(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】メタン価測定装置およびメタン価算出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/18 20060101AFI20240229BHJP
G01N 33/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01N25/18 K
G01N33/00 C
(21)【出願番号】P 2020102863
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】内山田 健
(72)【発明者】
【氏名】朝田 隆二
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104270(WO,A1)
【文献】特開2004-162649(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013897(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/037209(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0040590(US,A1)
【文献】大石 安治 他,MEMSセンサを用いた天然ガスの熱量計測技術と展望,計測と制御,2016年02月,Vol.55,No.2,PP.174-177
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/18
G01N 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象ガスのメタン価を測定するメタン価測定装置であって、
前記対象ガスの熱伝導率から得られる
換算熱量を
算出可能な熱伝導率換算熱量測定手段と、
前記
換算熱量に基づいて算出される前記対象ガスの基礎熱量と該対象ガス中の窒素ガスの濃度により前記対象ガスのメタン価を算出するメタン価算出手段を備え、
前記熱伝導率換算熱量測定手段は、
熱伝導率測定手段を有し、
前記熱伝導率測定手段による前記対象ガスの測定出力に対して前記窒素ガスによる誤差分を補正して前記換算熱量を算出する、
ことを特徴とするメタン価測定装置。
【請求項2】
前記メタン価算出手段は、基準となる複数のガスについて予め取得されるメタン価と基礎熱量との特定の関係式と、前記対象ガスの基礎熱量の値に基づき該対象ガスの前記メタン価を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のメタン価測定装置。
【請求項3】
前記熱伝導率換算熱量測定手段は、基準となる複数のガスについて予め取得される、
前記熱伝導率測定手段
による測定出力と実際の熱量の相関とを示す関係式に基づき
、前記換算熱量を算出する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメタン価測定装置。
【請求項4】
前記熱伝導率換算熱量測定手段は、
補正手段と、
換算熱量算出手段と、を有し、
前記補正手段は、
前記対象ガスについて、前記熱伝導率測定手段に異なる電圧を印加して測定した第1の出力と第2の出力の差分を演算する差分算出手段と、
前記差分に基づき、前記対象ガスの補正出力値を算出する補正出力値算出手段を有し、
前記換算熱量算出手段は、
前記補正出力値と前記関係式に基づき、前記
換算熱量を算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載のメタン価測定装置。
【請求項5】
対象ガスのメタン価を算出するメタン価算出方法であって、
熱伝導率測定手段により前記対象ガスの熱伝導率
を測定するステップと、
前記熱伝導率の測定出力に対して、前記対象ガスに含まれる窒素ガスによる誤差を補正し、該対象ガスの換算熱量を算出するステップと、
前記
換算熱量に基づいて前記対象ガスの基礎熱量と該対象ガス中の窒素ガスの濃度を取得するステップと、
前記基礎熱量と前記窒素ガスの濃度に基づき、前記対象ガスのメタン価を算出するステップと、を有する、
ことを特徴とするメタン価算出方法。
【請求項6】
予め、基準となる複数のガスについてメタン価と基礎熱量との特定の関係式を取得し、前記対象ガスの前記基礎熱量の値に基づき該対象ガスの前記メタン価を算出する、
ことを特徴とする請求項5に記載のメタン価算出方法。
【請求項7】
予め、基準となる複数のガスについて
の前記熱伝導率測定手段
による測定出力と実際の熱量の相関とを示す関係式を取得し、前記
換算熱量を算出する、
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のメタン価算出方法。
【請求項8】
