(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】窓枠体
(51)【国際特許分類】
E06B 1/32 20060101AFI20240229BHJP
E06B 1/18 20060101ALI20240229BHJP
E06B 1/70 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
E06B1/32
E06B1/18 M
E06B1/70 A
E06B1/18 D
(21)【出願番号】P 2020046093
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】福井 直人
(72)【発明者】
【氏名】カターユット・プーブーンサーム
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-127903(JP,A)
【文献】実開昭59-179982(JP,U)
【文献】特開2017-179778(JP,A)
【文献】特開2010-150874(JP,A)
【文献】特開平11-229715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠および左右の縦枠を備えて構成されるとともに、建築物の開口縁部に配置される窓枠体であって、
前記下枠は、アルミ部材を有して構成される第1部材と、前記下枠の延びる方向に沿って延びるとともに前記第1部材から上方に向けて立ち上がる屋内側と屋外側の一対の立ち上がり壁と、少なくとも一部が前記一対の立ち上がり壁の間に配置される第2部材と、を有して構成され、
前記第1部材は、液滴を前記建築物の屋外側に向けて排水可能に傾斜する排水面部を有し、
前記第2部材は、樹脂で構成さ
れ、
前記第1部材に保持されて固定される被保持部と、
前記被保持部に形成された係合部に係止され、前記被保持部との間に空間を形成して配置される樹脂カバーと、を有する、窓枠体。
る、窓枠体。
【請求項2】
前記第1部材は、樹脂で構成されるとともに前記アルミ部材を屋内側と屋外側に分断して連結するブリッジ部を有する、請求項1に記載の窓枠体。
【請求項3】
前記ブリッジ部は、前記建築物の駆体よりも屋外側に配置される、請求項2に記載の窓枠体。
【請求項4】
前記下枠は、障子がスライド可能な窓レールを有し、
前記第2部材は、屋外側の前記窓レール及び屋内側の前記窓レールを支持する一対の支持部を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の窓枠体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窓枠体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建築物の窓枠には、強度、断熱、防露性能や意匠等の自由度などの理由から、アルミ製のサッシやアルミ-樹脂複合サッシが使用されている(例えば、特許文献1を参照)。寒冷地においては、建築物の窓枠には樹脂製のサッシが広く使用されている。樹脂製のサッシは高い断熱性能や防露性能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂サッシはアルミ製のサッシと比較して部材の収縮が大きいため、漏水を防ぐために一部を溶着して構成される必要がある。そのため、アルミサッシやアルミ-樹脂複合サッシと比較して、樹脂サッシはサイズや品種の制限が多い。ただし、アルミ製のサッシやアルミ-樹脂複合サッシは樹脂サッシと比較して断熱性能や防露性能が劣るため、寒冷地においては使用されにくい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上枠、下枠および左右の縦枠を備えて構成されるとともに、建築物の開口縁部に配置される窓枠体であって、前記下枠は、アルミ部材を有して構成される第1部材と、前記下枠の延びる方向に沿って延びるとともに前記第1部材から上方に向けて立ち上がる屋内側と屋外側の一対の立ち上がり壁と、少なくとも一部が前記一対の立ち上がり壁の間に配置される第2部材と、を有し、前記第1部材は、液滴を前記建築物の屋外側に向けて排水可能に傾斜する排水面部を有し、前記第2部材は、樹脂で構成される、窓枠体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】本開示の第1実施形態の窓枠体の垂直断面図である。
