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特許7445457光硬化性塗料組成物、硬化塗膜およびそれを備える塗膜付き基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】光硬化性塗料組成物、硬化塗膜およびそれを備える塗膜付き基材
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/14 20060101AFI20240229BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20240229BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240229BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20240229BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C09D175/14
B05D3/06 Z
B05D7/24 301T
B05D7/24 302T
B05D7/24 302P
C09D133/04
C09D133/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020028476
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021134221
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】流尾 知充
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晴彦
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112484(JP,A)
【文献】特開2018-111793(JP,A)
【文献】特開2011-126921(JP,A)
【文献】特開2001-002742(JP,A)
【文献】特開2016-186039(JP,A)
【文献】特開2007-284613(JP,A)
【文献】特開2008-260202(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199847(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)イソホロンジイソシアネート、
(A2)エチレングリコール、および
(A3)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、
を反応して得られる光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と、
水酸基価が20~350mgKOH/gである(メタ)アクリルポリオール(B)と、
を含み、
(A1)成分に対する(A2)成分の当量比が0.55~0.95であり、
(A1)成分に対する(A3)成分の当量比が0.10~0.40であることを特徴とする光硬化性塗料組成物。
【請求項2】
(A1)成分に対する(A2)成分の当量比が0.600.90である、請求項1に記載の光硬化性塗料組成物。
【請求項3】
(A1)成分に対する(A3)成分の当量比が0.150.35である、請求項1または2に記載の光硬化性塗料組成物。
【請求項4】
前記光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の重量平均分子量が、2,000~20,000である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光硬化性塗料組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリルポリオール(B)の重量平均分子量が、5,000~150,000である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光硬化性塗料組成物。
【請求項6】
光重合開始剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の光硬化性塗料組成物。
【請求項7】
インモールド成型用加飾フィルムに用いられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の光硬化性塗料組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光硬化性塗料組成物から形成される硬化塗膜。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化塗膜を基材上に備える塗膜付き基材。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光硬化性塗料組成物を基材の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、紫外線照射により前記光硬化性塗料組成物を硬化させて硬化塗膜を形成する硬化工程と、
を有する塗膜付き基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性塗料組成物に関する。また、本発明は、光硬化性塗料組成物から形成される硬化塗膜に関する。さらに、本発明は、光硬化性塗料組成物から形成される硬化塗膜を基材上に備える塗膜付き基材およびその製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装、外装部材、および家電筐体向けなどで用いられているプラスチック加飾の分野では、プラスチック樹脂を型枠(モールド)内で成型する際に、機能性を付与するための加飾フィルムを一緒に貼り合わせるインモールド成型の様な熱成型の手法が広く用いられている。
【0003】
