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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】2軸ヒンジ機構
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20240229BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20240229BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20240229BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F16C11/04 F
F16H1/16 Z
H04M1/02 C
G06F1/16 312F
G06F1/16 312J
G06F1/16 312G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020128970
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022025845
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】掛水 大介
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106979220(CN,A)
【文献】特開昭61-105331(JP,A)
【文献】中国実用新案第203670445(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-2358664(KR,B1)
【文献】特開2015-158216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/04
F16H 1/16
H04M 1/02
G06F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のヒンジ軸を有する2軸ヒンジ機構であって、
回転自在に支持されたウォームホイールと、
前記ウォームホイールの一側に配置された第1多条ウォーム及び前記ウォームホイールの他側に配置された第2多条ウォームと、
前記第1多条ウォームに相対回転不能に結合された第1ヒンジ軸と、
前記第2多条ウォームに相対回転不能に結合された第2ヒンジ軸と、を有し、
前記ウォームホイールの歯数は偶数であり、
前記第1多条ウォーム及び前記第2多条ウォームの条数は偶数であり、
前記第1多条ウォーム及び前記第2多条ウォームは、同一形状の筒状ウォームであって、前記ウォームホイールの中心点について対称に配置されている、2軸ヒンジ機構。
【請求項2】
前記第1ヒンジ軸に固定された第1連結プレートと、
前記第2ヒンジ軸に固定された第2連結プレートと、を有する、請求項1に記載の2軸ヒンジ機構。
【請求項3】
前記ウォームホイール,第1多条ウォーム及び第2多条ウォームが回転自在に搭載されたフレームを有する、請求項1又は請求項2に記載の2軸ヒンジ機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の2軸ヒンジ機構を有する携帯情報端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材同士や部品同士を回転可能に接合したり、連結したりするヒンジ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
部材同士や部品同士を回転可能に接合したり、連結したりするヒンジ機構は、例えばノート型のPC(Personal Computer)や折り畳み型のタブレット等の携帯情報端末に用いられる。具体的には、表示部が設けられた筐体と、操作部が設けられた筐体とが、ヒンジ機構を介して回転可能に連結された携帯情報端末が知られている。また、それぞれに表示部が設けられた2つの筐体がヒンジ機構を介して回転可能に連結された携帯情報端末が知られている。
【0003】
