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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電圧変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H02M3/28 V
H02M3/28 P
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020039443
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021141772
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】松下 由憲
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/061924(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続され、スイッチング素子により1次側出力電圧を制御する1次側回路と、
互いに異なる指令電圧に応じた第1及び第2の要求出力電圧を出力するための第1及び第2の出力回路を含む2次側回路と、
前記1次側回路と前記2次側回路との間を絶縁し、前記1次側出力電圧を前記2次側回路に供給するトランスと、
前記第1及び第2の出力回路それぞれの出力電圧を検出する第1及び第2の電圧検出部と、
前記第1及び第2の出力回路それぞれの出力電流を検出する第1及び第2の電流検出部と、
前記第1及び第2の電圧検出部のそれぞれにより検出された第1及び第2の出力電圧とそれぞれの指令電圧との差分に基づいて、前記スイッチング素子をスイッチングするための制御信号を生成する制御信号生成部と、を備え、
前記2次側回路は、前記トランスと前記第1の出力回路との間に、周波数が小さくなるに従ってインピーダンスが大きくなる特性を有する第1のフィルタ回路と、前記トランスと前記第2の出力回路との間に、周波数が大きくなるに従ってインピーダンスが大きくなる特性を有する第2のフィルタ回路と、を有し、
前記制御信号生成部は、前記第1及び第2の出力回路のうち検出された出力電流とそれぞれの指令電圧とから求められる要求電力が大きい方の指令電圧と、検出された出力電圧との差分に基づいて前記制御信号のデューティ比を決定し、前記第1及び第2の出力回路のうち検出された出力電流とそれぞれの指令電圧とから求められる要求電力が小さい方の指令電圧と、検出された出力電圧との差分に基づいて前記制御信号の周波数を決定する
ことを特徴とする電圧変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1つのインバータと1つのトランスとを利用して異なる2つの電圧を出力する絶縁型DC/DCコンバータ(電圧変換装置)が提案されている(非特許文献1参照)。
【0003】
図4は、比較例に係る電圧変換装置を示す回路構成図である。図4に示すように、電圧変換装置100は、1次側回路110と、2次側回路120と、絶縁トランスITとを備えて構成されている。1次側回路110は、電源に接続され、複数のスイッチング素子S1~S4を有したインバータ回路111を備えている。複数のスイッチング素子S1~S4は、所定のデューティ比Dと周波数fとでスイッチングされる。絶縁トランスITの1次側巻線IT1には、入力電圧Vとデューティ比Dとによって定まる大きさの電圧が周波数fで印加される。
【0004】
2次側回路120は、第1の出力回路121と、第2の出力回路122と、フィルタ回路123とを備えている。第1の出力回路121は、絶縁トランスITの2次側巻線IT2と第1負荷Lo1との間に介在されるものであり、スイッチング素子、インダクタンス、及びコンデンサ等を備えて構成されている。第2の出力回路122についても第1の出力回路121と同様に、絶縁トランスITの2次側巻線IT2と第2負荷Lo2との間に介在されるものであり、スイッチング素子、インダクタンス、及びコンデンサ等を備えて構成されている。
【0005】
フィルタ回路123は、絶縁トランスITの2次側巻線IT2と第2の出力回路122との間に介在されるものであり、直列LCフィルタ回路123aと、並列LCフィルタ回路123bとを備えている。直列LCフィルタ回路123aは、電圧の周波数に応じてインピーダンスが変化する回路であり、並列LCフィルタ回路123bは後段回路(第2の出力回路122)との干渉を防ぐ回路である。
