(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】発泡性スチレン系樹脂小粒子、予備発泡スチレン系樹脂小粒子、およびスチレン系樹脂発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/224 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
C08J9/224 CET
(21)【出願番号】P 2020052081
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-08-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】道畑 直起
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-220441(JP,A)
【文献】国際公開第2004/014992(WO,A1)
【文献】特開平06-128405(JP,A)
【文献】特開2006-152029(JP,A)
【文献】特開2005-015715(JP,A)
【文献】特開2013-072040(JP,A)
【文献】特開2019-073653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂小粒子であって、
平均粒子径が0.20mm~0.75mmであり、
ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂小粒子本体が、
マグネシウムとカルシウムの2種、または、マグネシウムとカルシウムと亜鉛の3種によって被覆されてなり、
該発泡性スチレン系樹脂小粒子本体の量とマグネシウムの量Aとカルシウムの量Bと亜鉛の量Cの合計を100質量%とした場合に、
該発泡性スチレン系樹脂小粒子本体がマグネシウムとカルシウムの2種によって被覆されてなる場合は、
Aが
0.020質量%~
0.500質量%、
Bが
0.002質量%~
0.098質量%
であり、
該発泡性スチレン系樹脂小粒子本体がマグネシウムとカルシウムと亜鉛の3種によって被覆されてなる場合は、
Aが0.058質量%~0.063質量%、
Bが0.015質量%~0.020質量%、
Cが0.021質量%~0.400質量%である、
発泡性スチレン系樹脂小粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂小粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂小粒子であって、該予備発泡の嵩発泡倍率が2倍以上70倍未満である、予備発泡スチレン系樹脂小粒子。
【請求項3】
請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂小粒子から成形される、スチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項4】
請求項2に記載の予備発泡スチレン系樹脂小粒子から成形される、スチレン系樹脂発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性スチレン系樹脂小粒子、予備発泡スチレン系樹脂小粒子、およびスチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
小粒の発泡性小粒子は、クッションの充填材、コンクリートの骨材、カップ容器の成形品などとして多数供給されている。
【0003】
例えば、クッション用途に関し、従来、充填材として綿、ポリウレタンフォーム、や発泡樹脂粒子などを、布や皮などの袋体に充填したクッション体が知られている。充填材に綿を使用したクッション体では、綿がスポンジのように圧縮され、その容積が縮小するように変形することでクッション性を発現する。充填材に発泡樹脂粒子を使用したクッション体では、発泡樹脂粒子が単に圧縮され、その容積が縮小するように変形することでクッション性を発現し、かつ、発泡樹脂粒子が袋体内で流動(移動)することでクッション性を発現する。
【0004】
発泡性小粒子においては、上記いずれの用途においても、発泡性小粒子の流動性が非常に重要である。クッション用としては触感や手触り、コンクリート用骨材ではコンクリート内での均一性、カップ容器では成形品の融着や伸びなどに影響する。
【0005】
しかし、発泡性小粒子は、平均粒子径が小さく、表面積が大きいが故に、静電気が多く発生し、この静電気が流動性に大きな影響を与える。
【0006】
従来技術として、発泡倍率20~50倍で、平均粒子径±10%の変動幅に入る割合が80%以上であり、かつ、Z平均分子量が50万以上(好ましくは50万~95万未満)であるポリスチレン系樹脂粒子からなり、ヘタリ率が9.5%未満になる、ビーズクッション材用ポリスチレン系発泡粒子が提案されている。そこでは、帯電防止性能の高い帯電防止剤として、N-ヒドロキシエチル-N-2-ヒドロキシアルキルアミンを0.05重量部~0.35重量部、表面に付着させる方法が採用されている(特許文献1)。
【0007】
別の従来技術として、2種のヒドロキシルアミンを組み合わせることにより効率的に帯電防止効果を得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子)、熱可塑性樹脂予備発泡粒子、および熱可塑性樹脂発泡体が提案されている(特許文献2)。
【0008】
特許文献1では、ブロッキング防止剤としてステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムも利用できるとの記載がある。しかしながら、特許文献1に記載の発明の目的は、ブロッキング防止であり、クッションの充填材、コンクリートの骨材、カップ容器の成形品などに用いる発泡性小粒子の流動性を向上することにより、クッション用としては触感や手触り、コンクリート用骨材ではコンクリート内での均一性、カップ容器では成形品の融着や伸びなどを発現させるという技術的思想は開示されていない。なお、ステアリン酸マグネシウムについては、0.5重量部以上1.2重量部以下が好ましいとの記載がある。また、特許文献1では粒度分布を比較的統一化することによってヘタリを抑制しているが、この方法では、粒子の流動性が悪く、手ざわりが十分ではない。また、採用している帯電防止剤の粘着性が高いため、樹脂粒子の表面に均一に分散させるためには、適切な設備の選択や分散方法の工夫が必要であり、この点が十分になされていない点で問題がある。また、採用している帯電防止剤の粘着性が高いため、帯電防止剤同士が合着してしまい、狙いの帯電性能を十分に発揮できない問題もある。さらに、採用している帯電防止剤(N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンなど)は、ステアリン酸マグネシウム添加による帯電を防止する性能は高いが、その量やアルキルの炭素数などが特定の条件でしか帯電効果を十分に発揮できず、さらに吸湿性が高く、かえってブロッキングしやすくなるという問題がある。
【0009】
特許文献2では、外添剤として、ステアリン酸マグネシウムとステアリン酸カルシウムが利用できるとの記載がある。しかしながら、特許文献2には、クッションの充填材、コンクリートの骨材、カップ容器の成形品などに用いる発泡性小粒子の流動性を向上することにより、クッション用としては触感や手触り、コンクリート用骨材ではコンクリート内での均一性、カップ容器では成形品の融着や伸びなどを発現させるという技術的思想は開示されていない。特に、ステアリン酸マグネシウムとステアリン酸カルシウムの併用によって上記効果が発現できるということや、ステアリン酸マグネシウムとステアリン酸カルシウムの併用の具体的な量の設計については、何ら開示されていない。また、採用している帯電防止剤の粘着性が高いため、樹脂粒子の表面に均一に分散させるためには、適切な設備の選択や分散方法の工夫が必要であり、この点が十分になされていない点で問題がある。また、採用している帯電防止剤の粘着性が高いため、帯電防止剤同士が合着してしまい、狙いの帯電性能を十分に発揮できない問題もある。さらに、採用している帯電防止剤は、吸湿性が高く、かえってブロッキングしやすくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-73653号公報
