(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置及びステージ装置
(51)【国際特許分類】
F15B 15/00 20060101AFI20240229BHJP
F15B 15/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F15B15/00 A
F15B15/10 Z
(21)【出願番号】P 2020057193
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】中島 龍太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達矢
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-117311(JP,A)
【文献】実公昭37-000412(JP,Y1)
【文献】実開昭63-022404(JP,U)
【文献】特開昭57-096792(JP,A)
【文献】特開2003-167082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/00
F15B 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結部材と、
所定の軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室を有し、前記軸方向において前記連結部材に対し第1側で前記連結部材に連結され、前記圧力室の伸縮により前記連結部材を前記軸方向に駆動するメインアクチュエータと、
それぞれが、前記軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室を有し、前記軸方向において前記連結部材に対し前記第1側とは反対の第2側で前記連結部材に連結され、前記圧力室の伸縮により前記連結部材を前記軸方向に駆動する複数のサブアクチュエータと、を備え、
前記連結部材は、前記軸方向に垂直な方向から見てクランク形状を有することを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記メインアクチュエータと前記複数のサブアクチュエータは、前記軸方向に少なくとも部分的にオーバーラップして配置されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記複数のサブアクチュエータは、前記メインアクチュエータに対して前記軸方向に垂直な方向にオフセットを有して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記メインアクチュエータの前記圧力室は、伸縮部と、前記伸縮部に接続され前記連結部材に連結された可動体と、を備え、
各サブアクチュエータの前記圧力室は、伸縮部と、前記伸縮部に接続され前記連結部材に連結された可動体と、を備え、
前記メインアクチュエータの前記可動体の受圧面積は、各サブアクチュエータの前記可動体の受圧面積の合計に等しいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記複数のサブアクチュエータは、前記メインアクチュエータに対して前記軸方向に垂直な方向に均等にオフセットを有して配置された一組または複数組のサブアクチュエータを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】
前記メインアクチュエータの前記圧力室、および前記複数のサブアクチュエータの前記圧力室はそれぞれ、ガスの給排に伴う圧力変化により前記軸方向に伸縮するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項7】
連結部材と、
所定の軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室を有し、前記軸方向において前記連結部材に対し第1側で前記連結部材に連結され、前記圧力室の伸縮により前記連結部材を前記軸方向に駆動するメインアクチュエータと、
前記軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室を有し、前記軸方向において前記連結部材に対し前記第1側とは反対の第2側で前記連結部材に連結され、前記圧力室の伸縮により前記連結部材を前記軸方向に駆動するサブアクチュエータと、を備え、
前記連結部材は、前記軸方向に垂直な方向から見てクランク形状を有することを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項8】