【0006】
図5は、図4に示した直列LCフィルタ回路123aのインピーダンス特性を示す図である。図5に示すように、直列LCフィルタ回路123aは、所定周波数f’以上の領域において周波数が大きくなるに従ってインピーダンスZが大きくなる特性を有している。
【0007】
このような比較例に係る電圧変換装置100は、第1負荷Lo1の抵抗が小さく、第2負荷Lo2の抵抗が大きい場合、以下のように動作する。まず、第1負荷Lo1の抵抗の大きさに合わせてインバータ回路111のスイッチング時におけるデューティ比Dが決定される。ここで、第1負荷Lo1の抵抗が小さいので必要な電流値が大きくなり、デューティ比Dも大きくなる。また、第2負荷Lo2の抵抗の大きさに合わせてインバータ回路111のスイッチング時における周波数fが決定される。ここで、第2負荷Lo2の抵抗が大きいことから必要な電流値が小さくなりインピーダンスZが大きくなるように周波数fが決定される。そして、決定されたデューティ比Dと周波数fとが達成されるように複数のスイッチング素子S1~S4がスイッチングされる。
【0008】
2次側回路120においては、デューティ比Dに応じた電力が得られるが第1負荷Lo1の抵抗の大きさに合わせてデューティ比Dが決定されているため、第1の出力回路121に供給される電力については、第2の出力回路122に供給される電力分だけ不足する。よって、不足分を補うため第1の出力回路121のフィードバック信号(実電圧Vd)に基づいて1次側回路110におけるインバータ回路111のデューティ比Dが大きくされる。デューティ比Dが大きくなった結果、第2の出力回路122のフィードバック信号(実電圧Vf)が指令電圧Vfを超えることとなり、実電圧Vfを抑えるべく周波数fが大きくなる。周波数fが大きくなったことによってカットされた電力は第1の出力回路121に伝送される。
【0009】
周波数fが大きくなった状態において第1の出力回路121の実電圧Vdが指令電圧Vdに満たない場合には、更にデューティ比Dが大きくされる。そして、上記の動作を繰り返すこととなる。一方、周波数fが大きくなった状態において第1の出力回路121の実電圧Vdが指令電圧Vdを超える場合には、デューティ比Dが小さくされる。デューティ比Dが小さくされると、それを保証するため周波数fが小さくなりインピーダンスZも小さくなる。インピーダンスZが小さくなると第1の出力回路121に供給される実電圧Vdが小さくなる。以降は、指令電圧Vd,Vfが達成されるまで、上記を繰り返すこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】電気学会 半導体電力変換/モータドライブ合同研究会(2018.1.19~2018.1.20)「インバータのデューティーサイクルと周波数に着目したDC/DCコンバータのデュアルポート出力制御」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、非特許文献1に記載の電圧変換装置は、第1負荷Lo1の抵抗が大きく、第2負荷Lo2の抵抗が小さい場合には、以下のように要求を満たせなくなる。まず、第1負荷Lo1の抵抗が大きいので必要な電流値が小さくなり、デューティ比Dも小さくなる。また、第2負荷Lo2の抵抗が小さいことから必要な電流値が大きくなりインピーダンスZが小さくなるように周波数fが決定される。その後、インピーダンスZが最小となる周波数fで動作させても、第1負荷Lo1の大きい抵抗に合わせてデューティ比Dが決定されることからデューティ比Dは第2負荷Lo2側からの指令電圧Vfを満たすまで大きくなることはなく、指令電圧Vfを満たすことができない。
【0012】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、負荷に対してより適切に電圧を出力することができる電圧変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電圧変換装置は、電源に接続され、スイッチング素子により1次側出力電圧を制御する1次側回路と、互いに異なる指令電圧に応じた第1及び第2の要求出力電圧を出力するための第1及び第2の出力回路を含む2次側回路と、前記1次側回路と前記2次側回路との間を絶縁し、前記1次側出力電圧を前記2次側回路に供給するトランスと、前記第1及び第2の出