(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H02M7/12 A
(21)【出願番号】P 2020065945
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】相場 謙一
(72)【発明者】
【氏名】清水 健志
(72)【発明者】
【氏名】久原 正和
(72)【発明者】
【氏名】角藤 清隆
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 剛
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-193374(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033634(WO,A1)
【文献】特開2001-238488(JP,A)
【文献】特開2012-161222(JP,A)
【文献】特開2012-100444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクトルの両端の差電圧に応じた電流を流す回路に流れる当該電流を
、前記差電圧に基づいて制御する制御信号を生成する信号生成部と
、
前記回路
において直列に接続された2つのスイッチング素子の一方がオン状態となっている各期間の中央のタイミング、または、前記制御信号の三角波キャリアの頂点のタイミングにおいて、入力電流を検出し、検出した入力電流から移動平均により求めた基本波電流成分と各高調波電流成分の2乗平均との割合により、前記回路における前記スイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを測定する歪み測定部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記リアクトルの両端の差電圧に応じた電流を流す回路は、コンバータ回路である、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記信号生成部が生成した制御信号を用いて前記回路を制御する制御部、
を備え、
前記信号生成部は
、
前記歪み
が極小値または最小値とな
る制御信号を生成する、
請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
リアクトルの両端の差電圧に応じた電流が流れる回路に流れる当該電流を
、前記差電圧に基づいて制御する制御信号を生成することと
、
前記回路
において直列に接続された2つのスイッチング素子の一方がオン状態となっている各期間の中央のタイミング、または、前記制御信号の三角波キャリアの頂点のタイミングにおいて、入力電流を検出し、検出した入力電流から移動平均により求めた基本波電流成分と各高調波電流成分の2乗平均との割合により、前記回路におけるスイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを測定することと、
を含む制御方法。
【請求項5】
コンピュータに、
リアクトルの両端の差電圧に応じた電流が流れる回路に流れる当該電流を
、前記差電圧に基づいて制御する制御信号を生成することと
、
前記回路
において直列に接続された2つのスイッチング素子の一方がオン状態となっている各期間の中央のタイミング、または、前記制御信号の三角波キャリアの頂点のタイミングにおいて、入力電流を検出し、検出した入力電流から移動平均により求めた基本波電流成分と各高調波電流成分の2乗平均との割合により、前記回路におけるスイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを測定することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバータ装置は、空気調和機など、さまざまな分野で利用されている。
特許文献1には、関連する技術として、インバータの電圧指令と出
力電圧との間に誤差電圧が発生することによるスイッチング素子の短絡を補償するデッドタイム補償に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているようなインバータと同様に、スイッチング素子の短絡を防止する必要のあるコンバータ装置において、スイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを低減することのできる技術が求められている。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決することのできる制御装置、制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る制御装置は、リアクトルの両端の差電圧に応じた電流を流す回路に流れる当該電流を、前記差電圧に基づいて制御する制御信号を生成する信号生成部と、前記回路において直列に接続された2つのスイッチング素子の一方がオン状態となっている各期間の中央のタイミング、または、前記制御信号の三角波キャリアの頂点のタイミングにおいて、入力電流を検出し、検出した入力電流から移動平均により求めた基本波電流成分と各高調波電流成分の2乗平均との割合により、前記回路における前記スイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを測定する歪み測定部と、を備える。
【0007】
本開示に係る制御方法は、リアクトルの両端の差電圧に応じた電流が流れる回路に流れる当該電流を、前記差電圧に基づいて制御する制御信号を生成することと、前記回路において直列に接続された2つのスイッチング素子の一方がオン状態となっている各期間の中央のタイミング、または、前記制御信号の三角波キャリアの頂点のタイミングにおいて、入力電流を検出し、検出した入力電流から移動平均により求めた基本波電流成分と各高調波電流成分の2乗平均との割合により、前記回路におけるスイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを測定することと、を含む。
【0008】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、リアクトルの両端の差電圧に応じた電流が流れる回路に流れる当該電流を、前記差電圧に基づいて制御する制御信号を生成することと、前記回路において直列に接続された2つのスイッチング素子の一方がオン状態となっている各期間の中央のタイミング、または、前記制御信号の三角波キャリアの頂点のタイミングにおいて、入力電流を検出し、検出した入力電流から移動平均により求めた基本波電流成分と各高調波電流成分の2乗平均との割合により、前記回路におけるスイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを測定することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施形態による制御装置、制御方法及びプログラムによれば、スイッチング素子の短絡を防止する必要のあるコンバータ装置において、スイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態によるモータ駆動装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態によるコンバータ制御部の構成の一例を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態における入力電流のリップル成分の移動平均を説明するための図である。
