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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/622 20210101AFI20240229BHJP
   G01N 27/624 20210101ALI20240229BHJP
【FI】
G01N27/622
G01N27/624
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020076165
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021173580
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】森谷 正三
(72)【発明者】
【氏名】久軒 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】鴻丸 翔平
(72)【発明者】
【氏名】岩松 正
(72)【発明者】
【氏名】森本 智
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186190(JP,A)
【文献】特開昭63-279555(JP,A)
【文献】特開2018-025535(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086393(WO,A1)
【文献】特表2013-541701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 ー G01N 27/70
H01J 49/00 ー H01J 49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子放出素子と、コレクタと、電場形成部と、電源部と、制御部とを備え、
前記電子放出素子は、下部電極と、表面電極と、前記下部電極と前記表面電極の間に配置された中間層とを有し、
前記電源部及び前記制御部は、前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加できるように設けられ、
前記電場形成部は、前記電子放出素子から放出された電子により直接的に又は間接的に生成された負イオンが前記コレクタへ向かって移動するイオン移動領域に電場を形成するように設けられ、
前記コレクタ及び前記制御部は、負イオンが前記コレクタに到達することにより流れる電流の電流波形を測定するように設けられ、
前記制御部は、前記電流波形に基づき前記下部電極と前記表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられ
前記電流波形は、前記コレクタに到達するイオン種に対応するピークを有し、
前記制御部は、継続的な試料ガスの測定において前記試料ガスに含まれる検出対象成分から生成された負イオンのピークと空気成分がイオン化され生成する一次イオンに対応するピークを含む前記電流波形の総ピーク面積が第2目標値に近づくように前記下部電極と前記表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
記制御部は、測定開始前のキャリブレーション処理において空気成分がイオン化され生成する一次イオンに対応するピークのピーク高さ又はピーク面積が第1目標値に近づくように前記下部電極と前記表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられた請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記制御部は、第2目標値を変えることにより測定感度又はイオン化能力を調節するように設けられた請求項に記載の分析装置。
【請求項4】
静電ゲート電極をさらに備え、
前記静電ゲート電極は、前記電子放出素子から放出された電子により直接的に又は間接的に負イオンが生成されるイオン化領域と、前記イオン移動領域との間に配置され、
前記静電ゲート電極及び前記制御部は、前記静電ゲート電極の電位を制御することにより前記イオン化領域で生成された負イオンの前記イオン移動領域への供給を制御するように設けられた請求項1~のいずれか1つに記載の分析装置。
【請求項5】
前記イオン化領域に試料ガスを供給するように設けられた試料供給部をさらに備え、
前記制御部は、前記イオン化領域への試料ガスの供給を開始する前に前記下部電極と前記表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられた請求項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記イオン化領域に試料ガスを供給するように設けられた試料供給部をさらに備え、
前記制御部は、前記イオン化領域への試料ガスの供給を開始した後に前記下部電極と前記表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられた請求項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記電流波形が試料ガスがイオン化され生成するイオンに対応するピークを有し、空気成分がイオン化され生成する一次イオンに対応するピークを有さない場合、前記下部電極と前記表面電極との間に印加する電圧を高くするように設けられた請求項に記載の分析装置。
【請求項8】
ドリフトガス供給部と、排気口とをさらに備え、
前記ドリフトガス供給部及び前記排気口は、ドリフトガスが前記コレクタ側から前記静電ゲート電極側に向かって前記イオン移動領域を流れるように設けられた請求項のいずれか1つに記載の分析装置。
【請求項9】
前記電流波形は、前記コレクタに到達するイオン種に対応するピークを有し、
前記制御部は、空気成分がイオン化され生成する一次イオンに対応するピークのピーク高さ又はピーク面積と、検出対象成分がイオン化され生成するイオンに対応するピークのピーク高さ又はピーク面積との比率に基づき検出対象成分の濃度を算出するように設けられた請求項1~のいずれか1つに記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IMS分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IMS(Ion Mobility Spectrometry)は物質をイオン化しガス中でのイオン移動度を測定することで対象物質の成分分析を行う技術であり、そのイオン化源として放射性物質、コロナ放電、深紫外線などが用いられている。
しかしながら、放射性物質はその取扱いに特有の注意と管理が必要であり、コロナ放電はイオン化時のエネルギーが高く不要なイオンを生成するとともに、測定対象物質を変質させて測定への悪影響を生じる場合がある。また、深紫外線を用いた方法では、紫外線の波長によってイオン化可能な対象物が限定されるという課題がある。
【0003】
これらの問題点を解決するイオン化方法として、電子放出素子を用いたソフトイオン化方法が提案されており(例えば、特許文献1参照)、電子放出素子をIMS分析装置のイオン化源として使用する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