携帯情報端末等に用いられる従来のヒンジ機構の1つに2軸ヒンジ機構がある。特許文献1には、端末機器の第1筐体と第2筐体とを互いに開閉可能に連結する2軸ヒンジ機構が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されている2軸ヒンジ機構は、第1筐体に取り付けられる第1ヒンジシャフト,第2筐体に取り付けられる第2ヒンジシャフト,第1ヒンジシャフト及び第2ヒンジシャフトを同期させて互いに異なる方向に回転させる同期回転手段等を有している。さらに、同期回転手段は、第1ヒンジシャフトに設けられた第1ギア,第2ヒンジシャフトに設けられた第2ギア,第1ギアと第2ギアとの間に設けられ、一方の回転を他方に伝える中間ギア等から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-1052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている同期回転手段を構成している中間ギアには2つのギア歯が形成されている。中間ギアに形成されている一方のギア歯は、第1ヒンジシャフトに設けられている第1ギアと噛み合い、中間ギアに形成されている他方のギア歯は、第2ヒンジシャフトに設けられている第2ギアと噛み合っている。しかし、中間ギアに形成されている2つのギア歯は、当該中間ギアの両端にそれぞれ形成され、互いに独立している。言い換えれば、中間ギアに形成されている2つのギア歯は、当該中間ギア上の異なる位置に形成された別々のギアである。よって、2つのギア歯を含む中間ギアを1つの金型を用いて作ったとしても、それら2つのギア歯の間には位置ずれが発生し得る。
【0007】
よって、特許文献1に記載されている2軸ヒンジ機構において、第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトの回転角度を一致させるためには、第1ヒンジシャフトに設けられている第1ギア,第1ギアと噛み合わされる中間ギアの一方のギア,第2ヒンジシャフトに設けられている第2ギア及び第2ギアと噛み合わされる中間ギアの他方のギアの位置関係を高精度で調整する必要がある。このため、特許文献1に記載されている2軸ヒンジ機構の組み立てには、多くの手間と時間を要すると考えられる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、一対のヒンジ軸の回転角度を容易かつ確実に一致させることができる2軸ヒンジ機構を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の2軸ヒンジ機構は、一対のヒンジ軸を有する2軸ヒンジ機構であって、回転自在に支持されるウォームホイールと、前記ウォームホイールの一側に配置される第1多条ウォーム及び前記ウォームホイールの他側に配置される第2多条ウォームと、前記第1多条ウォームに相対回転不能に結合される第1ヒンジ軸と、前記第2多条ウォームに相対回転不能に結合される第2ヒンジ軸と、を有する。前記ウォームホイールの歯数は偶数とされ、前記第1多条ウォーム及び前記第2多条ウォームの条数も偶数とされる。また、前記第1多条ウォーム及び前記第2多条ウォームは、同一形状の筒状ウォームであって、前記ウォームホイールの中心点について対称に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】2軸ヒンジ機構の平面図である。
図2】2軸ヒンジ機構の分解斜視図である。
図3】2軸ヒンジ機構の初期状態を示す斜視図である。
図4】2軸ヒンジ機構の180度展開状態を示す斜視図である。
図5】2軸ヒンジ機構の360度展開状態を示す斜視図である。
図6図1図5に示される2軸ヒンジ機構を備える携帯情報端末の斜視図である。
図7図1図5に示される2軸ヒンジ機構を備える携帯情報端末の他の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明が適用された2軸ヒンジ機構の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示されるように、本実施形態に係る2軸ヒンジ機構1は、ウォームホイール2と,ウォームホイール2の一側に設けられた第1ヒンジ軸ユニット3Aと,ウォームホイール2の他側に設けられた第2ヒンジ軸ユニット3Bと、から構成されている。
【0012】