【
図4】本開示の一実施形態におけるパラメータを説明するための図である。
【
図5】本開示の一実施形態によるコンバータ制御部の処理フローを示す第1の図である。
【
図6】本開示の一実施形態によるコンバータ制御部の処理フローを示す第2の図である。
【
図7】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
(モータ駆動装置の構成)
本開示の一実施形態によるモータ駆動装置について説明する。
図1は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1の構成を示す図である。モータ駆動装置1は、三相交流電源4からの交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を三相交流電力に変換して圧縮機モータ20に出力する装置である。モータ駆動装置1は、
図1に示すように、コンバータ装置2(リアクトルの両端の差電圧に応じた電流が流れる回路の一例、コンバータ回路の一例)、インバータ装置3、リアクトル6a、6b、6c、平滑コンデンサ12、コンバータ制御部15、ゼロクロス検出部17、インバータ制御部19、入力電流検出部30を備える。
【0012】
三相交流電源4は、リアクトル6a、6b、6cを介して、コンバータ装置2に交流電力を供給する。
【0013】
コンバータ装置2は、三相交流電源4からの交流電力を直流電力に変換してインバータ装置3に出力する装置である。
リアクトル6a、スイッチング素子7a、スイッチング素子8aは、第1スイッチング回路を構成する。第1スイッチング回路は、R相に対応する回路である。
リアクトル6b、スイッチング素子7b、スイッチング素子8bは、第2スイッチング回路を構成する。第2スイッチング回路は、S相に対応する回路である。
リアクトル6c、スイッチング素子7c、スイッチング素子8cは、第3スイッチング回路を構成する。第3スイッチング回路は、T相に対応する回路である。
これら第1~第3スイッチング回路と平滑コンデンサ12とによって整流回路が構成される。この整流回路は、インバータ装置3に入力される電圧を生成する。
【0014】
スイッチング素子7a、スイッチング素子8aは、コンバータ制御部15が生成する信号SgSに応じて、オン状態となる期間とオフ状態となる期間とが切り替わることにより、第1スイッチング回路に流れる電流の値を変化させる。
同様に、スイッチング素子7b、スイッチング素子8bは、コンバータ制御部15が生成する信号SgRに応じて、オン状態となる期間とオフ状態となる期間とが切り替わることにより、第2スイッチング回路に流れる電流の値を変化させる。
また、スイッチング素子7c、スイッチング素子8vは、コンバータ制御部15が生成する信号SgTに応じて、オン状態となる期間とオフ状態となる期間とが切り替わることにより、第3スイッチング回路に流れる電流の値を変化させる。
なお、スイッチング素子7a、7b、7c、8a、8b、8cとしては、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が挙げられる。
【0015】
平滑コンデンサ12は、第1スイッチング回路、第2スイッチング回路、第3スイッチング回路のそれぞれから電流を受ける。つまり、インバータ装置3に入力される電圧は、第1スイッチング回路、第2スイッチング回路、第3スイッチング回路のそれぞれから平滑コンデンサ12に流れる電流値の総和によって決定される。
【0016】
入力電流検出部30は、三相交流電源4のR相、S相、T相それぞれに流れる電流(以下、「入力電流」と記載)を検出する。入力電流検出部30は、検出した入力電流の情報をコンバータ制御部15に与える。
【0017】
ゼロクロス検出部17は、三相交流電源4が出力する電圧のゼロクロス点を検出する。ゼロクロス点は、三相交流電源4が出力する電圧がゼロボルトを交差する時刻を示し、その時刻がモータ駆動装置1の処理において基準の時刻となる。ゼロクロス検出部17は、セロクロス点の情報を含むゼロクロス信号を生成する。ゼロクロス検出部17は、ゼロクロス信号をコンバータ制御部15に出力する。
【0018】
インバータ装置3は、コンバータ装置2から出力された直流電力を三相交流電力に変換して圧縮機モータ20に出力する装置である。インバータ装置3は、スイッチング素子181、182、183、184、185、186を備える。スイッチング素子181、182、183、184、185、186としては、パワー電界効果トランジスタ、IGBT等が挙げられる。
スイッチング素子181~186は、ブリッジ回路を構成する。具体的には、スイッチング素子181と182、スイッチング素子183と184、スイッチング素子185と186のそれぞれが対を成してブリッジ回路が構成される。スイッチング素子181~186のそれぞれは、インバータ制御部19から受ける信号に応じて、オン状態となる期間とオフ状態となる期間とが切り替わることにより、スイッチング素子181~186のそれぞれに流れる電流を制御し、圧縮機モータ20を駆動する三相交流電力を生成する。この三相交流電力が圧縮機モータ20に出力されることにより、圧縮機モータ20が動作する。
【0019】
インバータ制御部19は、スイッチング素子181のオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子181に出力する。また、インバータ制御部19は、スイッチング素子182のオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子182に出力する。同様に、インバータ制御部19は、スイッチング素子183~186のそれぞれがオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子181~186のそれぞれに出力する。なお、
図1では、インバータ制御部19からインバータ装置3に出力されるゲート駆動信号をまとめてゲート駆動信号Spwmと示している。インバータ制御部19は、ブリッジ回路を構成するスイッチング素子181~186それぞれの開閉を制御する。インバータ制御部19は、例えば、図示していない上位装置から入力される要求回転数指令に基づいて、スイッチング素子181~186のゲート駆動信号Spwmを生成する。インバータ制御部19は、生成したゲート駆動信号Spwmをインバータ装置3に与える。なお、インバータ制御の具体的な手法の例としては、ベクトル制御、センサレスベクトル制御、V/F(Variable Frequency)制御、過変調制御、1パルス制御などが挙げられる。
