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特許7445515駐車支援装置、及び駐車支援装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】駐車支援装置、及び駐車支援装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240229BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20240229BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240229BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/06
B60W60/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020091913
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021189575
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野田 真
(72)【発明者】
【氏名】田川 晋也
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030568(JP,A)
【文献】特開2019-131042(JP,A)
【文献】特開2007-290558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/06
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を検出する位置検出部と、
前記車両に設けられたソナーからの情報によって当該車両の側方の障害物を検出する障害物検出部と、
前記車両の周辺を撮影した撮影画像に基づいて区画線を検出することで駐車区画を検出する駐車区画検出部と、
仮想障害物を前記駐車区画に隣接した位置に設定する仮想障害物設定部と、
前記車両が前記駐車区画を通過している場合、前記駐車区画と、前記ソナーの前記車両における配置位置との離間距離に応じた移動量で、前記車両の通過方向へ、前記仮想障害物を平行移動する仮想障害物移動部と、
前記車両の現在位置と、前記ソナーによって検出された障害物、前記仮想障害物、及び前記駐車区画のそれぞれの位置と、に基づいて、前記車両が現在位置から移動し前記駐車区画へ駐車する駐車経路を計算する駐車経路計算部と、
を備えることを特徴とする駐車支援装置。
【請求項2】
前記仮想障害物は、
前記駐車区画の隣に駐車し得る他車両に基づく大きさに設定され、
前記駐車区画に並列に設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記障害物検出部は、
前記車両に設けられたソナーからの情報のうち、所定の範囲内で検出された情報を用いる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
車両の現在位置を検出する位置検出部と、
前記車両に設けられたソナーからの情報によって当該車両の側方の障害物を検出する障害物検出部と、を備えた駐車支援装置の制御方法において、
前記車両の周辺を撮影した撮影画像に基づいて区画線を検出することで駐車区画を検出する第1ステップと、
仮想障害物を前記駐車区画に隣接した位置に設定する第2ステップと、
前記車両が前記駐車区画を通過している場合、前記駐車区画と、前記ソナーの前記車両における配置位置との離間距離に応じた移動量で、前記車両の通過方向へ、前記仮想障害物を平行移動する第3ステップと
前記車両の現在位置、前記ソナーによって検出された障害物、前記仮想障害物、及び前記駐車区画のそれぞれの位置に基づいて、前記車両が現在位置から移動し前記駐車区画へ駐車する駐車経路を計算する第4ステップと、
を備えることを特徴とする駐車支援装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援装置、及び駐車支援装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車支援に係る技術として特許文献1がある。
