(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】多数個取り配線基板およびその製造方法、並びに配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240229BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H05K1/02 G
H05K1/02 J
H05K3/00 X
(21)【出願番号】P 2020057139
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-06-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】水野 秀哉
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122695(JP,A)
【文献】特開2019-192720(JP,A)
【文献】特開2007-258318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁基板を積層して形成された多数個取り配線基板の製造方法であって、
前記複数の絶縁基板を積層して積層体を形成する積層工程を含み、
前記積層体は、
複数の基板要素部が並んで配置されている基板領域と、
該基板領域の外側に位置する外周領域と、
前記基板要素部の表面に形成されている要素導体部と、
前記要素導体部と接続され、前記積層体内部に配置されているめっき用配線と、
前記外周領域に配置され、前記めっき用配線と接続される複数のめっき用端子と、
前記外周領域の外面に形成され、前記複数のめっき用端子のうち、少なくとも2つのめっき用端子を電気的に接続する導体パターンと
を有しており、
前記導体パターンは、前記めっき用配線の表面のうちの前記絶縁基板の最上層が設けられていない部分に形成されているとともに、
前記導体パターン及び前記複数のめっき用端子は、前記外周領域を切断するための切断予定領域を避けて形成されており、
前記導体パターンが形成された前記積層体を焼成する焼成工程と、
前記焼成工程の後、前記導体パターンで電気的に接続された前記めっき用端子への通電によって前記要素導体部の表面にめっき層を形成する電解めっき工程と
をさらに含む、多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記めっき用配線は、それぞれが電気的に独立した第1のめっき用配線および第2のめっき用配線を含み、
前記めっき用端子は、前記第1のめっき用配線に接続されている複数の第1のめっき用端子と、前記第2のめっき用配線に接続されている複数の第2のめっき用端子とを含み、
前記導体パターンは、少なくとも2つの前記第1のめっき用端子を電気的に接続する第1導体パターンと、少なくとも2つの前記第2のめっき用端子を電気的に接続する第2導体パターンと、を含み、
前記電解めっき工程では、前記第1のめっき用配線および前記第2のめっき用配線を選択的に使用して、少なくとも2回の電解めっき処理を行う、
請求項1に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記導体パターンは、一つの前記切断予定領域と、該切断予定領域に対向するもう一つの切断予定領域との間に形成される、
請求項1または2に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の製造方法によって多数個取り配線基板を製造した後に、前記多数個取り配線基板を個々の前記基板要素部に切断する切断工程を含む、配線基板の製造方法。
【請求項5】
複数の絶縁基板が積層された積層体構造を有し、
複数の基板要素部が並んで配置されている基板領域と、該基板領域の外側に位置する外周領域とを有する多数個取り配線基板であって、
前記基板要素部の表面に形成されている要素導体部と、
前記要素導体部と接続され、前記積層体構造の内部に配置されているめっき用配線と、
前記外周領域に配置され、前記めっき用配線と接続される複数のめっき用端子と、
前記外周領域の外面において、前記複数のめっき用端子のうち、少なくとも2つのめっき用端子を電気的に接続する導体パターンであって、前記外周領域を切断するための切断予定領域を避けて配置されている
とともに、前記めっき用配線の表面のうちの前記絶縁基板の最上層が設けられていない部分に形成されている導体パターンと、
前記要素導体部および前記導体パターンの表面に設けられているめっき層と
を備えている、多数個取り配線基板。
【請求項6】
前記めっき用配線は、電気的に独立した第1のめっき用配線および第2のめっき用配線を含み、
前記めっき用端子は、前記第1のめっき用配線に接続されている複数の第1のめっき用端子と、前記第2のめっき用配線に接続されている複数の第2のめっき用端子とを含み、
前記導体パターンは、少なくとも2つの前記第1のめっき用端子を電気的に接続する第1導体パターンと、少なくとも2つの前記第2のめっき用端子を電気的に接続する第2導体パターンと、を含む
請求項5に記載の多数個取り配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数個取り配線基板、およびその製造方法に関する。また、本発明は、多数個取り配線基板を分割して得られる配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基板要素部を含む多数個取り配線基板は、個片の配線基板となる基板領域(製品エリアとも呼ばれる)と、この基板領域の外側に位置する外周領域とを有している。多数個取り配線基板を個々の基板領域に切断することで、個片化された配線基板が得られる。
【0003】
多数個取り配線基板は、導体パターンを印刷形成したセラミックシートを複数積層して板状積層体とし、この板状積層体を焼結させることによって製造される。その後、板状積層体の表面に形成されている導体パターンには、電解めっきによってめっき層が形成される。
【0004】
このようなめっき層を形成するために、板状積層体の外周領域には、めっき用端子が形成されている。めっき用端子は、基板領域の導体パターンと接続されるめっき用配線(内層配線とも呼ばれる)と電気的に接続されている。
