IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日軽金アクト株式会社の特許一覧 ▶ IHI運搬機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図1
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図2
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図2A
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図2B
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図3
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図3A
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図4
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図4A
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図5
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図6
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図7
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図8
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図9
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図10
  • 特許-立体駐車場の車両積載用床パネル 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】立体駐車場の車両積載用床パネル
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/42 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E04H6/42 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020061913
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161654
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆啓
(72)【発明者】
【氏名】大塚 翔平
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 義和
(72)【発明者】
【氏名】中矢 豪
(72)【発明者】
【氏名】本島 貴之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克之
(72)【発明者】
【氏名】小野 右季
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145779(JP,A)
【文献】実用新案登録第2555899(JP,Y2)
【文献】米国特許第06491488(US,B1)
【文献】実開平04-068163(JP,U)
【文献】特開平10-316053(JP,A)
【文献】特開2000-120217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/42
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する複数のアルミニウム製の形材を、該形材の幅方向に連結して形成され、桁材に固定支持される立体駐車場の車両積載用床パネルであって、
上記形材の幅方向の端部の床部側には、隣接する上記形材と互いに嵌合可能な連結用の凹条嵌合部又は凸条嵌合部が形成され、
隣接する上記形材の一方の上記凹条嵌合部の直下には、嵌合された状態の上記凹条嵌合部と上記凸条嵌合部から浸入する雨水を流すための樋が設けられ、