前記対象ガスについて、前記熱伝導率測定手段に異なる電圧を印加して測定した第1の出力と第2の出力の差分を演算するステップと、
前記差分に基づき、前記対象ガスの補正出力値を算出するステップと、
前記補正出力値と前記関係式に基づき、前記
換算熱量を算出するステップを有する、
ことを特徴とする請求項7に記載のメタン価算出方法。
【請求項9】
請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載のメタン価算出方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、天然ガスのメタン価測定装置およびメタン価算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、天然ガス、特に液化天然ガス(LNG)を燃料とする自動車(LNG自動車)について、開発・実用化が進められており、今後の普及が期待されている。
【0003】
しかしながら、LNG燃料の実用化に係る課題としては、LNGの組成が産出地により異なる点や、ガスエンジンの起動時や負荷変動時に燃料ガス(LNGを気化させて得られたガス(以下、「LNG気化ガス」という。))の消費量の変動が生ずることによって燃料ガスの組成が変化する点などが挙げられる。燃料ガスの組成が変わると、燃料ガスの熱量やメタン価などの特性が変化し、エンジンのノッキングや失火などの異常燃焼を引き起こす原因になりうる。ここで、メタン価とは、ガソリンエンジンのオクタン価に対応するノッキングに対する抵抗値を示す指標であって、純メタンガスを100、水素を0として評価した指標である。
【0004】
燃料ガスのメタン価を算出に関しては、従来より、
【0005】
(a)AVL社が提案する方式(以下、「AVL基準」ともいう。)、
【0006】
(b)カリフォルニア州大気資源評議会で規定された特定の演算式により算出する方式(以下、「CARB基準」ともいう。)、
【0007】
(c)ISO/TR 22302 3.1.1に準拠した方法により算出する方式(以下、「GRI(Lc)基準」ともいう。)、
【0008】
(d)ISO/TR 22302 3.1.2に準拠した方法により算出する方式(以下、「GRI(H/C)基準」ともいう。)
の4種類が主に利用されている。
【0009】
また、燃料ガスの異常燃焼を回避するためには、燃料ガスの熱量やメタン価などの燃料性状をリアルタイムに捉え、このデータに基づきガスエンジンの燃焼制御を行うことが有効な手段であると考えられる。
【0010】
例えばLNGなどの燃料ガスの熱量を測定する方法としては、例えば熱量と特定の対応関係を有する物性値を測定し、測定値に基づいて熱量の値(換算熱量)を求める方法などが、本件出願人によって提案されている(例えば特許文献1参照。)。この技術は、熱量測定手段として、例えば、測定対象ガスの音速の値から求められる音速換算熱量Qsを得るための音速換算熱量測定手段(音速測定手段)と、当該測定対象ガスの屈折率の値から求められる屈折率換算熱量Qnを得るための屈折率換算熱量測定手段(屈折率測定手段)と、当該測定対象ガスに含まれる窒素ガス濃度XN2[vol%]を測定する窒素濃度測定機構を備え、測定対象ガスである天然ガスの基礎熱量を測定してメタン価を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述の(a)~(d)の基準については、地域ごとに異なる基準での算出が要請され、さらに同一の燃料ガスであっても、算出方法によってメタン価は異なる値になる問題がある。
【0013】
また、従来の算出方法はいずれも、メタン価をガス組成に基づいて算出するものであることから、ガス組成の変動が生じた場合には、メタン価の算出にあたってガス組成を測定することが必要となる。
【0014】
また、特許文献1に記載の技術は、ガスエンジンへの供給前にLNG燃料ガスの熱量やメタン価などの燃料性状を直接且つリアルタイムに捉えることは可能であるが、LNG自動車のガスエンジンの燃焼制御を行うには、車載できることが大前提であり、さらなる小型・軽量化・低価格化が望まれる。
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされ、燃料ガスとして利用される天然ガスの燃料性状の監視を直接且つリアルタイムに行え、一応の信頼性を有するメタン価をガス組成に拘わらず容易に得ることができるとともに、車載に適した小型化・軽量化・低価格化を実現するメタン価測定装置およびメタン価算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、対象ガスのメタン価を測定するメタン価測定装置であって、前記対象ガスの熱伝導率から得られる換算熱量を算出可能な熱伝導率換算熱量測定手段と、前記換算熱量に基づいて算出される前記対象ガスの基礎熱量と該対象ガス中の窒素ガスの濃度により前記対象ガスのメタン価を算出するメタン価算出手段を備え、前記熱伝導率換算熱量測定手段は、熱伝導率測定手段を有し、前記熱伝導率測定手段による前記対象ガスの測定出力に対して前記窒素ガスによる誤差分を補正して前記換算熱量を算出する、ことを特徴とするメタン価測定装置に係るものである。