この熱成型に使用する加飾フィルムには、被着体であるプラスチックの立体形状に追従するために熱成型時の加熱状態における伸張性(加熱伸長性)が必要とされるため、機能性を付与するためにフィルム表面に塗布する塗料組成物にも加熱伸張性が求められている。例えば、特許文献1では、重量平均分子量が100000~150000であり、ガラス転移温度が70~100℃であるアクリル樹脂(a)、光重合性多官能モノマー(b)、および光重合開始剤(c)を含む光硬化性樹脂組成物を用いることで、形状追従性に優れ、かつ、良好な表面硬度を有する成型品を得ることができ、表面粘着性が低減された光硬化性フィルムを得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-111793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らは、光硬化性成分のみを含む光硬化性塗料組成物からなる光硬化性塗膜を用いた場合、加熱伸張性と耐薬品性を両立することが困難であることを知見した。したがって、本発明の目的は、耐薬品性および加熱伸張性にバランス良く優れる硬化塗膜を形成可能な光硬化性塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、光硬化性塗料組成物において、(A1)イソホロンジイソシアネート、(A2)エチレングリコール、および(A3)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、を反応して得られる光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と、水酸基価が20~350mgKOH/gである(メタ)アクリルポリオール(B)とを配合することにより、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A1)イソホロンジイソシアネート、
(A2)エチレングリコール、および
(A3)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、
を反応して得られる光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と、
水酸基価が20~350mgKOH/gである(メタ)アクリルポリオール(B)と、
を含むことを特徴とする光硬化性塗料組成物。
[2] (A1)成分に対する(A2)成分の当量比が0.55~0.95である、[1]に記載の光硬化性塗料組成物。
[3] (A1)成分に対する(A3)成分の当量比が0.10~0.40である、[1]または[2]に記載の光硬化性塗料組成物。
[4] 前記光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の重量平均分子量が、2,000~20,000である、[1]~[3]のいずれかに記載の光硬化性塗料組成物。
[5] 前記(メタ)アクリルポリオール(B)の重量平均分子量が、5,000~150,000である、[1]~[4]のいずれかに記載の光硬化性塗料組成物。
[6] 光重合開始剤をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の光硬化性塗料組成物。
[7] インモールド成型用加飾フィルムに用いられる、[1]~[6]のいずれかに記載の光硬化性塗料組成物。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載の光硬化性塗料組成物から形成される硬化塗膜。
[9] [8]に記載の硬化塗膜を基材上に備える塗膜付き基材。
[10] [1]~[6]のいずれかに記載の光硬化性塗料組成物を基材の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、紫外線照射により前記光硬化性塗料組成物を硬化させて硬化塗膜を形成する硬化工程と、
を有する塗膜付き基材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外観、粘着性、透明性、基材密着性、耐薬品性、および加熱伸張性にバランス良く優れる硬化塗膜を形成可能な光硬化性塗料組成物を提供することができる。また、本発明によれば、このような光硬化性塗料組成物から形成される硬化塗膜、硬化塗膜を備える塗膜付き基材、および塗膜付き基材の製造方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<光硬化性塗料組成物>
本発明による光硬化性塗料組成物(以下、単に「塗料組成物」ということがある)は、少なくとも、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と、(メタ)アクリルポリオール(B)とを含むものであり、さらに、光重合開始剤や溶剤を含んでもよい。本発明による塗料組成物は、硬化して形成された塗膜が外観、粘着性、透明性、基材密着性、耐薬品性、および加熱伸張性にバランス良く優れるものである。このような塗料組成物は、特にインモールド成型用加飾フィルムの塗料として好適に用いることができる。
【0010】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル化合物」とは、メタクリル化合物およびアクリル化合物を表す。「固形分」とは、光硬化塗料組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものであり、硬化させたときに硬化被膜を構成する成分を示す。以下、光硬化性塗料組成物を構成する各成分について説明する。
【0011】
(光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A))
光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)は、少なくとも、(A1)イソホロンジイソシアネート、(A2)エチレングリコール、および(A3)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを反応して得られるものである。これらのモノマー成分を反応して得られた光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)を用いることで、外観、粘着性、透明性、基材密着性、耐薬品性、および加熱伸張性にバランス良く優れた塗膜を得ることができる。
【0012】
