IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本プラスト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-カウルカバー 図1
  • 特許-カウルカバー 図2
  • 特許-カウルカバー 図3
  • 特許-カウルカバー 図4
  • 特許-カウルカバー 図5
  • 特許-カウルカバー 図6
  • 特許-カウルカバー 図7
  • 特許-カウルカバー 図8
  • 特許-カウルカバー 図9
  • 特許-カウルカバー 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】カウルカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240229BHJP
   B60H 1/26 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B62D25/08 H
B60H1/26 621Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020147361
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042120
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】松永 博
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-23177(JP,A)
【文献】特開2016-215714(JP,A)
【文献】特開2013-60157(JP,A)
【文献】特開2016-222081(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0836101(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0231037(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004062629(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/00
B60H 1/26
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気導入用の開口部を有し、ウインドシールドと相手部材との間のカウル部を覆う本体部と、
この本体部に対し背面側に位置し、前記開口部から侵入した水を排水する遮水部と、
この遮水部の前部を前記本体部に対し係止する前側係止部と、
前記遮水部の後部を前記本体部に対し係止する後側係止部と、を備え、
前記前側係止部と前記後側係止部とのいずれか一方は、孔部を備え、前記本体部と前記遮水部の前部との少なくともいずれか一方に形成された受け部と、この受け部の前記孔部に挿入されて前記孔部に固定される挿入部と、前記受け部にて前記孔部を囲んで形成され、前記本体部に対する表面側からの所定の荷重の入力により破断可能な弱部と、を備え、前記本体部に対する表面側からの所定の荷重の入力による前記弱部の破断によって係止が解除される
ことを特徴とするカウルカバー。
【請求項2】
遮水部は、前側係止部と後側係止部とのいずれか一方の係止が解除された状態で他方を起点として一方側が本体部から離れる方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項1記載のカウルカバー。
【請求項3】
前側係止部による遮水部の前部の本体部への取り付け方向と、後側係止部による前記遮水部の後部の前記本体部への取り付け方向と、は、同一方向、または、反対方向である
ことを特徴とする請求項1または2記載のカウルカバー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気導入用の開口部を有するカウルカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のウインドシールドであるフロントガラスの前端部と相手部材であるボンネットフードの後側部との間のいわゆるカウル部に配置され、このカウル部を覆って外観を向上するカウルカバーが用いられている。
【0003】
カウルカバーには、車室内の空調装置の空気取入部へと空気を取り入れるための開口部としての空気取入口が開口されている。この空気取入口の背後には、遮水部が配置され、空気取入口からカウル部内へと水が侵入しないように構成されている。
【0004】
遮水部としては、車幅方向に延びる板状のものが用いられ、カウルカバーの本体部の背面側に設定されたリブにその上端部が嵌合されるとともに、下端部が屈曲されたものが知られている。そして、カウルカバーの表面側から衝撃を受けた際には、遮水部の下端部がフロントカウルに接触し、フロントカウルに対し摺動しながら変形することで、遮水部の上端部の本体部への嵌合が解除されて遮水部が本体部から離脱し、反力を低減させる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-60158号公報 (第5-8頁、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば高圧洗浄機や洗車機など高圧で勢いよく放出される水が空気取入口から侵入した場合、遮水部やフロントカウルに跳ね返り、飛沫が様々な方向へ飛散する。遮水部を板状に形成する場合、遮水が基本的に一方向のみであるから、このように複数方向から侵入してくると、効果的に遮水することが困難である。また、排水位置を、車両前後方向のみでしか規制することができない。