図2に示されるように、一対のヒンジ軸ユニット3A,3Bの間に介在するウォームホイール2は、歯すじが回転軸Xに対して斜めのギア歯が複数形成された金属製の外歯車であって、回転自在に支持されている。具体的には、ウォームホイール2の中心を貫通する軸ピン2aの先端が、フレーム4の底壁5に開口されている貫通孔5aに固定されている。本実施形態では、軸ピン2aの先端が貫通孔5aに圧入されているが、軸ピン2aの先端は、他の固定方法(例えば、カシメ)によってフレーム4の底壁5に固定してもよい。
【0013】
図1図2に示されているウォームホイール2の歯数は偶数である。具体的には、ウォームホイール2の歯数は「16」である。よって、ウォームホイール2のギア歯の位置は、当該ウォームホイール2の中心点P(図1)を通り、かつ、当該ウォームホイール2の回転軸X(図2)と直交する仮想線分A-A(図1)について対称である。言い換えれば、ウォームホイール2のギア歯の位置は、図1に示されている仮想線分A-Aを対称軸として線対称である。
【0014】
図1図2に示されるように、第1ヒンジ軸ユニット3A及び第2ヒンジ軸ユニット3Bは、同一の構成を有する。図2に示されるように、第1ヒンジ軸ユニット3Aは、第1ヒンジ軸11,第1連結プレート21,第1多条ウォーム31,第1ストッパ41及び複数のワッシャ51を含んでいる。同様に、第2ヒンジ軸ユニット3Bは、第2ヒンジ軸12,第2連結プレート22,第2多条ウォーム32,第2ストッパ42及び複数のワッシャ52を含んでいる。
【0015】
上記のとおり、第1ヒンジ軸ユニット3A及び第2ヒンジ軸ユニット3Bは、同一の構成を有する。そこで、主に第1ヒンジ軸ユニット3Aの構成についてさらに詳細に説明することにより、第2ヒンジ軸ユニット3Bの構成についても明らかにする。
【0016】
図2に示されるように、第1ヒンジ軸ユニット3Aに含まれる第1ヒンジ軸11は、第1連結プレート21が固定される固定部11aと、固定部11aの一方の端面から伸びる連結軸部11bと、を備えている。固定部11aの形状は概ね円柱形であるが、外周面の一部に平坦な固定面が設けられている。第1連結プレート21は、固定面にあてがわれ、リベット61によって固定部11aに固定されている。尚、第2ヒンジ軸ユニット3Bの第2連結プレート22は、固定部12aの固定面にあてがわれ、リベット62によって固定部12aに固定されている。もっとも、リベット61,62は、ボルト等に置換してもよい。
【0017】
図1図2に示されるように、第1多条ウォーム31及び第2多条ウォーム32は、フレーム4の側壁6と、当該側壁6と対向する第2のフレーム7との間に配置され、ウォームホイール2と噛み合わされている。以下の説明では、第2のフレーム7を“押えプレート7”と呼ぶ場合がある。つまり、第1多条ウォーム31及び第2多条ウォーム32は、フレーム4の側壁6と、当該側壁6と対向する押えプレート7との間に配置されている。
【0018】
図2に示されるように、第1多条ウォーム31には挿入孔31aが設けられている。挿入孔31aは、図1に示されている第1多条ウォーム31の回転軸Y1と同軸であって、第1多条ウォーム31を軸方向に貫通している。尚、図2に示されている挿入孔32aは、図1に示されている第2多条ウォーム32の回転軸Y2と同軸であって、第2多条ウォーム32を軸方向に貫通している。
【0019】
図2に示されるように、第1多条ウォーム31の挿入孔31aは、フレーム4の側壁6に設けられている連通孔6aと連通しており、かつ、押えプレート7に設けられている連通孔7aとも連通している。つまり、連通孔6a,挿入孔31a及び連通孔7aは、互いに連通して一連の貫通孔を形成している。尚、第1多条ウォーム31の一端とフレーム4の側壁6との間にはワッシャ51aが介在しており、第1多条ウォーム31の他端と押えプレート7との間には他のワッシャ51bが介在している。
【0020】
第1ヒンジ軸11の連結軸部11bは、連通孔6a,挿入孔31a及び連通孔7aからなる一連の貫通孔に挿通されている。つまり、連結軸部11bは、フレーム4の側壁6,第1多条ウォーム31及び押えプレート7を貫通している。さらに、押えプレート7を貫通して当該押えプレート7から突出している連結軸部11bの先端は、第1ストッパ41の嵌合孔41aに挿入されている。言い換えれば、押えプレート7から突出している連結軸部11bの先端に第1ストッパ41が嵌められている。つまり、第1ヒンジ軸11の連結軸部11bは、フレーム4の側壁6,第1多条ウォーム31,押えプレート7及び第1ストッパ41を串刺しにしている。連結軸部11bの先端に嵌められている第1ストッパ41は、連結軸部11bの抜け止めとしての役割を有する。尚、第2ヒンジ軸12の連結軸部12bは、フレーム4の側壁6,第2多条ウォーム32,押えプレート7及び第2ストッパ42を串刺しにしており、第2ストッパ42は、連結軸部12bの抜け止めとしての役割を有する。