電子放出素子によるイオン化ではまず、電子放出素子から放出される電子によって空気成分がイオン化され、一次イオンが生成される。この一次イオンと試料ガスを混合することにより、試料ガス中の目的分子がイオン分子反応によってイオン化される。
【0004】
一方、従来からIMSは測定対象の成分分析に主眼が置かれており、イオン移動度の違いさえ検出できる範囲であれば、検出されるイオン量の絶対値についてあまり重要視されていない。しかし、IMSの応答性の速さから、試料ガス成分の成分分析を行うだけでなく、試料ガス成分の濃度やその経時的変化などを定量的に測定したいという要望が出てきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-011837号公報
【文献】特開2019-186190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
同じ電圧印加条件で電子放出素子に電圧を印加した場合でも電子放出素子から放出される電子によって生成される一次イオンの量は、気温、湿度などの環境条件や素子の寿命特性によって変動する。このため、環境条件や寿命特性などにより分析装置のイオン化能力が変動し分析結果が安定しない。また、従来のIMS分析装置では試料ガス成分を定量的に測定することが難しい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、一次イオンの生成量を安定化することができ分析結果を安定化することができる分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電子放出素子と、コレクタと、電場形成部と、電源部と、制御部とを備え、前記電子放出素子は、下部電極と、表面電極と、前記下部電極と前記表面電極の間に配置された中間層とを有し、前記電源部及び前記制御部は、前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加できるように設けられ、前記電場形成部は、前記電子放出素子から放出された電子により直接的に又は間接的に生成された負イオンが前記コレクタへ向かって移動するイオン移動領域に電場を形成するように設けられ、前記コレクタ及び前記制御部は、負イオンが前記コレクタに到達することにより流れる電流の電流波形を測定するように設けられ、前記制御部は、前記電流波形に基づき前記下部電極と前記表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられたことを特徴とする分析装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
前記電源部及び前記制御部は、電子放出素子の下部電極と表面電極との間に電圧を印加できるように設けられる。このため、電子放出素子から電子を放出させることができ、空気成分を負イオン化し一次イオンを生成することができる。また、この一次イオンと試料ガス中の検出対象成分とのイオン分子反応によって検出対象成分を負イオン化することができる。
前記電場形成部は、生成された負イオンがコレクタへ向かって移動するイオン移動領域に電場を形成するように設けられる。また、前記コレクタ及び前記制御部は、負イオンがコレクタに到達することにより流れる電流の電流波形を測定するように設けられる。このため、生成された各種負イオンは、イオン移動度の違いを利用して分離され電流波形のピークとして検出される。
前記制御部は、電流波形に基づき下部電極と表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられる。電流波形のピーク高さ又はピーク面積はコレクタに到達するイオン量を表す。このため、電流波形に基づいて電子放出素子への印加電圧を調節することにより、気温、湿度などの環境条件や素子の寿命特性によって変動する一次イオンの生成量などを安定化することができる。この結果、分析装置のイオン化能力を安定化することができ分析結果を安定化することができる。また、本発明の分析装置を用いて検出対象成分を定量的に測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の分析装置の概略断面図である。
図2】電子放出素子からグリッド電極までの電位勾配を示すグラフである。
図3】電子放出素子からグリッド電極までの電位勾配を示すグラフである。
図4】電子放出素子からグリッド電極までの電位勾配を示すグラフである。
図5】回収電流の電流波形を示すグラフである。
図6】回収電流の電流波形を示すグラフである。
図7】電子放出素子の表面電極と下部電極との間に印加する電圧と回収電流との関係を示すグラフである。
図8】回収電流の電流波形を示すグラフである。
図9】回収電流の電流波形を示すグラフである。
図10】回収電流の電流波形を示すグラフである。
図11】回収電流の電流波形を示すグラフである。
図12】回収電流の電流波形を示すグラフである。
図13】本発明の一実施形態の分析装置の概略断面図である。
図14】回収電流の電流波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の分析装置は、電子放出素子と、コレクタと、電場形成部と、電源部と、制御部とを備え、前記電子放出素子は、下部電極と、表面電極と、前記下部電極と前記表面電極の間に配置された中間層とを有し、前記電源部及び前記制御部は、前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加できるように設けられ、前記電場形成部は、前記電子放出素子から放出された電子により直接的に又は間接的に生成された負イオンが前記コレクタへ向かって移動するイオン移動領域に電場を形成するように設けられ、前記コレクタ及び前記制御部は、負イオンが前記コレクタに到達することにより流れる電流の電流波形を測定するように設けられ、前記制御部は、前記電流波形に基づき前記下部電極と前記表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられたことを特徴とする。
【0011】
前記電流波形は、コレクタに到達するイオン種に対応するピークを有することができる。
前記制御部は、空気成分がイオン化され生成する一次イオンに対応するピークのピーク高さ又はピーク面積が第1目標値に近づくように下部電極と表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられることが好ましい。このことにより、目標値に対応する量の一次イオンがイオン化領域に生成されるように電子放出素子の出力を調節することができる。
前記制御部は、電流波形の総ピーク面積が第2目標値に近づくように下部電極と表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられることが好ましい。このようなフィードバック制御を行うことにより、総ピーク面積を一定に保ち続けるように分析装置を動作させることができ、定量的な測定を行うことができる。
【0012】
前記制御部は、第2目標値を変えることにより測定感度又はイオン化能力を調節するように設けられることが好ましい。このことにより、試料ガスに含まれる検出対象成分の濃度が低い場合でも検出対象成分由来の負イオンを検出することが可能になる。
