(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 20/15 20160101AFI20240229BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240229BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240229BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240229BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240229BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20240229BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20240229BHJP
【FI】
B60W20/15
B60K6/46 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
F02D29/02 321B
F02D29/06 D
B60L50/61
(21)【出願番号】P 2020042942
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2022-11-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物名:日本音響学会講演論文集 発行所 :一般社団法人 日本音響学会 発行日 :2020(令和2年)年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田切 真純
(72)【発明者】
【氏名】高橋 毅
(72)【発明者】
【氏名】戸井 武司
(72)【発明者】
【氏名】本木 耕平
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104445(JP,A)
【文献】特開2004-074995(JP,A)
【文献】特開2000-010576(JP,A)
【文献】特開2010-221788(JP,A)
【文献】特開平11-184487(JP,A)
【文献】特開2011-131739(JP,A)
【文献】特開2013-169857(JP,A)
【文献】特開2017-013787(JP,A)
【文献】特開平07-182587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
F02D 29/02
F02D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動する電動モータと、
前記電動モータに供給する電気を発電する発電機を駆動するエンジンと、
音を出力する音出力装置と、を備える車両の制御方法であって、
前記エンジンが停止している状態で前記車両の加速が開始された後に、当該加速途中で前記エンジンが始動して前記エンジンが前記発電機の駆動による発電に適した所定状態になる場合には、加速度合と前記エンジンの回転数とに基づいて前記音出力装置から出力させる音の大きさを制御
し、
前記制御において、前記加速途中で始動した前記エンジンの回転数が、前記所定状態になる前のアイドル状態の回転数から、前記所定状態となる所定の回転数に上昇している期間のうちの少なくとも一部の期間において、前記加速度合に応じて前記音出力装置から出力させる音の大きさを減少させる、
車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御方法であって、
前記加速途中で始動した前記エンジンの回転数が、前記所定状態になる前のアイドル状態の回転数となるまでの間、前記加速度合に応じて前記音出力装置から出力させる音の大きさを増加させる、
車両の制御方法。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の車両の制御方法であって、
前記加速途中で始動した前記エンジンの回転数が、前記所定状態となる所定の回転数に達した後に、前記エンジンが前記所定状態を維持している間、前記加速度合に応じて前記音出力装置から出力させる音の大きさを増加させる、
車両の制御方法。
【請求項4】
請求項
1乃至3の何れかに記載に車両の制御方法であって、
前記加速途中で始動した前記エンジンの回転数が、前記所定状態になる前のアイドル状態の回転数となるまでの間、前記音出力装置から出力させる音の大きさを前記エンジンから発生するエンジン音よりも大きくさせる、
車両の制御方法。
【請求項5】
請求項
1乃至4の何れかに記載に車両の制御方法であって、
前記音出力装置は、前記車両の車室内において前記音を出力し、
前記加速途中で始動した前記エンジンの回転数が、前記所定状態になる前のアイドル状態の回転数となるまでの間、前記音出力装置から出力させる音の大きさを前記車室内の暗騒音よりも大きくさせる、
車両の制御方法。
【請求項6】
請求項
1乃至5の何れかに記載に車両の制御方法であって、
前記音出力装置は、前記電動モータに関する疑似的なモータ音と、前記エンジンに関する疑似的なエンジン音との何れかを設定に応じて出力する、
車両の制御方法。
【請求項7】
車両を駆動する電動モータと、
前記電動モータに供給する電気を発電する発電機を駆動するエンジンと、
音を出力する音出力装置と、
前記電動モータと前記エンジンと前記音出力装置とを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記エンジンが停止している状態で前記車両の加速が開始された後に、当該加速途中で前記エンジンが始動して前記エンジンが前記発電機の駆動による発電に適した所定状態になる場合には、加速度合と前記エンジンの回転数とに基づいて前記音出力装置から出力させる音の大きさを制御
し、
