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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20240229BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20240229BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20240229BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G09F9/30 349D
H01L33/60
G09F9/33
G09F9/00 313
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020053861
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021156916
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅延
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 仁
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211688(JP,A)
【文献】特開2003-29654(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124347(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0385991(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
G09F 9/30
H01L 33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
前記第1の電極上に設けられたLEDチップと、
前記第1の電極を埋め込み、前記LEDチップの側面と接し上面を露出させる絶縁層と、
前記絶縁層の上面及び前記LEDチップの上面と接する透光性の第2の電極と、
前記第2の電極の上面に設けられ、前記LEDチップと重なる領域に第1の開口部が設けられた第1の反射制御層と、を有し、
前記第1の反射制御層は、前記第2の電極側の第1の面と、前記第1の面と反対側の第2の面と、を有し、前記第1の面側の反射率が前記第2の面側の反射率より高い
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1の反射制御層は、前記第2の電極と接する前記第1の面側のシート抵抗が、前記第2の電極のシート抵抗よりも小さい、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1の反射制御層は、
前記第2の電極に接し、アルミニウムを含む第1の層と、
前記第1の層上に設けられ、チタン、タンタル、モリブデン、から選ばれた1種の金属を含む第2の層と、
前記第2の層上に設けられ、屈折率が1.7から2.0の第3の層と、を含む
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第3の層が、酸化インジウム、又は酸化亜鉛を含む透明導電膜である、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第3の層が、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、酸化アルミニウム膜から選ばれた1種である、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第3の層が100nm以下の膜厚を有する、
請求項4又は5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第3の層が40nm以上60nm以下の膜厚を有する、
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
第2の反射制御層をさらに有し、
前記第2の反射制御層は、前記第1の電極上に設けられ、前記第1の電極の上面を露出させる第2の開口部を有する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第2の反射制御層は、
チタン、タンタル、モリブデン、から選ばれた1種の金属を含む第4の層と、
前記第4の層上に設けられ、屈折率が1.7から2.0の第5の層と、を含む
請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第5の層が、酸化インジウム、又は酸化亜鉛を含む透明導電膜である、
請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第5の層が、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、酸化アルミニウム膜から選ばれた1種である、
請求項9に記載の表示装置。
【請求項12】
前記第5の層が100nm以下の膜厚を有する、
