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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20240229BHJP
   G01N 15/06 20240101ALI20240229BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N15/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020106732
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001848
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】納土 慶一
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】澤木 直哉
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-015596(JP,A)
【文献】特開2011-150991(JP,A)
【文献】特開2008-003076(JP,A)
【文献】実開昭52-122787(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
G01N 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と、
前記センサ素子を収容するケースと、
前記ケースの後端側を閉塞するゴム製の弾性部材と、
前記ケースの内部から前記弾性部材の挿通孔を通って外部へ延びる1本以上のリード線と、
前記ケースの後端側の外面を覆うと共に、前記ケースの後方に延びて、少なくとも前記弾性部材の全体、及び前記リード線の少なくとも一部で規定される包囲領域を全周に亘って包囲する遮熱カバーと、
を備えるセンサであって、
前記遮熱カバーは、片面に接着面を有し、反対面に遮熱面を有するシート状の遮熱テープからなり、
該遮熱テープは、前記包囲領域の少なくとも一部に前記接着面が接着して該包囲領域に巻き付いた状態で固定されてなることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記遮熱カバーの前記接着面は、前記ケースのうち少なくとも前記弾性部材を覆う部位の外面の全周に密着していることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記遮熱カバーは、前記接着面が前記リード線の外面と密着する密着部と、前記密着部の外側にて向かい合う2つの前記接着面同士が接着された板状の突出部とを一体に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記センサは、複数の前記リード線を結束部材によって束ねられた状態で有し、
前記遮熱カバーは、前記接着面が前記結束部材の外面と密着する密着部と、前記密着部の外側にて向かい合う2つの前記接着面同士が接着された板状の突出部とを一体に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気管には、被測定ガスの濃度を検出するセンサが取付けられている。
このセンサは、センサ素子を主体金具で保持し、センサ素子の後端側を筒状のケースで覆っている。さらに、ゴム製のグロメットごとケースの後端側を加締めて内外を封止すると共に、リード線をグロメットに挿通させて外部に引き出している。
ところが、グロメットやリード線は一般に耐熱性が低いため、センサが高温環境下で長時間使用されると、グロメットが輻射熱を受けて劣化し、センサのシールが損なわれるおそれがある。
そこで、グロメットとリード線とを遮熱チューブで包囲する技術が広く知られている。又、リード線を保護するために切割りを有する螺旋状の保護チューブを、ケースとリード線の間に配置する技術も開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-112748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した一般的な遮熱チューブの場合、車両のエンジン周り等にセンサを設置し、リード線を車両側のコネクタと接続した後では、遮熱チューブをリード線に通して取り付けることができない。その結果、遮熱チューブの取付けの自由度が低下すると共に、使用によって遮熱チューブが劣化や破損等しても交換が困難であるという問題がある。
