(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H02M3/155 H
(21)【出願番号】P 2020094287
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋口 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】田古部 勲
(72)【発明者】
【氏名】糸原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】河野 明大
(72)【発明者】
【氏名】住友 弘典
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09118241(US,B1)
【文献】米国特許第09966842(US,B1)
【文献】特開2007-312459(JP,A)
【文献】特開2005-261059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を出力電圧に降圧するよう構成されるスイッチング電源装置であって、
第1端が前記入力電圧の印加端に接続可能に構成され、第2端が第1インダクタの第1端に接続可能に構成される第1スイッチと、
第1端が前記第1インダクタの第1端及び前記第1スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記入力電圧よりも低い低電圧の印加端に接続可能に構成される第2スイッチと、
第1端が前記入力電圧の印加端に接続可能に構成される第3スイッチと、
第1端が前記第3スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記低電圧の印加端に接続可能に構成される第4スイッチと、
前記第1~第4スイッチそれぞれのオン/オフを制御するよう構成される制御部と、
を備え、
前記第1~第4スイッチは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの第1接続ノードと、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチの第2接続ノードとの間に第2インダクタが設けられるよう構成され
、
正常動作時は、前記第2インダクタを介して、前記第1接続ノードから前記第2接続ノードに向かって流れる電流は発生しない、スイッチング電源装置。
【請求項2】
入力電圧を出力電圧に降圧するよう構成されるスイッチング電源装置であって、
第1端が前記入力電圧の印加端に接続可能に構成され、第2端が第1インダクタの第1端に接続可能に構成される第1スイッチと、
第1端が前記第1インダクタの第1端及び前記第1スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記入力電圧よりも低い低電圧の印加端に接続可能に構成される第2スイッチと、
第1端が前記入力電圧の印加端に接続可能に構成される第3スイッチと、
第1端が前記第3スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記低電圧の印加端に接続可能に構成される第4スイッチと、
前記第1~第4スイッチそれぞれのオン/オフを制御するよう構成される制御部と、
を備え、
前記第1~第4スイッチは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの第1接続ノードと、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチの第2接続ノードとの間に第2インダクタが設けられるよう構成され、
前記制御部は、
前記第1スイッチをオン状態にし、前記第2~第4スイッチをオフ状態にする第1状態と、
前記第2スイッチをオン状態にし、前記第1、第3、及び第4スイッチをオフ状態にする第2状態と、
前記第2及び第3スイッチをオン状態にし、前記第1及び第4スイッチをオフ状態にする第3状態と、
前記第3スイッチをオン状態にし、前記第1、第2、及び第4スイッチをオフ状態にする第4状態と、
前記第1及び第4スイッチをオン状態にし、前記第2及び第3スイッチをオフ状態にする第5状態と、
を有する
、スイッチング電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1状態、前記第2状態、前記第3状態、前記第4状態、及び前記第5状態の順で前記第1~第5状態を繰り返す、請求項
2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第3状態において前記第2スイッチを流れる電流が略零になると、前記第3状態から前記第4状態に遷移する、請求項
2又は請求項
3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第4状態において前記第1スイッチの第1端及び第2端の電位差が略零になると、前記第4状態から前記第5状態に遷移する、請求項
2~
4のいずれか一項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれのオン/オフが切り替わる過程で、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチそれぞれのオン/オフを切り替える、請求項1