【0021】
図2に示されるように、第1ヒンジ軸11の固定部11aの端面とフレーム4の側壁6との間にはワッシャ51cが介在しており、押えプレート7と第1ストッパ41との間には他のワッシャ51dが介在している。第1ヒンジ軸11の連結軸部11bは、これらワッシャ51c,51dを含む第1ヒンジ軸ユニット3Aに含まれる全てのワッシャ51を貫通している。
【0022】
ここで、連結軸部11bの断面形状は非円形である。具体的には、連結軸部11bの断面形状は、互いに平行な2つの平坦部を含む略小判形である。また、第1多条ウォーム31の挿入孔31a及び第1ストッパ41の嵌合孔41aは、連結軸部11bの断面形状と同一又は実質的に同一の非円形に形成されている。よって、第1ヒンジ軸11,第1多条ウォーム31及び第1ストッパ41は、相対回転不能に結合している。言い換えれば、第1ヒンジ軸11,第1多条ウォーム31及び第1ストッパ41は、一体的に回転する。
【0023】
一方、フレーム4及び押えプレート7の連通孔6a,7aやワッシャ51は、連結軸部11bを遊嵌可能な大きさの円形に形成されている。そして、第1ヒンジ軸11の固定部11aとフレーム4の側壁6との間に介在しているワッシャ51cは、固定部11aと側壁6との摩擦を低減し、連結軸部11bの円滑な回転を確保する役割を有する。また、第1多条ウォーム31の一方の端面とフレーム4の側壁6との間に介在しているワッシャ51aは、第1多条ウォーム31の端面と側壁6との摩擦を低減し、第1多条ウォーム31の円滑な回転を確保する役割を有する。同じく、第1多条ウォーム31の他方の端面と押えプレート7との間に介在しているワッシャ51bは、第1多条ウォーム31の端面と押えプレート7との摩擦を低減し、第1多条ウォーム31の円滑な回転を確保する役割を有する。さらに、押えプレート7と第1ストッパ41との間に介在しているワッシャ51dは、押えプレート7と第1ストッパ41との摩擦を低減し、第1ストッパ41の円滑な回転を確保する役割を有する。
【0024】
以上のように、図1に示されているウォームホイール2,第1多条ウォーム31及び第2多条ウォーム32は、フレーム4,7に回転自在に搭載されている。さらに、ウォームホイール2のギア歯と第1多条ウォーム31のギア歯とは互いに噛み合っており、また、ウォームホイール2のギア歯と第2多条ウォーム32のギア歯とは互いに噛み合っている。この結果、第1多条ウォーム31を含む第1ヒンジ軸ユニット3Aと第2多条ウォーム32を含む第2ヒンジ軸ユニット3Bとは、1つのウォームホイール2を介して動力伝達可能に連関している。具体的には、第1多条ウォーム31の回転は、ウォームホイール2を介して第2多条ウォーム32に伝達され、第2多条ウォーム32の回転は、ウォームホイール2を介して第1多条ウォーム31に伝達される。つまり、第1多条ウォーム31と第2多条ウォーム32とは、同期して互いに逆方向に回転する。さらに、第1多条ウォーム31と一体回転する第1ヒンジ軸11及び第1ヒンジ軸11に固定されている第1連結プレート21と、第2多条ウォーム32と一体回転する第2ヒンジ軸12及び第2ヒンジ軸12に固定されている第2連結プレート22とは、同期して互いに逆方向に回転する。
【0025】
ここで、第1多条ウォーム31及び第2多条ウォーム32は、同一形状の筒状ウォームであって、その条数は偶数である。さらに、第1多条ウォーム31及び第2多条ウォーム32は、ウォームホイール2の中心点Pについて対称に配置されている。具体的には、第1多条ウォーム31及び第2多条ウォーム32は、同一の金型を用いて作られた同一のウォームであって、中心点Pを対称の中心として対称に配置されている。つまり、第1多条ウォーム31及び第2多条ウォーム32は、中心点Pを中心として180度回転させると互いに重なり合う対称性を有する。また、既述のとおり、ウォームホイール2のギア歯の位置は、中心点Pを通り、かつ、回転軸Xと直交する仮想線分A-Aについて対称である。したがって、ウォームホイール2,第1多条ウォーム31及び第2多条ウォーム32を噛み合わせるだけで、容易かつ正確に第1ヒンジ軸11及び第2ヒンジ軸12の回転角度を一致させることができ、ひいては、第1連結プレート21及び第2連結プレート22の回転角度を一致させることができる。