【0007】
そこで、車両前後方向だけでなく、幅方向及び高さ方向での遮水が必要な場合には、遮水部を箱形状にすることが考えられる。しかしながら、このような箱形状の遮水部を本体部の背面側に強固に固定すると、カウルカバーの断面が箱断面形状となり、剛性が増加することで反力が増大することが懸念される。
【0008】
他方、反力を低下させるために遮水部を本体部に対し片持ち固定とすると、カウルカバーの固有振動数が低くなることで車体振動などと共振し、大きな応力が繰り返し作用することにより低級音の発生や遮水部の固定部の破損が懸念される。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、開口部から侵入した水のカウル部への侵入を抑制しつつ効果的に排水できるとともに、表面側から入力された荷重に対する反力を抑制できるカウルカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載のカウルカバーは、外気導入用の開口部を有し、ウインドシールドと相手部材との間のカウル部を覆う本体部と、この本体部に対し背面側に位置し、前記開口部から侵入した水を排水する遮水部と、この遮水部の前部を前記本体部に対し係止する前側係止部と、前記遮水部の後部を前記本体部に対し係止する後側係止部と、を備え、前記前側係止部と前記後側係止部とのいずれか一方は、孔部を備え、前記本体部と前記遮水部の前部との少なくともいずれか一方に形成された受け部と、この受け部の前記孔部に挿入されて前記孔部に固定される挿入部と、前記受け部にて前記孔部を囲んで形成され、前記本体部に対する表面側からの所定の荷重の入力により破断可能な弱部と、を備え、前記本体部に対する表面側からの所定の荷重の入力による前記弱部の破断によって係止が解除されるものである。
【0011】
請求項2記載のカウルカバーは、請求項1記載のカウルカバーにおいて、遮水部は、前側係止部と後側係止部とのいずれか一方の係止が解除された状態で他方を起点として一方側が本体部から離れる方向に移動可能であるものである。
【0012】
請求項3記載のカウルカバーは、請求項1または2記載のカウルカバーにおいて、前側係止部による遮水部の前部の本体部への取り付け方向と、後側係止部による前記遮水部の後部の前記本体部への取り付け方向と、は、同一方向、または、反対方向であるものである
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のカウルカバーによれば、本体部と遮水部とによって箱断面形状を構成できるので、開口部から複数方向に侵入した水を遮水部によって受けて、カウル部への水の侵入を防止しつつ、意図する方向に効果的に排水できるとともに、本体部に対し表面側から所定の荷重が入力されたときには、弱部の破断によって本体部と遮水部とによる箱断面形状を解除できて強度を低下させることができ、表面側から入力された荷重に対する反力を抑制できる。
【0014】
請求項2記載のカウルカバーによれば、請求項1記載のカウルカバーの効果に加えて、本体部に対し表面側から所定の荷重が入力されたときに、本体部と遮水部とによる箱断面形状をより確実に解除できて、強度をより確実に低下させることができる。
【0015】
請求項3記載のカウルカバーによれば、請求項1または2記載のカウルカバーの効果に加えて、遮水部を本体部に取り付ける際に、遮水部を本体部に向かって接近させる一方向の作業で完結することができ、作業性に優れる
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態のカウルカバーを示す図4のI-I相当位置の断面図である。
図2】同上カウルカバーの図4のII-II相当位置の断面図である。
図3】同上カウルカバーの図4のIII-III相当位置の断面図である。
図4】同上カウルカバーを表面側から示す分解斜視図である。
図5】同上カウルカバーの一部を背面側から示す斜視図である。
図6】同上カウルカバーを備える車両を示す斜視図である。
図7】本発明の第2の実施の形態のカウルカバーの一部を示す断面図である。
図8】本発明の第3の実施の形態のカウルカバーの一部を背面側から示す斜視図である。
図9】本発明の第4の実施の形態のカウルカバーの一部を背面側から示す斜視図である。
図10】本発明の第5の実施の形態のカウルカバーの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図6において、10は車両である自動車の車体である。車体10には、エンジンルーム11を覆う相手部材としてのフード12と、車室13の前側に位置するウインドシールドとしてのフロントガラス14と、の間のカウル部15を覆って車両用部品としてのカウルカバー16が配置されている。なお、以下、前後、上下、及び両側などの方向については、車体10の直進方向を基準として説明し、矢印FR方向が前方、矢印RR方向が後方、矢印U方向が上方、矢印D方向が下方、矢印L方向が車幅方向左方、矢印Rが車幅方向右方である。図示される例では、自動車として右ハンドル車を例に挙げて説明するが、左ハンドル車の場合には単に左右方向を反転すればよいので、説明を省略する。
【0019】
カウル部15は、エアボックスなどとも呼ばれるもので、図2に示すように、例えば鉄板にて形成された車体部材としてのフロントカウル17により、上側を開口した樋状に形成されている。そして、このカウル部15には、車室13(図1)内に外気を導入する空調装置の空気取入部(エアインテーク)18が前後方向に開口されているとともに、このカウル部15の一側には、図示しないワイパのワイパアームを駆動するモータやワイパリンクなどが配置されている。