~5のいずれか一項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記第1~第4スイッチは、前記第1接続ノードと、前記第2接続ノードとの間に容量が設けられるよう構成され、
前記容量は、前記第2インダクタに直列接続される、請求項1~
6のいずれか一項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
第1端が入力電圧の印加端に接続可能に構成され、第2端が第1インダクタの第1端に接続可能に構成される第1スイッチと、
第1端が前記第1インダクタの第1端及び前記第1スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記入力電圧よりも低い低電圧の印加端に接続可能に構成される第2スイッチと、
第1端が前記入力電圧の印加端に接続可能に構成される第3スイッチと、
第1端が前記第3スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記低電圧の印加端に接続可能に構成される第4スイッチと
、
を備え、
前記第1~第4スイッチは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの第1接続ノードと、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチの第2接続ノードとの間に第2インダクタが設けられるよう構成される、スイッチング電源装置の一部であって、
正常動作時は、前記第2インダクタを介して、前記第1接続ノードから前記第2接続ノードに向かって流れる電流は発生しないように前記第1~第4スイッチそれぞれのオン/オフを制御するよう構成される制御部を備える、スイッチ制御装置。
【請求項9】
第1端が入力電圧の印加端に接続可能に構成され、第2端が第1インダクタの第1端に接続可能に構成される第1スイッチと、
第1端が前記第1インダクタの第1端及び前記第1スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記入力電圧よりも低い低電圧の印加端に接続可能に構成される第2スイッチと、
第1端が前記入力電圧の印加端に接続可能に構成される第3スイッチと、
第1端が前記第3スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記低電圧の印加端に接続可能に構成される第4スイッチと、
を備え、
前記第1~第4スイッチは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの第1接続ノードと、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチの第2接続ノードとの間に第2インダクタが設けられるよう構成される、スイッチング電源装置の一部であって、
前記第1~第4スイッチそれぞれのオン/オフを制御するよう構成される制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1スイッチをオン状態にし、前記第2~第4スイッチをオフ状態にする第1状態と、
前記第2スイッチをオン状態にし、前記第1、第3、及び第4スイッチをオフ状態にする第2状態と、
前記第2及び第3スイッチをオン状態にし、前記第1及び第4スイッチをオフ状態にする第3状態と、
前記第3スイッチをオン状態にし、前記第1、第2、及び第4スイッチをオフ状態にする第4状態と、
前記第1及び第4スイッチをオン状態にし、前記第2及び第3スイッチをオフ状態にする第5状態と、
を有する、スイッチ制御装置。
【請求項10】
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれのオン/オフが切り替わる過程で、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチそれぞれのオン/オフを切り替える、
請求項8又は請求項9に記載のスイッチ制御装置。
【請求項11】
請求項1~
7のいずれか一項に記載のスイッチング電源装置又は請求項
8~
10のいずれか一項に記載のスイッチ制御装置を備える、車載機器。
【請求項12】
請求項1
1に記載の車載機器と、
前記車載機器に電力を供給するバッテリと、
を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、入力電圧を出力電圧に降圧するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧を出力電圧に降圧する降圧型スイッチング電源装置では、一般にハイサイドスイッチをオフ状態からオン状態に切り替える際に、リカバリー損失及びスイッチング損失が生じ、これらの2つの損失が効率悪化の要因となる。降圧型スイッチング電源装置のスイッチング周波数が高いほど、一定時間に上記2つの損失が発生する回数が増えるため、効率悪化が顕著になる。また、降圧型スイッチング電源装置の入力電圧が大きいほど、スイッチング損失が大きくなるため、効率悪化が顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に開示されているスイッチング電源装置によると、上記2つの損失を抑制することができる。