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特許7445566フライス工具およびフライス工具を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】フライス工具およびフライス工具を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/28 20060101AFI20240229BHJP
   B23P 15/34 20060101ALI20240229BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B23C5/28
B23P15/34
B23C5/10 Z
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020151163
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2021062472
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】10 2019 124 223.1
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506020470
【氏名又は名称】フランケン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト ファブリク フュア プレツィズィオンスヴェルクツォイゲ
【氏名又は名称原語表記】Franken GmbH & Co. KG Fabrik fuer Praezisionswerkzeuge
【住所又は居所原語表記】Frankenstrasse 7/9a, D-90607 Rueckersdorf, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】グリンペル、ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】メーベル、トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ラウファー、ハンス-ユルゲン
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108188460(CN,A)
【文献】特開2012-200836(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0133809(US,A1)
【文献】特開2015-189666(JP,A)
【文献】特表2017-504493(JP,A)
【文献】特開2006-102932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0298221(US,A1)
【文献】国際公開第95/029030(WO,A1)
【文献】米国特許第05829926(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/10、28
B23P 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するシャンクと、
少なくとも1つの第1円周切れ刃および少なくとも1つの第2円周切れ刃を有するプロファイルボディであって、前記第1円周切れ刃が回転方向において前記第2円周切れ刃に続くプロファイルボディと、
第1冷却ダクトと、
第2冷却ダクトと、
を備え、
前記第1冷却ダクトは、少なくとも部分的に前記回転軸に沿ってシャンク内を延在し、
前記第1冷却ダクトおよび前記第2冷却ダクトは流体的に接続され、
前記第2冷却ダクトは、少なくとも1つの第1排出口を有し、
前記第1排出口の排出口領域は、前記第1円周切れ刃と対向しており、
前記第2冷却ダクトは、少なくとも部分的に前記第2円周切れ刃に平行に延び、
少なくとも1つの第1端部切れ刃を有し、
少なくとも1つの第2排出口を有する少なくとも1つの第3冷却ダクトをさらに備え、
前記第1排出口の前記排出口領域は、前記第1円周切れ刃に対向し、前記第2排出口の排出口領域は、前記第1端部切れ刃に対向し、
前記第1冷却ダクトに流体的に接続された複数の第2冷却ダクトを有し、
本フライス工具の端部領域において前記第1冷却ダクトの一端に分配チャンバが配置され、前記第2冷却ダクトは前記分配チャンバから延び、