請求項10又は11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第5の層が40nm以上60nm以下の膜厚を有する、
請求項12に記載の表示装置。
【請求項14】
前記第1の開口部の開口端部が、前記LEDチップの外側に位置している、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、表示装置に関する。本明細書で開示される発明の一実施形態は、表示装置の画素構造に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に実装された複数の発光素子と、複数の発光素子の周囲に設けられた充填材から成る防水コート部材とを備え、複数の発光素子の発光面に入射する外光の反射を抑制する反射抑制層24が形成された表示ユニットを用いた表示装置が開示されている(特許文献1参照)。この表示装置は、発光素子の周囲にマスク部材を備え、発光素子の発光面に入射する外光の反射を抑制する反射抑制層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-109932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発光素子は、反射抑制層がガラスビーズ又は樹脂ビーズによる拡散材で形成され、外光を散乱させることで発光面の外光反射を低減しているため、解像感が低下することが問題となる。また、特許文献1に記載された発光素子は、モールド樹脂の中にLEDチップが設けられた構造を前提としているため、所謂マイクロLED及びミニLEDと呼ばれる微細なLEDチップで形成される表示装置の画素には、そもそも反射抑制層を適用することができないという問題がある。さらに、マスク部材は、平板状の部材に光沢のない漆黒色に塗装されたものであるので、外光が照射されると温度が上昇し、発光素子(LEDチップ)の輝度低下が問題となる。
【0005】
本発明の一実施形態は、このような問題に鑑み、外光の反射を抑えつつ信頼性の高い表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る表示装置は、第1の電極と、第1の電極上に設けられたLEDチップと、第1の電極を埋め込み、LEDチップの側面と接し上面を露出させる絶縁層と、絶縁層の上面及びLEDチップの上面と接する透光性の第2の電極と、第2の電極の上面に設けられ、LEDチップと重なる領域に第1の開口部が設けられた第1の反射制御層とを有する。第1の反射制御層は、第2の電極側の第1の面と、第1の面と反対側の第2の面とを有し、第1の面側の反射率が第2の面側の反射率より高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る表示装置の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素の構成を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素の構造を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素に設けられる反射制御層の光学的特性を説明する模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素において、LEDチップから放射される光の状態を模式的に説明する図である。
図6】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素において、LEDチップから放射された光の内、横方向の成分が絶縁層内の多重反射により出射光となる態様を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素の構造を示す断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素において、LEDチップから放射される光の状態を模式的に説明する図である。
図9】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1の」、「第2の」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0009】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0010】
本発明の一実施形態において、マイクロLEDとは、チップサイズが数マイクロメートル以上、100μm以下、ミニLEDとは、チップサイズが100μm以上のものをいう。本発明の一実施形態はいずれのサイズのLEDも用いることができ、表示装置の画面サイズ、画素密度に応じて適宜使い分けることができる。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る表示装置100の構成を示す。表示装置100は、基板102上に配置された表示部104、表示部104の外側の領域に配置された駆動回路108、端子部112を含む。駆動回路108は、走査信号を出力する走査線駆動回路109、データ信号を駆動するデータ線駆動回路110を含む。表示部104は、少なくとも一つの画素106を含む。少なくとも一つの画素106は複数の画素106から成り、複数の画素106は行方向及び列方向に配列されている。
【0012】
