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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】フロック評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/06 20240101AFI20240229BHJP
   B01D 21/00 20060101ALI20240229BHJP
   G01N 15/0227 20240101ALI20240229BHJP
   G01N 15/075 20240101ALI20240229BHJP
【FI】
G01N15/06 E
B01D21/00 G
G01N15/0227 110
G01N15/075
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020190589
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022079796
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 耕大
(72)【発明者】
【氏名】冨田 麻未
(72)【発明者】
【氏名】池田 俊一
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特公平06-014006(JP,B2)
【文献】特開昭61-217741(JP,A)
【文献】特開2020-098323(JP,A)
【文献】特開2015-181374(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0223719(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/06
G01N 15/075
G01N 15/0227
B01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隙水中に浮遊するフロックを撮像してフロック画像を得るフロック撮像工程と、
フロック画像を異なる第1および第2の閾値でそれぞれ二値化処理して第1および第2の二値化フロック画像を得る二値化処理工程と、
第1の二値化フロック画像から所定領域におけるフロックの面積を求め、第2の二値化フロック画像から所定領域におけるフロックの個数を求める第1の評価工程と、
を備えることを特徴とするフロック評価方法。
【請求項2】
第1の評価工程で得られたフロックの面積とフロックの個数とに基づいて、フロック1個当たりの平均面積および平均粒径の少なくともいずれかを求める第2の評価工程を備えることを特徴とする請求項1記載のフロック評価方法。
【請求項3】
二値化する閾値を変化させてフロック画像を二値化処理することにより、複数の二値化フロック画像を作成し、
目視によって認識したフロック画像中のフロックの輪郭に最も良く合致する二値化フロック画像を、複数の二値化フロック画像の内から選んで、標準二値化フロック画像とし、
二値化処理工程において、標準二値化フロック画像を作成する際に用いた閾値を第1の閾値として、第1の二値化フロック画像を得ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフロック評価方法。
【請求項4】
二値化する閾値を変化させてフロック画像を二値化処理して得られた二値化フロック画像中のフロックの個数が最大となる閾値を第2の閾値として、第2の二値化フロック画像を得ることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフロック評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば下水や廃水等の被処理水を処理する際、凝集剤を被処理水に注入してフロックを形成し、間隙水中に浮遊するフロックを撮像した画像に基づいて、フロックの面積や個数を求めるフロック評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフロック評価方法としては、例えば、間隙水中に浮遊するフロックを撮像してフロック画像を得た後、このフロック画像を所定の閾値で二値化処理して二値化フロック画像を得る。そして、この二値化フロック画像から所定領域におけるフロックの面積および個数を求めていた。
【0003】