前記分析装置は、静電ゲート電極を備えることが好ましい。前記静電ゲート電極は、電子放出素子から放出された電子により直接的に又は間接的に負イオンが生成されるイオン化領域と、前記イオン移動領域との間に配置されることが好ましい。前記静電ゲート電極及び前記制御部は、静電ゲート電極の電位を制御することによりイオン化領域で生成された負イオンのイオン移動領域への供給を制御するように設けられることが好ましい。
【0013】
前記分析装置は、イオン化領域に試料ガスを供給するように設けられた試料供給部を備えることが好ましい。前記制御部は、イオン化領域への試料ガスの供給を開始する前に下部電極と表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられることが好ましい。このことにより、測定を開始する前にキャリブレーション処理を行うことができ、測定精度を向上させることができる。
前記制御部は、イオン化領域への試料ガスの供給を開始した後に下部電極と表面電極との間に印加する電圧を調節するように設けられることが好ましい。このことにより、フィードバック制御を行うことができ、測定精度を向上させることができる。
【0014】
前記分析装置は、ドリフトガス供給部と、排気口とを備えることが好ましい。前記ドリフトガス供給部及び前記排気口は、ドリフトガスがコレクタ側から静電ゲート電極側に向かってイオン移動領域を流れるように設けられることが好ましい。
前記制御部は、空気成分がイオン化され生成する一次イオンに対応するピークのピーク高さ又はピーク面積と、検出対象成分がイオン化され生成するイオンに対応するピークのピーク高さ又はピーク面積との比率に基づき検出対象成分の濃度を算出するように設けられることが好ましい。
【0015】
以下、複数の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0016】
第1実施形態
図1は本実施形態の分析装置の概略断面図である。図1には、分析装置40の電気的構成を示すブロック図も併せて示している。
本実施形態の分析装置40は、電子放出素子2と、コレクタ6と、電場形成部7と、電源部17と、制御部12とを備え、電子放出素子2は、下部電極3と、表面電極4と、下部電極3と表面電極4の間に配置された中間層5とを有し、電源部17及び制御部12は、下部電極3と表面電極4との間に電圧を印加できるように設けられ、電場形成部7は、電子放出素子2から放出された電子により直接的に又は間接的に生成された負イオンがコレクタ6へ向かって移動するイオン移動領域11に電場を形成するように設けられ、コレクタ6及び制御部12は、負イオンがコレクタ6に到達することにより流れる電流の電流波形を測定するように設けられ、制御部12は、前記電流波形に基づき下部電極3と表面電極4との間に印加する電圧を調節するように設けられたことを特徴とする。
【0017】
本実施形態の分析装置40は、試料をイオン移動度分析(IMS)で分析する装置である。分析装置40はイオン移動度スペクトロメータであってもよい。分析装置40は、ドリフトチューブ方式IMSで分析する装置であってもよく、フィールド非対称方式IMS(FAIMS)で分析する装置であってもよい。本実施形態では、ドリフトチューブ方式IMSで分析する装置について説明する。
【0018】
分析装置40で分析する試料ガスは、気体試料であってもよく、液体を気化した試料であってもよい。
制御部12は、分析装置40を制御する部分である。制御部12は、例えば、CPU、メモリ、タイマー、入出力ポートなどを有するマイクロコントローラを含むことができる。また、制御部12は、電位制御回路19、検出回路26などを含むことができる。また、制御部12は、電子放出素子2の電子放出及び静電ゲート電極8の開閉を制御するように設けられる。また、制御部12は電源部17と接続することができる。
【0019】
本実施形態の分析装置40は、試料ガスに含まれる検出対象成分を分析する分析チャンバ30を有し、分析チャンバ30は、電子放出素子2とコレクタ6との間に試料ガスに含まれる検出対象成分をイオン化し負イオンを生成するためのイオン化領域10と、負イオンを移動させ分離するためのイオン移動領域11(ドリフト領域)とを有する。イオン化領域10とイオン移動領域11とは、静電ゲート電極8により仕切られる。また、イオン化領域10の静電ゲート電極8と逆の端には、表面電極4がイオン化領域側となるように電子放出素子2が配置される。また、イオン移動領域11の静電ゲート電極8と逆の端には、コレクタ6が配置される。
【0020】
試料注入部16は、分析チャンバ30に試料ガスを注入する部分である。この注入された試料ガスに含まれる検出対象成分がイオン移動度分析により分析される。試料が気体である場合、試料注入部16は試料ガスを連続的に分析チャンバ30に供給するように設けることができる。また、試料が液体である場合、試料注入部16は気化室を有することができ、この気化室で気化した試料ガスを分析チャンバ30に注入することができる。
【0021】
ドリフトガス注入部15は、ドリフトガスを分析チャンバ30に注入するように設けられた部分である。ドリフトガスは、イオン移動領域11において負イオンの移動方向とは逆方向に流すガスであり、負イオンがイオン移動領域11を移動する際の抵抗となるガスである。ドリフトガスは、大気中の空気を浄化した空気(清浄空気)であってもよく、圧縮空気シリンダーから供給される空気であってもよく、排気部20により分析チャンバ30から排出された空気を浄化したものであってもよい。
【0022】
排気部20は、分析チャンバ30の気体を排出するように設けられた部分である。排気部20は、ドリフトガス及び試料ガスを分析チャンバ30から排出するように設けられる。排気部20は、排気ファンなどにより分析チャンバ30の気体を強制排気するように設けられてもよく、分析チャンバ30の気体を自然排気するように設けられてもよい。
【0023】
試料注入部16及び排気部20は、試料ガスがイオン化領域10を流れるように設けることができる。このことにより、イオン化領域10において電子放出素子2の表面電極4から放出させた電子により直接的又は間接的に試料ガスに含まれる成分をイオン化し負イオンを生成することができる。
【0024】
ドリフトガス注入部15及び排気部20は、イオン移動領域11においてドリフトガスがコレクタ側から静電ゲート電極側に向かって流れるように設けられる。例えば、ドリフトガス注入部15は、コレクタ側からドリフトガスをイオン移動領域11に供給するように設けることができ、排気部20は、イオン化領域10の周りの筐体28の開口(ガス出口)からドリフトガスを排気するように設けることができる。
【0025】
ドリフトガスの供給流量は、試料ガスの供給流量よりも大きくすることができる。このことにより、イオン化領域10においてイオン化されなかった分子はイオン移動領域11に流れ込まずに排気部20から排出され、イオン化領域10においてイオン化された分子のみが、電場に誘引されてドリフトガス流に逆らう形でイオン移動領域11に流入し、コレクタ6へ向かって移動する。
【0026】
分析装置40により試料ガスを分析する場合、ドリフトガス供給部15による分析チャンバ30内へのドリフトガスの供給を開始し、所定の時間が経過した後、試料注入部16によるイオン化領域10への試料ガスの供給を開始することができる。このことにより、試料ガス成分が、分析チャンバ30の内壁面や電場形成用電極9に付着することを抑制することができ、分析装置40の分析精度を向上させることができる。また、分析チャンバ30内へのドリフトガスの供給を開始した後イオン化領域10への試料ガスの供給を開始する前にキャリブレーション処理を行うことができる。キャリブレーション処理については後述する。