【0020】
なお、上記のような制御を実現する際に、特開2014-150622号公報に記載されているように、直流電圧検出部、及び、モータ電流検出部が設けられてもよい。
直流電圧検出部は、インバータ装置3におけるブリッジ回路の入力直流電圧Vdcを検出する検出部である。
モータ電流検出部は、圧縮機モータ20に流れる各相電流iu、iv、iwを検出する検出部である。モータ電流検出部は、これらの検出値Vdc、iu、iv、iwをインバータ制御部19に入力する。なお、モータ電流検出部は、インバータ装置3におけるブリッジ回路と平滑コンデンサ12の間の負極側電力線に流れる電流を検出し、この検出信号から各相電流iu、iv、iwを取得するものであってもよい。
【0021】
コンバータ制御部15は、ゼロクロス点を基準に入力電流波形を観測し、観測した入力電流波形に基づいて、信号SgR、SgS、SgTのそれぞれを生成し、信号SgR、SgS、SgTのそれぞれを用いてコンバータ装置2を制御する制御部である。
【0022】
図2は、コンバータ制御部15の機能ブロック図である。
コンバータ制御部15は、
図2に示すように、波形観測部21、位相調整部22、制御信号生成部23(信号生成部の一例、制御部の一例)、歪み測定部24、記憶部25を備える。
【0023】
波形観測部21は、ゼロクロス検出部17が検出した三相交流電源4のゼロクロス点を示すゼロクロス信号をゼロクロス検出部17から受ける。波形観測部21は、入力電流検出部30から入力電流波形を受ける。波形観測部21は、ゼロクロス点を基準として、入力電流波形を観測する。
【0024】
位相調整部22は、ゼロクロス検出部17で検出した電圧の位相と入力電流検出部30で検出した電流の位相を同相にするために位相を調整する。
【0025】
制御信号生成部23は、波形観測部21による観測結果に基づいて、第1スイッチング回路を制御するための第1スイッチング信号SgR(制御信号の一例)、第2スイッチング回路を制御するための第2スイッチング信号SgS(制御信号の一例)、第3スイッチング回路を制御するための第3スイッチング信号SgT(制御信号の一例)を生成する。なお、第1スイッチング信号SgR、第2スイッチング信号SgS、第3スイッチング信号SgTのそれぞれには、スイッチング素子どうしの短絡(つまりは、貫通電流の発生)を考慮したデッドタイムを設けた2つのスイッチング素子を動作させる電圧指令が含まれている。
ここで、R相に対応する第1スイッチング回路を制御するための電圧指令である第1スイッチング信号SgRの生成について、具体例を挙げて説明する。
【0026】
波形観測部21が観測したR相の入力電流が、例えば、
図3の(c)の部分に示すような波形であったとする。なお、
図3において、横軸は図示していない基準からの時間を示している。また、
図3の(a)の部分は、スイッチング素子7aがオン状態となる期間とオフ状態となる期間を示している。また、
図3の(b)の部分は、スイッチング素子8aがオン状態となる期間とオフ状態となる期間を示している。また、
図3の(c)の部分は、リップルが重畳されたR相の入力電流IRを示している。
【0027】
そして、本実施形態では、制御信号生成部23は、波形観測部21が観測した入力電流IRにおけるリップル成分の移動平均を特定する。入力電流IRにおけるリップル成分の移動平均を求める方法としては、スイッチング素子7aがオン状態となっている各期間の中央のタイミング、スイッチング素子8aがオン状態となっている各期間の中央のタイミング、または、PWM(Pulse Width Modulation)信号の三角波キャリアの頂点のタイミングにおいて、入力電流IRを検出すればよいことが公知技術として知られている(例えば、特許文献1。ただし、特許文献1では、平均値は示されているが、その平均値を使用することは示されていない。)。
なお、
図3に示す入力電流IRにおけるリップル成分の移動平均の例は、スイッチング素子8aがオン状態となっている各期間の中央のタイミング、すなわち、入力電流IRの黒丸のタイミングで入力電流IRをサンプリングする場合の例である。
【0028】
制御信号生成部23は、入力電流IRにおけるリップル成分の移動平均に基づいて、歪み率μを算出する。そして、制御信号生成部23は、算出した歪み率μに基づいて、
図4に示す3つのパラメータVc、θon、θoffを調整することにより、入力電流IRにおける高調波を低減する。
【0029】
パラメータθon、θoffは、デッドタイムの期間を設定するためのパラメータであり、位相を示すパラメータである。また、パラメータVcは、スイッチング素子どうしの短絡を防止する期間における出力電圧の誤差の補償量を示すパラメータである。
歪みが発生した場合(すなわち、歪み率が0でない場合)、制御信号生成部23は、歪み率μが0の場合のR相の電圧指令VRに、歪み補償量ΔVRを加えて電圧指令である第1スイッチング信号SgRを生成する。
【0030】
図4に示す例の場合、位相0~2πの期間のうち、位相0~θonの期間、(π-θoff)~(π+θon)の期間、(2π-θoff)~2πの期間には、制御信号生成部23は、電圧指令VRを第1スイッチング信号SgRとする。また、位相0~2πの期間のうち、位相θon~(π-θoff)の期間には、制御信号生成部23は、電圧指令VRに歪み補償量Vcを加えたものを第1スイッチング信号SgRとする。また、位相0~2πの期間のうち、位相(π+θon~(2π-θoff)の期間には、制御信号生成部23は、電圧指令VRから歪み補償量Vcを減じたものを第1スイッチング信号SgRとする。
【0031】
なお、上述の第1スイッチング信号SgRを生成する方法において、力率は1である(すなわち、R相の電圧の位相とR相の電流の位相が同相である)と仮定している。制御信号生成部23は、上述の第1スイッチング信号SgRを生成する方法を、S相に対応する第2スイッチング回路を制御するための第2スイッチング信号SgSの生成、及び、T相に対応する第3スイッチング回路を制御するための第3スイッチング信号SgTの生成のそれぞれに適用することにより、第1スイッチング信号SgRと同様に、第2スイッチング信号SgS、第3スイッチング信号SgTを生成することができる。
【0032】
3つのパラメータVc、θon、θoffを調整するより具体的な方法については、後に処理フローを用いて説明する。
【0033】
制御信号生成部23が、パラメータVc、θon、θoffに基づいて第1スイッチング信号SgRを変化させたとき、すなわち、第1スイッチング信号SgRを変化させたときに生じる入力電流の歪みを歪み測定部24は測定する。ここで歪み測定部24が行う入力電流の歪みの測定は、波形観測部21が受けた入力電流波形に基づくものであり、例えば、フーリエ変換して各周波数成分の割合から歪みを算出するものであってもよいし、その他の技術を用いて算出されるものであってもよい。
なお、ここでの歪みは、次の式(1)によって示される歪み率μである。
【0034】
【0035】
なお、式(1)において、I1は基本波電流成分、I2は2次高調波電流成分、I3は3次高調波電流成分、I4は4次高調波電流成分である。
