(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】半導体装置及び降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 W
(21)【出願番号】P 2020109334
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳田 修
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06515460(US,B1)
【文献】特開2017-085856(JP,A)
【文献】特開2013-062944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0021189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を降圧して複数のスイッチ電圧に基づいて出力電圧を生成する降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータに用いられる半導体装置であって、
前記入力電圧をスイッチングすることで複数のスイッチ端子に前記複数のスイッチ電圧を発生させる複数の出力段回路と、
前記出力電圧に応じたフィードバック電圧に比例する電圧と所定の基準電圧との差分に応じた誤差電圧を生成する誤差電圧生成部と、
前記フィードバック電圧を基準に、前記複数のスイッチ電圧と連動して変動する複数のフィードバック脈流電圧を生成するフィードバック脈流電圧生成部と、
前記誤差電圧と前記複数のフィードバック脈流電圧とに基づき複数のオンタイミングから成るオンタイミング列を生成するオンタイミング列生成部と、
前記オンタイミング列に基づき前記複数の出力段回路を順次スイッチング駆動することにより前記複数の出力段回路のスイッチング駆動に位相差を与えるスイッチング制御部と、を備える
半導体装置。
【請求項2】
各出力段回路において前記入力電圧の印加端と対応するスイッチ端子との間に出力トランジスタが設けられることで前記複数の出力段回路に複数の出力トランジスタが設けられ、
前記スイッチング制御部は、各出力トランジスタのオン時間を設定するオン時間設定部を有し、その設定内容と前記オンタイミング列に基づき前記複数の出力段回路をスイッチング駆動する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記オンタイミング列生成部は、前記誤差電圧と前記複数のフィードバック脈流電圧の平均電圧との高低関係が第1関係から第2関係に変化するたびに前記オンタイミングに設定することで前記オンタイミング列を生成し、
前記スイッチング制御部は、前記オンタイミング列に含まれ且つ連続する複数のオンタイミングにおいて前記複数の出力トランジスタを1つずつ順次ターンオンさせる動作を、繰り返し実行する
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記オン時間設定部は、各出力トランジスタのオン時間の設定内容と前記オンタイミング列とに基づき前記複数の出力トランジスタのオン区間及びオフ区間を指定する複数の駆動制御信号を生成し、
前記スイッチング制御部は、前記複数の駆動制御信号に従って前記複数の出力トランジスタのオン/オフするスイッチング駆動部を有し、
前記オン時間設定部は、PLL回路を用いて、前記複数の出力トランジスタのスイッチング周波数に相当する前記複数の駆動制御信号の周波数が所定の基準周波数に一致又は近づくよう各出力トランジスタのオン時間を設定する
請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記スイッチング制御部は、前記複数のスイッチ端子を通じて流れる複数の対象電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部の検出結果に基づき前記複数の対象電流の大小関係に応じた電流バランス信号を生成する電流バランス信号生成部と、を有し、
前記オン時間設定部は、前記電流バランス信号に基づいて各出力トランジスタのオン時間を調整することで前記複数の対象電流間の差を低減する
請求項2~4の何れかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数の対象電流は第1及び第2対象電流を含み、前記複数の出力トランジスタは前記第1対象電流が流れるスイッチ端子に接続された第1出力トランジスタ及び前記第2対象電流が流れるスイッチ端子に接続された第2出力トランジスタを含み、
前記オン時間設定部は、
前記第1対象電流が前記第2対象電流よりも大きいとき、前記電流バランス信号に基づいて前記第1出力トランジスタのオン時間を減少補正する一方で前記第2出力トランジスタのオン時間を増大補正し、
前記第1対象電流が前記第2対象電流よりも小さいとき、前記電流バランス信号に基づいて前記第1出力トランジスタのオン時間を増大補正する一方で前記第2出力トランジスタのオン時間を減少補正する
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の半導体装置と、
前記出力電圧が加わる出力端子と前記複数のスイッチ端子との間に設けられた複数のコイルと、
前記出力端子とグランドとの間に設けられた出力コンデンサと、を備えた降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータであって、
前記複数のスイッチ電圧を前記複数のコイル及び前記出力コンデンサにより整流及び平滑化することで前記出力端子に前記出力電圧を生成する
降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置及び降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
降圧型DC/DCコンバータの一種である降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータでは、入力電圧をスイッチングする出力段回路を複数設け、複数の出力段回路のスイッチングに位相差を設けて、それらのスイッチング駆動することにより1つの安定化された出力電圧を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータの詳細構成として様々な回路構成が提案されているが、電源の特性(例えば負荷応答性能又は電源効率)に関して改善の余地がある。
【0005】
本開示は、特性の向上に寄与する半導体装置及び降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、入力電圧を降圧して複数のスイッチ電圧に基づいて出力電圧を生成する降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータに用いられる半導体装置であって、前記入力電圧をスイッチングすることで複数のスイッチ端子に前記複数のスイッチ電圧を発生させる複数の出力段回路と、前記出力電圧に応じたフィードバック電圧に比例する電圧と所定の基準電圧との差分に応じた誤差電圧を生成する誤差電圧生成部と、前記フィードバック電圧を基準に、前記複数のスイッチ電圧と連動して変動する複数のフィードバック脈流電圧を生成するフィードバック脈流電圧生成部と、前記誤差電圧と前記複数のフィードバック脈流電圧とに基づき複数のオンタイミングから成るオンタイミング列を生成するオンタイミング列生成部と、前記オンタイミング列に基づき前記複数の出力段回路を順次スイッチング駆動することにより前記複数の出力段回路のスイッチング駆動に位相差を与えるスイッチング制御部と、を備える構成(第1の構成)である。
【0007】
上記第1の構成に係る半導体装置において、各出力段回路において前記入力電圧の印加端と対応するスイッチ端子との間に出力トランジスタが設けられることで前記複数の出力段回路に複数の出力トランジスタが設けられ、前記スイッチング制御部は、各出力トランジスタのオン時間を設定するオン時間設定部を有し、その設定内容と前記オンタイミング列に基づき前記複数の出力段回路をスイッチング駆動する構成(第2の構成)であっても良い。
【0008】
上記第2の構成に係る半導体装置において、前記オンタイミング列生成部は、前記誤差電圧と前記複数のフィードバック脈流電圧の平均電圧との高低関係が第1関係から第2関係に変化するたびに前記オンタイミングに設定することで前記オンタイミング列を生成し、前記スイッチング制御部は、前記オンタイミング列に含まれ且つ連続する複数のオンタイミングにおいて前記複数の出力トランジスタを1つずつ順次ターンオンさせる動作を、繰り返し実行する構成(第3の構成)であっても良い。
【0009】
上記第2又は第3の構成に係る半導体装置において、前記オン時間設定部は、各出力トランジスタのオン時間の設定内容と前記オンタイミング列とに基づき前記複数の出力トランジスタのオン区間及びオフ区間を指定する複数の駆動制御信号を生成し、前記スイッチング制御部は、前記複数の駆動制御信号に従って前記複数の出力トランジスタのオン/オフするスイッチング駆動部を有し、前記オン時間設定部は、PLL回路を用いて、前記複数の出力トランジスタのスイッチング周波数に相当する前記複数の駆動制御信号の周波数が所定の基準周波数に一致又は近づくよう各出力トランジスタのオン時間を設定する構成(第4の構成)であっても良い。
【0010】
上記第2~第4の構成の何れかに係る半導体装置において、前記スイッチング制御部は、前記複数のスイッチ端子を通じて流れる複数の対象電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部の検出結果に基づき前記複数の対象電流の大小関係に応じた電流バランス信号を生成する電流バランス信号生成部と、を有し、前記オン時間設定部は、前記電流バランス信号に基づいて各出力トランジスタのオン時間を調整することで前記複数の対象電流間の差を低減する構成(第5の構成)であっても良い。
【0011】
上記第5の構成に係る半導体装置に関し、前記複数の対象電流は第1及び第2対象電流を含み、前記複数の出力トランジスタは前記第1対象電流が流れるスイッチ端子に接続された第1出力トランジスタ及び前記第2対象電流が流れるスイッチ端子に接続された第2出力トランジスタを含み、前記オン時間設定部は、前記第1対象電流が前記第2対象電流よりも大きいとき、前記電流バランス信号に基づいて前記第1出力トランジスタのオン時間を減少補正する一方で前記第2出力トランジスタのオン時間を増大補正し、前記第1対象電流が前記第2対象電流よりも小さいとき、前記電流バランス信号に基づいて前記第1出力トランジスタのオン時間を増大補正する一方で前記第2出力トランジスタのオン時間を減少補正する構成(第6の構成)であっても良い。
【0012】
本開示に係る他の半導体装置は、入力電圧を降圧して前記複数のスイッチ電圧に基づいて出力電圧を生成する降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータに用いられる半導体装置であって、前記入力電圧をスイッチングすることで複数のスイッチ端子に前記複数のスイッチ電圧を発生させる複数の出力段回路と、前記複数の出力段回路のスイッチング駆動に位相差を設けた状態で前記複数の出力段回路をスイッチング駆動するスイッチング制御部と、を備え、各出力段回路において前記入力電圧の印加端と対応するスイッチ端子との間に出力トランジスタが設けられることで前記複数の出力段回路に複数の出力トランジスタが設けられ、前記スイッチング制御部は、各出力トランジスタのオン時間を設定するオン時間設定部と、前記複数のスイッチ端子を通じて流れる複数の対象電流を検出する電流検出部と、前記複数の対象電流の大小関係に応じた電流バランス信号を生成する電流バランス信号生成部と、を有し、前記オン時間設定部は、前記電流バランス信号に基づいて各出力トランジスタのオン時間を調整することで前記複数の対象電流間の差を低減する構成(第7の構成)である。
【0013】
上記第7の構成に係る半導体装置に関し、前記複数の対象電流は第1及び第2対象電流を含み、前記複数の出力トランジスタは前記第1対象電流が流れるスイッチ端子に接続された第1出力トランジスタ及び前記第2対象電流が流れるスイッチ端子に接続された第2出力トランジスタを含み、前記オン時間設定部は、前記第1対象電流が前記第2対象電流よりも大きいとき、前記電流バランス信号に基づいて前記第1出力トランジスタのオン時間を減少補正する一方で前記第2出力トランジスタのオン時間を増大補正し、前記第1対象電流が前記第2対象電流よりも小さいとき、前記電流バランス信号に基づいて前記第1出力トランジスタのオン時間を増大補正する一方で前記第2出力トランジスタのオン時間を減少補正する構成(第8の構成)であっても良い。
【0014】
本開示に係る降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータは、上記第1~第8の構成の何れかに係る半導体装置と、前記出力電圧が加わる出力端子と前記複数のスイッチ端子との間に設けられた複数のコイルと、前記出力端子とグランドとの間に設けられた出力コンデンサと、を備えた降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータであって、前記複数のスイッチ電圧を前記複数のコイル及び前記出力コンデンサにより整流及び平滑化することで前記出力端子に前記出力電圧を生成する構成(第9の構成)である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、特性の向上に寄与する半導体装置及び降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るDC/DCコンバータの全体構成図である。