【文献】国際公開第2019/189662号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、予備発泡スチレン系樹脂小粒子の流動性を向上できる発泡性スチレン系樹脂小粒子、およびそのような発泡性スチレン系樹脂小粒子を予備発泡してなる流動性に優れた予備発泡スチレン系樹脂小粒子を提供することにある。また、そのような、発泡性スチレン系樹脂小粒子や予備発泡スチレン系樹脂小粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂小粒子は、
ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂小粒子であって、
平均粒子径が0.20mm~0.95mmであり、
ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂小粒子本体が、マグネシウム、カルシウム、亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種によって被覆されてなり、
該発泡性スチレン系樹脂小粒子本体の量とマグネシウムの量Aとカルシウムの量Bと亜鉛の量Cの合計を100質量%とした場合に、
Aが0.600質量%以下、
Bが0.200質量%以下、
Cが1.000質量%以下であり、
Bが0質量%でCが0質量%の場合は、Aが0.013質量%以上であり、
Aが0質量%でCが0質量%の場合は、Bが0.015質量%以上であり、
Aが0質量%でBが0質量%の場合は、Cが0.020質量%以上である。
【0013】
本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、
上記発泡性スチレン系樹脂小粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂小粒子であって、
該予備発泡の嵩発泡倍率が2倍以上70倍未満である。
【0014】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、上記発泡性スチレン系樹脂小粒子から成形される。
【0015】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、上記予備発泡スチレン系樹脂小粒子から成形される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、予備発泡スチレン系樹脂小粒子の流動性を向上できる発泡性スチレン系樹脂小粒子、およびそのような発泡性スチレン系樹脂小粒子を予備発泡してなる流動性に優れた予備発泡スチレン系樹脂小粒子を提供できる。また、そのような、発泡性スチレン系樹脂小粒子や予備発泡スチレン系樹脂小粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0018】
本明細書において「(メタ)アクリル」とある場合は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とある場合は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0019】
A.発泡性スチレン系樹脂小粒子
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂小粒子は、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂小粒子である。
【0020】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂小粒子は、全体として小粒子の形状を有し、平均粒子径が、0.20mm~0.95mmであり、好ましくは0.20mm~0.90mmであり、より好ましくは0.20mm~0.85mmであり、さらに好ましくは0.20mm~0.80mmであり、特に好ましくは0.20mm~0.75mmである。平均粒子径は、JIS Z 8815に準拠して測定され得る。具体的には、平均粒子径は、JIS Z 8815の篩分け試験による粒度分布から積算値50%の粒径として測定した値とされる。発泡性スチレン系樹脂小粒子の形状としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な形状を採用することができる。このような形状の具体例としては、例えば、球状、略球状、楕円球状(卵状)、円柱状、略円柱状などが挙げられる。
【0021】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂小粒子は、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂小粒子本体が、マグネシウム、カルシウム、亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種によって被覆されてなる。
【0022】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂小粒子においては、発泡性スチレン系樹脂小粒子本体の量とマグネシウムの量Aとカルシウムの量Bと亜鉛の量Cの合計を100質量%とした場合に、
Aが0.600質量%以下、
Bが0.200質量%以下、
Cが1.000質量%以下であり、
Bが0質量%でCが0質量%の場合は、Aが0.013質量%以上であり、
Aが0質量%でCが0質量%の場合は、Bが0.015質量%以上であり、
Aが0質量%でBが0質量%の場合は、Cが0.020質量%以上である。
【0023】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂小粒子が上記のような特徴を有することにより、予備発泡スチレン系樹脂小粒子の流動性を向上できる発泡性スチレン系樹脂小粒子を提供できる。
【0024】
上記マグネシウムの量A、上記カルシウムの量B、上記亜鉛の量Cは、後述する蛍光X線分析によって測定できる。
【0025】
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体の量とマグネシウムの量Aとカルシウムの量Bと亜鉛の量Cの合計を100質量%とした場合、BとCがいずれも0質量%である場合以外は、Aは、好ましくは0.500質量%以下であり、より好ましくは0.400質量%以下であり、さらに好ましくは0.300質量%以下であり、さらに好ましくは0.200質量%以下であり、さらに好ましくは0.100質量%以下であり、特に好ましくは0.085質量%以下であり、最も好ましくは0.070質量%以下である。BとCがいずれも0質量%である場合以外の場合、上記Aが上記範囲を外れて少なすぎると、発泡粒同士がブロッキングしたり、発泡粒が帯電しやすくなったりするおそれがある。上記Aが上記範囲を外れて多すぎると、成形品の融着が悪くなったり、成形品が含水しやすくなったりするおそれがある。
【0026】