前記第2冷却ダクトは、前記分配チャンバから前記第2円周切れ刃近傍まで外向きに延び、そこから本フライス工具の前記端部領域から前記シャンクに向かう方向に延びるフライス工具。
【請求項2】
回転方向側を向くすくい面と、径方向外側および/または反回転方向側を向く逃げ面との間の稜線によって形成される少なくとも1つのさらなる第2円周切れ刃と、
少なくとも部分的に前記さらなる第2円周切れ刃に平行に延在するさらなる第2冷却ダクトと、
を備え、
前記回転軸に垂直な断面において、前記さらなる第2冷却ダクトの前記すくい面および前記逃げ面に対向する輪郭線は前記すくい面および前記逃げ面の輪郭線に対して平行である請求項1に記載のフライス工具。
【請求項3】
第2冷却ダクトの数は第1円周切れ刃の数と一致し、および/または、第3冷却ダクトの数は第1端部切れ刃の数と一致する請求項1に記載のフライス工具。
【請求項4】
前記シャンクは、ねじ山による取り外し可能な力接続または形状接続のための機構を備え、結果としてフライス工具はねじ込み式のフライスカッターとして設計され、および、本フライス工具は少なくとも部分的にHSSまたは硬質金属から製造され、および、本フライス工具は少なくとも部分的に付加製造法により製造され、および、本フライス工具は冷却剤として水、空気または液体窒素を使用するように設計され、および、前記シャンクおよび/または前記プロファイルボディは少なくとも1つの空洞が構成される内部構造を備える請求項1から3のいずれかに記載のフライス工具。
【請求項5】
前記第2冷却ダクト、および/または、第3冷却ダクトは、全長にわたってまたは部分的に、円形、三角形、楕円形、四角形、長方形、正方形、台形、五角形から選択される断面を有する請求項1から4のいずれかに記載のフライス工具。
【請求項6】
粉末状の出発材料または出発材料としての溶融可能なフィラメントを提供することと、
バインダージェット法、レーザ溶融法および溶融フィラメント製法の少なくとも1つを含む付加製造法により、出発材料を層ごとに塗布することと、
を備える請求項1から5のいずれかに記載のフライス工具を製造する方法。
【請求項7】
後続の焼結および/または熱間等方圧加圧することをさらに備える請求項6に記載のフライス工具を製造する方法。
【請求項8】
ビーズ状のスペーサを適用するステップ、付加製造法により第1材料からなる層で前記スペーサを被覆するステップ、前記スペーサを取り外すステップで、少なくとも前記第1冷却ダクトまたは少なくとも前記第2冷却ダクトを製造することをさらに備える請求項6または7に記載のフライス工具を製造する方法。
【請求項9】
第1冷却ダクトを有するシャンクを提供することと、
前記プロファイルボディを製造することと、
備える請求項6から8のいずれかに記載のフライス工具を製造する方法。
【請求項10】
本方法は、不活性ガスおよび/または大気圧未満のもとで実施される請求項6から9のいずれかに記載のフライス工具を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライスカッターを製造するための方法およびフライスカッター、特にエンドミルまたはねじ込み式フライスカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークピース表面上の材料を全面的に除去するためにエンドミルが提供され、この目的のために、このエンドミルは、ワークピース表面に沿って、通常はワークピース表面と平行に、ワークピース表面に対して前進すると同時に工具軸を中心として所定の回転方向にエンドミルが回転することによるフライス運動で移動する。一般に、エンドミルは、工具軸に沿って延びる実質的に円筒状のシャンクと、隣接するヘッド部とを有する。ヘッド部は、外周フライス刃を有する外周領域と、端部フライス刃を有しても有していなくてもよい先端側とを備える。ヘッド部とは反対の方向を向く端部において、エンドミルは、工作機械に結合された工具ホルダ内に把持されるためのクランプ領域を有する。
【0003】
材料の全面的な除去を可能にするために、外周フライス刃は、一般に円筒状かつ工具軸を中心に回転対称な外周面上に、工具軸に対して軸方向の長さにわたって(または工具軸の投影において)軸方向に連続的かつ途切れることなく延在し、工具軸に対して半径方向である係合深さで、実質的にワークピース表面の軸方向長さ全体にわたって係合する。ここで、フライス刃の軸方向長さは、半径方向の係合深さよりもかなり大きく、一般に少なくとも5~10倍大きい。外周フライス刃はまた、工具軸に直線状に平行に延在することができるが、一般に、螺旋状に、または工具軸を中心にねじれ角で捩れ状に延びるように構成される。フライス加工に特徴的なフライス刃の不連続切削は、フライス運動によって生じ、この切削は表面上のワークピースのチップの除去をもたらす。