図2は、画素106の平面図を示す。画素106は、第1の副画素107a、第2の副画素107b、第3の副画素107cを含む。第1の副画素107aには第1の電極114a及び第1のLEDチップ116aが設けられ、第2の副画素107bには第1の電極114b及び第2のLEDチップ116bが設けられ、第3の副画素107cには第1の電極114c及び第3のLEDチップ116cが設けられる。また、画素106は第2の電極118を含む。第2の電極118は、第1のLEDチップ116a、第2のLEDチップ116b、及び第3のLEDチップ116c上に設けられ、第1の副画素107a、第2の副画素107b、及び第3の副画素107cの領域に広がっている。第2の電極118上には第1の反射制御層120が設けられる。第1の反射制御層120は、各副画素のLEDチップを露出させるように、第1の開口部124(第1の開口部124a、第1の開口部124b、第1の開口部124c)が設けられている。
【0013】
第1のLEDチップ116a、第2のLEDチップ116b、及び第3のLEDチップ116cはベアチップであり、所謂マイクロLED又はミニLEDとも呼ばれる微小なLEDが用いられる。各副画素に設けられるLEDチップは、副画素のサイズに応じてマイクロLED又はミニLEDを適宜選択することができる。第1のLEDチップ116a、第2のLEDチップ116b、及び第3のLEDチップ116cは2端子素子であり、図示されないアノード端子、カソード端子を有する。後述の図3に示されるように、各副画素のLEDチップは、例えば、アノード端子が第1の電極114と電気的に接続され、カソード端子が第2の電極118と電気的に接続される。なお、LEDチップの電気的な接続はこれに限定されるものではなく、アノード端子が第2の電極と電気的に接続され、カソード端子が第1の電極に電気的に接続されていてもよい。
【0014】
図2は、また、画素106に第2の電極118が、図示されない下層の配線(第2の配線134)と接続するためのコンタクトホール138を示す。第2の電極118は、透明導電膜で形成され、表示部104の略全面に設けられるため、画素106の中に下層の配線(第2の配線134)とコンタクトホール138を介して接続することで、抵抗損失を抑制することができる。
【0015】
図3は、図2に示す画素106のA1-B1線に沿った断面構造を示す。具体的に図3は、第1の副画素107aの構造を示す。図3は、第1の副画素107aが、第1のLEDチップ116aの他に、トランジスタ126を含む態様を例示的に示す。トランジスタ126は、第1のLEDチップ116aの発光を制御する素子として用いられる。基板102上に設けられるトランジスタ126は、例えば、薄膜トランジスタであり、その素子構造に特段の限定はない。トランジスタ126の上層側には第1の絶縁層128が設けられる。第1の絶縁層128の上には第2の絶縁層132が設けられ、第1の電極114aは、第2の絶縁層132の上に設けられる。
【0016】
第1の副画素107aは、第1の電極114aとトランジスタ126とが、第2の絶縁層132上に設けられた第1の配線130を介して電気的に接続された構造を有する。第1のLEDチップ116aは、第1の電極114aの上に配置される。第1のLEDチップ116aは、図示されないが、一方の面側(基板102側)にアノード端子があり、他方の面側(基板102とは反対側)にカソード端子を有する。第1のLEDチップ116aは一方の端子(例えば、アノード端子)が、図示されない半田、又は導電性ペーストによって第1の電極114aと電気的に接続されている。
【0017】
第1の電極114a及び第2の絶縁層132上には、第3の絶縁層136が設けられる。第3の絶縁層136は、第1のLEDチップ116aの上面を露出させ、側面と接するように設けられる。別言すれば、第3の絶縁層136は、第1のLEDチップ116aの上面を露出させ、それ以外の部分を埋め込むように設けられる。このような第3の絶縁層136は、有機樹脂材料で形成される。有機樹脂材料としては、例えば、ポリイミド、アクリル、エポキシ等の材料を用いることができる。第3の絶縁層136は、前述の材料の積層でもよい。また、第3の絶縁層136は、酸化シリコン等の無機絶縁材料で形成されてもよい。
【0018】
第3の絶縁層136は、第1のLEDチップ116aの上端面と面一になるように設けられることが好ましいが、第3の絶縁層の上面が第1のLEDチップ116aの上面より低い場合には、段差部(第3の絶縁層136と第1のLEDチップ116aの境界部)で、第3の絶縁層136が傾斜面を形成するように第1のLEDチップ116aにむけてせり上がるように設けられることが好ましい。第2の電極118は、第1のLEDチップ116aの上面から第3の絶縁層136の上面にかけて連続するように設けられる。第2の電極118は、画素106の略全面(ひいては表示部104の略全面)に広がって設けられるが、第3の絶縁層136が前述のような構造を有することで、第1のLEDチップ116aの端部で段切れし(別言すれば、クラックが入り)、電気的な接続が損なわれる(別言すれば、導通不良となる)ことを防止することができる。
【0019】