X軸方向およびY軸方向に移動可能な可動部を有するXYステージと、
請求項1から7のいずれかに記載のアクチュエータ装置と、を備え、
前記アクチュエータ装置は、Z軸駆動機構として前記XYステージの前記可動部に搭載されていることを特徴とするステージ装置。
【請求項9】
並進自由度についての駆動機構として、請求項1から7のいずれかに記載のアクチュエータ装置を備えることを特徴とするステージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置及びステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定側のベース体と可動側のトッププレートとの間をベローズで連結し、ベース体に設けられた導入口より作動流体を導入することでベローズを伸ばし、ばね手段によりベローズの復帰力を得るようにした一軸アクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなアクチュエータが利用される代表的な用途の1つとして、半導体製造設備などの精密機械分野がある。こうした分野では、処理装置内の真空環境において被処理物を精確に位置決めすることが近年ますます求められている。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、真空環境において使用可能なアクチュエータ装置及びステージ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、アクチュエータ装置は、連結部材と、所定の軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室を有し、軸方向において連結部材に対し第1側で連結部材に連結され、圧力室の伸縮により連結部材を軸方向に駆動するメインアクチュエータと、それぞれが、軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室を有し、軸方向において連結部材に対し第1側とは反対の第2側で連結部材に連結され、圧力室の伸縮により連結部材を軸方向に駆動する複数のサブアクチュエータと、を備える。複数のサブアクチュエータは、メインアクチュエータに対して軸方向に垂直な方向にオフセットを有して配置されている。
【0007】
本発明のある態様によると、アクチュエータ装置は、連結部材と、所定の軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室を有し、軸方向において連結部材に対し第1側で連結部材に連結され、圧力室の伸縮により連結部材を軸方向に駆動するメインアクチュエータと、軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室を有し、軸方向において連結部材に対し第1側とは反対の第2側で連結部材に連結され、圧力室の伸縮により連結部材を軸方向に駆動するサブアクチュエータと、を備える。サブアクチュエータは、メインアクチュエータに対して軸方向に垂直な方向にオフセットを有して配置されている。
【0008】
本発明のある態様によると、ステージ装置は、X軸方向およびY軸方向に移動可能な可動部を有するXYステージと、上述のアクチュエータ装置と、を備える。アクチュエータ装置は、Z軸駆動機構としてXYステージの可動部に搭載されている。
【0009】
本発明のある態様によると、ステージ装置は、並進自由度についての駆動機構として、上述のアクチュエータ装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、真空環境において使用可能なアクチュエータ装置及びステージ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るステージ装置を示す図である。
【
図3】実施形態に係るアクチュエータ装置の側面図である。
【
図4】実施形態に係るメインアクチュエータの内部構造を示す模式図である。
【
図5】実施形態に係るメインアクチュエータの変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、実施形態に係るステージ装置を示す図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、実施形態に係るアクチュエータ装置の側面図である。
図4は、実施形態に係るメインアクチュエータの内部構造を示す模式図である。
図3において上方向は+Z方向を示し、下方向は-Z方向を示す。
図4には、メインアクチュエータの中心軸を含む平面(たとえばYZ面)による断面が模式的に示される。
【0014】
