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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電圧変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H02M3/28 V
H02M3/28 P
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020039444
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021141773
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】松下 由憲
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/061924(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続され、スイッチング素子により1次側出力電圧を制御する1次側回路と、
異なる指令電圧に応じた要求出力電圧を出力するための複数の出力回路を含む2次側回路と、
前記1次側回路と前記2次側回路との間を絶縁し、前記1次側出力電圧に応じた電圧を前記2次側回路に供給するトランスと、
前記複数の出力回路それぞれの出力電圧を検出する複数の電圧検出部と、
前記複数の電圧検出部のそれぞれにより検出されたそれぞれの出力電圧とそれぞれの要求出力電圧との差分に基づいて、前記スイッチング素子をスイッチングするための制御信号を生成する制御信号生成部と、を備え、
前記2次側回路は、前記トランスと前記複数の出力回路それぞれとの間に、特定の周波数に対応する周波数信号を透過させるフィルタ回路を有し、
各前記フィルタ回路は、他の前記フィルタ回路と前記特定の周波数が異なっており、
前記制御信号生成部は、前記複数の出力回路それぞれについて、前記フィルタ回路の前記特定の周波数で前記差分に基づくデューティ比となるスイッチ信号を生成すると共に、前記複数の出力回路それぞれのスイッチ信号を時分割で切り替えた制御信号を生成する
ことを特徴とする電圧変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1つのインバータと1つのトランスとを利用して異なる2つの電圧を出力する絶縁型DC/DCコンバータ(電圧変換装置)が提案されている(非特許文献1参照)。
【0003】
図4は、比較例に係る電圧変換装置を示す回路構成図である。図4に示すように、電圧変換装置100は、1次側回路110と、2次側回路120と、絶縁トランスITとを備えて構成されている。1次側回路110は、電源に接続され、複数のスイッチング素子S1~S4を有したインバータ回路111を備えている。複数のスイッチング素子S1~S4は、所定のデューティ比Dと周波数fとでスイッチングされる。絶縁トランスITの1次側巻線IT1には、入力電圧Vとデューティ比Dとによって定まる大きさの電圧が周波数fで印加される。
【0004】
2次側回路120は、第1の出力回路121と、第2の出力回路122と、フィルタ回路123とを備えている。第1の出力回路121は、絶縁トランスITの2次側巻線IT2と第1負荷Lo1との間に介在されるものであり、スイッチング素子、インダクタンス、及びコンデンサ等を備えて構成されている。第2の出力回路122についても第1の出力回路121と同様に、絶縁トランスITの2次側巻線IT2と第2負荷Lo2との間に介在されるものであり、スイッチング素子、インダクタンス、及びコンデンサ等を備えて構成されている。
【0005】
フィルタ回路123は、絶縁トランスITの2次側巻線IT2と第2の出力回路122との間に介在されるものであり、直列LCフィルタ回路123aと、並列LCフィルタ回路123bとを備えている。直列LCフィルタ回路123aは、電圧の周波数に応じてインピーダンスが変化する回路であり、並列LCフィルタ回路123bは後段回路(第2の出力回路122)との干渉を防ぐ回路である。
【0006】