上記樋は、一対の壁部とこれら壁部に連結される底部とからなり、一方の上記壁部は上記中空部を形成し、他方の上記壁部は、上記底部から立設され、その上端は隣接する上記形材の床部裏面に対して隙間が形成され、
上記他方の壁部の上端の、上記形材の床部裏面に対する上記隙間は、車両が床パネルに乗った際の上記形材の幅方向の撓み量以上の寸法に形成され
上記他方の壁部の下端から上記底部より下方に延在する垂直片と、上記垂直片の下端から隣接する上記形材に向かって上記垂直片に対して直交状に延在する水平片が形成され、上記水平片は、上記形材を構成する他の部分より肉厚に形成され、上記桁材に載置された状態で固定部材によって固定されている、
ことを特徴とする立体駐車場の車両積載用床パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の立体駐車場の車両積載用床パネルにおいて、
上記他方の壁部の上記底部からの立設高さは、車両が床パネルに乗った際の上記形材の長手方向の撓み量以上の寸法に形成されている、ことを特徴とする立体駐車場の車両積載用床パネル。
【請求項3】
請求項に記載の立体駐車場の車両積載用床パネルにおいて、
上記凹条嵌合部と上記凸条嵌合部とは隙間をおいて嵌合され、上記隙間にパッキンが介在されている、ことを特徴とする立体駐車場の車両積載用床パネル。
【請求項4】
請求項に記載の立体駐車場の車両積載用床パネルにおいて、
上記凹条嵌合部は、上記形材の幅方向の端部における床部側角部に設けられ、外方下部側が開口する断面略凹円弧状に形成され、上記凸条嵌合部は、上記形材の幅方向の端部における床部から水平方向に延在し、上記凹条嵌合部に隙間をおいて、遊嵌する先端が上方に屈曲する断面略扁平U字状に形成されている、ことを特徴とする立体駐車場の車両積載用床パネル。
【請求項5】
請求項に記載の立体駐車場の車両積載用床パネルにおいて、
上記凸条嵌合部は、該凸条嵌合部の基端側に、上記形材の内方側に向かって湾曲する狭隘開口溝が形成され、上記凸条嵌合部と上記凹条嵌合部との間に介在されるパッキンの一部を上記狭隘開口溝内に嵌合してなる、ことを特徴とする立体駐車場の車両積載用床パネル。
【請求項6】
請求項に記載の立体駐車場の車両積載用床パネルにおいて、
上記床パネルは、幅方向の両端に上記凹条嵌合部と上記樋又は上記凸条嵌合部を有する1つの中央形材と、幅方向の一端に上記凹条嵌合部と上記樋を有し、幅方向の他端に上記凸条嵌合部を有する複数の中間形材と、幅方向の一端に上記凸条嵌合部又は上記凹条嵌合部と上記樋を有し、幅方向の他端が上記中空部の壁部を有する一対の端部形材の3種類の形材を連結して形成される、ことを特徴とする立体駐車場の車両積載用床パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、立体駐車場の車両積載用床パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、立体駐車場の車両積載用床パネルには、優れた外観と耐食性を有し、軽量かつ高強度のものが求められており、中空部を有するアルミニウム製の押出形材を幅方向に連結したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のものは、隣接する形材の対向する一方の側縁部に側方側に開口する嵌合用凹部と、他方の側縁部に側方突出状の嵌合用凸部とが嵌合され、かつ、垂直面と交差する凹凸両嵌合面部に一対の細溝の組合せによるピン挿入孔にピンが挿入されることによって、隣接する形材同士を連結する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第2555899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものにおいては、車両が床パネルに積載された状態では、形材の幅方向及び長手方向に撓むため、形材同士が擦れて軋み音が生ずる問題がある。また、車両からの雨水が嵌合部に浸入して下方に垂れ落ちる懸念がある。