前記制御において、前記加速途中で始動した前記エンジンの回転数が、前記所定状態になる前のアイドル状態の回転数から、前記所定状態となる所定の回転数に上昇している期間のうちの少なくとも一部の期間において、前記加速度合に応じて前記音出力装置から出力させる音の大きさを減少させる、
車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を駆動する電動モータと、その電動モータに供給する電気を発電する発電機を駆動するエンジンとを備える車両の制御方法及び車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータにより駆動される車両において所定の音を出力する装置が知られている。例えば、電気車両の加速/減速状態に適した疑似音を発生するために、電気車両の動作状態に対応した疑似音を発生する電気車両用疑似音発生装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両を駆動する電動モータと、その電動モータに供給する電気を発電する発電機を駆動するエンジンとを備える車両、いわゆる、シリーズ型ハイブリッド車両が知られている。このシリーズ型ハイブリッド車両の場合には、バッテリの充電状態や車両の要求電力に応じて、エンジンが停止/運転する。このため、ドライバがアクセルペダルを踏み込んで車両が加速する際に、加速始めはエンジンが停止しているが、加速途中でエンジンが始動してエンジンが駆動中となるケースも起こり得る。この場合に、エンジン駆動音が加速途中で発生することになり、ドライバが快適な加速感を得ることができないおそれがある。
【0005】
本発明は、ドライバが快適な加速感を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、車両を駆動する電動モータと、電動モータに供給する電気を発電する発電機を駆動するエンジンと、音を出力する音出力装置とを備える車両の制御方法である。この車両の制御方法では、エンジンが停止している状態で車両の加速が開始された後に、加速途中でエンジンが始動してエンジンが発電機の駆動による発電に適した所定状態になる場合には、加速度合とエンジンの回転数とに基づいて音出力装置から出力させる音の大きさを制御し、この制御において、加速途中で始動したエンジンの回転数が、所定状態になる前のアイドル状態の回転数から、所定状態となる所定の回転数に上昇している期間のうちの少なくとも一部の期間において、加速度合に応じて音出力装置から出力させる音の大きさを減少させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドライバが快適な加速感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態における車両の概略構成例を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、車両の車速と時間との関係を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、エンジンの回転数と時間との関係を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、音出力装置から出力される音の大きさと時間との関係を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、音出力装置から出力される音の大きさと時間との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、制御装置が実行する音出力処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、制御装置が実行する音出力処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[車両の構成例]
図1は、本実施形態における車両100の概略構成例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、車両100は、エンジン1と、モータ2と、増速機3と、インバータ4と、バッテリ5と、モータ6と、減速機/デファレンシャル7と、制御装置8と、音出力装置9と、駆動輪10、11とを備えている。車両100は、エンジン1の動力を用いてモータ2で発電した電力をバッテリ5に供給し、バッテリ5の電力に基づいてモータ6を回転させることで駆動輪10、11を駆動する、いわゆるシリーズ型のハイブリッド車両として構成されている。したがって、車両100では、エンジン1は、車両を走行させるための動力源としてではなく、モータ2を発電させるための動力源として使用される。
【0012】
車両100を構成するエンジン1は、ガソリン等を燃料とするいわゆる内燃機関であって、増速機3を介してモータ2と機械的に接続されている。エンジン1は、バッテリ5の充電時等にモータ2を回転駆動させるための駆動源として用いられる。
【0013】
モータ2は、エンジン1からの動力に基づいて回転することで発電し、バッテリ5を充電可能に構成されている。また、モータ2は、バッテリ5の電力により回転駆動することで、エンジン1を力行運転(モータリング)させるようにも構成されている。このようにモータ2の動力を用いてエンジン1を回転させるモータリング制御を実行することで、エンジン始動時にエンジン1をクランキングさせたり、ブレーキペダルアシスト用の負圧が必要な場合にスロットルバルブを閉じて吸気通路に負圧を生成させたりすることができる。上述の通り、モータ2は、発電モータ兼エンジンスタータとして機能する。
【0014】
増速機3は、エンジン1とモータ2とを機械的に接続して回転を伝達する伝達機構である。
【0015】