図5は、図4に示した直列LCフィルタ回路123aのインピーダンス特性を示す図である。図5に示すように、直列LCフィルタ回路123aは、所定周波数f’以上の領域において周波数が大きくなるに従ってインピーダンスZが大きくなる特性を有している。
【0007】
このような比較例に係る電圧変換装置100は、第1負荷Lo1の抵抗が小さく、第2負荷Lo2の抵抗が大きい場合、以下のように動作する。まず、第1負荷Lo1の抵抗の大きさに合わせてインバータ回路111のスイッチング時におけるデューティ比Dが決定される。ここで、第1負荷Lo1の抵抗が小さいので必要な電流値が大きくなり、デューティ比Dも大きくなる。また、第2負荷Lo2の抵抗の大きさに合わせてインバータ回路111のスイッチング時における周波数fが決定される。ここで、第2負荷Lo2の抵抗が大きいことから必要な電流値が小さくなりインピーダンスZが大きくなるように周波数fが決定される。そして、決定されたデューティ比Dと周波数fとが達成されるように複数のスイッチング素子S1~S4がスイッチングされる。
【0008】
2次側回路120においては、デューティ比Dに応じた電力が得られるが第1負荷Lo1の抵抗の大きさに合わせてデューティ比Dが決定されているため、第1の出力回路121に供給される電力については、第2の出力回路122に供給される電力分だけ不足する。よって、不足分を補うため第1の出力回路121のフィードバック信号(実電圧Vd)に基づいて1次側回路110におけるインバータ回路111のデューティ比Dが大きくされる。デューティ比Dが大きくなった結果、第2の出力回路122のフィードバック信号(実電圧Vf)が指令電圧Vfを超えることとなり、実電圧Vfを抑えるべく周波数fが大きくなる。周波数fが大きくなったことによってカットされた電力は第1の出力回路121に伝送される。
【0009】
周波数fが大きくなった状態において第1の出力回路121の実電圧Vdが指令電圧Vdに満たない場合には、更にデューティ比Dが大きくされる。そして、上記の動作を繰り返すこととなる。一方、周波数fが大きくなった状態において第1の出力回路121の実電圧Vdが指令電圧Vdを超える場合には、デューティ比Dが小さくされる。デューティ比Dが小さくされると、それを保証するため周波数fが小さくなりインピーダンスZも小さくなる。インピーダンスZが小さくなると第1の出力回路121に供給される実電圧Vdが小さくなる。以降は、指令電圧Vd,Vfが達成されるまで、上記を繰り返すこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】電気学会 半導体電力変換/モータドライブ合同研究会(2018.1.19~2018.1.20)「インバータのデューティーサイクルと周波数に着目したDC/DCコンバータのデュアルポート出力制御」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、非特許文献1に記載の電圧変換装置は、第1負荷Lo1の抵抗が大きく、第2負荷Lo2の抵抗が小さい場合には、以下のように要求を満たせなくなる。まず、第1負荷Lo1の抵抗が大きいので必要な電流値が小さくなり、デューティ比Dも小さくなる。また、第2負荷Lo2の抵抗が小さいことから必要な電流値が大きくなりインピーダンスZが小さくなるように周波数fが決定される。その後、インピーダンスZが最小となる周波数fで動作させても、第1負荷Lo1の大きい抵抗に合わせてデューティ比Dが決定されることからデューティ比Dは第2負荷Lo2側からの指令電圧Vfを満たすまで大きくなることはなく、指令電圧Vfを満たすことができない。
【0012】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、負荷に対してより適切に電圧を出力することができる電圧変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電圧変換装置は、電源に接続され、スイッチング素子により1次側出力電圧を制御する1次側回路と、異なる指令電圧に応じた要求出力電圧を出力するための複数の出力回路を含む2次側回路と、前記1次側回路と前記2次側回路との間を絶縁し、前記1次側出力電圧に応じた電圧を前記2次側回路に供給するトランスと、前記