力回路それぞれの出力電圧を検出する第1及び第2の電圧検出部と、前記第1及び第2の出力回路それぞれの出力電流を検出する第1及び第2の電流検出部と、前記第1及び第2の電圧検出部のそれぞれにより検出された第1及び第2の出力電圧とそれぞれの指令電圧との差分に基づいて、前記スイッチング素子をスイッチングするための制御信号を生成する制御信号生成部と、を備え、前記2次側回路は、前記トランスと前記第1の出力回路との間に、周波数が小さくなるに従ってインピーダンスが大きくなる特性を有する第1のフィルタ回路と、前記トランスと前記第2の出力回路との間に、周波数が大きくなるに従ってインピーダンスが大きくなる特性を有する第2のフィルタ回路と、を有し、前記制御信号生成部は、前記第1及び第2の出力回路のうち検出された出力電流とそれぞれの指令電圧とから求められる要求電力が大きい方の指令電圧と、検出された出力電圧との差分に基づいて前記制御信号のデューティ比を決定し、前記第1及び第2の出力回路のうち検出された出力電流とそれぞれの指令電圧とから求められる要求電力が小さい方の指令電圧と、検出された出力電圧との差分に基づいて前記制御信号の周波数を決定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、負荷に対してより適切に電圧を出力することができる電圧変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る電圧変換装置の回路構成図である。
図2】第1及び第2の直列LCフィルタ回路のインピーダンス特性を示す図である。
図3図1に示した制御部の詳細を示すブロック図である。
図4】比較例に係る電圧変換装置を示す回路構成図である。
図5図4に示した直列LCフィルタ回路のインピーダンス特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る電圧変換装置の回路構成図である。本実施形態に係る電圧変換装置1は、例えば、車両に搭載されるものであり、1つの電源Eを利用して、異なる指令電圧に応じた複数の要求出力電圧を出力する装置であり、直流電圧から直流電圧に変換するDC/DCコンバータである。電圧変換装置1は、1次側回路10と、2次側回路20と、絶縁トランス(トランス)Tと、制御部(制御信号生成部)30とを備える。なお、1次側回路10と、2次側回路20との間は、絶縁トランスTにより絶縁されている。
【0018】
1次側回路10は、入力側が直流の電源Eに接続され、出力側が絶縁トランスTの1次側巻線T1と接続されるものであり、インバータ回路11を有して構成されている。1次側回路10は、1次側出力電圧Vt1を絶縁トランスTに印加するものである。
【0019】
電源Eは、例えば充放電を繰り返すことができる2次電池であり、直流電圧を出力側(絶縁トランスT側)に出力するものである。電源Eは、出力側がインバータ回路11に接続され、直流電圧をインバータ回路11に印加するものである。
【0020】
インバータ回路11は、複数のスイッチング素子SWを備え、複数のスイッチング素子SWのスイッチングによって電圧パルス信号(矩形波)を生成するものであって、絶縁トランスTに印加される1次側出力電圧Vt1を制御するものである。インバータ回路11は、入力側が電源Eに接続され、出力側が絶縁トランスTの1次側巻線T1に接続されている。
【0021】
なお、インバータ回路11は、図1において2つのスイッチング素子SWが図示されているが、特に2つに限らず、1つ又は3つ以上を備えていてもよい。また、インバータ回路11は、スイッチング素子SWのスイッチングによって1次側出力電圧Vt1を制御することができれば、どのような構成であってもよい。特に、インバータ回路11は例えば3レベルの矩形波を生成できる回路(フルブリッジコンバータやハーフブリッジコンバータ等)であれば、構成を問うものではない。
【0022】
絶縁トランスTは、1次側回路10と2次側回路20との間を絶縁するものであって、1次側巻線T1と2次側巻線T2とを備えている。この絶縁トランスTは、1次側回路10の1次側出力電圧Vt1に対応する2次側出力電圧Vt2を2次側回路20に供給する。すなわち絶縁トランスTは、1次側巻線T1と2次側巻線T2との巻線比に応じた交番電圧を2次側回路20に印加する。
【0023】
2次側回路20は、絶縁トランスTの2次側巻線T2と接続されるものであり、異なる指令電圧に応じた要求出力電圧を出力する2つの出力回路20,20を含んで構成されている。