上記所定の閾値は例えば以下のようにして求められる。すなわち、二値化する閾値を変化させて二値化フロック画像中のフロックの個数が最大となり且つフロックの平均面積が最大となる閾値を、上記所定の閾値としている。
【0004】
尚、上記のようなフロック評価方法は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平6-14006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の従来形式では、1つの閾値(所定の閾値)を用いてフロック画像を二値化処理しているため、求められたフロックの面積および個数のいずれかの精度が低下する虞がある。
【0007】
本発明は、フロックの面積と個数とを共に精度良く求めることが可能なフロック評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本第1発明におけるフロック評価方法は、間隙水中に浮遊するフロックを撮像してフロック画像を得るフロック撮像工程と、
フロック画像を異なる第1および第2の閾値でそれぞれ二値化処理して第1および第2の二値化フロック画像を得る二値化処理工程と、
第1の二値化フロック画像から所定領域におけるフロックの面積を求め、第2の二値化フロック画像から所定領域におけるフロックの個数を求める第1の評価工程と、
を備えるものである。
【0009】
これによると、フロックの面積を求めるのに最適な閾値を第1の閾値とし、フロックの個数を求めるのに最適な閾値を第2の閾値とすることにより、フロックの面積と個数とを共に精度良く求めることができる。
【0010】
本第2発明におけるフロック評価方法は、第1の評価工程で得られたフロックの面積とフロックの個数とに基づいて、フロック1個当たりの平均面積および平均粒径の少なくともいずれかを求める第2の評価工程を備えるものである。
【0011】
これによると、フロック1個当たりの平均面積および平均粒径を精度良く求めることができる。
【0012】
本第3発明におけるフロック評価方法は、二値化する閾値を変化させてフロック画像を二値化処理することにより、複数の二値化フロック画像を作成し、
目視によって認識したフロック画像中のフロックの輪郭に最も良く合致する二値化フロック画像を、複数の二値化フロック画像の内から選んで、標準二値化フロック画像とし、
二値化処理工程において、標準二値化フロック画像を作成する際に用いた閾値を第1の閾値として、第1の二値化フロック画像を得るものである。
【0013】
これによると、第1の閾値を、フロックの面積を求めるのに最適な閾値に設定することができる。
【0014】
本第4発明におけるフロック評価方法は、二値化する閾値を変化させてフロック画像を二値化処理して得られた二値化フロック画像中のフロックの個数が最大となる閾値を第2の閾値として、第2の二値化フロック画像を得るものである。
【0015】
これによると、第2の閾値を、フロックの個数を求めるのに最適な閾値に設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によると、フロックの面積を求めるのに最適な閾値を第1の閾値とし、フロックの個数を求めるのに最適な閾値を第2の閾値とすることにより、フロックの面積と個数とを共に精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態におけるフロックの撮像装置を備えた処理槽の図である。
図2】同、撮像装置の断面図である。
図3】同、撮像装置を用いたフロック評価方法の各工程を示す図である。
図4】同、フロック評価方法のフロック撮像工程で得られるフロック画像の図である。
図5】同、フロック評価方法の二値化処理工程で得られる第1の二値化フロック画像の図である。
図6】同、フロック評価方法の二値化処理工程で得られる第2の二値化フロック画像の図である。
図7】同、フロック評価方法において用いられる第1の閾値を求める際に使用されるサンプル用フロック画像の図である。
図8】同、サンプル用フロック画像中のフロックの輪郭を描いた図である。
図9】同、サンプル用フロック画像に基づいて作成されたフロック輪郭抽出画像の図である。
図10】同、サンプル用フロック画像を二値化処理して得られるサンプル用二値化フロック画像の図である。
図11】同、サンプル用フロック画像を二値化処理して得られるサンプル用二値化フロック画像の図である。
図12】同、サンプル用フロック画像を二値化処理して得られるサンプル用二値化フロック画像の図である。