【0027】
電子放出素子2は、表面電極4から電子を放出するように設けられた素子であり、この放出された電子により直接的又は間接的に試料ガスに含まれる検出対象成分をイオン化し負イオンを生成するための素子である。
電子放出素子2は、下部電極3と、表面電極4と、下部電極3と表面電極4との間に配置された中間層5とを有する。
【0028】
表面電極4は、電子放出素子2の表面に位置する電極である。表面電極4は、好ましくは10nm以上100nm以下の厚さを有することができる。また、表面電極4の材質は、例えば、金、白金である。また、表面電極4は、複数の金属層から構成されてもよい。
表面電極4は、40nm以上の厚さを有する場合であっても、複数の開口、すき間、10nm以下の厚さに薄くなった部分を有してもよい。中間層5を流れた電子がこの開口、すき間、薄くなった部分を通過又は透過することができ、表面電極4から電子を放出することができる。このような開口、すき間、薄くなった部分は、下部電極3と表面電極4との間に電圧を印加することによっても形成することができる。
【0029】
下部電極3は、中間層5を介して表面電極4と対向する電極である。下部電極3は、金属板であってもよく、絶縁性基板上もしくはフィルム上に形成した金属層又は導電体層であってもよい。また、下部電極3が金属板からなる場合、この金属板は電子放出素子2の基板であってもよい。下部電極3の材質は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルなどである。下部電極3の厚さは、例えば200μm以上1mm以下である。
【0030】
中間層5は、表面電極4と下部電極3とに電圧を印加することにより形成される電界により電子が流れる層である。中間層5は、半導電性を有することができる。中間層5は、絶縁性樹脂、絶縁性微粒子、金属酸化物のうち少なくとも1つを含むことができる。また、中間層5は導電性微粒子を含むことが好ましい。中間層5の厚さは、例えば、0.5μm以上1.8μm以下とすることができる。
【0031】
電子放出素子2は、表面電極4と下部電極3との間に絶縁層29を有してもよい。この絶縁層29は、開口を有することができる。絶縁層29の開口は、表面電極4の電子放出領域を規定するように設けられる。絶縁層29には電子が流れることができないため、絶縁層29の開口に対応する中間層5に電子が流れ表面電極4から電子が放出される。従って、開口を有する絶縁層29を設けることにより、表面電極4に形成される電子放出領域が規定される。電子放出領域は、例えば5mm角の領域とすることができ、電場形成用電極9の開口部やコレクタ6の大きさなどに併せて自由に設計することができる。
【0032】
表面電極4及び下部電極3はそれぞれ制御部12と電気的に接続することができる。制御部12の電位制御回路19を用いて下部電極3の電位を表面電極4の電位と実質的に同じにすると、中間層5には電流は流れず電子放出素子2から電子は放出されない。
電位制御回路19を用いて下部電極3の電位が表面電極4の電位よりも低くなるように下部電極3と表面電極4との間に電圧を印加すると中間層5に電流が流れ、中間層5を流れた電子が表面電極4を通過しイオン化領域10へ放出される。電子放出素子2から電子を放出させるために下部電極3と表面電極4との間に印加する電圧は、例えば5V以上40V以下とすることができる。
【0033】
分析チャンバ30内へのドリフトガスの供給を開始した後でイオン化領域10への試料ガスの供給を開始する前において、電子放出素子2からイオン化領域10へ電子を放出させると、電子は直ちに空気成分と衝突し一次イオン(負イオン)を形成する。一次イオンは例えば、空気中の酸素ガスがイオン化された酸素イオンである。このときイオン化領域10には、電子放出素子2の電子放出量に応じた量の一次イオンが存在する。ただし、イオン化領域10における一次イオンの量は、気温、湿度などの環境条件や素子の寿命特性によって変動する。
この一次イオンの量は、表面電極4と下部電極3との間に印加する電圧を調節すること(電子放出素子2の電子放出量を調節すること)により調節することができる。
【0034】
分析チャンバ30内へのドリフトガスの供給及びイオン化領域10への試料ガスの供給を開始した後において、電子放出素子2からイオン化領域10へ電子を放出させると、電子は直ちに空気成分と衝突し一次イオン(負イオン)を形成する。この一次イオンは、イオン化領域10において試料ガスに含まれる検出対象成分に電荷を受け渡し試料ガスに含まれる検出対象成分の負イオンを生成する(イオン分子反応)。つまり、電子放出素子2を用いてイオン化領域10に試料ガスに含まれる検出対象成分の負イオンを間接的に生成することができる。このとき、イオン化領域10には、試料ガスに含まれる検出対象成分から生成された負イオンと一次イオンとが存在する。
【0035】
電場形成部7は、電子放出素子2とコレクタ6との間の領域に電位勾配を形成するための部分である。電場形成部7は、負イオンが電子放出素子側からコレクタ側へ移動するような電位勾配を形成するように設けられる。電場形成部7は、複数の電場形成用電極9a~9h(以後、電場形成用電極9ともいう)から構成されてもよい。電場形成用電極9は、電子放出素子2とコレクタ6との間の領域に電位勾配を形成することができればその形状は限定されないが、例えば、リング状電極であってもよく、アーチ状電極であってもよい。複数の電場形成用電極9は、リング内部又はアーチ内側にイオン化領域10及びイオン移動領域11(ドリフト領域)が形成されるように一列に並ぶ。また、電場形成部7を構成する電場形成用電極9は、制御部12の電位制御回路19と電気的に接続する。
【0036】
電場形成部7に含まれる隣接する2つの電場形成用電極9は抵抗体を挟んで電気的に接続することができる。このことにより隣接する2つの電場形成用電極9の間に電位差を生じさせることができ、それぞれの電極間にこの電位差を生じさせることにより電子放出素子2とコレクタ6との間の領域に電位勾配を形成することができる。
【0037】
例えば、図1に示した分析装置40では、電場形成部7は、複数の電場形成用電極9a~9hから構成され、隣接する2つの電場形成用電極9は抵抗体を挟んで電気的に接続している。また、複数の電場形成用電極9のうち最もコレクタ6に近い電極9hは、グリッド電極25に抵抗体を挟んで電気的に接続している。また、グリッド電極25は例えば抵抗体を挟んでグラウンドに接続している。また、コレクタ6から最も遠い電極9aの電位を電位制御回路19により制御することができる。例えば、電位制御回路19は、電極9aの電位が例えば-1080Vとなるように電圧を印加することができる。また、グリッド電極25は抵抗体を挟んでグラウンドに接続するため0V近傍となる。また、隣接する2つの電場形成用電極9は抵抗体を挟んで電気的に接続するため、一列に並んだ複数の電場形成用電極9の電位はコレクタ6に近づくに従い階段状に高くなる。このため、電子放出素子2とコレクタ6との間の領域(イオン化領域10及びイオン移動領域11)にコレクタ6に近づくに従い電位が徐々に高くなる電位勾配を形成することができる。ただし、この電位勾配は、静電ゲート電極8近辺において静電ゲート電極8の電位により変化する。