【0005】
このような構成を有する多数個取り配線基板において、電解めっきによって形成されるめっき層の厚みのバラツキを低減させるために、外周領域において複数のめっき用端子と接続された金属層を設けることが提案されている。例えば、特許文献1には、配線基板領域の周囲に設けられた周囲領域に、表面導体に電気的に接続されている複数のめっき用配線と、複数のめっき用配線に電気的に接続されためっき用端子とを備えている多数個取り配線基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている多数個取り配線基板では、めっき用配線3(具体的には、第1のめっき用配線31および第2のめっき用配線32)は、配線基板領域の外周を取り囲むように形成されている。このような構成の多数個取り配線基板に対して電解めっきを行うと、めっき用配線の表面にめっき層が形成されるため、配線基板領域の外周を枠状に取り囲むようにめっき層が形成される。そのため、後に行われる各基板領域を個片化するための切断工程では、めっき層が形成されている領域も切断することになる。これにより、切断工程時に使用されるダイシングブレードなどの工具に負荷がかかり、工具が損傷する可能性がある。
【0008】
そこで、本発明では、電解めっき工程においてめっき層のバラツキを低減することができ、かつ、各配線基板に個片化する際の切断工程を円滑に行うことのできる、多数個取り配線基板および配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面は、複数の絶縁基板を積層して形成された多数個取り配線基板の製造方法に関する。この製造方法は、前記複数の絶縁基板を積層して積層体を形成する積層工程を含む。ここで、前記積層体は、複数の基板要素部が並んで配置されている基板領域と、該基板領域の外側に位置する外周領域と、前記基板要素部の表面に形成されている要素導体部と、前記要素導体部と接続され、前記積層体内部に配置されているめっき用配線と、前記外周領域に配置され、前記めっき用配線と接続される複数のめっき用端子と、前記外周領域の外面に形成され、前記複数のめっき用端子のうち、少なくとも2つのめっき用端子を電気的に接続する導体パターンとを有している。前記導体パターン及び前記複数のめっき用端子は、前記外周領域を切断するための切断予定領域を避けて形成されている。また、この製造方法は、前記導体パターンが形成された前記積層体を焼成する焼成工程と、前記焼成工程の後、前記導体パターンで電気的に接続された前記めっき用端子への通電によって前記要素導体部の表面にめっき層を形成する電解めっき工程とをさらに含む。
【0010】
上記の製造方法によれば、外周領域の外面に導体パターンが設けられていることで、電解めっき工程において、導体パターンを介して、基板領域内に延びるめっき用配線に少なくとも2つのめっき用端子からの電源を供給することができる。これにより、万一、電解めっき工程において、接触不良などにより十分な電源を供給することのできないめっき用端子があった場合であっても、別のめっき用端子から供給された電源を、導体パターンを通じて導通抵抗の上昇を抑えながら基板領域内の要素導体部まで供給することができる。したがって、電解めっきによって形成されるめっき層の厚みのバラツキを低減させることができる。
【0011】
また、上記の製造方法によれば、導体パターンおよびめっき用端子が外周領域を切断するための切断予定領域を避けて形成されていることで、外周領域を切断する際の切断工具に与えるダメージを低減しつつ、基板の裁断を円滑に行うことができる。
【0012】
上記の本発明の一局面にかかる多数個取り配線基板の製造方法において、前記めっき用配線は、それぞれが電気的に独立した第1のめっき用配線および第2のめっき用配線を含み、前記めっき用端子は、前記第1のめっき用配線に接続されている複数の第1のめっき用端子と、前記第2のめっき用配線に接続されている複数の第2のめっき用端子とを含み、前記導体パターンは、少なくとも2つの前記第1のめっき用端子を電気的に接続する第1導体パターンと、少なくとも2つの前記第2のめっき用端子を電気的に接続する第2導体パターンと、を含んでもよい。そして、前記電解めっき工程では、前記第1のめっき用配線および前記第2のめっき用配線を選択的に使用して、少なくとも2回の電解めっき処理を行ってもよい。
【0013】
上記の製造方法によれば、少なくとも2回の電解めっき処理を行うことで、要素導体部の表面に、複数種類のめっき層を形成することができる。また、それぞれの電解めっき処理において用いられる各めっき用端子には、少なくとも2つのめっき用端子を電気的に接続する導体パターンが設けられている。そのため、各電解めっき処理において形成されるめっき層の厚みのバラツキを低減させることができる。
【0014】
上記の本発明の一局面にかかる多数個取り配線基板の製造方法において、前記導体パターンは、一つの前記切断予定領域と、該切断予定領域に対向するもう一つの切断予定領域との間に形成されてもよい。
【0015】
また、本発明のもう一つの局面は、配線基板の製造方法に関する。この配線基板の製造方法は、上記の本発明の一局面にかかる多数個取り配線基板の製造方法によって多数個取り配線基板を製造した後に、前記多数個取り配線基板を個々の前記基板要素部に切断する切断工程を含む。これにより、多数個取り配線基板から個片化された配線基板を得ることができる。
【0016】
また、本発明のもう一つの局面にかかる多数個取り配線基板は、複数の絶縁基板が積層された積層体構造を有し、複数の基板要素部が並んで配置されている基板領域と、該基板領域の外側に位置する外周領域とを有する。この多数個取り配線基板は、前記基板要素部の表面に形成されている要素導体部と、前記要素導体部と接続され、前記積層体構造の内部に配置されているめっき用配線と、前記外周領域に配置され、前記めっき用配線と接続される複数のめっき用端子と、前記外周領域の外面において、前記複数のめっき用端子のうち、少なくとも2つのめっき用端子を電気的に接続する導体パターンであって、前記外周領域を切断するための切断予定領域を避けて配置されている導体パターンと、前記要素導体部および前記導体パターンの表面に設けられているめっき層とを備えている。