【
図2】
図1のDC/DCコンバータに関わる幾つかの電流、電圧及び信号の波形図である。
【
図4】
図1のPLL回路の機能を説明するための図である。
【
図5】
図1のPLL回路の機能を説明するための図である。
【
図6】本開示の第1実施形態に係り、電流バランスがとれていない状態における幾つかの電流、電圧及び信号の波形図である。
【
図7】
図1の電流バランス信号生成部の機能を説明するための図である。
【
図8】本開示の第2実施形態に係るDC/DCコンバータの全体構成図である。
【
図9】本開示の第3実施形態に係る半導体装置の外観斜視図である。
【
図10】本開示の第5実施形態に係る降圧型3フェーズDC/DCコンバータの概略一部構成図である。
【
図11】
図10の降圧型3フェーズDC/DCコンバータにおける幾つかの信号の波形図である。
【
図12】本開示の一側面に係る半導体装置のブロック図である。
【
図13】参考構成に係り、マルチフェーズ駆動方式を採用した降圧型DC/DCコンバータの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“210”によって参照される電流バランス信号生成部は(
図1参照)、電流バランス信号生成部210と表記されることもあるし、生成部210と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0018】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体にて形成される。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。
【0019】
レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。任意の注目した信号について、当該信号がハイレベルであるとき、当該信号の反転信号はローレベルをとり、当該信号がローレベルであるとき、当該信号の反転信号はハイレベルをとる。
【0020】
任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをアップエッジタイミングと称する。同様に、任意の注目した信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをダウンエッジタイミングと称する。
【0021】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。
【0022】
以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意のトランジスタについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。ターンオンが発生するタイミングをターンオンタイミングと称し、ターンオフが発生するタイミングをターンオフタイミングと称する。任意のトランジスタについて、トランジスタがオン状態となっている区間をオン区間と称することがあり、トランジスタがオフ状態となっている区間をオフ区間と称することがある。
【0023】
ハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる任意の信号について、当該信号のレベルがハイレベルとなる区間をハイレベル区間と称し、当該信号のレベルがローレベルとなる区間をローレベル区間と称する。ハイレベル又はローレベルの電圧レベルをとる任意の電圧についても同様である。
【0024】
<<導入説明>>
降圧型DC/DCコンバータでは、出力トランジスタ及び同期整流トランジスタの直列回路から成る出力段回路で入力電圧をスイッチングし、スイッチングで得た矩形状の電圧をコイル及びコンデンサで整流及び平滑化することで出力電圧を得る。この種の降圧型DC/DCコンバータでは高い負荷応答性能と小型化が要求されることも多く、用途によっては要求の度合いが非常に大きい。
【0025】
高い負荷応答性能に適した制御方式としてコンスタントオンタイム制御方式が知られている。コンスタントオンタイム制御方式は、出力トランジスタをスイッチング駆動する際、出力トランジスタのオン時間が一定とされ、出力トランジスタのオフ時間を調整することで出力電圧を安定化させる。
【0026】
一方で、コイルに大きな電流を流す必要がある用途において、コイルが1つであるとき、定格及び発熱等の関係から、コイルのサイズを大きくする必要がある。コイルのサイズが大きくなると、それに伴って、降圧型DC/DCコンバータのサイズ及び降圧型DC/DCコンバータを組み込んだ装置のサイズも大きくなる(つまり小型化が難しくなる)。小型化に寄与する駆動方式としてマルチフェーズ駆動方式がある。
【0027】
マルチフェーズ駆動方式を採用した降圧型DC/DCコンバータでは、
図13に示すように、出力トランジスタ911を含む出力段回路910が複数チャネル分用意され、複数の出力段回路910が位相をずらした状態でスイッチング駆動される。
図13の構成では、出力段回路910が2相分設けられているため、180°の位相差を設けて2つの出力段回路910がスイッチング駆動され、第1及び第2のコイル920間の接続ノードに出力電圧Voが生じる。出力電流(負荷電流)が2つのコイル920に分担されて流れるため、コイル1つあたりに流れる電流の大きさが低減される。故にコイルのサイズを小さくすることができる。また、出力リプルの低減にも効果的である。
【0028】
但し、
図13の構成では、いわゆる電流モード制御方式が採用されており、コンスタントオンタイム制御方式との比較において負荷応答性能が低い。故に、従来、高い負荷応答性能が要求される用途では、コンスタントオンタイム制御方式を採用した降圧型DC/DCコンバータが選ばれるのが一般であった。尚、
図13の構成のように、固定クロックで出力トランジスタ(
図13ではトランジスタ911)をスイッチングする制御は線型制御と称されることがあり、コンスタントオンタイム制御方式で出力トランジスタをスイッチングする制御は非線型制御と称されることがある。
【0029】
仮に、コンスタントオンタイム制御方式又はそれに類する方式とマルチフェーズ駆動方式とを組み合わせることができたならば、高い負荷応答性能と小型化を同時に実現することができ、極めて有益である。
【0030】
但し、コンスタントオンタイム制御方式を用いるDC/DCコンバータを複数設けて、それらを単純に並列駆動する単純並列構成では、良好な特性は得られない。単純並列構成では、各DC/DCコンバータが自身の出力トランジスタを出力電圧に応じ独立してオン/オフすることになるため、複数の出力トランジスタが同時にオンとなるといった挙動が想定される(つまりマルチフェーズ駆動が実現されない)。マルチフェーズ駆動の実現には、出力段回路のスイッチング駆動に適切な位相差を確保する技術(以下、便宜上、位相差確保技術と称する)が必要である。
【0031】
また、マルチフェーズ駆動を行う際において、複数のコイルに流れる電流の大きさがばらつけば(例えば
図13の構成であれば、2つのコイル920に流れる電流の内、一方が大きく他方が小さいような状況では)、DC/DCコンバータの効率が低下する。このため、複数のコイルに流れる電流の大きさが均一とする技術(以下、電流バランス技術と称する)も望まれる。
【0032】
<<第1実施形態>>
本開示の第1実施形態を説明する。
図1に本開示の第1実施形態に係るDC/DCコンバータ10の全体構成を示す。DC/DCコンバータ10は、上述の位相差確保技術及び電流バランス技術の双方を実現する降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータであり、入力電圧V
INを降圧することで出力電圧V
OUTを生成する。
【0033】
入力電圧VINは正の直流電圧であり、例えば、4.0V~18.0Vの範囲内の電圧値を有する。出力電圧VOUTは入力電圧VINより低く、DC/DCコンバータ10の過渡状態を除けば、安定化された正の直流電圧値を有する。出力電圧VOUTの目標値(後述の目標電圧VTGの値)は、例えば、0.6V~3.4Vの範囲内の電圧値を有する。
【0034】
DC/DCコンバータ10は、誤差電圧生成部110と、脈波生成部120A及び120Bと、PWMコンパレータ130と、位相制御ロジック140と、TON設定部150A及び150Bと、PLL回路160と、出力段駆動部170A及び170Bと、出力段回路180A及び180Bと、電流センサ190A及び190Bと、保護回路200A及び200Bと、電流バランス信号生成部210と、コイルL1及びL2と、出力コンデンサCOUTと、を備える。また、DC/DCコンバータ10は、入力端子251A及び251Bと、スイッチ端子252A及び252Bと、グランド端子253A及び253Bと、出力端子254とを備えると共に、後述の各ノードを備える。尚、単一の入力端子が入力端子251A及び251Bとして兼用されて良く、単一のグランド端子がグランド端子253A及び253Bとして兼用されても良い。
【0035】
DC/DCコンバータ10は、2相分の出力段回路180A及び180Bを備え、180°の位相差(又は180°に近い位相差)をつけて出力段回路180A及び180Bをスイッチング駆動することによりマルチフェーズ駆動を実現する。2相分のマルチフェーズ駆動における一方の相を第1相と称し、他方の相を第2相と称する。ブロック150A、170A、180A、190A及び200Aは、第1相におけるTON設定部、出力段駆動部、出力段回路、電流センサ及び保護回路であり、ブロック150B、170B、180B、190B及び200Bは、第2相におけるTON設定部、出力段駆動部、出力段回路、電流センサ及び保護回路である。
【0036】
DC/DCコンバータ10の特徴的な動作を簡単に説明する。DC/DCコンバータ10では、180°の位相差(又は180°に近い位相差)を確保するべく、PWMコンパレータ130によりオンタイミング列を示す信号COMPを生成し、オンタイミング列における複数のオンタイミングを信号COMP1及びCOMP2に対して交互に割り当てることで、第1相の出力トランジスタ(181A)のオンタイミングを示す信号COMP1と第2相の出力トランジスタ(181B)のオンタイミングを示す信号COMP2を生成する(
図2参照)。
【0037】
その上で、出力段回路180A及び180Bの各スイッチング周波数が所定の基準周波数fCLKと一致又は近似するようにPLL回路160を用いて出力トランジスタ181A、181Bのオン時間を設定(調整)する。DC/DCコンバータ10の安定状態においてPLL回路160はロック状態にあり、出力段回路180A及び180Bのスイッチング周波数(駆動制御信号DRV1及びDRV2の周波数)は実質的に基準周波数fCLKで固定されると共に、その時の負荷電流(出力電流IOUTに相当)に適した時間に各相の出力トランジスタ(181A、181B)のオン時間が実質的に固定される。つまり、コンスタントオンタイム制御方式に類するオン時間の制御が実現される。更に、この際、電流バランス信号生成部210の機能により第1相のコイル電流(IL1)と第2相のコイル電流(IL2)を均一に調整する。
【0038】
DC/DCコンバータ10の各部の構成及び動作を詳細に説明する。
図2は、DC/DCコンバータ10に関わる幾つかの電流、電圧及び信号の波形図であり、以下の説明において適宜参照される。
【0039】
まず出力段回路180A及び180B及びその周辺回路を説明する。出力段回路180Aはトランジスタ181A及び182Aから成るハーフブリッジ回路である。トランジスタ181A及び182AはNチャネル型のMOSFETとして構成される。トランジスタ181Aのドレインは入力端子251Aに接続され、トランジスタ182Aのソースはグランド端子253Aに接続される。トランジスタ181Aのソース及びトランジスタ182Aのドレインはスイッチ端子252Aに共通接続される。スイッチ端子252AはコイルL1の一端に接続され、コイルL1の他端は出力端子254に接続される。出力段回路180Bはトランジスタ181B及び182Bから成るハーフブリッジ回路である。トランジスタ181B及び182BはNチャネル型のMOSFETとして構成される。トランジスタ181Bのドレインは入力端子251Bに接続され、トランジスタ182Bのソースはグランド端子253Bに接続される。トランジスタ181Bのソース及びトランジスタ182Bのドレインはスイッチ端子252Bに共通接続される。スイッチ端子252BはコイルL2の一端に接続され、コイルL2の他端は出力端子254に接続される。入力端子251A及び251Bは入力電圧VINの印可端(入力電圧VINが加わる端子)に接続され、入力電圧VINを受ける。グランド端子253A及び253Bはグランドに接続される。出力端子254とグランドとの間に出力コンデンサCOUTが設けられ、出力端子254に出力電圧VOUTが加わる。
【0040】
出力コンデンサCOUTに並列に負荷LDが接続され、負荷LDは出力電圧VOUTに基づいて駆動する。出力端子254から負荷LDに供給される電流を出力電流又は負荷電流と称し、記号“IOUT”にて表す。
【0041】