上記の(A3)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートに加えて、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、およびペンタエリスリトールテトラアクリレートを反応させても良い。これらの(メタ)アクリレート化合物を用いた光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)は、外観、粘着性、透明性、基材密着性、耐薬品性、および加熱伸張性に優れる硬化塗膜を形成し易くなる。
【0013】
(A1)成分に対する(A2)成分の当量比((A1)と(A2)との混合におけるイソシアネート基(NCO)と水酸基(OH)の当量比)は、好ましくは0.55~0.95であり、より好ましくは0.60~0.90であり、さらに好ましくは0.65~0.85である。(A1)成分に対する(A2)成分の当量比が上記範囲内であれば、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)は、外観、粘着性、透明性、基材密着性、耐薬品性、および加熱伸張性に優れる硬化塗膜を形成し易くなる。
【0014】
(A1)成分に対する(A3)成分の当量比((A1)と(A3)との混合におけるイソシアネート基と水酸基の当量比)は、好ましくは0.10~0.40であり、より好ましくは0.15~0.35であり、さらに好ましくは0.20~0.30である。(A1)成分に対する(A3)成分の当量比が上記範囲内であれば、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)は、外観、粘着性、透明性、基材密着性、耐薬品性、および加熱伸張性に優れる硬化塗膜を形成し易くなる。
【0015】
光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000~20,000であり、より好ましくは3,000~15,000であり、さらに好ましくは4,000~12,000である。重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。重量平均分子量(Mw)が上記数値範囲内であれば、加熱伸張性に優れるため、インモールド成型用加飾フィルムの塗料として好適に用いることができる。
【0016】
光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の含有量は、塗膜の硬化性、硬化塗膜の基材密着性、耐薬品性の観点から、光硬化塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは50質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは55質量%以上85質量%以下である。
【0017】
(反応)
本発明による光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)は、少なくとも、上記の(A1)~(A3)のモノマー成分が反応して得られるものであり、温度や時間等の反応条件は適宜設定することができる。例えば、まず、反応器にBHT等の重合禁止剤、ジラウリン酸ジブチルスズ等のスズ触媒および(A1)成分と(B)成分を添加して、70~90℃、1~2時間の条件で反応させる。その後、(C)成分を添加して、70~90℃、2~4時間の条件で反応させ、本発明による光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)を得ることができる。なお、反応の終点は、赤外吸収分析により、イソシアネート基に由来したピークの消失により確認することができる。
【0018】
((メタ)アクリルポリオール(B))
(メタ)アクリルポリオール(B)としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を含有する(メタ)アクリル化合物の重合物を用いることができる。
【0019】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0020】
水酸基を有する(メタ)アクリル化合物と共重合可能なその他の化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する(メタ)アクリル化合物;イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シジクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリル化合物;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基を有する(メタ)アクリル化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-メチル-[1,3]-ジオキソラン-4-イル-メチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;マレイン酸ジエチル、フタル酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステル化合物;スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルトルエン、アクリロニトリル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、塩化ビニルなどのビニル化合物;N,Nジメチル(メタ)アクリルアミド、N,Nジエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、およびtert-ブチル(メタ)アクリレートを2種以上併用することが好ましい。
【0021】
(メタ)アクリルポリオール(B)の重量平均分子量(Mw)は、5,000~150,000であり、より好ましくは8,000~100,000であり、さらに好ましくは10,000~80,000である。重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。重量平均分子量(Mw)が上記数値範囲内であれば、加熱伸張性に優れるため、インモールド成型用加飾フィルムの塗料として好適に用いることができる。
【0022】
(メタ)アクリルポリオール(B)の含有量は、塗膜の硬化性、硬化塗膜の加熱伸張性、耐薬品性の観点から、光硬化塗料組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上45質量%以下である。