【0017】
上記の構成によれば、電解めっきによって形成されるめっき層の厚みのバラツキが低減された多数個取り配線基板を得ることができる。また、上記の構成によれば、多数個取り配線基板から配線基板を得るときの切断工程を円滑に行うことができる。
【0018】
上記の本発明のもう一つの局面にかかる多数個取り配線基板において、前記めっき用配線は、電気的に独立した第1のめっき用配線および第2のめっき用配線を含み、前記めっき用端子は、前記第1のめっき用配線に接続されている複数の第1のめっき用端子と、前記第2のめっき用配線に接続されている複数の第2のめっき用端子とを含み、前記導体パターンは、少なくとも2つの前記第1のめっき用端子を電気的に接続する第1導体パターンと、少なくとも2つの前記第2のめっき用端子を電気的に接続する第2導体パターンと、を含んでもよい。
【0019】
上記の構成によれば、要素導体部の表面に複数種類のめっき層を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一局面にかかる多数個取り配線基板の製造方法によれば、電解めっき工程においてめっき層のバラツキを低減することができ、かつ、各配線基板に個片化する際の切断工程を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態にかかる多数個取り配線基板の構成を示す平面模式図である。
【
図2】
図1に示す多数個取り配線基板の内部構成を示す断面模式図である。
【
図3】第1の実施形態の変形例にかかる多数個取り配線基板の内部構成を示す断面模式図である。
【
図4】第2の実施形態にかかる多数個取り配線基板の構成を示す平面模式図である。この図では、2種類のめっき用配線のうちの一方のめっき用配線の構成を示している。
【
図5】第2の実施形態にかかる多数個取り配線基板において、2種類のめっき用配線のうちの他方のめっき用配線の構成を示す平面模式図である。
【
図6】他の実施形態にかかる多数個取り配線基板の構成を示す平面模式図である。
【
図7】他の実施形態にかかる多数個取り配線基板の構成を示す平面模式図である。
【
図8】他の実施形態にかかる多数個取り配線基板の構成を示す平面模式図である。
【
図9】他の実施形態にかかる多数個取り配線基板の構成を示す平面模式図である。
【
図10】他の実施形態にかかる多数個取り配線基板の構成を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0023】
〔第1の実施形態〕
本実施形態では、多数個取り配線基板1を例に挙げて説明する。多数個取り配線基板1を個片化して得られる配線基板50は、電子機器などの配線基板、回路基板などとして利用される。
【0024】
(多数個取り配線の構成)
図1には、多数個取り配線基板1を示す。
図1では、多数個取り配線基板1の上面の構成を模式的に示す。また、
図1では、多数個取り配線基板1の内部に設けられている内層配線(例えば、めっき用配線22)を破線で示している。
図2には、多数個取り配線基板1の内部構成を示す。
図2は、
図1に示す多数個取り配線基板1におけるめっき用配線22の形成位置における基板の断面構成を示す図である。
【0025】
多数個取り配線基板1は、略平板状の外形を有している。多数個取り配線基板1は、複数の基板要素部11を含む製品エリア(基板領域)2と、この製品エリア2の外側に位置する外周エリア(外周領域)3とを有している。
【0026】
製品エリア2は、基板の中央部分を構成している。製品エリア2には、分割されて個々の配線基板50となる複数の基板要素部11が縦横に並んで配置されている。各基板要素部11には、導電性を有する各種金属層などからなる導電パターンによって内部回路素子が形成されている。
図1および
図2では、基板内部に形成されている導電パターンの図示は省略している。
【0027】
また、各基板要素部11の表面には、外部との接続端子(接合部)などとして機能する表面金属層(要素導体部)12が形成されている。表面金属層12の表面は、めっき層24a(
図2参照)で被覆されている。
【0028】
外周エリア3は、基板の外周部分を構成している。外周エリア3は、製品エリア2を取り囲むように設けられている。外周エリア3は配線基板50の要素とはならないため、外周エリア3には、内部回路素子は形成されていない。外周エリア3には、めっき用端子21、および、少なくとも2つのめっき用端子を電気的に接続する導体パターン23などが形成されている。
【0029】
基板要素部11は、長方形、正方形などの矩形状を有しており、その一辺の径は約5mm程度となっている。製品エリア2において、隣接する各基板要素部11の間は、切断予定領域となっている。この切断予定領域には、基板要素部11を個々に区画するために縦横に延びるスリット、切り込み、溝などが形成されていてもよい。切断予定領域は、外周エリア3と最外周の基板要素部11との間にも形成されている。多数個取り配線基板1が製造されると、その後、多数個取り配線基板1は各切断予定領域において切断され、個々の基板要素部11に分割される。これにより、個々の配線基板50が得られる。
【0030】
図1に示す例では、各切断予定領域を、切断予定線C1~C4として破線で示している。多数個取り配線基板1を配線基板50に個片化する際には、先ず、切断予定線C1及び切断予定線C2において多数個取り配線基板1を切断する。切断予定線C1及び切断予定線C2は、多数個取り配線基板1の一端辺から対向する他端辺にまで延びている。これにより、多数個取り配線基板1の外周エリア3が切り取られる。その後、切断予定線C3及び切断予定線C4において多数個取り配線基板1を切断する。これにより、製品エリア2内の各基板要素部11が個々に分割され、配線基板50が得られる。
【0031】
多数個取り配線基板1は、複数のセラミックシート(絶縁基板)31(例えば、31aおよび31b)を積層して形成されている(
図2参照)。セラミックシート31は、例えばアルミナ(Al
2O
3)を主成分とする高温焼成セラミックで形成することができる。また、別の態様では、セラミックシート31は、ガラス-セラミックなどの中温焼成セラミック(MTCC)で形成されてもよい。