そして、制御信号生成部23は、歪み測定部24が測定した入力電流の歪みが最も小さいときのパラメータを用いて電圧指令を生成することにより、入力電流における歪みを打ち消すことができる。
【0036】
記憶部25は、コンバータ制御部15が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。例えば、記憶部25は、歪み測定部24の測定結果を記憶する。
【0037】
次に、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1の処理について説明する。
ここでは、
図5及び
図6に示すコンバータ制御部15の処理フローについて説明する。
なお、
図5及び
図6に示すコンバータ制御部15の処理は、R相の入力電流IRについての処理である。
【0038】
コンバータ制御部15は、
図5に示すように、パラメータVcを設定するステップS1の処理を行う。このステップS1の処理は、
図6に示す処理フローのように行われる。具体的には、パラメータVcを設定するステップS1の処理は、以下に示すステップS11a~S27aの処理である。なお、
図6に示す処理フローは、後述するステップS11b~S27b、ステップS11c~S27cに共通であるため、
図6では単にステップS11~S27としている。
【0039】
制御信号生成部23は、パラメータVc、θon、θoffを初期パラメータとして電圧指令のパラメータを生成する(ステップS11a)。なお、パラメータVcの初期パラメータをVc1、パラメータθonの初期パラメータをθon1、パラメータθoffの初期パラメータをθoff1とする。また、このときのパラメータVc1、θon1、θoff1の組み合わせをパラメータParam1とする。制御信号生成部23は、パラメータParam1について生成された第1スイッチング信号SgRを第1スイッチング回路に出力する。制御信号生成部23は、パラメータParam1の値を歪み測定部24に出力する。
【0040】
波形観測部21は、入力電流検出部30からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流を受ける(ステップS12a)。波形観測部21は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値を歪み測定部24に出力する。
【0041】
歪み測定部24は、制御信号生成部23からパラメータParam1の値を受ける。また、歪み測定部24は、波形観測部21からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値を受ける。歪み測定部24は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値に基づいて、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の歪みを測定する(ステップS13a)。歪み測定部24は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の歪みの測定結果とパラメータParam1とを関連付けて記憶部25に記憶する(ステップS14a)。歪み測定部24は、制御信号生成部23に測定の完了を通知する。
【0042】
制御信号生成部23は、歪み測定部24から測定の完了の通知を受けると、パラメータθon1、θoff1を変えずに、パラメータVc1よりもパラメータVcの最小設定幅ΔVcだけ大きい値に設定したパラメータVc2について電圧指令を生成する(ステップS15a)。この場合のパラメータVc2、θon1、θoff1の組み合わせをパラメータParam2とする。制御信号生成部23は、パラメータParam2について生成された第1スイッチング信号SgRを第1スイッチング回路に出力する。制御信号生成部23は、パラメータParam2の値を歪み測定部24に出力する。
【0043】
波形観測部21は、入力電流検出部30からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流を受ける(ステップS16a)。波形観測部21は、受けた入力電流の値を歪み測定部24に出力する。
【0044】
歪み測定部24は、制御信号生成部23からパラメータParam2の値を受ける。また、歪み測定部24は、波形観測部21からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値を受ける。歪み測定部24は、入力電流の値に基づいて、入力電流の歪みを測定する(ステップS17a)。歪み測定部24は、この入力電流の歪の測定結果とパラメータParam2とを関連付けて記憶部25に記憶する(ステップS18a)。歪み測定部24は、制御信号生成部23に測定の完了を通知する。
【0045】
制御信号生成部23は、歪み測定部24から測定の完了の通知を受けると、パラメータθon1、θoff1を変えずに、パラメータVc1よりも最小設定幅ΔVcだけ小さい値に設定したVc3について電圧指令を生成する(ステップS19a)。この場合のパラメータVc3、θon1、θoff1の組み合わせをパラメータParam3とする。制御信号生成部23は、パラメータParam3について生成された第1スイッチング信号SgRを第1スイッチング回路に出力する。制御信号生成部23は、パラメータParam3の値を歪み測定部24に出力する。
【0046】
波形観測部21は、入力電流検出部30から入力電流を受ける(ステップS20a)。波形観測部21は、受けた入力電流の値を歪み測定部24に出力する。
【0047】
歪み測定部24は、制御信号生成部23からパラメータParam3の値を受ける。また、歪み測定部24は、波形観測部21から入力電流の値を受ける。歪み測定部24は、入力電流の値に基づいて、入力電流の歪みを測定する(ステップS21a)。歪み測定部24は、この入力電流の歪の測定結果とパラメータParam3とを関連付けて記憶部25に記憶する(ステップS22a)。歪み測定部24は、制御信号生成部23に測定の完了を通知する。
【0048】
制御信号生成部23は、歪み測定部24から測定の完了の通知を受けると、記憶部25からパラメータParam1、パラメータParam2、パラメータParam3のそれぞれに関連付けられた入力電流の歪みの測定結果を読み出す。制御信号生成部23は、パラメータParam1についての入力電流の歪みを第1の入力電流の歪み、パラメータParam2についての入力電流の歪みを第2の入力電流の歪み、パラメータParam3についての入力電流の歪みを第3の入力電流の歪みとして、記憶部25に書き込む。制御信号生成部23は、第1~第3の入力電流の歪みの測定結果を比較し、第1の入力電流の歪みが最小であるか否かを判定する(ステップS23a)。
制御信号生成部23は、第1の入力電流の歪みが最小であると判定した場合(ステップS23aにおいてYES)、つまり、3つの異なるパラメータVc1、Vc1-ΔVc、Vc1+ΔVcのうち中間の値(この場合、パラメータVc1)を用いたときに歪みが極小値をとると判定した場合、固定値として設定するパラメータとして第1の入力電流の歪みが得られるパラメータ(この場合、パラメータParam1)を、例えば、記憶部25に書き込むことにより設定し(ステップS24a)、パラメータθonを設定する処理へ進める。