【0023】
(水酸基価)
(メタ)アクリルポリオール(B)の水酸基価(mgKOH/g)は、樹脂に含まれる水酸基(OH基)数に依存して変動することから(メタ)アクリルポリオール(B)中に水酸基がどの程度存在するかを示す指標となる。水酸基価の算出方法は、後述する実施例に記載の方法である。なお、ここでいう「水酸基価」は、下記実施例における水酸基価(固形分)に相当する。(メタ)アクリルポリオール(B)の水酸基価は、20~350であり、好ましくは35~300であり、より好ましくは50~250である。(メタ)アクリルポリオール(B)の水酸基価が上記数値範囲内であれば、耐薬品性および加熱伸張性をバランス良く向上させることができる。
【0024】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、特に限定されず、従来公知の紫外線硬化用の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系重合開始剤、フォスフィンオキサイド系重合開始剤、ベンゾイルホルメート系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤、ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤等が挙げられる。
【0025】
アセトフェノン系重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル-2-モルホリノプロパン-1-オン、および2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられる。
フォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドおよび2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
ベンゾイルホルメート系重合開始剤としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
チオキサントン系重合開始剤としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
オキシムエステル系重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]およびエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、および4,4′-ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロ-ブタノン-1および2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等が挙げられる。
【0026】
光重合開始剤の含有量は、硬化性および基材密着性への影響の観点から、塗料組成物の固形分量に対して、好ましくは0.1質量%以上15.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上10.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上7.0質量%以下である。
【0027】
(その他の成分)
本発明による樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)以外の光硬化性樹脂、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリルポリオール(B)以外の熱可塑性樹脂、およびその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、帯電防止剤、重合禁止剤、非反応性希釈剤、つや消し剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤、レベリング剤、撥水撥油剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、密着性向上剤、光増感剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、シランカップリング剤、擦傷防止剤、可塑剤等を必要に応じて配合することができる。
【0028】
<塗料組成物の調製方法>
本発明による塗料組成物は、上記の各成分を、従来公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用いて、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、ホモディスパー、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、塗料組成物を塗布に適した粘度に調整する等、必要に応じて溶剤で希釈することができる。溶剤としては、塗料組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステル又はエーテルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールのモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールのモノエチルエーテル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-又はi-プロパノール、n-、i-、sec-又はt-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)などが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
(硬化塗膜)
本発明による塗料組成物から形成された硬化塗膜は、厚さ3μmの場合、JIS K 7136に準拠して測定したヘイズが、1%未満であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。また、厚さ3μmの硬化塗膜は、JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が、90%以上であることが好ましい。ヘイズおよび全光線透過率が上記範囲内であれば、透明性に優れる。