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体の量とマグネシウムの量Aとカルシウムの量Bと亜鉛の量Cの合計を100質量%とした場合、Bが0質量%でCが0質量%の場合は、Aは、0.013質量%以上であり、好ましくは0.013質量%~0.600質量%であり、より好ましくは0.013質量%~0.500質量%であり、さらに好ましくは0.013質量%~0.400質量%以下であり、さらに好ましくは0.013質量%~0.300質量%以下であり、さらに好ましくは0.013質量%~0.200質量%以下であり、さらに好ましくは0.013質量%~0.100質量%以下であり、特に好ましくは0.013質量%~0.085質量%以下であり、最も好ましくは0.013質量%~0.070質量%以下である。Bが0質量%でCが0質量%の場合、上記Aが上記範囲を外れて少なすぎると、発泡粒同士がブロッキングしたり、発泡粒が帯電しやすくなったりするおそれがある。上記Aが上記範囲を外れて多すぎると、成形品の融着が悪くなったり、成形品が含水しやすくなったりするおそれがある。
【0027】
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体の量とマグネシウムの量Aとカルシウムの量Bと亜鉛の量Cの合計を100質量%とした場合、AとCがいずれも0質量%である場合以外は、Bは、好ましくは0.170質量%以下であり、より好ましくは0.150質量%以下であり、さらに好ましくは0.120質量%以下であり、さらに好ましくは0.100質量%以下であり、さらに好ましくは0.090質量%以下であり、特に好ましくは0.080質量%以下であり、最も好ましくは0.070質量%以下である。AとCがいずれも0質量%である場合以外の場合、上記Bが上記範囲を外れて少なすぎると、発泡粒同士がブロッキングしたり、発泡粒が帯電しやすくなったりするおそれがある。上記Bが上記範囲を外れて多すぎると、発泡粒がべたつきやすくなったり、成形品の融着が悪くなったりするおそれがある。
【0028】
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体の量とマグネシウムの量Aとカルシウムの量Bと亜鉛の量Cの合計を100質量%とした場合、Aが0質量%でCが0質量%の場合は、Bは、0.015質量%以上であり、好ましくは0.015質量%~0.200質量%であり、より好ましくは0.015質量%~0.170質量%であり、さらに好ましくは0.015質量%~0.150質量%以下であり、さらに好ましくは0.015質量%~0.120質量%以下であり、さらに好ましくは0.015質量%~0.100質量%以下であり、さらに好ましくは0.015質量%~0.090質量%以下であり、特に好ましくは0.015質量%~0.080質量%以下であり、最も好ましくは0.015質量%~0.070質量%以下である。Aが0質量%でCが0質量%の場合、上記Bが上記範囲を外れて少なすぎると、発泡粒同士がブロッキングしたり、発泡粒が帯電しやすくなったりするおそれがある。上記Bが上記範囲を外れて多すぎると、発泡粒がべたつきやすくなったり、成形品の融着が悪くなったりするおそれがある。
【0029】
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体の量とマグネシウムの量Aとカルシウムの量Bと亜鉛の量Cの合計を100質量%とした場合、AとBがいずれも0質量%である場合以外は、Cは、好ましくは0.900質量%以下であり、より好ましくは0.800質量%以下であり、さらに好ましくは0.700質量%以下であり、さらに好ましくは0.600質量%以下であり、さらに好ましくは0.500質量%以下であり、特に好ましくは0.480質量%以下であり、最も好ましくは0.450質量%以下である。AとBがいずれも0質量%である場合以外の場合、上記Cが上記範囲を外れて少なすぎると、発泡粒同士がブロッキングしたり、発泡粒が帯電しやすくなったりするおそれがある。上記Cが上記範囲を外れて多すぎると、成形時の融着が悪くなるおそれがある。
【0030】
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体の量とマグネシウムの量Aとカルシウムの量Bと亜鉛の量Cの合計を100質量%とした場合、Aが0質量%でBが0質量%の場合は、Cは、0.020質量%以上であり、好ましくは0.020質量%~1.000質量%であり、より好ましくは0.020質量%~0.900質量%であり、さらに好ましくは0.020質量%~0.800質量%以下であり、さらに好ましくは0.020質量%~0.700質量%以下であり、さらに好ましくは0.020質量%~0.600質量%以下であり、さらに好ましくは0.020質量%~0.500質量%以下であり、特に好ましくは0.020質量%~0.480質量%以下であり、最も好ましくは0.020質量%~0.450質量%以下である。Aが0質量%でBが0質量%の場合、上記Cが上記範囲を外れて少なすぎると、発泡粒同士がブロッキングしたり、発泡粒が帯電しやすくなったりするおそれがある。上記Cが上記範囲を外れて多すぎると、成形時の融着が悪くなるおそれがある。
【0031】
発泡性スチレン系樹脂小粒子は、重量平均分子量が19万~49万である。発泡性スチレン系樹脂小粒子の重量平均分子量は、好ましくは20万~48万であり、より好ましくは20万~47万であり、さらに好ましくは20万~46万であり、特に好ましくは20万~45万である。
【0032】
発泡性スチレン系樹脂小粒子は、融着促進剤を有していてもよい。融着促進剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0033】
上記融着促進剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な融着促進剤を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記融着促進剤としては、例えば、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸モノグリセライド、植物油などが挙げられる。脂肪酸トリグリセライドとしては、具体的には、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、リノール酸トリグリセライド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドなどが挙げられる。脂肪酸ジグリセライドとしては、具体的には、ラウリン酸ジグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、リノール酸ジグリセライドなどが挙げられる。脂肪酸モノグリセライドとしては、具体的には、ラウリン酸モノグリセライドなどが挙げられる。植物油としては、具体的には、硬化ヒマシ油などが挙げられる。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記融着促進剤としては、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドが好ましい。
【0034】
上記融着促進剤の量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な量を使用すればよい。
【0035】
A-1.発泡性スチレン系樹脂小粒子本体
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体は、ポリスチレン系樹脂と発泡剤を含む。
【0036】