アクチュエータ装置120は、一軸リニアアクチュエータであり、被駆動体を支持し、被駆動体を所定の軸方向(たとえばZ軸方向)に駆動するように構成される。被駆動体は、たとえば半導体ウェハなどの被処理物を保持するテーブル70であってもよい。被駆動体は、アクチュエータ装置120の構成要素の1つとみなされてもよく、または、そうでなくてもよい。この実施形態では、一例として、アクチュエータ装置120は、XYステージであるステージ装置100におけるZ軸駆動機構として用いられる。ステージ装置100は、X軸方向およびY軸方向に移動可能な可動部(たとえば第1可動部64)を有し、この可動部にアクチュエータ装置120が搭載される。この可動部は、アクチュエータ装置120を支持する支持体とみなされる。
【0015】
図3および
図4を参照して、アクチュエータ装置120の構成を説明する。アクチュエータ装置120は、1つのメインアクチュエータ122と、2つのサブアクチュエータ124、126と、連結部材130とを備える。アクチュエータ装置120は、真空環境に配置され、使用されうる。
【0016】
なお、「メインアクチュエータ」および「サブアクチュエータ」との名称は、両者に主従関係があることを意味するものではない。よって、「メインアクチュエータ」および「サブアクチュエータ」はそれぞれ、「第1アクチュエータ」および「第2アクチュエータ」と称されてもよい。また、サブアクチュエータ124、126は、メインアクチュエータ122と同様の構成要素を備える。共通する構成については、メインアクチュエータ122を例として説明し、冗長を避けるため、サブアクチュエータ124、126について重複する説明は適宜省略する。
【0017】
メインアクチュエータ122は、Z軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室150を有し、Z軸方向において連結部材130に対し第1側(
図3では下側)で連結部材130に連結され、圧力室150の伸縮により連結部材130をZ軸方向に駆動する。メインアクチュエータ122の圧力室150は、ガスの給排に伴う圧力変化によりZ軸方向に伸縮するように構成されている。圧力室150は、基部144と、可動体146と、伸縮部148とを有する。
【0018】
メインアクチュエータ122は、アクチュエータ装置120の支持体である第1可動部64から連結部材130へとZ軸方向に延在する。メインアクチュエータ122の下端に基部144が設けられ、基部144は、第1可動部64に固定されている。メインアクチュエータ122の上端に可動体146が設けられ、可動体146は、連結部材130に固定されている。伸縮部148は、基部144から可動体146へとZ軸方向に延在し、基部144を可動体146に接続するZ軸方向に伸縮可能な隔壁である。伸縮部148は、この実施形態では、ベローズであり、たとえば、金属材料またはそのほか適宜の材料で形成された真空ベローズである。圧力室150は、基部144、可動体146、および伸縮部148によって囲まれ密封される内部容積として、メインアクチュエータ122内に定められる。
【0019】
可動体146は、受圧部146aと、受圧部146aの中心から下向きに延び圧力室150内に配置されたシャフト146bとを備える。受圧部146aの下面外周部には伸縮部148の上端が接続されている。受圧部146aの下面のうち圧力室150に露出した領域が、可動体146の受圧面となる。たとえば、受圧部146aは、Z軸に垂直な平面に沿って配置される円板形状を有し、シャフト146bは、受圧部146aよりも小径の円柱形状を有してもよい。この場合、可動体146の受圧面は、受圧部146aの下面のうち伸縮部148から径方向に内側かつシャフト146bから径方向に外側の円環状領域となる。
【0020】
基部144は、圧力室150内において上向きに延びるガイド部154を有する。ガイド部154にはシャフト146bが挿入され、それにより、基部144は、可動体146のZ軸方向の移動をガイドする。ガイド部154は、たとえば、シャフト146bを受け入れる円筒形状を有する。基部144、可動体146、および伸縮部148は、メインアクチュエータ122の中心軸に同軸に配置されている。
【0021】
また、メインアクチュエータ122は、基部144を貫通して圧力室150内まで延びる導管152を備える。図示される例では、導管152の先端が、ガイド部154の下部で、シャフト146bの底面の近傍に位置する。導管152は、外部の作動ガス源(図示せず)に接続され、作動ガス源から導管152を通じて圧力室150に作動ガスが供給される。また、導管152は、外部の排気ポンプ(図示せず)に接続されてもよく、圧力室150から導管152を通じて作動ガスが排出されてもよい。この実施形態では、アクチュエータ装置120はたとえば、空気圧式のアクチュエータ(いわゆるエアアクチュエータ)として構成され、作動ガスは、空気である。