第2の電極118の上面には、第1の反射制御層120が設けられる。第1の反射制御層120は、第1のLEDチップ116aと重なる領域に第1の開口部124aが設けられる。第1の反射制御層120は、第2の電極118の側の第1の面と、第1の面と反対側(第2の電極118の側とは反対側)の第2の面とを有する。第1の反射制御層120は、第2の面側の反射率に対し第1の面側の反射率が高い、という特性を有する。また、第1の反射制御層120は、第1の面側のシート抵抗が第2の面側のシート抵抗よりも低い、という特性を有する。第1の反射制御層120のこのような特性は、光学的特性及び電気的特性の異なる複数の膜を積層することにより実現することができる。第1の反射制御層120は、例えば、第2の電極118の側から、第1の層121、第2の層122、第3の層123が積層された構造を有する。
【0020】
図4は、第1の反射制御層120及び第2の電極118の光学的特性を説明する模式図である。第1の反射制御層120は、第2の電極118上に、第1の層121a、第2の層122、第3の層123がこの順で積層された構造を有する。この積層構造において、第1の反射制御層120は、第2の電極118の側から第1の層121に入射した光(I)に対する反射率がRであり、第3の層123に入射した光(I)の反射率がRであり、第2の電極118に入射した光(I)の反射率がRであるとする。入射光(I)の強度を一定とした場合、第1の反射制御層120は、第1の面側の反射率Rが第2の面側の反射率R及び第2の電極118の反射率Rより大きく、第2の面側の反射率Rが第2の電極118の反射率Rよりも小さい、という特性を有する。
【0021】
第1の反射制御層120において、第1の層121は金属材料で形成される。例えば、第1の層121は、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)等の金属材料を用いて形成される。第2の層122は、金属材料又は半導体材料を用いて形成される。例えば、第2の層122は、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)から選ばれた金属材料又は合金材料で形成される。また、第2の層122は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等の半導体材料を用いて形成される。第3の層123は、屈折率が1.7から2.0の材料を用いて形成される。第3の層123は、金属酸化物で形成することができ、例えば、ITO(酸化インジウム錫)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)、酸化マグネシウム(MgO)等の材料で形成することができる。また、第3の層123は、窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の絶縁材料で形成することができる。
【0022】
第1の反射制御層120は、第1の層121、第2の層122、及び第3の層123を上記のような材料で形成することにより、第1の面側のシート抵抗が第2の面側のシート抵抗よりも低くすることができる。アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)等の金属材料で形成される第1の層121は、第2の電極118に接して設けられる。第1の反射制御層120は、第1の開口部124を除き、第2の電極118と重なるように設けられる。このような構造により、第2の電極118のシート抵抗を実質的に低下させることができる。また、第1の層121を形成するアルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)等の金属材料は熱伝導性に優れるため、これを第2の電極118と接して設けることで、LEDチップの発熱を放散させることができる。それによりLEDチップの温度上昇に伴う光量の低下を防止することができる。
【0023】
光学的特性から、第3の層123は、100nm以下、好ましくは40nmから60nm、例えば50nmの厚さで形成されることが好ましい。第2の層122の上に、このような膜厚の第3の層123を形成することで、光の干渉効果により反射光を減衰させることができる。特に、第3の層123を40nmから60nmの厚さで形成することで、視感度が比較的高いとされる500nmから570nmの波長の反射率を低減させることができる。
【0024】
このように、本実施形態に係る第1の反射制御層120は、第2の面側(すなわち、表示装置100における表示画面の視認側)の外光反射率を低減することができる。外光反射率の低減は、第2の層122及び第3の層123の積層構造による光学的な干渉効果によって得ることができる。そのような意味で、第2の層122及び第3の層123を黒化層と呼ぶこともできる。
【0025】
図5は、第1のLEDチップ116aが発光した状態を模式的に示す。第1のLEDチップ116aは、活性層で発光した光が指向性なく周囲に放射される。第1の反射制御層120に設けられる第1の開口部124aの開口端部を、第1のLEDチップ116aの端部より外側に位置するように設けることで(別言すれば、第1の開口部124aの口径を第1のLEDチップ116aのサイズより大きくすることで)、活性層から斜め上方に放射された光を、第1の副画素107aの出射光とすることができる。また、活性層から浅い角度で放射された光(横方向に放射された光)を、第1の反射制御層120における第1の層121で反射させることで、迷光を抑制し、隣接する画素から出射される光と重なって混色することを防止することができる。