第1相において、トランジスタ181Aは出力トランジスタとして機能し、トランジスタ182Aは同期整流トランジスタとして機能する。故に、トランジスタ181A、182Aを、夫々、出力トランジスタ181A、同期整流トランジスタ182Aと称することがある。また、スイッチ端子252Aに加わる電圧をスイッチ電圧VLX1と称する。尚、ここではトランジスタ181A及び182Aのオン抵抗は十分に小さいと考える。
【0042】
出力段回路180Aの状態は出力ハイ状態、出力ロー状態及びHi-Z状態の何れかとなる。出力段回路180Aの出力ハイ状態において、トランジスタ181Aはオン状態且つトランジスタ182Aはオフ状態であり、実質的に入力電圧VINと同じ電圧がスイッチ電圧VLX1として表れる。出力段回路180Aの出力ロー状態において、トランジスタ181Aはオフ状態且つトランジスタ182Aはオン状態であり、実質的にグランドの電圧(即ち0Vの電圧)がスイッチ電圧VLX1として表れる。出力段回路180AのHi-Z状態ではトランジスタ181A及び182Aが共にオフ状態とされる。
【0043】
出力段回路180Aにおいてトランジスタ181A及び182Aが交互にオン及びオフされることで、入力電圧V
INがスイッチングされ、スイッチ電圧V
LX1は矩形波状の電圧となる(
図2参照)。出力段回路180Aのスイッチング周波数(換言すれば出力トランジスタ181Aのスイッチング周波数)を記号“f
SW1”にて表す。スイッチング周波数f
SW1は、スイッチ電圧V
LX1の周波数及び後述の駆動制御信号DRV1の周波数に等しい。出力段回路180Aが出力ハイ状態であるときに、入力電圧V
INの印可端から出力トランジスタ181Aを通じ出力端子254に向けて入力電圧V
INに基づく電力が供給される。このため、出力段回路180Aのスイッチングの各周期において出力段回路180Aが出力ハイ状態とされる時間(即ち出力トランジスタ181Aがオン状態とされる時間)は、第1相のオン時間又は単にオン時間と称され、記号“T
ON1”にて表される。
【0044】
第2相において、トランジスタ181Bは出力トランジスタとして機能し、トランジスタ182Bは同期整流トランジスタとして機能する。故に、トランジスタ181B、182Bを、夫々、出力トランジスタ181B、同期整流トランジスタ182Bと称することがある。また、スイッチ端子252Bに加わる電圧をスイッチ電圧VLX2と称する。尚、ここではトランジスタ181B及び182Bのオン抵抗は十分に小さいと考える。
【0045】
出力段回路180Bの状態は出力ハイ状態、出力ロー状態及びHi-Z状態の何れかとなる。出力段回路180Bの出力ハイ状態において、トランジスタ181Bはオン状態且つトランジスタ182Bはオフ状態であり、実質的に入力電圧VINと同じ電圧がスイッチ電圧VLX2として表れる。出力段回路180Bの出力ロー状態において、トランジスタ181Bはオフ状態且つトランジスタ182Bはオン状態であり、実質的にグランドの電圧(即ち0Vの電圧)がスイッチ電圧VLX2として表れる。出力段回路180BのHi-Z状態ではトランジスタ181B及び182Bが共にオフ状態とされる。
【0046】
出力段回路180Bにおいてトランジスタ181B及び182Bが交互にオン及びオフされることで、入力電圧V
INがスイッチングされ、スイッチ電圧V
LX2は矩形波状の電圧となる(
図2参照)。出力段回路180Bのスイッチング周波数(換言すれば出力トランジスタ181Bのスイッチング周波数)を記号“f
SW2”にて表す。スイッチング周波数f
SW2は、スイッチ電圧V
LX2の周波数及び後述の駆動制御信号DRV2の周波数に等しい。出力段回路180Bが出力ハイ状態であるときに、入力電圧V
INの印可端から出力トランジスタ181Bを通じ出力端子254に向けて入力電圧V
INに基づく電力が供給される。このため、出力段回路180Bのスイッチングの各周期において出力段回路180Bが出力ハイ状態とされる時間(即ち出力トランジスタ181Bがオン状態とされる時間)は、第2相のオン時間又は単にオン時間と称され、記号“T
ON2”にて表される。
【0047】
コイルL1、コイルL2及び出力コンデンサCOUTにより整流平滑回路が構成される。スイッチ端子252A及び252Bに現れる矩形波状のスイッチ電圧VLX1及びVLX2が整流平滑回路により整流及び平滑化されることで出力電圧VOUTが生成される。尚、コイルL1に流れる電流、コイルL2に流れる電流を、夫々、コイル電流IL1、コイル電流IL2と称する。スイッチ端子252Aから出力端子254へと向かうコイル電流IL1の極性が正であるとし、スイッチ端子252Bから出力端子254へと向かうコイル電流IL2の極性が正であるとする。
【0048】
出力段回路180A及び180Bの前段回路を含む他の回路の構成及び動作を説明する。誤差電圧生成部110は、エラーアンプ111と、分圧抵抗である抵抗112及び113と、帰還抵抗である抵抗114と、ノード115を備える。ノード115は帰還入力端子に相当し、ノード115にはフィードバック電圧VFBが加わる。フィードバック電圧VFBは出力電圧VOUTに比例する電圧である。ここでは、出力電圧VOUTそのものがフィードバック電圧VFBであるとするが、出力電圧VOUTの分圧等がフィードバック電圧VFBであっても構わない。ノード115は抵抗112の一端に接続され、抵抗112の他端はエラーアンプ111の反転入力端子に接続されると共に抵抗113を介してグランドに接続される。エラーアンプ111の非反転入力端子には所定の基準電圧VREFが印可される。基準電圧VREFは所定の正の直流電圧値を有する。エラーアンプ111の出力端子は抵抗114を介してエラーアンプ111の反転入力端子に接続される。このため、エラーアンプ111及び抵抗112~114により反転増幅器が構成される。フィードバック電圧VFBに比例する電圧(エラーアンプ111の反転入力端子に加わる電圧)と基準電圧VREFとの差分に応じた誤差電圧VERRがエラーアンプ111の出力端子から出力される。
【0049】
脈波生成部120Aは、抵抗121A及び122A、コンデンサ123A、並びに、ノード124A及び125Aを備えると共に、リプル注入部126Aを備える。ノード124Aはノード115に接続され、故にノード124Aにもフィードバック電圧VFBが加わる。抵抗121A及びコンデンサ123Aの各一端はノード124Aに共通接続され、抵抗121A及びコンデンサ123Aの各他端はノード125Aに共通接続される。ノード125Aは抵抗122Aを介してグランドに接続される。
【0050】
抵抗121A及び122Aの機能によりノード125Aにフィードバック電圧V
FBの分圧が生成される。リプル注入部126Aは、ノード124A及びノード125Aに接続され、抵抗121A及び122Aの機能によりノード125Aに生じた電圧(フィードバック電圧V
FBの分圧)に対しリプルを注入することでノード125Aに脈流電圧を発生させる。ノード125Aに生じる脈流電圧をフィードバック脈流電圧V
FBIN1と称する。フィードバック脈流電圧V
FBIN1はスイッチ電圧V
LX1と連動して変動する電圧である。つまり、フィードバック脈流電圧V
FBIN1は、スイッチ電圧V
LX1のハイレベル区間(即ち出力トランジスタ181Aのオン区間)において単調増加し、スイッチ電圧V
LX1のローレベル区間(即ち出力トランジスタ181Aのオフ区間)において単調減少する。従って、フィードバック脈流電圧V
FBIN1はコイル電流I
L1の波形に類似した波形を持つ(
図2参照)。リプル注入部126Aによるリプルを後述の駆動制御信号DRV1やスイッチ電圧V
LX1に基づいて生成することができる。
【0051】
脈波生成部120Bは、抵抗121B及び122B、コンデンサ123B、並びに、ノード124B及び125Bを備えると共に、リプル注入部126Bを備える。ノード124Bはノード115に接続され、故にノード124Bにもフィードバック電圧VFBが加わる。抵抗121B及びコンデンサ123Bの各一端はノード124Bに共通接続され、抵抗121B及びコンデンサ123Bの各他端はノード125Bに共通接続される。ノード125Bは抵抗122Bを介してグランドに接続される。
【0052】
抵抗121B及び122Bの機能によりノード125Bにフィードバック電圧V
FBの分圧が生成される。リプル注入部126Bは、ノード124B及びノード125Bに接続され、抵抗121B及び122Bの機能によりノード125Bに生じた電圧(フィードバック電圧V
FBの分圧)に対しリプルを注入することでノード125Bに脈流電圧を発生させる。ノード125Bに生じる脈流電圧をフィードバック脈流電圧V
FBIN2と称する。フィードバック脈流電圧V
FBIN2はスイッチ電圧V
LX2と連動して変動する電圧である。つまり、フィードバック脈流電圧V
FBIN2は、スイッチ電圧V
LX2のハイレベル区間(即ち出力トランジスタ181Bのオン区間)において単調増加し、スイッチ電圧V
LX2のローレベル区間(即ち出力トランジスタ181Bのオフ区間)において単調減少する。従って、フィードバック脈流電圧V
FBIN2はコイル電流I
L2の波形に類似した波形を持つ(
図2参照)。リプル注入部126Bによるリプルを後述の駆動制御信号DRV2やスイッチ電圧V
LX2に基づいて生成することができる。
【0053】
尚、脈波生成部120Aでの抵抗121A及び122Aによるフィードバック電圧VFBの分圧比(即ち抵抗121A及び122Aの抵抗値の比)と、脈波生成部120Bでの抵抗121B及び122Bによるフィードバック電圧VFBの分圧比(即ち抵抗121B及び122Bの抵抗値の比)とは、互いに一致している。このため、フィードバック脈流電圧VFBIN1の直流成分の値と、フィードバック脈流電圧VFBIN2の直流成分の値は同じとなる。
【0054】
PWMコンパレータ130は、第1及び第2非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子を有する。PWMコンパレータ130において、第1、第2非反転入力端子に夫々フィードバック脈流電圧VFBIN1、VFBIN2が入力され、反転入力端子に誤差電圧VERRが入力される。PWMコンパレータ130は、第1及び第2差動アンプを内蔵し、フィードバック脈流電圧VFBIN1及び誤差電圧VERR間の差分(VFBIN1-VERR)に応じた第1差分信号を第1差動アンプで生成すると共に、フィードバック脈流電圧VFBIN2及び誤差電圧VERR間の差分(VFBIN2-VERR)に応じた第2差分信号を第2差動アンプにて生成する。そして、PWMコンパレータ130は、上記の2つの差分の和(VFBIN1+VFBIN2-2・VERR)に基づき、フィードバック脈流電圧VFBIN1及びVFBIN2の平均電圧と誤差電圧VERRを比較して比較結果を信号COMPとして出力する。
【0055】
フィードバック脈流電圧V
FBIN1及びV
FBIN2の平均電圧を記号“V
FBIN_AVE”にて表す。平均電圧V
FBIN_AVEは、“V
FBIN_AVE=(V
FBIN1+V
FBIN2)/2”にて表される。PWMコンパレータ130は、
図2に示す如く、“V
FBIN_AVE>V
ERR”が成立する区間において信号COMPをローレベルに維持し、“V
FBIN_AVE>V
ERR”から“V
FBIN_AVE<V
ERR”へと切り替わると、その切り替わりのたびに、切り替わりタイミングを起点に所定の微小時間だけ信号COMPをハイレベルとしてからローレベルに戻す(即ち1ショットパルスを発生させる)。尚、
図2には、コイル電流I
L1及びI
L2の平均電流I
L_AVEの波形も示されており、フィードバック脈流電圧V
FBIN1及びV
FBIN2とコイル電流I
L1及びI
L2との対応関係から平均電圧V
FBIN_AVEは平均電流I
L_AVEに類似した波形を持つことになる。
【0056】
信号COMPの各アップエッジタイミングは、出力トランジスタ181A及び181Bの何れか一方のオンタイミングを表している。つまり、信号COMPの各アップエッジタイミングは、出力トランジスタ181Aがターンオンすべきタイミング(即ち出力段回路180Aの状態が出力ハイ状態に切り替えられるべきタイミング)、又は、出力トランジスタ181Bがターンオンすべきタイミング(即ち出力段回路180Bの状態が出力ハイ状態に切り替えられるべきタイミング)を表している。信号COMPのアップエッジは“VFBIN_AVE>VERR”から“VFBIN_AVE<VERR”へと切り替わるごとに発生するため、信号COMPによりオンタイミング列が規定される。オンタイミング列は時系列上に並ぶ複数のオンタイミングから成る。
【0057】
位相制御ロジック140は信号COMPから信号COMP1及びCOMP2を生成して出力する。より具体的には、位相制御ロジック140は、信号COMPに含まれる複数のオンタイミングを示す複数のパルスを交互に信号COMP1及びCOMP2に分配することで信号COMP1及びCOMP2を生成する。より明確に説明すれば以下のような動作が実行される。即ち、位相制御ロジック140は信号COMP1及びCOMP2のレベルを原則としてローレベルに保ち、信号COMPに奇数回目のアップエッジが生じたときには、信号COMPのアップエッジに同期して信号COMP1にもアップエッジを生じさせ、所定の微小時間だけ信号COMP1をハイレベルとしてからローレベルに戻す。信号COMPに偶数回目のアップエッジが生じたときには、信号COMPのアップエッジに同期して信号COMP2にもアップエッジを生じさせ、所定の微小時間だけ信号COMP2をハイレベルとしてからローレベルに戻す。