【0022】
メインアクチュエータ122には、メインアクチュエータ122の移動量を測定するための位置センサ156が設けられている。位置センサ156はたとえば、基部144に設置され、基部144に対する可動体146の位置(たとえばZ軸方向の位置)を測定するように構成されてもよい。
【0023】
サブアクチュエータ124、126は、それぞれが、Z軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室150を有し、Z軸方向において連結部材130に対し第1側とは反対の第2側(
図3では上側)で連結部材130に連結され、圧力室150の伸縮により連結部材130をZ軸方向に駆動する。各サブアクチュエータ124、126の圧力室150は、ガスの給排に伴う圧力変化によりZ軸方向に伸縮するように構成されている。圧力室150は、基部144と、可動体146と、伸縮部148とを有する。
【0024】
サブアクチュエータ124、126は、上下の配置がメインアクチュエータ122とは反転されている。よって、各サブアクチュエータ124、126の下端に可動体146が設けられ、可動体146は、連結部材130に固定されている。伸縮部148は、基部144から可動体146へとZ軸方向に延在し、基部144を可動体146に接続するZ軸方向に伸縮可能な隔壁である。各サブアクチュエータ124、126の上端に基部144が設けられ、基部144は、支持フランジ132に固定されている。支持フランジ132は、アクチュエータ装置120に対し径方向外側に設けられ、第1可動部64に固定されている。圧力室150は、基部144、可動体146、および伸縮部148によって囲まれ密封される内部容積として、各サブアクチュエータ124、126内に定められる。可動体146の受圧部146aの下面のうち圧力室150に露出した領域が、可動体146の受圧面となる。
【0025】
この実施形態においては、メインアクチュエータ122の可動体146の受圧面積は、各サブアクチュエータ124、126の可動体146の受圧面積の合計に等しい。2つのサブアクチュエータ124、126は同じ構成を有するので、各サブアクチュエータ124、126の可動体146の受圧面積は、メインアクチュエータ122の可動体146の受圧面積の半分に等しい。
【0026】
また、メインアクチュエータ122の受圧面、及びサブアクチュエータ124、126の受圧面の重心がXY平面において重なるように配置することが好ましい。これにより、XY平面上での力の作用点を一致させ、テーブル70をXY平面と平行に維持できる。
【0027】
メインアクチュエータ122とサブアクチュエータ124、126の位置関係を説明する。サブアクチュエータ124、126は、メインアクチュエータ122に対してZ軸方向に垂直な第1方向(
図3ではY軸方向)にオフセットを有して配置されている。オフセットは均等であり、すなわち、一組のサブアクチュエータ124、126が、それらの間にメインアクチュエータ122を挟むようにしてメインアクチュエータ122から等距離に配置されている。
【0028】
また、メインアクチュエータ122とサブアクチュエータ124、126は、Z軸方向に少なくとも部分的にオーバーラップして配置されている。たとえば、
図3に示されるように、サブアクチュエータ124、126の下端がメインアクチュエータ122の上端よりも低い位置に配置され、メインアクチュエータ122とサブアクチュエータ124、126は全体として、Z軸方向に概ね同じ高さに配置されている。
【0029】
連結部材130は、第1固定部134と、Z軸方向に第1固定部134と異なる高さに配置された一対の第2固定部136、138とを備える。第1固定部134は、第2固定部136、138よりも上方に配置されている。また、連結部材130は、Z軸方向に垂直な第2方向(
図3ではX軸方向)から見て、クランク形状を形成するように第1固定部134と第2固定部136を接続する一対の壁部140、142を備える。壁部140、142は、Z軸に沿って延びている。連結部材130は、剛性が高い金属材料等によって形成される。
【0030】
第1固定部134の下面には、メインアクチュエータ122の可動体146が固定されており、メインアクチュエータ122は、第1固定部134と一対の壁部140、142で形成された連結部材130の凹部内に配置されている。第1固定部134の上面には、テーブル70が固定されている。また、一対の第2固定部136、138それぞれの上面には、対応するサブアクチュエータ124、126の可動体146が固定されており、各サブアクチュエータ124、126は、対応する壁部140、142と支持フランジ132との間に配置されている。第1固定部134は、サブアクチュエータ124、126の基部144と概ね同じ高さに配置され、第2固定部136、138は、メインアクチュエータ122の基部144と概ね同じ高さに配置されている。
