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特許7445512床スラブ施工用表示部材及び床スラブ施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】床スラブ施工用表示部材及び床スラブ施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20240229BHJP
   E04G 15/06 20060101ALI20240229BHJP
   E04B 5/48 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
E04G21/18 A
E04G15/06 A
E04B5/48 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020085062
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021179123
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】西野 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】明石 麗
(72)【発明者】
【氏名】小坂 直也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 央
(72)【発明者】
【氏名】坂上 教夫
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160691(JP,A)
【文献】特開2019-157560(JP,A)
【文献】特開2019-199721(JP,A)
【文献】特開平09-004223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/18
E04G 15/06
E04B 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の貫通穴を有する床スラブの施工に用いられる面状の表示部材であって、
内側円及び該内側円を囲む外側円が形成された上面と、前記床スラブの底面を画成する型枠と接する裏面を有し、
前記内側円の大きさが、前記貫通穴の大きさと対応し、前記外側円と前記内側円との半径差が、前記貫通穴の内周面と前記床スラブ内の鉄筋とのかぶり厚さと対応しており、
前記裏面には粘着層が設けられ、該粘着層が剥離シートにて被われていることを特徴とする床スラブ施工用表示部材。
【請求項2】
建物の貫通穴を有する床スラブを施工する方法であって、
上面に内側円及び該内側円を囲む外側円が形成され、前記内側円の大きさが、前記貫通穴の大きさと対応し、前記外側円と前記内側円との半径差が、前記貫通穴の内周面と前記床スラブ内の鉄筋とのかぶり厚さと対応している面状の表示部材を用意して、前記表示部材の前記上面とは反対側の裏面が前記床スラブの底面を画成する型枠と接するように、前記表示部材を前記型枠の上面の所定位置に配置し、
前記鉄筋を配筋した後、平面投影視において前記外側円と交差する鉄筋を前記外側円の直上において切断して、該鉄筋における前記外側円の内側を通る部分を撤去し、
その後、前記表示部材の前記上面の前記内側円の上に前記貫通穴を画成するボイドを配置することを特徴とする床スラブ施工方法。
【請求項3】
建物の貫通穴を有する床スラブを施工する方法であって、
請求項1に記載の表示部材を、前記床スラブの底面を画成する型枠の上面の所定位置に配置し、前記粘着層を前記型枠の上面に粘着させ、
前記床スラブの鉄筋を配筋した後、平面投影視において、前記表示部材の上面の外側円と交差する鉄筋を前記外側円の直上において切断して、該鉄筋における前記外側円の内側を通る部分を撤去し、
その後、前記表示部材の上面の内側円の上に前記貫通穴を画成するボイドを配置することを特徴とする床スラブ施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物における貫通穴を有する床スラブの施工に用いられる表示部材及び該表示部材を用いて建物の床スラブを施工する方法に関し、特に、床スラブに貫通穴を形成するのに用いられる表示部材及び床スラブ施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、戸建て住宅、集合住宅などの建物の床スラブには、給水管、給湯管、排水管その他の各種配管や電気配線を通す貫通穴が形成されている(特許文献1など参照)。かかる床スラブを現場施工する際は、床スラブの底面用の板状型枠の上面に、直交する2本の墨出し線で前記貫通穴の中心位置を墨出しておく。そして、床スラブの鉄筋を配筋した後、平面投影視で、前記2本の墨出し線の交点の近くを通る鉄筋を切断して撤去し、円筒形のボイドを前記交点を囲むように立設する。その後、床スラブのコンクリートを打設し、養生後、型枠板及びボイドを撤去する。ボイドの撤去跡が貫通穴となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-30345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
床スラブの前記貫通穴の内周面と鉄筋との間には、所定のかぶり厚さが確保されている必要がある。そのためには、施工の際に、2本の墨出し線の交点からの平面投影距離が、形成すべき貫通穴の半径と前記かぶり厚さとを加算した所定距離以内にある鉄筋を正確に切除し、かつボイドの中心軸がちょうど前記交点上に配置されるようにしなければならない。しかし、2本の墨出し線だけを指標にして、それらの交点から所定距離だけ離れた位置を見極めるのは容易でなく、ボイドの中心軸が前記交点上にあるかを見極めるのも容易ではない。