【0058】
TON設定部150Aは、信号COMP1に基づき、出力段回路180Aの状態を指定する駆動制御信号DRV1を生成する。TON設定部150Aはオン時間TON1を設定する機能を有し、駆動制御信号DRV1により、出力トランジスタ181Aのターンオンタイミング(換言すれば出力段回路180Aの出力ロー状態から出力ハイ状態への切り替わりタイミング)と、出力トランジスタ181Aのオン時間、即ちオン時間TON1と、が規定される。この際、TON設定部150Aは、PLL回路160から入力される信号SPLL及び電流バランス信号生成部210から入力される電流バランス信号SCB1を参照して、駆動制御信号DRV1を生成する(詳細は後述)。
【0059】
駆動制御信号DRV1はローレベル又はハイレベルの信号レベルをとる二値化信号であり、駆動制御信号DRV1により出力トランジスタ181Aのオン区間及びオフ区間が指定される。ここでは、駆動制御信号DRV1のハイレベル区間が出力トランジスタ181Aのオン区間(出力段回路180Aが出力ハイ状態とされるべき区間)に対応付けられ、駆動制御信号DRV1のローレベル区間が出力トランジスタ181Aのオフ区間(出力段回路180Aが出力ロー状態とされるべき区間)に対応付けられているものとする。信号COMP1のアップエッジタイミングが出力トランジスタ181Aのターンオンタイミングに相当し、出力トランジスタ181Aのターンオンからオン時間TON1の経過後に出力トランジスタ181Aがターンオフされるので、TON設定部150Aは、信号COMP1とオン時間TON1の設定内容とに基づき出力トランジスタ181Aのオン区間及びオフ区間を設定する、とも言える。
【0060】
TON設定部150Bは、信号COMP2に基づき、出力段回路180Bの状態を指定する駆動制御信号DRV2を生成する。TON設定部150Bはオン時間TON2を設定する機能を有し、駆動制御信号DRV2により、出力トランジスタ181Bのターンオンタイミング(換言すれば出力段回路180Bの出力ロー状態から出力ハイ状態への切り替わりタイミング)と、出力トランジスタ181Bのオン時間、即ちオン時間TON2と、が規定される。この際、PLL回路160から入力される信号SPLL及び電流バランス信号生成部210から入力される電流バランス信号SCB2を参照して、駆動制御信号DRV2が生成される(詳細は後述)。
【0061】
駆動制御信号DRV2はローレベル又はハイレベルの信号レベルをとる二値化信号であり、駆動制御信号DRV2により出力トランジスタ181Bのオン区間及びオフ区間が指定される。ここでは、駆動制御信号DRV2のハイレベル区間が出力トランジスタ181Bのオン区間(出力段回路180Bが出力ハイ状態とされるべき区間)に対応付けられ、駆動制御信号DRV2のローレベル区間が出力トランジスタ181Bのオフ区間(出力段回路180Bが出力ロー状態とされるべき区間)に対応付けられているものとする。信号COMP2のアップエッジタイミングが出力トランジスタ181Bのターンオンタイミングに相当し、出力トランジスタ181Bのターンオンからオン時間TON2の経過後に出力トランジスタ181Bがターンオフされるので、TON設定部150Bは、信号COMP2とオン時間TON2の設定内容とに基づき出力トランジスタ181Bのオン区間及びオフ区間を設定する、とも言える。
【0062】
PLL回路160は位相同期回路である。PLL回路160には、所定の基準周波数fCLKを有する矩形波信号である基準クロック信号CLKと、TON設定部150Aから出力される駆動制御信号DRV1が入力される。PLL回路160は、基準クロック信号CLK及び駆動制御信号DRV1間の位相差(即ち基準クロック信号CLKの位相と駆動制御信号DRV1の位相との差)に応じた信号SPLLをTON設定部150A及び150Bに出力する。
【0063】
出力段駆動部170Aは駆動制御信号DRV1に基づいて出力段回路180Aのスイッチング駆動を行う。出力段回路180Aのスイッチング駆動は出力段回路180Aの状態を出力ロー状態及び出力ハイ状態間で交互に切り替える動作を含む。即ち、出力段駆動部170Aは、トランジスタ181A及び182Aの各ゲート、スイッチ端子252A並びにグランドに接続され、駆動制御信号DRV1のローレベル区間において出力段回路180Aが出力ロー状態となるように、且つ、駆動制御信号DRV1のハイレベル区間において出力段回路180Aが出力ハイ状態となるように、トランジスタ181A及び182Aの各ゲート電圧(詳細にはゲート-ソース間電圧)を制御する(但し、保護回路200Aによる保護動作が非実行であると仮定)。尚、図示されないブートストラップ回路により、入力電圧VINから出力トランジスタ181Aのスイッチングに必要な電圧が生成される。
【0064】
出力段駆動部170Bは駆動制御信号DRV2に基づいて出力段回路180Bのスイッチング駆動を行う。出力段回路180Bのスイッチング駆動は出力段回路180Bの状態を出力ロー状態及び出力ハイ状態間で交互に切り替える動作を含む。即ち、出力段駆動部170Bは、トランジスタ181B及び182Bの各ゲート、スイッチ端子252B並びにグランドに接続され、駆動制御信号DRV2のローレベル区間において出力段回路180Bが出力ロー状態となるように、且つ、駆動制御信号DRV2のハイレベル区間において出力段回路180Bが出力ハイ状態となるように、トランジスタ181B及び182Bの各ゲート電圧(詳細にはゲート-ソース間電圧)を制御する(但し、保護回路200Bによる保護動作が非実行であると仮定)。尚、図示されないブートストラップ回路により、入力電圧VINから出力トランジスタ181Bのスイッチングに必要な電圧が生成される。
【0065】
電流センサ190Aは第1対象電流を検出する(詳細には第1対象電流の電流値を検出する)。第1対象電流はスイッチ端子252Aを通じて流れる電流である。電流センサ190Aは、出力トランジスタ181Aのソース及びドレイン間に流れる電流又は同期整流トランジスタ182Aのソース及びドレイン間に流れる電流を検出することにより、第1対象電流を検出して良い。トランジスタ181A及び182Aが同時にオンとなるような短絡異常を無視すれば、スイッチ端子252Aを通じて流れる電流はコイルL1を通過するため、第1対象電流はコイル電流IL1でもある。保護回路200Aは、電流センサ190Aの検出結果に基づき、必要に応じ出力段駆動部170Aを制御することで所定の保護動作(過電流保護動作及び負電流保護動作)を行う。
【0066】
電流センサ190Bは第2対象電流を検出する(詳細には第2対象電流の電流値を検出する)。第2対象電流はスイッチ端子252Bを通じて流れる電流である。電流センサ190Bは、出力トランジスタ181Bのソース及びドレイン間に流れる電流又は同期整流トランジスタ182Bのソース及びドレイン間に流れる電流を検出することにより、第2対象電流を検出して良い。トランジスタ181B及び182Bが同時にオンとなるような短絡異常を無視すれば、スイッチ端子252Bを通じて流れる電流はコイルL2を通過するため、第2対象電流はコイル電流IL2でもある。保護回路200Bは、電流センサ190Bの検出結果に基づき、必要に応じ出力段駆動部170Bを制御することで所定の保護動作(過電流保護動作及び負電流保護動作)を行う。
【0067】
電流バランス信号生成部210は、電流センサ190A及び190Bの検出結果を比較することで、オン時間TON1及びTON2を必要に応じて調整(補正)するための電流バランス信号SCB1及びSCB2を生成し、生成した電流バランス信号SCB1及びSCB2を夫々TON設定部150A及び150Bに出力する。
【0068】
図3(a)にリプル注入部126Aの一構成例を含む脈波生成部120Aの回路構成を示し、
図3(b)にリプル注入部126Bの一構成例を含む脈波生成部120Bの回路構成を示す。
【0069】
図3(a)のリプル注入部126Aは、バッファ回路126A_1、抵抗126A_2、コンデンサ126A_3及び126A_4から成る。バッファ回路126A_1の入力端子には駆動制御信号DRV1が入力される。故に、駆動制御信号DRV1のハイレベル区間においてバッファ回路126A_1の出力信号もハイレベルとなり、駆動制御信号DRV1のローレベル区間においてバッファ回路126A_1の出力信号もローレベルとなる。但し、バッファ回路126A_1は、入力電圧V
INに比例する電圧(ここではV
IN/4)を正側の電源電圧として且つグランドを負側の電源電圧として動作するので、バッファ回路126A_1の出力信号において、ハイレベルは実質的にバッファ回路126A_1の正側の電源電圧(ここではV
IN/4)を有し、ローレベルは実質的に0Vの電圧を有する。抵抗126A_2の一端にはバッファ回路126A_1の出力信号が加わり、抵抗126A_2の他端はコンデンサ126A_3を介してノード124Aに接続されると共にコンデンサ126A_4を介してノード125Aに接続される。
【0070】
駆動制御信号DRV1のハイレベル区間、ローレベル区間において、スイッチ電圧V
LX1がハイレベル、ローレベルとなるよう制御されるのであるから、
図3(a)の構成により、フィードバック電圧V
FBを基準にスイッチ電圧V
LX1と連動して変動するフィードバック脈流電圧V
FBIN1が得られる。フィードバック脈流電圧V
FBIN1に関し、フィードバック電圧V
FBを基準に変動するとは、フィードバック電圧V
FBに比例する電圧(ここでは電圧V
FBの分圧)を中心にフィードバック脈流電圧V
FBIN1が変動することを指す。
【0071】
尚、
図3(a)の構成は一例にすぎず、上述と同様の特性のフィードバック脈流電圧V
FBIN1が得られる限り、リプル注入部126A及び脈波生成部120Aの回路構成を様々に変更可能である。
図3(a)の回路からバッファ回路126A_1を削除し、抵抗126A_2の両端の内、コンデンサ126A_3及び126A_4に接続されていない側の一端に対し、スイッチ電圧V
LX1そのもの又はスイッチ電圧V
LX1の分圧を入力するようにしても良い。
【0072】
図3(b)のリプル注入部126Bは、バッファ回路126B_1、抵抗126B_2、コンデンサ126B_3及び126B_4から成る。バッファ回路126B_1の入力端子には駆動制御信号DRV2が入力される。故に、駆動制御信号DRV2のハイレベル区間においてバッファ回路126B_1の出力信号もハイレベルとなり、駆動制御信号DRV2のローレベル区間においてバッファ回路126B_1の出力信号もローレベルとなる。但し、バッファ回路126B_1は、入力電圧V
INに比例する電圧(ここではV
IN/4)を正側の電源電圧として且つグランドを負側の電源電圧として動作するので、バッファ回路126B_1の出力信号において、ハイレベルは実質的にバッファ回路126B_1の正側の電源電圧(ここではV
IN/4)を有し、ローレベルは実質的に0Vの電圧を有する。抵抗126B_2の一端にはバッファ回路126B_1の出力信号が加わり、抵抗126B_2の他端はコンデンサ126B_3を介してノード124Bに接続されると共にコンデンサ126B_4を介してノード125Bに接続される。
【0073】
駆動制御信号DRV2のハイレベル区間、ローレベル区間において、スイッチ電圧V
LX2がハイレベル、ローレベルとなるよう制御されるのであるから、
図3(b)の構成により、フィードバック電圧V
FBを基準にスイッチ電圧V
LX2と連動して変動するフィードバック脈流電圧V
FBIN2が得られる。フィードバック脈流電圧V
FBIN2に関し、フィードバック電圧V
FBを基準に変動するとは、フィードバック電圧V
FBに比例する電圧(ここでは電圧V
FBの分圧)を中心にフィードバック脈流電圧V
FBIN2が変動することを指す。
【0074】
尚、
図3(b)の構成は一例にすぎず、上述と同様の特性のフィードバック脈流電圧V
FBIN2が得られる限り、リプル注入部126B及び脈波生成部120Bの回路構成を様々に変更可能である。
図3(b)の回路からバッファ回路126B_1を削除し、抵抗126B_2の両端の内、コンデンサ126B_3及び126B_4に接続されていない側の一端に対し、スイッチ電圧V
LX2そのもの又はスイッチ電圧V
LX2の分圧を入力するようにしても良い。
【0075】
上述の如く、DC/DCコンバータ10では、誤差電圧生成部110から出力電圧VOUTを生成する部位にまで至る基本帰還ループにより、エラーアンプ111の非反転入力端子及び反転入力端子間の電位差をゼロに維持するための帰還制御が行われ、誤差電圧VERRの調整を通じ、出力電圧VOUTが所定の目標電圧VTGにて安定化される(即ち目標電圧VTGに一致又は近づく)。目標電圧VTGは、抵抗112及び113の抵抗値の比と基準電圧VREFとで定まる。
【0076】
駆動制御信号DRV1及びDRV2の生成動作について説明を加える。まず、説明の便宜上、電流バランス信号SCB1及びSCB2の存在を無視し、信号COMP1及びSPLLに基づいて駆動制御信号DRV1を生成する方法並びに信号COMP2及びSPLLに基づいて駆動制御信号DRV2を生成する方法を説明する。PLL回路160は基準クロック信号CLK及び駆動制御信号DRV1間の位相差(基準クロック信号CLKの位相と駆動制御信号DRV1の位相との差)がゼロとなるよう、信号SPLLを生成する。基準クロック信号CLKは、駆動制御信号DRV1及びDRV2と同様、ローレベル又はハイレベルの信号レベルを持つ矩形波信号である。基準クロック信号CLK及び駆動制御信号DRV1間の位相差がゼロとなる状態とは、基準クロック信号CLKと駆動制御信号DRV1が互いに同じ周波数を持ちつつ、基準クロック信号CLKのアップエッジタイミングと駆動制御信号DRV1のアップエッジタイミングとが一致している状態を指し、当該状態が維持されることをPLLのロックと表現する。過渡状態を除けば、原理上、信号COMP1及びCOMP2は互いに同じ周波数を有し且つ信号COMP1及びCOMP2の位相差は180°に保たれるため、PLLがロックしている状態では、駆動制御信号DRV1及びDRV2の周波数(即ち出力段回路180Aのスイッチング周波数fSW1及び出力段回路180Bのスイッチング周波数fSW2)は、基準クロック信号CLKの周波数である基準周波数fCLKと一致する。