【0031】
このようにして、メインアクチュエータ122の可動体146とサブアクチュエータ124、126の基部144は、サブアクチュエータ124、126の可動体146に対して同じ側(
図3では上側)に配置されることになる。また、サブアクチュエータ124、126の可動体146とメインアクチュエータ122の基部144は、メインアクチュエータ122の可動体146に対して同じ側(
図3では下側)に配置されることになる。
【0032】
また、アクチュエータ装置120は、メインアクチュエータ122およびサブアクチュエータ124、126を制御する制御部128を備える。制御部128は、メインアクチュエータ122とサブアクチュエータ124、126を連動させて、または両者を独立に制御することができる。
【0033】
制御部128は、メインアクチュエータ122およびサブアクチュエータ124、126それぞれの圧力室150の圧力を制御するように構成される。導管152を介して圧力室150に作動ガスが供給されるとき圧力室150の圧力が高まり、圧力室150から作動ガスが排出されるとき圧力室150の圧力が下がる。
【0034】
制御部128は、位置センサ156の出力を受け、当該出力に基づいて、メインアクチュエータ122およびサブアクチュエータ124、126それぞれの圧力室150の圧力を制御するように構成されてもよい。制御部128は、位置センサ156の出力から、連結部材130すなわちテーブル70のZ軸方向位置を取得してもよく、取得されたZ軸方向位置を目標位置に一致させるように圧力室150の圧力を制御してもよい。
【0035】
制御部128の内部構成は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0036】
続いて、アクチュエータ装置120の動作を説明する。アクチュエータ装置120の動作が開始されると、制御部128による制御のもと、メインアクチュエータ122およびサブアクチュエータ124、126それぞれの圧力室150には作動ガスが供給される。各圧力室150の圧力は、たとえば、メインアクチュエータ122とサブアクチュエータ124、126の駆動力のバランス、連結部材130(およびテーブル70)のZ軸方向位置の制御特性など諸要因を考慮して定められる。
【0037】
メインアクチュエータ122の作動ガス圧力は、サブアクチュエータ124、126の可動体146、連結部材130、およびテーブル70の重量を支持するために、サブアクチュエータ124、126の作動ガス圧力よりも大きくてもよい。各サブアクチュエータ124、126の圧力は、互いに等しい圧力に調整される。
【0038】
テーブル70のZ軸方向位置が目標位置よりも低い場合には、メインアクチュエータ122に作動ガスが供給され、メインアクチュエータ122の圧力室150が昇圧される。これにより、メインアクチュエータ122の伸縮部148がZ軸方向に伸長され、可動体146がZ軸方向に上方に移動する。これとともに、またはこれに代えて、サブアクチュエータ124、126から作動ガスが排出され、サブアクチュエータ124、126の圧力が低下されてもよい。このようにして、可動体146とともに連結部材130が+Z方向に移動され、さらにはテーブル70が連結部材130と一体に+Z方向に目標位置に向けて移動される。
【0039】
テーブル70を上昇させる場合、制御部128は位置センサ156の検出結果に基づき、メインアクチュエータ122の伸び量がサブアクチュエータ124、126の伸び量よりも大きくなるように空気量を調整してもよい。これにより、連結部材130に対して±Z方向から同時に力を作用させられ、連結部材130が急上昇するのを抑制し、かつ連結部材130の振動を抑制できる。連結部材130のゆっくりとした上昇に伴ってテーブル70も上昇する。
【0040】
逆に、テーブル70のZ軸方向位置が目標位置よりも高い場合には、サブアクチュエータ124、126に作動ガスが供給され、サブアクチュエータ124、126の圧力室150が昇圧される。これにより、サブアクチュエータ124、126の伸縮部148がZ軸方向に伸長され、可動体146がZ軸方向に下方に移動する。これとともに、またはこれに代えて、メインアクチュエータ122から作動ガスが排出され、メインアクチュエータ122の圧力が低下されてもよい。このようにして、可動体146とともに連結部材130が-Z方向に移動され、さらにはテーブル70が連結部材130と一体に-Z方向に目標位置に向けて移動される。