一方、特許文献1の保護チューブは切割りを有するので、保護チューブを回転させることでリード線の周囲に保護チューブを後付けすることができる。ここで、特許文献1の保護チューブは遮熱を目的とするものではないが、仮にこの保護チューブに遮熱性を付与したとしても、チューブがケースの内側に配置されるため、ケース自体を遮熱することができず、ケースが高温となってグロメットやリード線を熱劣化させるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、センサ後端側の弾性部材やリード線の温度上昇を抑制する遮熱カバーの取付けの自由度を向上させ、かつ遮熱カバーの交換や変更を容易にしたセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のセンサは、センサ素子と、前記センサ素子を収容するケースと、前記ケースの後端側を閉塞するゴム製の弾性部材と、前記ケースの内部から前記弾性部材の挿通孔を通って外部へ延びる1本以上のリード線と、前記ケースの後端側の外面を覆うと共に、前記ケースの後方に延びて、少なくとも前記弾性部材の全体、及び前記リード線の少なくとも一部で規定される包囲領域を全周に亘って包囲する遮熱カバーと、を備えるセンサであって、前記遮熱カバーは、片面に接着面を有し、反対面に遮熱面を有するシート状の遮熱テープからなり、該遮熱テープは、前記包囲領域の少なくとも一部に前記接着面が接着して該包囲領域に巻き付いた状態で固定されてなることを特徴とする。
【0007】
このセンサによれば、遮熱性を有する遮熱カバーで弾性部材の全体、及びリード線の少なくとも一部で規定される包囲領域を包囲するため、センサの周囲の環境が高温環境になっても、外部の熱線を反射して、内部の弾性部材やリード線への熱の伝達を抑制することができる。
又、遮熱カバーは片面に接着面を有し、反対面に遮熱面を有するシート状の遮熱テープからなり、この遮熱テープを包囲領域に巻き付けて固定すればよいので、センサが車両等に設置された後から遮熱カバーを後付けすることもでき、取付けの自由度が向上する。又、遮熱カバーの交換や変更が容易になる。
【0008】
本発明のセンサにおいて、前記遮熱カバーの前記接着面は、前記ケースのうち少なくとも前記弾性部材を覆う部位の外面の全周に密着していてもよい。
このセンサによれば、センサの先端側からケースの後端側(弾性部材側)に伝わった熱が、遮熱カバーへ伝わって放熱し易くなり、弾性部材の熱劣化をさらに抑制できる。
【0009】
本発明のセンサにおいて、前記遮熱カバーは、前記接着面が前記リード線の外面と密着する密着部と、前記密着部の外側にて向かい合う2つの前記接着面同士が接着された板状の突出部とを一体に有してもよい。
このセンサによれば、遮熱カバーからの放熱効果が向上し、内部の弾性部材や、リード線への熱の伝達をさらに抑制することができる。特に、接着面がケースのうち弾性部材を覆う外面の全周に密着している場合には、ケースの後端側、ひいては弾性部材の熱をより一層放熱させることができる。
【0010】
本発明のセンサにおいて、前記センサは、複数の前記リード線を結束部材によって束ねられた状態で有し、前記遮熱カバーは、前記接着面が前記結束部材の外面と密着する密着部と、前記密着部の外側にて向かい合う2つの前記接着面同士が接着された板状の突出部とを一体に有してもよい。
このセンサによれば、遮熱カバーからの放熱効果が向上し、内部の弾性部材や、結束部材内のリード線への熱の伝達をさらに抑制することができる。特に、接着面がケースのうち弾性部材を覆う外面の全周に密着している場合には、ケースの後端側、ひいては弾性部材の熱をより一層放熱させることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、センサ後端側の弾性部材やリード線の温度上昇を抑制する遮熱カバーの取付けの自由度を向上させ、かつ遮熱カバーの交換や変更を容易にしたセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るセンサの斜視図である。
図2図1のA-A線に沿う断面図である。
図3図1のB-B線に沿う断面図である。
図4】センサの後端側から見た遮熱カバーの断面図である。
