IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

<>
  • 特許-サイホン排水システム 図1
  • 特許-サイホン排水システム 図2
  • 特許-サイホン排水システム 図3
  • 特許-サイホン排水システム 図4
  • 特許-サイホン排水システム 図5
  • 特許-サイホン排水システム 図6
  • 特許-サイホン排水システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】サイホン排水システム
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E03C1/122 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020201117
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022088965
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 敏朗
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-13597(JP,A)
【文献】特開2001-336191(JP,A)
【文献】特開2019-214909(JP,A)
【文献】特開2008-111319(JP,A)
【文献】特開2018-25074(JP,A)
【文献】特開2007-56459(JP,A)
【文献】特開2009-243036(JP,A)
【文献】特開2004-251075(JP,A)
【文献】特開平10-292578(JP,A)
【文献】特開2005-220538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に延在し、水廻り器具からの排水を流す横引き管と、
前記横引き管の下流側に接続されて下方向に延在し、排水立て管に設けられた合流継手に接続された竪管と、
を備え、
前記竪管は、
前記排水立て管に沿って縦方向へ延びる縦部と、
該縦部の下流端に接続され且つ前記縦方向に対して傾斜し、前記合流継手に接続される傾斜部と、
前記縦部と前記傾斜部とを接続する第一継手と、
前記傾斜部と前記合流継手とを接続する第二継手と、
を有し、
前記縦部、前記傾斜部、前記第一継手及び前記第二継手が、硬質ポリ塩化ビニル管で構成され、
前記横引き管は、前記竪管よりも可撓性を有する管で構成されている
サイホン排水システム。
【請求項2】
前記第一継手は、11.2°以上22.3°以下の屈曲角度で屈曲する
請求項1に記載のサイホン排水システム。
【請求項3】
前記第二継手は、前記第一継手の屈曲角度と同じ屈曲角度で屈曲する、
請求項2に記載のサイホン排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイホン排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、横方向に延在し水廻り器具からの排水を流す横引き管と、該横引き管の下流側に接続され横引き管からの排水を下方に流す竪管と、を備えるサイホン排水システムが開示されている。このサイホン排水システムでは、竪管は、横引き管の下流側に接続され鉛直方向に延在する第1の鉛直部と、該第1の鉛直部の下流側に設けられ鉛直方向に対して傾斜する第1傾斜部分と、該第1傾斜部分の下流側に設けられ鉛直方向に延在する第2の鉛直部と、を有している。そして、該第1傾斜部分は、竪管の鉛直方向中間部よりも上側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-25074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1のように鉛直部及び傾斜部分を有する竪管として、可撓性を有するポリブデン管を用いることが考えられる。ポリブデン管は汎用性が低いため、ポリブデン管を用いる場合では、汎用的に用いられる硬質ポリ塩化ビニル管等の配管を用いる場合に比べ、コストが高くなる。また、ポリブデン管を排水立て管などに接続する際には、専用の継手が必要となるため、この点からも、コストが高くなる。
【0005】
