(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240229BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F9/20 Z
(21)【出願番号】P 2020045975
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中田 薫
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-190623(JP,A)
【文献】特開2010-248870(JP,A)
【文献】特開2011-239590(JP,A)
【文献】特開2018-087496(JP,A)
【文献】特開2016-061016(JP,A)
【文献】特開2001-352396(JP,A)
【文献】特開2011-203631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/22
E02F 3/42-3/43
E02F 3/84-3/85
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
B60R 16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
前記電源から供給される電力で稼働する複数の電気負荷と、を備え、
前記電源の出力可能な電流の最大値は、前記複数の電気負荷の稼働に必要な電流の最大値よりも小さ
く、
前記複数の電気負荷に必要な電流が相対的に大きい場合、前記複数の電気負荷のうちの一部の電気負荷の動作を制限し、
前記一部の電気負荷には、所定の熱源機器を冷却する冷却系の機器が含まれ、
前記冷却系の機器の動作を制限している状態で、前記熱源機器の温度が相対的に高くなった場合に、オペレータに前記複数の電気負荷の少なくとも一部の使用の制限を促す、
ショベル。
【請求項2】
電源と、
前記電源から供給される電力で稼働する複数の電気負荷と、を備え、
前記電源の出力可能な電流の最大値は、前記複数の電気負荷の稼働に必要な電流の最大値よりも小さ
く、
前記複数の電気負荷に必要な電流が相対的に大きい場合、前記複数の電気負荷のうちの一部の電気負荷の動作を制限し、
前記一部の電気負荷には、所定の熱源機器を冷却する冷却系の機器が含まれ、
前記冷却系の機器は、内部を通流する冷媒と外気との間で熱交換を行う熱交換器に送風する冷却ファンと、前記冷媒を前記熱源機器及び前記熱交換器を含む冷却回路内で循環させる冷媒ポンプとを含み、
前記複数の電気負荷に必要な電流が相対的に大きい場合、前記冷却ファン及び前記冷媒ポンプのうちの前記冷却ファンの動作を優先的に制限する、
ショベル。
【請求項3】
前記電源の出力可能な電流の最大値は、前記複数の電気負荷のそれぞれの定格電流の合計値よりも小さい、
請求項1
又は2に記載のショベル。
【請求項4】
前記複数の電気負荷には、それぞれ、動作制限に関する優先度が予め規定され、
前記一部の電気負荷は、前記複数の電気負荷のうちの前記優先度が相対的に高い電気負荷である、
請求項
1乃至3
の何れか一項に記載のショベル。
【請求項5】
前記冷却系の機器は、内部を通流する冷媒と外気との間で熱交換を行う熱交換器に送風する冷却ファンと、前記冷媒を前記熱源機器及び前記熱交換器を含む冷却回路内で循環させる冷媒ポンプとを含み、
前記複数の電気負荷に必要な電流が相対的に大きい場合、前記冷却ファンの動作を優先的に制限する、
請求項
1に記載のショベル。
【請求項6】
前記冷却系の機器の動作を制限している状態で、前記熱源機器の温度が相対的に高くなった場合に、オペレータに前記複数の電気負荷の少なくとも一部の使用の制限を促す、
請求項
2に記載のショベル。
【請求項7】
電動アクチュエータと、
前記電源よりも相対的に高い電圧を有し、前記電動アクチュエータに電力を供給する蓄電装置と、を備え、
前記電源は、前記蓄電装置の電力を降圧して、前記複数の電気負荷に向けて出力する電力変換装置を含む、
請求項1乃至
6の何れか一項に記載のショベル。
【請求項8】
前記電源は、前記複数の電気負荷に相対的に低い電圧を出力し、
前記複数の電気負荷には、ショベルの被駆動要素を駆動するための動力を出力する機器が含まれない、
請求項1乃至
7の何れか一項に記載のショベル。
【請求項9】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるブームと、
前記ブームの先端に取り付けられるアームと、
前記アームの先端に取り付けられるエンドアタッチメントと、
前記下部走行体、前記上部旋回体、前記ブーム、前記アーム、及び前記エンドアタッチメントを駆動するための動力を出力する電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータに電力を供給する蓄電装置と、を備える、
請求項1乃至
8の何れか一項に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショベルには、複数の電気負荷に電力を供給する電源が搭載される場合がある(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-65567号公報
【文献】特許第4769670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の電気負荷の稼働状況によっては、電源のエネルギ効率が低下する可能性がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、ショベルに搭載される電源のエネルギ効率の低下を抑制すること可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
電源と、
前記電源から供給される電力で稼働する複数の電気負荷と、を備え、
前記電源の出力可能な電流の最大値は、前記複数の電気負荷の稼働に必要な電流の最大値よりも小さく、
前記複数の電気負荷に必要な電流が相対的に大きい場合、前記複数の電気負荷のうちの一部の電気負荷の動作を制限し、
前記一部の電気負荷には、所定の熱源機器を冷却する冷却系の機器が含まれ、
前記冷却系の機器の動作を制限している状態で、前記熱源機器の温度が相対的に高くなった場合に、オペレータに前記複数の電気負荷の少なくとも一部の使用の制限を促す、
ショベルが提供される。
また、本開示の他の実施形態では、
電源と、
前記電源から供給される電力で稼働する複数の電気負荷と、を備え、
前記電源の出力可能な電流の最大値は、前記複数の電気負荷の稼働に必要な電流の最大値よりも小さく、
前記複数の電気負荷に必要な電流が相対的に大きい場合、前記複数の電気負荷のうちの一部の電気負荷の動作を制限し、
前記一部の電気負荷には、所定の熱源機器を冷却する冷却系の機器が含まれ、
前記冷却系の機器は、内部を通流する冷媒と外気との間で熱交換を行う熱交換器に送風する冷却ファンと、前記冷媒を前記熱源機器及び前記熱交換器を含む冷却回路内で循環させる冷媒ポンプとを含み、
前記複数の電気負荷に必要な電流が相対的に大きい場合、前記冷却ファン及び前記冷媒ポンプのうちの前記冷却ファンの動作を優先的に制限する、
ショベルが提供される。
【発明の効果】
【0007】
上述の実施形態によれば、ショベルに搭載される電源のエネルギ効率の低下を抑制すること可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ショベルの構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図3】電気駆動系の冷却回路の一例を示す図である。
【
図5】制御装置の低圧電源系に関する制御処理の第1例を概略的に示すフローチャートである。
【
図6】制御装置の低圧電源系に関する制御処理の第2例を概略的に示すフローチャートである。
【
図7】制御装置の低圧電源系に関する制御処理の第3例を概略的に示すフローチャートである。
【
図8】制御装置の低圧電源系に関する制御処理の第3例を概略的に示すフローチャートである。
【
図9】要求電流の合計と発生頻度との関係の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0010】
[ショベルの概要]
まず、
図1を参照して、作業機械の一例としてのショベル200の概要を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るショベル200の一例を示す側面図である。
【0012】
本実施形態に係るショベル200は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回可能に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメントとしてのブーム4、アーム5、及びバケット6と、キャビン10とを備える。
【0013】
下部走行体1は、例えば、左右一対のクローラを含み、それぞれのクローラが走行油圧モータ1A,1B(
図2参照)で油圧駆動されることにより、自走する。
【0014】
上部旋回体3は、旋回機構2を通じて、旋回用電動機21(
図2参照)で電気駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。また、上部旋回体3は、旋回機構2を通じて、旋回用電動機21の代わりに、旋回油圧モータにより油圧駆動されてもよい。この場合、本実施形態のショベル200は、エンジンを動力源とするメインポンプ14(
図2参照)から供給される作動油で全ての被駆動要素が油圧駆動され、いわゆる油圧ショベルの動力源(エンジン)をポンプ用電動機12に置換した構成に相当する。
【0015】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に取り付けられ、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に取り付けられる。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9により油圧駆動される。
【0016】
バケット6は、エンドアタッチメントの一例であり、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに、他のエンドアタッチメントが取り付けられてもよい。他のエンドアタッチメントは、例えば、法面用バケット、浚渫用バケット等のバケット6と異なる種類のバケットであってよい。また、他のエンドアタッチメントは、例えば、ブレーカ、攪拌機、グラップル等のバケットと異なる種類のエンドアタッチメントであってもよい。
【0017】
キャビン10は、上部旋回体3の前部左側に搭載され、その内部(室内)には、オペレータが着座する操縦席や後述する操作装置26等が設けられる。
【0018】
ショベル200は、キャビン10に搭乗するオペレータの操作に応じて、下部走行体1(左右のクローラ)、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素を動作させる。
【0019】
また、ショベル200は、キャビン10に搭乗するオペレータによって操作可能に構成されるのに代えて、或いは、加えて、ショベル200の外部から遠隔操作(リモート操作)が可能に構成されてもよい。ショベル200が遠隔操作される場合、キャビン10の内部は、無人状態であってもよい。以下、オペレータの操作には、キャビン10のオペレータの操作装置26に対する操作、及び外部のオペレータの遠隔操作の少なくとも一方が含まれる前提で説明を進める。