図5】センサに遮熱カバーを取り付ける態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る酸素センサ(センサ)100の斜視図、図2図1のA-A線(つまり、後述する突出部30pの主面)に沿う断面図、図3図1のB-B線(A-A線と径方向に直交する面)に沿う断面図、図4は酸素センサ100の後端側から見た遮熱カバー30の断面図、図5は酸素センサ100に遮熱カバー30を取り付ける態様を示す斜視図、を示す。
【0014】
この酸素センサ(センサ)100は、自動車の排気管(図示しない)に取り付けられ、排ガス中の酸素濃度を検知するものである。排気管は、排ガスの熱により例えば800℃という高温状態になる可能性があるため、酸素センサ100も高温になる。また、外部からの熱が酸素センサ100に加わることもある。従って、酸素センサ100には、このような熱に対する対策が要求される。
特に、酸素センサ100を車両のエンジンやその排気系(エキゾーストマニホールド等)により近接して設置する場合などに、センサの耐熱性を向上させることが必要となる。
【0015】
図1図2に示すように、酸素センサ100は、センサ素子15と、センサ素子15を保持する筒状の主体金具18と、センサ素子15の先端側を覆う筒状のプロテクタ19と、センサ素子15の後端側を覆う金属製筒状の外筒17とを備えている。さらに、外筒17の後端側の開口を覆うようにゴム製の弾性部材(グロメット)11が配置されて内外を封止すると共に、リード線12を弾性部材11に挿通させて外部に引き出している。弾性部材11は、外筒17の後端側を縮径するように加締めた加締め部17eによって固定されている。
センサ素子15は、軸線O方向に延びる板形状の積層部材であり、検出部を含む素子部と、素子部を加熱するためのヒータ部と、を備える。
なお、主体金具18と外筒17とが、特許請求の範囲の「ケース」に相当する。
【0016】
主体金具18、プロテクタ19及び外筒17は、ステンレス鋼などの耐熱性金属材料を用いて構成され、プロテクタ19及び外筒17はそれぞれ主体金具18の先端側及び後端側に溶接等で接続されている。
【0017】
リード線12は複数本(本例では4本)備えられ、リード線12の後端側にはコネクタ部20が電気的に接続され、コネクタ部20は外部機器(車両のECU等)に接続可能になっている。
又、複数のリード線12の後端側は一つに束ねられて保護チューブ(結束部材)13によって被覆され、保護チューブ13は、コネクタ部20に隣接するように延びている。
保護チューブ13は、ガラス繊維を用いて構成された筒状の編組であり、可撓性を備えている。
【0018】
さらに、酸素センサ100は、外筒17の後端側の外面を覆うと共に、外筒17の後方に延びて少なくとも弾性部材11の全体、及びリード線の少なくとも一部で規定される包囲領域Rを包囲する遮熱カバー30を備えている。
なお、本例では、遮熱カバー30は、リード線12を覆う保護チューブ13の少なくとも一部を包囲しており、リード線12を保護チューブ13を介して間接的に包囲している。又、遮熱カバー30は、弾性部材11を内部に収容する外筒17の後端側を包囲しており、弾性部材11を外筒17を介して間接的に包囲している。
又、遮熱カバー30の後端から保護チューブ13(及びその内部のリード線12)が後端側に延びている。
【0019】
遮熱カバー30は、片面に接着面31を有し、反対面に遮熱面32を有するシート状の遮熱テープからなる。この遮熱テープとしては、アルミ箔にガラスクロスを貼り合わせ、その片面に接着剤を塗布して接着面31を形成した、市販のアルミガラスクロステープ、アルミクロステープなどを例示できる。アルミ箔の面が遮熱面32となる。
なお、遮熱面32は、外部からの熱線を反射可能な面であり、アルミニウムなどの金属の箔や蒸着体の他、アルミニウムなどの金属の箔や蒸着体の外面に透明なコーティング層を設けた場合も含む。
【0020】
図2図3に示すように、遮熱カバー30は、包囲領域Rの少なくとも一部に接着面31が接着して包囲領域Rに巻き付いた状態で固定され、かつ包囲領域Rの全周に亘って配置されている。
ここで、「包囲領域Rの少なくとも一部に接着面31が接着」とは、例えば、リード線12を覆う保護チューブ13の一部の部分のみに接着し、外筒17の外面とは接着せずに離間して外筒17を覆うような場合も含める。又、例えば保護チューブ13を用いない場合に、4本のリード線12のうち、一部のリード線12のみに接着するような場合も含める。つまり、包囲領域Rに存在する部材のうち少なくとも一部に接着面31が接着していれば、遮熱カバー30が包囲領域Rに固定されることになる。