特許文献1の要約書の課題の欄には、「他の車両の進路に影響を与えずに安全に駐車支援を行うことを可能にする。」ことが記載されている。
特許文献1の要約書の解決手段の欄には、「本願発明の駐車支援装置は、車両の外部を検知する外部検知センサからのセンサ入力に基づいて周辺情報を生成する外部検知センサ入力処理部と、駐車位置の設定を行う駐車位置設定部と、駐車位置設定部により設定された駐車位置に基づいて仮想障害物情報を生成する仮想障害物生成部と、周辺情報と仮想障害物情報とに基づいて車両の現在位置から駐車位置までの駐車経路を生成する駐車経路計算部とを備える。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-182154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、より適切な駐車経路を得るには、仮想障害物の設定に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、より適切な駐車経路を得ることができる駐車支援装置、及び駐車支援装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車両の現在位置を検出する位置検出部と、前記車両に設けられたソナーからの情報によって当該車両の側方の障害物を検出する障害物検出部と、前記車両の周辺を撮影した撮影画像に基づいて区画線を検出することで駐車区画を検出する駐車区画検出部と、仮想障害物を前記駐車区画に隣接した位置に設定する仮想障害物設定部と、前記車両が前記駐車区画を通過している場合、前記駐車区画と、前記ソナーの前記車両における配置位置との離間距離に応じた移動量で、前記車両の通過方向へ、前記仮想障害物を平行移動する仮想障害物移動部と、前記車両の現在位置と、前記ソナーによって検出された障害物、前記仮想障害物、及び前記駐車区画のそれぞれの位置と、に基づいて、前記車両が現在位置から移動し前記駐車区画へ駐車する駐車経路を計算する駐車経路計算部と、を備えることを特徴とする駐車支援装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より適切な駐車経路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る駐車支援装置が搭載された車両の構成を示す図である。
図2】サイドソナー及びカメラの設置態様の一例を示す図である。
図3】駐車区画を示す図である。
図4】サイドソナーの検出範囲の位置に基づく仮想障害物の位置の移動を示す図である。
図5】サイドソナーによる障害物の検出結果に基づく駐車可能スペースの検出例を示す図である。
図6】離間距離の説明図である。
図7】駐車区画の検出タイミングの説明図である。
図8】駐車支援処理のフローチャートである。
図9】仮想障害物の移動による駐車経路の違いを示す図である。
図10】本発明の変形例に係る駐車区画を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る駐車支援装置100が搭載された車両1の構成を示す図である。
車両1は、周辺検出センサ部10と、車両センサ部20と、車両制御装置30と、駐車支援装置100と、を備え、これらがCAN(Controller Area Network)バスなどの車載ネットワーク5を通じてデータ通信可能に接続されている。
【0010】
周辺検出センサ部10は、車両1の周辺の情報を検出するための各種のセンサを備え、検出結果(出力)を駐車支援装置100に出力する。以下、周辺の情報を「周辺情報」と言う。
周辺情報は、車両1の周辺に存在する物体の情報を含んでいる。当該物体は、例えば障害物や、車両1の駐車区画を区画する区画線などである。障害物は、車両1の走行の妨げになる各種の物体である。障害物の典型的な例として、柱や壁、消火栓などの建造物、駐車中や走行中の他車両、及び通行人が挙げられる。
【0011】
本実施形態の周辺検出センサ部10は、サイドソナー10A、及びカメラ10Bを備えている。
サイドソナー10Aは、周辺の障害物を音波によって検出し、当該障害物と車両1との間の距離を測定する測距センサである。
サイドソナー10Aは、図2に示すように、車両1の左側、及び右側のそれぞれに配置されている。サイドソナー10Aは、扇状を成す検出範囲Rの中心角が通常のソナーよりも狭くなることで、当該検出範囲Rが略ビーム状を成している。これにより、サイドソナー10Aは、車両1の側方へ高い指向性を有し、車両1から比較的遠方(例えば5メートルなど)まで高精度に障害物を検出する。また車両1の走行にともなって(図2の例では前進走行)、車両1のサイドソナー10Aの検出範囲Rが通過した領域Wについて障害物が高精度に検出される。