インバータ4は、モータ2、6、バッテリ5に電気的に接続されている。インバータ4は、モータ2が発電する交流電力を直流電力に変換してバッテリ5に供給し、バッテリ5から出力される直流電力を交流電力に変換してモータ2に供給するよう構成されている。また、インバータ4は、バッテリ5から出力される直流電力を交流電力に変換してモータ6に供給し、モータ6で回生発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ5に供給するよう構成されている。上述の通り、インバータ4は、駆動モータ兼発電モータ用インバータとして機能する。
【0016】
モータ6は、インバータ4から供給される交流電流により回転駆動し、減速機/デファレンシャル7を介して駆動輪10、11に駆動力を伝達する。また、モータ6は、車両減速時やコースト走行時等に駆動輪10、11に連れ回されて回転する場合に発電し、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとしてバッテリ5に回収するよう構成されている。このようにモータ6は、駆動モータ兼発電モータとして機能する。
【0017】
減速機/デファレンシャル7は、モータ6と駆動輪10、11とを機械的に接続して回転を伝達する伝達機構であり、差動装置(デファレンシャル)としても機能する。
【0018】
制御装置8は、各種機器を制御する制御装置であり、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。制御装置8は、特定のプログラムを実行することにより、エンジン1、モータ2、6、インバータ4、バッテリ5等の各種機器の動作を制御する制御部として機能する。制御装置8は、一つのマイクロコンピュータで構成されるのではなく、複数のマイクロコンピュータにより構成されてもよい。例えば、各種機器を制御する車両制御装置と、エンジン1を制御するエンジンECU(Engine Control Unit)と、音出力装置9を制御するCU(Control Unit)とにより構成されてもよい。
【0019】
制御装置8は、エンジン1の回転速度及び負荷(トルク)の状態信号に応じてエンジン1のスロットルバルブ、インジェクタ、及び点火プラグ等を制御し、吸入空気量、燃料噴射量、及び点火時期等を調整する。
【0020】
制御装置8は、バッテリ5の充放電時の電流や電圧に基づいてバッテリ5の充電状態(SOC:State Of Charge)を算出したり、算出したSOC情報等を用いてバッテリ5の入力可能電力及び出力可能電力を算出したりする。
【0021】
制御装置8は、アクセル開度、車速、路面勾配等の車両状態情報、SOC情報、バッテリ5の入力可能電力、及びバッテリ5の出力可能電力等の情報に応じて、モータ6へのモータトルク指令値を演算したり、モータ2からバッテリ5又はモータ6へ供給するための目標発電電力を演算したりする。また、制御装置8は、モータ6のトルクがモータトルク指令値となるよう、インバータ4をスイッチング制御する。
【0022】
さらに、制御装置8は、目標発電電力を実現するために、エンジン1に対するエンジントルク指令値及びモータ2に対する回転速度指令値を演算する。制御装置8は、発電機回転速度が回転速度指令値と一致するように、モータ2の回転速度検出値等の状態に応じて、インバータ4をスイッチング制御する。このような充填時通常走行状態では、エンジン1は車両走行状態に応じて燃費効率のよい運転点で動作するように制御される。
【0023】
音出力装置9は、制御装置8の制御に基づいて各種の音を出力する装置である。例えば、音出力装置9は、各種の音を供給する音供給装置と、音供給装置により供給された音を出力する出力部とで構成される。音供給装置は、例えば、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータにより実現される。また、出力部は、例えば、音を出力するスピーカで構成され、車両100の車室内において、車両100のドライバが音を聞きやすい位置に設置される。
【0024】
なお、音出力装置9が出力する音は、モータ6に関する疑似的なモータ音や、エンジン1に関する疑似的なエンジン音である。これらの音については、複数の周波数を組み合わせることにより生成可能である。例えば、モータ音については、回転音や摩擦音に応じて複数の周波数が決まるため、それらの複数の周波数を組み合わせて生成可能である。また、エンジン音については、爆発音やエンジン回転数に応じて複数の周波数が決まるため、それらの複数の周波数を組み合わせて生成可能である。なお、音出力装置9から出力される音については、1種類の音とするようにしてもよく、複数種類の音としてもよい。例えば、他の種類のモータに関する疑似的なモータ音、他の種類のエンジンに関する疑似的なエンジン音、その他車両走行時に生じる走行音に関する音とすることができる。また、音出力装置9が複数種類の音を出力することが可能である場合には、ドライバの好みに応じた最適な音をドライバにより選択可能としてもよい。なお、本実施形態では、モータ6に関する疑似的なモータ音を音出力装置9から出力する例を示す。
【0025】
[車両の加速時における音出力装置からの音出力例]
上述したように、シリーズ型ハイブリッド車両においては、バッテリの充電状態や車両の要求電力に応じて、エンジンが停止または運転する。例えば、車両100では、通常走行している際にバッテリ5のSOCの低下等が検出された場合に、エンジン1の動力を用いてモータ2を駆動し、モータ2で発電された電力をバッテリ5に充電する。このため、ドライバがアクセルペダルを踏み込んで車両100が加速する際において、車両100の加速開始時にはエンジン1が停止しているが、車両100の加速途中でエンジン1が始動して発電を開始することも起こり得る。この場合に、バッテリ5を充電するためのエンジン1から発生するエンジン音が、車両100の加速途中で発生することになり、車両100の加速とは無関係にエンジン音が発生することになる。このため、加速中の車両100のドライバに違和感を与えるおそれがある。そこで、本実施形態では、車両100のドライバに違和感を与えず、そのドライバが快適な加速感を得ることができる例を示す。
【0026】
[車速と時間との関係例]
図2Aは、車両100の車速と、時間との関係を示す図である。なお、