【0020】
遠隔操作には、例えば、所定の外部装置で行われるショベル200のアクチュエータに関する操作入力によって、ショベル200が操作される態様が含まれる。この場合、ショベル200は、所定の外部装置と通信可能な通信装置を搭載し、例えば、後述の周囲情報取得装置40に含まれる撮像装置が出力する画像情報(撮像画像)を外部装置に送信してよい。そして、外部装置は、自装置に設けられる表示装置(以下、「遠隔操作用表示装置」)に受信される画像情報(撮像画像)を表示させてよい。また、ショベル200のキャビン10の内部の出力装置50(表示装置)に表示される各種の情報画像(情報画面)は、同様に、外部装置の遠隔操作用表示装置にも表示されてよい。これにより、外部装置のオペレータは、例えば、遠隔操作用表示装置に表示されるショベル200の周囲の様子を表す撮像画像や情報画面等の表示内容を確認しながら、ショベル200を遠隔操作することができる。そして、ショベル200は、通信装置により外部装置から受信される、遠隔操作の内容を表す遠隔操作信号に応じて、油圧アクチュエータを動作させ、下部走行体1(左右のクローラ)、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素を駆動してよい。
【0021】
また、遠隔操作には、例えば、ショベル200の周囲の人(例えば、作業者)のショベル200に対する外部からの音声入力やジェスチャ入力等によって、ショベル200が操作される態様が含まれてよい。具体的には、ショベル200は、ショベル200(自機)に搭載される音声入力装置(例えば、マイクロフォン)やジェスチャ入力装置(例えば、撮像装置)等を通じて、周囲の作業者等により発話される音声や作業者等により行われるジェスチャ等を認識する。そして、ショベル200は、認識した音声やジェスチャ等の内容に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1(左右のクローラ)、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素を駆動してもよい。
【0022】
また、ショベル200は、オペレータの操作の内容に依らず、自動でアクチュエータを動作させてもよい。これにより、ショベル200は、下部走行体1(クローラ1CL,1CR)、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能(いわゆる「自動運転機能」或いは「マシンコントロール機能」)を実現する。
【0023】
自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作に応じて、操作対象の被駆動要素(油圧アクチュエータ)以外の被駆動要素(アクチュエータ)を自動で動作させる機能(いわゆる「半自動運機能」)が含まれてよい。また、自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作がない前提で、複数の被駆動要素(アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(いわゆる「完全自動運転機能」)が含まれてよい。ショベル200において、完全自動運転機能が有効な場合、キャビン10の内部は無人状態であってよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能等には、自動運転の対象の被駆動要素(アクチュエータ)の動作内容が予め規定されるルールに従って自動的に決定される態様が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能等には、ショベル200が自律的に各種の判断を行い、その判断結果に沿って、自律的に自動運転の対象の被駆動要素(アクチュエータ)の動作内容が決定される態様(いわゆる「自律運転機能」)が含まれてもよい。
【0024】
[ショベルの構成]
次に、
図1に加えて、
図2~
図4を参照して、本実施形態に係るショベル200の構成について説明する。
【0025】
図2は、本実施形態に係るショベル200の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図3は、本実施形態に係るショベル200に搭載される、電気駆動系の冷却回路60の一例を示す図である。
図4は、本実施形態に係るショベル200に搭載される、低圧電源系の一例を示す図である。
【0026】
尚、図中にて、機械的動力ラインは二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御ラインは細い実線でそれぞれ示される。
【0027】
<油圧駆動系>
本実施形態に係るショベル200の油圧駆動系は、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1A,1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。また、本実施形態に係るショベル200の油圧駆動系は、ポンプ用電動機12と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17とを含む。
【0028】
ポンプ用電動機12(電動アクチュエータの一例)は、油圧駆動系の動力源である。ポンプ用電動機12は、例えば、IPM(Interior Permanent Magnet)モータである。ポンプ用電動機12は、インバータ18Aを介して蓄電装置19及び電力変換装置100を含む高圧電源や旋回用電動機21と接続される。ポンプ用電動機12は、インバータ18Aを介して蓄電装置19や旋回用電動機21から供給される三相交流電力で力行運転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。ポンプ用電動機12の駆動制御は、後述するコントローラ30Bの制御下で、インバータ18Aにより実行されてよい。
【0029】
メインポンプ14は、作動油タンクTから作動油を吸い込み、高圧油圧ライン16に吐出することにより、高圧油圧ライン16を通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、ポンプ用電動機12により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、後述するコントローラ30Aの制御下で、レギュレータ(不図示)が斜板の角度(傾転角)を制御する。これにより、メインポンプ14は、ピストンのストローク長を調整し、吐出流量(吐出圧)を調整することができる。
【0030】
尚、メインポンプ14は、ポンプ用電動機12に加えて、他の動力源からの動力で駆動されてもよい。例えば、ブーム4の下げ動作時やアーム5の閉じ動作時にブーム4やアーム5の自重でブームシリンダ7やアームシリンダ8から作動油タンクに排出される作動油のエネルギを回生し、メインポンプ14を駆動してもよい。具体的には、ブーム4の下げ動作時やアーム5の閉じ動作時にブーム4やアーム5の自重でブームシリンダ7やアームシリンダ8から作動油タンクに排出される作動油のエネルギで、メインポンプ14の回転軸と同軸で配置される油圧モータを駆動させてよい。また、ブーム4の下げ動作時やアーム5の閉じ動作時にブーム4やアーム5の自重でブームシリンダ7やアームシリンダ8から作動油タンクに排出される作動油のエネルギを回生し、発電機に発電を行わせてもよい。具体的には、ブーム4の下げ動作時やアーム5の閉じ動作時にブーム4やアーム5の自重でブームシリンダ7やアームシリンダ8から作動油タンクに排出される作動油のエネルギで、発電機と同軸に配置される油圧モータを駆動することにより、発電機に発電を行わせてよい。この場合、発電機の発電電力は、ポンプ用電動機12に供給されたり、蓄電装置19に充電されたりしてよい。
【0031】
コントロールバルブ17は、オペレータの操作や自動運転機能に対応する操作指令に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ライン16を介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1A,1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)に選択的に供給可能に構成される。例えば、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向とを制御する複数の制御弁(方向切換弁)を含むバルブユニットである。メインポンプ14から供給され、コントロールバルブ17や油圧アクチュエータを通流した作動油は、コントロールバルブ17から作動油タンクTに排出される。
【0032】
<電気駆動系>
本実施形態に係るショベル200の電気駆動系は、ポンプ用電動機12と、センサ12sと、インバータ18Aとを含む。また、本実施形態に係るショベル200の電気駆動系は、旋回駆動装置20と、センサ21sと、インバータ18Bとを含む。また、本実施形態に係るショベル200の電気駆動系は、蓄電装置19及び電力変換装置100等により構成される高圧電源を含む。
【0033】
センサ12sは、電流センサ12s1と、電圧センサ12s2と、回転状態センサ12s3とを含む。
【0034】
電流センサ12s1は、ポンプ用電動機12の三相(U相、V相、及びW相)のそれぞれの電流を検出する。電流センサ12s1は、例えば、ポンプ用電動機12とインバータ18Aの間の電力経路に設けられる。電流センサ12s1により検出されるポンプ用電動機12の三相それぞれの電流に対応する検出信号は、通信線を通じて、直接的に、インバータ18Aに取り込まれる。また、当該検出信号は、通信線を通じて、コントローラ30Bに取り込まれ、コントローラ30B経由で、インバータ18Aに入力されてもよい。
【0035】
電圧センサ12s2は、ポンプ用電動機12の三相のそれぞれの印加電圧を検出する。電圧センサ12s2は、例えば、ポンプ用電動機12とインバータ18Aの間の電力経路に設けられる。電圧センサ12s2により検出されるポンプ用電動機12の三相それぞれの印加電圧に対応する検出信号は、通信線を通じて、直接的に、インバータ18Aに取り込まれる。また、当該検出信号は、通信線を通じて、コントローラ30Bに取り込まれ、コントローラ30B経由で、インバータ18Aに入力されてもよい。
【0036】
回転状態センサ12s3は、ポンプ用電動機12の回転状態(例えば、回転位置(回転角)、回転速度等)を検出する。回転状態センサ12s3は、例えば、ロータリエンコーダやレゾルバである。
【0037】
インバータ18Aは、コントローラ30Bの制御下で、ポンプ用電動機12を駆動制御する。インバータ18Aは、例えば、直流電力を三相交流電力に変換したり、三相交流電力を直流電力に変換したりする変換回路と、変換回路をスイッチ駆動する駆動回路と、駆動回路の動作を規定する制御信号(例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号)を出力する制御回路とを含む。
【0038】