【0026】
次に、主に図3図4及び図5を参照しながら2軸ヒンジ機構1の動作について説明する。以下の説明では、図3中で第2連結プレート22と対向している第1連結プレート21の主面を“表面21a”と呼び、第1連結プレート21と対向している第2連結プレート22の主面を“表面22a”と呼ぶ場合がある。また、図5中で第2連結プレート22と対向している第1連結プレート21の主面を“裏面21b”と呼び、第1連結プレート21と対向している第2連結プレート22の主面を“裏面22b”と呼ぶ場合がある。
【0027】
図4に示されている状態では、図3に示されている状態と比較して、第1連結プレート21は矢印a方向に90度回転し、第2連結プレート22は矢印b方向に90度回転している。つまり、図3に示されている状態における第1連結プレート21及び第2連結プレート22の回転角度を0度とすると、第1連結プレート21及び第2連結プレート22は、合計で180度回転している。そこで、以下の説明では、図3に示されている状態を“初期状態”と呼び、図4に示されている状態を“180度展開状態”と呼ぶ場合がある。
【0028】
図5に示されている状態では、初期状態(図3)と比較して、第1連結プレート21は矢印a方向に180度回転し、第2連結プレート22は矢印b方向に180度回転している。つまり、第1連結プレート21及び第2連結プレート22は、初期状態に対して合計で360度回転している。そこで、以下の説明では、図5に示されている状態を“360度展開状態”と呼ぶ場合がある。
【0029】
本実施形態に係る2軸ヒンジ機構1では、初期状態(図3)の第1連結プレート21と第2連結プレート22のいずれか一方が180度展開状態(図4)に移行する際、第1連結プレート21と第2連結プレート22のいずれか他方も同期して180度展開状態(図4)に移行する。また、180度展開状態(図4)の第1連結プレート21と第2連結プレート22のいずれか一方が360度展開状態(図5)に移行する際、第1連結プレート21と第2連結プレート22のいずれか他方も同期して360度展開状態に移行する。さらに、第1連結プレート21と第2連結プレート22のいずれか一方が360度展開状態(図5)から180度展開状態(図4)や初期状態(図3)に移行する際(復帰する際)、第1連結プレート21と第2連結プレート22のいずれか他方も同期して同じ状態に移行する。
【0030】
上記のような同期は、第1多条ウォーム31を含む第1ヒンジ軸ユニット3Aと第2多条ウォーム32を含む第2ヒンジ軸ユニット3Bとが1つのウォームホイール2を介して動力伝達可能に連関していることによって実現される。本実施形態に係る2軸ヒンジ機構1では、一対のヒンジ軸ユニット3A,3Bが1つのウォームホイール2のみによって動力伝達可能に接続されているので、一対のヒンジ軸ユニット3A,3Bが少ない部品点数によって確実かつ正確に同期される。
【0031】
図6図7に、本実施形態に係る2軸ヒンジ機構1を有する携帯情報端末100を示す。図示されている携帯情報端末100は、ノート型PC(Personal Computer)である。
【0032】
図6図7に示されるように、携帯情報端末100は、操作部としてのキーボード101が設けられた第1筐体111と、表示部としての液晶ディスプレイ102が設けられた第2筐体112と、を有する。そして、第1筐体111と第2筐体112とが、本実施形態に係る2軸ヒンジ機構1によって相対回転可能(開閉可能)に連結されている。尚、携帯情報端末100には2つの2軸ヒンジ機構1が用いられている。具体的には、第1筐体111及び第2筐体112の隣接する端部の長手方向一端側が1つの2軸ヒンジ機構1によって連結され、第1筐体111及び第2筐体112の隣接する端部の長手方向他端側が他の1つの2軸ヒンジ機構1によって連結されている。
【0033】
図6図7には模式的に示されているが、それぞれの2軸ヒンジ機構1の一方の連結プレート(第1連結プレート21又は第2連結プレート22)が第1筐体111の端部に固定されており、それぞれの2軸ヒンジ機構1の他方の連結プレート(第2連結プレート22又は第1連結プレート21)が第2筐体112の端部に固定されている。したがって、第1筐体111又は第2筐体112を回転させると、それぞれの2軸ヒンジ機構1が初期状態(図3),180度展開状態(図4)又は360度展開状態(図5)から他の状態に移行する。この結果、第1筐体111及び第2筐体112が同期して互いに逆向きに回転する。