【0032】
図2には、2枚のセラミックシート31(具体的には、第1のセラミックシート31aおよび第2のセラミックシート31b)を有する多数個取り配線基板1が例示されているが、セラミックシートの枚数はこれに限定されない。セラミックシート31の枚数は、最終的に得られる配線基板50の用途、仕様などに応じて適宜決められる。
【0033】
複数のセラミックシート31の間には、導電パターンとなる金属層(図示せず)が形成されていてもよい。金属層は、銅(Cu)、タングステン(W)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、またはマンガン(Mn)などの金属材料、あるいはこれらの金属材料を主成分とする合金材料によって形成することができる。金属層は、最終的に得られる配線基板50に所望される回路構成に応じて任意の形状(パターン)となるように各セラミックシート31上に印刷される。
【0034】
多数個取り配線基板1の表面(露出した部分)には、表面金属層12が形成されている。
図2に示す例では、最上層の第2のセラミックシート31bが形成されていない部分(すなわち、めっき用配線22が露出した箇所)に表面金属層12が形成されている。すなわち、
図2に示す例では、メッキ用配線22の表面の一部(セラミックシート31bからの露出面を含む一部)が表面金属層12となっている。表面金属層12は、多数個取り配線基板1の内部に形成されている金属層と同様の材料で形成することができる。
【0035】
表面金属層12の表面には、めっき層24aが形成されている。めっき層24aは、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、および銀(Ag)などで形成された表面金属層12の表面に、ニッケル(Ni)めっきおよび金(Au)めっきなどを施すことによって形成される。めっき層24aは、例えば、従来公知の電解めっき法によって形成することができる。
【0036】
めっき層24aで被覆された表面金属層12は、製品エリア2内の各基板要素部11に形成されている。表面金属層12は、ロウ材、半田などの接合材を介して他の部品と接続される。すなわち、表面金属層12は、他の部品との接合部としての役割を果たす。
【0037】
また、多数個取り配線基板1の内部には、めっき用配線22が形成されている。めっき用配線22は、所定の形状(パターン)となるように所定のセラミックシート31上に印刷される。
図2に示す例では、第1のセラミックシート31aと第2のセラミックシート31bとの間にめっき用配線22が形成されている。
【0038】
めっき用配線22は、多数個取り配線基板1の内部で表面金属層12と接続されている。
図1に示す多数個取り配線基板1の場合、めっき用配線22は、縦横に延びる個々の表面金属層12に沿って縦横に延びている。また、めっき用配線22は、多数個取り配線基板1の外周エリア3にも延びている。外周エリア3において、めっき用配線22は、めっき用端子21と接続されている。これにより、電解めっき処理時にめっき用電源から供給される電力を、めっき用配線22を介して表面金属層12まで供給することができる。
【0039】
めっき用配線22は、多数個取り配線基板1の内部に形成されている金属層と同様の材料で形成することができる。例えば、めっき用配線22は、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、および銀(Ag)などで形成することができる。
【0040】
めっき用端子21は、外周エリア3に形成されている。本実施形態では、略長方形の平板形状を有する多数個取り配線基板1の長手方向の各端辺(対向する2つの端辺)に、複数のめっき用端子21が互いに略等間隔に並んで配置されている。めっき用端子21は、めっき用電源に電気的に接続される。また、めっき用端子21は、めっき用配線22と接続されている。
【0041】
導体パターン23は、外周エリア3の外面に形成されている。ここで、外周エリア3の外面とは、外周エリア3を形成している多数個取り配線基板1の表面、裏面、および側端面の少なくとも何れかのことを意味する。導体パターン23は、複数のめっき用端子21のうち、少なくとも2つのめっき用端子21を電気的に接続するように設けられている。
【0042】
図1に示す例では、導体パターン23は、多数個取り配線基板1の一方の端辺(例えば、左側の端辺)、および、この端辺に対向する他方の端辺(例えば、右側の端辺)にそれぞれ設けられている。各導体パターン23は、多数個取り配線基板1の端辺に設けられている4個のめっき用端子21の形成位置に跨るように、多数個取り配線基板1の端部に形成されている。例えば、
図1に示す多数個取り配線基板1の場合、左側の端辺および右側の端辺に、各端辺に沿って導体パターン23が延びている。
【0043】
また、導体パターン23は、外周エリア3を切断するための切断予定領域(
図1に示す例では、切断予定線C1及び切断予定線C2)を避けて配置されている。例えば、
図1に示す多数個取り配線基板1の場合、各導体パターン23は、対向する2つの切断予定線C2およびC2の間に形成されている。
【0044】
これにより、切断工程において、先ず多数個取り配線基板1の外周エリア3を切り落とすために、切断予定線C1およびC2で多数個取り配線基板1を切断する場合、ダイシングブレードなどの工具が導体パターン23に当たることを避けることができる。そして、その後、切断予定線C3およびC4で個々の配線基板50に個片化する際には、外周エリア3に存在する導体パターン23は既に切り落とされているため、ダイシングブレードなどの工具が導体パターン23に当たることを避けることができる。したがって、切断工程時の工具の損傷を抑えることができる。
【0045】
また、
図2に示す例では、導体パターン23は、表面金属層12と同じ層(すなわち、最上層の第2のセラミックシート31bが形成されていない部分)に形成されている。すなわち、
図2に示す例では、メッキ用配線22の表面の一部(セラミックシート31bからの露出面を含む一部)が導体パターン23となっている。導体パターン23は、多数個取り配線基板1の製品エリア2に形成されている表面金属層12などの金属層と同様の材料で形成することができる。