インバータ18Aの制御回路は、ポンプ用電動機12の動作状態を把握しながら、ポンプ用電動機12の駆動制御を行う。例えば、インバータ18Aの制御回路は、回転状態センサ12s3の検出信号に基づき、ポンプ用電動機12の動作状態を把握する。また、インバータ18Aの制御回路は、電流センサ12s1の検出信号及び電圧センサ12s2の検出信号(或いは制御過程で生成する電圧指令値)に基づき、逐次、ポンプ用電動機12の回転軸の回転角等を推定することにより、ポンプ用電動機12の動作状態を把握してもよい。
【0039】
尚、インバータ18Aの駆動回路及び制御回路の少なくとも一方は、インバータ18Aの外部に設けられてもよい。
【0040】
旋回駆動装置20は、旋回用電動機21と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回減速機24とを含む。
【0041】
旋回用電動機21(電動アクチュエータの一例)は、コントローラ30B及びインバータ18Bの制御下で、上部旋回体3を旋回駆動する力行運転、及び回生電力を発生させて上部旋回体3を旋回制動する回生運転を行う。旋回用電動機21は、インバータ18Bを介して高圧電源(即ち、蓄電装置19及び電力変換装置100等)に接続され、インバータ18Bを介して蓄電装置19から供給される三相交流電力により駆動される。また、旋回用電動機21は、インバータ18Bを介して、回生電力を蓄電装置19やポンプ用電動機12に供給する。これにより、回生電力で、蓄電装置19を充電したり、ポンプ用電動機12を駆動したりすることができる。旋回用電動機21の力行運転と回生運転との切替制御は、例えば、コントローラ30Bの制御下で、インバータ18Bにより実行されてよい。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。
【0042】
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転状態(例えば、回転位置(回転角)や回転速度等)を検出する。レゾルバ22により検出された回転角等に対応する検出信号は、通信線を通じて、直接的に、インバータ18Bに取り込まれてよい。また、当該検出信号は、通信線を通じて、コントローラ30Bに取り込まれ、コントローラ30B経由でインバータ18Bに入力されてもよい。
【0043】
メカニカルブレーキ23は、コントローラ30Bの制御下で、旋回用電動機21の回転軸21Aに対して、機械的に制動力を発生させる。これにより、メカニカルブレーキ23は、上部旋回体3の旋回制動を行ったり、上部旋回体3の停止状態を維持させたりすることができる。
【0044】
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aと接続され、旋回用電動機21の出力(トルク)を所定の減速比で減速させることにより、トルクを増大させて、上部旋回体3を旋回駆動する。即ち、力行運転の際、旋回用電動機21は、旋回減速機24を介して、上部旋回体3を旋回駆動する。また、旋回減速機24は、上部旋回体3の慣性回転力を増速させて旋回用電動機21に伝達し、回生電力を発生させる。即ち、回生運転の際、旋回用電動機21は、旋回減速機24を介して伝達される上部旋回体3の慣性回転力により回生発電を行い、上部旋回体3を旋回制動する。
【0045】
センサ21sは、電流センサ21s1と、電圧センサ21s2とを含む。
【0046】
電流センサ21s1は、旋回用電動機21の三相(U相、V相、及びW相)のそれぞれの電流を検出する。電流センサ21s1は、例えば、旋回用電動機21とインバータ18Bの間の電力経路に設けられる。電流センサ21s1により検出される、旋回用電動機21の三相それぞれの電流に対応する検出信号は、通信線を通じて、直接的に、インバータ18Bに取り込まれてよい。また、当該検出信号は、通信線を通じて、コントローラ30Bに取り込まれ、コントローラ30B経由で、インバータ18Bに入力されてもよい。
【0047】
電圧センサ21s2は、旋回用電動機21の三相のそれぞれの印加電圧を検出する。電圧センサ21s2は、例えば、旋回用電動機21とインバータ18Bの間の電力経路に設けられる。電圧センサ21s2により検出される旋回用電動機21の三相それぞれの印加電圧に対応する検出信号は、通信線を通じて、直接的に、インバータ18Bに取り込まれる。また、当該検出信号は、通信線を通じて、コントローラ30Bに取り込まれ、コントローラ30B経由で、インバータ18Bに入力されてもよい。
【0048】
インバータ18Bは、コントローラ30Bの制御下で、旋回用電動機21を駆動制御する。インバータ18Bは、例えば、直流電力を三相交流電力に変換したり、三相交流電力を直流電力に変換したりする変換回路と、変換回路をスイッチ駆動する駆動回路と、駆動回路の動作を規定する制御信号(例えば、PWM信号)を出力する制御回路とを含む。
【0049】
例えば、インバータ18Bの制御回路は、電流センサ21s1、電圧センサ21s2、及びレゾルバ22の検出信号に基づき、旋回用電動機21に関する速度フィードバック制御及びトルクフィードバック制御を行う。
【0050】
例えば、
図3に示すように、インバータ18A,18Bは、例えば、一つの筐体に収容され、一体として、インバータユニット18を構成してよい。
【0051】
尚、インバータ18Bの駆動回路及び制御回路の少なくとも一方は、インバータ18Bの外部に設けられてもよい。
【0052】
蓄電装置19は、外部の商用電源と所定のケーブル(以下「充電ケーブル」)で接続されることにより充電(蓄電)される。蓄電装置19と充電ケーブルが接続される充電口との間の電力経路には、車載充電器が設けられてもよい。車載充電器は、例えば、充電ケーブルを通じて、外部の商用電源から供給される交流電力を所定の電圧の直流電力に変換し、蓄電装置19を充電させる。
【0053】
また、蓄電装置19は、充電(蓄電)された電力をポンプ用電動機12や旋回用電動機21に供給する。また、蓄電装置19は、旋回用電動機21の発電電力(回生電力)を充電する。
【0054】
蓄電装置19は、例えば、リチウムイオンバッテリであり、相対的に高い出力電圧(例えば、数百ボルト)を有する。
【0055】
電力変換装置100は、蓄電装置19の電力を昇圧したり、インバータ18A,18Bを経由してポンプ用電動機12や旋回用電動機21からの電力を降圧し、蓄電装置19に蓄電させたりする。電力変換装置100は、ポンプ用電動機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DC(Direct Current)バス110の電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作とを切り替える。電力変換装置100の昇圧動作と降圧動作との切替制御は、例えば、DCバス110の電圧検出値、蓄電装置19の電圧検出値、及び蓄電装置19の電流検出値に基づき、コントローラ30Bにより実行されてよい。
【0056】
尚、蓄電装置19の出力電圧を昇圧してポンプ用電動機12や旋回用電動機21に印加する必要が無い場合、電力変換装置100は省略されてもよい。
【0057】
<操作系>
本実施形態に係るショベル200の操作系は、パイロットポンプ15と、操作装置26と、圧力制御弁31とを含む。
【0058】
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介してショベル200に搭載される各種油圧機器(例えば、圧力制御弁31)にパイロット圧を供給する。これにより、圧力制御弁31は、コントローラ30Aの制御下で、操作装置26の操作内容(例えば、操作量や操作方向)に応じたパイロット圧をコントロールバルブ17に供給することができる。そのため、コントローラ30A及び圧力制御弁31は、オペレータの操作装置26に対する操作内容に応じた被駆動要素(油圧アクチュエータ)の動作を実現することができる。また、圧力制御弁31は、コントローラ30Aの制御下で、遠隔操作信号で指定される遠隔操作の内容に応じたパイロット圧をコントロールバルブ17に供給することができる。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、ポンプ用電動機12により駆動される。
【0059】
操作装置26は、キャビン10の操縦席のオペレータから手の届く範囲に設けられ、オペレータがそれぞれの被駆動要素(即ち、下部走行体1の左右のクローラ、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等)の操作を行うために用いられる。換言すれば、操作装置26は、オペレータがそれぞれの被駆動要素を駆動する油圧アクチュエータ(例えば、走行油圧モータ1A,1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等)や電動アクチュエータ(旋回用電動機21等)の操作を行うために用いられる。操作装置26は、例えば、電気式であり、オペレータによる操作内容に応じた電気信号(以下、「操作信号」)を出力する。操作装置26から出力される操作信号は、コントローラ30Aに取り込まれる。これにより、コントローラ30Aを含む制御装置30は、圧力制御弁31やインバータ18Bを制御し、オペレータの操作内容や自動運転機能に対応する操作指令等に合わせて、ショベル200の被駆動要素(アクチュエータ)の動作を制御することができる。
【0060】
操作装置26は、例えば、レバー26A~26Cを含む。レバー26Aは、例えば、前後方向及び左右方向の操作に応じて、アーム5(アームシリンダ8)及び上部旋回体3(旋回動作)のそれぞれに関する操作を受け付け可能に構成されてよい。レバー26Bは、例えば、前後方向及び左右方向の操作に応じて、ブーム4(ブームシリンダ7)及びバケット6(バケットシリンダ9)のそれぞれに関する操作を受け付け可能に構成されてよい。レバー26Cは、例えば、下部走行体1(クローラ)の操作を受け付け可能に構成されてよい。
【0061】
尚、コントロールバルブ17が電磁パイロット式の制御弁(方向切換弁)で構成される場合、電気式の操作装置26の操作信号は、コントロールバルブ17に直接入力され、それぞれの油圧制御弁が操作装置26の操作内容に応じた動作を行う態様であってもよい。また、操作装置26は、操作内容に応じたパイロット圧を出力する油圧パイロット式であってもよい。この場合、操作内容に応じたパイロット圧は、コントロールバルブ17に供給される。
【0062】
圧力制御弁31は、コントローラ30Aの制御下で、パイロットポンプ15からパイロットライン25を通じて供給される作動油を用いて、所定のパイロット圧を出力する。圧力制御弁31の二次側のパイロットラインは、コントロールバルブ17に接続され、圧力制御弁31から出力されるパイロット圧は、コントロールバルブ17に供給される。
【0063】
<制御系>
本実施形態に係るショベル200の制御系は、制御装置30と、周囲情報取得装置40と、出力装置50と、入力装置52とを含む。
【0064】
制御装置30は、コントローラ30A~30Cを含む。
【0065】
コントローラ30A~30Cは、それぞれの機能が任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。例えば、コントローラ30A~30Cは、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置(主記憶装置)、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置、及び外部との入出力用のインタフェース装置等を含むコンピュータを中心に構成されてよい。
【0066】