【0004】
仕上げカッター、荒削りカッターおよび半仕上げカッターなどのよく知られたタイプのフライスカッターでは、各フライス刃は、その全長にわたって切削する。したがって、仕上げカッターの刃は、滑らかで、チップブレーカーを備えないものとして構成される。波状刃を備えた荒削りカッターの場合に、設けられる隆起は、丸みのあるチップブレーカー形成し、そのためチップが分断され、その結果として、より大きいチップ体積、またはより大きいチップのワークピースへのより深い係合が可能である。したがって、半径方向の係合深さは、荒削りカッターおよび半仕上げカッターのフライス刃における凹部よりも深く、換言すれば、隆起の高さよりも大きく、その結果、材料はフライス刃が移動するワークピース表面の全領域にわたって除去され、この隆起は除去したチップのためのチップブレーカーとして機能するだけである。エンドミルは、例えば、DE 10 2015 116 443 A1から知られている。
【0005】
公知のフライス工具は、特に、1つ以上の冷却ダクトを備える。このタイプの冷却ダクトは、外周刃の領域に排出口を有する、半径方向外向きに延びる部分を有することができる。排出口および冷却ダクトは、通常、出て行く冷却剤ジェットが半径方向および/または軸方向外側に延びるように、穿孔される。このタイプのフライス工具は、例えば、Emuge-Frankenのカタログ250の64ページに示されている。このフライス工具は、空気用、水用、最小量の潤滑用、および/または、極低温冷却用に提供されうる。
【0006】
冷却が不十分であることは、しばしば、工具の早期疲労の原因となる。工具が被加工材に接触していないときにのみ冷却が行われると、熱衝撃が発生し、その場合、特にクラックが発生しうる。
【0007】
DE 10 2013 104 222 A1は、ハイブリッド複合体である、切削工具、特に、ドリル、フライスカッター、旋削工具、溝入れ工具またはリーマ工具を開示する。ハイブリッド複合体は、異なる方法で製造される2つの部分領域からなり、そのうちの1つの部分は、付加製造法で製造される。
【0008】
DE 10 2014 207 507 A1は、軸方向に延びる単一体の基体を備える切削工具、特に、ドリルまたはフライスカッターなどの回転工具を開示しており、この単一体の基体は、少なくとも1つの部分領域において、固体の外側ケーシングに囲まれた非固体のコア構造を有する。コア構造は、冷却剤を導くように構成され、基体は、3Dプリントによって製造される。冷却剤または潤滑剤の排出点は、好ましくは、ここでは3Dプリント法を用いて製造され、複雑な形状を有する。
【0009】
DE 10 2014 207 510 A1は、工具先端の領域において、冷却剤または潤滑剤を導くための一体型冷却構造を開示する範囲で、DE 10 2014 207 510 A1を補足し、この一体型冷却構造は、少なくとも一部の領域において多孔質構造として構成されているか、または、少なくとも1つの冷却ダクトが反転部を有しており、その結果、反対を向いた2つのダクト部が構成されるようになっている。切削要素は、交換可能な切削プレートであってもよい。切削工具の冷却構造は、少なくとも部分的に3Dプリントによって製造されてもよい。
【0010】
EP 1 864 748 B1には、切削工具を着脱可能に取り付けるために工具本体に設けられた工具ホルダと、冷却材の供給のためのダクトとを備える切削工具の製造方法が記載されており、工具本体および/または工具ホルダは、造形製造方法によって製造される。ここでは、実質的に任意の所望の内部構造、例えば、流れに有利な形状の内部冷却材ダクトなどを製造することができ、流れに有利な入口および1つ以上の冷却剤の出口を工具の刃のすぐ近くに配置することができる。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、刃を特に効率的に冷却し、工具寿命を延ばすことができるフライス工具およびフライス工具の製造方法を特定することである。
【0012】