また、電位制御回路19は、複数の電場形成用電極9により形成される電位勾配を考慮して電子放出素子2の電位を制御することができる。また、電子放出素子2が電場形成部7の一部として機能し、複数の電場形成用電極9と電子放出素子2とが共同して電位勾配を形成することができる。
【0038】
静電ゲート電極8は、イオン化領域10とイオン移動領域11とを仕切る電極であり、イオン化領域10において生成した負イオンのイオン移動領域11への注入を負イオンと静電ゲート電極8との静電相互作用を利用して制御する電極である。
静電ゲート電極8は、例えばグリッド状の電極である。静電ゲート電極8は、電場形成部7を構成する複数の電場形成用電極9と共に一列に並べて配置することができる。静電ゲート電極8は、制御部12の電位制御回路19と電気的に接続することができる。また、静電ゲート電極8は、電場形成部7により形成される電位勾配を変化させることができるように設けられる。
【0039】
制御部12の電位制御回路19は、静電ゲート電極8の電位を変化させて静電ゲート電極8のオープン状態とクローズ状態とを切り替えることができるように静電ゲート電極8の電位を制御する。
例えば、静電ゲート電極8の電位が電子放出素子側の隣接する電場形成用電極9bよりも低い場合、電子放出素子2とグリッド電極25との間の電位勾配は、図2に示したグラフのようになる。この場合、イオン化領域10の負イオンは、静電相互作用により静電ゲート電極8に近づくことができず(負イオンには静電ゲート電極8から反発する向きの力が働く)、静電ゲート電極8を通過することはできない。このため、静電ゲート電極8はクローズ(低電位側クローズ)となる。
【0040】
例えば、静電ゲート電極8の電位がコレクタ側の隣接する電場形成用電極9cよりも高い場合、電子放出素子2とグリッド電極25との間の電位勾配は、図3に示したグラフのようになる。この場合、イオン化領域10の負イオンは、静電ゲート電極8に吸い寄せられるように移動し、負イオンの電荷が静電ゲート電極8へと移動し負イオンが中性化する。このため、負イオンは静電ゲート電極8を通過することができず、静電ゲート電極8はクローズ(高電位側クローズ)となる。
【0041】
例えば、静電ゲート電極8の電位が電子放出素子側の隣接する電場形成用電極9bよりも高く、コレクタ側の隣接する電場形成用電極9cよりも低い場合、電子放出素子2とグリッド電極25との間の電位勾配は、電子放出素子2からグリッド電極25に近づくにつれ徐々に電位が高くなるような電位勾配となる。例えば、図4に示したグラフのようになる。この場合、イオン化領域10の負イオンは静電ゲート電極8を通過することができ、静電ゲート電極8はオープンとなる。
【0042】
電位制御回路19を用いて、静電ゲート電極8がオープンとなる電位範囲よりも高い電位から前記電位範囲よりも低い電位となるように静電ゲート電極8に印加する電圧を瞬間的に変化させた場合、静電ゲート電極8は、クローズ(高電位側クローズ)→オープン→クローズ(低電位側クローズ)と瞬間的に変化する。
また、電位制御回路19を用いて、静電ゲート電極8がオープンとなる電位範囲よりも低い電位から前記電位範囲よりも高い電位となるように静電ゲート電極8に印加する電圧を瞬間的に変化させた場合、静電ゲート電極8は、クローズ(低電位側クローズ)→オープン→クローズ(高電位側クローズ)と瞬間的に変化する。
【0043】
従って、電位制御回路19を用いてこのように静電ゲート電極8に印加する電圧を変化させることにより、静電ゲート電極8をごく短い時間だけオープン状態とすることができ、イオン化領域10の負イオンをこの短い時間にだけイオン移動領域11に注入することができる。従って、イオン化領域10の負イオンを単発パルス状にイオン移動領域11に注入することができる。
【0044】
イオン移動領域11に注入された負イオンは、電位制御回路19が電場形成部7、グリッド電極25に印加することにより形成される電位勾配によりイオン移動領域11をコレクタ6へと向かって移動し、コレクタ6へ到達する。この際、負イオンは、ドリフトガスの流れに逆らって移動する。このドリフトガスの流れは、静電ゲート電極8からコレクタ6へと向かって移動する負イオンの抵抗となる。この抵抗の大きさ(イオンの移動度)はイオン種により異なる。一般的に移動度はイオンの衝突断面積(イオンの大きさ)に反比例するため、イオンの衝突断面積が大きいほどイオンがコレクタ6に到達するためにかかる時間が長くなる。従って、静電ゲート電極8によりイオン移動領域11に注入されてからコレクタ6へと到達するまでの時間(到達時間、ピーク位置)が負イオンのイオン種により異なる。従って、この到達時間(ピーク位置)に基づき負イオン(試料に含まれる検出対象成分)を特定することが可能になる。また、試料ガスに含まれる複数の検出対象成分の負イオンをイオン移動領域11において分離することができる。
【0045】
コレクタ6は、負イオンの電荷を集める金属製の部材である。コレクタ6は制御部12の検出回路26と電気的に接続することができる。また、この検出回路26は、負イオンがコレクタ6に電荷を受け渡すことにより生じる回収電流を時系列で測定するように設けられる。このことにより回収電流の電流波形を計測することができる。
検出回路26は、回収電流の大きさに応じて測定レンジ(検出感度)を変更できるように設けられてもよい。試料ガスに含まれる検出対象成分が高濃度の場合と低濃度の場合でこの測定レンジ(検出感度)を切り替えることにより、検出対象成分を適切に定性分析又は定量分析することが可能になる。
【0046】
静電ゲート電極8を用いて単発パルス状にイオン移動領域11に注入された複数種の負イオンはイオン移動領域11を移動する間に各種負イオンに分離され、各種負イオンが時間的にずれてコレクタ6に到達する。この結果として、回収電流の電流波形は各種負イオンの到着時間に応じたピークを持つ波形を示すこととなり、そのピーク位置(到達時間)から移動度を算出し、負イオンの成分を判別することが可能となる。また、回収電流の電流波形のピーク高さ又はピーク面積は各種負イオンがコレクタ6に受け渡した電荷量に相当するため、ピーク高さ又はピーク面積に基づき検出対象成分を定量分析することが可能になる。
また、ドリフト領域11に負イオンを複数回注入する場合、負イオンの注入ごとに回収電流の電流波形を測定してもよく、各イオン注入に対応する電流波形を積算平均化して平均電流波形を測定してもよい。
【0047】
回収電流の電流波形において、同一種の負イオンに対応するピークは一つの正規分布に近い分布を示し、そのピーク位置(到達時間)が負イオンの種類固有の値を示す。このため、このピーク位置(到達時間)に基づき試料ガスに含まれる検出対象成分を判別することができる。
負イオン固有のピーク位置(到達時間)は、その負イオンの標準試料を分析装置40で分析することにより得られる回収電流の電流波形から得ることができる。
【0048】
図5は検出回路26を用いて測定した回収電流の電流波形の例である。図5中の実線波形は、分析チャンバ30内へのドリフトガスの供給を開始した後でイオン化領域10への試料ガスの供給を開始する前において、電子放出素子2から放出させた電子により生成した一次イオンをイオン移動領域11に注入し、この一次イオンがコレクタ6に到達することにより流れる回収電流の電流波形である(以後、この電流波形を測定開始前電流波形という)。横軸は、静電ゲート電極8を開いた瞬間を0としたイオンの到達時間を示しており、縦軸はコレクタ6に到達した負イオンの電荷回収によって発生する回収電流である。