【0017】
また、本発明は、対象ガスのメタン価を算出するメタン価算出方法であって、熱伝導率測定手段により前記対象ガスの熱伝導率を測定するステップと、前記熱伝導率の測定出力に対して、前記対象ガスに含まれる窒素ガスによる誤差を補正し、該対象ガスの換算熱量を算出するステップと、前記換算熱量に基づいて前記対象ガスの基礎熱量と該対象ガス中の窒素ガスの濃度を取得するステップと、前記基礎熱量と前記窒素ガスの濃度に基づき、前記対象ガスのメタン価を算出するステップと、を有することを特徴とするメタン価算出方法に係るものである。
【0018】
また、本発明は、上記のメタン価算出方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、燃料ガスとして利用される天然ガスの燃料性状の監視を直接且つリアルタイムに行え、一応の信頼性を有するメタン価をガス組成に拘わらず容易に得ることができるとともに、車載に適した小型化・軽量化・低価格化を実現するメタン価測定装置およびメタン価算出方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態にかかるメタン価測定装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかるメタン価測定装置における窒素ガスについての誤差の補正方法を説明するための熱量と熱伝導率計の出力の関係を示すグラフであって(A)が補正前のグラフであり、(B)が補正後のグラフである。
【
図3】本発明の実施形態にかかる窒素ガス濃度の算出方法を説明するグラフである。
【
図4】本発明の実施形態にかかるメタン価算出方法を説明するためのグラウであり(A)メタン価と基礎熱量の関係を示すグラフであり、(B)メタン価と窒素ガス濃度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0022】
まず、
図1~
図4を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかるメタン価測定装置10の構成および機能の一例を概略的に示すブロック図である。
【0023】
メタン価測定装置10は、例えばガスパイプライン11内を
図1の矢印方向に流通する対象ガスのメタン価を測定するものであり、対象ガスの熱伝導率から得られる熱量を測定可能な熱伝導率換算熱量測定手段12と、メタン価算出手段16と、出力手段18などを有する。ガスパイプライン11と熱伝導率換算熱量測定手段12とは、ガス流路19により接続され、ガスパイプライン11中の対象ガスが熱伝導率換算熱量測定手段12に供給される。熱伝導率換算熱量測定手段12は、例えば、防爆性容器内に配設される。
【0024】
ここで、本実施形態のメタン価測定装置10において測定の対象となるガス(対象ガス)とは、天然ガス、具体的には例えば、LNGを気化させて得られたガス(以下、「LNG気化ガス」という。)であり、組成としては、例えば、燃焼性のガス(第1のガス)、具体的にメタンガスやエタンガスなどのパラフィン系炭化水素ガスを主成分とし、不燃ガス(第2のガス)、具体的には窒素ガスを含むガスである。
【0025】
熱伝導率換算熱量測定手段12は、熱伝導率測定手段13を有し、基準となる複数のLNG気化ガス(第1のガス(燃焼性ガス)のみからなるガス)について、予め取得される熱伝導率測定手段で測定した出力と実際の熱量の相関とを示す関係式に基づき、第2のガス(不燃ガス(窒素ガス))による誤差分を補正して対象ガスの熱量を算出する。熱伝導率換算熱量測定手段12は、例えば、熱伝導率測定手段13と、熱量測定の機能を実現するための補正手段14および換算熱量算出手段15を有する。
【0026】
熱伝導率測定手段13は、外部装置(電源装置など)17から出力される信号(熱伝導率測定手段13に印加される電圧)によって対象ガスの熱伝導率を測定可能な従来公知の熱伝導率式熱量計である。
【0027】
補正手段14は、差分算出手段141と補正出力値算出手段142を有し、対象ガスの熱量算出に際し、第2のガスが存在することによる誤差分を補正する機能を有する。
【0028】
換算熱量算出手段15は、上記の熱伝導率測定手段13の出力と実際の熱量の相関とを示す関係式に基づき、対象ガスの熱量を取得(算出)する機能を有する。燃焼性ガス(パラフィン系炭化水素ガス)のみからなる対象ガスの場合、熱伝導率測定手段13で測定した出力と実際の熱量は所定の相関を有するが、燃焼性ガスに不燃ガスが含まれると、それによる誤差によって当該相関から外れた値となる。そこで、補正手段14によって、熱伝導率測定手段13で測定した出力を補正し、当該補正した値に基づいて、換算熱量算出手段15が対象ガスの熱量を算出する。