図2Aでは縦軸で車速を示し、横軸は時間軸を示す。また、
図2Aでは、説明を容易にするため、車両100が一定の加速度で前進する場合の例、いわゆる等加速度直線運動の例を示す。
【0027】
例えば、時間t0のタイミングで、停車中の車両100のドライバによりアクセルペダルが踏み込まれると、制御装置8は、そのアクセル開度を検出し、その検出結果に基づいてモータ6の回転数を制御して加速させる。例えば、
図2Aの直線20に示すように、t0からt4までの間に車速がv1となるように、制御装置8は、モータ6の回転数を制御して車両100を加速させる。
【0028】
[エンジンの回転数と時間との関係例]
図2Bは、エンジン1の回転数と、時間との関係を示す図である。なお、
図2Bでは縦軸でエンジン1の回転数を示し、横軸は時間軸を示す。また、
図2Bに示す時間軸t0乃至t4は、
図2Aに示す時間軸t0乃至t4に対応する。
【0029】
また、
図2Bでは、時間t1のタイミングでエンジン1が始動し、時間t3のタイミングで、エンジン1がモータ2の駆動による発電に適した所定状態となる例を示す。なお、所定状態は、例えば、エンジン1が最適燃費点に到達するとともに、所定の回転数e2を維持している状態を意味する。また、エンジン1の回転数が、エンジン1の始動後に上昇してアイドル状態となったタイミングを時間t2とし、時間t2におけるエンジン1の回転数をe1とする。なお、
図2Bの実線30に示すように、時間t1からt3までの期間において、エンジン1の始動後にはエンジン1の回転数が上昇にした後に下降し、その後、時間t2のタイミングで上昇に転じるが、これは、エンジンの構造特性によるものである。また、本実施形態は、エンジン1の始動後において、エンジン1の回転数が所定期間の下降をすることとなく上昇するエンジンについても適用可能である。
【0030】
このように、制御装置8からエンジン始動指令が出力された場合には、スロットルをあまり開けずにモータ2がエンジン1をクランキングして、その後、スロットルを所定量だけ開けてエンジン1に燃料を供給し、エンジン1をアイドル状態とする。その後、制御装置8から、スロットルを大きく開けてエンジン1を発電に適した所定状態にするための指令が出力される。このように、制御装置8からエンジン始動指令が出力された場合には、エンジン1が始動してから所定期間だけ、エンジン1はアイドル状態となる。なお、エンジン1の始動タイミングでは、エンジン1からは始動音も発生し、エンジン1の駆動時には、エンジン1からエンジン音が発生する。
【0031】
[音出力装置から出力される音の大きさと時間との関係例]
図3A、
図3Bは、音出力装置9から出力される音の大きさ(ラウドネス)と、時間との関係を示す図である。なお、
図3A、
図3Bでは縦軸で音の大きさを示し、横軸は時間軸を示す。また、
図3A、
図3Bに示す時間軸t0乃至t4は、
図2A、
図2Bに示す時間軸t0乃至t4に対応する。なお、
図3Bは、
図3Aの一部を変形したものであり、時間t2からt3の期間における直線42、51の傾きが異なる。そこで、以下では、主に
図3Aについて説明し、
図3Bについては、
図3Aと異なる点を中心に説明する。
【0032】
なお、物理量である音圧(物理パラメータ)を表す指標としては複数の音圧指標が存在する。例えば、音圧レベルを物理的に示すデシベル[dB]は、人の耳の聴感特性を考慮していない物理的な音圧指標である。例えば、音圧レベルを一定とした場合でも、周波数を上げていくと、人間の耳には音が大きくなっていくように聞こえる。また、音圧レベルを一定とした場合でも、周波数を下げていくと、人間の耳には音が小さくなっていくように聞こえる。
【0033】
また、人間の耳の聴感特性を考慮した音圧を示す指標としてラウドネス(ラウドネス音)がある。このラウドネスは、一般に、人間の感じる音の大きさを意味する音圧指標であり、例えば、高周波になると、人間には聞こえやすくなるという、ことを考慮した音圧指標である。このラウドネスを調整することにより、人間が聞こえる音を調整することが可能である。そこで、本実施形態では、ラウドネスを調整することにより、音出力装置9から出力される音を調整する例を示す。
【0034】
また、本実施形態では、疑似的なモータ音を生成するため、3つの周波数特性を有する音を混ぜて1つの音を生成する例を示す。例えば、モータは、回転物であるため、回転物としてのモータ音をメインの音、すなわち、1次成分とし、他のモータ音、例えば、摩擦音などを、2次成分、3次成分の音とする。
【0035】
ここで、音の性質(特性)を決める要素として、音の三要素が知られている。この音の三要素は、音の大きさ(音圧レベル)、音の高さ(周波数)、音色(周波数成分)により構成される。ただし、本実施形態では、音の大きさ、音の高さを変化させてラウドネスを調整する例を示す。
【0036】
具体的には、
図3Aでは、音出力装置9から出力される音の音圧レベルを、車両100の加速度合に応じて変化させる。ここで、車両100の加速度合は、車両100の加速の程度を意味し、例えば、車両100の加速度の大きさ、加速する時間の長さ、車速増加が継続する時間の長さ等を意味する。例えば、
図2Aの直線20に示すように、車両100が一定の加速度で前進する場合でも、その加速が継続する時間帯には、音出力装置9から出力される音の音圧レベルを増加させる。また、例えば、車両100が急加速する場合には、その加速度の大きさに応じて、その加速が継続する時間帯には、音出力装置9から出力される音の音圧レベルを増加させる。
【0037】
上述したように、
図2Aの直線20に示すように、車両100は、t0からt4までの期間において一定の加速度で前進する。このため、音出力装置9から出力される音の音圧レベルについても、t0からt4までの期間において一定の割合で増加するように設定される。
図3Aでは、その設定に対応する音圧レベルを実線43、点線44で示す。
【0038】
また、