本発明によるフライス工具は、回転軸を有するシャンクと、少なくとも1つの第1切れ刃を有するプロファイルボディと、第1冷却ダクトと、第2冷却ダクトと、を備え、第1冷却ダクトは少なくとも部分的に回転軸に沿ってシャンク内を延在し、第1冷却ダクトおよび第2冷却ダクトは流体的に接続され、第2冷却ダクトは少なくとも1つの第1排出口を有し、第1排出口の排出口領域は第1切れ刃と対向している。第1切れ刃と対向するように排出口領域が配置されている結果、冷却液を第1切れ刃に直接吹き付けることができ、その結果、冷却は特に的を絞って行われる。冷却液としては、例えば、水、空気または最小量の潤滑剤または液体窒素が適している。排出口は、第1切れ刃を、特にフライス工具の回転方向に先導するように配置されている。第2冷却ダクトは、特に、第1切れ刃が端部切れ刃である場合、端部切れ刃のための冷却ダクトでありうる。さらに、第2冷却ダクトは、第1切れ刃が円周切れ刃である場合、円周切れ刃のための冷却ダクトでありうる。フライス工具は、冷却液がシャンク側から第1冷却ダクトに入り、第1冷却ダクトを通って第2冷却ダクトにおよび任意に第3冷却ダクトに導かれるように設計されている。ここで、特に、第1冷却ダクトは、フライス工具の端部側領域で第2または第3冷却ダクトに通じている。ここで、第1冷却ダクトおよび第2冷却ダクトまたは第3冷却ダクトは、冷却剤の流れ方向が第1冷却ダクトの流れ方向に対して90°~180°回転するように適切に配置されている。第2または第3冷却ダクトにおいて、冷却剤はシャンクの方向に軸方向外側および/または軸方向逆向きに流れる。
【0013】
一実施形態では、フライス工具は、少なくとも2つの第1切れ刃を有し、さらに、フライス工具は、少なくとも1つの第2排出口を有する少なくとも1つの第3冷却ダクトを備え、第1排出口の排出口領域は、第1切れ刃の一方に対向し、第2排出口は第1切れ刃の他方に対向する。第2冷却ダクトが円周切れ刃のための冷却ダクトである場合、第3冷却ダクトは、好都合には、端部切れ刃のための冷却ダクトである。第2冷却ダクトが端部切れ刃の冷却ダクトである場合、第3冷却ダクトは、好都合には、円周切れ刃のための冷却ダクトである。
【0014】
フライス工具は、好都合には、第1冷却ダクトと流体的に接続される複数の第2冷却ダクトおよび/または複数の第3冷却ダクト有する。
【0015】
特に、分配チャンバは第1冷却ダクトの一端に配置され、第2冷却ダクトおよび/または第3冷却ダクトは分配チャンバから延びている。このタイプの分配チャンバは、特に、フライス工具の端部側領域に配置される。分配チャンバは、有利には、回転軸に対して回転対称である。分配チャンバは、好都合には、楕円形または球形の形状をしている。端部側の分配チャンバからの冷却剤の分配は、冷却作用が、特に、フライス工具が使用中に最も顕著に加熱される領域で行われるという利点を有する。特に、第1切れ刃において熱が取り出される。
【0016】
一実施形態では、第2冷却ダクトの数および/または第3冷却ダクトの数は、第1切れ刃の数と一致する。
【0017】
第1切れ刃は、好都合には、円周切れ刃または端部側切れ刃である。したがって、フライス工具は、同じ数の円周切れ刃および端部側切れ刃を有しうる。特に、フライス工具は、それぞれ2つ、それぞれ3つ、ぞれぞれ4つ、ぞれぞれ5つ、またはぞれぞれ6つ以上の端部側切れ刃および/または円周切れ刃を有する。より多くの第1切れ刃が可能である。円周切れ刃は、特に、回転軸の周りに渦巻状または螺旋状に延びることができる。
【0018】
一実施形態では、シャンクは、解放可能な力接続および/または形状接続のための機構、特に、ねじ山、バヨネットキャッチなどの機構を備える。ねじ山の場合、フライス工具はねじ込み式のフライスとして構成される。
【0019】
さらなる実施形態では、シャンクおよび/またはプロファイルボディは、内部空洞を有しているので、材料消費が低減され、および/またはフライス工具の重量が低減される。この実施形態の場合、シャンクおよび/またはプロファイルボディは、空洞の周りに構造、特に格子を有し、この格子は工具使用中に力を吸収し、その結果、空洞による安定性の損失がないようにする。
【0020】
フライス工具は、好ましくは、少なくとも部分的に、特に全体的に、HSSまたは硬質金属から製造される。フライス工具は、ある部分、例えばシャンクまたは内側領域はHSSから製造され、別の領域、例えば刃または外部領域は硬質金属から製造されうる。さらなる実施形態では、フライス工具は、少なくとも部分的に、特に冷却ダクトの領域において、銅から製造されうる。さらに、フライス工具は、例えばCrNからなる硬質皮膜でコーティングされうる。本発明によるフライス工具は、特に、少なくとも部分的に付加製造法により製造される。フライス工具は、好ましくは、冷却材として水、空気、最小量の潤滑剤または液体窒素を使用するように設計されている。
【0021】