しかしながら、特許文献1に開示されているスイッチング電源装置は、トランス(カップルドインダクタ)が必要であるという構成上の制約があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書中に開示されているスイッチング電源装置は、入力電圧を出力電圧に降圧するよう構成されるスイッチング電源装置であって、第1端が前記入力電圧の印加端に接続可能に構成され、第2端が第1インダクタの第1端に接続可能に構成される第1スイッチと、第1端が前記第1インダクタの第1端及び前記第1スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記入力電圧よりも低い低電圧の印加端に接続可能に構成される第2スイッチと、第1端が前記入力電圧の印加端に接続可能に構成される第3スイッチと、第1端が前記第3スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記低電圧の印加端に接続可能に構成される第4スイッチと、前記第1~第4スイッチそれぞれのオン/オフを制御するよう構成される制御部と、を備え、前記第1~第4スイッチは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの第1接続ノードと、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチの第2接続ノードとの間に第2インダクタが設けられるよう構成される構成(第1の構成)である。
【0006】
上記第1の構成のスイッチング電源装置において、正常動作時は、前記第2インダクタを介して、前記第1接続ノードから前記第2接続ノードに向かって流れる電流は発生しない構成(第2の構成)としてもよい。
【0007】
上記第1又は第2の構成のスイッチング電源装置において、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれのオン/オフが切り替わる過程で、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチそれぞれのオン/オフを切り替える構成(第3の構成)としてもよい。
【0008】
上記第1~第3いずれかの構成のスイッチング電源装置において、前記制御部は、前記第1スイッチをオン状態にし、前記第2~第4スイッチをオフ状態にする第1状態と、前記第2スイッチをオン状態にし、前記第1、第3、及び第4スイッチをオフ状態にする第2状態と、前記第2及び第3スイッチをオン状態にし、前記第1及び第4スイッチをオフ状態にする第3状態と、前記第3スイッチをオン状態にし、前記第1、第2、及び第4スイッチをオフ状態にする第4状態と、前記第1及び第4スイッチをオン状態にし、前記第2及び第3スイッチをオフ状態にする第5状態と、を有する構成(第4の構成)としてもよい。
【0009】
上記第4の構成のスイッチング電源装置において、前記制御部は、前記第1状態、前記第2状態、前記第3状態、前記第4状態、及び前記第5状態の順で前記第1~第5状態を繰り返す構成(第5の構成)としてもよい。
【0010】
上記第4又は第5の構成のスイッチング電源装置において、前記制御部は、前記第3状態において前記第2スイッチを流れる電流が略零になると、前記第3状態から前記第4状態に遷移する構成(第6の構成)としてもよい。
【0011】
上記第4~第6いずれかの構成のスイッチング電源装置において、前記制御部は、前記第4状態において前記第1スイッチの第1端及び第2端の電位差が略零になると、前記第4状態から前記第5状態に遷移する構成(第7の構成)としてもよい。
【0012】
上記第1~第7いずれかの構成のスイッチング電源装置において、前記第1~第4スイッチは、前記第1接続ノードと、前記第2接続ノードとの間に容量が設けられるよう構成され、前記容量は、前記第2インダクタに直列接続される構成(第8の構成)としてもよい。
【0013】
本明細書中に開示されているスイッチ制御装置は、第1端が入力電圧の印加端に接続可能に構成され、第2端が第1インダクタの第1端に接続可能に構成される第1スイッチと、第1端が前記第1インダクタの第1端及び前記第1スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記入力電圧よりも低い低電圧の印加端に接続可能に構成される第2スイッチと、第1端が前記入力電圧の印加端に接続可能に構成される第3スイッチと、第1端が前記第3スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記低電圧の印加端に接続可能に構成される第4スイッチと、前記第1~第4スイッチそれぞれのオン/オフを制御するよう構成される制御部と、を備え、前記第1~第4スイッチは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの第1接続ノードと、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチの第2接続ノードとの間に第2インダクタが設けられるよう構成される、スイッチング電源装置の一部であって、前記第3スイッチのオン/オフと前記第4スイッチのオン/オフを制御する構成(第9の構成)である。
【0014】
上記第9の構成のスイッチング電源装置において、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれのオン/オフが切り替わる過程で、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチそれぞれのオン/オフを切り替える構成(第10の構成)としてもよい。