複数の出力回路それぞれの出力電圧を検出する複数の電圧検出部と、前記複数の電圧検出部のそれぞれにより検出されたそれぞれの出力電圧とそれぞれの要求出力電圧との差分に基づいて、前記スイッチング素子をスイッチングするための制御信号を生成する制御信号生成部と、を備え、前記2次側回路は、前記トランスと前記複数の出力回路それぞれとの間に、特定の周波数に対応する周波数信号を透過させるフィルタ回路を有し、各前記フィルタ回路は、他の前記フィルタ回路と前記特定の周波数が異なっており、前記制御信号生成部は、前記複数の出力回路それぞれについて、前記フィルタ回路の前記特定の周波数で前記差分に基づくデューティ比となるスイッチ信号を生成すると共に、前記複数の出力回路それぞれのスイッチ信号を時分割で切り替えた制御信号を生成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、負荷に対してより適切に電圧を出力することができる電圧変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る電圧変換装置の回路構成図である。
図2】複数の直列LCフィルタ回路のインピーダンス特性を示す図である。
図3図1に示した制御部の詳細を示すブロック図である。
図4】比較例に係る電圧変換装置を示す回路構成図である。
図5図4に示した直列LCフィルタ回路のインピーダンス特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る電圧変換装置の回路構成図である。本実施形態に係る電圧変換装置1は、例えば、車両に搭載されるものであり、1つの電源Eを利用して、異なる指令電圧に応じた複数の要求出力電圧を出力する装置であり、直流電圧から直流電圧に変換するDC/DCコンバータである。電圧変換装置1は、1次側回路10と、2次側回路20と、絶縁トランス(トランス)Tと、制御部(制御信号生成部)30とを備える。なお、1次側回路10と、2次側回路20との間は、絶縁トランスTにより絶縁されている。
【0018】
1次側回路10は、入力側が直流の電源Eに接続され、出力側が絶縁トランスTの1次側巻線T1と接続されるものであり、インバータ回路11を有して構成されている。1次側回路10は、1次側出力電圧Vt1を絶縁トランスTに印加するものである。
【0019】
電源Eは、例えば充放電を繰り返すことができる2次電池であり、直流電圧を出力側(絶縁トランスT側)に出力するものである。電源Eは、出力側がインバータ回路11に接続され、直流電圧をインバータ回路11に印加するものである。
【0020】
インバータ回路11は、複数のスイッチング素子SWを備え、複数のスイッチング素子SWのスイッチングによって電圧パルス信号を生成するものであって、絶縁トランスTに印加される1次側出力電圧Vt1を制御するものである。インバータ回路11は、入力側が電源Eに接続され、出力側が絶縁トランスTの1次側巻線T1に接続されている。
【0021】
なお、インバータ回路11は、図1において2つのスイッチング素子SWが図示されているが、特に2つに限らず、1つ又は3つ以上を備えていてもよい。また、インバータ回路11は、スイッチング素子SWのスイッチングによって1次側出力電圧Vt1を制御することができれば、どのような構成であってもよい。特に、インバータ回路11は例えば3レベルの矩形波を生成できる回路(フルブリッジコンバータやハーフブリッジコンバータ等)であれば、構成を問うものではない。
【0022】
絶縁トランスTは、1次側回路10と2次側回路20との間を絶縁するものであって、1次側巻線T1と2次側巻線T2とを備えている。この絶縁トランスTは、1次側回路10の1次側出力電圧Vt1に対応する2次側出力電圧Vt2を2次側回路20に供給する。すなわち絶縁トランスTは、1次側巻線T1と2次側巻線T2との巻線比に応じた交番電圧を2次側回路20に印加する。
【0023】
2次側回路20は、絶縁トランスTの2次側巻線T2と接続されるものであり、異なる指令電圧に応じた要求出力電圧を出力する複数(n(nは2以上の自然数)個)の出力回路20~20を含んで構成されている。
【0024】