【0049】
また、制御信号生成部23は、第1の入力電流の歪みが最小でないと判定した場合(ステップS23aにおいてNO)、第2の入力電流の歪みが最小であるか否かを判定する(ステップS25a)。
制御信号生成部23は、第2の入力電流の歪みが最小であると判定した場合(ステップS25aにおいてYES)、固定値として設定するパラメータとして第2の入力電流の歪みが得られるパラメータ(この場合、パラメータParam2)を設定し(ステップS26a)、パラメータθonを設定する処理へ進める。
【0050】
また、制御信号生成部23は、第2の入力電流の歪みが最小でないと判定した場合(ステップS25aにおいてNO)、固定値として設定するパラメータとして第3の入力電流の歪みが得られるパラメータ(この場合、パラメータParam3)を設定し(ステップS27a)、パラメータθonを設定する処理へ進める。
【0051】
次に、コンバータ制御部15は、
図5に示すように、パラメータθonを設定するステップS2の処理を行う。ステップS2の処理は、パラメータθon以外のステップS1の処理において設定されたパラメータを変えずに、パラメータθonを設定する処理である。
図5に示すステップS2の処理は、
図6に示す処理フローのように行われる。具体的には、パラメータθonを設定するステップS3の処理は、以下に示すステップS11b~S27bの処理である。
【0052】
制御信号生成部23は、ステップS1の処理において設定されたパラメータVc、θon、θoffを初期パラメータとして電圧指令のパラメータを生成する(ステップS11b)。なお、説明の都合上、ステップS1の処理において設定されたパラメータVcをVc1、ステップS1の処理において設定されたパラメータθonをθon1、ステップS1の処理において設定されたパラメータθoffをθoff1とする。また、このときのパラメータVc1、θon1、θoff1の組み合わせをパラメータParam1とする。制御信号生成部23は、パラメータParam1について生成された第1スイッチング信号SgRを第1スイッチング回路に出力する。制御信号生成部23は、パラメータParam1の値を歪み測定部24に出力する。
【0053】
波形観測部21は、入力電流検出部30からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流を受ける(ステップS12b)。波形観測部21は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値を歪み測定部24に出力する。
【0054】
歪み測定部24は、制御信号生成部23からパラメータParam1の値を受ける。また、歪み測定部24は、波形観測部21からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値を受ける。歪み測定部24は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値に基づいて、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の歪みを測定する(ステップS13b)。歪み測定部24は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の歪みの測定結果とパラメータParam1とを関連付けて記憶部25に記憶する(ステップS14b)。歪み測定部24は、制御信号生成部23に測定の完了を通知する。
【0055】
制御信号生成部23は、歪み測定部24から測定の完了の通知を受けると、パラメータVc1、θoff1を変えずに、パラメータθon1よりもパラメータθonの最小設定幅Δθonだけ大きい値に設定したパラメータθon2について電圧指令を生成する(ステップS15b)。この場合のパラメータVc1、θon2、θoff1の組み合わせをパラメータParam2とする。制御信号生成部23は、パラメータParam2について生成された第1スイッチング信号SgRを第1スイッチング回路に出力する。制御信号生成部23は、パラメータParam2の値を歪み測定部24に出力する。
【0056】
波形観測部21は、入力電流検出部30からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流を受ける(ステップS16b)。波形観測部21は、受けた入力電流の値を歪み測定部24に出力する。
【0057】
歪み測定部24は、制御信号生成部23からパラメータParam2の値を受ける。また、歪み測定部24は、波形観測部21からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値を受ける。歪み測定部24は、入力電流の値に基づいて、入力電流の歪みを測定する(ステップS17b)。歪み測定部24は、この入力電流の歪の測定結果とパラメータParam2とを関連付けて記憶部25に記憶する(ステップS18b)。歪み測定部24は、制御信号生成部23に測定の完了を通知する。
【0058】
制御信号生成部23は、歪み測定部24から測定の完了の通知を受けると、パラメータVc1、θoff1を変えずに、パラメータθon1よりも最小設定幅Δθonだけ小さい値に設定したパラメータθon3について電圧指令を生成する(ステップS19b)。この場合のパラメータVc1、θon3、θoff1の組み合わせをパラメータParam3とする。制御信号生成部23は、パラメータParam3について生成された第1スイッチング信号SgRを第1スイッチング回路に出力する。制御信号生成部23は、パラメータParam3の値を歪み測定部24に出力する。
【0059】
波形観測部21は、入力電流検出部30から入力電流を受ける(ステップS20b)。波形観測部21は、受けた入力電流の値を歪み測定部24に出力する。
【0060】
歪み測定部24は、制御信号生成部23からパラメータParam3の値を受ける。また、歪み測定部24は、波形観測部21から入力電流の値を受ける。歪み測定部24は、入力電流の値に基づいて、入力電流の歪みを測定する(ステップS21b)。歪み測定部24は、この入力電流の歪の測定結果とパラメータParam3とを関連付けて記憶部25に記憶する(ステップS22b)。歪み測定部24は、制御信号生成部23に測定の完了を通知する。
【0061】
制御信号生成部23は、歪み測定部24から測定の完了の通知を受けると、記憶部25からパラメータParam1、パラメータParam2、パラメータParam3のそれぞれに関連付けられた入力電流の歪みの測定結果を読み出す。制御信号生成部23は、パラメータParam1についての入力電流の歪みを第1の入力電流の歪み、パラメータParam2についての入力電流の歪みを第2の入力電流の歪み、パラメータParam3についての入力電流の歪みを第3の入力電流の歪みとして、記憶部25に書き込む。制御信号生成部23は、第1~第3の入力電流の歪みの測定結果を比較し、第1の入力電流の歪みが最小であるか否かを判定する(ステップS23b)。