【0015】
上記第9又は第10の構成のスイッチング電源装置において、前記第1スイッチのオン/オフと前記第2スイッチのオン/オフを制御する構成(第11の構成)としてもよい。
【0016】
本明細書中に開示されている車載機器は、上記第1~第8いずれかの構成のスイッチング電源装置又は上記第9~第11いずれかの構成のスイッチ制御装置を備える構成(第12の構成)である。
【0017】
本明細書中に開示されている車両は、上記第12の構成の車載機器と、前記車載機器に電力を供給するバッテリと、を備える構成(第13の構成)である。
【発明の効果】
【0018】
本明細書中に開示されている発明によれば、高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図
【
図2】第1実施形態に係るスイッチング電源装置の動作を示すタイムチャート
【
図3】第1実施形態に係るスイッチング電源装置の第1状態を示す図
【
図4】第1実施形態に係るスイッチング電源装置の第2状態を示す図
【
図5】第1実施形態に係るスイッチング電源装置の第3状態を示す図
【
図6】第1実施形態に係るスイッチング電源装置の第4状態を示す図
【
図7】第1実施形態に係るスイッチング電源装置の第5状態を示す図
【
図8】第2実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図
【
図9】第2実施形態に係るスイッチング電源装置の動作を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、MOSトランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」”の少なくとも3層からなるトランジスタをいう。つまり、MOSトランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。第1実施形態に係るスイッチング電源装置1A(以下、「スイッチング電源装置1A」という)は、入力電圧VINを出力電圧VOUTに降圧するスイッチング電源装置であって、制御部CNT1と、第1~第4スイッチSW1~SW4と、第1インダクタL1と、第2インダクタL2と、出力コンデンサC1と、出力帰還部FB1と、を備える。
【0022】
制御部CNT1は、出力帰還部FB1の出力に基づき、第1~第4スイッチSW1~SW4のオン/オフを制御する。言い換えると、制御部CNT1は、第1~第4スイッチSW1~SW4のオン/オフを制御するスイッチ制御装置である。また、制御部CNT1は、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4のオン/オフを制御するスイッチ制御装置でもある。
【0023】
第1スイッチSW1は、第1端が入力電圧VINの印加端に接続可能に構成され、第2端が第1インダクタL1の第1端に接続可能に構成される。第1スイッチSW1は、入力電圧VINの印加端から第1インダクタL1に至る電流経路を導通/遮断する。第1スイッチSW1としては、例えばPチャネル型MOSトランジスタ、Nチャネル型MOSトランジスタ等を用いることができる。例えば第1スイッチSW1にNチャネル型MOSトランジスタを用いる場合、入力電圧VINより大きい電圧を生成するためにブートストラップ回路等をスイッチング電源装置1Aに設けるようにすればよい。
【0024】
第2スイッチSW2は、第1端が第1インダクタL1の第1端及び第1スイッチSW1の第2端に接続可能に構成され、第2端がグランド電位の印加端に接続可能に構成される。第2スイッチSW2は、グランド電位の印加端から第1インダクタL1に至る電流経路を導通/遮断する。第2スイッチSW2としては、例えばNチャネル型MOSトランジスタ等を用いることができる。
【0025】
第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のスイッチングによって、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2の第1接続ノードN1にパルス状のスイッチ電圧VSWが生成される。第1インダクタL1及び出力コンデンサC1は、パルス状のスイッチ電圧VSWを平滑化して出力電圧VOUTを生成し、その出力電圧VOUTを出力電圧VOUTの印加端に供給する。出力電圧VOUTの印加端には負荷LD1が接続され、負荷LD1に出力電圧VOUTが供給される。
【0026】
出力帰還部FB1は、出力電圧VOUTに応じた帰還信号を生成して出力する。出力帰還部FB1としては、例えば出力電圧VOUTを抵抗分圧して帰還信号を生成する抵抗分圧回路等を用いることができる。また例えば、出力帰還部FB1は、出力電圧VOUTを取得し、出力電圧VOUTそのものを帰還信号として出力する構成であってもよい。なお、出力帰還部FB1は、出力電圧VOUTに応じた帰還信号に加えて、第1インダクタL1を流れる電流に応じた帰還信号も生成して出力する構成であってもよい。出力帰還部FB1が第1インダクタL1を流れる電流に応じた帰還信号も生成することで、電流モード制御が可能になる。
【0027】
第3スイッチSW3は、第1端が入力電圧VINの印加端に接続可能に構成される。第3スイッチSW3としては、例えばPチャネル型MOSトランジスタ、Nチャネル型MOSトランジスタ等を用いることができる。例えば第3スイッチSW3にNチャネル型MOSトランジスタを用いる場合、入力電圧VINより大きい電圧を生成するためにブートストラップ回路等をスイッチング電源装置1Aに設けるようにすればよい。