A-1-1.ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂は、該ポリスチレン系樹脂を構成する単量体成分としてスチレン系単量体を含む高分子化合物である。スチレン系単量体は、スチレンまたはスチレン誘導体を含む。スチレン誘導体としては、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。スチレン系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。スチレン系単量体は、好ましくは、少なくともスチレンを含有する。スチレン系単量体の全量に対するスチレンの含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0037】
ポリスチレン系樹脂は、該ポリスチレン系樹脂を構成する単量体成分の主成分としてスチレン系単量体を含んでいればよく、スチレン系単量体と共重合成分との共重合体であってもよい。共重合成分の代表例としては、代表的には、ビニル単量体が挙げられる。本明細書において「主成分」とは、全成分中の該成分の含有割合が、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0038】
ビニル単量体としては、例えば、多官能単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、マレイン酸エステル単量体、フマル酸エステル単量体などが挙げられる。ビニル単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0039】
多官能単量体の具体例としては、例えば、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。多官能単量体を用いることにより、ポリスチレン系樹脂に分岐構造を付与することができる。ポリスチレン系樹脂を構成する全単量体成分中の多官能単量体の含有量は、好ましくは0質量%~0.1質量%であり、より好ましくは0.005質量%~0.05質量%である。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体の中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸エチルが好ましく、アクリル酸ブチルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることにより、スチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くすることができる。ポリスチレン系樹脂を構成する全単量体成分中のアクリル酸エステル単量体の含有量は、好ましくは0質量%~4.0質量%であり、より好ましくは0.1質量%~3.0質量%である。
【0041】
マレイン酸エステル単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチルなどが挙げられる。
【0042】
フマル酸エステル単量体としては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸エチルなどが挙げられる。
【0043】
1つの実施形態においては、ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂であってもよい。複合樹脂におけるポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との含有比(ポリスチレン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂:質量比)は、好ましくは50/50~90/10であり、より好ましくは60/40~85/15である。ポリスチレン系樹脂の含有量が少なすぎると、発泡性および/または成形加工性が不十分になる場合がある。ポリスチレン系樹脂の含有量が多すぎると、耐衝撃性および/または柔軟性が不十分になる場合がある。
【0044】
ポリオレフィン系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なオレフィン系樹脂を採用することができる。ポリオレフィン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。具体例としては、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂;などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物である。なお、低密度は、好ましくは0.91g/cm3~0.94g/cm3であり、より好ましくは0.91g/cm3~0.93g/cm3である。高密度は、好ましくは0.95g/cm3~0.97g/cm3であり、より好ましくは0.95g/cm3~0.96g/cm3である。中密度は、低密度と高密度との間の密度である。
【0045】
A-1-2.発泡剤
発泡剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0046】
発泡剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤は、好ましくは、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。具体例としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタンまたはネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素;などが挙げられる。発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。これらの中でも、発泡剤としては、脂肪族炭化水素が好ましい。オゾン層の破壊を防止することができ、かつ、空気と速く置換するので発泡成形体の経時変化を抑制することができるからである。発泡剤としては、より好ましくは、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、およびこれらの組み合わせである。
【0047】
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体中における発泡剤の含有量は、予備発泡スチレン系樹脂小粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体を形成するに十分な量である限り、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは2質量部~16質量部であり、より好ましくは3質量部~8質量部である。
【0048】
A-1-3.その他
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体は、発泡剤とともに発泡助剤を含んでいてもよい。発泡助剤としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ヤシ油などが挙げられる。発泡助剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
また、発泡性スチレン系樹脂小粒子本体は、発泡剤とともに帯電防止剤を含んでいてもよい。帯電防止剤としては、例えば、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシオクタデシル)アミン、N-ヒドロキシプロピル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシブチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシオクタデシル)アミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)オクタデシルアミンなどの1-アミノ-2-ヒドロキシ化合物、およびそれらの塩、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどがあり、これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0049】