【0026】
一方、外光に対しては、第1の反射制御層120の第2の層122及び第3の層123の作用により、反射を低減することができる。これにより、表示部104の外光に対する反射を抑えることができ、表示画面の視認性を向上させることができる。
【0027】
なお、表示画面の外光反射を低減する目的であれば、例えば、黒色顔料を含む樹脂で形成された遮光層を設けることが考えられる。しかしながら、光を単に吸収するタイプの遮光層では、外光の反射を抑えることができるが、遮光層が外光を吸収して発熱することが問題となる。LEDチップのエネルギー変換効率は約30%程度とされており、残りの70%は熱となって発熱する。したがって、表示装置において、各画素のLEDチップを駆動して画像を表示する場合には一定の発熱がある。これに加えて、遮光層が発熱すると表示部の温度はさらに高温となるため、LEDチップの光量低下が問題となる。
【0028】
これに対し第1の反射制御層120は、外光を吸収するのではなく、光の干渉効果を利用して視覚的には黒色化するように作用するので、温度上昇の問題を解決することができる。さらに、第1の反射制御層120は、外光反射を抑制する層の裏側に熱伝導性の優れた層を設けることで熱を放散することができる。本実施形態に係る表示装置100は、このような第1の反射制御層120を設けることで、発熱の問題を解決し、信頼性を向上させることができる。
【0029】
再び図3を参照すると、第2の電極118は、第2の配線134と電気的に接続された構造を有する。第2の電極118は、第3の絶縁層136に設けられたコンタクトホール138を介して第2の配線134と電気的に接続される。第2の電極118は、複数の副画素に共通する電極であり、一定の電圧が印加される。第2の電極118は、ITO、IZO等の透明導電膜で形成されるため、抵抗損失による電圧降下が問題となり得るが、表示部104に第2の配線を配設すると共に、画素106毎に(又は数個の画素ごとに)第2の配線134と接続する構造を設けることで抵抗損失の問題を解消することができる。
【0030】
図6は、第1のLEDチップ116a及びコンタクトホール138が設けられた構造において、LEDチップから放射された光の内、横方向の成分が第3の絶縁層内の多重反射により副画素の出射光となる態様を示す。第1の反射制御層120を構成する第1の層121は、反射率の高いアルミニウム(Al)、銀(Ag)等で形成される金属膜であり、第2の電極118の表面に接して形成される。第1の層121は、コンタクトホール138の孔の部分にも形成されるため、高反射領域が第3の絶縁層136を貫通するように形成される。また、第1の電極114、第2の電極118も金属材料で形成される。
【0031】
このような構造において、第1のLEDチップ116aから放射された光の内、浅い角度で横方向に放射された成分は、一部が第2の電極118と第1の層121との間で多重反射して伝搬し、コンタクトホール138の部分で反射して、再び第2の電極118と第1の層121との間で多重反射して伝搬し、その内の一部が第1の開口部124aから放射される。このように、第1の反射制御層120及び第2の電極118によって光の導波構造を形成することで、LEDチップから放射される光の内、本来であれば出射光として取り出すことの出来ない光を取り出すことができ、光の利用効率を向上させることができる。
【0032】
なお、図7に示すように、第1の反射制御層120は、第1の層121が省略されてもよい。第1の反射制御層120の内、第1の層121を省略することで光の利用効率が若干低減するが、画素106における外光の反射を抑制することができる。また、第2の層122は金属材料で形成されるため、LEDチップの発熱を放散することができる。
【0033】
図8は、第1の電極114aに第2の反射制御層140がさらに設けられた構造を示す。第2の反射制御層140は、第1の電極114の上面に設けられる。また、第2の反射制御層140は、図8に示すように、第1の電極114の上面及び側面に沿って設けられてもよい。
【0034】
第2の反射制御層140は、第1の電極114側から第4の層141、第5の層142を含む。ここで、第4の層141は第2の層122に対応し、第5の層142は第3の層123に対応する。すなわち、第4の層141は、金属材料又は半導体材料を用いて形成され、例えば、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)から選ばれた金属材料又は合金材料で形成される。また、第4の層141は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等の半導体材料を用いて形成される。第5の層142は、屈折率が1.7から2.0の材料を用いて形成され、例えば、ITO(酸化インジウム錫)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)、酸化マグネシウム(MgO)等で形成される。また、第5の層142は、窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の絶縁材料で形成される。
【0035】