各出力回路20~20は、絶縁トランスTの2次側巻線T2から複数に並列に分岐された分岐先において設けられており、それぞれが整流回路21~21と、電圧検出部22~22とを備えている。各整流回路21~21は、いわゆる全波整流回路であって、スイッチング素子、インダクタンス、及びコンデンサを備えて構成されている。なお、整流回路21~21は、全波整流できるものであれば、その回路構成を問うものではない。各電圧検出部22~22は、各出力回路20~20の出力電圧V~Vを検出するものである。各電圧検出部22~22は、それぞれの整流回路21~21及びそれぞれの負荷(図示せず)と並列接続されている。複数の電圧検出部22~22は、複数の出力回路20~20の出力電圧V~Vに応じた信号を制御部30に送信する。
【0025】
制御部30は、インバータ回路11を構成する複数のスイッチング素子SWをスイッチング制御することで、1次側出力電圧Vt1を制御するものである。この制御部30は、各出力回路20~20が負荷に供給すべき要求出力電圧(すなわち指令電圧V ~V )と、各電圧検出部22~22により検出された各出力回路20~20の出力電圧V~Vとの差分に基づいて、複数のスイッチング素子SWをスイッチングするための制御信号を生成するものである。指令電圧V ~V の情報については、例えば制御部30に予め格納される等して制御部30に保有されている。
【0026】
また、2次側回路20は、絶縁トランスT(2次側巻線T2)と複数の出力回路20~20との間に、特定の周波数に対応する周波数信号を透過させるフィルタ回路40~40を備えている。各フィルタ回路40~40は、直列LCフィルタ回路41~41と、並列LCフィルタ回路42~42とを備えている。
【0027】
各直列LCフィルタ回路41~41は、特定の周波数(共振周波数)において充分にインピーダンスZが小さくされたものである。特に、各直列LCフィルタ回路41~41は、他の直列LCフィルタ回路41~41の特定の周波数において充分にインピーダンスZが大きくされている。すなわち、複数の直列LCフィルタ回路41~41は、他の直列LCフィルタ回路41~41と特定の周波数が異なっており、各直列LCフィルタ回路41~41は、他の直列LCフィルタ回路41~41が透過する周波数信号を略透過しないこととなる。各並列LCフィルタ回路42~42は、後段回路(整流回路21~21)との干渉を防ぐための回路である。
【0028】
図2は、複数の直列LCフィルタ回路41~41のインピーダンス特性を示す図である。図2に示すように、例えば第1直列LCフィルタ回路41は、特定の周波数fにおいてインピーダンスZが小さく、第2~第n直列LCフィルタ回路41~41の特定の周波数f~fにおいてはインピーダンスZが充分に大きくされている。また、第2直列LCフィルタ回路41についても同様に、特定の周波数fにおいてインピーダンスZが小さく、第1及び第3~第n直列LCフィルタ回路41,41~41の特定の周波数f,f~fにおいてはインピーダンスZが充分に大きくされている。第3~第n直列LCフィルタ回路41~41についても同様である。
【0029】
図3は、図1に示した制御部30の詳細を示すブロック図である。図3に示す制御部30は、デューティ生成部31と、同期切替部32と、信号生成部33と、ドライブ回路34とを備えている。
【0030】
デューティ生成部31は、複数の電圧検出部22~22により検出された出力電圧V~Vに応じた信号(フィードバック信号)を入力し、指令電圧V ~V との差分に基づいて、デューティ比D~Dが決定する。
【0031】
具体的に説明すると、デューティ生成部31は、第1の出力回路20に応じた指令電圧V と第1の電圧検出部22により検出された出力電圧Vとを比較し、指令電圧V の方が大きければ第1の出力回路20のための第1のデューティ比Dを大きくし、指令電圧V の方が小さければ第1の出力回路20のための第1のデューティ比Dを小さくする。
【0032】
同様にデューティ生成部31は、第2の出力回路20に応じた指令電圧V と第2の電圧検出部22により検出された出力電圧Vとを比較し、指令電圧V の方が大きければ第2の出力回路20のための第2のデューティ比Dを大きくし、指令電圧V の方が小さければ第2の出力回路20のための第2のデューティ比Dを小さくする。第3~第nのデューティ比D~Dについても同様である。