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、輻射伝熱抑制成分、スチレン系樹脂以外の樹脂、架橋剤、可塑剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤、展着剤、気泡調整剤、耐候剤、老化防止剤、防曇剤、香料などが挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0050】
A-2.発泡性スチレン系樹脂小粒子の製造方法
発泡性スチレン系樹脂小粒子の製造方法の一つの実施形態としては、(I)スチレン系単量体を重合させる工程と、(II)重合と同時または重合後に発泡剤を含浸させる工程と、(III)脂肪族金属塩を添加する工程と、を含む。
【0051】
スチレン系単量体の重合方法としては、代表的には、懸濁重合法が挙げられる。懸濁重合法は、スチレン系単量体に重合開始剤を溶解して、懸濁剤を分散した水とともに、反応槽中で昇温し重合した後冷却して、発泡性スチレン系樹脂小粒子を得る方法である。
【0052】
重合の途中および/または重合終了後に発泡剤を添加する方法は1段法と呼ばれる。発泡剤を添加せずに重合して得られた粒子をふるい分けして必要な粒径範囲の粒子のみを、反応槽の懸濁剤を分散した水中で昇温して、ここで発泡剤を添加して粒子に含浸させる方法は2段法(後含浸法)と呼ばれる。また、小粒子のスチレン系樹脂粒子(種粒子)を、懸濁剤を分散した水の入っている反応槽に投入し、昇温した後、重合開始剤を溶解した単量体を連続的に反応槽に供給して重合し、目的とする粒子径まで成長させる方法はシード重合法と呼ばれる。シード重合法において、発泡剤は重合の途中および/または重合終了後に添加される。1段法、2段法(後含浸法)、シード重合法のいずれの方法によっても、発泡性スチレン系樹脂小粒子を製造することができる。また、いずれの方法によっても、真球状の発泡性スチレン系樹脂小粒子が得られ得るという利点がある。
【0053】
スチレン系単量体の重合における重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,2-t-ブチルパーオキシブタン、t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサイハイドロテレフタレート等の有機過酸化物;アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0054】
重合開始剤としては、分子量を調整し、残存単量体量を減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が50~80℃の範囲にある重合開始剤と、10時間の半減期を得るための分解温度が80~120℃の範囲にある重合開始剤とを併用してもよい。重合開始剤は、種粒子に均一に吸収させる必要があることから、液状物として添加することが好ましい。重合開始剤を直接水性懸濁液中に添加すると、種粒子に均一に吸収されにくくなるので、重合開始剤は水性媒体に懸濁または乳化させた状態で添加するか、あるいは少量のスチレン系単量体に溶解し、懸濁安定剤および/またはアニオン界面活性剤とを加え水性懸濁液として添加することが望ましい。
【0055】
上記懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子;第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの難溶性無機金属塩;などが挙げられる。難溶性無機金属塩を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常併用される。発泡性スチレン系樹脂小粒子に、マグネシウム、カルシウム、亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種を残存させるためには、難溶性無機金属塩を使用することが好ましい。
【0056】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩;β-テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩;などが挙げられる。
【0057】
脂肪族金属塩を添加する工程としては、代表的には、脂肪族金属塩を、上記重合により得られた発泡性スチレン系樹脂小粒子本体の表面に塗布する。脂肪族金属塩を添加する方法としては、例えば、上記重合により得られた発泡性スチレン系樹脂小粒子本体と、脂肪族金属塩とを、タンブラー、リボンブレンダー、ナウターミキサー等の混合機もしくは撹拌機を使用して、混合する方法が挙げられる。
【0058】
発泡性スチレン系樹脂小粒子の製造方法の別の実施形態においては、発泡性スチレン系樹脂小粒子は、溶融押出法により製造され得る。溶融押出法は、ポリスチレン系樹脂ペレットを樹脂供給装置に供給し、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤を含有した溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から押し出し、その後冷却して、発泡性スチレン系樹脂小粒子を得る方法である。この方法における、いずれかのタイミングで、脂肪族金属塩を添加する。ダイの小孔から冷却用液体中に直接押し出し、押し出した直後に押出物を回転刃で切断し、切断された粒子を冷却用液体中で冷却する方法はホットカット法と呼ばれる。ダイの小孔から一旦空気中にストランド状に押し出し、ストランドが発泡する前に冷却用水槽中に導き、ストランドを冷却用水槽中で冷却した後、切断し円柱状の粒子とする方法はストランドカット法(コールドカット法)と呼ばれる。ホットカット法、ストランドカット法(コールドカット法)のいずれの方法によっても、発泡性スチレン系樹脂小粒子を製造することができる。ホットカット法によれば、ほぼ球状の発泡性スチレン系樹脂小粒子が得られ得るという利点がある。
【0059】
上記脂肪族金属塩としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な脂肪族金属塩を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、上記脂肪族金属塩としては、好ましくは、発泡性スチレン系樹脂小粒子本体100質量部に対して、マグネシウム量A:0.01質量部~0.60質量部、カルシウム量B:0.001質量部~0.20質量部、亜鉛量C:0質量部~1.0質量部となるように、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩を適切に選択する。
【0060】
マグネシウム塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0061】
カルシウム塩としては、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0062】
亜鉛塩としては、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0063】
B.予備発泡スチレン系樹脂小粒子
予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、発泡性スチレン系樹脂小粒子を予備発泡させてなる。
【0064】