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、車両積載時の撓みによる軋み音を抑制すると共に、車両からの雨水の防水処理を施すことができる立体駐車場の車両積載用床パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、この発明は、中空部を有する複数のアルミニウム製の形材を、該形材の幅方向に連結して形成され、桁材に固定支持される立体駐車場の車両積載用床パネルであって、 上記形材の幅方向の端部の床部側には、隣接する上記形材と互いに嵌合可能な連結用の凹条嵌合部又は凸条嵌合部が形成され、 隣接する上記形材の一方の上記凹条嵌合部の直下には、嵌合された状態の上記凹条嵌合部と上記凸条嵌合部から浸入する雨水を流すための樋が設けられ、 上記樋は、一対の壁部とこれら壁部に連結される底部とからなり、一方の上記壁部は上記中空部を形成し、他方の上記壁部は、上記底部から立設され、その上端は隣接する上記形材の床部裏面に対して隙間が形成され、 上記他方の壁部の上端の、上記形材の床部裏面に対する上記隙間は、車両が床パネルに乗った際の上記形材の幅方向の撓み量以上の寸法に形成され 上記他方の壁部の下端から上記底部より下方に延在する垂直片と、上記垂直片の下端から隣接する上記形材に向かって上記垂直片に対して直交状に延在する水平片が形成され、上記水平片は、上記形材を構成する他の部分より肉厚に形成され、上記桁材に載置された状態で固定部材によって固定されている、ことを特徴とする(請求項1)。
【0008】
このように構成することにより、車両が床パネルに乗った際(以下に、車両積載時という)に形材が幅方向に撓んだ状態でも隣接する形材同士の接触を少なくし、形材同士の擦れによる軋み音を抑制することができる。また、車両から嵌合部に浸入する雨水を樋で受け止めて外部に排出することができる。
【0010】
また、請求項1に記載の発明によれば、車両積載時に形材が幅方向に撓んだ状態でも隣接する形材同士の接触をなくし、形材同士の擦れによる軋み音を確実に抑制することができる。
【0011】
この発明において、上記他方の壁部の上記底部からの立設高さは、車両が床パネルに乗った際の上記形材の長手方向の撓み量以上の寸法に形成されているのが好ましい(請求項2)。
【0012】
このように構成することにより、車両積載時に形材が長手方向に撓んで樋の長手方向の中央部に溜まった雨水が溢れるのを抑制することができる。
【0013】
また、この発明において、上記凹条嵌合部と上記凸条嵌合部とは隙間をおいて嵌合され、上記隙間にパッキンが介在されているのが好ましい(請求項)。
【0014】
このように構成することにより、車両積載時等において、凹条嵌合部と凸条嵌合部の嵌合部同士の擦れを防止することができると共に、上記擦れに伴う「黒汁」が生じるのを抑制することができる。ここで、「黒汁」とは、雨水等に擦れたアルミニウム粉等が混じったものをいう。
【0015】
また、この発明において、上記凹条嵌合部は、上記形材の幅方向の端部における床部側角部に設けられ、外方下部側が開口する断面略凹円弧状に形成され、上記凸条嵌合部は、上記形材の幅方向の端部における床部から水平方向に延在し、上記凹条嵌合部に隙間をおいて、遊嵌する先端が上方に屈曲する断面略扁平U字状に形成されているのが好ましい(請求項)。
この場合、上記凸条嵌合部は、該凸条嵌合部の基端側に、上記形材の内方側に向かって湾曲する狭隘開口溝が形成され、上記凸条嵌合部と上記凹条嵌合部との間に介在されるパッキンの一部を上記狭隘開口溝内に嵌合してなるのが好ましい(請求項)。
【0016】
このように構成することにより、凹条嵌合部と凸条嵌合部とが遊嵌すなわち遊びをもたせて嵌合されているので、車両積載時における形材の幅方向の撓みによる凹条嵌合部と凸条嵌合部の擦れを少なくすることができる。
この場合、凸条嵌合部の基端側に、形材の内方側に向かって湾曲する狭隘開口溝が形成され、上記凸条嵌合部と上記凹条嵌合部との間に介在されるパッキンの一部を上記狭隘開口溝内に嵌合することにより、パッキンの取付を容易かつ確実にすることができると共に、パッキンによって凹条嵌合部と凸条嵌合部の嵌合部同士の擦れを防止することができると共に、上記擦れに伴う「黒汁」が生じるのを抑制することができる。
【0017】
加えて、この発明において、上記床パネルは、幅方向の両端に上記凹条嵌合部と上記樋又は上記凸条嵌合部を有する1つの中央形材と、幅方向の一端に上記凹条嵌合部と上記樋を有し、幅方向の他端に上記凸条嵌合部を有する複数の中間形材と、幅方向の一端に上記凸条嵌合部又は上記凹条嵌合部と上記樋を有し、幅方向の他端が上記中空部の壁部を有する一対の端部形材の3種類の形材を連結して形成されるのが好ましい(請求項)。
【0018】
