当該特定した振れ幅が閾値以上であるか否かに基づいて、前記注意喚起を行うか否かを判定し、前記特定した振れ幅が前記閾値以上である場合には、前記第1検出データ及び前記第2検出データに基づいた前記注意喚起を行うか否かの判定の結果に関わらず、前記注意喚起を行うと判定して、前記注意喚起情報を報知する。
【0010】
請求項5に記載の報知システムは、請求項3に記載の報知システムにおいて、基準高さから前記フックに至る高さを測定する測定手段を備え、前記報知手段は、前記第1検出手段から取得された前記第1検出データと、前記第2検出手段から取得された前記第2検出データと、前記撮像手段から取得された前記撮像データと、前記測定手段から取得された測定データとに基づいて、前記注意喚起情報を報知し、前記撮像データにおける前記フック又は前記吊荷の振れ幅を特定すると共に、所定のフックの振れ角に基づいて前記測定データにおける前記高さに対応する許容振れ幅を算出し、前記特定した振れ幅が前記許容振れ幅以上であるか否かに基づいて、前記注意喚起を行うか否かを判定し、前記許容振れ幅以上である場合には、前記第1検出データ及び前記第2検出データに基づいた前記注意喚起を行うか否かの判定の結果に関わらず、前記注意喚起を行うと判定して、前記注意喚起情報を報知する。
【0011】
請求項6に記載の報知システムは、請求項3から5のいずれか一項に記載の報知システムにおいて、前記注意喚起情報は、前記撮像手段から取得された前記撮像データを含む。
請求項7に記載の報知システムは、請求項1から6のいずれか一項に記載の報知システムにおいて、前記クレーンの旋回角を検出する旋回角検出手段を備え、前記注意喚起情報は、前記第1検出手段から取得された前記第1検出データと、前記旋回角検出手段から取得された旋回角検出データとを含む。
請求項8に記載の報知システムは、請求項1から7のいずれか一項に記載の報知システムにおいて、前記第1検出手段にて過去に検出された前記フック周辺の風速及び風向を示す過去風速風向情報を格納する過去風速風向情報格納手段と、前記過去風速風向情報格納手段にて格納されている前記過去風速風向情報と、所定方法で取得された施工情報であって、構造物の施工段階を示す施工情報とに基づいて、所定の施工段階における前記フック周辺の風速及び風向を予測する予測手段と、を備え、前記注意喚起情報は、前記予測手段の予測結果を示す予測データを含む。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の報知システムによれば、クレーンのフックの近傍に取付けられた第1検出手段であって、フック周辺の風速及び風向を検出する第1検出手段と、クレーンにおける第1検出手段の取付け部分以外の部分に取付けられた第2検出手段であって、クレーン周辺の風速及び風向を検出する第2検出手段と、第1検出手段から取得された第1検出データと、第2検出手段から取得された第2検出データとに基づいて、クレーンの操作者に対してクレーン操作の注意喚起を示す注意喚起情報を報知する報知手段と、を備えるので、第1検出データ及び第2検出データに基づいた注意喚起情報の報知を行うことができる。よって、従来技術(タワーポストに設けた風向・風速検知器の検出結果を示す情報を表示盤に表示する技術)に比べて、クレーンの操作者がクレーン操作に注意を払うべきか否かを正確に認識することができ、クレーン操作の安全性を高めることが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の報知システムによれば、報知手段が、第1検出手段から取得された第1検出データと、第2検出手段から取得された第2検出データと、撮像手段から取得された撮像データとに基づいて、注意喚起情報を報知するので、第1検出データ、第2検出データ、及び撮像データに基づいて注意喚起情報を報知でき、状況に応じた注意喚起情報の報知を行いやすくなる。
【0014】
請求項5に記載の報知システムによれば、報知手段が、第1検出手段から取得された第1検出データと、第2検出手段から取得された第2検出データと、撮像手段から取得された撮像データと、測定手段から取得された測定データとに基づいて、注意喚起情報を報知するので、第1検出データ、第2検出データ、撮像データ、及び測定データに基づいて注意喚起情報を報知でき、状況に応じた注意喚起情報の報知を一層行いやすくなる。
【0015】
請求項6に記載の報知システムによれば、注意喚起情報が、撮像手段から取得された撮像データを含むので、撮像データをクレーンの操作者に対して提示でき、クレーンの操作者が吊荷の状況を正確に把握することが可能となる。
【0016】
請求項7に記載の報知システムによれば、注意喚起情報が、第1検出手段から取得された第1検出データと、旋回角検出手段から取得された旋回角検出データとを含むので、第1検出データ及び旋回角データをクレーンの操作者に対して提示でき、クレーンの操作者が吊荷に対する風の影響を把握しやすくなる。
【0017】
請求項8に記載の報知システムによれば、過去風速風向情報格納手段にて格納されている過去風速風向情報と、所定方法で取得された施工情報であって、構造物の施工段階を示す施工情報とに基づいて、所定の施工段階におけるフック周辺の風速及び風向を予測する予測手段を備え、注意喚起情報が、予測データを含むので、予測データをクレーンの操作者に対して提示でき、クレーンの操作者が所定の施工段階におけるフック周辺の風の状況を予め把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る報知システム及びクレーンを概念的に示す図である(一部図示省略)。
【
図2】報知システムの電気的構成を示したブロック図である。
【
図4】実施の形態に係る報知処理のフローチャートである。
【