【0024】
各出力回路20,20は、絶縁トランスTの2次側巻線T2から並列に分岐された分岐先において設けられており、それぞれが整流回路21,21と、電圧検出部22,22と、電流検出部23,23を備えている。第1及び第2の整流回路21,21は、いわゆる全波整流回路であって、スイッチング素子、インダクタンス、及びコンデンサを備えて構成されている。なお、第1及び第2の整流回路21,21は、全波整流できるものであれば、その回路構成を問うものではない。第1及び第2の電圧検出部22,22は、各出力回路20,20の出力電圧V,Vを検出するものである。第1及び第2の電圧検出部22,22は、それぞれの整流回路21,21及びそれぞれの負荷(図示せず)と並列接続されている。第1及び第2の電圧検出部22,22は、2つの出力回路20,20の出力電圧V,Vに応じた信号を制御部30に送信する。第1及び第2の電流検出部23,23は、各出力回路20,20の出力電流I,Iを検出するものである。第1及び第2の電流検出部23,23は、例えば出力回路20,20の正極側のライン上に配置されている。
【0025】
制御部30は、インバータ回路11を構成する複数のスイッチング素子SWをスイッチング制御することで、1次側出力電圧Vt1を制御するものである。この制御部30は、各出力回路20,20が負荷に供給すべき要求出力電圧(すなわち指令電圧V ,V )と、各電圧検出部22,22により検出された各出力回路20,20の出力電圧V,Vとの差分に基づいて、複数のスイッチング素子SWをスイッチングするための制御信号を生成するものである。指令電圧V ,V の情報については、例えば制御部30に予め格納される等して制御部30に保有されている。
【0026】
また、2次側回路20は、絶縁トランスT(2次側巻線T2)と2つの出力回路20,20との間に、特定の周波数に対応する周波数信号を透過させるフィルタ回路40,40を備えている。各フィルタ回路40,40は、直列LCフィルタ回路41,41と、並列LCフィルタ回路42,42とを備えている。
【0027】
各直列LCフィルタ回路41,41は、周波数に対するインピーダンス特性が略対称とされたものである。各並列LCフィルタ回路42,42は、後段回路(整流回路21,21)との干渉を防ぐための回路である。
【0028】
図2は、第1及び第2の直列LCフィルタ回路41,41のインピーダンス特性を示す図である。図2に示すように、第1の直接LCフィルタ回路41は、第1の特定の周波数fm1以下において周波数fが小さくなるに従ってインピーダンスZが大きくなる特性を有するものである。一方、第2の直接LCフィルタ回路41は、第2の特定の周波数fm2(<fm1)以下において周波数fが大きくなるに従ってインピーダンスZが大きくなる特性を有するものである。なお、第1及び第2の直列LCフィルタ回路41,41は、第1の特定の周波数fm1と第2の特定の周波数fm2との間の周波数fiにおいてインピーダンスZが同じとなっている。
【0029】
図3は、図1に示した制御部30の詳細を示すブロック図である。図3に示す制御部30は、2つのデューティ生成部31,31と、2つの周波数生成部32,32と、2つの電力換算部33,33と、電力比較部34と、判定部35と、スイッチ信号生成部36と、ドライブ回路37とを備えている。
【0030】
2つのデューティ生成部31,31は、2つの電圧検出部22,22により検出された出力電圧V,Vと、それぞれの指令電圧V ,V との差分に基づいて、2つのデューティ比候補D,Dを生成するものである。
【0031】
具体的に、第1のデューティ生成部31は、第1の電圧検出部22により検出された出力電圧Vと、第1の出力回路20側の指令電圧V との差分に基づいて、第1のデューティ比候補Dを生成するものである。第1のデューティ生成部31は、検出された出力電圧Vよりも指令電圧V の方が大きい場合、第1のデューティ比候補Dが大きくなるように生成し、検出された出力電圧Vよりも指令電圧V の方が小さい場合、第1のデューティ比候補Dが小さくなるように生成する。
【0032】
また、第2のデューティ生成部31は、第2の電圧検出部22により検出された出力電圧Vと、第2の出力回路20側の指令電圧V との差分に基づいて、第2のデューティ比候補Dを生成するものである。第2のデューティ生成部31は、検出された出力電圧Vよりも指令電圧V の方が大きい場合、第2のデューティ比候補Dが大きくなるように生成し、検出された出力電圧Vよりも指令電圧V の方が小さい場合、第2のデューティ比候補Dが小さくなるように生成する。