上記の特徴によって請求されうる、またその代わりに上記の実施形態とは独立して請求されうるフライス工具の本発明による一実施形態は、回転軸を有するシャンクと、少なくとも1つの第2切れ刃を有するプロファイルボディと、第1冷却ダクトと、第2冷却ダクトと、を備え、第1冷却ダクト少なくとも回転軸に沿った部分いおいてシャンク内を延在し、第1冷却ダクトおよび第2冷却ダクトは流体的に接続され、第2冷却ダクトは少なくとも部分的に第2切れ刃に平行に延在する。フライス工具は、冷却液がシャンク側から第1冷却ダクトに入り、第1冷却ダクトを通って第2冷却ダクトおよび任意に第3冷却ダクトに導かれるように設計されている。第2および第3冷却ダクトは、特に、プロファイルボディの領域に排出口を有する。ここで、第1冷却ダクトは、特にフライス工具の端部側領域で第2および第3冷却ダクトに通じている。ここで、第1冷却ダクトおよび第2または第3冷却ダクトは、冷却剤の流れ方向が、第1冷却ダクトにおける流れ方向に対して90°~180°回転するように適切に配向されている。第2または第3冷却ダクトでは、冷却剤は軸方向外側に流れ、および/またはシャンクの方向に逆流する。
【0022】
切削工具が第1および第2切れ刃を有する場合、第1切れ刃は第2切れ刃に隣接する。特に、第1切れ刃は、第2切れ刃に続く切れ刃である。したがって、切れ刃は、冷却ダクトに関して第1切れ刃であり得、隣接する冷却ダクトに関して第2切れ刃でありうる。切れ刃は、第2切れ刃である。切れ刃は、下にある冷却ダクトによって冷却されうる場合は第2切れ刃であり、および/または排出される冷却剤の噴流により冷却されうる場合は第1切れ刃である。フライス工具は、任意で、さらなる第2切れ刃および第3冷却ダクトを備え、第3冷却ダクトは少なくとも部分的に当該さらなる第2切れ刃に平行に延在する。一実施形態では、第2冷却ダクトおよび/または第3冷却ダクトは、それぞれの端部切れ刃または円周切れ刃の輪郭の近くを延在する。
【0023】
第2冷却ダクトおよび/または第3冷却ダクトは、特に、全長にわたって、または部分的に、円形、三角形、楕円形、滴形、四角形、長方形、正方形、台形、五角形から選択される断面を有する。それぞれの冷却ダクトは、異なる部分で異なる断面を有しうる。したがって、例えば、最初は半径方向に延び、その後回転軸の周りに渦巻状に延びる第2冷却ダクトは、最初は円形の断面を有し、螺旋状の部分では滴形の断面を有していてもよい。第2または第3冷却ダクトは、特に、工具の端面から流れるように設計される。
【0024】
第2および/または第3冷却ダクトは、特に、第2冷却ダクトおよび/または第3冷却ダクトが、第2切れ刃の形状を取り込んだような、それが特に輪郭の近くを延びるような断面を有する。したがって、冷却ダクトは、冷却ダクトと第2切れ刃との間を距離を可能な限り小さくするために、特に、第2切れ刃を向く断面の頂点を有する。第2切れ刃から離れた方を向く断面の領域は、特に、冷却剤の流動抵抗を最小にするように最適化されうる。特に、前記領域は、流れが可能な限り層流になるように構成されるべきである。仕上げカッターとしてのフライス工具の実施形態の場合、冷却ダクトは、第2切れ刃と平行に延在しうる。荒削りカッターとしての実施形態の場合、第2切れ刃の包絡線と平行な進路が考えられる。
【0025】
フライス工具は、好都合には、第1冷却ダクトに流体的に接続された複数の第2冷却ダクトおよび/または複数の第3冷却ダクトを有する。
【0026】
特に、分配チャンバは、第1冷却ダクトの一端に配置され、第2冷却ダクトおよび/または第3冷却ダクトは分配チャンバから延びる。このタイプの分配チャンバは、特に、フライス工具の端部側領域に配置されている。分配チャンバは、有利には、回転軸に関して回転対称である。分配チャンバは、好都合には、楕円形または球形の形状をしている。端部側の分配チャンバからの冷却剤の分配は、特に、使用中にフライス工具が最も顕著に加熱され領域で冷却作用が行われるという利点を有する。特に、第2切れ刃において熱が取り出される。
【0027】
一実施形態では、第2冷却ダクトの数および/または第3冷却ダクトの数は、第2切れ刃の数と一致する。
【0028】
第2切れ刃は、好都合には、円周切れ刃または端部側切れ刃である。したがって、フライス工具は、同じ数の円周切れ刃および端部側切れ刃を有しうる。特にフライス工具は、それぞれ2つ、それぞれ3つ、それぞれ4つ、それぞれ5つまたはそれぞれ6つ以上の端部側切れ刃および/または円周切れ刃を有する。第2切れ刃の数を多くできる。特に、円周切れ刃は、特に、渦巻状または螺旋状に延びることができる。
【0029】
一実施形態では、シャンクは、解放可能な力接続および/または形状接続のための機構、特に、ねじ山、バヨネットキャッチなどの機構を備える。ねじ山の場合、フライス工具はねじ込み式のフライスとして構成される。