【0020】
図6に示すフード12は、車体10の前部に位置してエンジンルーム11を開閉可能に覆うボンネットフードである。
【0021】
そして、カウルカバー16は、カウルトップカバーとも呼ばれ、図1に示すように、フロントガラス14とフード12との間のカウル部15すなわちフロントカウル17の上側を覆って外観を向上するものである。カウルカバー16の前側の上部にフード12が位置する。図4に示すように、カウルカバー16は、本体部21と、この本体部21の背面側すなわち下部に位置する遮水部22と、を備える。そして、図5に示すように、本体部21に対し、遮水部22が、前側係止部23と、後側係止部24と、により係止固定されている。
【0022】
本体部21は、合成樹脂などの部材により長手状に形成されている。本体部21は、車幅方向に長手状となっている。図1及び図3に示すように、本体部21は、フロントガラス14と略平行に傾斜して長手方向に連続して形成されている。また、本体部21のフロントガラス14に対向する後部には、保持部26が突設されている。保持部26は、本体部21との間でフロントガラス14の前縁部を受ける部分である。保持部26は、本体部21の下部から後方に向けて突設されている。保持部26は、本体部21の後縁部全体に亘り形成されていてもよいし、本体部21の長手方向に間欠的に複数の箇所に形成されていてもよい。
【0023】
また、本体部21の前部には、隔壁部28が形成されている。隔壁部28は、カウル部15とエンジンルーム11との間に介在される。隔壁部28は、本体部21の前部にて下方に延びている。隔壁部28は、車幅方向に連なって形成されている。隔壁部28の下端部は、フロントカウル17の上部に支持されている。
【0024】
さらに、本体部21の前部には、対向部であるフードシール面部31が形成されている。フードシール面部31は、本体部21の前部にて隔壁部28の上部の位置から前方に平面状に延びて形成されている。フードシール面部31は、エンジンルーム11を閉塞したフード12の下部に対向する位置にある。フードシール面部31の上部には、フード12の後部下面に圧接される図示しないフードシールが取り付けられている。そして、フードシールが、閉じた状態のフード12に液密に密着することで、エンジンルーム11からの熱気や臭気を遮蔽するようになっている。
【0025】
また、図4に示すように、本体部21には、ワイパピボット穴部33が形成されている。ワイパピボット穴部33には、ワイパ装置のシャフトが挿通される。本実施の形態において、ワイパピボット穴部33は、本体部21の長手方向の一端寄り、つまり車幅方向の一側(図中では右側)に偏って複数形成されている。ワイパピボット穴部33は、本体部21を貫通して形成されている。
【0026】
さらに、本体部21には、カウル部15(図2)、特に空気取入部18(図2)に外気を導入可能な開口部としての空気取入口35が形成されている。空気取入口35は、本体部21の長手方向の他端寄り、つまり車幅方向の他側(図中では左側)に偏って形成されている。すなわち、本実施の形態において、空気取入口35は、ワイパピボット穴部33とは反対側に配置されている。空気取入口35は、隔壁部28よりも後方の位置に形成されている。空気取入口35は、前後方向及び左右方向に所定の範囲に配置されている。空気取入口35は、本体部21の長手方向に分布している。図示される例では、空気取入口35は、格子状のリブ36により複数に分割されている。本実施の形態では、空気取入口35は、前後方向及び左右方向に複数並んで配置され、リブ36によって互いに仕切られている。リブ36は、本体部21の表面側から裏面側に向かって屈曲されて形成されている。
【0027】
また、本実施の形態において、図2に示すように、本体部21には、空気取入口35に近接する位置に、遮水リブ38が形成されている。遮水リブ38は、本体部21の背面側から下方、つまり遮水部22に向かって突設されている。遮水リブ38は、リブ36よりも本体部21からの突出長さが大きい。図示される例では、遮水リブ38の長さは、リブ36の二倍程度となっている。また、遮水リブ38は、空気取入口35に対し、車幅方向内方に位置している。遮水リブ38は、車幅方向に離れて複数形成されている。
【0028】
そして、図1ないし図3に示す遮水部22は、空気取入口35から侵入した水Wを排水するものである。遮水部22は、合成樹脂などの部材により形成されている。本実施の形態において、遮水部22は、本体部21に対向する上側が開口した箱状に形成されている。そのため、遮水部22の前部及び後部が本体部21に対して前側係止部23及び後側係止部24により係止された状態で、カウルカバー16の断面が箱断面形状となっている。
【0029】
遮水部22は、遮水部本体部41と、遮水部本体部41から外方に延出するフランジ部42と、遮水部本体部41及び/またはフランジ部42から立ち上がる立壁部43と、を一体的に有する。
【0030】
遮水部本体部41は、空気取入口35から侵入した水Wを直接受ける部分である。つまり、遮水部本体部41は、空気取入口35の少なくとも一部に直接対向して位置する。遮水部本体部41は、本体部21に対して下方に離れて位置する。遮水部本体部41は、受けた水を車幅方向外方に向かって排出する機能を有する。遮水部本体部41は、樋状に形成されている。遮水部本体部41は、車幅方向に長手状に形成されている。本実施の形態において、遮水部本体部41は、断面コ字状の樋部45と、樋部45に連なる傾斜状のガイド部46と、を一体的に備える。
【0031】