図3Aでは、音出力装置9から出力される音の周波数については、車両100の加速度合とは無関係にリニアに増加させる。また、本実施形態では、上述したように、疑似的なモータ音を生成するため、3つの周波数を混ぜて1つの音を生成する例を示す。例えば、t0からt4までの期間において、0から500Hzにリニアに変化させる第1周波数と、0から1000Hzにリニアに変化させる第2周波数と、0から2000Hzにリニアに変化させる第3周波数とを合成して1つの合成音を生成する。このように、時間とともに周波数を増加させていく。すなわち、リニアに変化させるサインスイープ波を用いて疑似的なモータ音を生成する。
【0039】
このように、本実施形態では、音出力装置9から出力される音の音圧レベルについては、車両100の加速度合に応じて変化させるが、音出力装置9から出力される音の周波数については、車両100の加速度合とは無関係にリニアに増加させる。すなわち、本実施形態では、車両100の加速が進むにつれてラウドネスを増加させる。
【0040】
また、本実施形態では、エンジン1が始動してからアイドル状態となるまでの期間において、音出力装置9から出力される音の大きさが、車両100の車室内の暗騒音よりも大きくなり、かつ、エンジン1から発生するエンジン音や始動音よりも大きくなるように、音圧レベルを調整する。具体的には、
図3Aに示すt0からt2までの期間において、
図3Aに示す点線44に対応する音圧レベルを、5デシベル上昇させる。この5デシベル上昇させた音圧レベルを実線41で示す。
【0041】
なお、エンジン1が始動してからアイドル状態となるまでの期間において、音出力装置9から出力される音の大きさが、車両100の車室内の暗騒音よりも大きくなり、かつ、エンジン1から発生するエンジン音や始動音よりも大きくなるように、周波数を調整するようにしてもよい。すなわち、車両100の車室内の暗騒音よりも大きくなり、かつ、エンジン1から発生するエンジン音や始動音よりも大きくなる周波数が存在する音を音出力装置9から出力させるようにしてもよい。
【0042】
なお、暗騒音は、車両100の車室内において、特定の音、すなわち、モータ音及びエンジン音が無い時の、特定の音以外の音、すなわち、騒音を意味する。例えば、車両100の車室内における暗騒音は、車両100の風切り音とロードノイズを合わせた音とすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、エンジン1がアイドル状態となったタイミングで、5デシベル上昇させた音圧レベルを元に戻すように調整する。
【0044】
具体的には、
図3Aに示すt2からt3までの期間において、
図3Aに示す点線44、実線43に対応する音圧レベルに戻す。ただし、
図3Aでは、音圧レベルの連続性を保つため、音圧レベルを時間の経過に応じて順次減少させるように調整する。具体的には、
図3Aに示すt2からt3までの期間において、
図3Aの実線42に示すように、実線41で示す音圧レベルから、実線43に示す音圧レベルまで、音圧レベルを順次減少させる。例えば、
図3Aに示す実線41に対応する音圧レベル、すなわち、5デシベル上昇させた音圧レベルを、5から0デシベルまで順次下降させ、実線43に対応する音圧レベルまで戻す。ただし、上述したように、
図3Aに示すt2からt3までの期間においても、音の周波数については、車両100の加速度合とは無関係にリニアに増加させる。
【0045】
このように、エンジン1がアイドル状態となったタイミング(t2)までは、車両100の加速度合に応じて音圧レベルを増加させていく。
【0046】
また、
図2Bのt2からt3までの期間に示すように、エンジン1の回転数がアイドル状態から一定値e2になる場合には、エンジン1の回転数が急激に上昇するため、エンジン1から発生するエンジン音も急激に大きくなる。このため、t2からt3までの期間において、音出力装置9から出力される音の大きさを減少させる。すなわち、アイドル状態のタイミング(t2)から、エンジン1の回転数が一定になるタイミング(t3)までの期間のうちの少なくとも一部の期間において音圧レベルを減少させる。言い換えると、アイドル状態に到達した後の、エンジン1の回転数が上昇する期間では、音圧レベルを所定期間減少させるようにする。
【0047】
このように、t2からt3までの期間において、音出力装置9から出力される音の大きさを減少させることにより、音出力装置9から出力される疑似的なモータ音と、エンジン1から発生するエンジン音との連続性を保つことができる。すなわち、t2からt3までの期間において、エンジン1から発生するエンジン音は増加するが、音出力装置9から出力される疑似的なモータ音は減少するため、これらの音が滑らかになり、全体的にドライバにとっても心地よい音となる。
【0048】
また、
図3Aの直線43に示すように、時間t3が経過する前のタイミングで、車両100の加速度合に応じて、音出力装置9から出力される音の大きさを増加させる。
【0049】
このように、本実施形態では、車両100の加速度合に応じて、音出力装置9から出力される音の大きさを増加させる。ただし、エンジン1から発生するエンジン音が増加する所定期間については、車両100の加速度合に応じて、音出力装置9から出力される音の大きさを減少させる。
【0050】
なお、
図3Bでは、直線51に示すように、時間t2からt3までの期間において、音出力装置9から出力される音の大きさを、車両100の加速度合に応じて減少させる。そして、
図3Bの直線43に示すように、時間t3のタイミングで、音出力装置9から出力される音の大きさを増加させる。
【0051】
なお、音出力装置9から出力される音の大きさを減少させる期間については、エンジン1の回転数に基づいて設定するようにしてもよく、固定期間を予め設定しておくようにしてもよい。また、これらの設定は、ユーザ設定により変更可能としてもよい。
【0052】
なお、
図3A、