また、サイホン排水システムでは、排水立て管に設けられた合流継手に竪管を接続するが、その施工性が優れることが望まれる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、安価で施工性に優れるサイホン排水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係るサイホン排水システムは、横方向に延在し、水廻り器具からの排水を流す横引き管と、前記横引き管の下流側に接続されて下方向に延在し、排水立て管に設けられた合流継手に接続され、硬質ポリ塩化ビニル管で構成された竪管と、を備え、前記竪管は、前記排水立て管に沿って縦方向へ延びる縦部と、該縦部の下流端に接続され且つ前記縦方向に対して傾斜し、前記合流継手に接続される傾斜部と、を有する。
【0008】
このように、第1態様の構成では、竪管が、ポリブデン管に比べ汎用的に用いられる硬質ポリ塩化ビニル管(以下、塩ビ管という)で構成されているので、竪管としてポリブデン管を用いる構成に比べ、サイホン排水システムを安価に構成できる。また、竪管が塩ビ管で構成されている場合では、ポリブデン管を用いる構成と異なり、専用の継手が不要となるため、この点からも、サイホン排水システムを安価に構成できる。
【0009】
また、第1態様の構成では、縦部の下流端に接続される傾斜部が、合流継手に接続されるので、縦部の下流端が合流継手に対して水平方向にオフセットしている量に応じて、傾斜部の長さを微調整しつつ、傾斜部を合流継手に接続できる。このため、傾斜部の下流端に接続される縦部が、合流継手に接続される構成に比べ、施工性に優れる。
【0010】
以上のように、第1態様の構成によれば、安価で施工性に優れるサイホン排水システムを提供できる。
【0011】
第2態様に係るサイホン排水システムは、前記縦部と前記傾斜部とを接続し、22.3°以下の屈曲角度で屈曲する継手、を備える。
【0012】
ここで、継手の屈曲角度が22.3°を超える場合には、竪管を流れる排水が抵抗を受けて排水能力が低下する。これに対して、第2態様の構成では、継手の屈曲角度が22.3°以下とされているので、竪管を流れる排水が抵抗を受けにくく、排水能力の低下を抑制できる。
【0013】
第3態様に係るサイホン排水システムは、前記傾斜部と前記合流継手とを接続し、前記継手としての第一継手の屈曲角度と同じ屈曲角度で屈曲する第二継手、を備える。
【0014】
このように、第3態様の構成では、第二継手が、第一継手の屈曲角度と同じ屈曲角度で屈曲するので、第一継手及び第二継手として、共通の継手を用いることができる。
【0015】
第4態様に係るサイホン排水システムでは、前記横引き管は、前記竪管よりも可撓性を有する管で構成されている。
【0016】
このように、第4態様の構成では、横引き管が竪管よりも可撓性を有する管で構成されているので、横引き管に塩ビ管を用いる構成に比べ、横引き管の取り回しがしやすく、施工性に優れる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明のサイホン排水システムによれば、安価で施工性に優れるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係るサイホン排水システムの全体構成を示す概略図である。
図2】本実施形態に係るサイホン排水システムの竪管の一部及び合流継手を拡大して示す概略図である。
図3】本実施形態に係るサイホン排水システムの竪管の傾斜部及び合流継手の接続部が継手に接続される様子を示す概略図である。
図4】本実施形態に係る継手を示す断面図である。
図5】本実施形態に係る継手を射出成型するための金型の一部を示す概略図である。
図6】本実施形態に係る竪管の縦部及び傾斜部の長さの求め方を説明するための概念図である。
図7】評価試験の評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0020】
(サイホン排水システム10)
サイホン排水システム10について説明する。図1には、本実施形態に係るサイホン排水システム10の全体構成が概略図にて示されている。サイホン排水システム10は、サイホン力を利用して水廻り器具20からの排水を効率よく排出する排水システムである。なお、各図に示される、鉛直方向及び水平方向における寸法比は、実際の構成と異なる場合がある。
【0021】