【0033】
2つの周波数生成部32,32は、2つの電圧検出部22,22により検出された出力電圧V,Vと、それぞれの指令電圧V ,V との差分に基づいて、2つの周波数候補f,fを決定するものである。
【0034】
具体的に、第1の周波数生成部32は、第1の電圧検出部22により検出された出力電圧Vと、第1の出力回路20側の指令電圧V との差分に基づいて、第1の周波数候補fを決定するものである。第1の周波数生成部32は、検出された出力電圧Vよりも指令電圧V の方が大きい場合、第1の周波数候補fが大きくなるように生成し、検出された出力電圧Vよりも指令電圧V の方が小さい場合、第1の周波数候補fが小さくなるように生成する。
【0035】
また、第2の周波数生成部32は、第2の電圧検出部22により検出された出力電圧Vと、第2の出力回路20側の指令電圧V との差分に基づいて、第2の周波数候補fを決定するものである。第2の周波数生成部32は、検出された出力電圧Vよりも指令電圧V の方が大きい場合、第2の周波数候補fが小さくなるように生成し、検出された出力電圧Vよりも指令電圧V の方が小さい場合、第2の周波数候補fが大きくなるように生成する。
【0036】
2つの電力換算部33,33は、2つの電流検出部23,23により検出された出力電流I,Iと、それぞれの指令電圧V ,V とに基づいて、要求電力を求めるものである。具体的に、第1の電力換算部33は、第1の電流検出部23により検出された出力電流Iと、第1の出力回路20側の指令電圧V との乗算により、第1の出力回路20側の要求電力を求めるものである。第2の電力換算部33は、第2の電流検出部23により検出された出力電流Iと、第2の出力回路20側の指令電圧V との乗算により、第2の出力回路20側の要求電力を求めるものである。
【0037】
電力比較部34は、2つの電力換算部33,33により算出された要求電力を比較して、要求電力の大きい方と小さい方とを決定するものである。電力比較部34は、決定した情報を判定部35に出力する。
【0038】
判定部35は、電力比較部34により決定された要求電力に基づいて、2つのデューティ比候補D,Dの一方を選択して、インバータ回路11を制御するためのデューティ比Dを決定するものである。この判定部35は、電力比較部34により決定された要求電力の大きい方の出力回路20,20側のデューティ比候補D,Dをデューティ比Dとして決定する。このため、判定部35は、第1の出力回路20が要求電力の大きい場合に第1のデューティ比候補Dをデューティ比Dとして決定し、第2の出力回路20が要求電力の大きい場合に第2のデューティ比候補Dをデューティ比Dとして決定する。
【0039】
また、判定部35は、電力比較部34により決定された要求電力に基づいて、2つの周波数候補f,fの一方を選択して、インバータ回路11を制御するための周波数fを決定するものである。この判定部35は、電力比較部34により決定された要求電力の小さい方の出力回路20,20側の周波数候補f,fを周波数fとして決定する。このため、判定部35は、第1の出力回路20が要求電力の小さい場合に第1の周波数候補fを周波数fとして決定し、第2の出力回路20が要求電力の小さい場合に第2の周波数候補fを周波数fとして決定する。
【0040】
スイッチ信号生成部36は、判定部35によって決定されたデューティ比Dと周波数fとに基づいて、インバータ回路11をスイッチングするための制御信号を生成するものである。ドライブ回路37は、スイッチ信号生成部36により生成された制御信号に基づいてインバータ回路11をスイッチング制御するものである。
【0041】
次に、本実施形態に係る電圧変換装置1の動作を説明する。
【0042】
まず、第1のデューティ生成部31及び第1の周波数生成部32は、第1の電圧検出部22により検出された出力電圧Vと、第1の出力回路20側の指令電圧V との差分に基づいて、第1のデューティ比候補D及び第1の周波数候補fを生成する。また、第2のデューティ生成部31及び第2の周波数生成部32は、第2の電圧検出部22により検出された出力電圧Vと、第2の出力回路20側の指令電圧V との差分に基づいて、第2のデューティ比候補D及び第2の周波数候補fを生成する。
【0043】