【0029】
メタン価算出手段16は、例えば、窒素ガス濃度算出手段161と基礎熱量算出手段162を備える。窒素ガス濃度算出手段161は、熱伝導率換算熱量に基づき、対象ガス中の窒素ガス濃度を算出する。基礎熱量算出手段162は、熱伝導率測定手段13によって算出された換算熱量(熱伝導率換算熱量)に基づき、対象ガスの基礎熱量を算出する。ここに、「基礎熱量」とは、天然ガスから不燃ガス(第2のガス)成分を除いたときの燃焼性ガス(第1のガス)成分の燃焼熱量をいう。例えばLNG気化ガスの場合には、不燃ガス成分が窒素(N2)ガスだけと見なすことができるため、LNG気化ガスの基礎熱量は、LNG気化ガスから窒素ガスを除いた場合の燃焼熱量をいう。
【0030】
また、メタン価算出手段16は、上述の(a)AVL基準、(b)CARB基準,(c)GRI(Lc)基準,(d)GRI(H/C)基準にそれぞれ則ってメタン価の近似解を求める算出式を有している。これらは、メタン価測定装置10(メタン価算出手段16など)の記憶手段に予め保持される。そして、対象ガスの基礎熱量、窒素ガス濃度およびこれらの算出式に基づき、対象ガスのメタン価の近似解を求める。
【0031】
なお図示は省略するが、メタン価測定装置10は、既知の構成であるデータ伝送路、演算手段、制御手段、記憶手段などを有し、これらと熱伝導率換算熱量測定手段12の各手段(機能)が協働して対象ガスの測定および演算処理を行う。
【0032】
また、算出されたメタン価(および基礎熱量、窒素ガス濃度)は、出力手段18を介して外部に出力可能に構成される。出力手段18は、例えば表示手段や印刷手段、あるいは外部との通信により所定のデータを出力(送信)可能な送信手段である。また、メタン価測定装置10は、外部機器と所定のデータの送受信が可能な通信手段を別途備えてもよい。
【0033】
LNG気化ガスは、通常、不燃ガス(窒素ガス)成分も含まれており、当該不燃ガス成分による発熱量に対する影響の程度に法則性がないことから、従来、LNG気化ガスの発熱量(真の熱量)とメタン価の値との間には、特定の相関関係は成立しない。
【0034】
本願出願人は、鋭意研究を重ねた結果、燃料ガスとして利用される天然ガスの基礎熱量の値と、上記の(a)~(d)の各基準により算出されるメタン価の値との間に特定の相関関係が成立し、対象ガスの基礎熱量を測定することにより、各々の基準に対応するメタン価の近似解を得ることができることを見出した(特許文献1参照)。
【0035】
特許文献1に記載の技術は、熱量測定手段として、測定対象ガスの音速の値から求められる音速換算熱量Qsを得るための音速換算熱量測定手段(音速測定手段)と、当該測定対象ガスの屈折率の値から求められる屈折率換算熱量Qnを得るための屈折率換算熱量測定手段(屈折率測定手段)と、当該測定対象ガスに含まれる窒素ガス濃度XN2[vol%]を測定する窒素濃度測定機構を備える。そして各々天然ガスよりなる互いにメタン価の値が異なる複数種の基準ガスについてのメタン価と基礎熱量との特定の関係式を予め取得しておき、測定対象ガスである天然ガスの基礎熱量を測定し、測定された当該測定対象ガスの基礎熱量の値と、前記特定の関係式とから当該測定対象ガスのメタン価を算出するものである。つまり、各種測定手段として、音速測定手段、屈折率測定手段さらには窒素濃度測定機構などの構成が必要となる。
【0036】
しかしながら、LNG自動車のガスエンジンの燃焼制御を行うには、車載できることが大前提であり、さらなる小型・軽量化が望まれる。
【0037】
本実施形態によれば、測定手段としては熱伝導率測定手段13のみで対象ガス(LNG気化ガス)の熱量を算出できる。また、その過程において、対象ガス中の不燃ガス(窒素ガス)濃度を算出できる。つまり、音速測定手段、屈折率測定手段、さらには窒素濃度測定機構を用いることなく対象ガスの基礎熱量、およびメタン価(上述の(a)~(d)の基準に対応するメタン価の近似解)を得ることができ、より小型化・軽量化が実現する。以下、具体的に説明する。
【0038】
まず、
図2を参照して、第2のガス(窒素ガス)が含まれることによる誤差の補正について説明する。同図は、複数種の基準となるガス(基準ガス)の熱伝導率測定手段13の出力と実際の熱量の関係を示すグラフであり、同図(A)が第2のガスが含まれることによる誤差の補正前のグラフであり、同図(B)が補正後のグラフである。縦軸が、例えばガスクロマトグラフを用いた分析によって得られた各種基準ガスの熱量[MJ/Nm
3](以下、「熱量真値」ともいう。)であり、横軸が、各種基準ガスをそれぞれ熱伝導率測定手段13で測定した出力結果である。
【0039】