【0041】
本実施形態に係るアクチュエータ装置120においては、メインアクチュエータ122が所定の軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室150を有し、複数のサブアクチュエータ124、126のそれぞれが、当該軸方向に伸縮可能な密閉された圧力室150を有する。より具体的には、メインアクチュエータ122、およびサブアクチュエータ124、126は、たとえばベローズ148を用いた密封構造を有する。こうして、圧力室150が密閉されているので、アクチュエータ装置120の周囲への作動ガスの漏洩は防止または抑制される。したがって、真空環境において使用可能なアクチュエータ装置120が提供される。
【0042】
比較のために、一対のメインアクチュエータ122が同軸に対向配置される構成を考える。そうすると、連結部材130を挟んで2つのメインアクチュエータ122が直列に並ぶことになる。一方のメインアクチュエータ122の上方のスペースが他方のメインアクチュエータ122で占められるので、このスペースにテーブル70を設置することが難しい。そこで、メインアクチュエータ122に対しテーブル70をXY面内方向にずらして設けたとすると、テーブル70の大きさや重さによるが、Z軸方向直線移動を保証するためにはテーブル70の周囲(たとえば両側または四方)に複数対のメインアクチュエータ122が必要となりうる。
【0043】
これに対して、本実施形態においては、複数のサブアクチュエータ124、126がメインアクチュエータ122に対してZ軸方向に垂直な方向にオフセットを有して配置されている。メインアクチュエータ122の上方にテーブル70などの被駆動体を配置するスペースを設けやすく、被駆動体をメインアクチュエータ122と同軸に配置することができる。1つのアクチュエータ装置120で駆動機構を実現しうるので、駆動機構の小型化につながりうる。
【0044】
また、メインアクチュエータ122と複数のサブアクチュエータ124、126がZ軸方向に少なくとも部分的にオーバーラップして配置されている。これを実現するために、好ましくは、クランク形状をもつ連結部材130が用いられる。これにより、アクチュエータ装置120のZ軸方向の高さを小さく抑えることができる。よって、アクチュエータ装置120は、XYステージの第1可動部64上に搭載されるZ軸駆動機構のように、全高の低減が求められる用途に適する。
【0045】
一般に、典型的なエアアクチュエータでは、その内部構造に依存するが、アクチュエータの前進動作と後退動作で受圧面積が異なり、その結果、前進動作と後退動作で制御特性が異なるケースがしばしばある。これに対して、本実施形態においては、アクチュエータ装置120は、メインアクチュエータ122の可動体146の受圧面積が各サブアクチュエータ124、126の可動体146の受圧面積の合計に等しくなるように設計されている。アクチュエータ装置120が連結部材130およびテーブル70を軸方向に押すときと引くときとで同様に制御することができる。たとえば、押し引きの力の感度(ゲイン)を等しくすることができ、これは、アクチュエータ装置120の位置決め精度の向上に役立つ。
【0046】
以下、アクチュエータ装置120を適用しうるステージ装置100の例示的な構成を
図1および
図2を参照して説明する。なお、言うまでも無いが、アクチュエータ装置120は、以下に説明するステージ装置100だけでなく、種々の位置決め装置または駆動機構にも適用可能である。
【0047】
説明の便宜上、図示のように、盤面10aに平行なある方向をX軸方向、X軸方向に直交する盤面10aに平行な方向をY軸方向、両者に直交する(すなわち盤面10aに直交する)方向をZ軸方向とするXYZ直交座標系を定める。
図1は、ステージ装置100を示す斜視図である。ステージ装置100は、XYステージと称され、対象物をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に位置決めする。
【0048】
ステージ装置100は、定盤10と、第1移動体12と、第2移動体14と、第1X軸駆動部16と、第2X軸駆動部18と、第1Y軸駆動部20と、第2Y軸駆動部22と、第1ガイド24と、第2ガイド26と、4つの連結部材88と、を備える。
【0049】
定盤10は、平面視で矩形状の部材である。定盤10の上面である盤面10aには、平面加工が施される。また、Y軸方向に沿って延在する第1側面10bにも、平面加工が施される。盤面10aおよび第1側面10bは、後述するようにエアベアリングが滑走する滑走面として機能する。