本発明は、かかる事情に鑑み、貫通穴を有する床スラブの施工に際して、鉄筋を切断すべき位置を明確に判断でき、かつボイドを正確な位置に設置でき、ひいては床スラブの貫通穴の内周面と鉄筋との間に所定のかぶり厚さを確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、建物の貫通穴を有する床スラブの施工に用いられる面状の表示部材であって、
内側円及び該内側円を囲む外側円が設けられた上面と、前記床スラブの底面を画成する型枠と接する裏面を有し、
前記内側円の大きさが、前記貫通穴の大きさと対応し、前記外側円と前記内側円との半径差が、前記貫通穴の内周面と前記床スラブ内の鉄筋とのかぶり厚さと対応することを特徴とする。
【0006】
前記裏面には粘着層が設けられ、該粘着層が剥離シートにて被われていることが好ましい。
【0007】
また、本発明方法は、建物の貫通穴を有する床スラブを施工する方法であって、
前記の表示部材を、前記床スラブの底面を画成する型枠の上面の所定位置に配置し、
前記床スラブの鉄筋を配筋した後、平面投影視において、前記表示部材の上面の外側円と交差する鉄筋を前記外側円の直上において切断して、該鉄筋における前記外側円の内側を通る部分を撤去し、
その後、前記表示部材の上面の内側円の上に前記貫通穴を画成するボイドを配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貫通穴を有する床スラブの施工に際して、鉄筋を切断すべき位置を明確に判断でき、かつボイドを正確な位置に設置できる。ひいては床スラブの貫通穴の内周面と鉄筋との間に所定のかぶり厚さを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る表示部材の平面図である。
図2図2(a)は、前記表示部材の拡大断面図である。図2(b)は、前記表示部材を型枠に設置した状態の拡大断面図である。
図3図3は、前記表示部材を用いて床スラブを現場施工する過程を、型枠への墨出し工程後の表示部材の設置工程で示す平面図である。
図4図4は、鉄筋配筋工程を示す平面図である。
図5図5は、鉄筋切断工程を示す平面図である。
図6図6は、ボイド設置工程を示す正面断面図である。
図7図7は、コンクリート打設養生工程を示す正面断面図である。
図8図8は、型枠及びボイド撤去工程を示す正面断面図である。
図9図9は、表示部材の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、戸建て住宅、集合住宅などの建物の床スラブ1(図8)の施工に用いられる床スラブ施工用表示部材10を示す。表示部材10は、例えば正方形の面状に形成されている。表示部材10の材質は、特に限定が無く、紙でもよく、樹脂でもよく、金属でもよく、木製でもよい。表示部材10の形状は、正方形に限らず、正方形以外の四角形でもよく、四角形以外の多角形でもよく、円形でもよい。
【0011】
表示部材10は、縦横寸法に対して厚みが十分に小さい面状であればよく、可撓性に富むフィルム状でもよく、シート状でもよく、硬質の板状でもよい。図2(a)において断面を拡大して示す表示部材10の厚みt10は、好ましくはt10=1mm以下であり、後述する床スラブ1や型枠4の厚みに対して無視し得る程度に小さい。
なお、図6及び図7において、表示部材10の厚みは誇張されている。
【0012】
図1に示すように、表示部材10の上面11には、内側円21及び外側円22からなる二重円20が設けられている。外側円22が、内側円21を囲んでいる。
内側円21の大きさは、図8に示す建物の床スラブ1の貫通穴2の大きさと対応している。具体的には、内側円21の直径φ21が、貫通穴2の内直径φと実質的に一致している。
【0013】
外側円22と内側円21との半径差Δr20は、貫通穴2の内周面と床スラブ1内の鉄筋3とのかぶり厚さt1a図8)と対応している。好ましくは、外側円22と内側円21との半径差は、Δr20=20mm~40mm程度である。
【0014】
内側円21及び外側円22の円周は、それぞれ一定の太さ(幅)を有し、かつ上面11の地色とは異なる色に着色された環状帯21a,22aとなっている。内側円21の環状帯21aの太さW21及び外側円22の環状帯22aの太さW22は互いに等しく、好ましくはW21=W22=数mm程度である。なお、これら環状帯21a,22aの太さW21,W22が互いに異なっていてもよい。
太さW21,W22が小さ過ぎると、目視しにくくなり、後述する鉄筋3の切断位置3c(図4)の特定や、ボイド6(図6)の設置位置の特定に支障を来す。太さW21,W22が大き過ぎると、鉄筋3の切断位置3cや、ボイド6の設置位置のばらつきが大きくなる。
【0015】
ここで、内側円21の前記直径φ21は、厳密には、環状帯21aの幅方向の中央を通る円形の中心線21cの直径を言う。半径差Δr20は、厳密には、前記中心線21cと、外側円22の環状帯22aの中心線22cとの半径差を言う。
本実施形態においては、以下、特に断らない限り、内側円21及び外側円22は、それぞれの環状帯21a,22aを言い、環状帯21a,22aより内側部分を含まないものとする。
【0016】
内側円21及び外側円22の色は、それぞれ周囲から目立つ色であることが好ましく、上面11の地色に対して補色の関係にある色であることが、より好ましい。たとえば、上面11の地色は白色、各円21,22は黒色である。
上面11における内側円21の内側部分11cと、内側円21と外側円22との間の環状部分11dと、外側円22の外側部分11eとが、前記地色になっている。
【0017】