【0030】
さらなる実施形態では、シャンクおよび/またはプロファイルボディは、内部空洞を有しているので、材料消費が低減され、および/またはフライス工具の重量が低減される。この実施形態の場合、シャンクおよび/またはプロファイルボディは、空洞の周りに構造、特に格子を有し、この格子は工具使用中に力を吸収し、その結果、空洞による安定性の損失がないようにする。
【0031】
フライス工具は、好ましくは、少なくとも部分的に、特に全体的に、HSSまたは硬質金属から製造される。フライス工具は、ある部分、例えばシャンクまたは内側領域はHSSから製造され、別の領域、例えば刃または外部領域は硬質金属から製造されうる。さらなる実施形態では、フライス工具は、少なくとも部分的に、特に冷却ダクトの領域において、銅から製造されうる。さらに、フライス工具は、例えばCrNからなる硬質皮膜でコーティングされうる。本発明によるフライス工具は、特に、少なくとも部分的に付加製造法により製造される。フライス工具は、好ましくは、冷却材として水、空気、最小量の潤滑剤または液体窒素を使用するように設計されている。
【0032】
フライス工具、特に本発明によるフライス工具を製造するための本発明による方法は、粉末状の出発材料または出発材料としての溶融可能なフィラメントを提供することと、付加製造法、特にバインダージェット法、レーザ溶融法または溶融フィラメント製法により、出発材料を層ごとに塗布することと、を備える。
【0033】
発明による方法の場合、特に、3Dプリンタが使用され、その場合、所定の領域にのみ結合剤が使用される。別の方法として、高エネルギービーム、特にレーザビームによる粉末状の出発材料の局所溶融も使用することができる。付加製造法における層状構造は、軸方向または径方向に行われうる。ここで、プリンタの解像度および/またはレーザ溶融の密度は、所望の構造サイズに適合させることができる。
【0034】
この方法は、好都合には、後続の焼結と、オプションで、特に空気圧による熱間等方圧加圧を備える。表面は、好都合には、その後、研削および/または研磨により再加工され、任意選択で、ハードコートが施される。
【0035】
さらに、この方法は、任意選択で、冷却ダクトが提供される領域では、出発材料の塗布層は、互いに結合されないステップで冷却ダクトを製造することを備える。
【0036】
特に、冷却ダクトでは結合剤が塗布されないおよび/または粉末が溶融されない。
【0037】
別の方法として、冷却ダクトを製造する方法は、ビーズ状のスペーサを適用することと、付加製造法により第1材料からなる層で当該スペーサを被覆することと、当該スペースを取り外すことと、を備える。
【0038】
この方法は、任意選択で、第1冷却ダクトを有するシャンクを提供することと、上記のステップによってプロファイルボディを製造することと、を備える。
【0039】
一実施形態では、この方法は、不活性ガスおよび/または大気圧未満のもとで実施される。
【0040】
以下の文章では、本発明はまた、例示的な実施形態の説明に基づいて、添付の図面を参照して、さらなる特徴および利点に関してより詳細に説明される。図面において、各実施例は模式的な概略図で示される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】第1実施形態のフライス工具を示す図である。
図2a】フライス工具の断面図と正面図である。
図2b】フライス工具の断面図と正面図である。
図2c】フライス工具の断面図と正面図である。
図2d】フライス工具の断面図と正面図である。
図2e】フライス工具の断面図である。
図3】フライス工具の縦断面図である。
図4】冷却剤の流れを示す図である。
図5】端部側の冷却剤の出口を示す図である。
図6a】端部側の冷却剤の出口を示す図である。
図6b】端部側の冷却剤の出口を示す図である。
図6c】端部側の冷却剤の出口を示す図である。
図6d】端部側の冷却剤の出口を示す図である。
図6e】端部側の冷却剤の出口を示す図である。
図6f】端部側の冷却剤の出口を示す図である。
図6g】端部側の冷却剤の出口を示す図である。
図6h】端部側の冷却剤の出口を示す図である。
図7】フライス工具の第2実施形態を示す図である。
図8】第2実施形態のフライス工具の断面図である。
図9】第2実施形態のフライス工具の縦断面図である。
図10】冷却剤の流れを示す図である。