【0031】
本発明による塗料組成物から形成された硬化塗膜は、厚さ3μmの場合、温度150℃の条件で測定した加熱伸張性(伸張率)が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。伸張率の数値が上記範囲内であれば、加熱伸張性に優れ、熱成型用加飾フィルム、特にインモールド成型用加飾フィルムの塗料として好適に用いることができる。加熱伸張性の測定方法は、後述する実施例に記載の方法である。
【0032】
<塗膜付き基材>
本発明による塗膜付き基材は、上記の硬化塗膜を基材上に備えるものである。基材は、特に限定されるものではなく、従来公知の基材を用いることができる。例えば、塗膜付き基材がインモールド成型用加飾フィルムである場合には、基材として、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメタクリル酸メチルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。
【0033】
本発明による塗膜付き基材における硬化塗膜は、多層に塗布する必要のある用途においては最表面の保護層、基材に直接塗布するプライマー層、および中間の中塗り層として適用が可能であり、特に、プライマー層や中塗り層に適している。
【0034】
本発明による塗膜付き基材は、多層に塗布する必要のある用途においては他の層をさらに備えてもよい。例えば、本発明による塗膜付き基材は、基材と硬化塗膜の間に他の層を備えていてもよく、および/または、硬化塗膜の上にさらに他の層を備えていてもよい。本発明による塗膜付き基材における他の層としては、例えば、保護層、中塗り層、プライマー層等が挙げられる。これらの他の層は、1層のみで構成されていてもよく、多層で構成されていてもよい。より具体的には、本発明による塗膜付き基材において、硬化塗膜がプライマー層である場合にはその他の層は保護層や中塗り層となり、硬化塗膜が中塗り層である場合にはその他の層は保護層やプライマー層となる。
【0035】
<塗膜付き基材の製造方法>
本発明による塗膜付き基材は、上記の塗料組成物を基材の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後、紫外線照射により上記の脂組成物を硬化させて硬化塗膜を形成する硬化工程と、
を含むものである。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0036】
(塗布工程)
塗布工程は、基材の片面に、従来公知の方法により、上記の塗料組成物を塗布する工程である。塗布には、例えば、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗布機が使用できる。これらの中でも、作業性および生産性の観点からグラビアコーターを用いた塗布方法が好ましい。
【0037】
塗布膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、0.5~50μmであることが好ましい。乾燥性、硬化性の観点から更に好ましい上限は30μmであり、撥水性や耐薬品性の観点から更に好ましい下限は1μmである。
【0038】
塗料組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗布後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは10~200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から更に好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から更に好ましい下限は30℃である。
【0039】
(硬化工程)
硬化工程は、基材の塗布面に紫外線を照射して、塗布された塗料組成物を硬化させて、硬化塗膜を形成する工程である。紫外線で硬化させる方法としては、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射量は、塗料組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から、好ましくは100~3,000mJ/cmであり、より好ましくは200~1,000mJ/cmである。
【実施例
【0040】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
<光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の合成>
まず、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の合成のために、モノマー成分として以下の原材料を準備した。
・(A1-1)成分:イソホロンジイソシアネート
・(A1-2)成分:キシリレンジイソシアネート(イソシアヌレート体、固形分量:75質量%)
・(A2-1)成分:エチレングリコール
・(A2-2)成分:1,4-シクロヘキサンジメタノール
・(A2-3)成分:ジメチロールトリシクロデカン
・(A3-1)成分:ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成株式会社製、商品名:アロニックスMT-3648、水酸基価280)
・(A3-2)成分:ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成株式会社製、商品名:アロニックスM-306、水酸基価160)
・(A3-3)成分:2-ヒドロキシエチルアクリレート
【0042】
攪拌器、還流冷却器、温度計を取り付けた4つ口フラスコに、(A1-1)成分111g、(A2-1)成分24.8g、メチルエチルケトン149.1g、ジラウリン酸ジブチルスズ0.25gを入れ、オイルバスにて70℃まで加温しながら1時間反応させた。その後、(A3-2)成分87.8g、4-メトキシフェノール0.07g、ジブチルヒドロキシトルエン0.11g加え4時間反応させ、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の(1)を含む樹脂溶液を得た。なお、反応の終点は赤外吸収分析でイソシアネート基に由来したピークの消失により確認した。