また、第1及び第2の電力換算部33,33は、第1の電流検出部23により検出された出力電流Iと、予め記憶される指令電圧V ,V とから、第1の出力回路20側と第2の出力回路20側との要求電力を算出する。
【0044】
ここで、第1の出力回路20の負荷抵抗が小さいとき、第1の出力回路20側の必要な電流値が大きくなり、要求電力も大きくなる。一方、第2の出力回路20の負荷抵抗が大きいとき、第2の出力回路20側の必要な電流値が小さくなり、要求電力も小さくなる。電力比較部34は、このような要求電力の情報又は要求電力の大小の情報を判定部35に送信する。
【0045】
その後、判定部35は、以下の2つのルールに基づいてデューティ比Dと周波数fとを決定する。すなわち、判定部35は、第1及び第2デューティ生成部31,31のうち、要求電力の大きい方の出力回路20,20側のデューティ比候補D,Dを採用する(第1のルール)。また、判定部35は、第1及び第2周波数生成部32,32のうち、要求電力の小さい方の出力回路20,20側の周波数候補f,fを採用する(第2のルール)。
【0046】
ここで、今回の例においては、第1の出力回路20側の要求電力が大きいことから、第1のデューティ比候補Dがデューティ比Dとして採用される。また、第2の出力回路20側の要求電力が小さいことから、第2の周波数候補fが周波数fとして採用される。
【0047】
次いで、信号生成部36は、判定部35により採用されたデューティ比Dと周波数fとに基づいて制御信号を生成し、ドライブ回路37は、生成された制御信号に基づいて、スイッチング素子SWをスイッチングする。
【0048】
ここで、2次側回路20においては、デューティ比Dに応じた電力が得られるが第1の出力回路20側の負荷抵抗の大きさに合わせてデューティ比Dが決定されているため、第1の出力回路20に供給される電力については、第2の出力回路20に供給される電力分だけ不足する。よって、不足分を補うため、第1のデューティ生成部31により生成される第1のデューティ比候補Dが大きくされ、デューティ比Dも大きくされる。デューティ比Dが大きくなった結果、第2の出力回路20の出力電圧Vが指令電圧V を超えることとなり、出力電圧Vを抑えるべく第2の周波数生成部32により生成される第2の周波数候補fが大きくされ、周波数fも大きくされる。周波数fが大きくなったことによってカットされた電力は第1の出力回路20に伝送される。また、第1の出力回路20については、周波数fが大きくなったことによってインピーダンスZが小さくなる。
【0049】
周波数fが大きくなった状態において第1の出力回路20の出力電圧Vが指令電圧V に満たない場合には、更にデューティ比Dが大きくされる。そして、上記の動作を繰り返すこととなる。一方、周波数fが大きくなった状態において第1の出力回路20の出力電圧Vが指令電圧V を超える場合には、デューティ比Dが小さくされる。デューティ比Dが小さくされると、第2の出力回路20側において、これを保証するため周波数fが小さくなりインピーダンスZも小さくなる。第2の出力回路20側のインピーダンスZが小さくなると、第1の出力回路20側のインピーダンスZが大きくなる。これらより、第1の出力回路20に供給される出力電圧Vが小さくなる。
【0050】
以後、上記動作を繰り返すことにより、各出力回路20,20には指令電圧V ,V に応じた要求出力電圧が供給されることとなり、各出力回路20,20は要求出力電圧を負荷に対して出力することとなる。
【0051】
一方、第1の出力回路20の負荷抵抗が大きいとき、第1の出力回路20側の必要な電流値が小さくなり、要求電力も小さくなる。一方、第2の出力回路20の負荷抵抗が小さいとき、第2の出力回路20側の必要な電流値が大きくなり、要求電力も大きくなる。電力比較部34は、このような要求電力の情報又は要求電力の大小の情報を判定部35に送信する。
【0052】
この例においては、第2の出力回路20側の要求電力が大きいことから、第2のデューティ比候補Dがデューティ比Dとして採用される。また、第1の出力回路20側の要求電力が小さいことから、第1の周波数候補fが周波数fとして採用される。
【0053】
次いで、信号生成部36は、判定部35により採用されたデューティ比Dと周波数fとに基づいて制御信号を生成し、ドライブ回路37は、生成された制御信号に基づいて、スイッチング素子SWをスイッチングする。
【0054】