「基準ガス」とはいずれもメタンガスに他の一の成分を異なる割合で添加した混合ガスであり、組成(濃度、混合比)と熱量真値が明らかなガスをいう。添加する他の一の成分は、それぞれエタンガス、プロパンガス、ブタンガスのパラフィン系炭化水素ガスと、窒素ガスであり、メタンガスの濃度は、100vol%~80vol%、他の成分の濃度は、0vol%~20vol%である。なお、同図においては、メタンガスの濃度が100vol%のガス(純メタンガス)について熱伝導率測定手段13で測定した出力が「0」となり、出力と熱量真値とがほぼ線形の関係で示されるように、熱伝導率測定手段13の出力を規格化(正規化)している。すなわち、同図における横軸の熱伝導率計出力とは、このように規格化(正規化)された熱伝導率測定手段13の出力XT.C.であり、本実施形態では「規格化出力XT.C.」といい、また単に「出力XT.C.」という場合もある。同図において、規格化出力XT.C.が「0」の点から離れる(増加または減少する)ほど、メタンガスの濃度が2.5vol%刻みで減少し、添加される成分の濃度が増加することを意味する。
【0040】
同図(A)は、これらの複数種類の基準ガスについて、熱伝導率測定手段13への印加電圧を0.5Vにした場合の熱伝導率測定手段13の出力(規格化出力)XT.C.と、熱伝導率測定手段13への印加電圧を1.0Vにした場合の熱伝導率測定手段13の出力(規格化出力)XT.C.と、それぞれの熱量真値をプロットしたものである。
【0041】
具体的に、△印のプロットが、印加電圧が1.0Vの場合のメタンガスとエタンガスの混合ガス(CH4-C2H6)の結果であり、この場合、横軸の出力XT.C.が「0」(純メタンガス)から増加する方向に、メタンガスの濃度が2.5vol%刻みで少なくなる(メタンガス97.5vol%-エタンガス2.5vol%、メタンガス95vol%-エタンガス5vol%、メタンガス92.5vol%-エタンガス7.5vol%…)混合ガスが示される。
【0042】
また、▲印のプロットが、印加電圧が0.5Vの場合のメタンガスとエタンガスの混合ガス(CH4-C2H6)の結果であり、横軸の出力XT.C.が「0」(純メタンガス)から増加する方向に、メタンガスの濃度が2.5vol%刻みで少なくなる(メタンガス97.5vol%-エタンガス2.5vol%、メタンガス95vol%-エタンガス5vol%、メタンガス92.5vol%-エタンガス7.5vol%…)混合ガスが示される。
【0043】
同様に、□印のプロットが印加電圧1.0Vの場合のメタンガスとプロパンガスの混合ガス(CH4-C3H8)、■印のプロットが印加電圧0.5Vの場合のメタンガスとプロパンガスの混合ガス(CH4-C3H8)の結果であり、◇印のプロットが印加電圧1.0Vの場合の、メタンガスとブタンガスの混合ガス(CH4-C4H10)、◆印のプロットが印加電圧0.5Vの場合の、メタンガスとブタンガスの混合ガス(CH4-C4H10)の結果である。
【0044】
また、〇印のプロットが印加電圧1.0Vの場合の、メタンガスと窒素ガスの混合ガス(CH4-N2)、●印のプロットが印加電圧0.5Vの場合の、メタンガスと窒素ガスの混合ガス(CH4-N2)の結果である。窒素ガスを添加した場合も、横軸の出力XT.C.が「0」(純メタンガス)から減少する方向に、メタンガスの濃度が2.5vol%刻みで少なくなる(メタンガス97.5vol%-窒素ガス2.5vol%、メタンガス95vol%-窒素ガス5vol%、メタンガス92.5vol%-窒素ガス7.5vol%…)混合ガスが示される。
【0045】
同図(A)に示すように、パラフィン系炭化水素ガスのみからなる基準ガスの場合は、ガスの成分の違いによらず、メタンガスに添加される成分が増加するほど熱伝導率測定手段13の出力XT.C.および熱量真値は増加する。一方、メタンガスに窒素ガスが添加された基準ガス((CH4-N2)ガス)は、窒素ガスの成分が増加するほど熱伝導率測定手段13の出力XT.C.は増加し、熱量真値は減少することが分かった。
【0046】
さらに、パラフィン系炭化水素ガスのみからなる基準ガスの場合は、ガスの成分の違いによらず、概ね熱伝導率測定手段13への印加電圧の違いによる出力XT.C.の差異はない(少ない)一方、窒素ガスを含む基準ガス((CH4-N2)ガス)の場合は、出力XT.C.に差異が生じ(出力差が生じ)、且つ当該出力差が窒素ガスの濃度に対して線形的であることが分かった。
【0047】
これらのことから、本願出願人は、メタンガスに窒素ガスが混合された対象ガスについて、含有される窒素ガスの濃度が不明であっても、窒素ガスによる誤差を補正して当該対象ガスの熱量を算出することが可能であると考えた。
【0048】
メタン価測定装置10(例えば、熱伝導率換算熱量測定手段12)は、パラフィン系炭化水素ガスのみからなる基準ガスについての、熱伝導率測定手段13による出力X
T.C.と熱量真値との相関を示す関係式(
図2に実線で示す線形の関係式)を予め取得して記憶手段に保持する。当該関係式は、以下の式1で示され、以下この関係式を「熱量算出式」という。