コントローラ30Aは、コントローラ30B,30Cを含む制御装置30を構成する各種コントローラと連携し、ショベル200の駆動制御を行う。
【0067】
コントローラ30Aは、例えば、操作装置26から入力される操作信号に応じて、圧力制御弁31に制御指令を出力し、圧力制御弁31から操作装置26の操作内容に応じたパイロット圧を出力させる。これにより、コントローラ30Aは、電気式の操作装置26の操作内容に対応するショベル200の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の動作を実現させることができる。
【0068】
また、ショベル200が遠隔操作される場合、コントローラ30Aは、例えば、遠隔操作に関する制御を行ってもよい。具体的には、コントローラ30Aは、圧力制御弁31に制御指令を出力し、圧力制御弁31から遠隔操作の内容に応じたパイロット圧を出力させてよい。これにより、コントローラ30Aは、遠隔操作の内容に対応するショベル200(被駆動要素)の動作を実現させることができる。
【0069】
また、コントローラ30Aは、例えば、自動運転機能に関する制御を行ってもよい。具体的には、コントローラ30Aは、圧力制御弁31に制御指令を出力し、自動運転機能に対応する操作指令に応じたパイロット圧を圧力制御弁31からコントロールバルブ17に作用させてよい。これにより、コントローラ30Aは、自動運転機能に対応するショベル200の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の動作を実現させることができる。
【0070】
また、コントローラ30Aは、例えば、冷却ファン66の稼働及び停止に関する制御を行ってよい。
【0071】
また、コントローラ30Aは、例えば、コントローラ30B,30C等の各種コントローラとの双方向通信に基づき、ショベル200の全体(ショベル200に搭載される各種機器)の動作を統合的に制御してよい。
【0072】
コントローラ30Bは、コントローラ30Aから入力される各種情報(例えば、操作装置26の操作信号を含む制御指令等)に基づき、電気駆動系の駆動制御を行う。
【0073】
コントローラ30Bは、例えば、操作装置26の操作内容に基づき、インバータ18Bを駆動し、旋回用電動機21の運転状態(力行運転及び回生運転)の切替制御を行ってよい。また、コントローラ30Bは、例えば、ショベル200が遠隔操作される場合、遠隔操作の内容に基づき、インバータ18Bを駆動し、旋回用電動機21の運転状態(力行運転及び回生運転)の切替制御を行ってよい。また、コントローラ30Bは、例えば、ショベル200の自動運転機能が有効な場合、自動運転機能に対応する操作指令に基づき、インバータ18Bを駆動し、旋回用電動機21の運転状態(力行運転及び回生運転)の切替制御を行ってよい。
【0074】
また、コントローラ30Bは、例えば、操作装置26の操作状態に基づき、電力変換装置100を駆動し、電力変換装置100の昇圧運転と降圧運転、換言すれば、蓄電装置19の放電状態と充電状態との切替制御を行ってよい。また、コントローラ30Bは、例えば、ショベル200が遠隔操作される場合、遠隔操作の内容に基づき、電力変換装置100を駆動し、蓄電装置19の放電状態と充電状態との切替制御を行ってよい。また、コントローラ30Bは、例えば、ショベル200の自動運転機能が有効な場合、自動運転機能に対応する操作指令に基づき、電力変換装置100を駆動し、蓄電装置19の放電状態と充電状態との切替制御を行ってよい。
【0075】
コントローラ30Cは、ショベル200の周辺監視機能に関する制御を行う。
【0076】
コントローラ30Cは、例えば、周囲情報取得装置40から取り込まれる、ショベル200の周囲の三次元空間の状況に関する情報(例えば、ショベル200の周囲の物体やその位置に関する検出情報)に基づき、ショベル200の周辺の所定の物体やその位置(以下、「監視対象」)を検出する。
【0077】
また、コントローラ30Cは、例えば、ショベル200に相対的に近接する領域で監視対象を検出した場合、キャビン10の室内の出力装置50(例えば、表示装置や音出力装置等)を通じて、警報を出力してよい。
【0078】
尚、コントローラ30B,30Cの機能は、コントローラ30Aに統合されてもよい。つまり、制御装置30により実現される各種機能は、一つのコントローラにより実現されてもよいし、適宜設定される2以上の数のコントローラにより分散して実現されてもよい。
【0079】
周囲情報取得装置40は、ショベル200の周囲の三次元空間の状況に関する情報を出力する。周囲情報取得装置40は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、単眼カメラ、ステレオカメラ、デプスカメラ、LIDAR(Light Detection and Ranging)、距離画像センサ、赤外線センサ等を含んでよい。周囲情報取得装置40の出力情報は、コントローラ30Cに取り込まれる。
【0080】
出力装置50は、キャビン10内に設けられ、制御装置30(例えば、コントローラ30A)の制御下で、オペレータに向けて各種情報を出力する。出力装置50は、例えば、視覚的な方法で情報をオペレータに出力(通知)する表示装置を含む。表示装置は、例えば、キャビン10内のオペレータから視認し易い場所に設置され、コントローラ30Aの制御下で、各種情報画像を表示してよい。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイである。また、出力装置50は、例えば、オペレータに対して聴覚的な方法で情報を出力する音出力装置を含む。音出力装置は、例えば、ブザーやスピーカ等である。
【0081】
入力装置52は、キャビン10内に設けられ、オペレータからの各種入力を受け付ける。入力装置52は、例えば、オペレータの操作入力を受け付ける操作入力装置を含んでよい。操作入力装置は、例えば、ボタン、トグル、レバー、タッチパネル、タッチパッド等を含む。また、入力装置52は、例えば、オペレータからの音声入力を受け付ける音声入力装置やオペレータからのジェスチャ入力を受け付けるジェスチャ入力装置を含んでもよい。音声入力装置は、例えば、キャビン10内のオペレータの音声を取得するマイクロフォンを含む。また、ジェスチャ入力装置は、例えば、キャビン10内のオペレータのジェスチャの様子を撮像可能な室内カメラを含む。入力装置52で受け付けられるオペレータからの入力に対応する信号は、制御装置30(例えば、コントローラ30A)に取り込まれる。
【0082】
<冷却系>
本実施形態のショベル200の冷却系は、冷却回路60と、オイルクーラ70とを含む。
【0083】
冷却回路60は、例えば、上部旋回体3に設けられ、電気駆動系の機器(以下、「電気駆動機器」)を冷却する。例えば、
図3に示すように、冷却回路60による冷却対象の電気駆動機器(熱源機器の一例)には、ポンプ用電動機12、インバータユニット18、蓄電装置19、旋回駆動装置20、電力変換装置100等が含まれる。また、冷却回路60による冷却対象の電気駆動機器には、車載充電器が含まれてもよい。車載充電器は、蓄電装置19の充電の際に発熱するからである。
【0084】
図3に示すように、冷却回路60は、ラジエータ62と、ウォータポンプ64と、冷却ファン66と、冷媒流路68A,68B,68C,68C1,68C2,68D,68D1,68D2,68E,68Fとを含む。
【0085】
ラジエータ62(熱交換器の一例)は、冷却回路60内の冷媒(例えば、冷却水)を冷却する。具体的には、ラジエータ62は、周囲の空気と冷媒との間で熱交換を行わせ、冷媒を冷却する。
【0086】
ウォータポンプ64(冷媒ポンプの一例)は、冷媒流路68Fから冷媒を吸い込み、冷媒流路68Aに吐出することにより、冷却回路60内の冷媒を循環させる。
【0087】
冷却ファン66は、ラジエータ62に対する送風を行う。これにより、ラジエータ62における熱交換が促進され、ラジエータ62の冷却効率、即ち、ラジエータ62の冷却度を向上させることができる。冷却ファン66は、一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0088】
冷媒流路68Aは、ウォータポンプ64と旋回駆動装置20との間を接続し、ウォータポンプ64から吐出される冷媒を旋回駆動装置20の内部の冷媒流路に流入させる。これにより、旋回駆動装置20内の旋回用電動機21等を冷媒で冷却することができる。旋回駆動装置20の内部を通流した冷媒は、冷媒流路68Bに流出する。
【0089】
冷媒流路68Bは、旋回駆動装置20と蓄電装置19との間を接続し、旋回駆動装置20から流出する冷媒を蓄電装置19の内部の冷媒流路に流入させる。これにより、蓄電装置19を冷媒で冷却することができる。蓄電装置19の内部を通流した冷媒は、冷媒流路68Cに流出する。
【0090】
冷媒流路68C,68C1,68C2は、蓄電装置19と、インバータユニット18及び電力変換装置100との間を接続し、蓄電装置19から流出する冷媒をインバータユニット18及び電力変換装置100の内部の冷媒流路に流入させる。具体的には、蓄電装置19にその一端が接続される冷媒流路68Cは、他端で冷媒流路68C1,68C2に分岐し、冷媒流路68C,68C2は、それぞれ、インバータユニット18及び電力変換装置100に接続される。これにより、インバータユニット18に含まれるインバータ18A,18B、及び電力変換装置100を冷却することができる。インバータユニット18の内部を通流した冷媒は、冷媒流路68D1に流出する。また、電力変換装置100の内部を通流した冷媒は、冷媒流路68D2に流出する。
【0091】
冷媒流路68D,68D1,68D2は、インバータユニット18及び電力変換装置100とポンプ用電動機12との間を接続し、インバータユニット18及び電力変換装置100から流出する冷媒をポンプ用電動機12の内部の冷媒流路に流入させる。具体的には、それぞれの一端がインバータユニット18及び電力変換装置100に接続される冷媒流路68D1,68D2は、冷媒流路68Dの一端に合流し、冷媒流路68Dの他端がポンプ用電動機12に接続される。これにより、ポンプ用電動機12を冷媒で冷却することができる。ポンプ用電動機12の内部を通流した冷媒は、冷媒流路68Eに流出する。
【0092】
冷媒流路68Eは、ポンプ用電動機12とラジエータ62との間を接続し、ポンプ用電動機12から流出する冷媒をラジエータ62に供給する。これにより、電気駆動系の各種機器を冷却することで、温度が上昇した冷媒をラジエータで冷却し、再度、電気駆動系の各種機器を冷却可能な状態に戻すことができる。
【0093】
冷媒流路68Fは、ラジエータ62とウォータポンプ64との間を接続し、ラジエータ62により冷却された冷媒をウォータポンプ64に供給する。ウォータポンプ64は、ラジエータ62により冷却された冷媒を冷却回路60に循環させることができる。
【0094】
オイルクーラ70は、例えば、上部旋回体3に設けられ、油圧駆動系の作動油を冷却する。具体的には、オイルクーラ70は、例えば、コントロールバルブ17と作動油タンクTとの間の戻り油路に設けられ、周囲の空気と内部を通流する作動油との間で熱交換を行い、作動油を冷却する。オイルクーラ70は、例えば、冷却ファン66に対して、ラジエータ62と直列に配置され、冷却ファン66からの送風により冷却されてよい。また、オイルクーラ70は、ラジエータ62及び冷却ファン66とは別に(例えば、並列に)配置され、冷却ファン66とは別の冷却ファン(以下、「オイルクーラファン」)からの送風で冷却されてもよい。この場合、オイルクーラファンは、一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0095】