予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、表層の平均気泡径が、好ましくは0.02mm~0.200mmであり、より好ましくは0.02mm~0.18mmであり、さらに好ましくは0.02mm~0.16mmであり、特に好ましくは0.02mm~0.15mmである。予備発泡スチレン系樹脂小粒子の表層の平均気泡径が上記範囲にあれば、流動性により優れた予備発泡スチレン系樹脂小粒子を提供できる。
【0065】
すなわち、本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、上記A項に記載の発泡性スチレン系樹脂小粒子を予備発泡させてなる。予備発泡は、発泡性スチレン系樹脂小粒子を、水蒸気等を用いて所望の嵩発泡倍率(嵩密度)に発泡させることを含む。予備発泡スチレン系樹脂小粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは2倍以上70倍未満であり、より好ましくは5倍~65倍であり、さらに好ましくは10倍~60倍である。嵩密度は、嵩発泡倍率の逆数である。嵩発泡倍率および嵩密度は、例えば以下のようにして求められる。予備発泡スチレン系樹脂小粒子の嵩発泡倍率が上記範囲内にあることにより、流動性により優れた予備発泡スチレン系樹脂小粒子を提供できる。
【0066】
発泡性スチレン系樹脂小粒子を測定試料としてW(g)採取する。この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積V(cm3)をJIS K 6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。測定資料の質量および体積から、下記式に基づいて嵩発泡倍数および嵩密度を求めることができる。
嵩発泡倍数(倍=cm3/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の質量(W)
嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0067】
1つの代表的な実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、スチレン系樹脂発泡成形体の成形に用いることができる。別の実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、そのままで緩衝剤、断熱材等として用いることができる。予備発泡スチレン系樹脂小粒子をそのまま用いる場合、予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、好ましくは、多数の予備発泡スチレン系樹脂小粒子を袋体に充填した充填体として用いられ得る。
【0068】
C.スチレン系樹脂発泡成形体
本発明の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、発泡性スチレン系樹脂小粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。本発明の別の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、発泡性スチレン系樹脂小粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂小粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。
【0069】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、予備発泡スチレン系樹脂小粒子をさらに発泡させた発泡スチレン系樹脂粒子(以下、単に「発泡粒子」と称する場合がある)を含む。
【0070】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、互いに融着した複数の発泡粒子により構成されている。
【0071】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、目的に応じた所定の形状を有する型内に予備発泡スチレン系樹脂小粒子を仕込み、型内発泡成形を行うことにより作製され得る。より詳細には、型内発泡成形は、(i)予備発泡スチレン系樹脂小粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填すること、(ii)熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で予備発泡スチレン系樹脂小粒子を加熱発泡させて発泡粒子を得ること、(iii)当該加熱発泡により、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させること、を含む。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、目的に応じて適切に設定され得る。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、例えば、金型内に充填する予備発泡スチレン系樹脂小粒子の嵩発泡倍率を予め調整すること、あるいは、金型内への予備発泡スチレン系樹脂小粒子の充填量を調整することにより調整することができる。
【0072】
加熱発泡の温度(実質的には、熱媒体の温度)は、好ましくは90℃~150℃であり、より好ましくは110℃~130℃である。加熱発泡時間は、好ましくは5秒~50秒であり、より好ましくは10秒~50秒である。加熱発泡の成形蒸気圧(熱媒体の吹き込みゲージ圧)は、好ましくは0.04MPa~0.1MPaであり、より好ましくは0.06MPa~0.08MPaである。加熱発泡がこのような条件であれば、発泡粒子を相互に良好に融着させることができる。
【0073】
必要に応じて、スチレン系樹脂発泡成形体の成形前に予備発泡スチレン系樹脂小粒子を熟成させてもよい。予備発泡スチレン系樹脂小粒子の熟成温度は、好ましくは20℃~60℃である。熟成温度が低すぎると、過度に長い熟成時間が必要とされる場合がある。熟成温度が高すぎると、予備発泡スチレン系樹脂小粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下する場合がある。
【0074】
スチレン系樹脂発泡成形体における発泡粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは2倍~70倍であり、より好ましくは5倍~65倍であり、特に好ましくは10倍~60倍である。
【実施例】
【0075】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0076】
<金属の定量方法>
金属の定量に関しては、以下の方法にて定量分析を行った。
蛍光X線測定装置(株式会社リガク製、「ZSX PrimusIV」)を使って、下記条件にてMg-Κα、Ca-Κα、Zn-Kαの強度測定を行い、オーダー分析法によりCH2を残分として、Mg、Ca、Znの含有元素量を求めた。CH2とMgとCaとZnの合計値が100質量%となるように算出した。試料調製方法としてはルースパウダー法を用いた。
具体的には、発泡性スチレン系樹脂小粒子は4g、予備発泡スチレン系樹脂小粒子は0.2gを、粉末試料容器(株式会社リガク製、CatNo.3399O071)に秤量し、PPフィルム(株式会社リガク製、CatNo.3399G003)を分析面に被せ、装置専用の試料ケース(30mm径測定用)にセットし測定試料とした。
なお、Mg、Ca、Znの含有割合について、蛍光X分析機器での検出下限以下の場合は「0質量%」とし、実施例及び比較例の表においては「ND」と表記した。
(装置条件)
装置:株式会社リガク製「ZSX PrimusIV」蛍光X線測定装置
X線管球ターゲット:Rh(3.0KW)
測定径:30mmφ
スピン:しない
雰囲気:真空
成分形態:金属