図5】フック高さとフックの振れ幅との関係を示す図であり、(a)はフック高さH
1である場合のフックの振れ幅γ
1を示す図、(a)はフック高さH
2である場合のフックの振れ幅γ
2を示す図である。
【
図6】注意喚起情報の報知方法の例示を示す図である。
【
図7】注意喚起情報の報知方法の例示を示す図である。
【
図8】注意喚起情報の報知方法の例示を示す図である。
【
図9】注意喚起情報の報知方法の例示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る報知システムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、クレーンの操作者に対してクレーン操作の注意喚起を行うための報知システムに関する。ここで、「クレーン」とは、建設現場において重量物を吊り上げて、水平又は鉛直方向へ移動させるための重機であり、例えばタワークレーン、クローラークレーン等を含む概念であるが、実施の形態では、タワークレーンとして説明する。また、クレーンを用いて施工される「構造物」の具体的な構造や種類は任意であるが、例えば、オフィスビル、商業施設、公共施設、及びアパートやマンションの如き集合住宅等の建築構造物や、橋、堤防、ダム等の土木構造物を含む概念であるが、実施の形態では、複数階を有する施工中のオフィスビルとして説明する。
【0021】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0022】
(構成)
最初に、実施の形態に係る報知システム50の構成と、この報知システムが適用されるクレーン1の構成とについて説明する。
【0023】
(構成-クレーン)
まず、クレーン1の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るクレーン1及び報知システム50を概念的に示す図である(一部図示省略)。また、以下の説明では、
図1のX方向をクレーン1の左右方向(-X方向をクレーン1の左方向、+X方向をクレーン1の右方向)、
図1のY方向をクレーン1の上下方向(+Y方向をクレーン1の上方向、-Y方向をクレーン1の下方向)と称し、
図1のX方向及び
図1のY方向に直交する方向を前後方向(
図1の紙面の手前側に至る方向をクレーン1の前方向、
図1の紙面の奥側に至る方向をクレーン1の後方向)と称する。
【0024】
クレーン1は、例えば公知のタワークレーン等を用いて構成され、
図1に示すように、構造物2(具体的には、施工中のオフィスビル)の上方に設けられており、クレーン本体10、複数のマスト20、クレーンベース(図示省略)、昇降フレーム30、壁つなぎ(図示省略)、及び昇降機構(図示省略)を備えている。
【0025】
(構成-クレーン-クレーン本体)
クレーン本体10は、重量物の吊り上げ及び吊り下げを行う重機である。このクレーン本体10は、例えば公知のタワークレーン用のクレーン本体を用いて構成されており、具体的には、操作室11が設けられている旋回フレーム12と、旋回フレーム12上に起伏可能に設けられたブーム13と、ブーム13の先端に設けられたフック支持部14に対してワイヤー15を介して取り付けられたフック16と、ワイヤー15を巻き上げるための巻上部(図示省略)とを備えている。また、このクレーン本体10は、構造物2よりも上方に設けられており、複数のマスト20のいずれかに対して着脱自在に取り付けられている。
【0026】
(構成-クレーン-マスト)
複数のマスト20は、クレーン本体10を支持する柱部である。これら複数のマスト20は、例えば公知のタワークレーン用のマストを用いて構成され、
図1に示すように、構造物2の外部に鉛直方向(上下方向)に沿って並設されており、隣接するマスト20同士が固定具等によって相互に接続されている。
【0027】
(構成-クレーン-クレーンベース)
クレーンベースは、複数のマスト20を支持するための支持手段である。このクレーンベースは、例えば公知のタワークレーン用のベースを用いて構成されており、複数のマスト20のいずれかのマスト20(例えば、最下方のマスト20)に設けられており、当該マスト20に対して固定具等によって固定されていると共に、構造物2(具体的には、構造物2の柱部、壁部等)又は図示しない地表面に対して支持されている。
【0028】
(構成-クレーン-昇降フレーム)
昇降フレーム30は、複数のマスト20をクライミングするためのフレームである。この昇降フレーム30は、例えば公知のタワークレーン用の昇降フレームを用いて構成されており、複数のマスト20に対して着脱自在に取り付けられている。
【0029】
(構成-クレーン-壁つなぎ)
壁つなぎは、複数のマスト20と構造物2とを相互に接続するための接続手段である。この壁つなぎは、例えば公知のタワークレーン用の壁つなぎを用いて構成されており、構造物2(具体的には、構造物2の柱部、床部、壁部、又はコア部等)及び複数のマスト20のいずれかに対して着脱自在に取り付けられている。
【0030】
(構成-クレーン-昇降機構)
昇降機構は、昇降フレーム30又は複数のマスト20を昇降させるための昇降手段である。この昇降機構は、例えば公知のタワークレーン用の昇降機構を用いて構成されており、昇降フレーム30又は複数のマスト20の近傍に設けられている。
【0031】
(構成-報知システム)
次に、報知システム50の構成について説明する。
図2は、報知システム50の電気的構成を示したブロック図である。
【0032】
報知システム50は、クレーン1の操作者に対してクレーン1操作の注意喚起を行うためのシステムであり、
図1、