【0077】
図4を参照し、基準クロック信号CLKに対し駆動制御信号DRV1の位相が進んでいる状態は、駆動制御信号DRV1及びDRV2の周波数が基準周波数f
CLKよりも高い状態に相当する。このとき、PLL回路160は、オン時間T
ON1及びT
ON2を同じ時間量だけ増大させるための信号S
PLLをTON設定部150A及び150Bに出力し、TON設定部150A及び150Bは信号S
PLLに従ってオン時間T
ON1及びT
ON2を同じ時間量だけ増大させる。この増大の量は、基準クロック信号CLK及び駆動制御信号DRV1間の位相差の大きさに比例していると良い。尚、オン時間T
ON1及びT
ON2の初期値は共通の基準オン時間T
ONREFであるとする。オン時間T
ON1及びT
ON2が増大すると、誤差電圧V
ERRが一定であるとの仮定の下、平均電圧V
FBIN_AVEの増大を通じて“V
FBIN_AVE>V
ERR”から“V
FBIN_AVE<V
ERR”への切り替わりの発生間隔が長くなるので、信号COMPの周波数が低下する。つまり、駆動制御信号DRV1及びDRV2の周波数が基準周波数f
CLKに向けて低下する。
【0078】
図5を参照し、基準クロック信号CLKに対し駆動制御信号DRV1の位相が遅れている状態は、駆動制御信号DRV1及びDRV2の周波数が基準周波数f
CLKよりも低い状態に相当する。このとき、PLL回路160は、オン時間T
ON1及びT
ON2を同じ時間量だけ減少させるための信号S
PLLをTON設定部150A及び150Bに出力し、TON設定部150A及び150Bは信号S
PLLに従ってオン時間T
ON1及びT
ON2を同じ時間量だけ減少させる。この減少の量は、基準クロック信号CLK及び駆動制御信号DRV1間の位相差の大きさに比例していると良い。尚、オン時間T
ON1及びT
ON2の初期値は共通の基準オン時間T
ONREFであるとする。オン時間T
ON1及びT
ON2が減少すると、誤差電圧V
ERRが一定であるとの仮定の下、平均電圧V
FBIN_AVEの低下を通じて“V
FBIN_AVE>V
ERR”から“V
FBIN_AVE<V
ERR”への切り替わりの発生間隔が短くなるので、信号COMPの周波数が上昇する。つまり、駆動制御信号DRV1及びDRV2の周波数が基準周波数f
CLKに向けて上昇する。
【0079】
PLL回路160による上記のような制御が行われることで、駆動制御信号DRV1及びDRV2の周波数(即ちスイッチング周波数fSW1及びfSW2)が基準周波数fCLKに一致又は近づけられ、定常状態ではPLLのロックが達成される。即ち、駆動制御信号DRV1及びDRV2の周波数(即ちスイッチング周波数fSW1及びfSW2)が基準周波数fCLKに一致する。
【0080】
次に、電流バランス信号生成部210の機能について説明する。フィードバック脈流電圧V
FBIN1及びV
FBIN2はコイル電流I
L1及びI
L2に類する波形を有するもののコイル電流I
L1及びI
L2そのものを表す物理量ではなく、別途、コイル電流I
L1及びI
L2間で電流バランスをとる必要がある。即ち、仮に電流バランス信号生成部210が無かったとすれば、
図6に示すような、コイル電流I
L1及びI
L2が不均一となる状態で安定することがある。
図6に示す状態では“I
L1>I
L2”の状況で安定している。この場合には、オン時間T
ON1を減少補正しつつオン時間T
ON2を増大補正すれば、“I
L1=I
L2”の達成が見込め、“I
L1=I
L2”の達成により
図6に示す状態から
図2に示す状態に遷移する。尚、ここにおける“I
L1>I
L2”とは、詳細には、コイル電流I
L1の極大値、平均値又は極小値が、夫々、コイル電流I
L2の極大値、平均値又は極小値よりも大きくなる状況を意味し、“I
L1=I
L2”とは、詳細には、コイル電流I
L1の極大値、平均値又は極小値が、夫々、コイル電流I
L2の極大値、平均値又は極小値と一致している状況を意味する。
【0081】
“IL1=IL2”の達成のためにDC/DCコンバータ10では電流バランス信号生成部210が設けられている。
【0082】
電流バランス信号生成部210には、電流センサ190Aによる第1対象電流の検出結果と電流センサ190Bによる第2対象電流の検出結果とが入力される。今、トランジスタ181A及び182Aが同時にオンとなるような短絡異常は無いものとする。そうすると、電流センサ190Aにより検出される第1対象電流はスイッチ端子252Aを通じて流れるコイル電流IL1であり、電流センサ190Bにより検出される第2対象電流はスイッチ端子252Bを通じて流れるコイル電流IL2である。
【0083】
電流バランス信号生成部210は、電流センサ190Aから提供される第1対象電流(コイル電流IL1)の検出結果と、電流センサ190Bから提供される第2対象電流(コイル電流IL2)の検出結果とに基づき、第1対象電流の大きさと第2対象電流の大きさとを均等するための電流バランス信号SCB1及びSCB2を生成する。TON設定部150A及び150Bは、第1対象電流が第2対象電流よりも大きいとき、電流バランス信号SCB1及びSCB2に基づいてオン時間TON1を減少補正する一方でオン時間TON2を増大補正し、第1対象電流が第2対象電流よりも小さいとき、電流バランス信号SCB1及びSCB2に基づいてオン時間TON1を増大補正する一方でオン時間TON2を減少補正する。第1対象電流が第2対象電流よりも大きいとは、詳細には第1対象電流の評価値が第2対象電流の評価値よりも大きいことを意味し、第1対象電流が第2対象電流よりも小さいとは、詳細には第1対象電流の評価値が第2対象電流の評価値よりも小さいことを意味する。第1及び第2対象電流の評価値は、第1及び第2対象電流の平均値でも良いし、第1及び第2対象電流の極大値でも良いし、第1及び第2対象電流の極小値でも良い。
【0084】
第1及び第2対象電流の評価値として第1及び第2対象電流の平均値を用いる場合の動作例を説明する。
電流センサ190Aは、出力段回路180Aが出力ロー状態である区間(以下、第1ロー区間と称する)において、同期整流トランジスタ182Aのドレイン-ソース間に流れる電流を第1対象電流として検出し、その検出結果を示す第1コイル電流情報を生成部210に出力する。第1コイル電流情報により出力段回路180Aの各スイッチング周期における第1ロー区間中の第1対象電流の平均値が特定される。第1対象電流の平均値は、第1ロー区間中のコイル電流I
L1の平均値I
L1_AVEを表している(
図7参照)。平均値I
L1_AVEは出力段回路180Aのスイッチング周期ごとに導出される。
電流センサ190Bは、出力段回路180Bが出力ロー状態である区間(以下、第2ロー区間と称する)において、同期整流トランジスタ182Bのドレイン-ソース間に流れる電流を第2対象電流として検出し、その検出結果を示す第2コイル電流情報を生成部210に出力する。第2コイル電流情報により出力段回路180Bの各スイッチング周期における第2ロー区間中の第2対象電流の平均値が特定される。第2対象電流の平均値は、第2ロー区間中のコイル電流I
L2の平均値I
L2_AVEを表している(
図7参照)。平均値I
L2_AVEは出力段回路180Bのスイッチング周期ごとに導出される。
【0085】
電流バランス信号生成部210は、平均値IL1_AVEを第1評価値とすると共に平均値IL2_AVEを第2評価値とし、第1及び第2評価値を比較する。第1及び第2評価値は順次更新されるため、生成部210は最新の第1及び第2評価値の組を比較する動作を繰り返し実行する。
【0086】
電流バランス信号生成部210は、第1評価値が第2評価値よりも大きい第1アンバランス状況において、オン時間TON1の減少補正を指示する電流バランス信号SCB1を生成する一方でオン時間TON2の増大補正を指示する電流バランス信号SCB2を生成する。第1アンバランス状況において、オン時間TON1の減少補正の量及びオン時間TON2の増大補正の量は、第1及び第2評価値間の差の大きさに応じたものとされても良いし、所定の固定量であっても良い。
第1アンバランス状況において、TON設定部150Aは、信号SPLLに基づき決定したオン時間TON1を電流バランス信号SCB1に従って減少補正し、減少補正後のオン時間TON1を指定する駆動制御信号DRV1を出力する(従って駆動制御信号DRV1のハイレベル区間の長さは減少補正後のオン時間TON1とされる)。
第1アンバランス状況において、TON設定部150Bは、信号SPLLに基づき決定したオン時間TON2を電流バランス信号SCB2に従って増大補正し、増大補正後のオン時間TON2を指定する駆動制御信号DRV2を出力する(従って駆動制御信号DRV2のハイレベル区間の長さは増大補正後のオン時間TON2とされる)。
【0087】
電流バランス信号生成部210は、第1評価値が第2評価値よりも小さい第2アンバランス状況において、オン時間TON1の増大補正を指示する電流バランス信号SCB1を生成する一方でオン時間TON2の減少補正を指示する電流バランス信号SCB2を生成する。第2アンバランス状況において、オン時間TON1の増大補正の量及びオン時間TON2の減少補正の量は、第1及び第2評価値間の差の大きさに応じたものとされても良いし、所定の固定量であっても良い。
第2アンバランス状況において、TON設定部150Aは、信号SPLLに基づき決定したオン時間TON1を電流バランス信号SCB1に従って増大補正し、増大補正後のオン時間TON1を指定する駆動制御信号DRV1を出力する(従って駆動制御信号DRV1のハイレベル区間の長さは増大補正後のオン時間TON1とされる)。
第2アンバランス状況において、TON設定部150Bは、信号SPLLに基づき決定したオン時間TON2を電流バランス信号SCB2に従って減少補正し、減少補正後のオン時間TON2を指定する駆動制御信号DRV2を出力する(従って駆動制御信号DRV2のハイレベル区間の長さは減少補正後のオン時間TON2とされる)。
【0088】
上述のように、コイル電流IL1に対応する第1評価値がコイル電流IL2に対応する第2評価値よりも大きいことが検知された場合には、その後において、オン時間TON1が減少補正され且つオン時間TON2が増大補正されることで、第1及び第2評価値間の差が低減される。他方、第1評価値が第2評価値よりも小さいことが検知された場合には、その後において、オン時間TON1が増大補正され且つオン時間TON2が減少補正されることで、第1及び第2評価値間の差が低減される。このような補正(調整)が繰り返し行われることで第1及び第2評価値間の差はゼロとなる又はゼロ近辺に維持される。つまり、第1対象電流(コイル電流IL1)と第2対象電流(コイル電流IL2)との差が低減される。詳細には、コイル電流IL1の平均値とコイル電流IL2の平均値との差が低減され、結果として、コイル電流IL1の極大値又は極小値とコイル電流IL2の極大値又は極小値との差も低減される。
【0089】
尚、電流センサ190Aは、出力段回路180Aが出力ハイ状態である区間(以下、第1ハイ区間と称する)において、出力トランジスタ181Aのドレイン-ソース間に流れる電流を第1対象電流として検出し、その検出結果を示す第1コイル電流情報を生成部210に出力しても良い。そして、電流センサ190Bは、出力段回路180Bが出力ハイ状態である区間(以下、第2ハイ区間と称する)において、出力トランジスタ181Bのドレイン-ソース間に流れる電流を第2対象電流として検出し、その検出結果を示す第2コイル電流情報を生成部210に出力しても良い。この場合、第1コイル電流情報により出力段回路180Aの各スイッチング周期における第1ハイ区間中の第1対象電流の平均値が特定され、第2コイル電流情報により出力段回路180Bの各スイッチング周期における第2ハイ区間中の第2対象電流の平均値が特定される。そして、生成部210では、第1ハイ区間中の第1対象電流の平均値を第1評価値とし、且つ、第2ハイ区間中の第2対象電流の平均値を第2評価値とすることができる。
【0090】
上述したように、各対象電流の平均値ではなく、各対象電流の極大値又は極小値を評価値として用いても良い。即ち、電流バランス信号生成部210において、各スイッチング周期における第1及び第2対象電流の極大値を第1及び第2評価値として用いて、それらを比較するようにしても良いし、或いは、各スイッチング周期における第1及び第2対象電流の極小値を第1及び第2評価値として用いて、それらを比較するようにしても良い。
【0091】