【
図1B】本開示の第1実施形態の窓枠体の水平断面図である。
【
図2】本開示の樹脂製の第2部材を保持した第1部材を示す図である。
【
図3A】本開示の外障子と窓枠体の断面の温度分布を表す図である。
【
図3B】本開示の内障子と窓枠体の断面の温度分布を表す図である。
【
図4A】第1部材にアルミ製の第2部材を保持した窓枠体の垂直断面図である。
【
図4B】第1部材にアルミ製の第2部材を保持した窓枠体の水平断面図である。
【
図5】アルミ製の第2部材を保持した第1部材を示す図である。
【
図6A】本開示の窓枠体のタッピングホール位置を示す図である。
【
図6B】従来のアルミ-樹脂複合窓枠体のタッピングホール位置を示す図である。
【
図7A】本開示の第2実施形態の窓枠体の垂直断面図である。
【
図7B】本開示の第2実施形態の窓枠体の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0008】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態に係る窓枠体100は、建築物9の開口縁部90に配置されるとともに、枠組みされた下枠1と、上枠2と、左右の縦枠3と、を有して構成される。窓枠体100は建築物9の開口縁部90において、建築物9の駆体91に取り付けられ、建築物9の開口部を構成する。
【0009】
図1Aおよび
図1Bに示すように、窓枠体100は引き違い障子である一対の障子4を枠内に保持する。一対の障子4は窓枠体100に開閉可能に取り付けられた面材であり、室外側の外障子4Aと室内側の内障子4Bとから構成される。各障子は、それぞれ下框と、上框と、一対の縦框と、これらの框を枠組みした内側にはめ込まれるガラス板41を有して構成される。一対の障子4を水平方向にスライドさせることで、窓を開閉可能である。窓枠体100は、引き違い窓以外の窓や戸に使用されてもよい。
【0010】
下枠1は、窓レール5と、窓レール5を支持する樹脂製の第2部材6と、第2部材6を保持する第1部材7と、を有して構成される。窓レール5は、建築物9の屋外側に配置される外障子4A用の外レール5Aと、建築物9の屋内側に配置される内障子4B用の内レール5Bの一対のレールを備えている。上枠2は、外レール5Aに対向して配置される外レール21Aと、内レール5Bに対向して配置される内レール21Bと、を備える窓レール21を有する。障子4は、窓レール5および窓レール21に沿ってスライドする。
【0011】
第2部材6は、窓レール5を支持する一対の支持部61と、第1部材7に保持されて固定される被保持部62と、一対の支持部61の間に配置される樹脂カバー63を有する。被保持部62は、第1部材7および樹脂カバー63と係合する係合部62A~62Dを有し、係合部62A~62Dにて第1部材7および樹脂カバー63と係合して配置される。
【0012】
第2部材6は、樹脂で構成される。アルミと比較して熱伝導率の低い樹脂を下枠1に使用することで、窓枠体100の断熱性能が向上し、建築物9の屋内温度を好適に保つことができる。
【0013】
支持部61および被保持部62は、内部に中空構造を有して構成される。これにより、樹脂中に空気層を有するため、窓枠体100の断熱性がさらに向上する。中空構造は、中空部分が複数存在するように中空部に仕切りを有して構成されてもよい。中空部分に骨組みとなる仕切り部分を有することで、第2部材6の強度が向上する。
【0014】
図2に示すように被保持部62は、第1部材7に向けて突出する突出部62F~62Iを有し、突出部62F~62Iと後述の係合部62A~62Dとで第1部材7と接触する。第1部材7のアルミ部分との接触面積を小さくすることで、第1部材7との間での伝熱量が小さくなる。
【0015】
樹脂カバー63は、一対の支持部61の間を覆うカバー部63Aと、被保持部62に向けて突出する突出部63B~63Dを有する。樹脂カバー63は突出部63B~63Dで被保持部62と接触し、カバー部63Aと被保持部62との間に空間を構成する。これにより、さらに断熱性能が向上する。
【0016】
第1部材7は、アルミ部材を有して構成され、例えば液滴を建築物9の屋外側に向けて排水可能に傾斜する排水面部71と、下枠の延びる方向に沿って延びるとともに排水面部71から上方に向けて立ち上がる一対の立ち上がり壁72を有する。排水面部71は、液滴を屋外側へ排水可能である。屋外側の立ち上がり壁72Aの上端部分は、網戸のレールとして使用されてもよい。
