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  • 特許-地盤改良機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】地盤改良機
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020106802
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001715
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】吉仲 智彦
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053649(JP,A)
【文献】特開昭60-168812(JP,A)
【文献】特開2001-248144(JP,A)
【文献】特開2004-092302(JP,A)
【文献】特開平02-300414(JP,A)
【文献】実開平02-073451(JP,U)
【文献】特開平07-233524(JP,A)
【文献】特開平06-173264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/08
3/10
3/12
7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に掘削ヘッドを装着した中空のスクリューシャフトを回転駆動しながらリーダに沿って下降させるとともに、前記スクリューシャフト内を通って送られた地盤改良剤を前記掘削ヘッドに供給し、該掘削ヘッドの掘削刃で掘削した土砂と前記地盤改良剤とを前記掘削ヘッドの撹拌翼で混合して地盤改良を行う地盤改良機において、
前記スクリューシャフトの上端には、スイベルジョイントを介して前記地盤改良剤を送る注入ホースが接続され、該注入ホースは、中途部が前記リーダに設けられたホース支持部材に係止され、該ホース支持部材から前記スイベルジョイントに無拘束で接続されることによって弛みを有し、
前記弛みの最下部に対して下向きの引張力を付与する引張力付与手段を備え
前記引張力付与手段は、前記弛みの最下部に係合する連結具と、先端が前記連結具に止着されたロープを巻き取るリール装置とを有していることを特徴とする地盤改良機。
【請求項2】
前記連結具は、前記弛みの最下部を挟持する上下一対の回転ローラを有していることを特徴とする請求項記載の地盤改良機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良機に関し、詳しくは、掘削した土砂と注入した地盤改良剤とを撹拌混合して地盤の改良を行う地盤改良機に関する。
【背景技術】
【0002】
建築や土木工事では、軟弱地盤を改良するために、掘削した掘削孔にセメントミルクなどの地盤改良剤を注入・撹拌し、地盤を硬化させる地盤改良機が使用されている。この種の地盤改良機は、中空掘削軸であるスクリューシャフトの下端に掘削刃及び撹拌翼を有する掘削ヘッドを装着し、回転が付与されたスクリューシャフトをリーダに沿って下降させて地盤を掘削しながら、スクリューシャフト内を通って送られた地盤改良剤を掘削ヘッドから噴出させて土砂と地盤改良剤とを撹拌している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-92302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクリューシャフトは、通常、より深いところまで地盤改良できるようにリーダの長さよりも長いものが使用され、上端に設けたスイベルジョイントに地盤改良剤の注入ホース(グラウトホース)が接続されている。しかし、接続状態にある注入ホースは、スクリューシャフトの上下動に追随させる無拘束部分(弛み)を有していることから、この無拘束部分が強風で煽られてリーダに接触し、擦れて摩耗したり、スクリューシャフトに絡まったりするという問題があった。また、無拘束部分にロープを括り付けて地上から引っ張る手段も考えられるが、そのために作業員が必要となり、コスト高である。
【0005】