【0012】
カメラ10Bは、駐車区画T(図3)を撮影する撮影手段である。
本実施形態の車両1は、図2に示すように、前方、左側方、右側方、及び後方のそれぞれにカメラ10Bが設けられている。これらのカメラ10Bによって車両1を中心とした全方位が撮影される。
なお、カメラ10Bは全方位を1台のカメラで撮影するものであってもよい。またカメラ10Bによる撮影範囲、及びカメラ10Bの台数は適宜に変更可能である。
【0013】
車両センサ部20は、車両1の走行状態の検出と、自律航法(デッドレコニング)に要する各種の情報と、の検出のための各種のセンサを備えている。かかるセンサは、車両1に搭載されたセンサであり、例えば、ジャイロセンサや加速度センサ、車速センサ、車両1の操舵角を検出する舵角センサなどである。
【0014】
車両制御装置30は、車両1が備える操舵装置、駆動装置、及び制動制御装置を制御することで、駐車支援装置100によって算出された後述する駐車経路に基づいて車両1を自律的に移動(自動走行)させる装置である。車両制御装置30は、かかる制御を実行するコンピュータ(例えばECU(Electronic Conrtol Unit))を備えている。
なお、操舵装置は、車両1の操舵輪を操舵させるアクチュエータを含む装置である。
また駆動装置は、車両1の駆動輪の駆動力を調整するアクチュエータを含む装置である。車両1の動力源がエンジンである場合、駆動装置のアクチュエータは、スロットルアクチュエータである。動力源がモータである場合、駆動装置のアクチュエータは、動力源のモータである。
制動制御装置は、車両1に設けられたブレーキシステムを制御することで、車両1の車輪へ付与する制動力を制御するアクチュエータを備えている。
【0015】
駐車支援装置100は、車両1を駐車区画Tへ自動走行させて車両1の駐車を支援する装置である。
駐車支援装置100は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Microprocessor Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリデバイス(主記憶装置とも呼ばれる)と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置(補助記憶装置とも呼ばれる)と、センサ類や周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、車載ネットワーク5を介して他の車載装置と通信する車載ネットワーク通信回路と、を備えたコンピュータを備えている。かかるコンピュータとして、ECU(Electronic Conrtol Unit))が用いられている。
駐車支援装置100において、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することで、図1に示す各種の機能的構成が実現されている。
【0016】
すなわち、駐車支援装置100は、機能的構成として、位置検出部110と、周辺情報取得部111と、障害物検出部112、マップ生成部113と、駐車区画検出部114と、駐車枠設定部115と、仮想障害物設定部116と、仮想障害物移動部117と、駐車経路計算部118と、自動走行制御部119と、を備えている。
【0017】
位置検出部110は、車両センサ部20の検出結果(出力)に基づいて、車両1の現在位置(自己位置)を、公知、又は周知のデッドレコニング手法を用いて検出する。
【0018】
周辺情報取得部111は、周辺検出センサ部10の検出結果(出力)に基づいて周辺情報を取得する。サイドソナー10Aの検出範囲Rは、上述の通り、図2に示す扇状となっている。そして、このサイドソナー10Aは、検出範囲Rのうち、当該扇状の中心(検出の指向方向に一致)である主軸RKを中心とした所定角度(ただし、0<所定角度<扇状の中心角)の範囲において最も信頼度が高い検出結果が得られる構成となっている。
【0019】
障害物検出部112は、周辺情報に基づいて、車両1の周辺の障害物を検出する。
より具体的には、障害物検出部112は、サイドソナー10Aの検出結果に基づいて周辺の障害物を検出し、車両1を基準にした障害物の位置を検出する。