樋部45は、カウル部15にて空気取入口35の車幅方向外方に形成された排出部48と連通し、水Wをこの排出部48へと排出する。この排出部48は、樋部45の下部とフロントカウル17との間を介して空気取入部18と連通し、水Wを車外に排出する。樋部45は、車幅方向に延びる底面部45aと、この底面部45aの前後部及び車幅方向内方から本体部21に向かって立ち上がる側面部45bと、を一体的に備える。底面部45aは、本体部21の背面側に対向して配置され、車幅方向内方から外方に向かい徐々に下方へと傾斜している。この底面部45aに沿って、水Wの排水方向DD(図2)が定義される。本実施の形態において、底面部45aは、空気取入口35の車幅方向内側部の位置から、車幅方向外側部近傍の位置に亘り位置する。すなわち、底面部45aは、空気取入口35のうち、車幅方向外側部の一部には対向せずに位置している。つまり、空気取入口35のうち、車幅方向外側部の一部は、直接排出部48と連通している。
【0032】
ガイド部46は、板状に形成されている。ガイド部46は、樋部45の前側の側面部45bに連なって形成されている。ガイド部46は、本体部21の背面側に対向して配置され、樋部45に向かって、前側から後側に、つまり樋部45に向かって、徐々に下方へと傾斜している。
【0033】
フランジ部42は、本実施の形態において、遮水部本体部41の後部から車幅方向の内側部に亘り連なって形成されている。図4及び図5に示すでは、フランジ部42は、樋部45の側面部45bに対し、後部から車幅方向内側部に亘り連なっている。フランジ部42は、面状に形成され、本体部21の背面側に対向して位置する。フランジ部42は、後部において、本体部21の保持部26の背面側に対向して位置する。また、フランジ部42は、図2に示すように、車幅方向内側部において、遮水リブ38の先端部に近接または当接して位置し、遮水リブ38よりも車幅方向内方に延びている。
【0034】
図4及び図5に示すように、立壁部43は、遮水部22において、前部が遮水部本体部41の前部から、側部及び後部がフランジ部42から、それぞれ立ち上がっている。図3に示すように、立壁部43は、前部において、本体部21の空気取入口35の前方に位置している。立壁部43は、前部において、最前部に位置するリブ36と上下方向にラップして位置する(矢印OL1)。また、立壁部43は、後部において、本体部21の保持部26の下部に近接して位置する。さらに、立壁部43は、図2に示すように、車幅方向内側部において、遮水リブ38に対して車幅方向内方に位置し、かつ、遮水リブ38と上下方向にラップしている(矢印OL2)。
【0035】
図5に示す前側係止部23は、遮水部22の前部を本体部21に対し係止する部分である。本実施の形態において、前側係止部23は、車幅方向の複数の位置に互いに離れて配置されている。図示される例では、前側係止部23は、左右二箇所に配置されている。
【0036】
前側係止部23は、本体部21と遮水部22との少なくともいずれか一方、本実施の形態では遮水部22に形成された受け部である前側受け部51を備える。図示される例では、前側受け部51は、フランジ部42の一部と、ガイド部46の一部と、に形成されている。前側受け部51は、フランジ部42と平行または略平行な平面状に形成された受け座である。図1に示すように、前側受け部51には、孔部である前側孔部52が形成されている。前側孔部52は、前側受け部51を貫通して形成されている。
【0037】
また、前側係止部23は、前側受け部51の前側孔部52に挿入されて前側孔部52に固定される挿入部である前側挿入部53を備える。前側挿入部53は、本体部21と遮水部22との他方に形成されている。つまり、本実施の形態において、前側挿入部53は、本体部21に形成されている。前側挿入部53は、前側受け部51に対して垂直または略垂直な方向に沿って延び、前側孔部52に挿入されている。すなわち、前側挿入部53は、遮水部22による排水方向DD(図2)に対して交差または直交する方向に前側孔部52へと挿入される。図示される例では、前側挿入部53は、ボス状に形成されている。前側挿入部53は、空気取入口35に対し、車幅方向内方に近接する位置に形成されている。
【0038】
そして、本実施の形態において、前側挿入部53は、前側孔部52から突出する先端部が前側受け部51の背面側に溶着されて固定されている。この前側挿入部53の前側孔部52に対する固定は、本体部21に対する表面側からの所定の荷重Pの入力により破壊されるように構成されている。すなわち、前側係止部23は、本体部21に対する表面側からの所定の荷重Pの入力により係止が解除されるように構成されている。所定の荷重Pとは、本体部21を変形させる程度の荷重をいう。
【0039】
後側係止部24は、遮水部22の後部を本体部21に対し係止する部分である。本実施の形態において、後側係止部24は、車幅方向の複数の位置に互いに離れて配置されている。図5に示す例では、後側係止部24は、左右二箇所に配置されている。後側係止部24は、車幅方向において、前側係止部23,23間にそれぞれ配置されている。
【0040】
後側係止部24は、本体部21と遮水部22との少なくともいずれか一方、本実施の形態では遮水部22に形成された後側受け部55を備える。図示される例では、後側受け部55は、フランジ部42の一部に形成されている。後側受け部55は、フランジ部42と平行又は略平行な平面状に形成された受け座である。後側受け部55には、後側孔部56が形成されている。後側孔部56は、後側受け部55を貫通して形成されている。
【0041】