図2に示すように、フック側検出システム60、旋回フレーム側検出システム70、及び制御装置80を備えており、これらフック側検出システム60及び旋回フレーム側検出システム70の各々と制御装置80とはネットワーク53を介して相互に通信可能に接続されている。
【0033】
(構成-報知システム-フック側検出システム)
フック側検出システム60は、クレーン1のフック16の近傍側に位置するシステムである。このフック側検出システム60は、
図1に示すように、クレーン1のフック16の近傍に設けられており、
図1、
図2に示すように、第1検出部61、撮像部62、フック側通信部63、及びフック側電源部64を備えている。
【0034】
(構成-報知システム-フック側検出システム-第1検出部)
第1検出部61は、フック16周辺の風速及び風向を検出する第1検出手段であり、例えば公知の風速風向センサ(一例として、超音波式風速風向センサ)を用いて構成されており、
図1に示すように、フック支持部14に対して固定具等によって取り付けられている。
【0035】
(構成-報知システム-フック側検出システム-撮像部)
撮像部62は、フック16に吊られた吊荷Wを撮像する撮像手段であり、例えば公知の撮像手段(一例として、USBカメラ)を用いて構成されており、
図1に示すように、フック支持部14に対して固定具等によって取り付けられている。
【0036】
(構成-報知システム-フック側検出システム-フック側通信部)
フック側通信部63は、第1検出部61の検出データ(具体的には、風速及び風向を示すデータ。以下、「第1検出データ」と称する。)、及び撮像部62にて撮像された撮像データ(具体的には、吊荷Wを示すデータ)を制御装置80に送信するための通信手段である。このフック側通信部63は、例えば、無線通信網(又は有線通信網)を用いて通信を行う公知の通信手段(一例として、指向性アンテナ等)を用いて構成されており、
図1に示すように、フック支持部14及びブーム13に対して固定具等によって取り付けられていると共に、第1検出部61及び撮像部62の各々と配線52を介して通信可能に接続されている。
【0037】
(構成-報知システム-フック側検出システム-フック側電源部)
フック側電源部64は、当該フック側電源部64に蓄電された電力を、配線52を介してフック側検出システム60の各部に供給するフック側電源手段であり、例えば公知の電源手段(一例として、バッテリ、又はソーラパネルの如き発電装置)を用いて構成されており、
図1に示すように、フック支持部14に対して固定具等によって取り付けられている。
【0038】
(構成-報知システム-旋回フレーム側検出システム)
旋回フレーム側検出システム70は、クレーン1の旋回フレーム12側に位置するシステムである。この旋回フレーム側検出システム70は、
図1に示すように、旋回フレーム12に設けられており、
図1、
図2に示すように、第2検出部71、測定部72、旋回角検出部73、旋回フレーム側通信部74、及び旋回フレーム側電源部75を備えている。
【0039】
(構成-報知システム-旋回フレーム側検出システム-第2検出部)
第2検出部71は、クレーン1周辺の風速及び風向を検出する第2検出手段であり、例えば公知の風速風向センサ(一例として、超音波式風速風向センサ)を用いて構成され、
図1に示すように、クレーン1における第1検出部61の取付け部分以外の部分(具体的には、旋回フレーム12)に対して固定具等によって取付けられている。
【0040】
(構成-報知システム-旋回フレーム側検出システム-測定部)
測定部72は、基準高さ(例えば、地表面等)からフック16に至る高さ(以下、「フック高さ」と称する)を測定する測定手段であり、例えば公知の揚程センサを用いて構成されており、旋回フレーム12におけるワイヤー15を巻き上げる巻上部の近傍部分に対して固定具等によって取り付けられている。
【0041】
(構成-報知システム-旋回フレーム側検出システム-旋回角検出部)
旋回角検出部73は、クレーン1の旋回角を検出する旋回角検出手段であり、例えば公知の旋回角センサを用いて構成されており、旋回フレーム12の回転軸の近傍部分に対して固定具等によって取り付けられている。
【0042】
(構成-報知システム-旋回フレーム側検出システム-旋回フレーム側通信部)
旋回フレーム側通信部74は、第2検出部71の検出データ(具体的には、風速及び風向を示すデータ。以下、「第2検出データ」と称する。)、測定部72の測定データ(具体的には、フック高さを示すデータ)、及び旋回角検出部73の検出データ(具体的には、クレーン1の旋回角を示すデータ。以下、「旋回角検出データ」と称する)を制御装置80に送信するための通信手段である。この旋回フレーム側通信部74は、例えば、無線通信網又は有線通信網を用いて通信を行う公知の通信手段を用いて構成されており、旋回フレーム12に対して固定具等によって取り付けられていると共に、第2検出部71、測定部72、及び旋回角検出部73の各々と配線52を介して通信可能に接続されている。
【0043】
(構成-報知システム-旋回フレーム側検出システム-旋回フレーム側電源部)
旋回フレーム側電源部75は、図示しない商用電源又は電池(例えば、バッテリ等)から供給された電力を、配線52を介して旋回フレーム側検出システム70の各部に供給する旋回フレーム側電源手段であり、旋回フレーム12に対して固定具等によって取り付けられている。
【0044】
(構成-報知システム-制御装置)
制御装置80は、報知システム50を制御するための装置である。この制御装置80は、
図1に示すように、操作室11内に設けられており、
図2に示すように、操作部81、制御側通信部82、出力部83、制御側電源部84、制御部85、及び記憶部86を備えている。なお、制御装置80は、例えば公知の制御盤によって構成することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0045】