そこで本発明は、無拘束状態にある注入ホースを引っ張ってその位置を安定させることが可能な引張力付与手段を備えた地盤改良機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の地盤改良機は、下端に掘削ヘッドを装着した中空のスクリューシャフトを回転駆動しながらリーダに沿って下降させるとともに、前記スクリューシャフト内を通って送られた地盤改良剤を前記掘削ヘッドに供給し、該掘削ヘッドの掘削刃で掘削した土砂と前記地盤改良剤とを前記掘削ヘッドの撹拌翼で混合して地盤改良を行う地盤改良機において、前記スクリューシャフトの上端には、スイベルジョイントを介して前記地盤改良剤を送る注入ホースが接続され、該注入ホースは、中途部が前記リーダに設けられたホース支持部材に係止され、該ホース支持部材から前記スイベルジョイントに無拘束で接続されることによって弛みを有し、前記弛みの最下部に対して下向きの引張力を付与する引張力付与手段を備え、前記引張力付与手段は、前記弛みの最下部に係合する連結具と、先端が前記連結具に止着されたロープを巻き取るリール装置とを有していることを特徴としている。
【0007】
また、前記連結具は、前記弛みの最下部を挟持する上下一対の回転ローラを有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の地盤改良機によれば、注入ホースの弛みの最下部に対して下向きの引張力を付与する引張力付与手段を備えているので、人手を介すことなく、無拘束状態にある注入ホースを緊張させてその位置を安定させることができる。これにより、強風の影響を受けても、リーダなどの周辺構造物との間で接触を回避して注入ホースを保護することができる。また、引張力付与手段が注入ホースの弛みの最下部に係合する連結具と、これに止着されたロープを巻き取るリール装置とを有しているので、ロープを巻取り方向に引っ張って、常にテンションをかけた状態にすることが可能となり、弛みの位置が上下方向に変化しても注入ホースの緊張状態を維持することができる。さらに、連結具が弛みの最下部を挟持する上下一対の回転ローラを有しているので、注入ホースと連結具との相対的な移動が円滑に達成され、これにより、注入ホースに付与する引張力をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一形態例を示す地盤改良機の側面図である。
図2】同じく平面図である。
図3】同じく要部側面図である。
図4】同じく要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図4は、本発明の地盤改良機を示す図である。地盤改良機11は、図1及び図2に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持するリーダ起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート17や、リーダ15の後方で配管を支持する配管案内アーム18が設けられている。さらに、上部旋回体13の車幅方向両側部には、運転室19や、油圧ポンプなどを搭載する動力部20が設けられ、上部旋回体13の前後左右の4箇所には安定用のジャッキ21が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部には地盤改良機11のバランスをとるためのカウンタウエイト22が搭載されている。
【0011】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を連結したもので、上端部には、吊上げ用ロープが巻掛けられるトップシーブ23が、下部前方には、回転駆動される施工部材の振れを防止する開閉可能な振止装置24がそれぞれ備わっており、リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降機構の構成品の一つであるラックギヤ25が、両側面前端部には、左右一対のガイドパイプ26,26が、リーダ15の全長に亘ってそれぞれ連続的に設けられている。
【0012】
回転駆動装置の一例であるオーガ27は、貫通した施工部材を把持して回転駆動させるためのチャック機構27aを備え、前記ガイドパイプ26,26に摺接する左右一対のガイドギブ27b,27bが後方に突出して設けられるとともに、前記ラックギヤ25の両側に設けられている歯列に歯合するピニオンギヤをオーガ昇降モータ27cで回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降可能になっている。
【0013】
地盤改良機11を使用して地盤改良を行う際には、施工部材としてスクリューシャフトが使用される。スクリューシャフト28は、セメントミルクなどの地盤改良剤が中を通る継足し可能な中空管であり、上端部を含む長さ方向の複数箇所に前記チャック機構27aに係合する角軸部28aが設けられ、下端には掘削刃及び撹拌翼を有する掘削ヘッド(図示せず)が装着される。また、スクリューシャフト28の上端にはスイベルジョイント29が取り付けられ、該スイベルジョイント29に注入ホース(グラウトホース)30が接続されている。