【0033】
デューティ生成部31は、このようにして決定したデューティ比D~Dの情報を同期切替部32に送信する。
【0034】
同期切替部32は、任意の方法で定められた時分割ルールに従い、各直列LCフィルタ回路41~41の特定の周波数f~fに対応した周波数f~fを生成するものである。
【0035】
また、同期切替部32は、デューティ生成部31により決定されたデューティ比D~D、すなわち第1~第nの出力回路20~20に対応したデューティ比D~Dと、各直列LCフィルタ回路41~41の特定の周波数f~f、すなわち第1~第nの出力回路20~20に対応した特定の周波数f~fとの同期を行うものである。具体的に同期切替部32は、第1のデューティ比Dと第1の特定の周波数fとを同期させ、第2のデューティ比Dと第2の特定の周波数fとを同期させる。第3~第nのデューティ比D~Dと第3~第nの特定の周波数f~fとについても同様である。
【0036】
さらに、同期切替部32は、同期した各デューティ比D~Dと各特定の周波数f~fとの組合せを、時分割に信号生成部33に出力する。このため、例えば同期切替部32は、第1のデューティ比Dと第1の特定の周波数fとの第1の組合せを信号生成部33に出力し、次いで第2のデューティ比Dと第2の特定の周波数fとの第2の組合せを信号生成部33に出力する。以後、同期切替部32は、同様にして第3~第nの組合せを信号生成部33に順次出力していく。
【0037】
信号生成部33は、同期切替部32からの第1~第nの組合せの情報に基づいて、インバータ回路11を制御するための制御信号を生成する。この際、信号生成部33は、複数の出力回路20~20それぞれに対応した複数のスイッチ信号を生成する。すなわち、信号生成部33は、同期切替部32からの第1の組合せの情報に基づいて、第1の特定の周波数fで第1のデューティ比Dとなる第1のスイッチ信号を生成する。この第1のスイッチ信号は、第1の出力回路20向けのものとなる。
【0038】
また、信号生成部33は、同期切替部32からの第2の組合せの情報に基づいて、第2の特定の周波数fで第2のデューティ比Dとなる第2のスイッチ信号を生成する。この第2のスイッチ信号は、第2の出力回路20向けのものとなる。同様に信号制御部33は、同期切替部32からの第3~第nの組合せの情報に基づいて、第3~第nの特定の周波数f~fで第3~第nのデューティ比D~Dとなる第3~第nのスイッチ信号を生成する。これらの第3~第nのスイッチ信号は、第3~第nの出力回路20~20向けのものとなる。
【0039】
さらに、信号生成部33は、各スイッチ信号を時分割で切り替える制御信号を生成する。一例を挙げると信号生成部33は、最初に第1の出力回路20向けの第1のスイッチ信号が所定時間継続し、次に第2の出力回路20向けの第2のスイッチ信号が所定時間継続し、その後第3~第nの出力回路20~20向けの第3~第nのスイッチ信号が順次所定時間ずつ継続する制御信号を生成する。なお、制御信号は、第1~第nのスイッチ信号が最初でなくともよく順番は任意である。さらに、第1~第nのスイッチ信号の継続時間も所定時間で均等でない場合もあり得る。信号生成部33は、このような制御信号をドライブ回路34に出力する。
【0040】
ドライブ回路34は、信号生成部33により生成された制御信号に基づいてインバータ回路11をスイッチング制御するものである。
【0041】
次に、本実施形態に係る電圧変換装置1の動作を説明する。
【0042】
まず、制御部30のデューティ生成部31は、上記差分(初回の電圧検出部22~22からの信号が得られていない段階においては任意の値も可)に基づいて、第1~第nの出力回路20~20に対応した第1~第nのデューティ比D~Dを決定する。次いで、同期切替部32は、第1~第nの特定の周波数f~fを生成すると共に、第1~第nのデューティ比D~Dと第1~第nの特定の周波数f~fとを同期させて、第1~第nの組合せを生成する。
【0043】
信号生成部33は、同期切替部32からの第1~第nの組合せの情報に基づいて第1~第nのスイッチ信号を生成し、第1~第nのスイッチ信号を時分割で切り替えた制御信号を生成する。ドライブ回路34は、このようにして生成された制御信号に基づいて、複数のスイッチング素子SWをスイッチングする。