尚、複数の電気駆動系機器の一部又は全部は、空冷されてもよい。この場合、空冷の対象の電気駆動系機器に対して送風を行う冷却ファンが設けられてよい。また、一つの電気駆動系機器に対して、専用の冷却ファンが設けられてもよいし、複数の電気駆動系機器に対して兼用の冷却ファンが設けられてもよい。
【0096】
<低圧電源系>
図4に示すように、本実施形態に係るショベル200の低圧電源系は、低圧電源44と、低圧電源44から供給される電力で稼働する複数の電気負荷とを含む。
【0097】
低圧電源44(電源の一例)は、非常に高い電圧で稼働する電気駆動系の機器以外の複数の電気負荷に電力を供給する。低圧電源44は、DC-DCコンバータ44Aと、バッテリ44Bとを含む。
【0098】
DC-DCコンバータ44A(電力変換装置の一例)は、例えば、上部旋回体3に設けられ、蓄電装置19から出力される非常に高い電圧の直流電力を所定の電圧(例えば、約24ボルト)に降圧し出力する。DC-DCコンバータ44Aの出力電力は、複数の電気負荷に供給されたり、バッテリ44Bに充電されたりする。
【0099】
バッテリ44Bは、例えば、上部旋回体3に設けられ、相対的に低い出力電圧(例えば、24ボルト)を有する。バッテリ44Bは、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオンバッテリであり、上述の如く、複数の電気負荷に電力を出力したり、DC-DCコンバータ44Aの発電電力で充電されたりする。
【0100】
尚、低圧電源44は、DC-DCコンバータ44Aに代えて、或いは、加えて、発電機(例えば、オルタネータ)を含んでもよい。この場合、オルタネータは、例えば、ポンプ用電動機12の動力で発電してもよいし、蓄電装置19からの電力供給で稼働する他の電動機の動力で発電してもよい。
【0101】
複数の電気負荷は、それぞれ、低圧電源44から供給される相対的に低い電圧の電力で稼働する。
【0102】
複数の電気負荷には、例えば、冷却系の機器が含まれる。冷却系の機器は、ウォータポンプ64と、冷却ファン66とを含む。また、オイルクーラファンが設けられる場合、冷却系の機器は、オイルクーラファンを含む。
【0103】
また、複数の電気負荷には、例えば、油圧駆動系の機器が含まれる。油圧駆動系の機器は、コントロールバルブ17に内蔵される各種のソレノイドアクチュエータ17Aを含む。
【0104】
また、複数の電気負荷には、例えば、操作系の機器が含まれる。操作系の機器は、例えば、操作装置26と、圧力制御弁31とを含む。
【0105】
また、複数の電気負荷には、例えば、制御系の機器が含まれる。制御系の機器は、例えば、コントローラ30A~30Cと、周囲情報取得装置40とを含む。
【0106】
また、複数の電気負荷には、例えば、ユーザインタフェース系の機器が含まれる。ユーザインタフェース系の機器は、例えば、出力装置50と、入力装置52とを含む。
【0107】
また、複数の電気機器には、例えば、快適装備系の機器が含まれる。快適装備系の機器は、例えば、空調装置80を含む。また、快適装備系の機器は、例えば、シートヒータ等を含んでもよい。
【0108】
空調装置80は、キャビン10の室内の温度や湿度等を調整する。空調装置80は、例えば、冷暖兼用のヒートポンプサイクルを含むヒートポンプ式であってよい。また、空調装置80は、例えば、冷房用の冷凍サイクルと、暖房用のヒータとを含む構成であってもよい。暖房用のヒータは、例えば、PTC(Positive Temperature Coefficient)や燃焼式ヒータ等である。空調装置80は、ヒートポンプサイクルや冷凍サイクル内を通流する冷媒を圧縮するコンプレッサ82を含む。コンプレッサ82は、ポンプ用電動機12の動力で駆動される。
【0109】
シートヒータは、キャビン10の操縦席の座面部や背面部に内蔵され、操縦席側から着座するオペレータを暖める。
【0110】
また、複数の電気負荷には、例えば、通信機器が含まれてよい。
【0111】
通信機器は、例えば、ショベル200の外部装置やオペレータによってキャビン10の内部に持ち込まれる機器(例えば、スマートフォン等の携帯端末)等と通信を行う。通信機器は、例えば、基地局を末端とする移動体通信網を用いて、ショベル200の外部装置と通信を行う移動体通信モジュールを含む。また、通信機器は、例えば、WiFiやブルートゥース(登録商標)等の所定の通信規格を用いて、キャビン10の内部の機器と通信を行う近距離通信モジュールを含む。
【0112】
また、複数の電機負荷には、例えば、オーディオ機器が含まれる。オーディオ機器は、例えば、キャビン10内に設けられるラジオ受信機等を含んでよい。
【0113】
また、複数の電機負荷には、例えば、安全装備系の機器が含まれる。安全装備系の機器は、例えば、ワイパを含んでよい。
【0114】
ワイパは、キャビン10のフロントウィンドウに設けられ、フロントウィンドウの表面に付着する雨等による水滴を払拭する。
【0115】
また、複数の電気負荷には、例えば、照明機器が含まれる。照明機器は、例えば、前照灯を含んでよい。
【0116】
前照灯は、例えば、上部旋回体3の前端部に設けられ、上部旋回体3の前方を照射する。
【0117】
低圧電源44の電力供給対象の複数の電気負荷には、常時稼働し、ある程度の大きさの電流が常時必要な電気負荷もあれば、起動及び停止が可能で停止時にほとんど電流を必要としない電気負荷もある。また、低圧電源44の電力供給対象の複数の電気負荷には、稼働中に必要な電流がほとんど変化しない電気負荷もあれば、稼働中に必要な電流が相対的に大きく変化する電気負荷もある。そのため、電気負荷ごとの稼働状況に応じて、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷に必要な電流、即ち、全ての電気負荷のそれぞれから要求される電流(以下、「要求電流」)の合計(以下、「要求電流合計値」)は、ある程度の範囲で変化しうる。
【0118】
これに対して、低圧電源44の出力可能な電流の最大値(以下、「最大出力電流」)は、電力供給対象の全ての電気負荷のそれぞれの稼働状況に合わせて必要な電流(要求電流合計値)の最大値(以下、「最大要求電流合計値」)より小さくなるように設定される。低圧電源44の最大出力電流は、例えば、DC-DCコンバータ44Aの最大出力電流(定格電流)に基づき規定されてよい。具体的には、低圧電源44の最大出力電流は、電力供給対象の全ての電気負荷のそれぞれの定格電流の合計値よりも小さくなるように設定されてよい。全ての電気負荷の最大要求電流合計値以上の電流を低圧電源44が出力可能に構成されると、相対的に発生頻度が高い通常の範囲の要求電流合計値を出力する際の低圧電源44のエネルギ効率が相対的に低下する可能性があるからである(後述の
図9参照)。
【0119】
また、制御装置30は、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の要求電流合計値が相対的に大きい場合、ショベル200の被駆動要素の動作等に対する影響が相対的に小さい一部の電気負荷の動作を制限してよい。制御装置30は、例えば、低圧電源44の電力供給対象のそれぞれの電気負荷の稼働状況に関する情報に基づき、それぞれの電気負荷の要求電流を判断(推定)してよい。電気負荷の稼働状況に関する情報には、例えば、電気負荷のON/OFFの別に関する情報、電気負荷の稼働状況を決定するオペレータの操作の内容に関する情報、電気負荷の稼働状況を決定する入力装置52からの入力の内容に関する情報等が含まれる。これにより、制御装置30は、意図的に、一部の電気負荷の動作を制限し、要求電流合計値を下げることができる。そのため、制御装置30は、例えば、全ての電気負荷の要求電流合計値が低圧電源44の最大出力電流を超えてしまい、その影響で、ショベル200の油圧駆動系の機器や操作系の機器の動作に影響が出てしまうような事態を抑制することができる。
【0120】
例えば、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷には、それぞれ、動作制限に関する優先度(以下、「動作制限優先度」)が予め規定されてよい。そして、制御装置30は、要求電流合計値が相対的に大きい場合に、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷のうちの動作制限優先度が相対的に高い電気負荷の動作を制限してよい。例えば、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷のうちの油圧駆動系の機器や操作系の機器や制御系の機器の動作制限優先度は、相対的に低く設定されてよい。油圧駆動系の機器や操作系の機器や制御系の機器の動作が制限されると、ショベル200のアクチュエータの動作に影響が生じる可能性があるからである。また、通信機器についても同様であってよい。一方、冷却系の機器の動作制限優先度は、相対的に高く設定されてよい。冷却回路60に含まれる冷媒の熱容量が相対的に大きく、一時的に冷却系の機器の動作が制限されても、電気駆動系機器の温度が急上昇するような事態が生じ難いからである。また、空調装置80、シートヒータ等の快適装備系の機器、オーディオ機器の動作制限優先度は、油圧駆動系の機器等より高く、且つ、冷却系の機器よりも低く設定されてよい。ショベル200の被駆動要素の動作への影響はないものの、キャビン10内のオペレータに影響が及びうるからである。
【0121】
低圧電源44の電力供給対象の複数の電気負荷のうちの一部の電気負荷の動作を制限する方法の詳細は、後述する(
図5~8参照)。
【0122】
[低圧電源系に関する制御処理]
次に、
図5~
図8を参照して、制御装置30(コントローラ30A)による低圧電源系に関する制御処理について説明する。以下、低圧電源44の電力供給対象の冷却系の機器(ウォータポンプ64及び冷却ファン66)等は、常時稼働されていることを前提とする。
【0123】
<低圧電源系に関する制御処理の第1例>
図5は、制御装置30(コントローラ30A)の低圧電源系に関する制御処理の第1例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、所定の時間間隔ごとに実行される。以下、
図6のフローチャート、及び
図7、
図8のフローチャートについても同様であってよい。
【0124】
図5に示すように、ステップS102にて、コントローラ30Aは、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の要求電流合計値が閾値Ith1を超えたか否かを判定する。閾値Ith1は、例えば、低圧電源44の最大出力電流以下に設定される適合値である。コントローラ30Aは、要求電流合計値が閾値Ith1を超えている場合、ステップS104に進み、超えていない場合、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0125】
ステップS104にて、コントローラ30Aは、稼働中のウォータポンプ64及び冷却ファン66に制御指令を出力し、その動作を制限する。コントローラ30Aは、例えば、ウォータポンプ64及び冷却ファン66を停止させてよい。また、コントローラ30Aは、例えば、ウォータポンプ64及び冷却ファン66の少なくとも一方を、停止させる代わりに、通常の稼働時よりも回転数が低い状態で稼働させてもよい。以下、