この場合、イオン化領域10に存在する主な負イオンは一次イオンであるため、測定開始前電流波形には一次イオンに対応するピークのみが表れる。
【0049】
図5中の破線波形は、分析チャンバ30内へのドリフトガスの供給及びイオン化領域10への試料ガスの供給を開始した後において、電子放出素子2から放出させた電子により生成した一次イオン及び試料ガスに含まれる検出対象成分をイオン化した負イオンをイオン移動領域11に注入し、一次イオン及び負イオンがコレクタ6に到達することにより流れる回収電流の電流波形である(以後、この電流波形を測定開始後電流波形という)。
この場合、測定開始後電流波形にはこれらの負イオンに対応するピークが表れる。図5に示した例では、試料ガスに含まれる検出対象成分からイオンA、Bが生成している。
【0050】
イオン化領域10への試料ガスの供給を開始すると、一次イオンから検出対象成分に電荷が受け渡される形で試料ガス中の検出対象成分がイオン化される。このため、図5に示したような測定開始後電流波形では、測定開始前電流波形に比べ一次イオンのピーク高さが低くなり、検出対象成分から生成した負イオンのピークが出現する。また、試料ガス中の検出対象成分によっては単量体のイオンだけでなく二量体、三量体などの多量体イオンを生じることもあり、それぞれで到達時間が変わってくる。このため、測定開始後電流波形の複数のピークが試料ガスに含まれる1つの検出対象成分に対応する場合がある。例えば、図5のイオンAのピークが単量体イオンのピークであり、イオンBのピークが二量体イオンのピークである。
【0051】
図6は環境条件や経時変化によりイオン化領域10における一次イオンの生成量が低下した場合の波形を示している。黒の実線波形が一次イオンの生成量が低下していない状態での測定開始前電流波形であり、黒の破線波形が一次イオンの生成量が低下していない状態での測定開始後電流波形である。灰色の実線波形が一次イオンの生成量が低下している状態での測定開始前電流波形であり、灰色の破線波形が一次イオンの生成量が低下している状態での測定開始後電流波形である。
一次イオンの生成量の低下に伴い、検出対象成分から生成される負イオンの生成量も低下する。このように検出イオンピークのピーク高さが変動した場合、ピーク位置を判別可能な範囲であれば、イオンの到達時間の測定(定性的な測定)には差し支えないが、検出対象成分の濃度を推定するなどの定量的な評価を行うことができない。
【0052】
図7は電子放出素子2への印加電圧(表面電極4と下部電極3との間に印加する電圧)に対する電子放出素子2の出力特性(電子放出特性)を示すもので、電子放出素子2の直近にコレクタ電極を配置した場合の回収電流量を示したものである。グラフの縦軸は対数軸としてプロットされており、この例では、数Vの印加電圧の変化に対して10の3乗以上の出力変化を得ることができることが分かる。この出力特性は、素子の製造レシピや、湿度などの環境、経時変化などによって変動するが、数Vの印加電圧の変化によって大きな出力変動を得られるという傾向については共通である。
従って、表面電極4と下部電極3との間に印加する電圧を調節することにより、電子放出素子2の電子放出量を大きく変えることができ、イオン化領域10に供給する一次イオンの量を調節することができる。
例えば悪臭ガスの検知に関しては、単一物質に限っても10の5乗程度の測定範囲が望まれており、複数の物質に対応するためには10の7~8乗の測定範囲が必要となる。素子印加電圧を調節して分析感度を変化させることによりこのような広い測定範囲での検出対象成分の測定が可能になる。
このようなダイナミックな測定範囲の変更は従来のイオン化方法では実現することができなかった。
【0053】
制御部12は、測定開始前電流波形に基づき、空気成分がイオン化され生成する一次イオンに対応するピークのピーク高さ又はピーク面積が目標値に近づくように下部電極3と表面電極4との間に印加する電圧を調節するように設けられる。つまり、制御部12は、測定開始前にキャリブレーション処理を行う。具体的には、分析チャンバ30内へのドリフトガスの供給を開始した後でイオン化領域10への試料ガスの供給を開始する前において、電子放出素子2から放出させた電子により生成した一次イオンをイオン移動領域11に注入し、この一次イオンがコレクタ6に到達することにより流れる回収電流の電流波形(測定開始前電流波形)を測定する。この電流波形の一次イオンのピーク高さ又はピーク面積が所定の目標値より大きい場合は素子印加電圧を低くし、再び一次イオンをイオン移動領域11に注入し回収電流の電流波形を測定する。例えば、一次イオンのピークのピーク高さの目標値を1000pAに設定し図8に示した黒色実線の電流波形が測定された場合、素子印加電圧を低くして再び電流波形を測定する。また、図8に示した灰色実線の電流波形が測定された場合、素子印加電圧を高くして再び電流波形を測定する。
素子印加電圧の調節幅は、一次イオンのピーク高さ又はピーク面積と目標値との差に基づいて決定することができる。
【0054】
このような一連の操作を一次イオンのピーク高さ又はピーク面積と目標値との差が誤差範囲内となるまで繰り返す(フィードバック制御)。誤差範囲は例えば±5%とすることができる。このことにより、所定の目標値に対応する量の一次イオンがイオン化領域10に生成されるように電子放出素子2の出力を調節することができる。
このような電子放出素子2の出力調節を行うことにより、気温、湿度などの環境条件や素子の寿命特性によって一次イオンの生成量が変動することを抑制することができる。つまり、イオン化領域10に存在するイオンの総電荷量を各測定で揃えることができる。
制御部12は、試料ガスに含まれる検出対象成分の濃度に応じて前記目標値を設定できるように設けることができる。
【0055】
電子放出素子2の出力調節を行った後、分析装置40による測定を開始する。具体的には、試料注入部16を用いてイオン化領域10への試料ガスの供給を開始する。この試料ガスに含まれる検出対象成分はイオン化領域10において一次イオンから電荷を受け取り負イオン化する(イオン分子反応)。そして、静電ゲート電極8を用いてイオン化領域10の負イオンをイオン移動領域11に注入し、この一次イオンがコレクタ6に到達することにより流れる回収電流の電流波形を測定する。この電流波形には、試料ガスに含まれる検出対象成分から生成された負イオンのピーク及び一次イオンのピークが表れる。これらのピークのピーク位置(到達時間)から各ピークに対応する負イオンを特定することができる(定性分析)。
また、検出対象成分から生成された負イオンのピークのピーク面積を予め作成した検量線と比較することにより、試料ガスに含まれる検出対象成分の濃度を算出することができる(定量分析)。
【0056】
検量線は次のようにして作成することができる。標準試料として異なった既知の濃度の検出対象成分を含む試料を準備する。これらの試料を分析装置40で測定し検出対象成分から生成された負イオンのピークのピーク面積を算出する。そして、検出対象成分の濃度とピーク面積との関係を表す検量線を作成する。この検量線に測定で算出されたピーク面積を当てはめることにより、試料ガスに含まれる検出対象成分の濃度を算出することができる。