【0021】
又、「包囲領域Rに巻き付いた状態」とは、遮熱カバー30を構成する遮熱テープを例えば螺旋状に巻き付けた状態だけでなく、後述する図4図5に示すように、包囲領域Rを挟むように遮熱テープを対向して接着面31同士を貼り合わせた状態も含む。
又、「包囲領域の全周に亘って配置」とは、包囲領域Rに存在する部材が周方向に露出することなく、遮熱カバー30で周方向に完全に覆われていることをいう。包囲領域Rに存在する部材の一部が露出していると、その部位が遮熱されずに内部の弾性部材11やリード線12に輻射熱が伝わるからである。又、径方向に包囲領域Rと遮熱カバー30の間に隙間がある状態、つまり、遮熱カバー30が包囲領域Rと離間して包囲領域Rを覆う場合も「全周に亘って」に含む。
【0022】
以上のように、本実施形態によれば、遮熱性を有する遮熱カバー30で弾性部材11の全体、及びリード線12の少なくとも一部で規定される包囲領域Rを包囲するため、酸素センサ100の周囲の環境が高温環境になっても、外部の熱線を反射して、内部の弾性部材11やリード線12への熱の伝達を抑制することができる。
又、遮熱カバー30は片面に接着面31を有し、反対面に遮熱面32を有するシート状の遮熱テープからなり、この遮熱テープを包囲領域Rに巻き付けて固定すればよいので、酸素センサ100が車両等に設置された後から遮熱カバー30を後付けすることもでき、取付けの自由度が向上する。又、遮熱カバー30の交換や変更が容易になる。
【0023】
又、図3に示すように、本実施形態では、遮熱カバー30の接着面31は、外筒17のうち少なくとも弾性部材11を覆う部位の外面C1、C2の全周に密着している。これにより、酸素センサ100の先端側から外筒17の後端側(弾性部材11側)に伝わった熱が、遮熱カバー30へ伝わって放熱し易くなり、弾性部材11の熱劣化をさらに抑制できる。
なお、外筒17のうち弾性部材11を覆う部位としては加締め部17eも存在するが、加締め部17eは外面C1、C2より縮径するために接着面31とは離間している。しかしながら、外筒17のうち弾性部材11を覆う部位の外面の少なくとも一部(C1、C2)の全周に遮熱カバー30の接着面31が密着していれば、その密着部を介して外筒17の熱を遮熱カバー30側に有効に伝えることができる。
【0024】
又、図1図4に示すように、本実施形態では、遮熱カバー30は、接着面31が包囲領域Rにおける保護チューブ13の外面と密着する密着部30aと、密着部30aの外側にて向かい合う2つの接着面31同士が接着された板状の突出部30pとを一体に有する。これにより、遮熱カバー30からの放熱効果が向上し、内部の弾性部材11や、保護チューブ13内のリード線12への熱の伝達をさらに抑制することができる。
特に、上述のように接着面31が外面C1、C2の全周に密着している場合には、外筒17の後端側、ひいては弾性部材11の熱をより一層放熱させることができる。
なお、本例では、密着部30aの両外側にそれぞれ突出部30pが設けられている。
【0025】
本実施形態の酸素センサ100は、例えば図5に示すようにして製造することができる。図5においては、例えば矩形片状の遮熱カバー30を、軸線O方向に沿って接着面31同士が向き合うように2つ折りし、包囲領域Rを挟むようにして接着面31同士を貼り合わせて酸素センサ100を製造することができる。ここで、保護チューブ13の両外側に遮熱カバー30が余るようにして貼り合わせることで、2つの突出部30pを形成することができる。
【0026】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
図1図4に示す保護チューブ13を省略し、リード線12の外面に直接遮熱カバー30の接着面31を密着させてもよい。
遮熱カバーの材質は上記実施形態に限定されないし、巻き付けた形状も限定されない。
センサ素子は板型素子に限らず、筒型素子でもよい。
又、センサの種類も限定されず、酸素センサの他、NOxセンサ、全領域センサ、温度センサ、PMセンサ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0027】
100 センサ
11 弾性部材
12 リード線
13 結束部材(保護チューブ)
15 センサ素子
17 ケース(外筒)
18 ケース(主体金具)
30 遮熱カバー
30a 密着部
30p 突出部
31 接着面
32 遮熱面
O 軸線
R 包囲領域
C1,C2 ケースのうち弾性部材を覆う部位の外面
図1
図2
図3
図4
図5