図6のフローチャート、及び
図7、
図8のフローチャートにおけるウォータポンプ64や冷却ファン66の動作制限についても同様の方法で行われてよい。これにより、制御装置30は、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の要求電流合計値を低減させることができる。
【0126】
また、コントローラ30Aは、ウォータポンプ64及び冷却ファン66の動作制限中において、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith1に対してどの程度上回っているかに応じて、動作制限の程度を可変させてもよい。具体的には、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith1に対して上回っている量が大きくなるほど、動作制限の程度を大きくしてよい。例えば、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith1に対して上回っている量が相対的に小さい場合、ウォータポンプ64及び冷却ファン66の回転数を通常よりも低い状態で稼働させる。また、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith1に対して上回っている量が大きくなるほど、ウォータポンプ64及び冷却ファン66の回転数を小さくしてよい。そして、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith1に対して上回っている量が所定閾値を超える場合、ウォータポンプ64及び冷却ファン66を停止させてよい。また、例えば、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith1に対して上回っている量が相対的に小さい場合、複数の冷却ファン66の一部の冷却ファン66の動作を制限する。また、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith1に対して上回っている量が大きくなるほど、複数の冷却ファン66のうちの動作制限される冷却ファン66の数を増加させてよい。そして、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith1に対して上回っている量が所定閾値を超える場合、全ての冷却ファン66の動作を制限してよい。以下、
図6のフローチャート、及び
図7、
図8のフローチャートにおけるウォータポンプ64や冷却ファン66の動作制限についても同様の方法で行われてよい。
【0127】
コントローラ30Aは、ステップS104の処理が完了すると、ステップS106に進む。
【0128】
ステップS106にて、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith2(≦Ith1)以下であるか否かを判定する。コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith2以下である場合、ステップS108に進み、閾値Ith2以下でない場合、ステップS110に進む。
【0129】
ステップS108にて、コントローラ30Aは、ウォータポンプ64及び冷却ファン66に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。
【0130】
コントローラ30Aは、ステップS108の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0131】
一方、ステップS110にて、コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系機器のうちの少なくとも一つの温度が閾値TDth11を超えたか否かを判定する。閾値TDth11は、冷却回路60の冷却対象の全ての機器ごとに予め規定される適合値である。コントローラ30Aは、電気駆動系機器のそれぞれに設置される温度センサの検出信号を取り込むことにより、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系機器のそれぞれの温度を判断することができる。コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の電気駆動系機器のうちの少なくとも一つの温度が閾値TDth11を超えている場合、ステップS112に進み、全ての電気駆動系の機器の温度が閾値TDth11を超えていない場合、ステップS106に戻る。
【0132】
ステップS112にて、コントローラ30Aは、低圧電源44の電力供給対象の電気負荷のうちの冷却系の機器以外の特定の機器(以下、「緊急制限対象機器」)に制御指令を出力し、その動作を制限する。そして、コントローラ30Aは、ウォータポンプ64及び冷却ファン66に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。これにより、制御装置30は、低圧電源44の電力供給対象の電気負荷の要求電流合計値を抑制する状態を継続しつつ、電気駆動系機器の温度上昇を抑制することができる。緊急制限対象機器は、例えば、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の中で、上述の動作制限優先度が相対的に高い電気負荷であってよい。また、緊急制限対象機器は、例えば、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の中で、動作制限優先度が相対的に高く、且つ、要求電流が相対的に高い電気負荷であってもよい。動作制限による要求電流合計値の低減効果を高めることができるからである。また、緊急制限対象機器は、例えば、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の中で、動作制限によって、ショベル200のアクチュエータの動作への影響が相対的に小さいものの、キャビン10のオペレータにその影響が及びうる電気負荷であってもよい。
【0133】
コントローラ30Aは、ステップS112の処理が完了すると、ステップS114に進む。
【0134】
ステップS114にて、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith2以下であるか否かを判定する。コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith2以下である場合、要求電流合計値が相対的に低い状態になったと判断し、ステップS116に進む。一方、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith2以下でない場合、要求電流合計値が相対的に高い状態が継続していると判断し、ステップS118に進む。
【0135】
ステップS116にて、コントローラ30Aは、緊急制限対象機器に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。これにより、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の中の動作制限が全て解除された状態になる。
【0136】
コントローラ30Aは、ステップS116の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0137】
一方、ステップS118にて、コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系機器の温度が閾値TDth21(≦TDth11)以下であるか否かを判定する。コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系機器の温度が閾値TDth21以下である場合、電気駆動系機器の温度がある程度低下したと判断し、ステップS120に進む。一方、コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系機器の温度が閾値TDth21以下でない場合、電気駆動系機器の温度がある程度高い状態のままであると判断し、ステップS114に戻る。
【0138】
ステップS120にて、コントローラ30Aは、緊急制限対象機器に制御指令を出力しその動作制限を解除する。そして、コントローラ30Aは、ウォータポンプ64及び冷却ファン66に制御指令を出力し、その動作制限を再開させる。
【0139】
コントローラ30Aは、ステップS120の処理が完了すると、ステップS106に戻る。
【0140】
このように、本例では、制御装置30は、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の要求電流合計値が相対的に大きい場合に、冷却系の機器、具体的には、ウォータポンプ64及び冷却ファン66の動作を制限する。
【0141】
これにより、制御装置30は、要求電流合計値が低圧電源44の最大出力電流を超えるような状況において、ショベル200のアクチュエータの動作への影響、及びキャビン10のオペレータへの影響を抑制することができる。
【0142】
<低圧電源系に関する制御処理の第2例>
図6は、制御装置30(コントローラ30A)の低圧電源系に関する制御処理の第2例を概略的に示すフローチャートである。
【0143】
図6に示すように、ステップS202,S204は、
図5のステップS102,S104の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0144】
ステップS206は、
図5のステップS106の処理と同じである。コントローラ30Aは、判定条件が成立する場合、ステップS208に進み、判定条件が成立しない場合、ステップS210に進む。
【0145】
ステップS208は、
図5のステップS108の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0146】
一方、ステップS210にて、コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系機器のうちの少なくとも一つの温度が閾値TDth12(<TDth11)を超えたか否かを判定する。コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系機器のうちの少なくとも一つの温度が閾値TDth12を超えている場合、ステップS212に進み、閾値TDth12を超えていない場合、ステップS206に戻る。
【0147】
ステップS212にて、コントローラ30Aは、出力装置50を通じて、オペレータに対する電気負荷(緊急制限対象機器)の動作制限に関する予告の通知を行う。電気負荷の動作制限に関する予告の通知は、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷のうちのオペレータに影響が及びうる電気負荷に動作制限が行われる可能性があることを知らせる通知である。これにより、制御装置30は、オペレータに対して、緊急制限対象機器の動作制限に対する心づもりを促すことができると共に、キャビン10内で使用されている不要な電気負荷の停止を促すことができる。
【0148】