図13】同、フロック評価方法において用いられる第2の閾値を求める際に使用されるサンプル用フロック画像を二値化処理して得られるサンプル用二値化フロック画像中のフロックの個数と二値化処理の閾値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
図1図2に示すように、1は、汚泥凝集処理システムにおいて、凝集剤が混合され攪拌された汚泥2(液体の一例)を貯留する処理槽である。汚泥2には、その間隙水3中に浮遊する多数のフロック4が存在している。
【0020】
10は汚泥2中のフロック4を撮像するための撮像装置(浮遊物撮像装置)である。この撮像装置10は、上端が閉口し下端が開口する円形の筒部材11と、筒部材11の上端部に設けられて筒部材11内の液面12を撮像可能なカメラ13(撮像手段の一例)と、照明装置14と、筒部材11内に空気15を供給する給気装置16とを有している。
【0021】
筒部材11は、金属製又は樹脂製の遮光体からなり、円筒状の周壁部20と、周壁部20の上端に設けられた天井部21とを有している。また、周壁部20の下部の周方向における一箇所には、内外に貫通する通気孔22が形成されている。
【0022】
カメラ13は、筒部材11の天井部21に取り付けられて、筒部材11内の液面12よりも上方に位置している。尚、カメラ13にはケーブル24を介して画像処理装置23が接続されている。
【0023】
給気装置16は、エアポンプ25と、エアポンプ25から筒部材11内に送られる空気15を除湿する除湿機26とを有している。これらエアポンプ25と除湿機26とは給気管17を介して筒部材11に接続されている。
【0024】
上記のような撮像装置10を用いたフロック評価方法を以下に説明する。
【0025】
図3に示すようにフロック評価方法は以下のようなフロック撮像工程31と二値化処理工程32と第1の評価工程33と第2の評価工程34とを備えている。
【0026】
●先ず、フロック撮像工程31において、照明装置14を点灯し、撮像装置10のエアポンプ25から筒部材11内に連続的に空気15を供給しながら、カメラ13で筒部材11内の液面12を撮像することにより、図4に示すように、汚泥2の間隙水3中に浮遊する多数のフロック4が撮像されたフロック画像38を得る。尚、フロック4の輝度レベルは低く黒色系であり、間隙水3の輝度レベルは高く白色系である。
【0027】
この際、図2に示すように、筒部材11の下端部が汚泥2中に浸漬されているため、筒部材11の周囲の液面27が波打っていても、この波は筒部材11に当って遮断される。これにより、筒部材11内の液面12は波立ちの少ない平穏な状態に保たれ、安定したフロック画像38を得ることができる。
【0028】
尚、筒部材11内に供給されている空気15は通気孔22を通って筒部材11の外部へ排出される。この際、筒部材11内の液面12は通気孔22の位置に保たれるので、カメラ13から液面12までの距離が一定になり、焦点の合った鮮明なフロック画像38を得ることができる。
【0029】
●次に、二値化処理工程32において、図5に示すように、フロック画像38を第1の閾値41で二値化処理して第1の二値化フロック画像42を得るとともに、図6に示すように、フロック画像38を第2の閾値43で二値化処理して第2の二値化フロック画像44を得る。尚、第1の閾値41と第2の閾値43とは異なった数値である。
【0030】
●次に、第1の評価工程33において、図5に示した第1の二値化フロック画像42から所定領域46におけるフロック4の総面積Sを求め、図6に示した第2の二値化フロック画像44から所定領域46におけるフロック4の個数Nを求める。
【0031】
●その後、第2の評価工程34において、第1の評価工程33で得られたフロック4の総面積Sとフロック4の個数Nとに基づいて、フロック1個当たりの平均面積Saおよび平均粒径Daを以下の関係式(1)(2)によって求める。
平均面積Sa=総面積S/個数N ・・・(1)
平均粒径Da=2×(総面積S/(π×個数N))1/2 ・・・(2)
尚、上記のような各工程31~34における画像処理は画像処理装置23において行われる。
【0032】
また、上記二値化処理工程32において使用される第1の閾値41はフロック4の総面積Sを求めるのに最適な数値に設定されており、第1の閾値41を求める方法を以下に説明する。
【0033】
先ず、撮像装置10を用いて汚泥2を撮像し、図7に示すように、サンプルとなるフロック画像50(以下、サンプル用フロック画像50と称する)を得る。そして、図8に示すように、作業者がサンプル用フロック画像50中のフロック4の輪郭5を目視に基づいて描くことにより、図9に示すように、フロック4の輪郭5のみを抽出したフロック輪郭抽出画像51を作成する。