図1に示されるように、サイホン排水システム10は、一例として、複数階(図1では、所定の階のみ図示)で構成された集合住宅に用いられる。集合住宅は、排水を下方へ流す排水立て管12を備えている。排水立て管12は、集合住宅の上下方向(すなわち鉛直方向)に延設され、集合住宅の各階のコンクリート製の床スラブ14を貫いている。なお、排水立て管12は、住戸の内外を仕切る外壁16の外側、例えば、メーターボックス18の中に配置されている。また、サイホン排水システム10は、集合住宅に好適に用いられるが、集合住宅以外の戸建て住宅や工場等にも用いることができる。
【0022】
集合住宅の各階の各戸には、水廻り器具20が設けられている。具体的には、水廻り器具20は、各戸における外壁16の内側、例えば、居室19に設置されている。この水廻り器具20には、排水方向下流側に排水トラップ24が接続されている。
【0023】
排水トラップ24の排水方向下流側には、L字状に曲げられた第一L字配管部材26が配置されている。第一L字配管部材26は、排水トラップ24に接続されて鉛直方向に延びる鉛直部26Aと、床スラブ14の上に配置されて水平方向に沿って延びる水平部26Bと、鉛直部26Aと水平部26Bとを繋ぐ湾曲部26Cと、有している。
【0024】
第一L字配管部材26の排水方向下流側には、横方向に延在し、水廻り器具20からの排水を流す横引き管28が配置されている。具体的には、横引き管28は、床スラブ14の上に配置されて、水平方向(換言すれば、鉛直方向に対して直角方向)に延びている。第一L字配管部材26と横引き管28とは、継手30を介して接続されている。
【0025】
横引き管28の排水方向下流側には、L字状に曲げられた第二L字配管部材34が配置されている。第二L字配管部材34は、床スラブ14の上に配置されて水平方向に沿って延びる水平部34Aと、鉛直方向に延びる鉛直部34Bと、水平部34Aと鉛直部34Bとを繋ぐ湾曲部34Cと、を有している。第二L字配管部材34は、水平部34Aが継手32を介して横引き管28に接続されている。
【0026】
第二L字配管部材34の排水方向下流側には、下方向に延在して排水立て管12に接続される竪管50が配置されている。竪管50は、排水方向の上流端部50Aが、継手36を介して第二L字配管部材34の鉛直部34Bに接続されている。換言すれば、竪管50は、第二L字配管部材34を介して横引き管28の下流側に接続されている。竪管50の排水方向の下流端部50Bは、排水立て管12の中間部に取付けられた合流継手40に接続されている。
【0027】
以上のように、本実施形態では、サイホン排水管60は、第一L字配管部材26、横引き管28、第二L字配管部材34及び竪管50を有している。また、本実施形態では、第一L字配管部材26の内径、横引き管28の内径、第二L字配管部材34の内径、及び竪管50の内径が同一内径に設定されている。第一L字配管部材26及び第二L字配管部材34は、一例として、硬質塩化ビニル樹脂等の合成樹脂で形成された市販品(例えば、エルボとも呼ばれる)を用いることができる。横引き管28は、竪管50よりも可撓性を有している。具体的には、横引き管28は、継手を有さないポリブデン管で構成されている。
【0028】
本実施形態では、図1に示されるように、竪管50は、縦部51と、傾斜部54と、を有している。縦部51は、排水立て管12に沿って縦方向(具体的には鉛直方向)に沿って延びている。傾斜部54は、縦部51の下流端に接続され且つ縦方向(具体的には鉛直方向)に対して傾斜し、合流継手40に接続されている。具体的には、図2に示されるように、傾斜部54は、上端(すなわち上流端)が縦部51の下端に対して、継手70を介して接続されており、下端(下流端)が、継手80を介して合流継手40の接続部42(図3参照)に接続されている。また、傾斜部54は、縦部51の下端から下側に向かうにつれて徐々に居室19に対する排水立て管12側(図1における右側)にずれるように、縦方向(具体的には鉛直方向)に対して傾斜している。本実施形態では、傾斜部54が縦部51に対する下側(下流側)に配置されており、傾斜部54が竪管50における下側部分(下流側部分)を構成している。換言すれば、傾斜部54は、竪管50における鉛直方向の中央よりも下側に配置されている。
【0029】
また、竪管50は、上流端部50Aが下流端部50Bに対して、水平方向にオフセットしている。このオフセット方向は、排水立て管12に対する居室19側(図1において水廻り器具20が設置される左側)である。換言すれば、竪管50の縦部51は、水平方向にて、合流継手40の接続部42に対して排水立て管12に対する居室19側にずれている。このオフセット量を、図1では、寸法Aにて示している。