【0017】
第1部材7は、屋外側の立ち上がり壁72Aと、排水面部71と、屋内側の立ち上がり壁72Bと、に三方を囲まれた部分に、第2部材6と係合する係合部73A~73Cを有し、係合部73A~73Cにおいて第2部材6の係合部62A~62Cと係合する。さらに両者は、固定部65および76において、ビス等の留具8によって固定されてもよい。すなわち、第2部材6は、少なくとも一部が屋外側の立ち上がり壁72Aと屋外側の立ち上がり壁72Bの間に保持される。
【0018】
第1部材7はさらに、樹脂で構成されるとともに、前記アルミ部材を屋内側と屋外側に分断して連結するブリッジ部74を有する。すなわち、排水面部71は、アルミで構成される屋外側部7Aおよび屋内側部7Bと、ブリッジ部74と、を有して構成される。これにより、屋内外の伝熱を樹脂製のブリッジ部74によって遮断でき、窓枠体100の断熱性能が向上する。
【0019】
ブリッジ部74は
図2に示すように、屋外側部7Aと、屋内側部7Bとを、それぞれ係合して連結する。連結は係合に限定されず、屋内外の断熱性を確保できるものであれば接着などの他の方法によって行われてもよい。
【0020】
排水面部71は、上面に建築物9の屋外側に向けて傾斜する部分を有し、液滴を屋外へ排水可能に構成される。排水面部71の上面の傾斜部分は、液滴を屋外へ排水可能であれば途中に水平部分等を有していてもよい。屋外側の立ち上がり壁72は、排水面部71付近に図示しない空孔を有し、空孔を介して露等の液滴を排水可能である。
【0021】
したがって、樹脂製の第2部材6およびアルミ製の排水面部71を有するアルミ-樹脂複合の窓枠体100は、優れた断熱・防露性能を有し、漏水リスクが小さい。また、溶着構造を有しないため、設計の自由度が高い。窓枠体100は高い断熱・防露性能を有するため、寒冷地においても使用でき、寒冷地での窓枠体の設計の自由度が向上する。
【0022】
図3Aおよび
図3Bは、屋内温度を0℃、屋外温度を20℃とした場合の、下枠1と外障子4Aおよび下枠1と内障子4Bの垂直断面における温度分布のシミュレーションを表す図である。
図3Aおよび
図3Bに示すように、樹脂で構成される第2部材6を有する下枠1は屋内側の部分において屋外側からの冷熱の伝熱が少なく、高い断熱性能を示す。
【0023】
第1部材7は、
図1等に示すように縦枠3との組付け用のタッピングホール75を有する。すなわち、下枠1と縦枠3は、タッピングホール75を介してビス等の留具8によって組付けられる。
【0024】
以上、本実施形態の窓枠体100について説明した。窓枠体100によれば、以下の効果を奏する。
【0025】
本実施形態の窓枠体100は、上枠2、下枠1および左右の縦枠3を備えて構成されるとともに、建築物9の開口縁部90に配置される窓枠体100であって、下枠1は、アルミ部材を有して構成される第1部材7と、下枠1の延びる方向に沿って延びるとともに第1部材7から上方に向けて立ち上がる屋内側と屋外側の一対の立ち上がり壁72と、少なくとも一部が一対の立ち上がり壁72の間に配置される第2部材6と、を有し、第1部材7は、アルミ部材を有して構成されるとともに、液滴を建築物9の屋外側に向けて排水可能に傾斜する排水面部71を有し、第2部材6は、樹脂で構成される。これにより、アルミ-樹脂複合窓枠体において高い断熱・防露性能が向上するため、寒冷地においてアルミ-樹脂複合窓枠体が使用可能となり、窓枠体の設計の自由度が向上する。
【0026】
窓枠体100において、第1部材7は、樹脂で構成されるとともに前記アルミ部材を屋内側と屋外側に分断して連結するブリッジ部74を有する。これにより、屋内外の伝熱を樹脂製のブリッジ部74によって遮断し、窓枠体100の断熱性能が向上する。
【0027】
本実施形態に開示する第1部材7は、断熱・防露性能を向上させるために樹脂製の第2部材6を保持する形態のみならず、以下に示すような他の形態でも使用されることができる。
【0028】
例えば下枠に断熱・防露性能よりも高い強度を必要とする窓枠体200には、
図4Aおよび
図4Bや
図5に示すように、樹脂製の第2部材6に代えて、アルミで構成される第2部材106を第1部材7の上に保持して下枠を構成することも可能である。窓枠体200は、第2部材106以外は、窓枠体100とほぼ同一の構成を有する。
【0029】