【数1】
である。
【0049】
図2に〇印および●印で示すように窒素ガスを含む基準ガスの場合には、プロットがこの熱量算出式の直線から外れるため、補正手段14はプロットが熱量算出式の直線に乗るように、補正手段14によって熱伝導率測定手段13の出力X
T.C.を補正する。詳細には、補正手段14は、或る一つの対象ガスについて、熱伝導率測定手段13に異なる電圧を印加して測定した出力X
T.C.の差分(出力差)を演算する差分算出手段141と、差分に基づいて設定される補正式により対象ガスの補正出力値を算出する補正出力値算出手段142を有する(
図1参照)。
【0050】
差分算出手段141は、熱伝導率測定手段13に第1の電圧(例えば、1.0V)を印加して得た第1の出力と、第2の電圧(例えば、0.5V)を印加して得た第2の出力の差分(以下これを「出力差」という。)を演算する。
【0051】
補正出力値算出手段142は、出力差に基づく補正式により、第1の電圧を印加時の熱伝導率測定手段13の出力X
T.C.(第1の出力の測定結果)を補正する。補正式は、メタン価測定装置10(例えば、熱伝導率換算熱量測定手段12)の記憶手段に保持される。例えば、第2のガスが窒素ガスの場合の補正出力値(以下、「補正出力値(N
2)」という)を求める補正式は、以下の式2で示される。
【数2】
である。
【0052】
窒素ガスを含む基準ガスについて、補正出力値(N
2)を規格化出力X
T.C.として横軸にプロットした結果が、
図2(B)である。この補正により、窒素ガスを含む場合の誤差が補正され、窒素ガスを含む基準ガス((CH
4-N
2)ガス)のプロットが熱量算出式(式1)の直線上に乗ることになる。つまり実際の対象ガスの測定においては、換算熱量算出手段15が、補正出力値(N
2)と式1の熱量算出式(同図(B)に直線で示す線形の関係式)に基づき、補正出力値(N
2)を熱量算出式の出力X
T.C.に代入することで対象ガスの熱量Qを算出する。
【0053】
次に、メタン価算出手段16について説明する。
図3は、不燃ガスとして窒素ガスが含まれる基準ガスについての、熱伝導率測定手段13の出力差と、窒素ガス濃度X
N2の関係を示すグラフである。同図は、窒素ガスとメタンガスを混合した基準ガス(CH4-N2)について、縦軸を実際の窒素ガス濃度X
N2[vol%]、横軸を
図2(A)に示す熱伝導率測定手段13の規格化出力X
T.C.の出力差としてプロットしたグラフである。
【0054】
同図に示すように熱伝導率測定手段13の出力差は、第2のガス(ここでは窒素ガス)の濃度に対して線形的である。つまり、対象ガスについて異なる電圧を印加した場合の熱伝導率測定手段13の出力差から当該対象ガス中の窒素ガス濃度XN2を取得できる。
【0055】
窒素ガス濃度算出手段161は、対象ガスに第1の電圧と第2の電圧を印加した場合の熱伝導率測定手段13の出力差と、
図3に示す相関に基づき対象ガス中の窒素ガス濃度X
N2を算出する。
【0056】
そして基礎熱量算出手段162は、窒素ガス濃度X
N2と以下の式3に基づき、対象ガスの基礎熱量Q´を算出する。
【数3】
である。
【0057】
メタン価算出手段16は、(a)AVL基準、(b)CARB基準,(c)GRI(Lc)基準,(d)GRI(H/C)基準にそれぞれ則ってメタン価の近似解を求める算出式4~式7を有している。そして、対象ガスの基礎熱量Q´、窒素ガス濃度XN2および式4~式7に基づき、対象ガスのメタン価の近似解を求める。以下、それぞれの基準毎に具体的に説明する。
【0058】
<AVL基準により得られるメタン価の値(以下、「AVL値」ともいう。)の近似解を算出する場合>
この場合、以下の式4により求める。
【数4】
である。
【数5】
である。また、第5項(0.320X
N2の項)は、窒素ガス濃度に基づくメタン価の補正量である。
【0059】
式4は、例えば
図4(A)に示メタン価算出曲線より導かれている。メタン価算出曲線は、予め各々天然ガスよりなる互いにメタン価の値が異なる複数種の基準となるガス(基準ガス)についてのメタン価と基礎熱量Q´を取得し、
図4(A)に示すように縦軸をメタン価とし、横軸を基礎熱量とする座標系において、複数種の基準ガスの各々について、基礎熱量Q´の値とAVL値との関係を示す実測値を取得し、得られた実測値を例えば多項式で曲線近似することにより取得したものである。
【0060】
そして式4の定数Aについて設定される数値範囲は、式4においてA=0とした式で表される基準となるメタン価算出曲線自体の、実際のLNG気化ガスの燃料性状に即した補正が行われる実用的な許容範囲を示す。定数Aの値が上記数値範囲内であれば、算出される近似解のAVL値に対する誤差率が5.0%以内となり、高い信頼度が得られる。
【0061】