(構成-報知システム-制御装置-操作部)
操作部81は、制御装置80に対する操作入力を受け付ける操作手段であり、各種のスイッチやタッチパッド等の公知の操作手段を用いて構成されている。
【0046】
(構成-報知システム-制御装置-制御側通信部)
制御側通信部82は、フック側検出システム60及び旋回フレーム側検出システム70から各種のデータを受信すると共に、外部装置51(例えば、管理施設に設けられたサーバ、インターネット上のクラウドサーバ、作業者が携帯している端末装置等)と制御装置80との相互間で通信するための通信手段であり、無線通信網又は有線通信網を用いて通信を行う公知の通信手段を用いて構成されている。
【0047】
(構成-報知システム-制御装置-出力部)
出力部83は、制御部85の制御に基づいて各種の情報を出力する出力手段であり、例えば公知の表示手段(一例として、ディスプレイ)又は音声出力手段(一例として、スピーカ)を用いて構成されている。
【0048】
(構成-報知システム-制御装置-制御側電源部)
制御側電源部84は、図示しない商用電源又は電池から供給された電力を、制御装置80の各部に供給する制御側電源手段である。
【0049】
(構成-報知システム-制御装置-制御部)
制御部85は、制御装置80を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。
【0050】
また、この制御部85は、
図2に示すように、機能概念的に、報知部85a及び予測部85bを備えている。
【0051】
報知部85aは、第1検出部61から取得された第1検出データと、第2検出部71から取得された第2検出データとに基づいて、クレーン1の操作者に対してクレーン1操作の注意喚起を示す情報(以下、「注意喚起情報」と称する)を報知する報知手段である。
【0052】
予測部85bは、後述する過去風速風向情報と、所定方法で取得された施工情報であって、構造物2の施工段階を示す施工情報とに基づいて、所定の施工段階におけるフック16周辺の風速及び風向を予測する予測手段である。なお、この制御部85によって実行される処理の詳細については後述する。
【0053】
(構成-報知システム-制御装置-記憶部)
記憶部86は、制御装置80の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記憶手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、DVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体、又はFlash Rom、USBメモリ、SDカードの如き電気的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0054】
また、この記憶部86は、
図2に示すように、過去風速風向データベース(以下、データベースを「DB」と称する)86aを備えている。
【0055】
過去風速風向DB86aは、第1検出部61にて過去に検出されたフック16周辺の風速及び風向を示す情報(以下、「過去風速風向情報」と称する)を格納する過去風速風向情報格納手段である。
【0056】
図3は、過去風速風向DB86aの構成例を示す図である。
図3に示すように、過去風速風向DB86aは、項目「施工情報」、項目「日時情報」、及び項目「過去風速風向情報」と、各項目に対応する情報とを、相互に関連付けて格納している。このうち、項目「施工情報」に対応する情報は、施工情報であり、例えば、
図3に示す構造物2の施工段階である「第1階層の施工段階」等が該当する。項目「日時情報」に対応する情報は、過去風速風向情報が格納された日時を示す日時情報であり、例えば、
図3に示す過去風速風向情報の格納した日時である「2019年1月23日 午後3時40分」等が該当する。項目「過去風速風向情報」に対応する情報は、過去風速風向情報であり、例えば、
図3に示す過去のフック16周辺の風速及び風向である「25m/sec、北西」等が該当する。
【0057】
(報知処理)
次に、このように構成された報知システム50における制御装置80の制御部85によって実行される報知処理について説明する。
図4は、実施の形態に係る報知処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。
図5は、フック高さとフック16の振れ幅との関係を示す図であり、(a)はフック高さH
1である場合のフック16の振れ幅γ
1を示す図、(a)はフック高さH
2である場合のフック16の振れ幅γ
2を示す図である。
図6から
図9は、注意喚起情報の報知方法の例示を示す図である。
【0058】
報知処理は、クレーン1の操作者に対してクレーン1操作の注意喚起を行うための処理である。また、この報知処理を実行するタイミングは任意であるが、実施の形態においては、報知システム50に電源が投入された後に起動される。
【0059】
報知処理が起動されると、
図4に示すように、SA1において制御部85は、制御側通信部82を介して第1検出部61から第1検出データを取得する。
【0060】
SA2において制御部85は、制御側通信部82を介して第2検出部71から第2検出データを取得する。
【0061】
SA3において制御部85は、制御側通信部82を介して撮像部62から撮像データを取得する。
【0062】
SA4において制御部85は、制御側通信部82を介して測定部72から測定データを取得する。
【0063】
SA5において制御部85は、制御側通信部82を介して旋回角検出部73から旋回角検出データを取得する。
【0064】