制御信号生成部23は、第1の入力電流の歪みが最小であると判定した場合(ステップS23bにおいてYES)、つまり、3つの異なるパラメータθon1、θon1-Δθon、θon1+Δθonのうち中間の値(この場合、パラメータθon1)を用いたときに歪みが極小値をとると判定した場合、固定値として設定するパラメータとして第1の入力電流の歪みが得られるパラメータ(この場合、パラメータParam1)を、例えば、記憶部25に書き込むことにより設定し(ステップS24b)、パラメータθoffを設定する処理へ進める。
【0062】
また、制御信号生成部23は、第1の入力電流の歪みが最小でないと判定した場合(ステップS23bにおいてNO)、第2の入力電流の歪みが最小であるか否かを判定する(ステップS25b)。
制御信号生成部23は、第2の入力電流の歪みが最小であると判定した場合(ステップS25bにおいてYES)、固定値として設定するパラメータとして第2の入力電流の歪みが得られるパラメータ(この場合、パラメータParam2)を設定し(ステップS26b)、パラメータθoffを設定する処理へ進める。
【0063】
また、制御信号生成部23は、第2の入力電流の歪みが最小でないと判定した場合(ステップS25bにおいてNO)、固定値として設定するパラメータとして第3の入力電流の歪みが得られるパラメータ(この場合、パラメータParam3)を設定し(ステップS27b)、パラメータθoffを設定する処理へ進める。
【0064】
次に、コンバータ制御部15は、
図5に示すように、パラメータθoffを設定するステップS3の処理を行う。ステップS3の処理は、パラメータθoff以外のステップS2の処理において設定されたパラメータを変えずに、パラメータθoffを設定する処理である。
図5に示すステップS3の処理は、
図6に示す処理フローのように行われる。具体的には、パラメータθoffを設定するステップS3の処理は、以下に示すステップS11c~S27cの処理である。
【0065】
制御信号生成部23は、ステップS2の処理において設定されたパラメータVc、θon、θoffを初期パラメータとして電圧指令のパラメータを生成する(ステップS11c)。なお、説明の都合上、ステップS2の処理において設定されたパラメータVcをVc1、ステップS2の処理において設定されたパラメータθonをθon1、ステップS2の処理において設定されたパラメータθoffをθoff1とする。また、このときのパラメータVc1、θon1、θoff1の組み合わせをパラメータParam1とする。制御信号生成部23は、パラメータParam1について生成された第1スイッチング信号SgRを第1スイッチング回路に出力する。制御信号生成部23は、パラメータParam1の値を歪み測定部24に出力する。
【0066】
波形観測部21は、入力電流検出部30からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流を受ける(ステップS12c)。波形観測部21は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値を歪み測定部24に出力する。
【0067】
歪み測定部24は、制御信号生成部23からパラメータParam1の値を受ける。また、歪み測定部24は、波形観測部21からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値を受ける。歪み測定部24は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値に基づいて、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の歪みを測定する(ステップS13c)。歪み測定部24は、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の歪みの測定結果とパラメータParam1とを関連付けて記憶部25に記憶する(ステップS14c)。歪み測定部24は、制御信号生成部23に測定の完了を通知する。
【0068】
制御信号生成部23は、歪み測定部24から測定の完了の通知を受けると、パラメータVc1、θon1を変えずに、パラメータθoff1よりもパラメータθoffの最小設定幅Δθoffだけ大きい値に設定したパラメータθoff2について電圧指令を生成する(ステップS15c)。この場合のパラメータVc1、θon1、θoff2の組み合わせをパラメータParam2とする。制御信号生成部23は、パラメータParam2について生成された第1スイッチング信号SgRを第1スイッチング回路に出力する。制御信号生成部23は、パラメータParam2の値を歪み測定部24に出力する。
【0069】
波形観測部21は、入力電流検出部30からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流を受ける(ステップS16c)。波形観測部21は、受けた入力電流の値を歪み測定部24に出力する。
【0070】
歪み測定部24は、制御信号生成部23からパラメータParam2の値を受ける。また、歪み測定部24は、波形観測部21からゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流の値を受ける。歪み測定部24は、入力電流の値に基づいて、入力電流の歪みを測定する(ステップS17c)。歪み測定部24は、この入力電流の歪の測定結果とパラメータParam2とを関連付けて記憶部25に記憶する(ステップS18c)。歪み測定部24は、制御信号生成部23に測定の完了を通知する。
【0071】
制御信号生成部23は、歪み測定部24から測定の完了の通知を受けると、パラメータVc1、θon1を変えずに、パラメータθoff1よりも最小設定幅Δθoffだけ小さい値に設定したパラメータθoff3について電圧指令を生成する(ステップS19c)。この場合のパラメータVc1、θon1、θoff3の組み合わせをパラメータParam3とする。制御信号生成部23は、パラメータParam3について生成された第1スイッチング信号SgRを第1スイッチング回路に出力する。制御信号生成部23は、パラメータParam3の値を歪み測定部24に出力する。
【0072】
波形観測部21は、入力電流検出部30から入力電流を受ける(ステップS20c)。波形観測部21は、受けた入力電流の値を歪み測定部24に出力する。
【0073】
歪み測定部24は、制御信号生成部23からパラメータParam3の値を受ける。また、歪み測定部24は、波形観測部21から入力電流の値を受ける。歪み測定部24は、入力電流の値に基づいて、入力電流の歪みを測定する(ステップS21c)。歪み測定部24は、この入力電流の歪の測定結果とパラメータParam3とを関連付けて記憶部25に記憶する(ステップS22c)。歪み測定部24は、制御信号生成部23に測定の完了を通知する。
【0074】