残分:CH2
試料フィルム:P.P.Film
試料重量厚さ:設定する
(定性元素条件)
Mg-Κα:
管球:Rh(30kV-100mA)
1次フィルタ:Be30
アッテネータ:1/1
スリット:S4
分光結晶:RX25
θ:38.630deg(測定範囲:35deg~42deg)
検出器:PC
PHA:100~250
ステップ:0.05deg
時間:0.2sec
Ca-Κα:
管球:Rh(40kV-75mA)
1次フィルタ:Be30
アッテネータ:1/1
スリット:S4
分光結晶:LiF(200)
θ:113.130deg(測定範囲:110deg~116deg)
検出器:PC
PHA:100~300
ステップ:0.05deg
時間:0.1sec
Zn-Κα:
管球:Rh(50kV-60mA)
1次フィルタ:OUT
アッテネータ:1/1
スリット:S2
分光結晶:LiF(200)
θ:41.780deg(測定範囲:39deg~44deg)
検出器:SC
PHA:100~300
ステップ:0.02deg
時間:0.04sec
【0077】
<発泡性スチレン系樹脂小粒子の重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。ここで、重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算平均分子量を意味する。具体的には、以下の手順で測定した。
試料3mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLに室温24時間かけて完全溶解させた後、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過した上で、次の測定条件にてクロマトグラフをも用いて測定し、予め測定し作成しておいた標準ポリスチレンの検量線から試料の重量平均分子量を求めた。
(測定条件)
装置:高速GPC装置
商品名:東ソー社製、HLC-8320GPC EcoSECシステム(RI検出器内蔵)
分析条件:
ガードカラム:東ソー社製、TSKguardcolumn SuperHZ-H(4.6mmID×2cmL)×1本
カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM-H(4.6mmID×15cmL)×2本
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
移動相流量:試料側=0.175mL/分、リファレンス側=0.175mL/分
検出器:RI検出器、試料濃度=0.3g/L
注入量:50μL
測定時間:0分~25分
ランタイム:25分
サンプリングピッチ:200msec
(検量線の作成)
検量線用標準ポリスチレン試料は、東ソー社製、商品名「TSK standard POLYSTYRENE」の、重量平均分子量が、5480000、3480000、1090000、355000、102000、37900、9100、2630、および589である標準ポリスチレン試料を用いた。
上記検量線用標準ポリスチレン試料をグループA(重量平均分子量が1090000のもの)、グループB(重量平均分子量が3480000、102000、9100、および589のもの)、およびグループC(重量平均分子量が5480000、355000、37900、および2630のもの)にグループ分けした。グループAに属する重量平均分子量が1090000である標準ポリスチレン試料を5mg秤量した後にTHF20mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入した。グループBに属する重量平均分子量が3480000、102000、9100、および589である標準ポリスチレン試料をそれぞれ5mg、5mg、5mg、および10mg秤量した後にTHF50mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入した。グループCに属する重量平均分子量が5480000、355000、37900、および2630である標準ポリスチレン試料をそれぞれ1mg、5mg、5mg、及び5mg秤量した後にTHF40mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入した。これら標準ポリスチレン試料の保持時間から較正曲線(三次式)をHLC-8320GPC専用データ解析プログラムGPCワークステーション(EcoSEC-WS)にて作成し、これをポリスチレン換算重量平均分子量測定の検量線として用いた。
【0078】
<予備発泡スチレン系樹脂小粒子の表層の平均気泡径>
平均気泡径は、ASTM D2842-69の試験方法に準拠して測定した。具体的には、予備発泡スチレン系樹脂小粒子の中から、任意に選択した10個について、剃刀刃を用いて予備発泡スチレン系樹脂小粒子の中心付近を通る平面で2等分し、その一方の切断面を走査型電子顕微鏡(日立社製、商品名「SU3900」)を用いて、予備発泡スチレン系樹脂小粒子の中心から半径の50%に相当する円の外側を100倍に拡大して撮影した。
次に、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、任意の箇所に長さ60mmの直線を一本描き、この直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出した。
平均弦長t(μm)=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにした。また、一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、さらに、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含めた。そして、算出された平均弦長tに基づいて次式により気泡径を算出した。
平均気泡径(μm)D=t/0.616
更に、撮影した画像の任意の3箇所において上述と同様の要領で気泡径を算出し、計5画像分の気泡径の相加平均値を予備発泡スチレン系樹脂小粒子の平均気泡径とした。
【0079】
<予備発泡スチレン系樹脂小粒子の手触り評価>
予備発泡スチレン系樹脂小粒子の手触りが良いことは、予備発泡スチレン系樹脂小粒子の流動性が良いことを意味する。例えば、手触りが良い予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、クッションの充填材として用いた場合に、予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、圧縮されて容積が縮小するように変形することでクッション性を発現し、その際、手触りが良い予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、袋体内で優れた流動性を発現し、優れたクッション性を発現する。
予備発泡スチレン系樹脂小粒子の手触り評価は、発泡粒の流動性にて評価を行った。具体的には、ポリプロピレン製漏斗(口径φ85mm、足最小外径φ11mm、足長59mm)に1000mLの予備発泡スチレン系樹脂小粒子を入れ、その予備発泡スチレン系樹脂小粒子が全て漏斗から排出される時間を測定した。
予備発泡スチレン系樹脂小粒子の手触り評価は以下の通りとした。
10秒未満:5
10秒以上15秒未満:4
15秒以上20秒未満:3
20秒以上25秒未満:2
25秒以上:1
【0080】
<予備発泡スチレン系樹脂小粒子の融着性評価>
予備発泡スチレン系樹脂小粒子の融着性が良いことは、予備発泡スチレン系樹脂小粒子の流動性が良いことを意味する。例えば、融着性が良い予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、成形金型への充填性に優れることを意味し、成形金型への充填性に優れる予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、流動性に優れる。