【0043】
また、表1に記載の配合に従って各モノマー成分を反応させたことと、溶剤の一部を酢酸ブチルに変更したこと以外は上記と同様にして、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の(2)~(6)を含む樹脂溶液を得た。
【0044】
<(メタ)アクリルポリオール(B)の合成>
まず、(メタ)アクリルポリオール(B)の合成のために、モノマー成分として以下の原材料を準備した。
・(B1)成分:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・(B2)成分:メチルメタクリレート
・(B3)成分:n-ブチルメタクリレート
・(B4)成分:tert-ブチルメタクリレート
・(B5)成分:メタクリル酸
また、溶剤成分として以下の原材料を準備した。
・(C1)成分:酢酸ブチル
・(C2)成分:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・(C3)成分:メチルエチルケトン
・(C4)成分:プロピレングリコールモノメチルエーテル
さらに、重合開始剤成分として以下の原材料を準備した。
・(D1-1)成分:tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート
・(D1-2)成分:tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート
【0045】
攪拌器、還流冷却器、Nガス導入管、温度計を取り付けた4つ口フラスコに、(C1)成分68g、(C2)成分17gを入れ、フラスコ内の温度が115℃になるまで加温した。フラスコの内温を115℃に保ちながら、(B1)成分13.5g、(B2)成分63.5g、(B3)成分8.5g、(B4)成分13g、(B5)成分1.5g、(D1-1)成分3.5gの混合物を滴下漏斗で2時間かけ等速滴下した後、さらに1時間撹拌し反応させた。その後、(D1-2)成分0.1gを30分おきに計3回(合計0.3g)加え、さらに1時間反応させた。これに(C3)成分21.4gを加えて希釈をし、(メタ)アクリルポリオール(B)の(1)を含む樹脂溶液を得た。
【0046】
また、表2に記載の配合ならびに反応温度に従って各成分を反応させた以外は上記と同様にして、(メタ)アクリルポリオール(B)の(2)~(5)および(8)を含む樹脂溶液を得た。
【0047】
また、(C1)成分、(C2)成分の代わりとして、(C4)成分を用いたこと以外は上記と同様にして、(メタ)アクリルポリオール(B)の(7)および(9)を含む樹脂溶液を得た。
【0048】
攪拌器、還流冷却器、Nガス導入管、温度計を取り付けた4つ口フラスコに、(C1)成分168.2g、(C2)成分42.1gを入れ、フラスコ内の温度が90℃になるまで加温した。フラスコの内温を90℃に保ちながら、(B1)成分13.5g、(B2)成分63.5g、(B3)成分8.5g、(B4)成分13g、(B5)成分1.5g、(D1-1)成分0.05gの混合物を滴下漏斗で2時間かけ等速滴下した後、さらに2時間撹拌し反応させた。その後、(D1-2)成分0.05gを1時間おきに2回、次いで(D1-2)成分0.1gを1時間おきに2回(合計4回、0.3g)加え、さらに1時間反応させた。その後、フラスコの内温を110℃まで加温し1時間撹拌した。これに(C3)成分21.4gを加えて希釈をし、(メタ)アクリルポリオール(B)の(6)を含む樹脂溶液を得た。
【0049】
<樹脂の評価>
(重量平均分子量)
上記で合成した光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の(1)~(6)および(メタ)アクリルポリオール(B)の(1)~(9)について、下記の測定条件でゲル浸透クロマトグラフィーにより測定し、その測定結果を表1および2に示した。
[測定条件]
・装置:「HLC-8220」(東ソー(株)製)
・カラム:「TSKgel Super H4000」1本と「TSKgel Super H2000」2本を連結(いずれも東ソー(株)製、内径6mm×長さ15cm)
・溶離液:テトラヒドロフラン99%(Stabilized with BHT)
・流速:0.5ml/min
・検出器:HLC-8220装置に組込まれた示差屈折率計(RI)
・カラム恒温槽温度:40℃
・標準物質:標準ポリスチレン
・サンプル調製法:各樹脂(1)~(9)を含む樹脂溶液をサンプル管に量り取り、
テトラヒドロフランを加えて約100倍に希釈
【0050】
(固形分)
上記で合成した光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の(1)~(6)を含む樹脂溶液について、産業用恒温試験機(いすず製作所製、型番:VTFP-64-1S)を用いて、160℃で1時間の条件で静置し、試験前後の質量差から固形分量(%)を測定した。測定結果を表1に示した。
また、(メタ)アクリルポリオール(B)の(1)~(9)を含む樹脂溶液について、産業用恒温試験機(いすず製作所製、型番:VTFP-64-1S)を用いて、108℃で3時間の条件で静置し、試験前後の質量差から固形分量(%)を測定した。測定結果を表2に示した。
【0051】
(水酸基価)
上記で合成した(メタ)アクリルポリオール(B)の(1)~(9)を含む樹脂溶液(以下、アクリルポリオール溶液)について、JIS K0070に準拠して、水酸基価を以下のように測定した。
丸底フラスコ中に試料(アクリルポリオール溶液)2gを正確に秤量し、アセチル化試薬(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、95~100℃のグリセリン浴中で1時間加熱した。その後フラスコをグリセリン浴から取り出し、放冷した後に水1mlを加えて振り動かした。再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール5mlを加えた。これに、フェノールフタレイン-エタノール溶液を加え、0.5M(N/2)水酸化カリウム-エタノール溶液で滴定した。紫色の呈色が30秒間消えなくなったときを滴定の終点とした。なお、本試験と並行して、試料を用いない以外は同様の試験である空試験を行った。
【0052】