【0046】
導体パターン23は、少なくとも2つのめっき用端子21と電気的に接続されている。そのため、電解めっき処理時にめっき用電源から供給される電力は、めっき用端子21を介して導体パターン23にも供給される。これにより、導体パターン23の表面にも、めっき層24bが形成される(
図2参照)。
【0047】
図3には、本実施形態の変形例にかかる多数個取り配線基板1Aの断面構成を示す。
図3に示す多数個取り配線基板1Aでは、第2のセラミックシート31bの上面に導体パターン23が形成されている。そして、第2のセラミックシート31bと同じ層には、導体パターン23とめっき用配線22とを電気的に接続する導体ビア25が形成されている。
【0048】
図3に示す多数個取り配線基板1Aにおいては、電解めっき処理時にめっき用電源から供給される電力は、めっき用端子21およびめっき用配線22を介して導体パターン23にも供給される。これにより、導体パターン23の表面にも、めっき層24bが形成される。
【0049】
このような導体パターン23が設けられていることで、導体パターン23によって各めっき用端子21が電気的に接続される。そして、導体パターン23を介して、製品エリア2内に張り巡らされためっき用配線22に、各めっき用端子21からの電源を供給することができる。これにより、万一、電源を供給するためのめっき治具との接触が悪いめっき用端子21があった場合であっても、別のめっき用端子21から供給された電源を、導体パターン23を通じて導通抵抗の上昇を抑えながら製品エリア2内の表面金属層12まで供給することができる。したがって、電解めっきによって形成されるめっき層の厚みのバラツキを低減させることができる。
【0050】
また、導体パターン23が多数個取り配線基板1の外面に露出するように設けられていることで、電解めっき時に、導体パターン23の表面にもめっき層が形成される。このため、基板の内層に設けられているめっき用配線22と比べて導体パターン23の導通抵抗を小さくすることができる。これにより、めっき用電源から供給される電源を、各基板要素部11の表面金属層12により効率的に供給することができるため、各表面金属層12に形成されるめっき層の厚みバラツキの低減効果を向上させることができる。
【0051】
(多数個取り配線基板の製造方法)
続いて多数個取り配線基板1の製造方法を説明する。多数個取り配線基板1の製造方法は、少なくとも以下の各工程を含む。
(1)積層工程
(2)焼成工程
(3)電解めっき工程
【0052】
上記(1)の積層工程では、複数のセラミックシート(絶縁基板)31を積層して積層体を形成する。例えば、
図2に示すような多数個取り配線基板1を製造する場合には、先ず、第1のセラミックシート31aおよび第2のセラミックシート31bを積層する。
【0053】
この(1)積層工程に先立って、各セラミックシートを形成する。セラミックシートは、例えば、セラミック成分の粉末を主成分とする原料粉末を適当な有機溶剤およびバインダとともに混練してスラリーを作製し、このスラリーをドクターブレード法やリップコータ法などの成形方法でシート状に成形することによって得られる。成形されたシートは、所定形状および所定寸法に裁断される。
【0054】
その後、各セラミックシート31上に、所定の導電パターンを形成する。導電パターンの形成は、スクリーン印刷法などの公知の印刷方法を用いて行われる。これにより、セラミックシート31の表面の所望の箇所に、回路素子などを構成する導電パターンが印刷形成される。
【0055】
また、各セラミックシート31の少なくとも一つには、めっき用配線22となる導電パターンを形成する。めっき用配線22用の導電パターンの形成は、回路素子用の導電パターンと同様に、スクリーン印刷法などの公知の印刷方法を用いて行われる。めっき用配線22用の導電パターンの形成は、回路素子用の導電パターンの形成と同時に行ってもよい。
【0056】
また、各セラミックシート31のうち、最上層のセラミックシート31(
図2に示す例では、第2のセラミックシート31b)上には、表面金属層(要素導体部)12、および導体パターン23などとなる導電パターンを形成する。これらの導電パターンの形成は、回路素子用の導電パターンなどと同様に、スクリーン印刷法などの公知の印刷方法を用いて行われる。
図2に示す例では、表面金属層12および導体パターン23は、最上層の第2のセラミックシート31bの下層(例えば、めっき用配線22)の露出箇所(露出面)で形成される。
【0057】
さらに、各セラミックシート31の少なくとも一つに、複数のめっき用端子21を形成する。めっき用端子21は、めっき用配線22用の導電パターンが形成されるセラミックシート31上に、めっき用配線22用の導電パターンに連続するように形成されることが好ましい。これにより、めっき用端子21とめっき用配線22との電気的な接続を容易に実現することができる。めっき用端子21は、例えば、セラミックシート31の端部に導電性材料を用いて形成することができる。
【0058】
めっき用端子21および導体パターン23は、セラミックシート31の外周エリア3に相当する領域に、外周エリア3の切断予定領域(例えば、切断予定線C1およびC2)を避けるようにして形成される。また、導体パターン23は、複数のめっき用端子21のうち少なくとも2つのめっき用端子21を電気的に接続するように形成される。例えば、導体パターン23は、各めっき用端子21と電気的に接続されるめっき用配線22を介して、各めっき用端子21と電気的に接続される。
【0059】
以上のようにして形成された各セラミックシート31は、所定の順序で積層され、圧着される。これにより、セラミックシートの積層体が得られる。この積層体は、複数の基板要素部11が縦横に並んで配置されている製品エリア(基板領域)2と、製品エリア2の外側に位置する外周エリア(外周領域)3とを有している。各基板要素部11の表面には、表面金属層(要素導体部)12が形成されている。また、積層体の内部には、表面金属層12へとつながるめっき用配線22が形成されている。積層体の外周エリア3には、複数のめっき用端子21と、複数のめっき用端子21を電気的に接続する導体パターン23とが形成されている。