また、後側係止部24は、後側受け部55の後側孔部56に挿入されて後側孔部56に固定される後側挿入部57を備える。後側挿入部57は、本体部21と遮水部22との他方に形成されている。つまり、本実施の形態において、後側挿入部57は、本体部21に形成されている。図1に示すように、後側挿入部57は、後側受け部55に対して垂直または略垂直な方向に沿って延び、後側孔部56に挿入されている。すなわち、後側挿入部57は、遮水部22による排水方向DD(図2)に対して交差または直交する方向に後側孔部56へと挿入される。したがって、後側係止部24による遮水部22の後部の本体部21への取り付け方向である後側挿入部57の後側孔部56への挿入方向と、前側係止部23による遮水部22の前部の本体部21への取り付け方向である前側挿入部53の前側孔部52への挿入方向とは、互いに同一方向となっている。本実施の形態において、後側挿入部57は、保持部26の下部に突設されている。
【0042】
図示される例では、後側挿入部57は、車幅方向に延びる板状に形成され、板厚方向に爪部57aが突設されている。爪部57aは、後側挿入部57の後部に位置する。つまり、爪部57aは、後側挿入部57から見て、前側挿入部53及び前側係止部23に対して反対側に位置する。そして、本実施の形態において、後側挿入部57は、後側孔部56の縁部に対して爪部57aが係合することで固定されている。
【0043】
前側係止部23による遮水部22の本体部21に対する係止と、後側係止部24による遮水部22の本体部21に対する係止と、は、いずれか一方が他方よりも弱く設定されている。本実施の形態では、後側係止部24による遮水部22の本体部21に対する係止が、前側係止部23による遮水部22の本体部21に対する係止よりも強固である。すなわち、後側挿入部57の爪部57aによる後側受け部55への係止は、前側係止部23による遮水部22の本体部21に対する係止よりも強固である。そのため、本体部21に対し表面側から所定の荷重Pが入力されても、後側挿入部57の爪部57aは後側受け部55の後側孔部56に挿入された状態を維持し、後側係止部24による遮水部22の本体部21に対する係止は解除されない。
【0044】
そして、カウルカバー16は、それぞれ別途形成された本体部21と遮水部22とを、前側係止部23と後側係止部24とにより係止することで構成される。すなわち、前側挿入部53と前側孔部52とを位置合わせするとともに後側挿入部57と後側孔部56とを位置合わせし、本体部21に対して遮水部22を押し込むと、前側挿入部53が前側孔部52に挿入されるとともに、後側挿入部57が後側孔部56に挿入されて爪部57aが後側孔部56を乗り越えた位置で弾性的に復帰して後側孔部56に係止され、後側係止部24により遮水部22の後部が本体部21に対して係止される。つまり、前側挿入部53と後側挿入部57とが、本体部21に対する遮水部22の一方向への押し込みによってそれぞれ前側孔部52と後側孔部56とに挿入される。この後、前側挿入部53を前側受け部51に溶着することで、前側係止部23により遮水部22の前部が本体部21に対して係止される。
【0045】
このように完成したカウルカバー16は、保持部26にフロントガラス14の前縁部を挟み込み、車体に対しクリップなどにより固定することで、カウル部15を覆って車体10(図6)に組み付けられる。
【0046】
そして、カウルカバー16は、カウル部15を覆い、カウル部15や車室13内などへの水や異物の侵入を防止するとともに、フード12を閉じた状態で、フードシールが変形してフード12に密着し、エンジンルーム11からの熱気や臭気を遮蔽する。
【0047】
カウルカバー16の前側係止部23は、所定の強度で遮水部22を本体部21に対して係止しているので、車両の姿勢やフード12に対して手をついた程度、あるいは通常の車両の振動程度で係止が解除されることはない。
【0048】
空調装置に外気を取り入れる際には、空気取入口35から、本体部21と遮水部22との間を介して排出部48を経由した外気Aが、空気取入部18から取り込まれる。
【0049】
また、降雨時、あるいは洗車時などには、空気取入口35から本体部21の背面側に水Wが侵入することがある。このとき、空気取入口35から侵入した水Wは、遮水部22の樋部45、あるいはガイド部46によって受け止められる。高圧洗浄機や洗車機によって勢いよく放出される水Wが空気取入口35から侵入し、樋部45、あるいはガイド部46に当たって跳ね返り、飛沫が様々な方向へ飛散した場合でも、これら飛散した水Wは、立壁部43や遮水リブ38などによりブロックされ、カウル部15やエンジンルーム11内に侵入しない。つまり、遮水部22の前方側においては、立壁部43と空気取入口35のリブ36とが上下方向にラップしていることによりカウル部15への水Wの侵入を防止し、遮水部22の後方側においては、フランジ部42が保持部26まで延び、かつ、立壁部43が立ち上がっていることによりカウル部15への水Wの侵入を防止し、車幅方向内方側においては、遮水リブ38と立壁部43とが上下方向にラップしていることによりカウル部15への水Wの侵入を防止する。
【0050】
そして、空気取入口35から本体部21と遮水部22との間に侵入した水Wは、遮水部22において最も下方の位置にある樋部45に集められ、この樋部45の傾斜に沿って排水方向DDへとガイドされて、排出部48を介して車外に排出される。つまり、空気取入口35から水W及び外気Aがそれぞれ取り込まれた場合でも、水Wは空気取入部18側に回り込むことなく排出部48から車外に排出され、外気Aは排出部48から空気取入部18へと回り込んで空調装置に取り入れられる。
【0051】