図3Bでは、車両100の加速度合に応じて音圧レベルを増加させる例を示した。ただし、エンジン1が所定状態、すなわち、所定の回転数e2を維持している状態となった場合には、音圧レベルを一定とし、周波数のみをリニアに上げていくようにしてもよい。この場合には、音圧レベルが一定であるが、周波数がリニアに上がっていくため、人間の耳には疑似的なモータ音が大きくなっているように聞こえる。すなわち、人間の耳に入るラウドネス音は上がることになる。
【0053】
〔制御装置の動作例〕
図4は、制御装置8が実行する音出力処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この処理手順は、制御装置8の記憶部に記憶されているプログラムに基づいて実行される。
【0054】
ステップS201において、制御装置8は、アクセル開度の変化を算出する。すなわち、制御装置8は、車両100のドライバにより踏み込まれたアクセルペダルの踏み加減に関する情報としてアクセル開度を取得し、そのアクセル開度の変化を算出する。
【0055】
ステップS202において、制御装置8は、ステップS201で算出したアクセル開度変化が、加速意図条件を満足するか否かを判定する。例えば、アクセル開度の変化量やアクセル開度の絶対値等に基づいて、加速意図条件を満足するか否かが判定される。言い換えると、アクセル開度の開く速度やアクセル開度の開き具合等に基づいて、加速意図条件を満足するか否かが判定される。例えば、アクセル開度が大きく開いた場合や、アクセル開度が早く開いた場合には、車両100が加速すると判定される。加速意図条件を満足する場合には、ステップS203に進み、加速意図条件を満足しない場合には、音出力処理の動作を終了する。
【0056】
ステップS203において、制御装置8は、モータ6のモータトルクと車両100の走行抵抗とに基づいて、車両100の加速の強さ、すなわち、加速度の大きさを判定する。なお、モータ6のモータトルクは、モータ6を制御するための電流値に基づいて取得可能である。また、モータ6のモータトルクは、ステップS201で取得したアクセル開度、モータ6を制御するための電流値、モータ6の回転数等を用いて取得するようにしてもよい。
【0057】
また、車両100の走行抵抗は、車両100の空気抵抗や車両100のタイヤの転がり抵抗により決められる値である。なお、車両100の空気抵抗や車両100のタイヤの転がり抵抗は、車両100の車速に応じて決められる値であるため、車両100の走行抵抗は、車両100の車速に基づいて取得可能である。また、制御装置8は、車両100の車速と車両100の走行抵抗との関係を示すマップ情報を制御装置8の記憶部に記憶させておき、そのマップ情報を用いて、車両100の走行抵抗を取得することができる。
【0058】
また、車両100の加速の強さは、加速度を求める計算式を利用して算出することができる。
【0059】
ステップS204において、制御装置8は、ステップS203で判定した車両100の加速の強さに基づいて、音出力装置9から出力させるモータ音の増加代を決定する。すなわち、車両100の加速度合に基づいて、どの程度のモータ音を音出力装置9から出力させるかが決定される。例えば、加速度が大きい場合には、加速度合に応じて大きいモータ音を出力させ、加速度が小さい場合、すなわちゆっくりな加速度である場合には、加速度合に応じて小さいモータ音を出力させる決定をすることができる。例えば、
図3Aに示す直線(点線44と実線43)に対応するモータ音や、
図3Bに示す直線(点線52と実線43)に対応するモータ音が決定される。
【0060】
ステップS205において、制御装置8は、音出力装置9が稼働前であり、かつ、エンジン1が停止中であるか否かを判定する。なお、制御装置8は、所定タイミングでエンジン1の回転数を取得し、エンジン1が停止中であるか否かを判定する。音出力装置9が稼働前であり、かつ、エンジン1が停止中である場合には、ステップS206に進む。一方、音出力装置9が既に稼働している場合、または、エンジン1が駆動中である場合には、ステップS215に進む。
【0061】
ステップS215において、制御装置8は、音出力装置9を稼働させ、ステップS204で決定したモータ音の増加代に基づいて、音出力装置9からモータ音を出力させる。この場合には、エンジン音を考慮する必要がないため、例えば、
図3Aに示す直線(点線44と実線43)に対応するモータ音や、
図3Bに示す直線(点線52と実線43)に対応するモータ音が出力される。なお、音出力装置9が稼働中である場合には、その稼働を継続して行う。また、車両100の車速増加が継続しなくなった場合には、ステップS214に進む。
【0062】
ステップS206において、制御装置8は、車両100の車速増加が継続中であるか否かを判定する。なお、車両100の車速は、モータ6の回転数に基づいて算出可能である。車両100の車速増加が継続中である場合には、ステップS207に進む。一方、車両100の車速増加が継続していない場合には、ステップS214に進む。なお、音出力装置9が稼働前であるが、車両100の車速増加が継続していない場合には、音出力処理の動作を終了する。
【0063】
ステップS207において、制御装置8は、音出力装置9を稼働させ、車両100の加速度合に応じて、音出力装置9から出力されるモータ音の大きさを増加させる。例えば、
図3A、
図3Bの直線41に示すように、モータ音の大きさを増加させる。
【0064】
ステップS208において、制御装置8は、エンジン1への始動指令を出しているか否かを判定する。例えば、バッテリ5のSOCの低下等が検出された場合には、モータ2で発電された電力をバッテリ5に充電する必要があるため、制御装置8は、エンジン1への始動指令を出す。エンジン1への始動指令を出していない場合には、ステップS206に戻る。一方、エンジン1への始動指令を出している場合には、ステップS209に進む。このように、制御装置8は、モータ音を出力している間、エンジン1が始動するか否かを確認する。
【0065】
ステップS209において、制御装置8は、音出力装置9からのモータ音を減少に転じさせるタイミングを、音圧挙動データに基づいて算出する。なお、音圧挙動データは、エンジン1の起動(