制御信号生成部23は、歪み測定部24から測定の完了の通知を受けると、記憶部25からパラメータParam1、パラメータParam2、パラメータParam3のそれぞれに関連付けられた入力電流の歪みの測定結果を読み出す。制御信号生成部23は、パラメータParam1についての入力電流の歪みを第1の入力電流の歪み、パラメータParam2についての入力電流の歪みを第2の入力電流の歪み、パラメータParam3についての入力電流の歪みを第3の入力電流の歪みとして、記憶部25に書き込む。制御信号生成部23は、第1~第3の入力電流の歪みの測定結果を比較し、第1の入力電流の歪みが最小であるか否かを判定する(ステップS23c)。
制御信号生成部23は、第1の入力電流の歪みが最小であると判定した場合(ステップS23cにおいてYES)、つまり、3つの異なるパラメータθoff1、θoff1-Δθoff、θoff1+Δθoffのうち中間の値(この場合、パラメータθoff1)を用いたときに歪みが極小値をとると判定した場合、固定値として設定するパラメータとして第1の入力電流の歪みが得られるパラメータ(この場合、パラメータParam1)を、例えば、記憶部25に書き込むことにより設定する(ステップS24c)。
そして、制御信号生成部23は、
図5に示すステップS1、ステップS2、ステップS3のすべてのステップでパラメータParam1が設定されたか否かを判定するステップS4の処理へ進める。
【0075】
また、制御信号生成部23は、第1の入力電流の歪みが最小でないと判定した場合(ステップS23cにおいてNO)、第2の入力電流の歪みが最小であるか否かを判定する(ステップS25c)。
制御信号生成部23は、第2の入力電流の歪みが最小であると判定した場合(ステップS25cにおいてYES)、固定値として設定するパラメータとして第2の入力電流の歪みが得られるパラメータ(この場合、パラメータParam2)を設定する(ステップS26c)。
そして、制御信号生成部23は、
図5に示すステップS1、ステップS2、ステップS3のすべてのステップでパラメータParam1が設定されたか否かを判定するステップS4の処理へ進める。
【0076】
また、制御信号生成部23は、第2の入力電流の歪みが最小でないと判定した場合(ステップS25cにおいてNO)、固定値として設定するパラメータとして第3の入力電流の歪みが得られるパラメータ(この場合、パラメータParam3)を設定する(ステップS27c)。
そして、制御信号生成部23は、
図5に示すステップS1、ステップS2、ステップS3のすべてのステップでパラメータParam1が設定されたか否かを判定するステップS4の処理へ進める。
【0077】
制御信号生成部23は、ステップS4の処理において、ステップS1、ステップS2、ステップS3のうちの少なくとも1つのステップでパラメータParam1が設定されていないと判定した場合、ステップS1の処理に戻す。
また、制御信号生成部23は、ステップS4の処理において、ステップS1、ステップS2、ステップS3のすべてのステップでパラメータParam1が設定されたと判定した場合、処理を完了する。
制御信号生成部23は、設定したVc、θon、θoffをパラメータとして電圧指令を生成する。
【0078】
なお、
図5及び
図6を用いて説明した本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1の処理において、ゼロクロス点から次のゼロクロス点までの入力電流は、自然数回分の入力電流の測定結果を平均化することで、ノイズや圧縮機モータ20にかかる負荷変動の影響を減らすことができる。
【0079】
以上、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1について説明した。
本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1のコンバータ制御部15において、制御信号生成部23は、リアクトル(6a、6b、6c)の両端の差電圧に応じた電流が流れるコンバータ回路において流れる当該電流を制御するスイッチング信号(第1スイッチング信号、第2スイッチング信号、第3スイッチング信号)を生成する。歪み測定部24は、制御信号生成部23が生成するスイッチング信号についてコンバータ回路に流れる電流のリップル成分の移動平均に基づいて歪みを測定する。
こうすることで、モータ駆動装置1は、制御信号生成部23、リアクトルの両端の差電圧に応じた電流が流れるコンバータ回路を、生成したスイッチング信号で制御することが可能になり、スイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを低減することができる。
【0080】
なお、本発明の別の実施形態では、電源が3相の電源である場合、基本波に重畳させる高調波成分を(6n-1)次と(6n+1)次の高調波(ただし、nは1以上の整数)とするものであってもよい。
つまり、Vcをf5s×sin(5θ)+f5c×cos(5θ)+f7s×sin(7θ)+f7c×cos(7θ)+・・・と定義し、f5s、f5c、f7s、f7c、・・・を変更することにより、5次、7次、・・・の高調波成分を低減するものであってもよい。なお、f5sは、5次高調波の正弦波成分の振幅を示す。また、f5cは、5次高調波の余弦波成分の振幅を示す。また、f7sは、7次高調波の正弦波成分の振幅を示す。また、f7cは、7次高調波の余弦波成分の振幅を示す。
【0081】
なお、本開示の一実施形態では、コンバータ制御部15は、歪みの極小値を算出する例を示したが、本開示の別の実施形態では歪みの最小値を算出するものであってもよい。本開示の別の実施形態では、コンバータ制御部15は、例えば、取り得るパラメータのすべてについて入力電流歪みを測定し、歪みの最小値を特定するものであってもよい。また、コンバータ制御部15は、別の方法によって歪みの最小値を特定するものであってもよい。
また、本開示の一実施形態においてコンバータ制御部15が歪みの極小値を特定する方法は、上記の方法に限定するものではない。本開示の一実施形態においてコンバータ制御部15が歪みの極小値を特定する方法は、ニュートン法など別の方法を用いるものであってもよい。
【0082】
なお、本開示の一実施形態では、歪み(歪み率μ)を算出する例を示したが、本開示の別の実施形態では歪みの代わりに次の式(2)に示す総合力率PFを用いるものであってもよい。
【0083】
【0084】
式(2)において、符号φは、三相交流電源4の各相(すなわち、R相、S相、T相)における電圧と電流の位相差である。このように力率を用いる場合、力率cosφを含めて入力電流を低減するように調整することができる。これは、コンバータ装置2の入力の有効電力VIcosφが、コンバータ装置2の動作に係わらず、インバータ装置3により決定するため、コンバータ装置2の力率がよくなると、コンバータ装置2の入力の無効電力VIsinφが減り、有効電力と無効電力の二乗和平方根である皮相電力VIも低減するという考えに基づくものである。
【0085】
なお、本開示の一実施形態では、三相交流電源4の例を示したが、本開示の別の実施形態では電源は三相以外の相の電圧及び電流を出力する電源であってもよい。