アクリルポリオール溶液の水酸基価A(mgKOH/g)は、次式によって計算した。
A=[{(B-C)×f×28.05}/S]+D
[S:試料の使用量(g)、B:空試験のN/2水酸化カリウム-エタノール溶液の使用量(ml)、C:本試験のN/2水酸化カリウム-エタノール溶液の使用量(ml)、f:N/2水酸化カリウム-エタノール溶液のファクター、D:酸価(mgKOH/g)]
【0053】
なお、前記酸価は、以下のようにして測定した。
コニカルビーカーにアクリルポリオール溶液1~5gを正確に秤量し、トルエン/エタノール=7/3(体積比)混合溶液を30~50ml加えて該樹脂溶液を溶かし、指示薬としてフェノールフタレイン-エタノール溶液を2滴加え、N/10水酸化カリウム-エタノール溶液で滴定した。液の赤みが30秒間消えなくなったときを滴定の終点とし、アクリルポリオール溶液の酸価は次式によって計算した。
アクリルポリオール溶液の酸価=(B×f×5.61)/S
(B:N/10水酸化カリウム-エタノール溶液の使用量(ml)、f:N/10水酸化カリウム-エタノール溶液のファクター、S:樹脂溶液の質量(g))
【0054】
算出した水酸基価と前記固形分割合とから、固形分換算における水酸基価を算出した。
水酸基価(固形分)=A×アクリルポリオール溶液中の固形分割合(質量%)/100
【0055】
<光硬化性塗料組成物の調製>
光硬化性塗料組成物のために、上記で合成した光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の(1)~(6)および(メタ)アクリルポリオール(B)の(1)~(9)以外にも、以下の原材料を準備した。
・光重合開始剤1(アセトフェノン系重合開始剤、IGM Resins社製、商品名:Omnirad 184)
・(メタ)アクリレート化合物1(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート、東亞合成株式会社製、商品名:アロニックスM-400)
・ポリエステルポリオール1(DIC株式会社製、商品名:バーノックD6-439)
・溶剤1(メチルエチルケトン)
・溶剤2(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
[実施例1~8、比較例1~9]
表3に記載の配合に従って、各成分を混合することにより、光硬化性塗料組成物を得た。
【0056】
<塗膜付き基材の製造>
[実施例1~8、比較例1~9]
PC/PMMAフィルム(住友化学株式会社製、商品名:テクノロイC001、厚さ300μm)のPMMA面に、上記で調製した光硬化性塗料組成物をバーコーターを用いて塗布し、続いて80℃の熱風乾燥器で1分乾燥させた。更に、高圧水銀ランプにて紫外線を照射することで(照射量:200mJ/cm)、塗膜を硬化させ、硬化塗膜を形成し、塗膜付き基材を得た。硬化膜厚は約3μmになるように調整した。
【0057】
<性能評価>
(塗料状態)
上記で調製した光硬化性塗料組成物の状態を目視にて確認した。下記の基準にて塗料状態を判定した。判定結果を表4に示した。
[判定基準]
〇:濁りなどなく、良好であった。
×:多少白濁していた。
【0058】
(塗膜外観)
上記で製造した塗膜付き基材の塗膜の外観を目視にて確認した。下記の基準にて塗膜外観を判定した。判定結果を表4に示した。
[判定基準]
〇:良好であった。
△:多少スジがあったが、実用上問題無かった。
×:白化していた。
【0059】
(塗膜粘着性)
上記で製造した塗膜付き基材の塗膜の粘着性を指触にて確認した。下記の基準にて塗膜の粘着性を判定した。判定結果を表4に示した。
[判定基準]
〇:粘着性が無かった。
×:粘着性があった。
【0060】
(光学特性)
上記で製造した塗膜付き基材について、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社 製、型番:NDH4000)を用いて、JIS K 7136に準拠してヘイズ(HZ)を測定し、JIS K 7361-1に準拠して全光線透過率(TT)を測定した。測定結果を表4に示した。また、下記の基準にて光学特性を判定した。
[HZ判定基準]
〇:1%未満であった。
×:1%以上であった。
[TT判定基準]
〇:90%以上であった。
×:90%未満であった。
【0061】
(基材密着性)
上記で製造した硬化塗膜付き基材について、JIS K 5600-5-6に記載されている碁盤目試験の方法に準拠して、カッターを用いて1mm間隔で塗膜に10マス×10マスの切れ込みを入れ、碁盤目を付けた試験片を作製した。続いて、セロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製)を試験片の碁盤目部分に貼り付けた後、このセロテープ(登録商標)を速やかに、碁盤目に対して45度斜め上方方向に引っ張って剥離させ、残った碁盤目の塗膜数を測定した。測定結果を表4に示した。また、下記の基準にて基材密着性を判定した。
[判定基準]
〇:剥離が全く無かった(100目残存)であった。
△:僅かに剥離があった(90目以上100目以下残存)であった。
×:剥離が多かった(90目未満残存)であった。
【0062】
(耐薬品性)
上記で製造した塗膜付き基材にニュートロジーナ製日焼け止めクリーム(SPF45)を5cm×5cmの面積に0.5g塗布した。続いて、80℃×4時間静置後に洗浄し、塗膜の状態を目視にて確認した。確認した結果を下記の基準にて判定した。判定結果を表4に示した。
[判定基準]
〇:異常がなかった。
△:わずかに跡が残ったが、実用上問題無かった。
×:白化またはフクレが発生した。
【0063】
(加熱伸張性)
上記で製造した塗膜付き基材について、15mm×150mmの短冊状の試験片を作成した。続いて、150℃にて、試験片を引張試験機(株式会社島津製作所製、型番:AG-Xplus)でチャック間距離:100mm、引張速度:10mm/分の条件で引張り、目視で塗膜にクラックが入るまでの伸張率を測定した。測定結果を表4に示した。また、下記の基準にて加熱伸張性を判定した。なお、表4中の「-」は測定不可であったことを示す。
[判定基準]
○:80%以上であった。
△:50%以上80%未満であった。
×:50%未満であった。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】