【0060】
導体パターン23および複数のめっき用端子21は、外周エリア3を切断するための切断予定領域(例えば、切断予定線C1およびC2)を避けて形成されている。これにより、後述する配線基板50を得るための切断工程において、切断工具に与えるダメージを低減しつつ、基板の裁断を容易に行うことができる。
【0061】
セラミックシートの積層体が形成された後、上記(2)の焼成工程が行われ、積層体は焼成される。焼成工程については、従来公知のセラミックシート積層体の焼成工程が適用できる。
【0062】
その後、上記(3)の電解めっき工程が行われる。この電解めっき工程では、上記(2)の焼成工程によって焼結された積層体に対して電解めっき処理が施される。これにより、積層体の最上層のセラミックシート31(
図2に示す例では、第2のセラミックシート31b)上で露出している表面金属層12上にめっき層24aが形成される。また、この電解めっき工程では、外周エリア3に形成されている導体パターン23の表面にめっき層24bが形成される。ここでの電解めっき処理は、従来公知の方法を用いて実施することができる。
【0063】
以上のような工程によって、多数個取り配線基板1は製造される。
【0064】
さらに、多数個取り配線基板1から個々の配線基板50を製造する場合には、多数個取り配線基板1を個々の基板要素部11に切断する切断工程を行う。このとき、多数個取り配線基板1の表面の切断予定領域(例えば、切断予定線C1~C4)に分割溝が形成されていると、基板の裁断を容易かつ正確に行うことができる。これにより、配線基板50が得られる。
【0065】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる多数個取り配線基板1の製造方法は、積層工程と、焼成工程と、電解めっき工程とを含む。積層工程では、複数のセラミックシート(絶縁基板)を積層して積層体を形成する。この積層体は、製品エリア2と、製品エリア2の外側に位置する外周エリア3とを有する。製品エリア2の表面には、各基板要素部11内に表面金属層12が形成されている。また、積層体の内部には、各表面金属層12と接続されているめっき用配線22が形成されている。外周エリア3には、めっき用配線22と接続される複数のめっき用端子21が配置されている。外周エリア3の外面には、少なくとも2つのめっき用端子を電気的に接続する導体パターン23が形成されている。
【0066】
導体パターンが設けられていない配線基板では、複数のめっき用端子のそれぞれからめっき用配線に電子が供給される。このような構成において、万一めっき用端子の何れかにおいてめっき治具との接触不良が発生していると、そのめっき用端子からは十分な電子が供給されなくなったり、全く電子が供給されなくなったりする。これにより、積層体内部に延びているめっき用配線にも電子の供給が不十分となる。そして、接続不良のめっき用端子から主として電子が供給される基板要素部の表面金属層ではめっき層の形成が不十分となり、結果として各基板要素部におけるめっき層の厚みにバラツキが発生する。
【0067】
本実施形態にかかる製造方法では、外周エリア3の外面に導体パターン23が設けられていることで、電解めっき工程において、導体パターン23を介して、製品エリア2内に張り巡らされためっき用配線22に各めっき用端子21からの電源を供給することができる。これにより、万一、電源を供給するためのめっき治具との接触が悪いめっき用端子21があった場合であっても、別のめっき用端子21から供給された電源を、導体パターン23を通じて導通抵抗の上昇を抑えながら製品エリア2内の表面金属層12まで供給することができる。したがって、電解めっきによって形成されるめっき層の厚みのバラツキを低減させることができる。
【0068】
また、導体パターン23が多数個取り配線基板1の外面(露出面)に形成されていることで、電解めっき時に、導体パターン23の表面にもめっき層を形成することができる。これにより、基板の内層に設けられているめっき用配線22と比べて導体パターン23の導通抵抗を小さくすることができ、各基板要素部11の表面金属層12により効率的に電子を供給することができる。
【0069】
したがって、本実施形態にかかる製造方法によれば、めっき用端子から離れた位置にある表面金属層12にもめっき層の形成に十分な電子を供給することができる。そのため、めっき用端子の個数を減らしても、各表面金属層12に形成されるめっき層の厚みのバラツキを低減させることができる。したがって、本実施形態にかかる製造方法は、例えば、めっき用端子の配置範囲に制限のある多数個取り配線基板の製造に好適に適用できる。
【0070】
また、本実施形態にかかる製造方法では、導体パターン23およびめっき用端子21は、外周エリア3を切断するための切断予定領域(例えば、切断予定線C1およびC2)を避けて形成されている。これにより、配線基板50を得るための切断工程において、切断工具に与えるダメージを低減しつつ、基板の裁断を容易に行うことができる。
【0071】
〔第2の実施形態〕
第2実施形態では、多数個取り配線基板101を例に挙げて説明する。第2の実施形態にかかる多数個取り配線基板101は、めっき用配線の構成が第1の実施形態とは異なっている。以下では、第1の実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0072】
図4および
図5には、多数個取り配線基板101の上面の構成を模式的に示す。
図4では、多数個取り配線基板101の内部に設けられている内層配線のうち、第1のめっき用配線122aを破線で示している。
図5では、多数個取り配線基板101の内部に設けられている内層配線のうち、第2のめっき用配線122bを破線で示している。
【0073】
第1の実施形態と同様に、多数個取り配線基板101は、複数の基板要素部11を含む製品エリア(基板領域)2と、この製品エリア2の外側に位置する外周エリア(外周領域)3とを有している。各基板要素部11の表面には、外部との接続端子などとして機能する表面金属層(要素導体部)12が形成されている。表面金属層12の表面は、金属めっき層で被覆されている。なお、本実施形態にかかる多数個取り配線基板101では、表面金属層12の表面には、第1のめっき層124aと第2のめっき層124bとが形成されている。