上記式4における定数Aの値の具体的な設定方法としては、例えば、組成が既知の基準ガスについてメタン価を測定し、理論値(AVL値)との差分を「A」として設定(オフセット調整)することができる。
【0062】
また、式4においては、対象ガスが窒素ガスを含むことによる誤差が補正されている。対象ガスが窒素ガスを含むものである場合には、実際上は問題にはならないが、窒素ガスが含有されていることに起因して測定誤差が生じてしまう。そこで、式4においては例えばLNG気化ガスに含まれる窒素ガス濃度と、当該窒素ガス濃度に起因するメタン価の変動量(誤差)との間に特定の相関関係が成立する知見に基づき、窒素ガス濃度に応じた補正量で補正を行っている。
【0063】
具体的に、式4-1~式4-4におけるメタン価の補正量(第5項)は、例えば、
図4(B)に示すように、縦軸をメタン価とし、横軸を測定対象ガスに含まれる窒素ガスの体積百分率で示される濃度[vol%]とする座標系において、メタン価の値が互いに異なる複数種の基準ガスの各々について、窒素ガスの濃度X
N2[vol%]とAVL値との関係を示す実測値を取得し、得られた実測値を例えば線形近似することにより取得された近似直線に基づいて設定されたものである。この場合、各々の基準ガスについての近似曲線は、互いに同一の大きさの傾きを有している。
【0064】
<CARB基準により得られるメタン価の値の近似解を算出する場合>
この場合、以下の式5により求める。
【数6】
である。定数Bは、式4の定数Aと同様に設定、選択される。
【数7】
この場合、窒素ガス濃度による補正項はなく、窒素ガス濃度に拘わらず適用可能である。
【0065】
式5も、式4の場合と同様の手法により、複数種の基準ガスの各々について、基礎熱量Q´の値とCARB基準により得られるメタン価の値との関係を示す実測値を取得し、得られた実測値を例えば多項式で曲線近似することにより取得したメタン価算出曲線から得られた式である。
【0066】
<GRI(LC)基準により得られるメタン価の値の近似解を算出する場合>
この場合、以下の式6により求める。
【数8】
である。また、定数Cは、式4の定数Aと同様に設定、選択される。
【0067】
式6も、式4の場合と同様の手法により、複数種の基準ガスの各々について、基礎熱量Q´の値とGRI(LC)基準により得られるメタン価の値との関係を示す実測値を取得し、得られた実測値を例えば多項式で曲線近似することにより取得したメタン価算出曲線から得られた式である。
【0068】
<GRI(H/C)基準により得られるメタン価の値の近似解を算出する場合>
この場合、以下の式7により求める。
【数9】
である。また、定数Cは式4の定数Aと同様に設定、選択される。
【0069】
この場合も、窒素ガス濃度による補正項はなく、窒素ガス濃度に拘わらず適用可能である。
【0070】
式7も、式4の場合と同様の手法により、複数種の基準ガスの各々について、基礎熱量Q´の値とGRI(H/C)基準により得られるメタン価の値との関係を示す実測値を取得し、得られた実測値を例えば多項式で曲線近似することにより取得したメタン価算出曲線から得られた式である。
【0071】
次に、本実施形態のメタン価算出方法について説明する。まず、予め、各種基準ガスのうち、複数のパラフィン系炭化水素ガス(第1のガス)のみからなる基準ガス(メタンガスに他のパラフィン系炭化水素ガスを、それぞれ異なる割合で添加した混合ガス)について熱伝導率測定手段13による測定値(出力XT.C.)と実際の熱量の相関とを示す関係式(熱量算出式(式1))を取得する。具体的に、第1のガスは、例えば、メタンガスとエタンガス濃度を異ならせた複数の(CH4-C2H6)ガス、メタンガスとプロパンガスの濃度を異ならせた複数の(CH4-C3H8)ガス、メタンガスとブタンガスの濃度を異ならせた複数の(CH4-C4H10)ガスである。
【0072】
ここで、他の成分の濃度は例えば、0vol%~20vol%であり、2.5vol%刻みで変化させる(メタンガスの濃度は、例えば、100vol%~80vol%)。
【0073】
これらの複数の第1のガスについて、例えばガスクロマトグラフを用いた分析によって得られたそれぞれの混合ガスの熱量真値と、熱伝導率測定手段13で測定した出力結果を取得する。そして、メタンガスの濃度が100vol%のガス(純メタンガス)の熱伝導率測定手段13で測定した出力が「0」となり、出力と熱量真値とがほぼ線形の関係で示されるように、熱伝導率測定手段13の出力を規格化(正規化)し、両者の相関を示す熱量算出式(式1)を取得する(
図2(A)の実線参照)。
【0074】
次に、測定動作中においては、例えばガスパイプライン11内を流通する対象ガス(例えば、窒素ガスを含むLNG気化ガス)をガス流路19を介して熱伝導率換算熱量測定手段12に供給する。これにより当該熱伝導率換算熱量測定手段12において熱量算出式(上記の式1)に基づき、第2のガス(窒素ガス)による誤差を補正して対象ガスの熱量を算出する。この熱量は、熱伝導率から得られる熱量であり、熱伝導率換算熱量ともいえる。