検量線を作成するための標準試料の測定を開始する前にも、前述のキャリブレーション処理を行い素子印加電圧を調節する。この際、一次イオンのピーク高さ又はピーク面積の目標値を、試料ガスの測定前のキャリブレーションで用いる目標値と一致させる。このことにより、検量線を作成するための測定と試料ガスの測定とでイオン化領域10に存在する負イオンの総電荷量を実質的に同じにすることができ、検出対象成分の濃度を精度よく算出することができる。
また、一次イオンのピーク高さ又はピーク面積の目標値を複数設定し、各目標値に対応する検量線を作成することができる。このことにより、試料ガスに含まれる検出対象成分の濃度に応じて目標値を選択することができる。
【0057】
第2実施形態
第1実施形態では、試料ガスをイオン化領域10に導入しない状態での一次イオンのピーク波形を測定しキャリブレーション処理を行い、その後試料ガスに含まれる検出対象成分の測定を行ったが、その場合は、測定毎に校正を行う必要があり、作業が煩雑でまた、継続的な測定が難しい。
これを解決するため、第2実施形態では継続的な試料ガスの測定において回収電流の電流波形の総ピーク面積を一定にするようにフィードバック制御を行う。これはコレクタ6に到達した負イオンの総電荷量を一定にするという意味に等しい。
第2実施形態では、制御部12は、測定開始前電流波形または測定開始後電流波形の総ピーク面積が目標値に近づくように下部電極3と表面電極4との間に印加する電圧を調節するように設けられる。
【0058】
まず、第1実施形態で説明したキャリブレーション処理を行い素子印加電圧を調節する。制御部12は、調節後の測定開始前電流波形の一次イオンのピークの面積を算出し、このピーク面積を目標値に設定する。
例えば、キャリブレーション処理におけるピーク高さの目標値を1000pAとすると、素子印加電圧調節後の測定開始前電流波形は、図9の黒色実線波形のようになる。また、この電流波形の一次イオンのピークのピーク面積は340となる。このピーク面積を目標値に設定する。なお、ピーク面積の目標値は、予め設定されたピーク面積であってもよく、第1回目の測定開始後電流波形の総ピーク面積であってもよい。
【0059】
キャリブレーション処理を行った後、分析装置40による測定を開始する。具体的には、試料注入部16を用いてイオン化領域10への試料ガスの供給を開始する。この試料ガスに含まれる検出対象成分はイオン化領域10において一次イオンから電荷を受け取り負イオン化する(イオン分子反応)。そして、静電ゲート電極8を用いてイオン化領域10の負イオンをイオン移動領域11に注入し、この一次イオンがコレクタ6に到達することにより流れる回収電流の電流波形を測定する。この電流波形には、試料ガスに含まれる検出対象成分から生成された負イオンのピーク及び一次イオンのピークが表れる。
制御部12は、これらのピークの総面積を算出し、算出したピーク面積と目標値とを比較する。ピーク面積が目標値よりも小さい場合、素子印加電圧を高くし、次の測定される電流波形においてピーク面積が目標値に近づくようにする。ピーク面積が目標値よりも大きい場合、素子印加電圧を低くし、次の測定される電流波形においてピーク面積が目標値に近づくようにする。素子印加電圧の調節幅は、算出したピーク面積と目標値との差に基づいて決定することができる。
このようなフィードバック制御を測定される電流波形ごとにおこなう。このように、常時フィードバック制御を行うことにより、一旦目標値に達した後は目標値から大きく外れることなく総ピーク面積を一定に保ち続けるように動作するため、定量的な測定を行うことができる。
【0060】
例えば、ピーク面積の目標値を340に設定した場合において、図9に灰色実線で示した電流波形が測定されたとする。この電流波形は、検出対象成分から生成されたイオンA、Bのピーク及び一次イオンのピークを有している。これらの総ピーク面積は200となる。この場合、ピーク面積が目標値よりも小さいため素子印加電圧を高くし、イオン化領域10の総電荷量を大きくする。このため、次に測定される電流波形の総ピーク面積は大きくなる。例えば、図9の黒色破線で示した電流波形が測定される。この電流波形の総ピーク面積は340となる。
【0061】
図10には、キャリブレーション処理後の測定開始前電流波形(黒色実線)、試料ガスが低濃度の検出対象成分を含む場合に測定される測定開始後電流波形(黒色破線)、及び試料ガスが高濃度の検出対象成分を含む場合に測定される測定開始後電流波形(灰色実線)を示している。これらの電流波形は、前述のフィードバック制御により総ピーク面積が実質的に同じになっている。このように検出対象成分の濃度が時間的に変化したり、試料ガスに含まれる成分自体が変わっていった場合にも、ピーク面積基準でのフィードバック制御を行うことにより、一定の測定基準で定量的な測定を続けることができる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。また、第1実施形態についての記載は矛盾がない限り第2実施形態についても当てはまる。
【0062】
第3実施形態
第3実施形態では、制御部12は、フィードバック制御の目標値を変えることにより分析装置40の測定感度又はイオン化能力を調節するように設けられる。
試料ガスに含まれる検出対象成分の濃度が低いと、初期の測定開始後電流波形に検出対象成分由来の負イオンのピークが表れず一次イオンのピークのみが表れる場合がある。例えば、図11の実線波形のような電流波形が測定される。この場合、試料ガスに含まれる検出対象成分の量自体が極端に少ない為、検出回路26の検出感度を高くしても検出対象成分由来の負イオンのピークが表れることはほとんどない。
【0063】
第3実施形態では、このように検出対象成分由来の負イオンのピークが電流波形に表れない場合、フィードバック制御の目標値(一次イオンのピークのピーク高さ又はピーク面積の目標値或いは総ピーク面積の目標値)を徐々に高くしながら測定を繰り返すことにより、一次イオンの生成量自体を増やし、二次的に生成される検出対象成分由来の負イオンの生成量を増やす。そして、一次イオン以外のピークを検出できるまで、素子への印可電圧を徐々にふやしながら測定を繰り返しフィードバック制御を行う。
例えば、図11の破線波形が測定されるまで目標値を高くすることができる。
【0064】
検出対象成分由来の負イオンのピークが表れた後、検出回路26の検出感度を小さくし第1実施形態で説明したようなキャリブレーション処理を行うことができる。その後、検出回路26の検出感度を元に戻して試料ガスを分析することにより試料ガスに含まれる低濃度成分の定量分析が可能になる。
その他の構成は第1又は第2実施形態と同様である。また、第1又は第2実施形態についての記載は矛盾がない限り第3実施形態についても当てはまる。
【0065】
第4実施形態
第4実施形態では、制御部12は、空気成分がイオン化され生成する一次イオンに対応するピークのピーク高さ又はピーク面積と、検出対象成分がイオン化され生成する負イオンに対応するピークのピーク高さ又はピーク面積との比率に基づき検出対象成分の濃度を算出するように設けられる。
【0066】
例えば図10に示すように、試料ガスに含まれる検出対象成分の濃度が低濃度(黒色破線波形)から高濃度(灰色実線波形)に変化すると一次イオンのピーク高さ又はピーク面積が小さくなり、検出対象成分由来の負イオンのピーク高さ又はピーク面積が大きくなる。
制御部12は、それぞれのピークのピーク高さ又はピーク面積から一次イオンピーク量と検出対象成分ピーク量の比率を算出し、その比から検出対象成分の濃度を推定するように設けられる。