【0044】
これにより、絶縁トランスTの1次側巻線T1には、スイッチング制御に応じた1次側出力電圧Vt1が印加され、2次側回路20には、1次側出力電圧Vt1に対応する2次側出力電圧Vt2が供給される。このうち第1の特定の周波数fに対応する第1のデューティ比Dに応じた信号成分は第1フィルタ回路40を透過して第1の出力回路20に供給される。また、第2の特定の周波数fに対応する第2のデューティ比Dに応じた信号成分は第2フィルタ回路40を透過して第2の出力回路20に供給される。他の特定の周波数f~fについても同様であって、第3~第nのデューティ比D~Dに応じた信号成分は第3~第nフィルタ回路40~40を透過して第3~第nの出力回路20~20に供給される。
【0045】
この状態において、複数の電圧検出部22~22は、それぞれが各出力回路20~20の出力電圧V~Vを検出し、制御部30にフィードバックする。
【0046】
これにより、制御部30のデューティ生成部31は、検出された出力電圧V~Vと、指令電圧V ~V との差分に基づいて、第1~第nのデューティ比D~Dを調整する。
【0047】
以後、上記動作を繰り返すことにより、各出力回路20~20には指令電圧V ~V に応じた要求出力電圧が供給されることとなり、各出力回路20~20は要求出力電圧を負荷に対して出力することとなる。
【0048】
このようにして、本実施形態に係る電圧変換装置1によれば、絶縁トランスTと複数の出力回路20~20それぞれとの間に、特定の周波数f~fに対応する周波数信号を透過させるフィルタ回路40~40を有し、制御部30は、複数の出力回路20~20それぞれについて、フィルタ回路40~40の特定の周波数f~fで、検出された出力電圧V~Vと指令電圧V ~V とのそれぞれの差分に基づくデューティ比D~Dとなるスイッチ信号を生成すると共に、複数の出力回路20~20それぞれのスイッチ信号を時分割で切り替えた制御信号を生成する。このため、出力回路20~20の前段に設けられるフィルタ回路40~40の特定の周波数f~f毎にデューティ比D~Dが設定されたスイッチ信号が得られ、そのスイッチ信号を時分割に切り替えた制御信号によってスイッチングが行われることで、各出力回路20~20には時分割に適切な電圧が供給されることとなる。従って、負荷に対してより適切に電圧を出力することができる電圧変換装置1を提供することができる。
【0049】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、周知及び公知の技術を組み合わせてもよい。
【0050】
例えば本実施形態に係る電圧変換装置1において、フィルタ回路40~40は、図2に示すような特性を得ることができれば、特に直列LCフィルタ回路41~41に限られるものではない。
【0051】
さらに、図2においては、第1の出力回路20から第nの出力回路20に対して、共振周波数(特定の周波数)を小さい順にf~fと割り振っているが、特に順番を問うものではない。加えて、整流回路21~21は全波整流可能であれば、特に回路構成を問うものではない。
【0052】
さらに、上記実施形態においては、複数の出力回路20~20それぞれに対応したスイッチ信号を時分割で切り替えた制御信号を生成できる構成であれば、制御構成は図3に示すものに限られない。
【符号の説明】
【0053】
1 :電圧変換装置
10 :1次側回路
11 :インバータ回路
20 :2次側回路
20~20 :出力回路
21~21 :整流回路
22~22 :電圧検出部
30 :制御部(制御信号生成部)
31 :デューティ生成部
32 :同期切替部
33 :信号生成部
34 :ドライブ回路
40~40 :フィルタ回路
41~41 :直列LCフィルタ回路
42~42 :並列LCフィルタ回路
E :電源
SW :スイッチング素子
T :絶縁トランス(トランス)
T1 :1次側巻線
T2 :2次側巻線
~V :出力電圧
~V :指令電圧
Vt1 :1次側出力電圧
Vt2 :2次側出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5