【0030】
なお、竪管50の上流端部50Aは、上端部であり、第二L字配管部材34を介して横引き管28に接続される接続部分である。一方、竪管50の下流端部50Bは、下端部であり、合流継手40を介して排水立て管12に接続される接続部分である。なお、竪管50は、矢印X方向に見ると、直線状を成している。また、竪管50は、例えば、縦部51が、支柱(図示省略)に対して支持されていてもよい。さらに、竪管50は、縦部51及び傾斜部54を含めて、塩ビ管で構成されている。
【0031】
継手70は、図2に示されるように、前述のように、縦部51と傾斜部54とを接続する継手であって、図4に示されるように、略円筒状に形成されている。継手70の軸方向一端部には、縦部51が挿入される挿入孔71が形成されている。挿入孔71は、上側へ開口している。なお、継手70は、第一継手の一例である。
【0032】
継手70の軸方向他端部には、傾斜部54が挿入される挿入孔74が形成されている。挿入孔74は、下側へ開口している。挿入孔71の孔径と挿入孔74の孔径とは、縦部51の外径と傾斜部54の外径とに応じた内径を有しており、同一径とされている。
【0033】
継手70の内部における挿入孔71と挿入孔74との間には、挿入孔71と挿入孔74とを連結する連結孔73が形成されている。連結孔73は、軸方向中央で屈曲しており、軸方向中央から挿入孔71までの部分をなす一端部73Aと、軸方向中央から挿入孔74までの部分をなす他端部73Bと、を有している。一端部73Aは、挿入孔71の同軸上に配置されており、孔径が挿入孔71の孔径よりも小径とされている。これにより、挿入孔71に挿入された縦部51の端面が突き当る突当面71Aが形成されている。他端部73Bは、挿入孔74の同軸上に配置されており、孔径が挿入孔74の孔径よりも小径とされている。これにより、挿入孔74に挿入された傾斜部54の端面が突き当る突当面74Aが形成されている。
【0034】
そして、継手70は、22.3°以下の屈曲角度θで屈曲している。屈曲角度θは、側面視において、継手70の挿入孔71の軸方向と、挿入孔74の軸方向とがなす鋭角側の角度である。
【0035】
継手70は、図5に示されるように、例えば、挿入孔71及び連結孔73の一端部73Aを形成するための第一ピン101と、挿入孔74及び連結孔73の他端部73Bを形成するための第二ピン102と、を有する金型100を用いた射出成型により製造される。継手70を射出成型する際には、第一ピン101及び第二ピン102は、図5における上下に分かれるように(矢印Y参照)、成型された継手70から抜かれる。そして、第一ピン101及び第二ピン102を、成型された継手70から抜ける形状とすることで、連結孔73における内側(すなわち、曲率半径が小さい側であって図4における右側)の軸方向中央(すなわち、第一ピン101と第二ピン102との境界部分)には、角部78(エッジ)が形成される。
【0036】
継手80は、図3に示されるように、傾斜部54と合流継手40とを接続する継手であって、略円筒状に形成されている。具体的には、継手80は、継手70と同様に構成されており、継手70を左右反転した状態で用いる。したがって、継手80は、継手70の屈曲角度と同じ屈曲角度で屈曲している。継手80では、挿入孔71に傾斜部54が挿入され、挿入孔74に合流継手40の円筒状の接続部42が挿入される。なお、継手80は、第二継手の一例である。継手70及び継手80は、例えば、硬質塩化ビニル樹脂等の合成樹脂で形成される。
【0037】
ここで、竪管50では、縦部51の軸方向長さ51L及び傾斜部54の軸方向長さ54Lは、以下の式により、おおよその長さが求められる(図6参照)。以下の式では、竪管50全体の鉛直方向長さ(すなわち、第二L字配管部材34から合流継手40までの鉛直方向長さ)をHとし、オフセット量をAとし、屈曲角度をθとする。
【0038】
縦部51の軸方向長さ51L=H-A×tan(90-θ)
【0039】
傾斜部54の軸方向長さ54L=A/cos(90-θ)
【0040】
(本実施形態の作用効果)
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0041】
本実施形態のサイホン排水システム10によれば、水廻り器具20から排出された排水は、排水トラップ24、サイホン排水管60、及び合流継手40を経て排水立て管12へ合流する(図1参照)。