このように構成することにより、1つの中央形材、複数の中間形材、一対の端部形材の3種類の形材を任意に組み付けて車両積載用床パネルを作製することができる。この場合、複数の幅をもつ中央形材を代えることによって、異なる幅の車両用床パネルを作製することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、上記のように構成されているので、車両積載時の撓みによる軋み音を抑制すると共に、車両から嵌合部に浸入する雨水が下方に垂れ落ちるのを防止する防水処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明に係る車両積載用床パネルの使用状態の一例を示す概略側面図である。
図2】この発明における端部形材と中間形材の嵌合状態を示す断面図である。
図2A図2のI部の拡大断面図である。
図2B】この発明における凹条嵌合部と凸条嵌合部の間にパッキンを取り付ける前の状態を示す分解断面図である。
図3】この発明における中央形材と中間形材の嵌合状態を示す断面図である。
図3A図3のII部の拡大断面図である。
図4】この発明における中間形材同士の嵌合状態を示す断面図である。
図4A図4のIII部の拡大断面図である。
図5】この発明における端部形材の断面図(a)及び(a)のIV部の拡大断面図(b)である。
図6】この発明における端部形材の一部を示す斜視図である。
図7】この発明における中央形材の断面図(a)、(a)のV部の拡大断面図(b)及び(a)のVI部の拡大断面図(c)である。
図8】この発明における中央形材の一部を示す斜視図である。
図9】この発明における中間形材の断面図(a)、(a)のVII部の拡大断面図(b)及び(a)のVIII部の拡大断面図(c)である。
図10】この発明における中間形材の一部を示す斜視図である。
図11】車両積載時に床パネルが撓んだ状態の一部を示す断面図(a)及び(a)のIX部の拡大断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
この発明に係る立体駐車場の車両積載用床パネル1は、図1に示すように、それぞれ中空部10を有するアルミニウム製の押出形材にて形成される、1つの中央形材2と、複数の中間形材3と、一対の端部形材4とを幅方向に、後述する凹条嵌合部5と凸条嵌合部6を嵌合した状態で連結して形成されている。
【0023】
本実施形態では、端部形材4は、図2図5及び図6に示すように、幅方向の一端に凸条嵌合部6を有し、幅方向の他端が中空部10の壁部10aを有する。
【0024】
この場合、端部形材4は、上面の床部11と下面部12とに連結される3本のリブ13によって区画された4つの矩形状中空部10が形成されており、凸条嵌合部6は、床部11から水平方向に延在し、先端が上方に屈曲する断面略扁平U字状に形成されている。また、凸条嵌合部6の基端側に、端部形材4の内方側に向かって湾曲する狭隘開口溝14が形成されている。この狭隘開口溝14には、隣接される中間形材3との間に介在されるパッキン8の一部が嵌合される。
【0025】
なお、端部形材4の幅方向の他端側の床部11は外方側に向かって上り傾斜状に形成されている。また、床部11の表面における直下にリブ13がある位置とその両側と床部11の幅方向の両端位置には、滑り止め用の複数の細条15が適宜間隔をおいて突設されている。
【0026】
端部形材4に連結される中間形材3は、図4図9及び図10に示すように、上面の床部11と下面部12とに連結される4本のリブ13によって区画された5つの矩形状中空部10が形成されている。中間形材3の幅方向の一端には、凸条嵌合部6と嵌合可能な凹条嵌合部5が形成され、幅方向の他端には、上記と同様な凸条嵌合部6が形成されている。また、凹条嵌合部5の直下には樋7が形成されている。なお、床部11の表面における直下にリブ13がある位置とその両側と床部11の幅方向の両端位置には、滑り止め用の複数の細条15が適宜間隔をおいて突設されている。
【0027】
この場合、凹条嵌合部5は、床部側角部に設けられ、外方下部側が開口する断面略凹円弧状に形成されている。この凹条嵌合部5に隙間をおいて凸条嵌合部6が遊嵌すなわち遊びをもたせて嵌合され、凸条嵌合部6と凹条嵌合部5との間に介在されるパッキン8の一部が凸条嵌合部6の基端側に設けられた狭隘開口溝14内に嵌合されるようになっている(図2A図2B参照)。
【0028】
なお、パッキン8は、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成ゴムにて形成されており、図2Bに示すように、断面矩形状のパッキン本体8aの一方の側面に首部8bを介して先端側に向かって狭小テーパ状の膨隆係合部8cが突設されている。このように形成されるパッキン8の膨隆係合部8cが狭隘開口溝14内に嵌合される。これにより、パッキン8の取付が容易にできると共に、取付を確実にすることができる。