【0067】
なお、各ピークは重なりがあるため、面積的な分離が難しいが、それぞれが正規分布に従っているという前提で、各ピークの高さと標準偏差から個々のピーク面積の近似値を算出し、そこから比率計算を行う。また、算出した比とガス濃度の関係は、予め収集した実験データに基づいて作成したルックアップテーブルや、あるいはそれを基に仮定した近似式などによって求める。なお、ピーク面積の近似に用いる分布モデルは、正規分布に限らず、コーシー分布などの他の分布モデルを用いてもよい。
その他の構成は第1~第3実施形態と同様である。また、第1~第3実施形態についての記載は矛盾がない限り第4実施形態についても当てはまる。
【0068】
第5実施形態
第5実施形態では試料ガスに含まれる検出対象成分の濃度が高い場合の分析装置40の制御について説明する。
図12には、キャリブレーション処理後の測定開始前電流波形(黒色破線)、初期の測定開始後電流波形(黒色実線)、及び調節後の測定開始後電流波形(灰色実線)を示している。
試料ガスに含まれる検出対象成分の濃度が高い場合、図12に黒色実線で示した電流波形のように一次イオンのピークが消失し、検出対象成分のピークのみが表れる場合がある。この場合、試料ガスの成分分析自体には差し支えは無いが、第4実施形態で説明したような一次イオンのピークと検出対象成分のピークとの比による濃度推定ができない。この現象は、一次イオンの分子に対して検出対象成分の分子が多すぎるため、一次イオンの電荷を使いつくしてしまうことに起因する。このため電子放出素子2の印加電圧を徐々に上げて一次イオンの供給量を増やしながら、検出対象成分のイオン化を行っても所定量の一次イオンのピークが残るレベルになるまで測定を繰り返しフィードバック制御を行う。その後、一次イオンのピークと検出対象成分のピークのピーク面積比によって検出対象成分の濃度の推定を行う。
その他の構成は第1~第4実施形態と同様である。また、第1~第4実施形態についての記載は矛盾がない限り第5実施形態についても当てはまる。
【0069】
第6実施形態
第1~第5実施形態では、ドリフトチューブ方式IMSで分析する装置について説明したが、第6実施形態ではフィールド非対称方式IMS(FAIMS)で分析する装置について説明する。
図13は、本実施形態の分析装置40の概略断面図である。また、図13には分析装置40の電気的構成を示すブロック図も示している。
【0070】
本実施形態の分析装置40では、イオン化領域10において電子放出素子2を用いてキャリアガスに含まれる検出対象成分を負イオン化し、この負イオンを平行平板電極間のイオン移動領域11(電場形成用電極9aと電場形成用電極9bとの間の領域)にキャリアガスと共に流通させる。そして、イオン移動領域11を移動してきた負イオンがコレクタ6a又は6bに電荷を受け渡し、検出回路26により回収電流を測定する。
【0071】
分析装置40は、電子放出素子2の表面電極4と対向するように設けられた対向電極32を備える。対向電極32の電位は、制御部12により表面電極4の電位より高くなるように調節される。この表面電極4及び対向電極32により、電子放出素子2から放出された電子又は電子から生成された負イオンがイオン化領域10へと移動するような電場を形成することができる。
【0072】
検出対象成分と共にイオン化領域10及びイオン移動領域11に流通させるキャリアガスは、空気とすることができる。また、キャリアガスは、空気清浄フィルターにより清浄化された空気(清浄乾燥空気)であることが好ましい。
FAIMSでは、キャリアガスである空気の成分から一次イオンが生成され、一次イオンが検出対象成分に電荷を受け渡すことにより負イオンが生成される。
【0073】
電場形成用電極9aと電場形成用電極9bとの間隔は数十μmから数mm(0.01~2mm)であり、長さは数百μmから数十mm(0.1~30mm)である。
電場形成用電極9aと電場形成用電極9bとの間には、制御部12を用いて非対称の高周波電圧(分散電圧)及び直流電圧(補償電圧)が印加される。分散電圧は波形の1周期間での時間平均が0となるように印加することができる。また電圧は電極間で±数千V(±100~±2000V)くらいで、電界強度は±数万V/cm(±5000~±40000V/cmくらい)、周波数は数百KHzから数MHz(100kHz~3MHz)である。
【0074】
電場形成用電極9aと電場形成用電極9bとの間のイオン移動領域11を流れる気体に含まれるイオンは、分散電圧により形成される電場の極性の変化により揺れ動きながら流れ、進行方向が変化する。イオンの移動度は低電界中では電界強度によらず一定であるが、高電界中では電界強度に依存してイオン移動度が変化する。このイオン移動度の変化は、イオン種により異なる。このため、イオン移動領域11を通過できるイオン種と、電場形成用電極9a、9bに衝突しイオン移動領域11を通過できないイオン種とが生じる。イオン移動領域11を通過したイオンはコレクタ6a、6bにより検出される。電場形成用電極9a、9bに衝突したイオンは中性化される。
【0075】
補償電圧は、電場形成用電極9aと電場形成用電極9bとの間に印加される直流電圧であり、補償電圧の大きさや極性によりイオン移動領域11を流れる気体に含まれるイオンの進行方向が変化する。このため、分散電圧を固定して補償電圧を所定の範囲で時間によってスキャンすると、イオン移動領域11を通過できるイオン種が変化し、コレクタ6a、6bが電荷を受け取ることにより生じる回収電流の電流波形を測定することができる。補償電圧のスキャン範囲は、±100V程度の範囲であり、電界強度のスキャン範囲は±2000V/cm程度の範囲である。
【0076】
FAIMSにおいても、第1実施形態と同様に、キャリアガスのみ(第1実施形態ではドリフトガス)を流してキャリブレーション処理を行い電子放出素子2への印加電圧を調節することができ、その後試料ガスをキャリアガスと共に流通させ測定を開始することができる。
また、第2実施形態と同様に、回収電流の電流波形の総ピーク面積が一定となるようにフィードバック制御を行うことができる。
また、第3実施形態と同様に、フィードバック制御の目標値を変えることにより測定感度又はイオン化能力を調節することができる。
また、第4実施形態と同様に、空気成分がイオン化され生成する一次イオンに対応するピークのピーク高さ又はピーク面積と、検出対象成分がイオン化され生成するイオンに対応するピークのピーク高さ又はピーク面積との比率に基づき検出対象成分の濃度を算出することができる。
また、第5実施形態と同様に、一次イオンのピークが残るレベルになるまでフィードバック制御を行うことができる。
その他の構成は第1~第5実施形態と同様である。また、第1~第5実施形態についての記載は矛盾がない限り第6実施形態についても当てはまる。
【符号の説明】
【0077】
2:電子放出素子 3:下部電極 4:表面電極 5:中間層 6、6a、6b:コレクタ 7:電場形成部 8:静電ゲート電極 9、9a~9h:電場形成用電極 10:イオン化領域 11:イオン移動領域 12:制御部 15:ドリフトガス注入部 16:試料注入部 17:電源部 19:電位制御回路 20:排気部 22:素子ホルダー 25:グリッド電極 26:検出回路 28:筐体 29:絶縁部 30:分析チャンバ 32:対向電極 40:分析装置
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