【0086】
なお、本開示の各実施形態における記憶部25、その他の記憶部は、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部25、その他の記憶部は、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0087】
なお、本開示の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0088】
本開示の実施形態における記憶部25や記憶装置(レジスタ、ラッチを含む)のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部25や記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0089】
本開示の実施形態について説明したが、上述のコンバータ制御部15、インバータ制御部19、その他の制御装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
図7は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ5は、
図7に示すように、CPU6、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。
例えば、上述のコンバータ制御部15、インバータ制御部19、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
【0090】
ストレージ8の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ8は、コンピュータ5のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース9または通信回線を介してコンピュータ5に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ5に配信される場合、配信を受けたコンピュータ5が当該プログラムをメインメモリ7に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ8は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0091】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0092】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、種々の省略、種々の置き換え、種々の変更を行ってよい。
【0093】
<付記>
本開示の各実施形態に記載の制御装置(15)、制御方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0094】
(1)第1の態様に係る制御装置(15)は、リアクトル(6a、6b、6c)の両端の差電圧に応じた電流を流す回路(6aと7aと8a、6bと7bと8b、6cと7cと8c)に流れる当該電流を制御する制御信号を生成する信号生成部(23)と、前記制御信号について前記回路(6aと7aと8a、6bと7bと8b、6cと7cと8c)に流れる電流のリップル成分の移動平均に基づいて歪みを測定する歪み測定部(24)と、を備える。
【0095】
この制御装置(15)により、スイッチング素子の短絡を補償する必要のあるコンバータ装置(2)において、スイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを低減することができる。
【0096】
(2)第2の態様に係る制御装置(15)は、(1)の制御装置(15)であって、前記信号生成部(23)は、リアクトル(6a、6b、6c)の両端の差電圧に応じた電流が流れるコンバータ回路(2)に流れる当該電流を制御する制御信号を生成し、前記歪み測定部(24)は、前記制御信号について前記コンバータ回路(2)に流れる電流の歪みを測定するものであってもよい。
【0097】
この制御装置(15)により、スイッチング素子の短絡を補償する必要のあるコンバータ装置(2)において、スイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを低減することができる。
【0098】
(3)第3の態様に係る制御装置(15)は、(1)または(2)の制御装置(15)であって、前記信号生成部(23)が生成した制御信号を用いて前記回路を制御する制御部(23)、を備え、前記信号生成部(23)は、前記制御信号についての前記歪みのうち極小値または最小値となる歪みについて前記制御信号を生成するものであってもよい。
【0099】
この制御装置(15)により、スイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを第1の態様及び第2の態様に比べて入力電流の歪みをより低減することができる。
【0100】
(4)第4の態様に係る制御方法は、リアクトル(6a、6b、6c)の両端の差電圧に応じた電流が流れる回路(6aと7aと8a、6bと7bと8b、6cと7cと8c)に流れる当該電流を制御する制御信号を生成することと、前記制御信号について前記回路(6aと7aと8a、6bと7bと8b、6cと7cと8c)に流れる電流のリップル成分の移動平均に基づいて歪みを測定することと、を含む。
【0101】
この制御方法により、スイッチング素子の短絡を補償する必要のあるコンバータ装置(2)において、スイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを低減することができる。
【0102】
(5)第5の態様に係るプログラムは、コンピュータ(5)に、リアクトル(6a、6b、6c)の両端の差電圧に応じた電流が流れる回路(6aと7aと8a、6bと7bと8b、6cと7cと8c)に流れる当該電流を制御する制御信号を生成することと、前記制御信号について前記回路(6aと7aと8a、6bと7bと8b、6cと7cと8c)に流れる電流のリップル成分の移動平均に基づいて歪みを測定することと、を実行させる。
【0103】
このプログラムにより、スイッチング素子の短絡を補償する必要のあるコンバータ装置(2)において、スイッチング素子の短絡を防止する期間に生じる入力電流の歪みを低減することができる。
【符号の説明】
【0104】
1・・・モータ駆動装置
2・・・コンバータ装置
3・・・インバータ装置
5・・・コンピュータ
6・・・CPU
6a、6b、6c・・・リアクトル
7・・・メインメモリ
7a、7b、7c、8a、8b、8c、181、182、183、184、185、186・・・スイッチング素子
8・・・ストレージ
9・・・インターフェース
12・・・平滑コンデンサ
15・・・コンバータ制御部
17・・・ゼロクロス検出部
19・・・インバータ制御部
20・・・圧縮機モータ
21・・・波形観測部
22・・・位相調整部
23・・・制御信号生成部
24・・・歪み測定部
25・・・記憶部
30・・・入力電流検出部