【0050】
第1Y軸駆動部20は、第1Y軸固定子28と、第1Y軸可動子30とを含む。第1Y軸固定子28は、細長い円柱状の部材であり、複数の円柱状の磁石を連結して構成される。第1Y軸固定子28は、その軸線方向がY軸方向と一致するよう配置され、定盤10の第1側面10bに固定された一対の保持部材(不図示)により両端が保持される。すなわち、第1Y軸固定子28は、平面視において、定盤10の外側に配置される。
【0051】
第1Y軸可動子30は、ハウジング32と、コイル(不図示)とを含む。ハウジング32には、Y軸方向に貫通する断面が円形の挿通孔が形成されており、第1Y軸固定子28が挿通される。コイルは、第1Y軸固定子28を取り囲むよう挿通孔内に配置され、挿通孔の周面に固定される。コイルに電流が流れると、コイルと第1Y軸固定子28との間に電磁力が発生し、その電磁相互作用によってコイルひいては第1Y軸可動子30がY軸方向に移動する。
【0052】
第2Y軸駆動部22は、第2Y軸固定子34と、第2Y軸可動子36と、を含む。第2Y軸固定子34、第2Y軸可動子36は、第1Y軸固定子28、第1Y軸可動子30と同様に構成される。なお、第2Y軸固定子34は、その軸線方向がY軸方向と一致し、かつ、第1Y軸固定子28と平行に並ぶよう配置される。また、第2Y軸固定子34は、盤面10a上に固定された一対の保持部材(不図示)により両端が支持される。
【0053】
第2移動体14は、第2可動部38と、複数のY軸ヨーエアベアリング40と、ガイドビーム42と、複数のY軸リフトエアベアリング44と、を含む。
【0054】
第2可動部38は、板状の部材であり、2つの主面がX軸方向を向くよう配置される。第2可動部38は、第1Y軸可動子30の下方に設けられ、第1Y軸可動子30に連結される。したがって、第2可動部38は、第1Y軸可動子30とともに移動する。第2可動部38の下側部分は、定盤10の第1側面10bと対向する。
【0055】
複数のY軸ヨーエアベアリング40は、定盤10の第1側面10bと対向する第2可動部38の下側部分に固定され、第1側面10bに対して空気などの気体を噴出する。その反発力により、第2可動部38と第1側面10bとの非接触状態が維持される。
【0056】
ガイドビーム42は、長尺状の部材であり、第1X軸固定子52(後述)と第2X軸固定子58(後述)との間に、その長手方向がX軸方向に一致するよう配置される。ガイドビーム42は、一端が第2可動部38に連結され、他端が第2Y軸可動子36に連結される。ガイドビーム42は、X軸方向に直交する断面の形状が凹形を有する。詳しくは、ガイドビーム42は、底壁46と、第1側壁48と、第2側壁50と、を含む。底壁46は、X軸方向に長い平板状の部材であり、2つの主面がZ軸方向を向くよう設けられる。第1側壁48は、X軸方向に長い立壁であり、底壁46の上面(すなわち一方の主面)のY軸方向の一端から立設する。第2側壁50は、第1側壁48と同様、X軸方向に長い立壁であり、第1側壁48とY軸方向で対向するように底壁46の上面のY軸方向の他端から立設する。
【0057】
第1側壁48の外側の面、すなわち第2側壁50と対向する面とは反対側の面は、平面加工が施され、エアベアリングが滑走するための滑走面として機能する。以下、第1側壁48の外側の面を第1滑走面48aと呼ぶ。同様に、第2側壁50の外側の面は、平面加工が施され、エアベアリングが滑走するための滑走面として機能する。以下、第2側壁50の外側の面を第2滑走面50aと呼ぶ。
【0058】
複数のY軸リフトエアベアリング44は、ガイドビーム42に固定されている。Y軸リフトエアベアリング44は、定盤10の盤面10aに対して気体を噴出する。その反発力によってY軸リフトエアベアリング44ひいてはガイドビーム42は、盤面10aと非接触のまま、詳しくは盤面10aとの間に数μm程度の隙間を介して、Z軸方向に支持される。
【0059】
第1X軸駆動部16は、第1X軸固定子52と、第1X軸可動子54と、第1支持部材56と、を含む。第1X軸固定子52は、第1Y軸固定子28や第2Y軸固定子34と同様に構成される。第1X軸固定子52は、その軸線方向がX軸方向と一致するよう配置され、第1支持部材56により両端が支持される。第1X軸可動子54は、第1Y軸可動子30や第2Y軸可動子36と同様に構成され、第1X軸固定子52との電磁相互作用によってX軸方向に移動する。
【0060】
第2X軸駆動部18は、第2X軸固定子58と、第2X軸可動子60と、第2支持部材62と、を含む。第2X軸固定子58、第2X軸可動子60は、第1X軸固定子52と、第1X軸可動子54と同様に構成される。第2X軸固定子58は、その軸線方向がX軸方向と一致し、かつ、第1X軸固定子52と平行に並ぶよう配置され、第2支持部材62により両端が支持される。