図2Bに示す時間t1)から所定状態(
図2Bに示す時間t3)までの間におけるモータ音の挙動に関するマップ情報であり、制御装置8の記憶部に記憶されている。すなわち、音圧挙動データは、エンジン1に関する実験データとして予め取得されたデータであり、エンジン1の起動タイミング(
図2Bに示す時間t1)に基づいて、エンジン1がアイドル状態となるタイミング(
図2Bに示す時間t2)等を算出するためのデータである。上述したように、本実施形態では、エンジン1がアイドル状態となるタイミング(
図2Bに示す時間t2)を、音出力装置9からのモータ音を減少に転じさせるタイミングとする。
【0066】
ステップS210において、制御装置8は、音出力装置9からのモータ音を減少に転じさせるタイミングになったか否かを判定する。音出力装置9からのモータ音を減少に転じさせるタイミングになっていない場合には、ステップS211に進む。一方、音出力装置9からのモータ音を減少に転じさせるタイミングになった場合には、ステップS212に進む。
【0067】
ステップS211において、制御装置8は、音出力装置9から出力されるモータ音の大きさを、車両100の加速度合に応じて増加させる。例えば、音出力装置9からのモータ音を減少に転じさせるタイミングになる前の状態では、
図3A、
図3Bの直線41に示すように、モータ音の大きさを増加させる。一方、音出力装置9からのモータ音を減少に転じさせた後の状態では、
図3A、
図3Bの直線43に示すように、モータ音の大きさを増加させる。
【0068】
ステップS212において、制御装置8は、音出力装置9から出力されるモータ音の大きさを、車両100の加速度合に応じて、所定期間だけ減少させる。例えば、
図3Aの直線42、
図3Bの直線51に示すように、モータ音の大きさを減少させる。なお、その所定期間として、例えば、固定値を用いるようにしてもよく、エンジン1の回転数に応じた可変期間を用いるようにしてもよい。例えば、エンジン1の回転数が
図2Bに示すe1からe2に遷移する期間を所定期間とすることができる。また、例えば、エンジン1の回転数が
図2Bに示すe1からe2に遷移する期間のうちの最初の一部期間を所定期間とすることができる。
【0069】
ステップS213において、制御装置8は、車両100の車速増加が継続中であるか否かを判定する。車両100の車速増加が継続中である場合には、ステップS210に戻る。一方、車両100の車速増加が継続していない場合には、ステップS214に進む。
【0070】
ステップS214において、制御装置8は、音出力装置9の稼働を停止させる。
【0071】
[変形例]
なお、以上では、疑似的なモータ音を減少に転じさせるタイミングを音圧挙動データに基づいて算出し、そのタイミングを利用して疑似的なモータ音の増加減少を制御する例を示した。ここで、制御装置8は、エンジン1の回転数を取得可能である。そこで、以下では、制御装置8は、エンジン1の回転数を定期的に確認し、その回転数に基づいて疑似的なモータ音の増加減少を制御する例を示す。
【0072】
〔制御装置の動作例〕
図5は、制御装置8が実行する音出力処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この処理手順は、制御装置8の記憶部に記憶されているプログラムに基づいて実行される。また、この処理手順は、
図4に示す処理手順の一部を変形したものであり、
図4に示す処理手順と共通する部分には同一の符号を付して説明の一部を省略する。具体的には、
図5では、
図4に示すステップS209、S210の代わりに、ステップS211を実行する点が異なる。
【0073】
ステップS220において、制御装置8は、エンジン1の回転数に基づいて、エンジン1がアイドル状態の所定タイミングとなったか否かを判定する。ここで、アイドル状態の所定タイミングは、エンジン回転数がアイドル回転数となったタイミングであり、
図4に示すステップS209のタイミングと同様とすることができる。すなわち、
図2Bに示すように、エンジン1がアイドル状態となったタイミング(時間t2)を、アイドル状態の所定タイミングとすることができる。エンジン1がアイドル状態の所定タイミングとなった場合には、ステップS212に進む。一方、エンジン1がアイドル状態でない場合、または、エンジン1がアイドル状態であるが所定タイミングとなっていない場合には、ステップS211に進む。
【0074】
このように、制御装置8は、エンジン始動指令を出力するタイミングで、エンジン1の回転数の監視を開始し、エンジン1がアイドル状態となり、かつ、エンジン1の回転数が落ち込んだ後に上昇に転じるタイミングを検出する。そして、制御装置8は、その検出したタイミングで疑似的なモータ音の出力を所定期間だけ減少させるようにする。
【0075】
なお、本実施形態では、車両100の車室内において、音出力装置9から疑似的なモータ音を出力させる例を示した。ただし、車両100の車室内において、音出力装置9から他の音、例えば、疑似的なエンジン音を出力させるようにしてもよい。なお、音出力装置9から出力させる音をユーザ操作により設定可能としてもよい。これにより、車両100のドライバの好みに応じた最適な音を出力させることができ、車両100の加速感をさらに高めることができる。
【0076】
なお、本実施形態では、車両100の車室内において、音出力装置9から音を出力させる例を示した。ただし、車両100の車室内及び外部において、音出力装置9から音を出力させるようにしてもよい。なお、音出力装置9から車両100の外部に音を出力させるか否かをユーザ操作により設定可能としてもよい。また、車両100の車室内に出力させる音と、車両100の外部に出力させる音とを異なるレベルで出力させるようにしてもよい。また、車両100の車室内に出力させる音と、車両100の外部に出力させる音とを異なる種類の音として出力させるようにしてもよい。例えば、車両100の車室内には、上述した疑似的なモータ音を出力させ、車両100の外部には、車両100の外部に存在する人が心地良くなるようなメロディを、疑似的なモータ音の出力レベルに応じて出力させるようにしてもよい。これにより、車両100の外部に存在する人も車両100の加速感を、心地良いメロディで味わうことができる。