【0029】
凹条嵌合部5の直下に位置する樋7は、一対の壁部7a,7bとこれら壁部7a,7bに連結される底部7cとからなり、一方の壁部7aは中空部10の一部を形成し、他方の壁部7bは、底部7cから立設され、その上端は隣接する端部形材4の床部裏面に対して隙間sが形成されている。
【0030】
なお、樋7の下方側から隣接する端部形材4の下端面側に向かって延在する水平片9が形成されている。この場合、水平片9は、樋7を形成する壁部7bの下端から底部7cより下方に延在する垂直片7dの下端から垂直片7dに対して直交状に形成されている。なお、水平片9は、中間形材3を形成する他の部分より若干肉厚に形成されており、その上面中央部にはV字状の細溝7eが形成されている。このように形成される水平片9を床パネル1を支持する桁材20上に載置し、例えばリベットやねじ等の固定部材21によって固定することで、床パネル1が桁材20に固定される(図1参照)。
【0031】
中間形材3に連結される中央形材2は、図3図7及び図8に示すように、上面の床部11と下面部12とに連結される4本のリブ13によって区画された区画された5つの矩形状中空部10が形成されている。
【0032】
中央形材2の幅方向の両端には、上記と同様な凹条嵌合部5と樋7が形成されると共に、水平片9が形成されている。
すなわち、中央形材2の幅方向の両端の床部側角部に、外方下部側が開口する断面略凹円弧状の凹条嵌合部5が形成されている。樋7は凹条嵌合部5の直下に位置し、一対の壁部7a,7bとこれら壁部7a,7bに連結される底部7cとからなり、一方の壁部7aは中空部10の一部を形成し、他方の壁部7bは、底部7cから立設され、その上端は隣接する中間形材3の床部裏面に対して隙間sが形成されている。また、樋7の下方側に隣接する中間形材3の下端面側に向かって延在する水平片9が形成されている。
【0033】
上記のように形成される中央形材2の幅方向の両端に形成された凹条嵌合部5に、それぞれパッキン8を介在させて中間形材3に設けられた凸条嵌合部6を遊嵌すなわち遊びをもたせて嵌合{以下に、嵌合(遊嵌)という}させて中央形材2と中間形材3が連結される。
【0034】
なお、中間形材3,3同士を連結する場合は、図4及び図4Aに示すように、中間形材3の幅方向の一端に形成された凹条嵌合部5に、パッキン8を介在させて隣接する中間形材3の幅方向の他端に形成された凸条嵌合部6を嵌合(遊嵌)させて中間形材3,3同士を連結する。
【0035】
中間形材3,3同士が連結された状態において、凹条嵌合部5の直下に設けられた樋7を形成する壁部7bの上端は隣接する中間形材3の床部裏面に対して隙間sが形成されている。
【0036】
上記実施形態の車両積載用床パネル1は、中央形材2の幅方向の両端に形成された凹条嵌合部5に、中間形材3の幅方向の一端(以下に一端という)に形成された凸条嵌合部6を嵌合(遊嵌)し、この中間形材3の幅方向の他端(以下に他端という)に形成された凹条嵌合部5に、隣接する中間形材3の一端に形成された凸条嵌合部6を嵌合(遊嵌)し、以下同様に適宜数の中間形材3同士の凹条嵌合部5と凸条嵌合部6を嵌合(遊嵌)し、隣接する中間形材3の他端に形成された凹条嵌合部5に、端部形材4の一端に形成された凸条嵌合部6を嵌合(遊嵌)して、中央形材2の幅方向の両側に複数の中間形材3を連結し、幅方向の末端の中間形材3に端部形材4を連結して形成される。なお、凹条嵌合部5と凸条嵌合部6との間にはパッキン8が介在される。
【0037】
上記のようにして連結された中央形材2、中間形材3及び端部形材4において、凹条嵌合部5の直下に設けられた樋7を形成する壁部7bの底部7cからの立設高さ(樋の溝深さ)は、車両が床パネル1に乗った際の床パネル1全体すなわち中央形材2、中間形材3、端部形材4の長手方向の撓みによる樋7の長手方向中央部に溜まった雨水の溢れを防止する寸法、例えば16mmに設定されている。
【0038】
壁部7bの底部7cからの立設高さを16mmに設定した理由は、実際に使用される長さ:5434mm、幅:2200mmの床パネル1を、井桁状に枠組みされた鉄製の桁材20に固定した供試体に車両(自動車)が乗っているときの荷重条件で構造解析した結果、床パネル全体の撓み量が約13mmであったことに基づくものである。
【0039】