【0074】
外周エリア3は、基板の外周部分を構成している。外周エリア3は、製品エリア2を取り囲むように設けられている。外周エリア3は配線基板50の要素とはならないため、外周エリア3には、内部回路素子は形成されていない。
【0075】
また、第1の実施形態と同様に、多数個取り配線基板101が製造されると、その後、多数個取り配線基板101は各切断予定領域において切断され、個々の基板要素部11に分割される。これにより、個々の配線基板50が得られる。
【0076】
図4および
図5では、各切断予定領域を、切断予定線C1~C3として破線で示している。なお、第1の実施形態と同様に、多数個取り配線基板101は、切断予定線C4においても切断されるが、
図4および
図5では、切断予定線C4の図示は省略している。
【0077】
多数個取り配線基板101を配線基板50に個片化する際には、先ず、切断予定線C1及び切断予定線C2において多数個取り配線基板1を切断する。これにより、多数個取り配線基板1の外周エリア3が切り取られる。その後、切断予定線C3及び切断予定線C4において多数個取り配線基板1を切断する。これにより、製品エリア2内の各基板要素部11が個々に分割され、配線基板50が得られる。
【0078】
また、多数個取り配線基板101は、外周エリア3に、複数の第1のめっき用端子121aと、複数の第2のめっき用端子121bとを有している。一例では、複数の第1のめっき用端子121aは、略長方形の平板形状を有する多数個取り配線基板101の長手方向の一端辺(
図4に示す例では、左側の端辺)に、互いに略等間隔に並んで配置されている。また、複数の第2のめっき用端子121bは、多数個取り配線基板101の上記一端辺に対向する他端辺(
図4に示す例では、右側の端辺)に、互いに略等間隔に並んで配置されている。
【0079】
なお、第1のめっき用端子121aおよび第2のめっき用端子121bの配置位置は、上記の例に限定はされない。好ましくは、複数の第1のめっき用端子121aが、基板の一端辺に並んで配置されており、複数の第2のめっき用端子121bがこの一端辺とは異なる他端辺に並んで配置されるのがよい。これにより、1回の電解めっき処理において電源を供給するためのめっき治具の取り付けが容易となる。
【0080】
複数の第1のめっき用端子121aが配置されている多数個取り配線基板101の一端辺(
図4に示す例では、左側の端辺)には、各第1のめっき用端子121aを電気的に接続する第1導体パターン123aが設けられている。また、複数の第2のめっき用端子121bが配置されている多数個取り配線基板101の他端辺(
図4に示す例では、右側の端辺)には、各第2のめっき用端子121bを電気的に接続する第2導体パターン123bが設けられている。第1の実施形態と同様に、各導体パターン123aおよび123bの表面は、めっき層24b(
図2参照)で被覆されている。
【0081】
また、多数個取り配線基板101は、それぞれが電気的に独立した第1のめっき用配線122aおよび第2のめっき用配線122bを有している。
図4に示すように、第1のめっき用配線122aは、第1のめっき用端子121aに接続されている。また、
図5に示すように、第2のめっき用配線122bは、第2のめっき用端子121bに接続されている。第1のめっき用配線122aおよび第2のめっき用配線122bは、例えば、複数のセラミックシートを積層して得られる多数個取り配線基板101において、互いに異なるセラミックシート上にそれぞれ形成することで、それぞれが電気的に独立した構成とすることができる。
【0082】
そして、第1のめっき用配線122aは、表面金属層12のうちの第1のめっき層124aが形成される領域と接続されている。また、第2のめっき用配線122bは、表面金属層12のうちの第2のめっき層124bが形成される領域と接続されている。
【0083】
このような構成を有する多数個取り配線基板101を製造する場合には、第1の実施形態で説明した製造方法における(3)電解めっき工程において、少なくとも2回の電解めっき処理を行う。このとき、例えば、1回目の電解めっき処理では、第1のめっき用端子121aにめっき治具が取り付けられ電源が供給される。これにより、表面金属層12の表面の一部に第1のめっき層124aが形成される。その後、2回目の電解めっき処理では、第2のめっき用端子121bにめっき治具が取り付けられ電源が供給される。これにより、表面金属層12の表面の別の一部に第2のめっき層124bが形成される。
【0084】
本実施形態にかかる多数個取り配線基板101の製造方法は、例えば、第1のめっき層124aがニッケル(Ni)を含むめっき層であり、第2のめっき層124bが金(Au)を含むめっき層である場合などのように、表面金属層12の異なる領域に異なる種類のめっき層を形成する場合に好適に用いられる。これにより、表面に異なる種類のめっき層が形成された配線基板50を得ることができる。
【0085】
本実施形態では、複数の第1のめっき用端子121aを電気的に接続する第1導体パターン123aが形成されていることで、複数の第1のめっき用端子121aを用いた電解めっき時に、いずれかの第1のめっき用端子121aから供給された電源を、第1導体パターン123aを通じて導通抵抗の上昇を抑えながら製品エリア2内の表面金属層12まで供給することができる。これにより、第1のめっき用端子121aを用いた電解めっきによって形成される第1のめっき層124aの厚みのバラツキを低減させることができる。
【0086】
また、複数の第2のめっき用端子121bを電気的に接続する第2導体パターン123bが形成されていることで、複数の第2のめっき用端子121bを用いた電解めっき時に、いずれかの第2のめっき用端子121bから供給された電源を、第2導体パターン123bを通じて導通抵抗の上昇を抑えながら製品エリア2内の表面金属層12まで供給することができる。これにより、第2のめっき用端子121bを用いた電解めっきによって形成される第2のめっき層124bの厚みのバラツキを低減させることができる。
【0087】