説明の便宜上、PLL回路160の機能と電流バランス信号生成部210の機能を分けて説明したが、DC/DCコンバータ10では、実際には、誤差電圧生成部110を含む上述の基本帰還ループに加えて、PLL回路160並びにTON設定部150A及び150Bを含むPLL帰還ループと、電流バランス信号生成部210並びにTON設定部150A及び150Bを含む電流バランス帰還ループと、が形成され、それらの帰還ループが並列に機能することにより、出力電圧VOUTを目標電圧VTGに一致又は近似させるための帰還動作と、スイッチング周波数fSW1及びfSW2を基準周波数fCLKに一致又は近似させるための帰還動作と、コイル電流IL1及びIL2を均等にするための帰還動作と、が同時に実行される。
【0092】
或る安定状態を起点に負荷LDの大きさ(即ち負荷電流IOUT)が急減に変動したときには、過渡的に出力電圧VOUTが目標電圧VTGから幾分乖離する。そして、過渡状態においてスイッチング周波数fSW1及びfSW2が基準周波数fCLKから幾分ずれると共にコイル電流IL1及びIL2間にばらつきが生じうるが、上記の各帰還動作の働きにより必要な時間の経過後、負荷変動後の条件に適した形で“VOUT=VTG”、“fSW1=fSW2=fCLK”及び“IL1=IL2”が再び実現される。
【0093】
DC/DCコンバータ10の起動時において出力電圧VOUTが0Vから目標電圧VTGへと上昇する過程ではPLLがロックしていないが、その過程においても信号COMP中のパルスを交互に信号COMP1及びCOMP2に分配する上記方法により、第1及び第2相のスイッチング位相差が確保される。そして、出力電圧VOUTの上昇過程において、スイッチング周波数fSW1及びfSW2が基準周波数fCLKに近づいていくと共にコイル電流IL1及びIL2の均等化が図られてゆく。
【0094】
DC/DCコンバータ10は複数の動作モードの何れかにて動作できて良く、複数の動作モードにはPFMモード及びPWMモードが含まれていて良い。PWMモードでは本実施形態にて上述した動作が実行され、パルス幅変調を用いて出力段回路180A及び180Bがスイッチング駆動される。これに対し、PFMモードでは、パルス周波数変調を用いて出力段回路180A及び180Bがスイッチング駆動される。PFMモードでの動作の詳細な説明は割愛するが、DC/DCコンバータ10の動作モードがPFMモードからPWMモードに切り替えられた直後においても、信号COMP中のパルスを交互に信号COMP1及びCOMP2に分配する上記方法により第1及び第2相のスイッチング位相差が確保される。
【0095】
本実施形態に係るDC/DCコンバータ10によれば、出力段回路180A及び180Bのスイッチング駆動に180°の位相差を確保しつつ、コンスタントオンタイム制御方式に類似するオン時間制御を行うことが可能となり、高い負荷応答性能を実現できる。また、コイル電流IL1及びIL2を均等にする制御を行うことで電源効率を最適化(最大化)できる。
【0096】
尚、ここでは、設定、調整又は補正の対象としてオン時間TON1及びTON2に注目したが、オン時間TON1の設定及び増減はオンデューティDON1の設定及び増減でもあるし、オン時間TON2の設定及び増減はオンデューティDON2の設定及び増減でもある。故に、TON設定部150AはオンデューティDON1の設定及び増減を担うと考えても良いし、TON設定部150BはオンデューティDON2の設定及び増減を担うと考えても良い(後述の他の任意の実施形態においても同様)。オンデューティDON1は、出力段回路180Aのスイッチング駆動における各周期においてオン時間TON1が占める割合(スイッチング周波数fSW1の逆数分の時間の内、オン時間TON1が占める割合)を指し、オンデューティDON2は、出力段回路180Bのスイッチング駆動における各周期においてオン時間TON2が占める割合(スイッチング周波数fSW2の逆数分の時間の内、オン時間TON2が占める割合)を指す。
【0097】
<<第2実施形態>>
本開示の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3~第6実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2~第6実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2~第6実施形態にも適用されて良い。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3~第6実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第6実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
【0098】
図1のDC/DCコンバータ10の構成の一部を流用して、複数チャネルを有する降圧型シングルフェーズDC/DCコンバータを形成することができる。
図8は第2実施形態に係るDC/DCコンバータ20の全体構成図である。DC/DCコンバータ20は、2チャネルを有する降圧型シングルフェーズDC/DCコンバータである。2チャネルは第1チャネルと第2チャネルとから成る。DC/DCコンバータ20は、第1チャネルにおいて入力電圧V
IN1を降圧することで出力電圧V
OUT1を生成し、第2チャネルにおいて入力電圧V
IN2を降圧することで出力電圧V
OUT2を生成する。
【0099】
入力電圧VIN1及びVIN2は正の直流電圧であり、例えば、4.0V~18.0Vの範囲内の電圧値を有する。入力電圧VIN1及びVIN2の一致及び不一致は問わない。出力電圧VOUT1、VOUT2は、夫々、入力電圧VIN1、VIN2より低く、DC/DCコンバータ20の過渡状態を除けば、安定化された正の直流電圧値を有する。出力電圧VOUT1、VOUT2の目標値(後述の目標電圧VTG1、VTG2の値)は、例えば、0.6V~3.4Vの範囲内の電圧値を有する。出力電圧VOUT1及びVOUT2の目標値の一致及び不一致は問わない。
【0100】
DC/DCコンバータ20は第1チャネルのDC/DCコンバータと第2チャネルのDC/DCコンバータを備える。
【0101】
第1チャネルのDC/DCコンバータについて説明する。第1チャネルのDC/DCコンバータは、誤差電圧生成部110Aと、脈波生成部120Aと、PWMコンパレータ130Aと、TON設定部150Aと、PLL回路160Aと、出力段駆動部170Aと、出力段回路180Aと、電流センサ190Aと、保護回路200Aと、コイルL1と、出力コンデンサCOUT1と、入力端子251Aと、スイッチ端子252Aと、グランド端子253Aと、出力端子254Aと、を備える。
【0102】
出力段回路180Aの構成は第1実施形態で述べた通りである。但し、DC/DCコンバータ20において、入力端子251Aは入力電圧VIN1の印可端(入力電圧VIN1が加わる端子)に接続されて入力電圧VIN1を受け、スイッチ端子252AはコイルL1を介して出力端子254Aに接続され、出力端子254A及びグランド間の出力コンデンサCOUT1が設けられることで出力端子254Aに出力電圧VOUT1が加わる。
【0103】
出力段回路180Aにおいてトランジスタ181A及び182Aが交互にオン及びオフされることで、入力電圧VIN1がスイッチングされ、スイッチ端子252Aにて矩形波状のスイッチ電圧VLX1が生じる。コイルL1出力コンデンサCOUT1により整流平滑回路が構成され、矩形波状のスイッチ電圧VLX1が当該整流平滑回路により整流及び平滑化されることで出力電圧VOUT1が生成される。
【0104】
図8の誤差電圧生成部110Aは
図1の誤差電圧生成部110と同じ構成を持つ。
図1の誤差電圧生成部110におけるエラーアンプ111、抵抗112、113、114、ノード115は、
図8の誤差電圧生成部110Aでは、夫々、エラーアンプ111A、抵抗112A、113A、114A、ノード115Aと称される。ノード115Aは帰還入力端子に相当し、ノード115Aにはフィードバック電圧V
FB1が加わる。フィードバック電圧V
FB1は出力電圧V
OUT1に比例する電圧である。ここでは、出力電圧V
OUT1そのものがフィードバック電圧V
FB1であるとするが、出力電圧V
OUT1の分圧等がフィードバック電圧V
FB1であっても構わない。ノード115Aは抵抗112Aの一端に接続され、抵抗112Aの他端はエラーアンプ111Aの反転入力端子に接続されると共に抵抗113Aを介してグランドに接続される。エラーアンプ111Aの非反転入力端子には所定の基準電圧V
REF1が印可される。基準電圧V
REF1は所定の正の直流電圧値を有する。エラーアンプ111Aの出力端子は抵抗114Aを介してエラーアンプ111Aの反転入力端子に接続される。このため、エラーアンプ111A及び抵抗112A~114Aにより反転増幅器が構成される。フィードバック電圧V
FB1に比例する電圧(エラーアンプ111Aの反転入力端子に加わる電圧)と基準電圧V
REF1との差分に応じた誤差電圧V
ERR1がエラーアンプ111Aの出力端子から出力される。
【0105】
図8の脈波生成部120Aは
図1の脈波生成部120Aと同じものであり、ノード125Aにフィードバック脈流電圧V
FBIN1が生じる。但し、
図8の脈波生成部120Aにおいて、ノード124Aに加わるフィードバック電圧は出力電圧V
OUT1に基づくフィードバック電圧V
FB1である。即ち、脈波生成部120Aは、フィードバック電圧V
FB1を基準にフィードバック脈流電圧V
FBIN1を生成する。フィードバック脈流電圧V
FBIN1の特性は第1実施形態で述べた通りであって、コイル電流I
L1の波形に類似した波形を持つ。尚、
図8の脈波生成部120Aに対し
図3(a)に示した構成を採用する場合、バッファ回路126A_1の正側の電源電圧は“V
IN1/4”とされる。
【0106】
PWMコンパレータ130Aは、誤差電圧VERR1とフィードバック脈流電圧VFBIN1を比較することで信号COMP1を生成し且つ出力する。具体的には、PWMコンパレータ130Aは、“VFBIN1>VERR1”が成立する区間において信号COMP1をローレベルに維持し、“VFBIN1>VERR1”から“VFBIN1<VERR1”へと切り替わると、その切り替わりタイミングを起点に所定の微小時間だけ信号COMP1をハイレベルとしてからローレベルに戻すよう構成されている。
【0107】
TON設定部150Aは、PWMコンパレータ130Aから供給される信号COMP1に基づき、出力段回路180Aの状態を指定する駆動制御信号DRV1を生成する。
図8のDC/DCコンバータ20では、PLL回路160(
図1参照)としてPLL回路160Aが用いられ、且つ、電流バランス信号S
CB1(
図1参照)に依らず駆動制御信号DRV1が生成される(そもそも電流バランス信号S
CB1は存在しない)。これらの点を除き、TON設定部150Aの動作は第1実施形態で述べた通りである。
【0108】
図8のPLL回路160Aは
図1のPLL回路160と同じものであり、基準クロック信号CLK及び駆動制御信号DRV1間の位相差(即ち基準クロック信号CLKの位相と駆動制御信号DRV1の位相との差)に応じた信号S
PLL1をTON設定部150Aに出力し、TON設定部150Aと協働して駆動制御信号DRV1の周波数を基準周波数f
CLK(基準クロック信号CLKの周波数)に一致又は近似させる。出力段駆動部170A、電流センサ190A及び保護回路200Aの構成及び動作は第1実施形態で述べた通りである。
【0109】
第2チャネルのDC/DCコンバータについて説明する。第2チャネルのDC/DCコンバータは、誤差電圧生成部110Bと、脈波生成部120Bと、PWMコンパレータ130Bと、TON設定部150Bと、PLL回路160Bと、出力段駆動部170Bと、出力段回路180Bと、電流センサ190Bと、保護回路200Bと、コイルL2と、出力コンデンサCOUT2と、入力端子251Bと、スイッチ端子252Bと、グランド端子253Bと、出力端子254Bと、を備える。
【0110】
図8のDC/DCコンバータ20において、第2チャネルのDC/DCコンバータの構成及び動作は第1チャネルのDC/DCコンバータの構成及び動作と同じであり、第1チャネルのDC/DCコンバータに対して上述した事項が第2チャネルのDC/DCコンバータにも適用される。但し、この適用の際、第1チャネルのDC/DCコンバータとの関係で記述される符号又は記号110A~115A、120A~126A、126A_1~126A_4、130A、150A、160A、170A、180A~182A、190A、200A、251A~254A、L1、C
OUT1、V
FB1、V
REF1、V
ERR1、V
LX1、V
FBIN1、COMP1、DRV1、S
PLL1、V
IN1、V
OUT1、I
L1は、第2チャネルのDC/DCコンバータにおいて、夫々、符号又は記号110B~115B、120B~126B、126B_1~126B_4、130B、150B、160B、170B、180B~182B、190B、200B、251B~254B、L2、C
OUT2、V
FB2、V
REF2、V
ERR2、V
LX2、V
FBIN2、COMP2、DRV2、S
PLL2、V
IN2、V
OUT2、I
L2に読み替えられる。また、PLL回路160Bには基準クロック信号としてクロック信号CLKBが入力されるものとする。クロック信号CLKBは基準クロック信号CLKの反転信号である。
【0111】
DC/DCコンバータ20に含まれる第1チャネルのDC/DCコンバータでは、誤差電圧生成部110Aから出力電圧VOUT1を生成する部位にまで至る帰還ループにより、エラーアンプ111Aの非反転入力端子及び反転入力端子間の電位差をゼロに維持するための帰還制御が行われ、誤差電圧VERR1の調整を通じ、出力電圧VOUT1が所定の目標電圧VTG1にて安定化される(即ち目標電圧VTG1に一致又は近づく)。目標電圧VTG1は、抵抗112A及び113Aの抵抗値の比と基準電圧VREF1とで定まる。更に、PLL回路160Aの機能により、駆動制御信号DRV1の周波数(従って出力段回路180Aのスイッチング周波数fSW1)が基準周波数fCLKに一致又は近似せしめられる。