つまり、このように床パネル全体が約13mm撓んだ状態では、長手方向に排水されず、樋7に溜まってしまう。水が樋7に溜まっていくと、樋7の溝深さが16mmに対して、床パネル全体の撓み量は約13mmであるので、水が樋7の横方向に溢れる前に長手方向に排水することができるからである。
【0040】
なお、樋7の溝深さは16mmに限定されるものではなく、床パネル1の寸法や重量等によって床パネル全体の長手方向の撓み量も異なるため、これに応じて、樋7の溝深さを床パネル全体の長手方向の撓みによって樋7の長手方向中央部に溜まった雨水の溢れを防止できる寸法にすればよい。
【0041】
また、上記のようにして連結された中央形材2、中間形材3及び端部形材4において、凹条嵌合部5の直下に設けられた樋7を形成する壁部7bの上端は隣接する形材(中間形材3、端部形材4)の床部裏面に対して隙間sが形成される。
【0042】
この隙間sは、図11に示すように、車両が床パネル1に乗った際の隣接する形材(図11では中間形材3を示す)の幅方向の撓み量δ以上の寸法に形成されているのがよい。
【0043】
隙間sについて、3枚の中間形材3を嵌合させ、隙間sを所定の寸法にした状態で、中間形材3を撓ませて、上記解析結果の長手方向の撓み量(13mm)を超える撓み量(24mm)で試験を行ったところ、中間形材3は幅方向にも撓むが、隙間sは幅方向の撓み量(δ)以上の2mmであれば軋み音はなかった。
【0044】
なお、隙間sは必ずしも2mmに限定されるものではなく、隙間sが形材の幅方向の撓み量(δ)以上であれば、樋7の壁部7bの上端と隣接する形材(中間形材3、端部形材4)の床部裏面との接触(擦れ)は避けられるので、軋み音を抑制することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、中央形材2の両端に凹条嵌合部5と樋7が形成され、端部形材4の幅方向の一端に凸条嵌合部6が形成される場合について説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、中央形材2の幅方向の両端に凸条嵌合部6を形成し、端部形材4の幅方向の一端に凹条嵌合部5と樋7を形成してもよい。
【0046】
上記のように構成される実施形態の車両積載用床パネルによれば、樋7を形成する壁部7bの上端は隣接する形材(中間形材3、端部形材4)の床部裏面に対して隙間sが形成されているので、車両積載時に形材(中央形材2、中間形材3、端部形材4)が幅方向に撓んだ状態でも隣接する形材同士の接触を少なくし、形材同士の擦れによる軋み音を抑制することができる。
【0047】
なお、凹条嵌合部5と凸条嵌合部6との嵌合を遊びをもたせた状態で嵌合(遊嵌)させることで、車両積載時における形材(中央形材2、中間形材3、端部形材4)の幅方向の撓みによる凹条嵌合部5と凸条嵌合部6の擦れを少なくすることができるので、軋み音を抑制することができる。
【0048】
また、隣接する形材(中央形材2、中間形材3、端部形材4)の一方の凹条嵌合部5の直下には、嵌合された状態の凹条嵌合部5と凸条嵌合部6から浸入する雨水を流すための樋7が設けられているので、車両から凹条嵌合部5と凸条嵌合部6に浸入する雨水を樋7で受け止めて外部に排出することができる。
【0049】
この際、樋7の壁部7bの底部7cからの立設高さ(樋の溝深さ)を、車両が床パネルに乗った際の床パネル1全体すなわち中央形材2、中間形材3、端部形材4の長手方向の撓みによる樋7の長手方向中央部に溜まった雨水の溢れを防止する寸法、例えば16mmに設定することにより、水が樋7の横方向に溢れるのを防止することができる。
【0050】
また、凹条嵌合部5と凸条嵌合部6との隙間にパッキン8が介在されているので、車両積載時等において、凹条嵌合部5と凸条嵌合部6の嵌合部同士の擦れを防止することができると共に、擦れに伴って雨水等に擦れたアルミニウム粉等が混じった「黒汁」が生じるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 車両積載用床パネル
2 中央形材
3 中間形材
4 端部形材
5 凹条嵌合部
6 凸条嵌合部
7 樋
7a,7b 壁部
7c 底部
8 パッキン
9 水平片
10 中空部
10a 壁部
11 床部
14 狭隘開口溝
s 隙間
図1
図2
図2A
図2B
図3
図3A
図4
図4A
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11