【0028】
第4スイッチSW4は、第1端が第3スイッチSW3の第2端に接続可能に構成され、第2端がグランド電位の印加端に接続可能に構成される。第4スイッチSW4としては、例えばNチャネル型MOSトランジスタ等を用いることができる。
【0029】
第2インダクタL2は、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2の第1接続ノードN1と第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4の第2接続ノードN2との間に設けられる。具体的には、第2インダクタL2の第1端は、第1接続ノードN1に接続され、第2インダクタL2の第2端は、第2接続ノードN2に接続される。
【0030】
第2インダクタL2のインダクタンス値は、第1インダクタL1のインダクタンス値より小さい。例えば、第2インダクタL2のインダクタンス値は、第1インダクタL1のインダクタンス値の1/10程度に設定するとよい。
【0031】
図2は、スイッチング電源装置1Aの動作を示すタイムチャートである。制御部CNT1は、出力帰還部FB1から出力される帰還信号に応じて第1状態ST1の長さを設定する。負荷LD1が軽負荷であるほど第1状態ST1の長さは短くなる。
【0032】
第1状態ST1において、制御部CNT1は、第1スイッチSW1をオン状態にし、第2~第4スイッチSW2~SW4をオフ状態にする。これにより、第1スイッチSW1から第1インダクタに向かって第1インダクタ電流IL1が流れる(
図3参照)。
【0033】
第1状態ST1において、第1スイッチ電圧VSW1は入力電圧VINと略同一の値になり、第2スイッチ電圧VSW2はグランド電位GNDと略同一の値になる。また、第1状態ST1において、第1インダクタ電流IL1は時間経過とともに増加し、第2インダクタ電流IL2は零である。
【0034】
第1状態ST1が終了すると、制御部CNT1は、制御の状態を第1状態ST1から第2状態ST2に切り替える。
【0035】
第2状態ST2において、制御部CNT1は、第2スイッチSW2をオン状態にし、第1、第3、及び第4スイッチSW1、SW3、及びSW4をオフ状態にする。これにより、第2スイッチSW2から第1インダクタに向かって第1インダクタ電流IL1が流れる(
図4参照)。
【0036】
第2状態ST2において、第1スイッチ電圧VSW1及び第2スイッチ電圧VSW2はともにグランド電位GNDと略同一の値になる。また、第2状態ST2において、第1インダクタ電流IL1は時間経過とともに減少し、第2インダクタ電流IL2は零である。
【0037】
第2状態ST2が終了すると、制御部CNT1は、制御の状態を第2状態ST2から第3状態ST3に切り替える。
【0038】
第3状態ST3において、制御部CNT1は、第2及び第3スイッチSW2及びSW3をオン状態にし、第1及び第4スイッチSW1及びSW4をオフ状態にする。これにより、第2スイッチSW2から第1インダクタに向かって第1インダクタ電流IL1が流れるとともに、第3スイッチSW3から第2インダクタL2を経由して第2スイッチSW2に向かって第2インダクタ電流IL2が流れる(
図5参照)。したがって、第2スイッチSW2を流れる電流は、第1インダクタ電流IL1及び第2インダクタ電流IL2の合計電流となる。
【0039】
第3状態ST3において、第1スイッチ電圧VSW1及び第2スイッチ電圧VSW2はともにグランド電位GNDと略同一の値になる。また、第3状態ST3において、第1インダクタ電流IL1は時間経過とともに減少し、第2インダクタ電流IL2は時間経過とともに増加する。
【0040】
第1インダクタ電流IL1の絶対値と第2インダクタ電流IL2の絶対値とが略等しくなると、すなわち、第2スイッチSW2を流れる電流が略零になると、制御部CNT1は、制御の状態を第3状態ST3から第4状態ST4に切り替える。したがって、例えば、スイッチング電源装置1Aは第2スイッチSW2を流れる電流のゼロクロスを検出する第1検出器を備え、制御部CNT1は第1検出器の出力に基づき第3状態ST3から第4状態ST4への切り替えを実行すればよい。
【0041】
第4状態ST4において、制御部CNT1は、第3スイッチSW2をオン状態にし、第1、第2、及び第4スイッチSW1、SW2、及びSW4をオフ状態にする。これにより、第1インダクタに第1インダクタ電流IL1が流れるとともに、第3スイッチSW3から第2インダクタL2に向かって第2インダクタ電流IL2が流れる(
図6参照)。
【0042】
第4状態ST4において、第2スイッチ電圧VSW2は入力電圧VINと略同一の値になる。また、第4状態ST4において、第1インダクタ電流IL1は時間経過とともに減少し、第2インダクタ電流IL2は時間経過とともに増加する。このような電流の状態で、第1及び第2スイッチSW1及びSW2がともにオフ状態であるので、第1スイッチ電圧VSW1は時間経過とともに増加する。
【0043】
第1スイッチ電圧SW1と入力電圧VINとが略等しくなると、すなわち、第1スイッチSW1の第1端と第2端との電位差が略零になると、制御部CNT1は、制御の状態を第4状態ST4から第5状態ST5に切り替える。したがって、例えば、スイッチング電源装置1Aは第1スイッチSW1の第1端と第2端との電位差が略零であるか否かを検出する第2検出器を備え、制御部CNT1は第2検出器の出力に基づき第4状態ST4から第5状態ST5への切り替えを実行すればよい。