SA6において報知部85aは、少なくともSA1にて取得された第1検出データ及びSA2にて取得された第2検出データに基づいて、クレーン1の操作者に対してクレーン1操作の注意喚起を行うか否かを判定する。
【0065】
この注意喚起を行うか否かを判定する判定方法については任意であるが、例えば以下の通りに判定してもよい。
【0066】
すなわち、まず、第1の判定方法については、SA1にて取得された第1検出データ及びSA2にて取得された第2検出データに基づいて、上記注意喚起を行うか否かを判定してもよい。一例として、第1検出データの風速又は第2検出データの風速の少なくともいずれか一方が閾値以上であるか否か、又は所定時間の間に取得した第1検出データの風速と第2検出データの風速との差異が生じた回数(例えば、所定値以上の差異が生じた回数等)が所定回数以上であるか否かに基づいて判定し、上記閾値以上である場合又は上記所定回数以上である場合には、上記注意喚起を行うと判定し、上記閾値以上でない場合及び上記所定回数以上でない場合には、上記注意喚起を行わないと判定してもよい。このような第1の判定方法により、上記注意喚起を行うべきか否かを正確に判定でき、注意喚起情報の報知を適切なタイミングで行うことができる。
【0067】
また、第2の判定方法については、SA1にて取得された第1検出データと、SA2にて取得された第2検出データと、SA3にて取得された撮像データとに基づいて、上記注意喚起を行うか否かを判定してもよい。一例として、まず、公知の画像解析方法を用いて上記撮像データにおけるフック16又は吊荷Wの振れ幅を特定する(例えば、地上にある物の位置又は大きさ等を基準にして、フック16又は吊荷Wの振れ幅を特定する)。次いで、上記第1の判定方法に加えて、上記振れ幅が閾値以上であるか否かを判定し、上記閾値以上である場合には、上記第1の判定方法による判定結果に関わらず、上記注意喚起を行うと判定してもよい。このような第2の判定方法により、上記第1の判定方法だけを行う場合に比べて、状況に応じた判定を行いやすくなるため、注意喚起情報の報知を適切なタイミングで行いやすくなる。
【0068】
また、第3の判定方法については、SA1にて取得された第1検出データと、SA2にて取得された第2検出データと、SA3にて取得された撮像データと、SA4にて取得された測定データとに基づいて、上記注意喚起を行うか否かを判定してもよい。一例として、まず、公知の画像解析方法を用いて上記撮像データにおけるフック16又は吊荷Wの振れ幅を特定すると共に、所定のフック16の振れ角(例えば、吊荷Wを安全に振ることが可能な最大の振れ角等)に基づいてSA4処理時のフック高さに対応する許容振れ幅を算出する。次いで、上記第1の判定方法に加えて、上記振れ幅が上記許容振れ幅以上であるか否かを判定し、上記許容振れ幅以上である場合には、上記第1の判定方法による判定結果に関わらず、上記注意喚起を行うと判定してもよい。このような第3の判定方法により、上記第2の判定方法を行う場合に比べて、状況に応じた判定を行いやすくなるため、注意喚起情報の報知を適切なタイミングで一層行いやすくなる。
【0069】
ここで、許容振れ幅の算出方法については任意であるが、例えば、
図5に示すように、フック16の振れ角αが同じである場合に、フック高さH1、H2に応じてフック16の振れ幅γ
1、γ
2がそれぞれ異なることから、下記式(1)を用いて算出してもよい。
γ
n=H
n/H
0×γ
0・・・式(1)
(ここで、γ
n:SA4処理時のフック高さに対応する許容振れ幅
H
n:SA4処理時のフック高さ
H
0:フック16の基準高さ
γ
0:フック16の基準高さに対応する許容振れ幅)
【0070】
このような算出方法により、フック高さに応じた許容振れ幅を簡易に算出することできる。
【0071】
そして、報知部85aは、上記注意喚起を行うと判定された場合(SA6、Yes)にはSA7に移行し、上記注意喚起を行うと判定されなかった場合(SA6、No)にはSA8に移行する。
【0072】
SA7において報知部85aは、注意喚起情報を報知し、その後SA8に移行する。
【0073】
この注意喚起情報の報知方法については任意であるが、例えば以下の通りに報知してもよい。
【0074】
すなわち、注意喚起情報が上記注意喚起を行う旨を示す情報(以下、「基本注意喚起情報」と称する)のみを含む場合には、注意喚起情報(基本注意喚起情報)を出力部83を介して表示若しくは音声出力してもよく、又は、注意喚起情報を制御側通信部82を介して外部装置51に送信することで、外部装置51の出力部83を介して表示又は音声出力してもよい。
【0075】
また、注意喚起情報が基本注意喚起情報に加えて、その他の情報を含む場合には、注意喚起情報(基本注意喚起情報及びその他の情報)を出力部83を介して表示若しくは音声出力してもよく、又は、注意喚起情報を制御側通信部82を介して外部装置51に送信することで、外部装置51の出力部83を介して表示又は音声出力してもよい。
【0076】
ここで、上記その他の情報が、SA1にて取得された第1検出データ及びSA2にて取得された第2検出データである場合において、注意喚起情報を表示する方法については任意であるが、例えば、
図6に示すように、出力部83の画面上の領域のうち、クレーン1の操作者に対してクレーン1操作の注意喚起を行うための領域83a(以下、「注意喚起領域83a」と称する)に、基本注意喚起情報D1(一例として、「クレーン操作に注意して下さい」との定型メッセージを含むテキストデータ等)と、第1検出データD2(一例として、「風速=35m/sec、風向=南東」を示すテキストデータ)と、第2検出データD3(一例として、「風速=33m/sec、風向=南東」を示すテキストデータ)とを同じタイミング(又は異なるタイミング)で表示してもよい。このような表示により、第1検出データ及び第2検出データをクレーン1の操作者に対して提示でき、クレーン1の操作者がクレーン1周辺の風の状況を正確に把握することが可能となる。