ここで、フード12に対して上方から例えば障害物が衝突するなどして荷重(外力)が加わると、フード12が下方へと変形することで、カウルカバー16に対し、下方へと荷重が加わる。この荷重は、フード12と対向しフード12に最も近接する部位である前部のフードシール面部31に先当たりし、このフードシール面部31に対して下方へと加わって、図1の二点鎖線L1に示すように、本体部21が下方に湾曲するように変形する。このため、フードシール面部31に近接して位置する前側係止部23に対しても、表面側である上方から所定の荷重Pが加わることで、図1の二点鎖線L2に示すように、前側挿入部53が破損し、前側係止部23の係止が解除される。一方、後側係止部24については、係止強度が前側係止部23より大きいので、所定の荷重Pによって係止が解除することがない。そのため、遮水部22は、本体部21に対し、前部が下方に離脱し、後側係止部24を起点として前部が本体部21から離れる方向に移動、本実施の形態では下側後方に回動し、本体部21と遮水部22とにより構成されるカウルカバー16の箱断面形状が解除されてカウルカバー16の強度が低下することで反力を抑制する。
【0052】
このように、本実施の形態によれば、本体部21の背面側に、前側係止部23と後側係止部24とによって遮水部22の前部及び後部を係止することで、本体部21と遮水部22とによって箱断面形状を構成できるので、空気取入口35から複数方向に侵入した水Wを遮水部22によって受けて、カウル部15への水Wの侵入を防止しつつ、意図する方向に効果的に排水できるとともに、本体部21に対し表面側から所定の荷重Pが入力されたときには、前側係止部23と後側係止部24とのいずれか一方による遮水部22の本体部21への係止が解除されるため、本体部21と遮水部22とによる箱断面形状を解除できてカウルカバー16の強度を低下させることができ、表面側から入力された荷重に対する反力を抑制でき、歩行者保護性能を向上できる。
【0053】
特に、本実施の形態では前側係止部23による遮水部22の前部の本体部21への係止が解除されるため、車体10の前方から本体部21の表面側に入力された所定の荷重Pに対し、本体部21を変形させやすくすることができるため、歩行者保護性能をより向上できる。
【0054】
また、前側係止部23による係止が解除された状態で、後側係止部24を起点として遮水部22の前部が本体部21から離れる方向に移動するため、本体部21と遮水部22とによる箱断面形状をより確実に解除できて、カウルカバー16の強度をより確実に低下させることができる。
【0055】
そのため、ECUなどの電子部品、あるいはフロントサスペンションマウントなど、被水対策を必要とする部品に対し被水対策を特段必要とすることなく、これらをカウル部15内に配置でき、レイアウトの自由度を増すことができる。
【0056】
また、前側係止部23及び後側係止部24により、遮水部22を本体部21に対して前後両持ちとしているため、例えば反力を低下させるために遮水部22を本体部21に対し片持ち固定する構成と比較して、カウルカバー16の固有振動数を高く保ち、車体振動などとのカウルカバー16の共振を抑制でき、大きな応力の繰り返しの作用を抑制できて、大きな荷重が入力されていないときの低級音の発生や前側係止部23あるいは後側係止部24の破損を抑制できる。
【0057】
前側係止部23による遮水部22の前部の本体部21への取り付け方向と、後側係止部24による遮水部22の後部の本体部21への取り付け方向とを同一方向としたことで、遮水部22を本体部21に取り付ける際に、遮水部22を本体部21に向かって接近させる一方向の作業で完結することができ、作業性に優れる。
【0058】
前側係止部23と後側係止部24との少なくともいずれか一方、本実施の形態においては双方が、車幅方向の複数箇所に設定されているため、遮水部22を本体部21に対して安定的に係止可能であるとともに、前側係止部23の係止が解除された後、後側係止部24を起点として遮水部22を安定的に移動させることができる。
【0059】
次に、第2の実施の形態について、図7を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0060】
本実施の形態において、前側係止部23には、前側受け部51にて前側孔部52の周囲に、弱部61が形成されている。本実施の形態において、弱部61は、本体部21に対する表面側からの所定の荷重Pの入力により破断可能な溝部として形成されている。つまり、弱部61は、円環状の溝部である。本実施の形態において、弱部61は、前側受け部51の背面側、つまり本体部21とは反対側である下側に形成されているものとするが、これに限らず、前側受け部51の表面側である上側に形成されていてもよい。
【0061】
そして、前側係止部23は、本体部21に対して表面側から所定の荷重Pが入力された状態で、弱部61から前側受け部51が破損することで、前側挿入部53が前側孔部52に挿入されたまま前側係止部23の係止が解除され、遮水部22の前部が本体部21に対して下方に離脱し、後側係止部24を起点として遮水部22の前部が本体部21から離れる方向に移動、本実施の形態では下側後方に回動し、本体部21と遮水部22とにより構成されるカウルカバー16の箱断面形状が解除されてカウルカバー16の強度が低下することで反力を抑制する。
【0062】
このように、本体部21の背面側に、前側係止部23と後側係止部24とによって遮水部22の前部及び後部を係止するとともに、本体部21に対し表面側から所定の荷重Pが入力されたときには、前側係止部23による遮水部22の前部の本体部21への係止が解除されるなど、第1の実施の形態と同様の構成を有することで、空気取入口35から複数方向に侵入した水Wを遮水部22によって受けて、カウル部15への水Wの侵入を防止しつつ、意図する方向に効果的に排水できるとともに、表面側から入力された荷重に対する反力を抑制でき、歩行者保護性能を向上できるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0063】