【0014】
スイベルジョイント29は、図示は省略するが、スクリューシャフト28に連結するカップリングと、注入ホース30が接続されるボディとが相対回転可能に組み立てられ、スクリューシャフト28が回転してもその回転力が注入ホース30に伝わらないようになっている。もっとも、カップリングとボディとの間には、漏れ防止のシールが介在しているため、こうしたシール部分の抵抗によってボディ側が連れ回りしてしまうおそれがある。そこで、スイベルジョイント29の連れ回りを防止するための回り止め装置が使用されている。
【0015】
回り止め装置31は、スクリューシャフト28に沿って上方に伸縮可能な伸縮ロッド31aをオーガ27の側面に固定し、伸縮ロッド31aとスイベルジョイント29との間で連結部材31bによる連結がなされている。連結部材31bは、スイベルジョイント29のカップリング側にベアリング機構を介して連結されることにより、スクリューシャフト28の回転力が伝わらないようになっている。また、連結部材31bには、接続状態の注入ホース30を保持するホース保持部材31cが設けられている。これにより、スイベルジョイント29は、そのボディ側が定位置に回転不能に保持され、回転するスクリューシャフト28によって連れ回りすることはない。
【0016】
注入ホース30は、バッチャープラント(図示せず)から圧送された地盤改良剤の供給用ホースであり、標準的な長さ、例えば10mのものを複数本連結して長尺に形成されている。この注入ホース30は、基本的に、リーダ15に沿った引き回しがなされており、中途部がリーダ15の上端部に設けられたホース支持部材32に係止され、該ホース支持部材32から先の部分がスイベルジョイント29に無拘束で接続されている。この無拘束部分は、略U字状の弛み30aを有するとともに、スクリューシャフト28の上下動に追随して上下方向に移動可能であり、その長さは、スイベルジョイント29の高さ位置が最大となるときに合わせて設定されている(図1)。これにより、スクリューシャフト28を装着したオーガ27が、リーダ15の上端部(上昇限界位置)又は下端部(下降限界位置)に到達したときに、弛み30aの形状が過度に変形することはない。
【0017】
このように形成した地盤改良機11は、スクリューシャフト28の中間角軸部28aをオーガ27のチャック機構27aに係合させた状態で、振止装置24によってスクリューシャフト28が回転可能かつ上下動可能に保持され、スクリューシャフト28の上端部において、回り止め装置31で保持されたスイベルジョイント29に注入ホース30が接続される。この作業開始状態で、スクリューシャフト28を回転駆動しながらリーダ15に沿って下降させるとともに、スクリューシャフト28を通って送られた地盤改良剤を掘削ヘッドの先端から掘削孔に噴射することにより、掘削ヘッドの掘削刃で掘削した土砂と地盤改良剤とを掘削ヘッドの撹拌翼で混合する。
【0018】
ここで、オーガ27がリーダ15の下端部に到達したときに、中間角軸部28aの把持を解除したオーガ27を上昇させ、上部角軸部28aを把持させる掴み替えを行う。このとき、スクリューシャフト28をその位置に固定しておくために、振止装置24の固定手段によってスクリューシャフト28が把持される。オーガ27の移動によってスクリューシャフト28の支持位置を上部側に切り替えたら、スクリューシャフト28を回転駆動しながら下降させて、掘削刃で掘削した土砂と地盤改良剤とを撹拌翼で混合する。そして、所定深度まで掘削ヘッドを下降させた後、逆の手順で掘削ヘッドを引上げることによって地盤改良作業が終了する。
【0019】
ところで、地盤改良機11は、その構造上、注入ホース30の無拘束部分が強風で煽られてリーダ15に接触したり、スクリューシャフト28に絡まったりするおそれがある。そこで、地盤改良作業の安全を図る目的として、地盤改良機11には無拘束状態にある注入ホース30を引っ張ってその位置を安定させる引張力付与手段が備わっている。
【0020】
前記引張力付与手段は、図3及び図4に示すように、注入ホース30における弛み30aの最下部Lに対して下向きの引張力を付与するもので、弛み30aの最下部Lに係合する連結具33と、先端が連結具33に止着されたロープ34aをスプリングの弾性力によって巻き取るリール装置34とを有している。
【0021】