また障害物検出部112は、周辺情報のうち、サイドソナー10Aの検出範囲Rの中で最も信頼度が高い上記所定角度の範囲内の検出結果に基づく情報を用いて、車両1の周辺の障害物を検出する。
【0020】
マップ生成部113は、障害物検出部112の検出結果に基づいてマップデータを生成する。マップデータは、適宜のタイミングにおける車両1の現在位置を原点としたローカル空間座標系に障害物の位置を記録したデータである。かかるマップデータによって車両1の周辺の障害物の分布が特定可能になる。
【0021】
駐車区画検出部114は、周辺情報の1つである撮影画像に基づいて、車両1を駐車させる駐車区画Tを検出する。
【0022】
図3は、検出対象の駐車区画Tを示す図である。
駐車区画Tは、図3に示すように、地面に描画された区画線TAによって区画された駐車のための領域であり、区画線TAは駐車枠線や白線などとも称される。
駐車区画検出部114は、カメラ10Bの撮影画像に対する画像認識により区画線TAを認識することで駐車区画Tを検出する。また駐車区画検出部114は、撮影画像の2次元座標系からマップデータのローカル空間座標系への投影変換により、撮影画像における駐車区画Tの位置を、マップデータのローカル空間座標系の位置に変換する。この投影変換は、公知、又は周知の適宜の技術を用いて行うことができる。
【0023】
駐車枠設定部115は、駐車区画検出部114によって検出された駐車区画Tに基づいて、図3に示すように、矩形状の駐車枠Dを駐車区画Tの中に設定する。駐車枠Dは、駐車区画Tへの駐車時に車両1を収める範囲を規定する枠である。
本実施形態において、駐車枠設定部115は、駐車区画Tの各区画線TAについて、図3に示すように、対象の区画線TAに対向する辺が略平行となるように駐車枠Dを設定する。
【0024】
仮想障害物設定部116は、駐車枠Dの手前からみて当該駐車枠Dよりも遠方側に仮想障害物Cを設定する。駐車枠Dの手前の位置は、典型的には、図3に示すように、前方の駐車枠Dに向かって前進している車両1の位置である。
仮想障害物Cは、周辺検出センサ部10の検出結果に基づいて検出される障害物とは別に仮想的に設定される障害物である。
本実施形態では、仮想障害物設定部116は、駐車枠Dの手前からみて当該駐車枠Dの最も遠方の辺に接する位置(初期位置)に仮想障害物Cを設定する。本実施形態において、遠方側の辺は、駐車状態の車両1の前後方向に延びる縦辺のうちの遠方側の辺であり、以下、この辺を最遠方辺Daと言う。
【0025】
なお、仮想障害物Cの大きさ、及び形状は、駐車枠Dの大きさや、当該駐車枠Dの隣に存在することが想定される障害物(壁や他車両3(図3)など)の大きさなどに基づいて設定可能である。この場合において、仮想障害物Cは、図3に示すように、少なくとも駐車枠Dの最遠方辺Daに沿って延びる直線部Caを含む形状に設定される。
本実施形態では、仮想障害物Cは、駐車区画Tの隣に駐車し得る他車両3を示す矩形状であり、当該仮想障害物Cの大きさは当該他車両3の大きさに基づいて設定され、直線部Caが駐車枠Dの最遠方辺Daに平行になるように駐車枠Dに並べて配置される。
【0026】
仮想障害物移動部117は、仮想障害物設定部116によって設定された仮想障害物Cの位置を、自動駐車開始時におけるサイドソナー10Aの検出範囲Rの位置に基づいて移動する。
【0027】
図4は、サイドソナー10Aの検出範囲Rの位置に基づく仮想障害物Cの位置の移動を示す図である。
仮想障害物移動部117は、図4に示すように、車両1が駐車枠Dを通過することで、当該駐車枠Dの手前の位置からみてサイドソナー10Aの検出範囲Rが最遠方辺Daよりも遠方に位置する場合、サイドソナー10Aの検出範囲Rの位置と最遠方辺Daとの離間距離Lに応じた移動量Mで、車両1の通過方向Fへ仮想障害物Cを移動する。通過方向Fは車両1が駐車枠Dを通過したときの進行方向である。
以下、サイドソナー10Aの検出範囲Rの位置を「ソナー検出位置RP」という。ソナー検出位置RPには、サイドソナー10Aのビーム状の探査波の主軸RK(図2)の位置(一般的には、車両1におけるサイドソナー10Aの配置位置と同じ)が用いられる。
【0028】
また本実施形態において、仮想障害物移動部117は、図4に示すように、仮想障害物Cの直線部Caと駐車枠Dの最遠方辺Daとの平行性が維持されるように通過方向Fへ当該仮想障害物Cを移動(すなわち平行移動)する。