予備発泡スチレン系樹脂小粒子の融着性評価は、幅300mm、長さ400mm、厚み30mmの平板形状のスチレン系樹脂発泡成形体の表面に、一対の長辺の中心同士を結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約2mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って該スチレン系樹脂発泡成形体を手で二分割し、その破断面における発泡粒子について、100個~150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数え、式[(a)/((a)十(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とした。
スチレン系樹脂発泡成形体の融着性の評価は以下の通りとした。
80%以上:5
60%以上80%未満:4
50%以上60%未満:3
30%以上50%未満:2
30%未満:1
【0081】
<予備発泡スチレン系樹脂小粒子の表面性評価>
予備発泡スチレン系樹脂小粒子の表面性が良いことは、予備発泡スチレン系樹脂小粒子の流動性が良いことを意味する。例えば、表面性が良い予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、成形金型への充填性に優れることを意味し、成形金型への充填性に優れる予備発泡スチレン系樹脂小粒子は、流動性に優れる。
予備発泡スチレン系樹脂小粒子の表面性評価は、幅300mm、長さ400mm、厚み30mmの平板形状のスチレン系樹脂発泡成形体の表面(300mm×400mmの面)の発泡粒子間において2mm以上の隙間を要する数で表面性を評価した。
スチレン系樹脂発泡成形体の表面性の評価は以下の通りとした。
5個未満:5
5個以上10個未満:4
10個以上15個未満:3
15個以上20個未満:2
20個以上:1
【0082】
〔実施例1〕
<発泡性スチレン系樹脂小粒子本体の作製>
100リットルの攪拌機付オートクレーブ内に、ピロリン酸マグネシウム82g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.4g、過酸化ベンゾイル106g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート24g、イオン交換水40kg、およびスチレン単量体40kgを供給し、攪拌翼を平均粒径0.45mmとなるように回転させる事により懸濁液を調製した。
次に、上記懸濁液を攪拌しながら、オートクレーブの温度を90℃まで昇温し、90℃にて6時間50分に亘って保持し、さらに、オートクレーブ内の温度を125℃まで昇温し、125℃で2時間に亘って保持した。これによりスチレン単量体を懸濁重合した。
その後、オートクレーブ内の温度を25℃まで冷却し、オートクレーブ内から重合物を取り出した。その重合物の洗浄、脱水を複数回に亘って繰り返し、次いで、乾燥させた後、篩分けして、質量平均分子量が30万のスチレン系樹脂粒子(A)を得た。
次に、5リットルのオートクレーブにイオン交換水2kg、酸化マグネシウム15g、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3g、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート0.6g、エチレンビスステアリン酸アマイド0.8gを仕込み、水性媒体とした。この水性媒体に、上記スチレン系樹脂粒子(A)2kgを加えて300rpmで攪拌した。
次いで、水性媒体の温度を110℃に上げ、この温度を維持しながらブタン55g及びペンタン151gを圧入し、1時間30分間含浸させ、その後25℃に冷却し、洗滌後、篩分けし、発泡性スチレン系樹脂小粒子本体(1)を得た。
<発泡性スチレン系樹脂小粒子の製造>
得られた発泡性スチレン系樹脂小粒子本体:100質量部に対し、蛍光X線測定時に表1の量となるように、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛をそれぞれ塗布し、発泡性スチレン系樹脂小粒子(1)を得た。
<予備発泡スチレン系樹脂小粒子の作製>
得られた発泡性スチレン系樹脂小粒子(1)を、13℃の恒温室にて5日間放置した。そして、発泡性スチレン系樹脂小粒子(1)を加熱して、嵩密度0.02g/cm3に予備発泡(嵩発泡倍率=50倍)させ、予備発泡スチレン系樹脂小粒子(1)を得た。
<スチレン系樹脂発泡成形体の作製>
得られた予備発泡スチレン系樹脂小粒子(1)を20℃で24時間熟成させ、続いて、室温雰囲気下、24時間放置した後、型内発泡成形を行った。型内発泡成形には積水工機社製のACE-3SP成形機を用い、幅300mm、長さ400mm、厚み30mmの平板形状に発泡成形した。加熱時間は一方加熱時間8秒、逆一方加熱時間2秒、両面加熱時間5秒とし、成形圧(蒸気吹き込みゲージ圧)を0.08MPaとした。これにより、スチレン系樹脂発泡成形体(1)を得た。
結果を表1に示した。なお、表1中のMg、Ca、Znの「量」は、発泡性スチレン系樹脂小粒子本体を含み100質量%である。
【0083】
〔実施例2~21〕
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体への添加剤の量を変えて、マグネシウム量Aとカルシウム量Bと亜鉛量Cを表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂小粒子(2)~(21)、予備発泡スチレン系樹脂小粒子(2)~(21)、スチレン系樹脂発泡成形体(2)~(21)を得た。
結果を表1に示した。
【0084】
〔比較例1~15〕
発泡性スチレン系樹脂小粒子本体への添加剤の量を変えて、マグネシウム量Aとカルシウム量Bと亜鉛量Cを表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂小粒子(C1)~(C15)、予備発泡スチレン系樹脂小粒子(C1)~(C15)、スチレン系樹脂発泡成形体(C1)~(C15)を得た。
結果を表2に示した。なお、表2中のMg、Ca、Znの「量」は、発泡性スチレン系樹脂小粒子本体を含み100質量%である。
【0085】
【0086】
【0087】
表1、2から明らかなように、本発明によれば、予備発泡スチレン系樹脂小粒子の流動性を向上できる発泡性スチレン系樹脂小粒子、およびそのような発泡性スチレン系樹脂小粒子を予備発泡してなる流動性に優れた予備発泡スチレン系樹脂小粒子を提供できることがわかる。また、そのような、発泡性スチレン系樹脂小粒子や予備発泡スチレン系樹脂小粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂小粒子、予備発泡スチレン系樹脂小粒子、およびスチレン系樹脂発泡成形体は、クッションの充填材、コンクリートの骨材、カップ容器の成形品、住宅および自動車等に用いる断熱材、建築資材等に用いる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に好適に用いられる。発泡性スチレン系樹脂小粒子、予備発泡スチレン系樹脂小粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体は、より具体的には、壁用断熱材、床用断熱材、屋根用断熱材、自動車用断熱材、温水タンク用保温材、配管用保温材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材、食品および工業製品等の容器、魚および農産物等の梱包材、盛土材、畳の芯材等に好適に用いられる。