【0034】
さらに、二値化する閾値を変化させて図7のサンプル用フロック画像50を二値化処理することにより、図10図12に示すように、複数枚(例えば3枚)のサンプル用二値化フロック画像52~54を作成する。これらサンプル用二値化フロック画像52~54の内から、図9に示したフロック輪郭抽出画像51中に描かれたフロック4の輪郭5に最も良く合致するサンプル用二値化フロック画像53を選び、このサンプル用二値化フロック画像53(図11参照)を標準二値化フロック画像53とし、この標準二値化フロック画像53を作成する際に用いた閾値を第1の閾値41として用いる。
【0035】
尚、フロック輪郭抽出画像51を作成することなく、サンプル用フロック画像50と複数枚のサンプル用二値化フロック画像52~54とを直接目視で比較することにより、標準二値化フロック画像53を選んでもよい。
【0036】
また、上記二値化処理工程32において使用される第2の閾値43はフロック4の個数Nを求めるのに最適な数値に設定されており、第2の閾値43を求める方法を以下に説明する。
【0037】
二値化する閾値を変化させて図7のサンプル用フロック画像50を二値化処理し、得られたサンプル用二値化フロック画像中のフロック4の個数Nが最大となる閾値を第2の閾値43として用いる。
【0038】
これについては、上記先行技術文献で挙げた特公平6-14006号公報に記載されている閾値決定法と同じである。ここでは、フロック4の輝度レベルは低く黒色系であり、間隙水3の輝度レベルは高く白色系であるため、閾値を低く設定した場合、例えば図13のグラフに示すように、閾値を1に設定した場合、サンプル用二値化フロック画像中の輝度レベル1以下の部分が黒色すなわちフロック4として認識され、輝度レベル1を超えた部分が白色すなわち間隙水3として認識される。このため、サンプル用二値化フロック画像中のほとんど全てが間隙水3として認識されてしまい、フロック4の個数Nは0個(又は0に近い少数個)になり、その結果、認識されるフロック4の個数Nが実際の個数よりも過小評価されてしまう。
【0039】
閾値を1から次第に高くしていくと、例えば、閾値を50に設定した場合、サンプル用二値化フロック画像中の輝度レベル50以下の部分が黒色すなわちフロック4として認識され、輝度レベル50を超えた部分が白色すなわち間隙水3として認識される。このため、認識されるフロック4の個数Nが増加して実際の個数に次第に近付く。
【0040】
さらに閾値を高くしていくと、例えば、閾値を250に設定した場合、サンプル用二値化フロック画像中の輝度レベル250以下の部分が黒色すなわちフロック4として認識され、輝度レベル250を超えた部分が白色すなわち間隙水3として認識される。このため、サンプル用二値化フロック画像中の実際には複数個存在しているフロック4が纏まって合体した1個の大きなフロック4として認識されてしまい、その結果、フロック4の個数Nは減少し、実際の個数よりも過小評価されてしまう。
【0041】
上記のように、フロック4の個数Nは、閾値を高くしていくと増加するが、ある閾値を超えると減少し、フロック4の個数Nが最大となる閾値Aが存在する。このように、サンプル用二値化フロック画像中のフロック4の個数Nが最大となる閾値Aを第2の閾値43として採用する。
【0042】
上記のようなフロック評価方法によると、フロック4の面積Sを求めるのに最適な閾値である第1の閾値41と、フロック4の個数Nを求めるのに最適な閾値である第2の閾値43との2つの閾値を用いることにより、フロック4の面積Sと個数Nとを共に精度良く求めることができる。
【0043】
また、第2の評価工程34において、フロック1個当たりの平均面積Saおよび平均粒径Daを精度良く求めることができる。
【0044】
尚、図13のグラフに記載された閾値の数値は一例であって、汚泥2の性状等によって異なる。
【符号の説明】
【0045】
3 間隙水
4 フロック
5 フロックの輪郭
31 フロック撮像工程
32 二値化処理工程
33 第1の評価工程
34 第2の評価工程
38 フロック画像
41 第1の閾値
42 第1の二値化フロック画像
43 第2の閾値
44 第2の二値化フロック画像
46 所定領域
51 フロック輪郭抽出画像
52 サンプル用二値化フロック画像
53 サンプル用二値化フロック画像,標準二値化フロック画像
54 サンプル用二値化フロック画像
S フロックの総面積
N フロックの個数
Sa 平均面積
Da 平均粒径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13