【0029】
更に詳述すると、サイドソナー10Aによる障害物の検出結果に基づいて、車両1が駐車可能な駐車可能スペースEを検出する構成においては、例えば図5に示すように、障害物を示す2つの点群Gの間に、駐車可能スペースEが検出されたとしても、当該駐車可能スペースEにおける車両1の駐車時の姿勢(前後方向)が定まらない。また、駐車可能スペースEの遠方側の障害物が他車両3であった場合、この他車両3の姿勢も同図5に示すように一意には定まらない。
【0030】
これに対し、本実施形態では、駐車可能スペースEとして駐車区画Tが撮影画像に基づいて検出されているため、当該駐車区画Tにおける車両1の駐車時の姿勢を区画線TAの延在方向によって特定できる。また、他車両3が駐車区画Tの隣に障害物として存在している場合、一般に、当該他車両3の姿勢も駐車区画Tの区画線TAの延在方向にしたがった向きとなる。すなわち、駐車区画Tの検出によって当該駐車区画Tの隣に存在し得る他車両3の姿勢も特定することができ、また仮想障害物Cの平行移動によって当該他車両3の姿勢に合わせて仮想障害物Cを駐車区画Tに対して移動することができるのである。
【0031】
また本実施形態において、仮想障害物Cの移動量Mは、離間距離Lと同じ、或いは離間距離L以下に設定される。
この離間距離Lには、図6に示すように、車両1が駐車枠Dに対して斜めの姿勢になっている場合を考慮に入れて次の距離が用いられている。
すなわち、図6に示すように、駐車枠Dの最遠方辺Daの前端Da1、及び後端Da2のそれぞれを基点とし当該最遠方辺Daに垂直にソナー検出位置RPの主軸RKに向かって引いて得られる垂線Q1、Q2のうち短い方の長さが離間距離Lに用いられる。
最遠方辺Daの前端Da1は、車両1に近い側の端点であり、後端Da2は車両1から遠い側の端点である。
【0032】
図6の斜め停車Aに示すように、先端側が後端側よりも駐車枠Dから遠ざかるような姿勢で車両1が停車しているときは、最遠方辺Daの前端Da1から延びる垂線Q1の長さが離間距離Lに用いられる。
また、図6の斜め停車Bに示すように、先端側が後端側よりも駐車枠Dから近付くような姿勢で車両1が停車しているときは、最遠方辺Daの後端Da2から延びる垂線Q2の長さが離間距離Lに用いられる。
これにより、仮想障害物Cの移動量Mは、当該仮想障害物Cの直線部Caがサイドソナー10Aによる未検出範囲に入り込まない量に留められる。
なお、前掲図4に示すように、車両1の姿勢が駐車枠Dに対して垂直である場合、垂線Q1、及びQ2の長さが等しくなるため、どちらの長さを離間距離Lに用いてもよい。
【0033】
駐車経路計算部118は、マップデータ(すなわち、周辺情報に基づいて検出された障害物の分布)と、仮想障害物Cと、駐車枠設定部115によって設定された駐車枠Dと、に基づいて駐車経路を計算し算出する。
本実施形態の駐車経路は、車両1が周囲の障害物、及び仮想障害物Cに衝突することなく駐車区画Tの駐車枠Dへ後ろ向き駐車するように、車両1の現在位置から駐車区画Tへ車両1を移動させる経路である。
後ろ向き駐車は、車両1を駐車区画Tへ後進によって入庫させることを言う。
【0034】
自動走行制御部119は、車両1を自動走行により前進させるための制御情報を駐車経路に基づいて生成し、当該制御情報を車両制御装置30へ出力する。
車両制御装置30が制御情報に基づいて制御を実行することで、車両1が駐車区画Tへ向けて自動走行して自動入庫することとなる。
【0035】
次いで、本実施形態の動作を説明する。
【0036】
駐車場内を乗員が車両1を運転して移動している間、駐車支援装置100において、障害物検出部112が周辺情報に基づいて周辺の障害物(例えば他車両3(図3))を継続的に検出し、また障害物検出部112によって検出された障害物の位置をマップ生成部113がマップデータ逐次に記録する。また駐車区画検出部114が撮影画像の画像認識結果に基づいて、車両1の前方や側方に存在する駐車区画Tの検出を継続的に行う。
【0037】
駐車区画検出部114がカメラ10Bの撮影画像に基づいて駐車区画Tの検出を行うことで、図7に示すようにソナー検出位置RPが駐車区画Tを通過する前のタイミング、或いは、ソナー検出位置RPが駐車区画Tを通過した後であっても当該駐車区画Tに応じた大きさの空間がサイドソナー10Aの検出結果に基づいてマップデータに記録される前のタイミングで、駐車区画Tが速やかに検出される。