【0044】
第5状態ST5において、制御部CNT1は、第1及び第4スイッチSW1及びSW4をオン状態にし、第2及び第3スイッチSW2及びSW3をオフ状態にする。これにより、第1スイッチSW1から第1インダクタに向かって第1インダクタ電流IL1が流れるとともに、第4スイッチSW4から第2インダクタL2に向かって第2インダクタ電流IL2が流れる(
図7参照)。
【0045】
第5状態ST5において、第1スイッチ電圧VSW1は入力電圧VINと略同一の値になり、第2スイッチ電圧VSW2はグランド電位GNDと略同一の値になる。また、第5状態ST5において、第1インダクタ電流IL1は時間経過とともに増加し、第2インダクタ電流IL2は時間経過とともに減少する。
【0046】
第2インダクタ電流IL2が略零になると、すなわち、第4スイッチSW4を流れる電流が略零になると、制御部CNT1は、制御の状態を第5状態ST5から第1状態ST1に切り替える。したがって、例えば、スイッチング電源装置1Aは第4スイッチSW4を流れる電流のゼロクロスを検出する第3検出器を備え、制御部CNT1は第3検出器の出力に基づき第5状態ST5から第1状態ST1への切り替えを実行すればよい。
【0047】
上述したスイッチング電源装置1Aの動作によると、制御部CNT1は、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2それぞれのオン/オフが切り替わる過程で、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4それぞれのオン/オフを切り替える。具体的には、第3状態ST3から第5状態ST5に至るまでの過程すなわち第1スイッチSW1がオフ状態からオン状態に切り替わり第2スイッチSW2がオン状態からオフ状態に切り替わる過程において、制御部CNT1は、第3スイッチSW3をオン状態からオフ状態に切り替え第4スイッチSW4をオフ状態からオン状態に切り替える。
【0048】
上述したスイッチング電源装置1Aの動作によると、
図3~
図7から明らかな通り、正常動作時は、第2インダクタL2を介して、第1接続ノードN1から第2接続ノードN2に向かって流れる電流は発生しない。なお、上述した正常動作時は、制御部CNT1が第1状態ST1~第5状態ST5を切り替える際に生じる過渡的な期間を含まない。当該過渡的な期間は、第1状態ST1~第5状態ST5の各期間よりも十分に短い期間である。当該過渡的な期間の例としては、第1状態ST1から第2状態ST2に切り替える際に第1状態ST1と第2状態ST2との間に生じる期間を挙げることができる。
【0049】
スイッチング電源装置1Aは、第1スイッチSW1の第1端と第2端との電位差が略零になってから、第1スイッチSW1をオフ状態からオン状態に切り替えるので、第1スイッチSW1におけるリカバリー損失及びスイッチング損失を抑制することができ、高効率化を図ることができる。
【0050】
本実施形態の変形例として、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4それぞれは、第2端が入力電圧VINよりも低く且つグランド電位以外の低電圧の印加端に接続可能に構成されてもよい。
【0051】
<第2実施形態>
第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成及び動作については説明を省略する。
図8は、第2実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。第2実施形態に係るスイッチング電源装置1B(以下、「スイッチング電源装置1B」という)は、スイッチング電源装置1Aに容量C2を追加した構成である。
図9は、スイッチング電源装置1Bの動作を示すタイムチャートである。
【0052】
容量C2は、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2の第1接続ノードN1と第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4の第2接続ノードN2との間に設けられる。そして、容量C2は、第2インダクタL2に直列接続される。具体的には、第2インダクタL2の第1端が第1接続ノードN1に接続され、容量C2の第1端が第2インダクタL2の第2端に接続され、容量C2の第2端が第2接続ノードN2に接続される。
【0053】
なお、本実施形態とは異なり、容量C2の第1端が第1接続ノードN1に接続され、第2インダクタL2の第1端が容量C2の第2端に接続され、第2インダクタL2の第2端が第2接続ノードN2に接続されてもよい。
【0054】
スイッチング電源装置1Bでは、第2インダクタL2と容量C2との共振によって、第2接続ノードN2に全波の電流を流すことできるので、第2インダクタ電流IL2のピークを抑えることができる(
図9参照)。したがって、スイッチング電源装置1Bは、スイッチング電源装置1Aと比較して、ノイズの発生を抑制することができる。
【0055】
また本実施形態の変形例として、第2スイッチSW2及び第4スイッチSW4それぞれは、第2端が入力電圧VINよりも低く且つグランド電位以外の低電圧の印加端に接続可能に構成されてもよい。
【0056】
<制御部の構成>