【0077】
また、上記その他の情報が、SA3(又はSA7処理時)にて取得された撮像データである場合において、注意喚起情報を表示する方法については任意であるが、例えば、
図7に示すように、上記注意喚起領域83aに、基本注意喚起情報D1及び撮像データD4を重ねて表示してもよい。このような表示により、撮像データをクレーン1の操作者に対して提示でき、クレーン1の操作者が吊荷Wの状況を正確に把握することが可能となる。
【0078】
また、上記その他の情報が、SA1にて取得された第1検出データ及びSA5にて取得された旋回角検出データである場合において、注意喚起情報を表示する方法については任意であるが、例えば、
図8に示すように、上記注意喚起領域83aに、基本注意喚起情報D1、第1検出データD2(
図8では、風速及び風向に応じた形状及び大きさで図示した図形データ)、及び旋回角検出データD5(
図8では、クレーン1が旋回角検出データD5の旋回角で旋回した状態を図示した図形データ)を同じタイミング(又は異なるタイミング)で表示してもよい。このような表示により、第1検出データ及び旋回角データをクレーン1の操作者に対して提示でき、クレーン1の操作者が吊荷Wに対する風の影響を把握しやすくなる。
【0079】
また、上記その他の情報が、予測部85bの予測結果を示すデータ(以下、「予測データ」と称する)である場合において、注意喚起情報を表示する方法については任意であるが、例えば、
図9に示すように、上記注意喚起領域83aに、基本注意喚起情報D1、SA7の処理時にて取得された旋回角検出データD5、及び予測データD6(
図9では、風速及び風向に応じた形状及び大きさで図示した図形データ、及び「第8階層の施工段階における風速風向」を示すテキストデータ)を同じタイミング(又は異なるタイミング)で表示してもよい。ただし、これに限らず、例えば、旋回角検出データD5の表示を省略してもよい。あるいは、SA1にて取得された第1検出データ、SA2にて取得された第2検出データ、SA3(又はSA7処理時)にて取得された撮像データ、又は、過去風速風向DB86aに格納されている過去風速風向情報のうち、操作部81又は制御側通信部82を介して取得された施工情報に対応する過去風速風向情報を表示してもよい。このような表示により、予測データをクレーン1の操作者に対して提示でき、クレーン1の操作者が所定の施工段階におけるフック16周辺の風の状況を予め把握することが可能となる。特に、夜間で強風が予想される場合に、ブーム13の角度及び方向が安全な角度及び方向となるようにクレーン本体10を旋回でき、クレーン1操作の安全性を確保するためのデータとして利用できる。
【0080】
なお、上記予測データの作成方法については任意であるが、例えば、まず、予測部85bは、過去風速風向DB86aに格納されている過去風速風向情報の中から、操作部81又は制御側通信部82を介して取得された施工情報に対応する過去風速風向情報を抽出し、当該抽出した過去風速風向情報を用いて機械学習(一例として、ディープラーニング等)させた学習済みモデルを作成する。次いで、予測部85bは、上記学習済みモデルを用いて、操作部81又は制御側通信部82を介して取得された所望の施工情報(一例として、現時点又はこれ以降の施工段階を示す施工情報)におけるフック16周辺の風速及び風向を予測することにより、作成してもよい。ただし、これに限らず、例えば、予測部85bは、上記抽出した過去風速風向情報の風速及び風向を平均化し、当該平均化した風速及び風向を予測される風速及び風向として設定することにより、作成してもよい。
【0081】
図4に戻り、SA8において制御部85は、報知処理を終了するタイミング(以下、「終了タイミング」と称する)が到来したか否かを判定する。
【0082】
この終了タイミングが到来したか否かの判定方法については任意であるが、例えば、操作部81を介して所定操作が受け付けられたか否かに基づいて判定し、上記所定操作が行われた場合には終了タイミングが到来したと判定し、上記所定操作が行われていない場合には終了タイミングが到来していないと判定する。
【0083】
そして、制御部85は、終了タイミングが到来したと判定された場合(SA8、Yes)には報知処理を終了する。一方で、終了タイミングが到来していないと判定された場合(SA8、No)にはSA1に移行し、SA8にて終了タイミングが到来したと判定されるまでSA1からSA8の処理を繰り返し行う。
【0084】
以上のような報知処理により、従来技術(タワーポストに設けた風向・風速検知器の検出結果を示す情報を表示盤に表示する技術)に比べて、クレーン1の操作者がクレーン1操作に注意を払うべきか否かを正確に認識することができ、クレーン1操作の安全性を高めることが可能となる。また、第1検出データ、第2検出データ、及び撮像データに基づいた注意喚起情報の報知を行うことができ、状況に応じた注意喚起情報の報知を行いやすくなる。また、第1検出データ、第2検出データ、撮像データ、及び測定データに基づいた注意喚起情報の報知を行うことができ、状況に応じた注意喚起情報の報知を一層行いやすくなる。