【0061】
図2に示されるように、第1移動体12は、第1可動部64と、複数のX軸ヨーエアベアリング66と、複数のX軸リフトエアベアリング68と、テーブル70と、を含む。第1可動部64は、四角筒状の部材であり、ガイドビーム42が挿通される。第1可動部64は、底壁72と、上壁74と、第1側壁76と、第2側壁78と、を含む。第1側壁76はガイドビーム42の第1滑走面48aと対向し、第2側壁はY軸ガイドの第2滑走面50aと対向する。第1側壁の外側の面には、接続部材(不図示)を介して第1X軸可動子54が連結され、第2側壁の外側の面には、接続部材(不図示)を介して第2X軸可動子60が連結されている。したがって、第1可動部64は、第1X軸可動子54および第2X軸可動子60とともに移動する。
【0062】
複数のX軸ヨーエアベアリング66は、第1側壁76の内面(すなわち第2側壁と対向する面)76a、第2側壁78の内面(すなわち第1側壁と対向する面)78aに固定され、ガイドビーム42の第1滑走面48a、第2滑走面50aに対して気体を噴出する。また、複数のX軸リフトエアベアリング68は、底壁72の下面72aに固定され、盤面10aに対して気体を噴出する。第1可動部64は、X軸ヨーエアベアリング66およびX軸リフトエアベアリング68が気体を噴出することによる反発力によって、ガイドビーム42および盤面10aと非接触のまま、詳しくはガイドビーム42および盤面10aとの間に数μm程度の隙間を介して、Y軸方向およびZ軸方向に支持される。
【0063】
第1可動部64上にはアクチュエータ装置120が配置され、テーブル70はアクチュエータ装置120により第1可動部64に対してZ軸に沿って移動可能に支持される。テーブル70は、アクチュエータ装置120により駆動される。
【0064】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0065】
図5は、メインアクチュエータの変形例を示す。変形例によるメインアクチュエータ180は、ベローズ構造に換えてダイヤフラム構造を有する。メインアクチュエータ180は、内部に圧力室150が定められた基部182、及び可動体184を備える。圧力室150内には、ダイヤフラム186が設けられる。外部の空気源から導管152を介して圧力室150に空気が送り込まれるとダイヤフラム186の内圧が高まり膨張する。ダイヤフラム186を膨張させることで可動体184が上昇し、テーブル70を上昇させられる。この構造は、サブアクチュエータ124、126に適用してもよい。ダイヤフラム186を用いたメインアクチュエータ180も真空環境下で使用可能である。
【0066】
また、上述の実施形態では、アクチュエータ装置120がステージ装置100のZ軸駆動機構として用いられる場合を例として説明したが、本発明はこれに限られない。ある実施形態においては、アクチュエータ装置120は、X軸駆動機構、またはY軸駆動機構として用いられてもよい。ある実施形態においては、ステージ装置は、任意の並進自由度(すなわち、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の少なくとも1つ)についての駆動機構として、アクチュエータ装置120を備えてもよい。
【0067】
ある実施形態においては、アクチュエータ装置120は、2つより多数のサブアクチュエータを備えてもよい。複数組のサブアクチュエータがそれぞれ、メインアクチュエータに対して軸方向に垂直な方向に均等にオフセットを有して配置されてもよい。たとえば、3つまたは4つのサブアクチュエータが設けられ、これらがXY平面において、メインアクチュエータ122から等距離に配置され、かつメインアクチュエータ122を中心に等角度間隔で配置されてもよい。この場合にも、メインアクチュエータの可動体の受圧面積は、各サブアクチュエータの可動体の受圧面積の合計に等しくてもよい。たとえば、各サブアクチュエータの可動体の受圧面積は、メインアクチュエータの可動体の受圧面積の1/3または1/4であってもよい。
【0068】
必要に応じて、アクチュエータ装置120は、1つのメインアクチュエータと、1つのサブアクチュエータとを備えてもよい。つまり、サブアクチュエータは、1つだけでもよい。あるいは、アクチュエータ装置120は、複数のメインアクチュエータを備えてもよい。
【0069】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0070】
100 ステージ装置、 120 アクチュエータ装置、 122 メインアクチュエータ、 124 サブアクチュエータ、 180 メインアクチュエータ