【0075】
具体的には、熱伝導率測定手段13に第1の電圧(例えば、1.0V)を印加して対象ガスを測定し、第1の出力を取得する。次に、熱伝導率測定手段13に第2の電圧(例えば、0.5V)を印加して同じ対象ガスを測定し、第2の出力を取得する。
【0076】
次に、第1の出力と第2の出力の差分(出力差)を算出する。そして、窒素ガスを補正する補正式(上記式2)によって、対象ガスの補正出力値(N
2)(窒素ガスによる誤差を補正した後の熱伝導率測定手段13の規格化出力X
T.C.)を算出する。そして、当該補正出力値(N
2)を熱量算出式(式1)のX
T.C.に代入し、対象ガスの熱量Qを算出する(
図2(B)参照)。
【0077】
次に、対象ガスに第1の電圧と第2の電圧を印加した場合の熱伝導率測定手段13の出力差と、
図3に示す相関に基づき対象ガス中の窒素ガス濃度X
N2を算出する。また、窒素ガス濃度X
N2と式3に基づき、対象ガスの基礎熱量Q´を算出する。
【0078】
そして、対象ガスの基礎熱量Q´、窒素ガス濃度XN2および、所望の(a)~(d)のメタン価算定基準のそれぞれに対応した式4~式7に基づき、対象ガスのメタン価の近似解を求める。
【0079】
なお、本発明は、本実施形態の熱量測定方法を実行可能なプログラムであってもよい。
【0080】
以上、本実施形態のメタン価算出方法によれば、熱伝導率測定手段13(例えば、従来公知の熱伝導率式熱量計など)で対象ガスの熱伝導率を測定することにより、当該対象ガスのメタン価を求めることができる。
【0081】
従って、このようなメタン価算出方法が実行される上記構成のメタン価測定装置10によれば、熱伝導率換算熱量測定手段12(熱伝導率測定手段13)によって対象ガスの熱伝導率を連続的に測定することにより、実際の状況に即した対象ガスのメタン価の値(例えば、AVL値など)の近似解としてのメタン価を連続的に取得することができるので、燃料ガスとしての天然ガスの実際の燃料性状の監視を行うことができる。従って、ガス組成の変動が生じた場合には、ガス組成の変動に伴うメタン価の変動を速やかに検出することができ、リアルタイムにガスエンジン制御にフィードバックすることができる。
【0082】
つまり、従来のように、測定手段として音速測定手段、屈折率測定手段さらに窒素濃度測定機構を用いることなく、また、屈折率測定手段において検知原理上必要とされる参照ガスの供給も不要として対象ガスの基礎熱量、およびメタン価(上述の(a)~(d)の基準に対応するメタン価の近似解)を得ることができる。したがって、各種制御処理の軽減・簡素化が図れ、メタン価測定装置10の小型化・軽量化・低価格化の実現により、LNG自動車などの車載に適したメタン価測定装置を提供できる。
【0083】
また、メタン価算出手段16で用いる特定の関係式は、各々、上述の上記(a)AVL基準、(b)CARB基準、(c)GRI(Lc)基準および(d)GRI(H/C)基準の各々に係るメタン価の値(例えば、AVL値など)が互いに異なる天然ガスよりなる複数種の基準ガスについて、基礎熱量Q´の値とメタン価の値との相関関係を実験による裏づけにより定量的に明らかにしたものであるため、得られるメタン価は一応の信頼性を有するものとなる。
【0084】
また、上記のメタン価測定装置10においては、熱伝導率換算熱量測定手段12およびメタン価算出手段16が防爆性容器内に配設されてなるものであることから、測定システムの構築および操作が簡便となる。しかも、測定に際しては、相当の時間を要することがなく、しかも基礎熱量Q´の算出処理とメタン価の算出処理との間にタイムラグが生じることがないため、メタン価をリアルタイムに測定することができる。
【0085】
また、上述したように、天然ガスを燃料ガスとして利用する場合には、実際には、例えば地域ごとに異なる基準に基づく算出方法によって算出されるメタン価が要請されるが、本実施形態によれば、メタン価算出機構は、例えば、上記(a)AVL基準、(b)CARB基準、(c)GRI(Lc)基準および(d)GRI(H/C)基準の各々に係るメタン価の近似解を算出する機能を有するので、基準が異なる場合であっても、汎用的に利用することができる。
【0086】
更に、対象ガスに含まれる窒素ガスによって生ずる誤差が補正されるので、当該対象ガスのメタン価を一層高い信頼性をもって求めることができる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0088】
10 メタン価測定装置
11 ガスパイプライン
12 熱伝導率換算熱量測定手段
13 熱伝導率測定手段
14 補正手段
15 換算熱量算出手段
16 メタン価算出手段
18 出力手段
19 ガス流路
141 差分算出手段
142 補正出力値算出手段
161 窒素ガス濃度算出手段
162 基礎熱量算出手段