連結具33は、注入ホース30を挟持する上下一対の回転ローラ33a,33aと、両回転ローラ33a,33aを挟み込んで軸支するブラケット33bと、該ブラケット33bの下端に設けられたU字状のロープ止着部33cとを有している。両回転ローラ33a,33aの長さや取付間隔は、注入ホース30の外径寸法に対応させており、注入ホース30に連結具33を組み付けた係合状態で、連結具33は、注入ホース30の表面を回転移動する回転ローラ33aによって、注入ホース30の長さ方向への移動が可能となる。すなわち、注入ホース30の弛み30aの位置が上下方向に移動しても、連結具33は回転ローラ33aを回転させながら弛み30aの最下部Lに止まるようになっている。
【0022】
注入ホース30の弛み30aの真下付近には、ジャッキ21のフランジ締結部を利用してボルト止めした前記リール装置34が配置されている。このリール装置34には、リール本体34bに内蔵される回転ドラムに前記ロープ34aが巻回されている。また、スプリングの弾性力に抗して引き出されたロープ34aは、その先端がロープ止着部33cに止着され、常にリール本体34b内に巻き取る方向に付勢されている。ロープ34aの巻取り力は、調整用ダイアル(図示せず)を回転操作して前記スプリングの弾性力が調整されることにより、増減可能になっている。
【0023】
このように形成した引張力付与手段は、リール装置34からロープ34aを引き出して弛み30aの最下部Lに連結具33を係合させると、ロープ34aが緩まないように常にテンションがかかった状態となる。このとき、注入ホース30には、弛み30aの最下部Lに対して下向きの引張力が作用するものの、この部分に強い曲げが生じない程度の緊張状態(張りのある状態)に置かれる。そして、地盤改良機11の動作中において、注入ホース30の弛み30aは、その緊張状態を維持しながら、スクリューシャフト28の上下動に追随して上下方向に移動される。
【0024】
このように、本発明の地盤改良機11によれば、注入ホース30の弛み30aの最下部Lに対して下向きの引張力を付与する引張力付与手段を備えているので、人手を介すことなく、無拘束状態にある注入ホース30を緊張させてその位置を安定させることができる。これにより、強風の影響を受けても、リーダ15などの周辺構造物との間で接触を回避して注入ホース30を保護することができる。また、引張力付与手段が注入ホース30の弛み30aの最下部に係合する連結具33と、これに止着されたロープ34aを巻き取るリール装置34とを有しているので、ロープ34aを巻取り方向に引っ張って、常にテンションをかけた状態にすることが可能となり、弛み30aの位置が上下方向に変化しても注入ホース30の緊張状態を維持することができる。さらに、連結具33が弛み30aの最下部Lを挟持する上下一対の回転ローラ33aを有しているので、注入ホース30と連結具33との相対的な移動が円滑に達成され、これにより、注入ホース30に付与する引張力をより安定させることができる。
【0025】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、引張力付与手段は、注入ホースに対して下向きに作用する引張力を生じさせればよく、真下方向以外の角度から引っ張ることによって達成してもよい。また、リール装置は、スプリングによって巻取り方向へ付勢することで安価に構成できるが、例えば、クラッチ機構と電動モータとを組み合わせてロープの巻取り力を制御してもよい。さらに、連結具は、回転ローラの径を大きくすれば、注入ホースに付与する引張力を高めながらホースの折り曲げを防止できる効果が期待でき、別途に左右の回転ローラを追加すれば4面ローラからなる係合構造として、注入ホースと連結具とのより円滑な相対移動が実現される。加えて、リール本体をジャッキ以外の構造物に取り付けてもよく、地盤改良機の仕様に応じた様々な設置態様が考えられる。
【符号の説明】
【0026】
11…地盤改良機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…リーダ起伏シリンダ、17…リーダサポート、18…配管案内アーム、19…運転室、20…動力部、21…ジャッキ、22…カウンタウエイト、23…トップシーブ、24…振止装置、25…ラックギヤ、26…ガイドパイプ、27…オーガ、27a…チャック機構、27b…ガイドギブ、27c…オーガ昇降モータ、28…スクリューシャフト、28a…角軸部、29…スイベルジョイント、30…注入ホース、30a…弛み、31…回り止め装置、31a…伸縮ロッド、31b…連結部材、31c…ホース保持部材、32…ホース支持部材、33…連結具、33a…回転ローラ、33b…ブラケット、33c…ロープ止着部、34…リール装置、34a…ロープ、34b…リール本体
図1
図2
図3
図4