【0038】
その後、乗員は車両1を停車し、図示せぬHMI(Human Machine Interface)を操作することで、自動駐車を駐車支援装置100に指示する。
駐車支援装置100は、自動駐車の指示が入力されると、駐車区画Tへ車両1を自動走行により入庫させるための自動駐車処理を開始する。
【0039】
図8は、自動駐車処理のフローチャートである。
先ず、駐車枠設定部115が、駐車区画Tに対して駐車枠Dを設定する(ステップSa1)。
次いで、仮想障害物設定部116は、駐車枠Dの最遠方辺Daに直線部Caが接する初期位置に仮想障害物Cを設定する(ステップSa2)。
次に、仮想障害物移動部117は、車両1の現在位置、及び駐車枠Dの位置に基づいて、ソナー検出位置RPが駐車枠Dを通過しているか否か、換言すれば、車両1のソナー検出位置RPが駐車枠Dの最遠方辺Daよりも遠方に位置するか否かを判定する(ステップSa3)。
【0040】
ソナー検出位置RPが駐車枠Dを通過していない場合(ステップSa3:No)、ソナー検出位置RPが最遠方辺Daの手前に位置し、駐車枠Dよりも遠方側については未だサイドソナー10Aによって未だ検出が行われていない。この場合、仮想障害物Cの位置は初期位置に固定される。
【0041】
一方、ソナー検出位置RPが駐車枠Dを通過している場合(ステップSa3:Yes)、仮想障害物移動部117は、車両1の現在位置、及び駐車枠Dの位置に基づいて上記離間距離Lを算出し、当該離間距離Lに応じた移動量Mで仮想障害物Cを平行移動する(ステップSa4)。
【0042】
そして駐車経路計算部118が、車両1の現在位置と、マップデータの障害物、仮想障害物、及び駐車区画T(駐車枠D)のそれぞれの位置とに基づいて、障害物、及び仮想障害物に衝突することなく現在位置から駐車区画Tへ車両1を移動させる駐車経路を計算して算出する(ステップSa5)。
そして、自動走行制御部119は、駐車区画Tへ車両1を駐車経路に沿って自動走行させるために、当該駐車経路に基づいて制御情報を生成し、当該制御情報を車両制御装置30へ出力する(ステップSa6)。これにより、車両制御装置30の制御により、車両1が自動走行を開始し駐車区画Tへの駐車が行われる。
【0043】
かかる処理により、ソナー検出位置RPが駐車枠Dを通過していない場合(ステップSa3:No)、図9の「初期位置」に示すように、仮想障害物Cは駐車枠Dに隣接するように位置し、当該仮想障害物Cと衝突しないように駐車経路が算出される。
一方、ソナー検出位置RPが駐車枠Dを通過している場合(ステップSa3:Yes)、図9の「移動後」に示すように、仮想障害物Cは離間距離Lに応じて平行移動する。これにより、駐車枠Dと仮想障害物Cとの間に、車両1が通過可能な領域が生じることとなる。そして、駐車経路は、駐車枠Dと仮想障害物Cとの間に生じた領域、及び、当該領域における障害物のサイドソナー10Aによる検出結果を踏まえて駐車経路が算出される。
この結果、仮想障害物Cを移動させない場合に比べて、より切り返し回数が少ない駐車経路が算出可能になる。なお、「切り返し」は、駐車区画Tへの車両1の進入角の調整のための前進、及び後進の繰り返し運転を言い、スイッチバックと称されることもある。
【0044】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0045】
本実施形態の駐車支援装置100は、車両1の周辺を撮影した撮影画像に基づいて区画線TAを検出することで駐車区画Tを検出する駐車区画検出部114と、仮想障害物Cを駐車区画Tの中に設定した駐車枠Dに隣接した位置に設定する仮想障害物設定部116と、車両1が駐車区画Tを通過している場合、駐車区画Tと車両1(より正確にはソナー検出位置RP)との間の離間距離Lに応じた移動量Mで、車両1の通過方向Fへ仮想障害物Cを平行移動する仮想障害物移動部117と、車両1の現在位置と、障害物、仮想障害物C、及び駐車区画Tの中の駐車枠Dのそれぞれの位置と、に基づいて、車両1が現在位置から移動し駐車区画Tへ駐車する駐車経路を生成する駐車経路計算部118と、を備える。
【0046】
この構成によれば、駐車区画Tの中の駐車枠Dの手前からみて駐車枠Dの遠方側にソナー検出位置RPが位置する場合、ソナー検出位置RPに対応する位置まで仮想障害物Cが移動されるため、駐車枠Dと仮想障害物Cとの間に、駐車経路に利用可能な領域が設けられる。これにより、駐車経路に利用可能な領域が増え、より適切な駐車経路を得ることができる。