図10は、制御部CNT1の一構成例を示す図である。
図10に示す構成例では、制御部CNT1を第1半導体集積回路装置D1と第2半導体集積回路装置D2とに分けて搭載している。
【0057】
第1半導体集積回路装置D1には、制御部CNT1のうち第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2それぞれのオン/オフを制御する部分を搭載する。第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は、第1半導体集積回路装置D1に内蔵されてもよく、第1半導体集積回路装置D1に対して外付け接続されてもよい。
【0058】
一方、第2半導体集積回路装置D2には、制御部CNT1のうち第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4それぞれのオン/オフを制御する部分を搭載する。第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4は、第2半導体集積回路装置D2に内蔵されてもよく、第2半導体集積回路装置D2に対して外付け接続されてもよい。
【0059】
第1半導体集積回路装置D1は、第1信号S1、第2信号S2、及び内部生成電圧VREGを第2半導体集積回路装置D2に供給する。
【0060】
第1信号S1は、第2接続ノードN2がハイインピーダンスである期間すなわち第1状態ST1の始期から第2状態ST2の終期までの期間を知らせるための信号である。
【0061】
第2信号S2は、第4状態ST4から第5状態ST5への切り替わりタイミングを知らせるための信号である。例えば、上述した第2検出器の出力を第2信号S2として用いればよい。
【0062】
内部生成電圧VREGは、入力電圧VINに基づき第1半導体集積回路装置D1の内部で生成される定電圧である。
【0063】
制御部CNT1を第1半導体集積回路装置D1と第2半導体集積回路装置D2とに分けて搭載することで、高効率化が要求される場合には第1半導体集積回路装置D1と第2半導体集積回路装置D2の両方を用い、高効率化よりも低コスト化が優先される場合には第1半導体集積回路装置D1のみを用いるという使い分けが可能になる。
【0064】
<用途>
次に、先に説明したスイッチング電源装置1の用途例について説明する。
図11は、車載機器を搭載した車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、車載機器X11~X17と、これらの車載機器X11~X17に電力を供給するバッテリ(不図示)と、を搭載している。
【0065】
先に説明したスイッチング電源装置1A又は1Bが車両Xに搭載される場合、AMラジオ放送の受信に悪影響が出ないようにAM帯域の輻射ノイズを抑えることが求められる。したがって、スイッチング制御回路1が、第1接続ノードN1に、1.8MHz以上2.1MHz以下の電圧を発生させることが望ましい。すなわち、スイッチング制御回路1が、スイッチ電圧VSWの周波数(スイッチング周波数)を1.8MHz以上2.1MHz以下にすることが望ましい。スイッチング周波数が1.8MHz未満になると、AM帯域の輻射ノイズが増加し、スイッチング周波数が2.1MHzより大きくなると、スイッチング損失が許容範囲を超えるからである。
【0066】
車載機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0067】
車載機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0068】
車載機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0069】
車載機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power Steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0070】
車載機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0071】
車載機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、電動サンルーフ、電動シート、及び、エアコンなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0072】
車載機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[Electronic Toll Collection System]など、ユーザの任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0073】
なお、先に説明したスイッチング電源装置1A又は1Bは、車載機器X11~X17のいずれにも組み込むことが可能である。
【0074】
<留意点>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0075】
1A 第1実施形態に係るスイッチング電源装置
1B 第2実施形態に係るスイッチング電源装置
C1 出力コンデンサ
C2 容量
CNT1 制御部
FB1 出力帰還部
L1 第1インダクタ
L2 第2インダクタ
LD1 負荷
SW1~SW4 第1~第4スイッチ
X 車両
X11~X17 車載機器