図11】端部側の冷却剤の出口を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、フライス工具の第1実施形態を示す。フライス工具2は、シャンク4およびプロファイルボディ6を有する。さらに、フライス工具2は、回転軸Tを有する。フライス工具2は、円周刃として構成される4つの第1切れ刃8と、端部側刃として構成される4つの第1切れ刃9を有する。第1切れ刃8は、回転軸の周りを渦巻状に延在する。各ケースにおいて1つの排出口20は第1切れ刃8に向けられ、各ケースにおいて1つの排出口22は第1切れ刃9に向けられている。
【0043】
第1冷却ダクト10はシャンク4内を延在し、この第1冷却ダクト10は回転軸Tに沿って延びる。第1冷却ダクト10の進路は、図3に示されるF-F’に沿った縦断面でも見ることができる。図2aに示される断面A-A’の位置で、第1冷却ダクト10は分配チャンバ16に開口している。分配チャンバ16は、特に回転軸Tに対して対称的に配置され、ここでは楕円体である。4つの第2冷却ダクト12および4つの第3冷却ダクト14は、分配チャンバ16から延びる。ここで、第2冷却ダクト12は円周切れ刃(第2切れ刃28)に割り当てられ、第3冷却ダクト14はここでは端部切れ刃(第2切れ刃29)に割り当てられる。ここで、第2冷却ダクト12aは第2切れ刃28aの下方を通り、第2切れ刃28aは隣接する冷却ダクト12dに対して第1切れ刃8dでもある。第2冷却ダクト12は第1排出口20まで延び、第3冷却ダクト14はプロファイルボディ6の端部側に配置される第2排出口22まで延びる。第3冷却ダクト14は、少なくとも部分的に端部刃に沿って延びる。
【0044】
第2冷却ダクト12は、まず分配チャンバ16から第2切れ刃28まで外向きに延びる。図1の位置B-B’に沿った断面が図2bに示される。さらに、第2冷却ダクト12は、次に端部側からシャンク4の方向に螺旋状の第2切れ刃28に沿って延びる。したがって、第2冷却ダクト12は、円周切れ刃に対して輪郭に近い部分で延びる。図1の位置C-C’に沿った断面が図2cに示される。図示の実施形態では、第2冷却ダクト12は円形の断面を有する。
【0045】
第2冷却ダクト12は、最終的に第1排出口20につながる(D-D’参照)。これは、図2eに示すE-E’に沿った斜視図にも見られるように、第2切れ刃28の後ろ側に位置し、隣接する第1切れ刃8を向いている。例えば、第1排出口20dは、第2切れ刃28aでもある第1切れ刃8dを向いている。
【0046】
図4および図5は、冷却液の流れを模式的に示す。冷却液は、まずシャンク4をプロファイルボディ6の方向に流れる。端部切れ刃9の下方の領域には、第2冷却ダクト12および第3冷却ダクト14に冷却液を分配する分配チャンバ16が配置される。図5の端部側から見て、端部切れ刃として構成される第1切れ刃9を向く排出口20が配置され、その結果、第1切れ刃9には冷却剤の噴流が当たる。
【0047】
図6a~6hは、第2切れ刃28,29のプロファイルにおける、第2冷却ダクト12および任意選択の第3冷却ダクト14の様々な断面を示す。
【0048】
図7は、フライス工具2の第2実施形態を示す。フライス工具2は、回転軸Tを中心に回転可能である。フライス工具2は、解放可能な力接続および/または形状接続による接続機構を備えるねじ込み式のフライスカッターとして設計されており、ここではねじ山が設けられたシャンク4の形態である。プロファイルボディ6は、端部領域に5つの切れ刃9を有する。刃の後ろ側では、プロファイルボディ6は、隣接する第1切れ刃9を向いている第1排出口20を有する。内部に、フライス工具2は、回転軸Tに沿って延在する第1冷却ダクト10を有し、これは図9の縦断面で特に見ることができる。第1冷却ダクト10は、分配チャンバ16に通じており、そこから5つの第2冷却ダクト12が延びる。第2冷却ダクト12は、結果として、特に図8図7のA-A線に沿った断面)および図11(フライス工具2の端部側の平面図)から分かるように、第2切れ刃29に沿って延びる。冷却剤は、図10に示すように、シャンク4の端でフライス工具2に入り、分配チャンバ16に導かれる。そこでは、冷却剤は、第2冷却ダクト12に導かれ、切れ刃9を冷却するために排出口20から出て、その結果、冷却剤の噴流が切れ刃9に衝突する。
【符号の説明】
【0049】
2 フライス工具
4 シャンク
6 プロファイルボディ
8 第1切れ刃
9 第1切れ刃
10 第1冷却ダクト
12 第2冷却ダクト
14 第3冷却ダクト
16 分配チャンバ
20 第1排出口
22 第2排出口
28 第2切れ刃29
29 第2切れ刃29
T 回転軸
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図6g
図6h
図7
図8
図9
図10
図11