また、前側受け部51にて前側孔部52を囲んで形成した弱部61が、本体部21に対する表面側からの所定の荷重Pの入力により破断する構成としたので、弱部61の強度を、前側係止部23の係止を解除させる所定の荷重Pの大きさに応じて、例えば溝部の深さなどによって容易に設定できる。
【0064】
次に、第3の実施の形態について、図8を参照して説明する。なお、各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0065】
本実施の形態において、前側係止部23は、前側受け部51に形成された前側孔部52に挿入される挿入部である軸状の前側挿入部53と、この前側挿入部53を抜け止めする係止体としてのプッシュナット63と、前側孔部52を囲んで前側受け部51に形成された弱部61と、を備える。
【0066】
前側挿入部53は、円柱状に形成されている。前側挿入部53は、本体部21と遮水部22との少なくともいずれか一方から他方に向かって突出している。本実施の形態において、前側挿入部53は、本体部21から遮水部22に向かって突出している。図示される例では、前側挿入部53は、金属などの部材により形成され、本体部21に一体的に固定されている。
【0067】
プッシュナット63は、例えば金属などの部材により円環状に形成されている。プッシュナット63は、前側孔部52よりも大きい外形を有している。本実施の形態において、プッシュナット63は、前側孔部52よりも径寸法が大きい。プッシュナット63は、前側挿入部53が圧入される係止体穴部であるナット穴部63aを中央部に備え、ナット穴部63aの縁部に、前側挿入部53の外周面に食い込む係止体爪部であるナット爪部63bが複数形成されている。プッシュナット63は、本体部21と遮水部22との他方において、一方とは反対側の位置に配置されている。本実施の形態において、プッシュナット63は、本体部21と反対側である遮水部22の背面側、すなわち遮水部22の下側に配置されている。
【0068】
弱部61は、プッシュナット63よりも大きい範囲を囲んで形成されている。本実施の形態において、弱部61は、プッシュナット63の外径よりも大きい内径寸法を有する円環状の溝部として形成される。
【0069】
そして、カウルカバー16を形成する際には、前側挿入部53と前側孔部52とを位置合わせするとともに後側挿入部57と後側孔部56とを位置合わせし、本体部21に対して遮水部22を押し込むと、前側挿入部53が前側孔部52に挿入されるとともに、後側挿入部57が後側孔部56に挿入されて爪部57aが後側孔部56を乗り越えた位置で弾性的に復帰して後側孔部56に係止され、後側係止部24により遮水部22の後部が本体部21に対して係止される。この後、前側孔部52から突出する前側挿入部53に対してプッシュナット63を前側挿入部53の先端側から基端側に向かって圧入することで、プッシュナット63が前側挿入部53に一体的に固定され、このプッシュナット63が前側受け部51にて前側孔部52の周縁部に重ねられることで、前側係止部23により遮水部22の前部が本体部21に対して係止される。
【0070】
また、前側係止部23は、本体部21に対して表面側から所定の荷重Pが入力された状態で、弱部61から前側受け部51が破損することで、プッシュナット63が前側挿入部53と一体的に固定されたまま前側係止部23の係止が解除され、遮水部22の前部が本体部21に対して下方に離脱し、後側係止部24を起点として遮水部22の前部が本体部21から離れる方向に移動、本実施の形態では下側後方に回動し、本体部21と遮水部22とにより構成されるカウルカバー16の箱断面形状が解除されてカウルカバー16の強度が低下することで反力を抑制する。
【0071】
このように、本体部21の背面側に、前側係止部23と後側係止部24とによって遮水部22の前部及び後部を係止するとともに、本体部21に対し表面側から所定の荷重Pが入力されたときには、前側係止部23による遮水部22の前部の本体部21への係止が解除されるなど、各実施の形態と同様の構成を有することで、空気取入口35から複数方向に侵入した水Wを遮水部22によって受けて、カウル部15への水Wの侵入を防止しつつ、意図する方向に効果的に排水できるとともに、表面側から入力された荷重に対する反力を抑制でき、歩行者保護性能を向上できるなど、各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
また、前側受け部51にて前側孔部52を囲んで形成した弱部61が、本体部21に対する表面側からの所定の荷重Pの入力により破断するなど、第2の実施の形態と同様の構成を有することで、弱部61の強度を、前側係止部23の係止を解除させる所定の荷重Pの大きさに応じて、例えば溝部の深さなどによって容易に設定できるなど、第2の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0073】
さらに、前側係止部23を、プッシュナット63を用いた抜け止め構造とすることで、前側係止部23を容易かつ安価に構成できるとともに、プッシュナット63を前側挿入部53に挿入するだけで容易に抜け止めできるので、遮水部22を本体部21に対して係止する作業が容易である。
【0074】
次に、第4の実施の形態について、図9を参照して説明する。なお、各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0075】