また、ステップS212にて、コントローラ30Aは、電気負荷の動作制限に関する予告通知を行う代わりに、オペレータに休憩を促す通知を行ってもよい。これにより、コントローラ30Aは、オペレータの休憩に伴い、ショベル200による作業が停止し、低圧電源44の電力供給対象の電気負荷の要求電流合計値を低減させることができる。
【0149】
コントローラ30Aは、ステップS212の処理が完了すると、ステップS214に進む。
【0150】
ステップS214~ステップS224は、
図5のステップS110~S120の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0151】
このように、本例では、制御装置30は、冷却系の機器の動作が制限され、且つ、電気駆動系の機器の温度が相対的に高くなってきている場合に、オペレータに対して、緊急制限対象機器の動作制限の予告の通知を行ったり、休憩を促す通知を行ったりする。
【0152】
これにより、制御装置30は、オペレータに対して、低圧電源44の電力供給対象の電気負荷の使用を抑制するように促すことができる。
【0153】
<低圧電源系に関する制御処理の第3例>
図7、
図8は、制御装置30(コントローラ30A)の低圧電源系に関する制御処理の第3例を概略的に示すフローチャートである。
【0154】
図7に示すように、ステップS302にて、コントローラ30Aは、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の要求電流合計値が閾値Ith11を超えたか否かを判定する。閾値Ith11は、低圧電源44の最大出力電流より小さく設定される適合値である。コントローラ30Aは、要求電流合計値が閾値Ith11を超えている場合、ステップS304に進み、閾値Ith11を超えていない場合、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0155】
ステップS304にて、コントローラ30Aは、冷却ファン66に制御指令を出力し、その動作を制限する。これにより、制御装置30は、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の要求電流合計値を低減させつつ、ウォータポンプ64による冷却回路60内の冷媒の循環を継続させることができる。
【0156】
コントローラ30Aは、ステップS304の処理が完了すると、ステップS306に進む。
【0157】
ステップS306にて、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith12を超えたか否かを判定する。閾値Ith12は、閾値Ith11より大きく、且つ、低圧電源44の最大出力電流以下に設定される適合値である。コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith12を超えている場合、ステップS308に進み、閾値Ith12を超えていない場合、ステップS316に進む。
【0158】
ステップS308にて、コントローラ30Aは、ウォータポンプ64に制御指令を出力し、その動作を制限する。これにより、制御装置30は、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の要求電流合計値を更に低減させることができる。
【0159】
コントローラ30Aは、ステップS308の処理が完了すると、ステップS310に進む。
【0160】
図8に示すように、ステップS310にて、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith22以下であるか否かを判定する。閾値Ith22は、閾値Ith12以下に設定される適合値である。コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith22以下である場合、ステップS312に進み、閾値Ith22以下でない場合、ステップS334に進む。
【0161】
ステップS312にて、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith21以下であるか否かを判定する。閾値Ith21は、閾値Ith22より小さく、且つ、閾値Ith11以下に設定される適合値である。コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith21以下である場合、ステップS314に進み、閾値Ith21以下でない場合、ステップS332に進む。
【0162】
ステップS314にて、コントローラ30Aは、ウォータポンプ64及び冷却ファン66に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。
【0163】
コントローラ30Aは、ステップS314の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0164】
一方、
図7に示すように、ステップS316にて、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith21以下であるか否かを判定する。コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith21以下である場合、ステップS318に進み、閾値Ith21以下でない場合、ステップS320に進む。
【0165】
ステップS318にて、コントローラ30Aは、冷却ファン66に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。
【0166】
コントローラ30Aは、ステップS318の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0167】
一方、ステップS320にて、コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系の機器の少なくとも一つの温度が閾値TDth11を超えているか否かを判定する。コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系機器の少なくとも一つの温度が閾値TDth11を超えている場合、ステップS322に進み、閾値TDth11を超えていない場合、ステップS306に戻る。
【0168】
ステップS322にて、コントローラ30Aは、緊急制限対象機器に制御指令を出力し、その動作を制限する。そして、コントローラ30Aは、冷却ファン66に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。これにより、制御装置30は、低圧電源44の電力供給対象の電気負荷の要求電流合計値を抑制する状態を継続しつつ、電気駆動系機器の温度上昇を抑制することができる。
【0169】
尚、上述の第2例(
図6)の場合と同様、オペレータに対して、緊急制限対象機器の動作制限の予告の通知が行われたり、休憩を促す通知が行われたりしてもよい。この場合、ステップS316とステップS320との間に、
図6のステップS210,S212と同様の処理が追加されてよい。
【0170】
コントローラ30Aは、ステップS322の処理が完了すると、ステップS324に進む。
【0171】
ステップS324にて、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith21以下であるか否かを判定する。コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith21以下である場合、ステップS326に進み、閾値Ith21以下でない場合、ステップS328に進む。
【0172】
ステップS326にて、コントローラ30Aは、緊急制限対象機器に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。これにより、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の中の動作制限が全て解除された状態になる。
【0173】
コントローラ30Aは、ステップS326の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0174】
一方、ステップS328にて、コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系の機器の温度が閾値TDth21以下であるか否かを判定する。コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系の機器の温度が閾値TDth21以下である場合、ステップS330に進み、閾値TDth21以下でない場合、ステップS324に戻る。
【0175】
ステップS330にて、コントローラ30Aは、緊急制限対象機器に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。そして、コントローラ30Aは、冷却ファン66に制御指令を出力し、その動作制限を再開する。
【0176】
コントローラ30Aは、ステップS330の処理が完了すると、ステップS306に戻る。
【0177】
一方、
図8に示すように、ステップS332にて、コントローラ30Aは、ウォータポンプ64に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。これにより、要求電流合計値のある程度の低下に応じて、冷却系の機器のうちの冷却ファン66だけが動作制限される状態に移行する。
【0178】
コントローラ30Aは、ステップS332の処理が完了すると、ステップS306に戻る。
【0179】
一方、ステップS334にて、コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系の機器の少なくとも一つの温度が閾値TDth11を超えているか否かを判定する。コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系機器の少なくとも一つの温度が閾値TDth11を超えている場合、ステップS336に進み、閾値TDth11を超えていない場合、ステップS310に戻る。
【0180】
ステップS336にて、コントローラ30Aは、緊急制限対象機器に制御指令を出力し、その動作を制限する。そして、コントローラ30Aは、ウォータポンプ64及び冷却ファン66に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。これにより、制御装置30は、低圧電源44の電力供給対象の電気負荷の要求電流合計値を抑制する状態を継続しつつ、電気駆動系機器の温度上昇を抑制することができる。
【0181】
尚、上述の第2例(
図6)の場合と同様、オペレータに対して、緊急制限対象機器の動作制限の予告の通知が行われたり、休憩を促す通知が行われたりしてもよい。この場合、ステップS310とステップS334との間に、
図6のステップS210,S212と同様の処理が追加されてよい。
【0182】
コントローラ30Aは、ステップS336の処理が完了すると、ステップS338に進む。
【0183】
ステップS338にて、コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith21以下であるか否かを判定する。コントローラ30Aは、動作制限がないと仮定したときの要求電流合計値が閾値Ith21以下である場合、ステップS340に進み、閾値Ith21以下でない場合、ステップS342に進む。
【0184】