【0112】
これとは独立して、DC/DCコンバータ20に含まれる第2チャネルのDC/DCコンバータでは、誤差電圧生成部110Bから出力電圧VOUT2を生成する部位にまで至る帰還ループにより、エラーアンプ111Bの非反転入力端子及び反転入力端子間の電位差をゼロに維持するための帰還制御が行われ、誤差電圧VERR2の調整を通じ、出力電圧VOUT2が所定の目標電圧VTG2にて安定化される(即ち目標電圧VTG2に一致又は近づく)。目標電圧VTG2は、抵抗112B及び113Bの抵抗値の比と基準電圧VREF2とで定まる。更に、PLL回路160Bの機能により、駆動制御信号DRV2の周波数(従って出力段回路180Bのスイッチング周波数fSW2)が基準周波数fCLKに一致又は近似せしめられる。
【0113】
尚、
図8からは明らかではないが、出力端子254A及び254Bが互いに接続されることがあっても良い。
【0114】
<<第3実施形態>>
本開示の第3実施形態を説明する。
図1のDC/DCコンバータ10の一部又は全部及び
図8のDC/DCコンバータ20の一部又は全部を半導体基板上の半導体集積回路により形成し、当該半導体集積回路を樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置を構成するようにしても良い。
図9は第3実施形態に係る半導体装置500の外観斜視図である。
【0115】
半導体装置500は、上記の半導体集積回路と半導体集積回路を収容する筐体とを主たる構成部品として備え、当該筐体に対し複数の外部端子が筐体から露出して設けられる。尚、
図9では、半導体装置500がQFN(Dual Flatpack No-leaded)と称される筐体(パッケージ)を有するケースを例にとっているが、半導体装置500の筐体の種類は任意であり、また半導体装置500の外部端子の数も任意である。
【0116】
図1のDC/DCコンバータ10を構成するブロックの内、符号110、120A、120B、130、140、150A、150B、160、170A、170B、180A、180B、190A、190B、200A、200B及び210にて参照される各ブロックが半導体装置500の半導体集積回路により形成されており、
図1のDC/DCコンバータ10を実現する場合には、半導体装置500に対しコイルL1及びL2並びに出力コンデンサC
OUTを外付け接続する。
【0117】
図8のDC/DCコンバータ20を構成するブロックの内、符号110A、110B、120A、120B、130A、130B、150A、150B、160A、160B、170A、170B、180A、180B、190A、190B、200A及び200Bにて参照される各ブロックが半導体装置500の半導体集積回路により形成されており、
図8のDC/DCコンバータ20を実現する場合には、半導体装置500に対しコイルL1及びL2並びに出力コンデンサC
OUT1及びC
OUT2を外付け接続する。
【0118】
即ち、半導体装置500の半導体集積回路には、DC/DCコンバータ10及び20の何れをも構成可能な回路が設けられおり、同一の半導体コア(半導体集積回路が形成された半導体チップ)にてDC/DCコンバータ10及び20の何れをも構成可能である。
図1のDC/DCコンバータ10を構成する場合には、
図8の誤差電圧生成部110B、PWMコンパレータ130B及びPLL回路160Bを機能させずに(半導体集積回路には設けられてはいるものの、それらを有意に動作させずに)、
図1に示す各回路の接続状態を実現してDC/DCコンバータ10を構成すれば良い。一方、
図8のDC/DCコンバータ20を構成する場合には、
図1の位相制御ロジック140及び電流バランス信号生成部210を機能させずに(半導体集積回路には設けられてはいるものの、それらを有意に動作させずに)、
図8に示す各回路の接続状態を実現してDC/DCコンバータ20を構成すれば良い。
【0119】
半導体装置500の製造段階において、DC/DCコンバータ10を構成するための専用の半導体装置500(以下、マルチフェーズ専用の半導体装置500と称する)と、DC/DCコンバータ20を構成するための専用の半導体装置500(以下、シングルフェーズ専用の半導体装置500と称する)と、を別々に構成(製造)して良い。
【0120】
マルチフェーズ専用の半導体装置500に設けられた複数の外部端子は、
図1の入力端子251A及び251B、スイッチ端子252A及び252B並びにグランド端子253A及び253Bを含み、更に帰還入力端子を含む。マルチフェーズ専用の半導体装置500において、帰還入力端子はフィードバック電圧V
FBを受けるべき外部端子として
図1のノード115、124A及び124Bに接続される。
【0121】
シングルフェーズ専用の半導体装置500に設けられた複数の外部端子は、
図8の入力端子251A及び251B、スイッチ端子252A及び252B並びにグランド端子253A及び253Bを含み、更に帰還入力端子を含む。シングルフェーズ専用の半導体装置500では、帰還入力端子として第1及び第2帰還入力端子が設けられており、第1帰還入力端子はフィードバック電圧V
FB1を受けるべき外部端子として
図8のノード115A及び124Aに接続され、第2帰還入力端子はフィードバック電圧V
FB2を受けるべき外部端子として
図8のノード115B及び124Bに接続される。
【0122】
マルチフェーズ/シングルフェーズ切替型の半導体装置500を構成(製造)して良い。マルチフェーズ/シングルフェーズ切替型の半導体装置500は、半導体装置500の外部から供給される設定信号に基づき(例えば、或る外部端子に加わる電圧のレベルに基づき)、マルチフェーズモード又はシングルフェーズモードで選択的に動作する。マルチフェーズ/シングルフェーズ切替型の半導体装置500内で、図示されないマルチプレクサやスイッチの切り替え機能を用い、
図1の回路構成及び
図8の回路構成の何れかが選択的に形成可能とされる。上記設定信号に基づき、マルチフェーズモードでは半導体装置500内で
図1の回路構成を形成する一方、シングルフェーズモードでは半導体装置500内で
図8の回路構成を形成すれば良い。
【0123】
マルチフェーズ/シングルフェーズ切替型の半導体装置500は、
図8の入力端子251A及び251B、スイッチ端子252A及び252B並びにグランド端子253A及び253Bを含み、更に第1及び第2帰還入力端子を含む。
マルチフェーズ/シングルフェーズ切替型の半導体装置500を用いて
図1のDC/DCコンバータ10を構成する場合にあっては、当該半導体装置500をマルチフェーズモードで動作させると共に第1帰還入力端子にフィードバック電圧V
FBを与える。マルチフェーズモードで動作する際、半導体装置500内で
図1のノード115、124A及び124Bが第1帰還入力端子に接続される。
マルチフェーズ/シングルフェーズ切替型の半導体装置500を用いて
図8のDC/DCコンバータ20を構成する場合にあっては、当該半導体装置500をシングルフェーズモードで動作させると共に第1及び第2帰還入力端子に夫々フィードバック電圧V
FB1及びV
FB2を与える。シングルフェーズモードで動作する際、半導体装置500内で
図8のノード115A及び124Aが第1帰還入力端子に接続され且つ
図8のノード115B及び124Bが第2帰還入力端子に接続される。
【0124】
尚、マルチフェーズ/シングルフェーズ切替型の半導体装置500を用いたDC/DCコンバータ10又は20の起動後に、動作モードがマルチフェーズモード及びシングルフェーズモード間で切り替えられることがあり得ても良い。この場合において、仮に、シングルフェーズモードからマルチフェーズモードへの切り替えがあったとしても、第1実施形態で述べた方法により第1及び第2相のスイッチング位相差が確保される。
【0125】
また、半導体装置500において、抵抗112及び113又は抵抗112A及び113Aを半導体装置500の外部に設けて半導体装置500に対し外付け接続するようにしても良いし、出力段回路180A及び180Bを半導体装置500の外部に設けて半導体装置500に対し外付け接続するようにしても良い。
【0126】
<<第4実施形態>>
本開示の第4実施形態を説明する。DC/DCコンバータ10を任意の電子機器に対する電源装置として利用することができる。特に例えば、負荷変動が大きいが故に高い負荷応答性能が要求され、また小型化も強く要求される用途にDC/DCコンバータ10は好適である。本実施形態で述べるDC/DCコンバータ10は、半導体装置500を用いて構成されたDC/DCコンバータ10であって良い。
【0127】
一例として、SSD(Solid State Drive)に対する電源装置としてDC/DCコンバータ10を利用することができる。SSDは半導体メモリを記録媒体として持つ記録装置であり、主たる構成部品として、半導体メモリと、半導体メモリへのデータの読み書きを制御するメモリコントローラと、を備える。メモリコントローラの消費電力は様々に変動する。即ち、メモリコントローラを電源装置の負荷(
図1の負荷LDに相当)としたとき、負荷変動が大きい。このようなメモリコントローラに対する電源電圧としてDC/DCコンバータ10の出力電圧V
OUTを用いることにより、高い負荷応答性能を提供できる。
【0128】
また、マルチフェーズ駆動方式の採用によりコイルL1及びL2(
図1参照)として小型のコイルを用いることができるため、SSD全体のサイズを低減することが可能となる。SSDの小型化のため低背部品(高さの低い部品)の使用が要求されるが。低背のコイルはDCR(直流抵抗)が大きくなりがちである。低背のコイルを1つだけ用いてシングルフェーズ駆動を行い当該1つのコイルに大電流(メモリコントローラが必要とする大電流:例えば12A)を流すと、発熱が大きくなり電源効率が著しく低下する。DC/DCコンバータ10の如く、マルチフェーズ駆動方式を採用すれば、複数のコイルにて負荷電流が分担されるため、低背部品を問題なく使用することができる。
【0129】
データセンタ等におけるサーバ装置の記録装置としてSSDを用いる場合、常時動作(24時間動作)の観点から電源効率が極めて重要となるが、上述の電流バランス技術の導入により高い電源効率を実現することができる。勿論、パーソナルコンピュータ等に搭載されるSSDに対してDC/DCコンバータ10を利用することもできる。
【0130】
<<第5実施形態>>
本開示の第5実施形態を説明する。第1実施形態では、降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータの例として2相分の回路を備えたDC/DCコンバータ10を説明したが、n相分の回路を備えた降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータを構成しても良い。ここで、nは2以上の任意の整数である。
【0131】
n=3である場合を考え、3相分の回路を備えた降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータである降圧型3フェーズDC/DCコンバータを説明する。
図10に降圧型3フェーズDC/DCコンバータの一部の構成を概略的に示す。降圧型3フェーズDC/DCコンバータは、
図1に示されるDC/DCコンバータ10の各構成部品を備えると共に、第3相における脈波生成部、TON設定部、出力段駆動部、出力段回路、電流センサ、保護回路及びコイルとして、脈波生成部120C、TON設定部150C、出力段駆動部170C、出力段回路180C、電流センサ190C、保護回路200C及びコイルL3を備える(但し電流センサ190C及び保護回路200Cは図示せず)。第3相の各回路の構成及び動作は第1相又は第2相の各回路の構成及び動作と同じであるが、以下、第3相の各回路の構成及び動作の説明を交えつつ降圧型3フェーズDC/DCコンバータの構成及び動作を説明する。
【0132】
出力段回路180Cは出力段回路180Aと同じ構成を有し、出力トランジスタ181A及び同期整流トランジスタ182Aに対応する出力トランジスタ181C及び同期整流トランジスタ182Cを備える。出力段回路180Cは入力電圧VINをスイッチングすることで、出力トランジスタ181C及び同期整流トランジスタ182C間の接続ノードに相当するスイッチ端子252Cに矩形波状のスイッチ電圧VLX3を発生させる。スイッチ端子252Cと出力端子254との間にコイルL3が設けられる。尚、DC/DCコンバータ10と同様、降圧型3フェーズDC/DCコンバータにおいて、スイッチ電圧VLX1が生じるスイッチ端子252Aと出力端子254との間にコイルL1が設けられ、スイッチ電圧VLX2が生じるスイッチ端子252Bと出力端子254との間にコイルL2が設けられる。
【0133】
脈波生成部120Cは脈波生成部120Aと同じ構成を有し、フィードバック電圧VFBを基準にスイッチ電圧VLX3と連動して変動するフィードバック脈流電圧VFBIN3を生成する。
【0134】