本実施の形態において、前側係止部23は、本体部21と遮水部22とのそれぞれに前側受け部51、前側孔部52、及び、弱部61が形成され、各前側孔部52に亘り挿入される挿入部であるクリップ65を備える。
【0076】
クリップ65は、前側孔部52に挿入される軸部と、前側孔部52よりも大きい外形を有する頭部65aと、を備える。本実施の形態において、クリップ65の頭部65aは、前側孔部52よりも径寸法が大きい。
【0077】
弱部61は、クリップ65の頭部65aよりも大きい範囲を囲んで形成されている。本実施の形態において、弱部61は、クリップ65の頭部65aの外径よりも大きい内径寸法を有する円環状の溝部として形成される。
【0078】
そして、カウルカバー16を形成する際には、本体部21の前側孔部52と遮水部22の前側孔部52とを位置合わせするとともに後側挿入部57と後側孔部56とを位置合わせし、本体部21に対して遮水部22を押し込むと、後側挿入部57が後側孔部56に挿入されて爪部57aが後側孔部56を乗り越えた位置で弾性的に復帰して後側孔部56に係止され、後側係止部24により遮水部22の後部が本体部21に対して係止される。この後、本体部21の前側孔部52と遮水部22の前側孔部52とに亘りクリップ65を圧入することで、クリップ65が遮水部22の前側受け部51にて前側孔部52の周縁部に頭部65aが係合し、前側係止部23により遮水部22の前部が本体部21に対して係止される。
【0079】
また、前側係止部23は、本体部21に対して表面側から所定の荷重Pが入力された状態で、弱部61から前側受け部51が破損することで、クリップ65が本体部21の前側受け部51一体的に固定されたまま前側係止部23の係止が解除され、遮水部22の前部が本体部21に対して下方に離脱し、後側係止部24を起点として遮水部22の前部が本体部21から離れる方向に移動、本実施の形態では下側後方に回動し、本体部21と遮水部22とにより構成されるカウルカバー16の箱断面形状が解除されてカウルカバー16の強度が低下することで反力を抑制する。
【0080】
このように、本体部21の背面側に、前側係止部23と後側係止部24とによって遮水部22の前部及び後部を係止するとともに、本体部21に対し表面側から所定の荷重Pが入力されたときには、前側係止部23による遮水部22の前部の本体部21への係止が解除されるなど、各実施の形態と同様の構成を有することで、空気取入口35から複数方向に侵入した水Wを遮水部22によって受けて、カウル部15への水Wの侵入を防止しつつ、意図する方向に効果的に排水できるとともに、表面側から入力された荷重に対する反力を抑制でき、歩行者保護性能を向上できるなど、各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
また、前側受け部51にて前側孔部52を囲んで形成した弱部61が、本体部21に対する表面側からの所定の荷重Pの入力により破断するなど、第2の実施の形態と同様の構成を有することで、弱部61の強度を、前側係止部23の係止を解除させる所定の荷重Pの大きさに応じて、例えば溝部の深さなどによって容易に設定できるなど、第2の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0082】
さらに、前側係止部23を、クリップ65を用いた抜け止め構造とすることで、前側係止部23を容易かつ安価に構成できるとともに、クリップ65を前側孔部52に挿入するだけで容易に抜け止めできるので、遮水部22を本体部21に対して係止する作業が容易である。
【0083】
なお、各実施の形態において、後側係止部24は、遮水部22に後側受け部55及び後側孔部56が形成され、後側挿入部57が本体部21に形成されているものに限らない。例えば、図10に示す第5の実施の形態のように、遮水部22に後側挿入部57が形成され、本体部21に後側受け部55及び後側孔部56が形成されていてもよい。このように、前側係止部23による遮水部22の前部の本体部21への取り付け方向と、後側係止部24による遮水部22の後部の本体部21への取り付け方向とを反対方向とした場合でも、遮水部22を本体部21に取り付ける際に一方向の作業で完結させることができ、作業性に優れる。
【0084】
同様に、前側係止部23は、遮水部22に前側受け部51及び前側孔部52が形成され、前側挿入部53が本体部21側に配置されているものに限らず、その反対の関係でもよい。
【0085】
そして、本体部21に対する表面側からの所定の荷重Pの入力により前側係止部23による係止が解除され、後側係止部24を起点として遮水部22の前部が本体部21から離れる方向に移動する構成としたが、これに限らず、本体部21に対する表面側からの所定の荷重Pの入力により後側係止部24による係止が解除され、前側係止部23を起点として遮水部22の後部が本体部21から離れる方向に移動する構成としてもよい。この場合、第2ないし第4の実施の形態に示す弱部61は、後側係止部24の後側受け部55に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、例えば、自動車のフロントガラスとエンジンルームとの間のカウル部を覆うカウルカバーに適用できる。
【符号の説明】
【0087】
12 相手部材としてのフード
14 ウインドシールドとしてのフロントガラス
15 カウル部
16 カウルカバー
21 本体部
22 遮水部
23 前側係止部
24 後側係止部
35 開口部としての外気取入口
51 受け部である前側受け部
52 孔部である前側孔部
53 挿入部である前側挿入部
61 弱部
65 挿入部であるクリップ
P 荷重
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10