【0085】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、クレーン1のフック16の近傍に取付けられた第1検出部61であって、フック16周辺の風速及び風向を検出する第1検出部61と、クレーン1における第1検出部61の取付け部分以外の部分に取付けられた第2検出部71であって、クレーン1周辺の風速及び風向を検出する第2検出部71と、第1検出部61から取得された第1検出データと、第2検出部71から取得された第2検出データとに基づいて、クレーン1の操作者に対してクレーン1操作の注意喚起を示す注意喚起情報を報知する報知部85aと、を備えるので、第1検出データ及び第2検出データに基づいた注意喚起情報の報知を行うことができる。よって、従来技術(タワーポストに設けた風向・風速検知器の検出結果を示す情報を表示盤に表示する技術)に比べて、クレーン1の操作者がクレーン1操作に注意を払うべきか否かを正確に認識することができ、クレーン1操作の安全性を高めることが可能となる。
【0086】
(実施の形態の効果)
また、報知部85aが、第1検出部61から取得された第1検出データと、第2検出部71から取得された第2検出データと、撮像部62から取得された撮像データとに基づいて、注意喚起情報を報知するので、第1検出データ、第2検出データ、及び撮像データに基づいた注意喚起情報の報知を行うことができ、状況に応じた注意喚起情報の報知を行いやすくなる。
【0087】
また、報知部85aが、第1検出部61から取得された第1検出データと、第2検出部71から取得された第2検出データと、撮像部62から取得された撮像データと、測定部72から取得された測定データとに基づいて、注意喚起情報を報知するので、第1検出データ、第2検出データ、撮像データ、及び測定データに基づいた注意喚起情報の報知を行うことができ、状況に応じた注意喚起情報の報知を一層行いやすくなる。
【0088】
また、注意喚起情報が、撮像部62から取得された撮像データを含むので、撮像データをクレーン1の操作者に対して提示でき、クレーン1の操作者が吊荷Wの状況を正確に把握することが可能となる。
【0089】
また、注意喚起情報が、第1検出部61から取得された第1検出データと、旋回角検出部73から取得された旋回角検出データとを含むので、第1検出データ及び旋回角データをクレーン1の操作者に対して提示でき、クレーン1の操作者が吊荷Wに対する風の影響を把握しやすくなる。
【0090】
また、過去風速風向DB86aにて格納されている過去風速風向情報と、所定方法で取得された施工情報であって、構造物2の施工段階を示す施工情報とに基づいて、所定の施工段階におけるフック16周辺の風速及び風向を予測する予測部85bを備え、注意喚起情報が、予測データを含むので、予測データをクレーン1の操作者に対して提示でき、クレーン1の操作者が所定の施工段階におけるフック16周辺の風の状況を予め把握することが可能となる。
【0091】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0092】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0093】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。また、本出願における「システム」とは、複数の装置によって構成されたものに限定されず、単一の装置によって構成されたものを含む。また、本出願における「装置」とは、単一の装置によって構成されたものに限定されず、複数の装置によって構成されたものを含む。また、上記実施の形態で説明した各情報については、そのデータ構造を任意に変更してもよい。例えば、制御装置80を、相互に通信可能に構成された複数の装置に分散して構成し、これら複数の装置の一部に制御部85を設けると共に、これら複数の装置の他の一部に記憶部86を設けてもよい。
【0094】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0095】
(報知システムについて)
上記実施の形態では、報知システム50が、撮像部62、測定部72、旋回角検出部73、予測部85b、及び過去風速風向DB86aを備えていると説明したが、これに限らず、例えば、撮像部62、測定部72、旋回角検出部73、予測部85b、又は過去風速風向DB86aの少なくともいずれか1つを省略してもよい。この場合には、報知処理のSA3からSA5の少なくともいずれか1つを省略できる。
【0096】
(第2検知部について)
上記実施の形態では、第2検出部71の設置数が1つであると説明したが、これに限らず、例えば、複数であってもよい。この場合において、報知処理のSA6の第1判定方法については、例えば、第1検出データの風速又は複数の第2検出部71から取得した複数の第2検出データの風速の少なくともいずれか1つが閾値以上であるか否か、又は所定時間の間に取得した第1検出データの風速と複数の第2検出データの各々の風速との差異が生じた回数が所定回数以上であるか否かに基づいて判定してもよい。
【0097】
(撮像部について)
上記実施の形態では、撮像部62が、フック支持部14に取り付けられていると説明したが、これに限らず、例えば、クレーン1のフック支持部14以外の部分に取り付けられてもよく、又はクレーン1以外の部材(一例として、構造物2の上端に設けられた柵等)に取り付けられてもよい。
【0098】
(付記)
付記1の報知システムは、クレーンのフックの近傍に取付けられた第1検出手段であって、前記フック周辺の風速及び風向を検出する第1検出手段と、前記クレーンにおける前記第1検出手段の取付け部分以外の部分に取付けられた第2検出手段であって、前記クレーン周辺の風速及び風向を検出する第2検出手段と、前記第1検出手段から取得された第1検出データと、前記第2検出手段から取得された第2検出データとに基づいて、前記クレーンの操作者に対してクレーン操作の注意喚起を示す注意喚起情報を報知する報知手段と、を備える。
【0099】