降圧型3フェーズDC/DCコンバータにおいて、PWMコンパレータ130は、フィードバック脈流電圧VFBIN1及びVFBIN2の平均電圧ではなく、フィードバック脈流電圧VFBIN1、VFBIN2及びVFBIN3の平均電圧を電圧VFBIN_AVEとして用いて第1実施形態で述べた動作により信号COMPを生成する。この信号COMPにおける各アップエッジタイミングは、出力トランジスタ181A、181B又は181Cのオンタイミングを表している。
【0135】
降圧型3フェーズDC/DCコンバータにおいて、位相制御ロジック140は、
図11に示す如く、信号COMPに含まれる複数のオンタイミングを示す複数のパルスを1つずつ順番に且つ循環的に信号COMP1、COMP2及びCOMP3に分配することで信号COMP1~COMP3を生成する。より明確に説明すれば以下のような動作が実行される。即ち、降圧型3フェーズDC/DCコンバータにおいて、位相制御ロジック140は信号COMP1~COMP3のレベルを原則としてローレベルに保ち、信号COMPに第(3×i+1)回目のアップエッジが生じたときには、信号COMPのアップエッジに同期して信号COMP1にもアップエッジを生じさせ、所定の微小時間だけ信号COMP1をハイレベルとしてからローレベルに戻し、信号COMPに第(3×i+2)回目のアップエッジが生じたときには、信号COMPのアップエッジに同期して信号COMP2にもアップエッジを生じさせ、所定の微小時間だけ信号COMP2をハイレベルとしてからローレベルに戻し、信号COMPに第(3×i)回目のアップエッジが生じたときには、信号COMPのアップエッジに同期して信号COMP3にもアップエッジを生じさせ、所定の微小時間だけ信号COMP3をハイレベルとしてからローレベルに戻す(ここでiは整数)。
【0136】
TON設定部150A、150B及び150Cは、夫々、信号COMP1、COMP2及びCOMP3に基づき、駆動制御信号DRV1、DRV2及びDRV3を生成する。信号COMP3に基づく駆動制御信号DRV3の生成方法は、信号COMP1に基づく駆動制御信号DRV1の生成方法と同じである。
【0137】
PLL回路160の動作は上述した通りである。但し、
図10の降圧型3フェーズDC/DCコンバータにおいては、PLL回路160の出力信号S
PLLがTON設定部150A及び150BだけでなくTON設定部150Cにも供給され、これによって駆動制御信号DRV1、DRV2及びDRV3の周波数(従って出力トランジスタ181A、181B及び181Cのスイッチング周波数)が基準周波数f
CLKに一致又は近づけられる。
【0138】
出力段駆動部170A、170B及び170Cは、駆動制御信号DRV1、DRV2及びDRV3に基づいて、出力段回路180A、180B及び180Cのスイッチング駆動を行う。出力段駆動部170A及び170Bと同様、出力段駆動部170Cは、駆動制御信号DRV3のハイレベル区間にて出力段回路180Cを出力ハイ状態とし、駆動制御信号DRV3のローレベル区間にて出力段回路180Cを出力ロー状態とする。
【0139】
これにより、「360°/n=360°/3=120°」であるから、120°の位相差(又は120°に近い位相差)をつけて出力段回路180A~180Cがスイッチング駆動されることとなり、コンスタントオンタイム制御方式に類する制御方式を利用しつつ、理想的な3フェーズ駆動が実現される。
【0140】
電流バランス信号生成部210は、電流センサ190A、190B及び190Cにより検出される第1、第2及び第3対象電流に基づいて電流バランス信号S
CB1、S
CB2及びS
CB3を生成する(
図10において各電流センサは不図示)。第1、第2、第3対象電流は、夫々、スイッチ端子252A、252B、252Cを通じて流れる電流であり、コイル電流I
L1、I
L2、I
L3に相当する。尚、コイル電流I
L3はコイルL3に流れる電流を表す。TON設定部150A、150B及び150Cにて電流バランス信号S
CB1、S
CB2及びS
CB3に基づき必要に応じオン時間T
ON1、T
ON2及びT
ON3(駆動制御信号DRV1、DRV2及びDRV3のハイレベル区間の長さ)が補正されることで、第1~3対象電流間の差が低減される。この低減の方法は第1実施形態で述べたものと同様である(第1実施形態では“n=2”の場合での低減の方法が示されている)。尚、オン時間T
ON3は、出力段回路180Cのスイッチングの各周期において出力段回路180Cが出力ハイ状態とされる時間(即ち出力トランジスタ181Cがオン状態とされる時間)を表す。
【0141】
<<第6実施形態>>
本開示の第6実施形態を説明する。第6実施形態では、第1~第5実施形態に適用可能な変形技術や応用技術を説明する。
【0142】
上述の各実施形態にて示されたDC/DCコンバータ(例えば
図1のDC/DCコンバータ10)では、出力段回路に同期整流方式が採用されているが、ダイオード整流方式を採用するようにしても良い。即ち各同期整流トランジスタを整流ダイオードに置換しても良い。この置換が行われたとき、当然、各出力段回路にてオン/オフが制御されるトランジスタは出力トランジスタのみとなる。
【0143】
位相差確保技術と電流バランス技術の双方が適用されたDC/DCコンバータを説明したが、本開示に係る降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータにおいて、位相差確保技術のみが実装されることがあっても良いし、電流バランス技術のみが実装されることがあっても良い。
【0144】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0145】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)についてチャネルの種類は例示であり、Nチャネル型のFETがPチャネル型のFETに変更されるように、或いは、Pチャネル型のFETがNチャネル型のFETに変更されるように、FETを含む回路の構成は変形され得る。例えば、
図1の出力トランジスタ181A及び181BをPチャネル型のMOSFETに置換する変形が可能である。
【0146】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0147】
<<発明の考察>>
上述の各実施形態にて具体化された本開示の構成例について説明する。
図12に本開示の一側面に係る半導体装置Wのブロック図を示す。
【0148】
本開示の一側面に係る半導体装置W(例えば、
図9の半導体装置500に対応)は、入力電圧を降圧して出力電圧を生成する降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータに用いられる半導体装置であって、前記入力電圧をスイッチングすることで第1~第nスイッチ端子に矩形波状の第1~第nスイッチ電圧(例えばV
LX1、V
LX2)を発生させる第1~第n出力段回路と(nは2以上の整数)、前記第1~第n出力段回路のスイッチング駆動に位相差を設けた状態で前記第1~第n出力段回路をスイッチング駆動するスイッチング制御部と、を備え、前記降圧型マルチフェーズDC/DCコンバータでは、前記第1~第nスイッチ電圧を整流及び平滑化することにより前記出力電圧を生成し、当該半導体装置は、前記出力電圧に応じたフィードバック電圧(例えばV
FB)を受ける帰還入力端子と、前記フィードバック電圧に比例する電圧と所定の基準電圧との差分に応じた誤差電圧(例えばV
ERR)を生成する誤差電圧生成部と、前記フィードバック電圧を基準に、前記第1~第nスイッチ電圧と連動して変動する第1~第nフィードバック脈流電圧(例えばV
FBIN1、V
FBIN2)を生成するフィードバック脈流電圧生成部と、前記誤差電圧と前記第1~第nフィードバック脈流電圧に基づき複数のオンタイミングから成るオンタイミング列を生成するオンタイミング列生成部と、を備え、前記スイッチング制御部は、前記オンタイミング列に基づき前記第1~第n出力段回路を順次スイッチング駆動することにより前記第1~第n出力段回路のスイッチング駆動に位相差を設ける。
【0149】
以下、適宜、半導体装置Wの構成と
図1の構成との対応関係を説明する(
図10の構成との対応も同様に考えることができる)。半導体装置Wにおける第1~第n出力段回路は、
図1では出力段回路180A及び180Bに対応する。半導体装置Wにおけるスイッチング制御部は、
図1の符号140、150A、150B、160、170A、170B、190A、190B、200A、200B及び210によって参照される各部位を備えたブロックに対応する。半導体装置Wにおける帰還入力端子は、
図1のノード115(124A、124B)に対応する。半導体装置Wにおける誤差電圧生成部は、
図1の誤差電圧生成部110に対応する。半導体装置Wにおけるフィードバック脈流電圧生成部は、
図1では脈波生成部120A及び120Bにより形成される。半導体装置Wにおけるオンタイミング列生成部は、
図1のPWMコンパレータ130に対応する。PWMコンパレータ130の出力信号COMPによりオンタイミング列が規定されるので、PWMコンパレータ130にてオンタイミング列が生成されていると解することができる。
【0150】
上記の半導体装置Wにおいて、例えば、前記第1~第n出力段回路は、夫々、前記入力電圧の印加端と前記第1~第nスイッチ端子との間に設けられた第1~第n出力トランジスタ(例えば181A、181B)を有し、前記スイッチング制御部は、各出力トランジスタのオン時間(例えばTON1、TON2)を設定するオン時間設定部を有し、その設定内容と前記オンタイミング列に基づき前記第1~第n出力段回路をスイッチング駆動すると良い。
【0151】
半導体装置Wにおけるオン時間設定部は、
図1ではTON設定部150A及び150Bにより形成される。
図1のPLL回路160はオン時間設定部の構成要素に含まれると解しても良いし、オン時間設定部とは別にスイッチング制御部内に設けられていると解しても良い。
【0152】
そして例えば、上記の半導体装置Wにおいて、前記オンタイミング列生成部は、前記誤差電圧と前記第1~第nフィードバック脈流電圧の平均電圧(例えばVFBIN_AVE)との高低関係が第1関係から第2関係に変化するたびに前記オンタイミングに設定することで前記オンタイミング列を生成し、前記スイッチング制御部は、前記オンタイミング列に含まれ且つ連続するn個のオンタイミングにおいて前記第1~第n出力トランジスタを1つずつ順次ターンオンさせる動作を、繰り返し実行すると良い。
【0153】
図1の構成において、第1関係から第2関係への変化は“V
FBIN_AVE>V
ERR”から“V
FBIN_AVE<V
ERR”への変化に対応するが、“V
FBIN_AVE<V
ERR”から“V
FBIN_AVE>V
ERR”への変化が第1関係から第2関係への変化に対応するように、
図1の回路構成及び動作を変形しても構わない。
図1の構成では“n=2”であるため、オンタイミング列に含まれ且つ連続する2つのオンタイミングにおいて(即ち信号COMPにおける連続する2つのアップエッジタイミングにおいて)出力トランジスタ181A及び181Bが1つずつ順次ターンオンされ、その後、次の連続する2つのオンタイミングにおいて再度出力トランジスタ181A及び181Bが1つずつ順次ターンオンされる。以下の同様の動作が繰り返される。“n≧3”の場合も同様である。
【0154】
また例えば、上記の半導体装置Wにおいて、前記オン時間設定部は、各出力トランジスタのオン時間の設定内容と前記オンタイミング列とに基づき前記第1~第n出力トランジスタのオン区間及びオフ区間を指定する第1~第n駆動制御信号(例えばDRV1、DRV2)を生成し、前記スイッチング制御部は、前記第1~第n駆動制御信号に従って前記第1~第n出力トランジスタのオン/オフするスイッチング駆動部を有し、前記オン時間設定部は、PLL回路を用いて、前記第1~第n出力トランジスタのスイッチング周波数に相当する前記第1~第n駆動制御信号の周波数が所定の基準周波数に一致又は近づくよう各出力トランジスタのオン時間を設定しても良い。
【0155】
半導体装置Wにおけるスイッチング駆動部は、
図1では出力段駆動部170A及び170Bにより形成される。
【0156】
また例えば、上記の半導体装置Wにおいて、前記スイッチング制御部は、前記第1~第nスイッチ端子を通じて流れる第1~第n対象電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部の検出結果に基づき前記第1~第n対象電流の大小関係に応じた電流バランス信号(例えばSCB1、SCB2)を生成する電流バランス信号生成部と、を有し、前記オン時間設定部は、前記電流バランス信号に基づいて各出力トランジスタのオン時間を調整することで前記第1~第n対象電流間の差を低減するようにしても良い。
【0157】
半導体装置Wにおける電流検出部は、
図1では電流センサ190A及び190Bにより形成される。半導体装置Wにおける電流バランス信号生成部は、
図1の電流バランス信号生成部210に対応する。
【0158】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0159】
10 DC/DCコンバータ
110 誤差電圧生成部
120 脈波生成部
130 PWMコンパレータ
140 位相制御ロジック
150A、150B TON設定部
160 PLL回路
170A、170B 出力段駆動部
180A、180B 出力段回路
181A、181B 出力トランジスタ
182A、182B 同期整流トランジスタ
190A、190B 電流センサ
200A、200B 保護回路
210 電流バランス信号生成部
L1、L2 コイル
COUT 出力コンデンサ