図2(a)に示すように、表示部材10の裏面12には、粘着層14が設けられている。使用前の表示部材10における粘着層14は、剥離シート15で被われている。
【0018】
表示部材10は、床スラブ1の現場施工に際して、次のように使用される。
<墨出し工程>
図3に示すように、床スラブ1の底面を画成する板状型枠4の上面4aに、直交する2本の墨出し線5a,5bを引き、その交点5cを貫通穴2の中心位置として墨出しする。
<表示部材の設置工程>
次いで、該交点5c上に表示部材10の中心が位置されるようにして、表示部材10を型枠4の上面4aの交点5cを中心とする所定位置4cに配置する。裏面12が型枠4の上面4aと接する。このとき、図2(b)に示すように、裏面12の剥離シート15を剥がし、粘着層14を型枠4の上面4aに粘着させることで、表示部材10を型枠4に貼り付ける。これによって、表示部材10が型枠4の所定位置4cに移動不能に固定される。
【0019】
<鉄筋配筋工程>
続いて、図4に示すように、型枠4上に鉄筋3を縦横に配筋する。
一部の鉄筋3は、平面投影視において、表示部材10の外側円22と交差する。該交差部すなわち外側円22の直上位置が、鉄筋3における切断すべき位置3cとなる。したがって、鉄筋3を切断すべき位置が明確である。
【0020】
<鉄筋切断工程>
図4及び図5に示すように、作業者は、表示部材10及び鉄筋3を真上から見て、外側円22と交差する鉄筋3を、外側円22の直上の位置3c(図4)において切断する。作業者は、鉄筋3を切断すべき位置3cを明確かつ容易に判断できる。交点5cからの距離を測って切断位置を決める作業は不要である。したがって、切断作業を効率的に行うことができる。
【0021】
切断対象の各鉄筋3は、2箇所において外側円22と交差する。これら2箇所がそれぞれ切断位置3cとなる。切断によって、鉄筋3における外側円22の内側を通る部分3b(図4)が、外側円22の外側の鉄筋部分3aから切り離される。該切り離された部分3bを撤去する。
図5に示すように、外側円22の直上には、鉄筋3の切断端3eが配置される。内側円21の上方を横切る鉄筋3が無くなり、内側円21の全体が上方へ開放される。
【0022】
<ボイド設置工程>
図6に示すように、別途、貫通穴2画成用のボイド6を用意する。ボイド6は、円筒形状に形成されている。ボイド6の材質は紙であるが、これに限定されるものではない。ボイド6の外直径φは、形成すべき貫通穴2の内直径と一致しており、かつ表示部材10の内側円21の直径φ21と実質的に等しい。
該内側円21が、ボイド6を設置すべき位置を示している。
【0023】
ボイド6を、前記鉄筋3の切断によって出来たスペースに挿し入れ、表示部材10の内側面21上に立設する。内側円21とボイド6が全周にわたって重なるようにする。内側円21を指標とすることによって、ボイド6を設置すべき位置を明確かつ容易に判断でき、ボイド6を正確な位置に容易に設置できる。
該ボイド6を釘などの固定手段(図示省略)によって型枠4に固定する。
【0024】
<コンクリート打設養生工程>
その後、図7に示すように、型枠4上に床スラブ1のコンクリート1aを打設する。型枠4によって床スラブ1の底面が画成される。
【0025】
<型枠及びボイド撤去工程>
図8に示すように、コンクリート1aの養生後、型枠4及びボイド6を撤去する。型枠4と一緒に表示部材10が撤去される。
ボイド6の撤去跡が貫通穴2となる。
【0026】
前述したように、外側円22の直上で鉄筋3を切断し、かつ内側円21上にボイド6を設置しておくことで、貫通穴2の内周面と鉄筋3の切断端3eとの間のかぶり厚さt1aが、外側円22と内側円21との半径差Δr20と略一致する大きさになる。ひいては、貫通穴2の内周面と鉄筋3との間に所定のかぶり厚さを確保することができる。
このようにして、貫通穴2を有する床スラブ1を精度良く効率的に現場施工できる。
貫通穴2には、給水管、給湯管、排水管その他の各種配管7や電気配線が通される。
【0027】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、型枠4に配置する表示部材10とは別に用意した表示部材10を、コンクリート打設時にボイド6の上端開口を塞ぐ蓋として用いてもよい。
表示部材10の裏面12の粘着層14及び剥離シート15を省略してもよい。表示部材10を糊、画鋲などの固定手段で型枠4に固定してもよい。
【0028】
内側円21と外側円22の色が互いに異なっていてもよい。
内側部分11cが、内側円21と同一色に塗られていてもよい。
内側部分11cが、内側円21の色とも表示部材10の地色とも異なる色に塗られていてもよい。
環状部分11dが、表示部材10の地色と異なる色に塗られていてもよい。
環状部分11dが、内側円21又は外側円22と同色であってもよい。図9に示すように、1の幅広環状帯23の内周縁が、内側円21を構成し、環状帯23の外周縁が、外側円22を構成していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、例えば戸建て住宅、集合住宅などの建物の床スラブの構築に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 床スラブ
1a コンクリート
1a かぶり厚さ
2 貫通穴
φ 穴内直径
3 鉄筋
3c 切断位置
3e 切断端
4 型枠
4a 上面
4c 所定位置
6 ボイド
7 各種配管
10 床スラブ施工用表示部材
11 上面
12 裏面
14 粘着層
15 剥離シート
20 二重円
Δr20 半径差
21 内側円
21a 環状帯
21c 中心線
φ21 内側円の直径
22 外側円
22a 環状帯
22c 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9