【0042】
水廻り器具20から大量の排水がサイホン排水管60に流入する場合には、横引き管28が排水で満水となり、その後、排水は、満水状態を維持して竪管50に流れる。満水となった排水が竪管50内を重力により落下すると、サイホン水頭Hs(図1参照)のポテンシャルエネルギ-により、サイホン力が発生する。横引き管28の内部の排水は、サイホン力によって竪管50に向かって吸引されて流下し、効率的に排水が行われる。
【0043】
ここで、本実施形態では、竪管50が、ポリブデン管に比べ汎用的に用いられる塩ビ管で構成されているので、竪管50としてポリブデン管を用いる構成に比べ、サイホン排水システムを安価に構成できる。また、竪管50が塩ビ管で構成されている場合では、ポリブデン管を用いる構成と異なり、専用の継手が不要となるため、この点からも、サイホン排水システムを安価に構成できる。
【0044】
また、本実施形態では、縦部51の下流端に接続される傾斜部54が、合流継手40に接続されるので、縦部51の長さ(すなわち、縦部51の下流端の位置)を微調整しつつ、縦部51の下流端に継手70を介して傾斜部54を接続できる。さらに、縦部51の下流端の合流継手40に対するオフセット量Aに応じて、傾斜部54の長さを微調整しつつ、傾斜部54を合流継手40の接続部42に接続できる。このため、傾斜部54の下流端に接続される縦部51が合流継手40に接続される構成に比べ、施工性に優れる。このように、竪管50の下部(すなわち、合流継手40の周辺部)で、竪管50の施工作業を行えるので、この点からも施工性に優れる。
【0045】
以上のように、本実施形態の構成によれば、安価で施工性に優れるサイホン排水システム10を提供できる。
【0046】
また、本実施形態では、継手70及び継手80は、22.3°以下の屈曲角度で屈曲している。ここで、継手70及び継手80の屈曲角度が22.3°を超える場合には、竪管50を流れる排水が抵抗を受けて排水能力が低下する。また、本実施形態のように、継手70及び継手80の連結孔73に角部78(エッジ)が形成される構成では、継手70及び継手80の屈曲角度が22.3°を超えると、継手70及び継手80を流れる水流に剥離が生じやすく、排水能力が低下しやすい。
【0047】
これに対して、本実施形態では、継手70及び継手80の屈曲角度が22.3°以下とされているので、竪管を流れる排水が抵抗を受けにくく、また、継手70及び継手80を流れる水流に剥離が生じにくく、排水能力の低下を抑制できる。
【0048】
また、本実施形態では、継手80は、継手70の屈曲角度と同じ屈曲角度で屈曲している。すなわち、継手80は、継手70と同様に構成されている。このため、継手70及び継手80として、共通の継手を用いることができる。また、継手70と継手80とが同じ屈曲角度で屈曲しているため、継手80を合流継手40の接続部42に対して、鉛直方向に接続できる。このため、竪管50が傾斜部54を有せず縦部51を接続部42に接続する構成と、合流継手40を共通化できる。
【0049】
また、本実施形態では、横引き管28が竪管50よりも可撓性を有するポリブデン管で構成されている。このため、横引き管28に塩ビ管を用いる構成に比べ、横引き管28の取り回しがしやすく、施工性に優れる。すなわち、本実施形態では、横引き管28については、取り回しのしやすさを優先して、ポリブデン管を用い、竪管50については、コストを優先して塩ビ管を用いている。
【0050】
また、本実施形態では、竪管50の上流端部50Aが、竪管50の下流端部50Bに対して、水平方向にオフセットしている。このオフセット方向は、排水立て管12に対する居室19側(図1における左側)である。
【0051】
このため、横引き管28の長さ(厳密には、第一L字配管部材26の水平部26B及び第二L字配管部材34の水平部34Aを含む長さB)にオフセット量Aを加えた長さ分、排水立て管12と水廻り器具20との水平方向の距離をとることができる。したがって、本実施形態の構成によれば、オフセット方向が排水立て管12に対して居室19側とは反対側(図1における右側)である構成に比べ、水廻り器具20の配置位置の制約を受けにくく、水廻り器具20の設計自由度が向上する。この結果、横引き管28を配管するルートの自由度が向上し、施工性も向上する。
【0052】
(評価試験)