【0077】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態に係る車両の制御方法は、車両を駆動する電動モータ(モータ6)と、電動モータに供給する電気を発電する発電機(モータ2)を駆動するエンジン1と、音を出力する音出力装置9と、を備える車両100の制御方法である。この車両の制御方法では、エンジン1が停止している状態で車両100の加速が開始された後に、その加速途中でエンジン1が始動してエンジン1が発電機(モータ2)の駆動による発電に適した所定状態になる場合には、車両100の加速度合とエンジン1の回転数とに基づいて音出力装置9から出力させる音の大きさを制御する。
【0078】
このような車両の制御方法によれば、車両100が加速する際に、音出力装置9から出力される疑似的なモータ音と、エンジン1の回転数の上昇によるエンジン発生音とを適切に調整することができるため、ドライバが快適な加速感を得ることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る車両の制御方法では、加速途中で始動したエンジン1の回転数が、所定状態になる前のアイドル状態の回転数となるまでの間、車両100の加速度合に応じて音出力装置9から出力させる音の大きさを増加させる。
【0080】
このような車両の制御方法によれば、車両100が加速する際に、音出力装置9から出力される疑似的なモータ音の増大と、エンジン1の回転数の上昇によるエンジン発生音の増大とが連続的に起こり、ドライバが快適な加速感を得ることができる。
【0081】
また、本実施形態に係る車両の制御方法では、加速途中で始動したエンジン1の回転数が、所定状態になる前のアイドル状態の回転数から、所定状態となる所定の回転数に上昇している期間のうちの少なくとも一部の期間において、車両100の加速度合に応じて音出力装置9から出力させる音の大きさを減少させる。
【0082】
このような車両の制御方法によれば、エンジン1の回転数の上昇によるエンジン発生音の増大と、音出力装置9から出力される音の増大との重複がなくなり、ドライバに過度な音を与えることがなくなる。これにより、ドライバが快適な加速感を得ることができる。
【0083】
また、本実施形態に係る車両の制御方法では、加速途中で始動したエンジン1の回転数が、所定状態となる所定の回転数e2(
図2B参照)に達した後に、エンジン1が所定状態を維持している間、車両100の加速度合に応じて音出力装置9から出力させる音の大きさを増加させる。
【0084】
このような車両の制御方法によれば、エンジン1の回転数が一定、すなわちエンジン発生音が一定の状態でエンジン1が運転されている場合に、音出力装置9から出力される疑似的なモータ音を増大させることにより、エンジン1の回転数が一定の状態でもドライバが快適な加速感を得ることができる。
【0085】
また、本実施形態に係る車両の制御方法では、加速途中で始動したエンジン1の回転数が、所定状態になる前のアイドル状態の回転数e1(
図2B参照)となるまでの間、音出力装置9から出力させる音の大きさをエンジン1から発生するエンジン音よりも大きくさせる。
【0086】
このような車両の制御方法によれば、加速途中で突然エンジン発生音が聞こえるような事態がなくなるので、ドライバが快適な加速感を得ることができる。
【0087】
また、本実施形態に係る車両の制御方法では、音出力装置9は、車両100の車室内において音を出力し、加速途中で始動したエンジン1の回転数が、所定状態になる前のアイドル状態の回転数e1(
図2B参照)となるまでの間、音出力装置9から出力させる音の大きさを車室内の暗騒音よりも大きくさせる。
【0088】
このような車両の制御方法によれば、暗騒音で音出力装置9からの疑似的なモータ音がかき消されることがなくなる。これにより、ドライバが快適な加速感を得ることができる。
【0089】
また、本実施形態に係る車両の制御方法では、音出力装置9は、電動モータ(モータ6)に関する疑似的なモータ音と、エンジン1に関する疑似的なエンジン音との何れかを設定に応じて出力する。
【0090】
このような車両の制御方法によれば、車両100のドライバの好みに応じた最適な音を出力させることができ、ドライバが快適な加速感を得ることができる。
【0091】
また、本実施形態に係る車両の制御システムは、車両100を駆動する電動モータ(モータ6)と、電動モータに供給する電気を発電する発電機(モータ2)を駆動するエンジン1と、音を出力する音出力装置9と、電動モータ(モータ6)とエンジン1と音出力装置9とを制御する制御装置8と、を備える。また、制御装置8は、エンジン1が停止している状態で車両100の加速が開始された後に、その加速途中でエンジン1が始動してエンジン1が発電機の駆動による発電に適した所定状態になる場合には、車両100の加速度合とエンジン1の回転数とに基づいて音出力装置9から出力させる音の大きさを制御する。
【0092】
このような車両の制御システムによれば、車両100が加速する際に、音出力装置9から出力される疑似的なモータ音と、エンジン1の回転数の上昇によるエンジン発生音とを適切に調整することができるため、ドライバが快適な加速感を得ることができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、
図4及び
図5に示した制御フローは一例であり、その制御フローに含まれた一部の処理は、本発明を実施可能な範囲で変更したり省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0094】
1 エンジン
2 モータ
3 増速機
4 インバータ
5 バッテリ
6 モータ
7 減速機/デファレンシャル
8 制御装置
9 音出力装置
10、11 駆動輪
100 車両