第1部材7は、屋外側の立ち上がり壁72Aと、排水面部71と、屋内側の立ち上がり壁72Bと、に三方を囲まれた部分に、第2部材106と係合する係合部73A~73Cを有し、係合部73A,73Bおよび73Cにおいて第2部材106および樹脂カバー164の係合部162A,162B,164Cと係合する。さらに両者は、固定部165および76において、ビス等の留具8によって固定されてもよい。すなわち、第2部材106は、少なくとも一部が屋外側の立ち上がり壁72Aと屋外側の立ち上がり壁72Bの間に保持される。第2部材106は他にも、係合部162D,162E,162Cで、樹脂カバー163,164の係合部163B,163D,164Bとそれぞれ係合する。
【0030】
下枠1と下枠101に示すように、下枠を第1部材7と第2部材を有する構成とすることで、窓枠体の用途に応じて第2部材の構成を変更し、断熱・防露性能または強度を選択的に向上させることができる。
【0031】
さらに、
図6Aは本実施形態の下枠1を、
図6Bは従来のアルミ-樹脂複合窓枠体300の下枠201を表す。下枠201は、アルミで構成される屋外側部207Aおよび屋内側部207Bと、樹脂部材206と、窓レール205と、樹脂で構成されるブリッジ部274と、タッピングホール275を有して構成される。ブリッジ部274は、屋外側部207Aおよび屋内側部207Bを連結する。下枠201は、上面に係合部273A~Cを有し、図示しない樹脂カバーを係合して配置することができる。
図6Aおよび6B中でd1,d2は水平距離を、h1,h2は鉛直高さを表し、下枠1と下枠201との間で3つのタッピングホールの相対位置は同一である。すなわち、下枠を縦枠3に組み付けた状態において、縦枠3に対してタッピングホールの位置は同一に規格化されている。
【0032】
したがって、同一の縦枠3に対していずれの下枠をも使用することができる。下枠のみを取り換えることで実施形態の窓枠体100も他の窓枠体も製造できるため、窓枠体100と、下枠1とタッピングホールの位置を共通化した下枠を使用する他の窓枠体とをいずれも製造する際には、加工を共通化でき設備コストを削減することができる。
【0033】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態について説明する。本開示の第2実施形態に係る窓枠体400は、第1実施形態に係る窓枠体100と比較して、ブリッジ部の位置が異なる。窓枠体400は、窓枠体100との間で縦枠3に対するタッピングホールの位置が同一に規格化されているため、第1部材7のみを第1部材307に取り換えることで使用することができる。
【0034】
図7Aおよび
図7Bに示す窓枠体400において、ブリッジ部374は、建築物9の駆体91よりも屋外側に配置される。これにより、屋外の気温の影響を大きく受ける第1部材の屋外側部7Aは建築物9内に侵入しないので、建築物9の屋内外の間の遮熱性が向上し、
図1に示す窓枠体100よりも断熱性能が向上する。
【0035】
以上、本実施形態の窓枠体400について説明した。窓枠体400によれば、屋外の気温の影響を大きく受ける排水面部371の屋外側のアルミ部材307Aは建築物9内に侵入しないので、断熱性能がより向上する。
【0036】
本開示は上記の第1、第2実施形態に限定されるものではなく、これを適宜に改良・変更したものについても本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1,101,201,301…下枠、2…上枠、21,21A,21B…窓レール、3…縦枠、4,4A,4B…障子、5,5A,5B,105A,105B,205A,205B…窓レール、6,106,206…第2部材、61…支持部、62,162…被保持部、62A~62E,162A~162E…係合部、62F~62I,162F~162H…突出部、63,163…樹脂カバー、63A,163A…カバー部、63B~63D,163C…突出部、163B,163D…係合部、64,164…樹脂カバー、64A,164A…カバー部、64B,64C…突出部、164B,164C…係合部、65…固定部、7,7A,7B,207,207A,207B,307,307A,307B…第1部材、71,371…排水面部、72,72A,72B,372,372A,372B…立ち上がり壁、73A~73C、273A~273C…係合部、74,274,374…ブリッジ部、75,75A~75C,275,275A~275C,375,375A~375C…タッピングホール、76…固定部、8…留具、9…建築物、90…開口縁部、91…駆体、100,200,300,400…窓枠体