ステップS340にて、コントローラ30Aは、緊急制限対象機器に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。これにより、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の中の動作制限が全て解除された状態になる。
【0185】
コントローラ30Aは、ステップS340の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0186】
一方、ステップS342にて、コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系の機器の温度が閾値TDth21以下であるか否かを判定する。コントローラ30Aは、冷却回路60の冷却対象の全ての電気駆動系の機器の温度が閾値TDth21以下である場合、ステップS344に進み、閾値TDth21以下でない場合、ステップS338に戻る。
【0187】
ステップS344にて、コントローラ30Aは、緊急制限対象機器に制御指令を出力し、その動作制限を解除する。そして、コントローラ30Aは、ウォータポンプ64及び冷却ファン66に制御指令を出力し、その動作制限を再開する。
【0188】
コントローラ30Aは、ステップS344の処理が完了すると、ステップS310に戻る。
【0189】
このように、本例では、制御装置30は、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の要求電流合計値が相対的に大きい場合に、要求電流合計値が大きくなるにつれて、動作を制限する冷却系の機器の数を段階的に増やしていく。
【0190】
これにより、制御装置30は、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の要求電流合計値を低減させつつ、冷却系の機器の動作制限の範囲を限定させ、冷却回路60の冷却対象の電気駆動系機器の温度への影響を抑制することができる。
【0191】
尚、冷却ファン66が複数設けられる場合、制御装置30は、本例と同様の方法で、複数の冷却ファン66のうちの動作を制限する冷却ファンの数を段階的に増やしてもよい。また、冷却ファン66とは別に、オイルクーラファンが設けられる場合、制御装置30は、オイルクーラファンを含めて、本例と同様の方法で、動作を制限する冷却系の機器の数を段階的に増やしてもよい。また、コントローラ30Aは、冷却系の機器以外の電気負荷も含め、本例と同様の方法で、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷のうちの2以上の電気負荷のうちの動作を制限する電気負荷の数を段階的に増やしてもよい。
【0192】
また、本例では、制御装置30は、低圧電源44の電力供給対象の全ての電気負荷の要求電流合計値が相対的に大きい場合に、冷却系の機器のうちの冷却ファン66を優先的に抑制する。
【0193】
これにより、制御装置30は、冷却系の機器を制限する場合に、要求電流合計値の大きさによっては、ウォータポンプ64の動作を継続させることができる。そのため、制御装置30は、冷却系の機器の動作制限が必要な状況であっても、電気駆動系機器の冷却度合い(冷却効率)の低下を抑制することができる。
【0194】
尚、冷却ファン66とは別に、オイルクーラファンが設けられる場合、制御装置30は、本例の場合と同様の方法で、ウォータポンプ64よりも優先的にオイルクーラファンの動作を制限してよい。油圧駆動系の作動油は、メインポンプ14により循環されており、オイルクーラファンの動作が制限されても、オイルクーラ70での熱交換による作動油の冷却をある程度促進させることができるからである。
【0195】
[作用]
次に、
図9を参照して、本実施形態に係るショベル200の作用について説明する。
【0196】
本実施形態では、ショベル200は、低圧電源44と、低圧電源44から供給される電力で稼働する複数の電気負荷と、を備える。そして、低圧電源44の出力可能な電流の最大値(最大出力電流)は、複数の電気負荷の稼働に必要な電流(要求電流の合計)の最大値よりも小さい。具体的には、低圧電源44の最大出力電流は、複数の電気負荷のそれぞれの定格電流の合計値よりも小さくなるように設定される。
【0197】
例えば、
図9は、低圧電源44の電力供給対象の複数の電気負荷の要求電流の合計(要求電流合計値)と発生頻度との関係の具体例を示す図である。
【0198】
図9に示すように、ショベル200において、要求電流合計値が非常に大きい状態(図中の"動作制限範囲"の状態)が発生する頻度は、非常に低い場合が多い。そのため、発生頻度が相対的に低い状況に合わせて、低圧電源44の最大出力電流を設定すると、発生頻度が相対的に高い要求電流合計値の範囲での低圧電源44(具体的には、DC-DCコンバータ44A)のエネルギ効率が相対的に低下する可能性がある。よって、ショベル200の稼働中の全体で見たときの低圧電源44のエネルギ効率が大きく低下してしまう可能性がある。特に、DC-DCコンバータ44Aは、蓄電装置19の電力を用いて、複数の電気負荷に電力を供給するため、エネルギ効率の低下に伴い、蓄電装置19の蓄電量の減少が早まり、ショベル200の稼働時間が大きく低下する可能性がある。また、例えば、エンジンが搭載されるショベルの場合のように、エンジンの動力でメインポンプ14の駆動や発電を行うことができないため、低圧電源44のエネルギ効率の低下がショベル200の稼働時間に大きく影響する可能性がある。
【0199】
これに対して、本実施形態では、低圧電源44の最大出力電流を複数の電気負荷の稼働に必要な電流(要求電流の合計)の最大値よりもある程度小さく設定することができる。そのため、ショベル200は、発生頻度が相対的に高い要求電流合計値の範囲での低圧電源44(具体的には、DC-DCコンバータ44A)のエネルギ効率の低下を抑制することができる。特に、本実施形態に係るショベル200では、蓄電装置19の電力を用いて、被駆動要素を駆動するアクチュエータを稼働させるため、DC-DCコンバータ44Aのエネルギ効率の低下を抑制することで、ショベル200の稼働時間の低下を抑制することができる。
【0200】
また、本実施形態では、制御装置30は、複数の電気負荷に必要な電流(要求電流合計値)が相対的に大きい場合、複数の電気負荷のうちの一部の電気負荷の動作を制限する。
【0201】
これにより、ショベル200は、例えば、要求電流合計値が低圧電源44の最大出力電流を超えそうな状況で、要求電流合計値が低圧電源44の最大出力電流以下になるように、ショベル200の稼働に影響が少ない特定の電気負荷の動作を制限することができる。そのため、ショベル200は、低圧電源44のエネルギ効率の低下を抑制しつつ、低圧電源44からの電力で稼働する複数の電気負荷の稼働状況をより適切に調整することができる。
【0202】
また、本実施形態では、複数の電気負荷には、それぞれ、動作制限に関する優先度が予め規定されてよい。そして、制御装置30は、複数の電気負荷に必要な電流が相対的に大きい場合、複数の電気負荷のうちの優先度が相対的に高い一部の電気負荷の動作を制限
してよい。
【0203】
これにより、制御装置30は、例えば、要求電流合計値が低圧電源44の最大出力電流を超えそうな状況で、具体的に、予め規定される動作制限の優先度が高い特定の電気負荷の動作を制限することができる。
【0204】
また、本実施形態では、複数の電気負荷に必要な電流が相対的に大きい場合に動作が制限される一部の電気負荷には、電気駆動系機器を冷却する冷却系の機器が含まれてよい。
【0205】
これにより、制御装置30は、例えば、要求電流合計値が低圧電源44の最大出力電流を超えそうな状況で、ショベル200の稼働に影響が少ない冷却系の機器の動作を制限することができる。例えば、冷却回路60には、非常に大きな体積、即ち、大きな熱容量を持つ冷媒が存在し、冷却系の機器が一時的に動作制限されても、電気駆動系機器の温度が急に上昇してしまうことがないからである。
【0206】
また、本実施形態では、複数の電気負荷に必要な電流が相対的に大きい場合に動作が制限される冷却系の機器は、冷却ファン66と、ウォータポンプ64とを含んでよい。そして、制御装置30は、複数の電気負荷に必要な電流が相対的に大きい場合、ウォータポンプ64及び冷却ファン66のうちの冷却ファン66の動作を優先的に制限してよい。
【0207】
これにより、ショベル200は、冷却系の機器の動作制限が必要な状況であっても、電気駆動機器の冷却度合いの低下を抑制することができる。冷却ファン66の動作が制限され、ラジエータ62への送風が制限される場合でも、冷媒の循環が継続されていれば、冷却効率は低下するものの、ラジエータ62での冷媒と外気との間の熱交換による電気駆動系機器の冷却がある程度促進されるからである。
【0208】
また、制御装置30は、冷却系の機器の動作を制限している状態で、電気駆動系機器の温度が相対的に高くなった場合に、出力装置50を通じて、オペレータに複数の電気負荷の少なくとも一部の使用の制限を促してよい。
【0209】
これにより、ショベル200は、冷却系の機器の動作の制限に伴って電気駆動系機器の温度がある程度上昇している状況で、オペレータに自発的な電気負荷の使用制限を行わせることができる。そのため、ショベル200は、例えば、電気駆動系機器の温度上昇を抑制するために、冷却系の機器の動作制限を解除し、代わりに、オペレータに影響が及ぶ電気負荷の動作を強制的に制限し、オペレータに不快感を与えるような事態の発生を抑制することができる。
【0210】
[変形・変更]
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0211】
例えば、上述した実施形態では、エンジン非搭載のショベル200に搭載される低圧電源44の最大出力電流の設定方法、及び低圧電源系に関する制御方法について説明したが、同様の方法は、エンジンが搭載されるショベルの低圧電源系に適用されてもよい。
【0212】
また、上述した実施形態及び変形・変更の例では、低圧電源の最大出力電流の設定方法、及び低圧電源系に関する制御方法について説明したが、同様の方法は、高圧電源(蓄電装置19及び電力変換装置100)に関して適用されてもよい。
【0213】
また、上述した実施形態及び変形・変更の例では、ショベルに搭載される低圧電源の最大出力電流の設定方法、及び低圧電源系に関する制御方法について説明したが、同様の方法は、他の作業機械の低圧電源系に適用されてもよい。他の作業機械は、例えば、産業用車両、フォークリフト、クレーン、ブルドーザ等を含む。
【符号の説明】
【0214】
12 ポンプ用電動機(電動アクチューエータ)
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
17 コントロールバルブ
17A ソレノイドアクチュエータ
18 インバータユニット
18A インバータ
18B インバータ
19 蓄電装置
21 旋回用電動機(電動アクチュエータ)
26 操作装置(電気負荷)
30 制御装置
30A~30C コントローラ(電気負荷)
31 圧力制御弁(電気負荷)
44 低圧電源(電源)
44A DC-DCコンバータ(電力変換装置)
44B バッテリ
50 出力装置(電気負荷)
52 入力装置(電気負荷)
60 冷却回路
62 ラジエータ
64 ウォータポンプ(電気負荷、冷却系の機器)
66 冷却ファン(電気負荷、冷却系の機器)
70 オイルクーラ
80 空調装置(電気負荷)