【0034】
例えば、図7に示されるように第1筐体111と第2筐体112とが閉じられているとき、それぞれの2軸ヒンジ機構1は、図3に示されている初期状態にある。そして、図7に示されている第2筐体112を第1筐体111に対して90度回転させると、それぞれの2軸ヒンジ機構1は、初期状態(図3)から180度展開状態(図4)に移行する。すると、第1筐体111も第2筐体112に対して90度回転する。つまり、第1筐体111及び第2筐体112が同期して互いに逆向きに90度回転する。この結果、第1筐体111及び第2筐体112は、キーボード101と液晶ディスプレイ102とが成す角度が180度又は概ね180度になるまで開かれる。尚、このようにして開かれた第1筐体111と第2筐体112のいずれか一方を逆向きに90度回転させれば、第1筐体111及び第2筐体112は、図7に示されるように閉じられる。
【0035】
また、図7に示されている第2筐体112を第1筐体111に対して180度回転させると、それぞれの2軸ヒンジ機構1は、初期状態(図3)から180度展開状態(図4)を経て360度展開状態(図5)に移行する。すると、第1筐体111も第2筐体112に対して180度回転する。つまり、第1筐体111及び第2筐体112が同期して互いに逆向きに180度回転する。この結果、第1筐体111及び第2筐体112は、互いに背中合わせになるまで開かれる。尚、このようにして開かれた第1筐体111と第2筐体112のいずれか一方を逆向きに180度回転させれば、第1筐体111及び第2筐体112は、図7に示されるように閉じられる。このとき、それぞれの2軸ヒンジ機構1は、360度展開状態(図5)から180度展開状態(図4)を経て初期状態(図3)に移行する。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施形態におけるウォームホイール2の歯数や第1多条ウォーム31及び第2多条ウォーム32の条数は、偶数であることを条件に適宜変更することができる。ウォームホイール2,第1多条ウォーム31及び第2多条ウォーム32の全部又は一部は樹脂製であってもよい。第1連結プレート21や第2連結プレート22の形状や大きさは、これらが連結される対象物に応じて適宜変更することができる。
【0037】
また、本発明の他の実施形態に係る2軸ヒンジ機構は、第1ヒンジ軸及び第2ヒンジ軸が任意の回転角度で一時的に止まる停止機構を有していてもよい。つまり、本発明の2軸ヒンジ機構には、トルクヒンジが含まれる。かかる2軸ヒンジ機構が用いられた携帯情報端末のユーザは、当該携帯情報端末の筐体を任意の角度に開いた状態のまま当該携帯情報端末を操作することができる。
【0038】
本発明に係る2軸ヒンジ機構は、ノート型PC以外の携帯情報端末に用いることもできる。例えば、本発明に係る2軸ヒンジ機構は、折り畳み型の携帯電話機やタブレット等に用いることができる。もっとも、本発明に係る2軸ヒンジ機構の用途、ノート型PCやタブレット等の携帯情報端末に限られるものではない。
【符号の説明】
【0039】
1:2軸ヒンジ機構、2:ウォームホイール、2a:軸ピン、3A:第1ヒンジ軸ユニット、3B:第2ヒンジ軸ユニット、4:フレーム、5:底壁、5a:貫通孔、6:側壁、6a:連通孔、7:第2のフレーム(押えプレート)、7a:連通孔、11:第1ヒンジ軸、11a:固定部、11b:連結軸部、12:第2ヒンジ軸、12a:固定部、12b:連結軸部、21:第1連結プレート、22:第2連結プレート、21a,22a:表面、21b,22b:裏面、31:第1多条ウォーム、31a:挿入孔、32:第2多条ウォーム、32a:挿入孔、41:第1ストッパ、41a:嵌合孔、42:第2ストッパ、51,51a,51b,51c,51d,52:ワッシャ、61,62:リベット、100:携帯情報端末、101:キーボード、102:液晶ディスプレイ、111:第1筐体、112:第2筐体、A-A:仮想線分、P:中心点、X,Y1,Y2:回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7