【0047】
これに加え、車両1が駐車可能な駐車可能スペースEである駐車区画Tをサイドソナー10Aの検出結果ではなく、カメラ10Bの撮影画像に基づいて検出する構成であるため、サイドソナー10Aの検出結果に基づいて駐車可能スペースEを検出する構成に比べ、より早期に駐車区画Tを検出することができる。
さらに、駐車区画Tを検出する構成であるため、当該駐車区画Tの隣に存在し得る障害物としての他車両3の姿勢(前後方向)についても、駐車区画Tの方向に基づいて類推可能である。
したがって、仮想障害物Cを平行移動するだけで、駐車区画Tの隣の他車両3の姿勢をサイドソナー10Aの検出結果に基づいて特定せずとも、また当該検出結果による特定を待つこと無く、当該他車両3の姿勢に合わせた位置に仮想障害物Cを速やかに移動させることができる。
これにより、駐車可能スペースEの検出や駐車区画Tの隣に存在する障害物の姿勢や形状をサイドソナー10Aの検出結果を用いて特定する構成に比べて、これらをより早いタイミングで特定することができ、また、これらが早期に特定されることで、より駐車区画Tのより近くで車両1を停車させて、より短い駐車経路を算出することも可能になる。
【0048】
本実施形態の駐車支援装置100において、仮想障害物Cは、駐車区画Tの隣に駐車し得る他車両3に基づく大きさに設定され、駐車区画Tに並列に設定される。
これにより、複数の他車両3が並列に駐車する駐車場内などにおける駐車経路を適切に算出することができる。
【0049】
本実施形態の駐車支援装置100において、障害物検出部112は、車両1に設けられたサイドソナー10Aから得られる周辺情報のうち、扇状の検出範囲Rの主軸RKを中心とした所定角度の範囲内(ただし、所定角度<扇状の検出範囲Rの中心角)の検出結果に基づく情報を用いる。
これにより、障害物を高い信頼度で検出することができる。
【0050】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0051】
上述した実施形態では、駐車枠設定部115は、駐車区画Tの中に駐車枠Dを設定した。しかしながら、駐車枠設定部115は、駐車区画Tの輪郭を駐車枠Dとして設定してもよい。
【0052】
上述した実施形態では、他車両3や他の駐車区画Tと並列に配置された駐車区画Tに車両1を駐車させる場合を例示した。しかしながら、図10に示すように、他車両3や他の駐車区画Tと直列に並ぶ駐車区画Tに車両1を駐車させる場合(いわゆる、縦列駐車の場合)にも、本発明を適用することができる。
なお、この場合、図10に示すように、仮想障害物Cの初期位置は、駐車枠Dに直列方向に隣接する位置となる。また駐車枠Dの上記最遠方辺Daは、車両1の前後方向に延びる長辺ではなく、車両1の車幅方向に延びる短辺のうち、駐車区画Tの手前からみて最も遠い方の辺である。
【0053】
上述した実施形態において、図1に示す機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために、車両1や駐車支援装置100の構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、これらの構成要素は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0054】
また、駐車支援装置100の各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアにより実行されてもよい。また、各構成要素の処理は、1つのプログラムで実現されてもよいし、複数のプログラムで実現されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 車両
10 周辺検出センサ部
10A サイドソナー
10B カメラ
100 駐車支援装置
110 位置検出部
111 周辺情報取得部
112 障害物検出部
114 駐車区画検出部
115 駐車枠設定部
116 仮想障害物設定部
117 仮想障害物移動部
118 駐車経路計算部
119 自動走行制御部
C 仮想障害物
D 駐車枠
Da 最遠方辺
F 通過方向
L 離間距離
M 移動量
R 検出範囲
RK 主軸
RP ソナー検出位置
T 駐車区画
TA 区画線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10