2次側回路20においては、デューティ比Dに応じた電力が得られるが第2の出力回路20側の負荷抵抗の大きさに合わせてデューティ比Dが決定されているため、第2の出力回路20に供給される電力については、第1の出力回路20に供給される電力分だけ不足する。よって、不足分を補うため、第2のデューティ生成部31により生成される第2のデューティ比候補Dが大きくされ、デューティ比Dも大きくされる。デューティ比Dが大きくなった結果、第1の出力回路20の出力電圧Vが指令電圧V を超えることとなり、出力電圧Vを抑えるべく第1の周波数生成部32により生成される第1の周波数候補fが小さくされ、周波数fも小さくされる。周波数fが小さくなったことによってカットされた電力は第2の出力回路20に伝送される。また、第2の出力回路20については、周波数fが小さくなったことによってインピーダンスZが小さくなる。
【0055】
周波数fが小さくなった状態において第2の出力回路20の出力電圧Vが指令電圧V に満たない場合には、更にデューティ比Dが大きくされる。そして、上記の動作を繰り返すこととなる。一方、周波数fが大きくなった状態において第2の出力回路20の出力電圧Vが指令電圧V を超える場合には、デューティ比Dが小さくされる。デューティ比Dが小さくされると、第1の出力回路20側において、これを保証するため周波数fが大きくなりインピーダンスZが小さくなる。第2の出力回路20側のインピーダンスZが小さくなると、第1の出力回路20側のインピーダンスZが大きくなる。これらより、第2の出力回路20に供給される出力電圧Vが小さくなる。以降は、指令電圧V ,V を満たす要求出力電圧が得られるまで、上記を繰り返すこととなる。
【0056】
このようにして、本実施形態に係る電圧変換装置1によれば、要求電力が大きい方の指令電圧V ,V と検出された出力電圧V,Vとの差分に基づいて制御信号のデューティ比Dを決定し、要求電力が小さい方の指令電圧V ,V と検出された出力電圧V,Vとの差分に基づいて制御信号の周波数fを決定する。このため、要求電力が大きい方に基づいてデューティ比Dを決定することとなり大きい方の指令電圧V ,V に応じた要求出力電圧を供給することができる。また、要求電力が小さい方に基づいて制御信号の周波数fを決定するため、インピーダンスZが大きくなるように周波数fを決定して小さい方の指令電圧V ,V に応じた要求出力電圧を供給することができる。特に、第1のフィルタ回路40は周波数fが小さくなるに従ってインピーダンスZが大きくなる特性を有し、第2のフィルタ回路40は周波数fが大きくなるに従ってインピーダンスZが大きくなる特性を有していることから、負荷条件に応じた要求電力の大小に基づいて上記のようにデューティ比Dと周波数fとを決定しても、要求出力電圧を達成できなくなることが防止される。従って、負荷に対してより適切に電圧を出力することができる電圧変換装置1を提供することができる。
【0057】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、周知及び公知の技術を組み合わせてもよい。
【0058】
例えば本実施形態に係る電圧変換装置1において、フィルタ回路40,40図2に示すような特性を得ることができれば、特に直列LCフィルタ回路41,41に限られるものではない。
【0059】
さらに、上記実施形態においては、上記したルール1及びルール2に基づいて制御信号が生成される構成であれば、制御構成は図3に示すものに限られない。加えて、整流回路21,21は全波整流可能であれば、特に回路構成を問うものではない。
【符号の説明】
【0060】
1 :電圧変換装置
10 :1次側回路
11 :インバータ回路
20 :2次側回路
20,20 :出力回路
21,21 :整流回路
22,22 :電圧検出部
23,23 :電流検出部
30 :制御部(制御信号生成部)
31,31 : デューティ生成部
32,32 : 周波数生成部
33,33 : 電力換算部
34 :電力比較部
35 :判定部
36 :信号生成部
37 :ドライブ回路
40,40 :フィルタ回路
41,41 :直列LCフィルタ回路
42,42 :並列LCフィルタ回路
E :電源
,I :出力電流
SW :スイッチング素子
T :絶縁トランス(トランス)
T1 :1次側巻線
T2 :2次側巻線
,V :出力電圧
,V :指令電圧
Vt1 :1次側出力電圧
Vt2 :2次側出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5