次に、評価試験について説明する。本試験では、継手70及び継手80の角度θ(屈曲角度θ)を0°、11.2°、22.3°、30°、45°に変化させたときの排水能力を測定した。なお、角度が0°とは、継手70及び継手80が屈曲していないストレート形状の継手を用いていることを示す。この場合では、傾斜部54が鉛直方向に沿って配置され、合流継手40の接続部42に接続される。
【0053】
排水能力は、水廻り器具20としてのユニットバスから連続的に排水した場合における単位時間当たりの排水量[L/sec]を測定した。横引き管28には、呼び径が25Aで長さ10mのポリブデン管を用いた。サイホン水頭Hs(すなわち垂直管長)は、2.5mに設定されている。オフセット量Aは、100mmとされている。
【0054】
この結果、図7の表に示されるように、角度θが0°、11.2°、22.3°の場合は、いずれも、排水能力が、1.21[L/sec]となった。
【0055】
角度θが30°の場合は、排水能力が、1.14[L/sec]となった。角度θが45°の場合は、排水能力が、1.12[L/sec]となった。
【0056】
このように、排水能力は、少なくとも、角度θが22.3°以下であれば、角度θが0°の場合との差がない。すなわち、排水能力において、少なくとも、角度θが22.3°以下であれば、継手70及び継手80を屈曲させた影響がないことが確認された。
【0057】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0058】
本実施形態では、竪管50は、上流端部50Aが下流端部50Bに対して、排水立て管12に対する居室19側(図1において水廻り器具20が設置される左側)へオフセットしていたが、これに限られない。竪管50は、例えば、上流端部50Aが下流端部50Bに対して、排水立て管12に対する居室19側とは反対側(図1において右側)へオフセットする構成であってもよい。
【0059】
また、本実施形態では、継手70及び継手80は、22.3°以下の屈曲角度θで屈曲していたが、これに限られない。例えば、継手70及び継手80は、22.3°を超え且つ30°以下の範囲の屈曲角度θで屈曲する構成であってもよいし、30°を超え且つ45°以下の範囲の屈曲角度θで屈曲する構成であってもよい。
【0060】
本実施形態では、横引き管28として、継手を有さないポリブデン管を用いたが、これに限られない。例えば、横引き管28としては、ポリエチレン管、軟質塩化ビニル管等の他の種類の可撓性を有する樹脂管を用いてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、第一L字配管部材26の水平部26B、横引き管28、及び第一L字配管部材26の水平部26Bが水平方向に延びていたが、これらは横方向に延びていればよい。ここで、横方向とは、鉛直方向に対して90°の方向である水平方向に限らず、横方向には、鉛直方向に対して90°±5°の範囲で傾斜する場合も含まれる。90°+5°とは、排水方向下流側が上流側よりも上方となるように傾斜していることを意味し、90°-5°とは、下流側が上流側よりも下方となるように傾斜していることを意味する。
【0062】
また、本実施形態では、本実施形態の第二L字配管部材34の鉛直部34B、及び竪管50の縦部51は、鉛直方向に延びていたが、これらは縦方向に延びていればよい。ここで、縦方向は、鉛直方向に限られず、縦方向には、鉛直方向に対して5°の範囲で傾斜する場合も含まれる。さらに、鉛直部34B、及び縦部51は、少なくとも、傾斜部54よりも鉛直方向に沿った角度を有していればよい。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
10…サイホン排水システム、12…排水立て管、14…床スラブ、16…外壁、18…メーターボックス、19…居室、20…水廻り器具、24…排水トラップ、26…第一L字配管部材、26A…鉛直部、26B…水平部、26C…湾曲部、28…横引き管、30…継手、32…継手、34…第二L字配管部材、34A…水平部、34B…鉛直部、34C…湾曲部、36…継手、40…合流継手、42…接続部、50…竪管、50A…上流端部、50B…下流端部、51…縦部、54…傾斜部、60…サイホン排水管、70…継手、71…挿入孔、71A…突当面、73…連結孔、73A…一端部、73B…他端部、74…挿入孔、74A…突当面、78…角部、80…継手、100…金型、101…第一ピン、102…第二ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7