付記2の報知システムは、付記1に記載の報知システムにおいて、前記フックに吊られた吊荷を撮像する撮像手段を備え、前記報知手段は、前記第1検出手段から取得された前記第1検出データと、前記第2検出手段から取得された前記第2検出データと、前記撮像手段から取得された撮像データとに基づいて、前記注意喚起情報を報知する。
【0100】
付記3の報知システムは、付記2に記載の報知システムにおいて、基準高さから前記フックに至る高さを測定する測定手段を備え、前記報知手段は、前記第1検出手段から取得された前記第1検出データと、前記第2検出手段から取得された前記第2検出データと、前記撮像手段から取得された前記撮像データと、前記測定手段から取得された測定データとに基づいて、前記注意喚起情報を報知する。
【0101】
付記4の報知システムは、付記2又は3に記載の報知システムにおいて、前記注意喚起情報は、前記撮像手段から取得された前記撮像データを含む。
【0102】
付記5の報知システムは、付記1から4のいずれか一項に記載の報知システムにおいて、前記クレーンの旋回角を検出する旋回角検出手段を備え、前記注意喚起情報は、前記第1検出手段から取得された前記第1検出データと、前記旋回角検出手段から取得された旋回角検出データとを含む。
【0103】
付記6の報知システムは、付記1から5のいずれか一項に記載の報知システムにおいて、前記第1検出手段にて過去に検出された前記フック周辺の風速及び風向を示す過去風速風向情報を格納する過去風速風向情報格納手段と、前記過去風速風向情報格納手段にて格納されている前記過去風速風向情報と、所定方法で取得された施工情報であって、構造物の施工段階を示す施工情報とに基づいて、所定の施工段階における前記フック周辺の風速及び風向を予測する予測手段と、を備え、前記注意喚起情報は、前記予測手段の予測結果を示す予測データを含む。
【0104】
(付記の効果)
付記1に記載の報知システムによれば、クレーンのフックの近傍に取付けられた第1検出手段であって、フック周辺の風速及び風向を検出する第1検出手段と、クレーンにおける第1検出手段の取付け部分以外の部分に取付けられた第2検出手段であって、クレーン周辺の風速及び風向を検出する第2検出手段と、第1検出手段から取得された第1検出データと、第2検出手段から取得された第2検出データとに基づいて、クレーンの操作者に対してクレーン操作の注意喚起を示す注意喚起情報を報知する報知手段と、を備えるので、第1検出データ及び第2検出データに基づいた注意喚起情報の報知を行うことができる。よって、従来技術(タワーポストに設けた風向・風速検知器の検出結果を示す情報を表示盤に表示する技術)に比べて、クレーンの操作者がクレーン操作に注意を払うべきか否かを正確に認識することができ、クレーン操作の安全性を高めることが可能となる。
【0105】
付記2に記載の報知システムによれば、報知手段が、第1検出手段から取得された第1検出データと、第2検出手段から取得された第2検出データと、撮像手段から取得された撮像データとに基づいて、注意喚起情報を報知するので、第1検出データ、第2検出データ、及び撮像データに基づいて注意喚起情報を報知でき、状況に応じた注意喚起情報の報知を行いやすくなる。
【0106】
付記3に記載の報知システムによれば、報知手段が、第1検出手段から取得された第1検出データと、第2検出手段から取得された第2検出データと、撮像手段から取得された撮像データと、測定手段から取得された測定データとに基づいて、注意喚起情報を報知するので、第1検出データ、第2検出データ、撮像データ、及び測定データに基づいて注意喚起情報を報知でき、状況に応じた注意喚起情報の報知を一層行いやすくなる。
【0107】
付記4に記載の報知システムによれば、注意喚起情報が、撮像手段から取得された撮像データを含むので、撮像データをクレーンの操作者に対して提示でき、クレーンの操作者が吊荷の状況を正確に把握することが可能となる。
【0108】
付記5に記載の報知システムによれば、注意喚起情報が、第1検出手段から取得された第1検出データと、旋回角検出手段から取得された旋回角検出データとを含むので、第1検出データ及び旋回角データをクレーンの操作者に対して提示でき、クレーンの操作者が吊荷に対する風の影響を把握しやすくなる。
【0109】
付記6に記載の報知システムによれば、過去風速風向情報格納手段にて格納されている過去風速風向情報と、所定方法で取得された施工情報であって、構造物の施工段階を示す施工情報とに基づいて、所定の施工段階におけるフック周辺の風速及び風向を予測する予測手段を備え、注意喚起情報が、予測データを含むので、予測データをクレーンの操作者に対して提示でき、クレーンの操作者が所定の施工段階におけるフック周辺の風の状況を予め把握することが可能となる。
【符号の説明】
【0110】
1 クレーン
2 構造物
10 クレーン本体
11 操作室
12 旋回フレーム
13 ブーム
14 フック支持部
15 ワイヤー
16 フック
20 マスト
30 昇降フレーム
50 報知システム
51 外部装置
52 配線
53 ネットワーク
60 フック側検出システム
61 第1検出部
62 撮像部
63 フック側通信部
64 フック側電源部
70 旋回フレーム側検出システム
71 第2検出部
72 測定部
73 旋回角検出部
74 旋回フレーム側通信部
75 旋回フレーム側電源部
80 制御装置
81 操作部
82 制御側通信部
83 出力部
83a 注意喚起領域
84 制御側電源部
85 制御部
85a 報知部
85b 予測部
86 記憶部
86a 過去風速風向DB
D1 基本注意喚起情報
D2 第1検出データ
D3 第2検出データ
D4 撮像データ
D5 旋回角検出データ
D6 予測データ
H1 フック高さ
H2 フック高さ
W 吊荷
α フックの振れ角
γ1 フックの振れ幅
γ2 フックの振れ幅