光学的特性から、第5の層142は、100nm以下、好ましくは40nmから60nm、例えば50nmの厚さで形成されることが好ましい。第4の層141の上に、このような膜厚の第5の層142を形成することで、光の干渉効果により反射光を減衰させることができる。特に、第5の層142を40nmから60nmの厚さで形成することで、視感度が比較的高いとされる500nmから570nmの波長の反射率を低減させることができる。
【0036】
第2の反射制御層140は、第1の電極114aの上面を露出させる第2の開口部144を有する。第2の開口部144は、第1のLEDチップ116aより大きな口径を有している。第1のLEDチップ116aは、第2の開口部144の内側に配置されることで、第1の電極114aとの電気的に接続されている。
【0037】
このような構造を有する第2の反射制御層140は、外光の反射を抑えることができる。図8に示すように、第1の開口部124aの開口端部を第1のLEDチップ116aの端部より外側に配置すると、第1の電極114aが第1の開口部124に露出する。別言すれば、第1の開口部124aの口径を大きくすることで第1のLEDチップ116aの放射光をより多く取り出せることになるが、第1の電極114aが第1の開口部124に露出する面積も大きくなる。第1の電極114aは金属材料で形成されるため、第1の電極114aから露出する部分においても外光反射が問題となる。この場合において、第1の電極114aの上面に第2の反射制御層140を設けることで、外光反射を抑制することができる。
【0038】
また、外光反射のみが問題となる場合は、図8において、第1の反射制御層120の代わりに、LEDチップ116aの周辺の空隙に第2の反射制御層140のみを設ける構成としてもよい。
【0039】
また、図9に示すように、第1の電極114aと、第2の電極134との間に空隙を設けておき、反射抑制層を当該空隙部に延在するように構成すると、LEDチップ116aからの迷光の一部を、基板の裏面側に取り出すことができ、両面表示型のディスプレイとして構成することができる。さらに、配線やLEDチップ116aのサイズを縮小し、空隙部の割合を極力大きくすると共に、迷光反射用の反射制御層がLEDチップ116aの近接周囲のみに限定されるように配置することで、透明ディスプレイとして構成することができる。この場合、LEDチップ116aの近接周囲に限定配置される反射制御層は、第2の電極134と離間していても良い。
【0040】
以上、本実施形態では、第1の副画素107aの構造を中心に説明したが、第2の副画素107b及び第3の副画素107cも同様の構成を有する。第1の反射制御層120は、第1の開口部124の領域を除いて画素106を覆い、ひいては表示部104の全体に亘って設けられる。本実施形態に係る表示装置100は、第1の反射制御層120を有することで表示画面の外光反射を低減することができる。表示画面の外光反射を低減するには、円偏光板の使用も考えられるが、LEDチップから放射される光量が半減してしまう。これに対し、本実施形態に係る表示装置100は、外光反射を抑えつつ、LEDチップ116からの光量を減衰させることなく有効利用することができる。むしろ、第3の絶縁層136に導波する光の一部を出射光に変えることができ、光の利用効率を高めることができる。さらに、第1の電極114に第2の反射制御層140を設けることで、第1の電極114による外光反射も低減することができる。また、第1の反射制御層120は熱伝導性に優れるため、LEDチップの発熱による輝度低下を抑制することができる。
【0041】
本発明の一実施形態として上述した表示装置の画素構造を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る画素の構造も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の技術的範囲に属する。
【0042】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものなる。例えば、上述の本発明の一実施形態において、当御者が適宜、追加、削除、変更を行ったもの、及び工程の追加、省略、並びに条件の変更を行ったものも、本発明の要旨から逸脱するものでない限り、本発明の技術的範囲に属する。
【0043】
また、本発明の一実施形態で述べた態様によりもたらされる作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、及び当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0044】
100・・・表示装置、102・・・基板、104・・・表示部、106・・・画素、107・・・副画素、108・・・駆動回路、109・・・走査線駆動回路、110・・・データ線駆動回路、112・・・端子部、114・・・第1の電極、116・・・LEDチップ、118・・・第2の電極、120・・・第1の反射制御層、121・・・第1の層、122・・・第2の層、123・・・第3の層、124・・・第1の開口部、126・・・トランジスタ、128・・・第1の絶縁層、130・・・第1の配線、132・・・第2の絶縁層、134・・・第2の配線、136・・・第3の絶縁層、138・・・コンタクトホール、140・・・第2の反射制御層、141・・・第4の層、142・・・第5の層、144・・・第2の開口部、
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9