さらに、本実施形態にかかる多数個取り配線基板101では、第1導体パターン123aおよび第2導体パターン123bは、いずれも外周エリア3を切断するための切断予定領域を避けて配置されている。具体的には、
図4などに示すように、対向する2つの切断予定線C2およびC2の間に、第1導体パターン123aおよび第2導体パターン123bが形成されている。これにより、配線基板50を得るための切断工程において、切断工具に与えるダメージを低減しつつ、基板の裁断を容易に行うことができる。
【0088】
〔その他の実施形態〕
図6から
図10には、その他の実施形態にかかる多数個取り配線基板201・301・401・501・601の構成を示す。
図6から
図10では、個々の配線基板50を得るための切断予定領域のうち、外周エリア3を切り取るための切断予定線C1およびC2のみを図示しており、切断予定線C3およびC4の図示は省略している。これらの多数個取り配線基板は、めっき用端子、めっき用配線、および導体パターンなどの構成が、第1の実施形態にかかる多数個取り配線基板1とは異なっている。それ以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0089】
図6に示す多数個取り配線基板201では、めっき用配線222の導電パターンが第1の実施形態のめっき用配線22の導電パターンとは異なっている。
【0090】
図7に示す多数個取り配線基板301では、導体パターン323およびめっき用端子321の配置位置が、第1の実施形態の導体パターン23およびめっき用端子21とは異なっている。また、
図7に示す多数個取り配線基板301では、めっき用配線322の導電パターンが第1の実施形態のめっき用配線22の導電パターンとは異なっている。
【0091】
図8に示す多数個取り配線基板401では、第1の実施形態にかかる多数個取り配線基板1に設けられている導体パターン23およびめっき用端子21に加えて、基板の短手方向の各端辺に、導体パターン323およびめっき用端子321がさらに設けられている。そして、めっき用配線422は、導体パターン23およびめっき用端子21に加えて、導体パターン323およびめっき用端子421とも接続されている。
【0092】
なお、
図8に示すような導体パターン23および323を、第2の実施形態の実施形態にかかる多数個取り配線基板101に適用してもよい。この場合、例えば、導体パターン23を第1導体パターン123aとし、めっき用端子21を第1のめっき用端子121aとし、導体パターン323を第2導体パターン123bとし、めっき用端子321を第2のめっき用端子121bとすることができる。
【0093】
この場合、多数個取り配線基板101の内部には、めっき用配線422の代わりに、それぞれが電気的に独立した第1のめっき用配線および第2のめっき用配線が設けられる。これにより、表面に異なる種類のめっき層が形成された配線基板50を得ることができる。
【0094】
図9に示す多数個取り配線基板501では、製品エリアが、2つの製品エリア2Aおよび2Bで構成されている。そして、製品エリア2Aと製品エリア2Bとの間に、さらなる外周領域3Aが設けられている。この外周領域3Aは、切断予定線C2で切り取られる。
【0095】
この多数個取り配線基板501には、
図8に示す多数個取り配線基板401と同様に、基板の短手方向の各端辺に、導体パターン323およびめっき用端子321が設けられている。また、基板の短手方向の各端辺には、製品エリア2Aに対応する位置に導体パターン523Aが設けられており、製品エリア2Bに対応する位置に導体パターン523Bが設けられている。
【0096】
導体パターン523Aは、2つのめっき用端子521Aを電気的に接続している。また、導体パターン523Bは、2つのめっき用端子521Bを電気的に接続している。これらの導体パターン523Aおよび523Bは、外周領域を切断するための切断予定領域(例えば、切断予定線C2)を避けて形成されている。
【0097】
図10に示す多数個取り配線基板601では、基板の長手方向の各端辺に形成されている導体パターン923およびめっき用端子21に加えて、基板の短手方向の各端辺に、導体パターン323およびめっき用端子321がさらに設けられている。そして、めっき用配線422は、導体パターン923およびめっき用端子21に加えて、導体パターン323およびめっき用端子321とも接続されている。
【0098】
図10に示す導体パターン923は、
図1に示す導体パターン23よりも上下方向により長い構成となっている。このような構成の多数個取り配線基板601から配線基板50を製造する場合には、外周エリア3を切り取るための切断予定線C1およびC2のうち、切断予定線C1側(すなわち、多数個取り配線基板601の長方向側の外周エリア3)を先に切断する。これにより、導体パターン923は取り除かれる。
【0099】
そのため、次に切断される切断予定線C2は、
図10に示すように、導体パターン923に被らない構成となっている。すなわち、
図10に示す多数個取り配線基板601では、切断予定線C2は、導体パターン923を避けて形成されている。基板の4つの端辺に導体パターンが設けられている多数個取り配線基板では、このような構成とすることも可能である。
【0100】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1・101・201・301・401・501・601:多数個取り配線基板
2 :製品エリア(基板領域)
3 :外周エリア(外周領域)
11 :基板要素部
12 :表面金属層(要素導体部)
21・321・421・521A・521B:めっき用端子
22・222・322・422:めっき用配線
23・323・523A・523B:導体パターン
24a :めっき層
24b :めっき層
31 :セラミックシート(絶縁基板)
50 :配線基板
121a:第1のめっき用端子
121b:第2のめっき用端子
122a:第1のめっき用配線
122b:第2のめっき用配線
123a:第1導体パターン
123b:第2導体パターン
124a:第1のめっき層
124b:第2のめっき層
C1 :切断予定線(外周領域を切断するための切断予定領域)
C2 :切断予定線(外周領域を切断するための切断予定領域)