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  • 特許-潤滑油供給装置 図1
  • 特許-潤滑油供給装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】潤滑油供給装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 7/38 20060101AFI20240229BHJP
   F16N 7/32 20060101ALI20240229BHJP
   F16N 29/00 20060101ALI20240229BHJP
   F16N 39/04 20060101ALI20240229BHJP
   B23Q 11/12 20060101ALI20240229BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F16N7/38 B
F16N7/32 B
F16N29/00 B
F16N39/04
F16N7/38 E
B23Q11/12 E
B23Q17/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020216392
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101962
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】受井 嘉治
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-190497(JP,A)
【文献】特開平11-264499(JP,A)
【文献】特開2001-276462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 7/38
F16N 7/32
F16N 29/00
F16N 39/04
B23Q 11/12
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮エア供給源から圧縮エア供給管路を介して工作機械の潤滑点まで圧縮エアを供給する圧縮エア供給装置と、
潤滑油タンクに貯留された潤滑油を潤滑油供給管路を介して前記圧縮エア供給管路に供給する潤滑油供給装置と、
前記潤滑油タンクおよび前記潤滑油供給管路の少なくとも一方に設けられて、潤滑油の温度を検出する温度センサと、
前記圧縮エア供給装置に設けられて、圧縮エアの流速および/または流量を調整する圧縮エア調整手段と、
前記温度センサから出力された検出信号に基づいて、前記潤滑点に所望の量の潤滑油が供給されうるように前記圧縮エア調整手段を制御する制御装置とを備えた潤滑油供給装置。
【請求項2】
前記圧縮エア調整手段が、前記圧縮エア供給管路に設けられた圧縮エア流速調整弁である、請求項1に記載の潤滑油供給装置。
【請求項3】
さらに、前記潤滑油タンクおよび前記潤滑油供給管路の少なくとも一方に設けられて潤滑油を加熱する加熱装置を備えており、前記温度センサが前記加熱装置よりも下流側に位置するように設けられている、請求項1または2に記載の潤滑油供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば工作機械の主軸装置等において、潤滑油と圧縮エアを混合して生成されたオイルエアを軸受等の潤滑点へ供給するための潤滑油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高速・高精度化に対する要求が高い工作機械の主軸装置にあっては、軸受等の潤滑手段としてオイルエア潤滑やオイルミスト潤滑が広く採用されている。オイルエア潤滑やオイルミスト潤滑は、潤滑油を、圧縮エアを用いて搬送し、圧縮エアと共に軸受等の潤滑点へ吹き付ける方法である。
【0003】
このような潤滑油供給装置において、オイルエアの供給量が過少または過多となった場合、軸受等の潤滑が安定して行われず、主軸装置を精度よく回転させることが困難となるおそれがある。そのため、潤滑油供給装置には、適正量の潤滑油を安定して供給することが求められている。
例えば、下記の特許文献1には、排気ポンプを設置し、潤滑点に潤滑油と共に供給されて滞留しているエアを排気することにより、潤滑点の背圧を下げ、圧縮エアによる潤滑油の搬送を安定的に行う機能を備えた潤滑油供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4913577号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された潤滑油供給装置において、潤滑油の粘度は潤滑油の温度に依存しており、室温や外気温の低下に伴って潤滑油の温度が低下すると、圧縮エアによって搬送される潤滑油の粘度が増加して、潤滑油の搬送が正常に行われず、適正量の潤滑油が軸受等へ供給されないことがあった。さらに、そのような状態が続くと、軸受等の潤滑不良や焼付きが起こるおそれがあった。
【0006】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、潤滑油の温度低下に起因する潤滑不良や機械の損傷を回避しうる潤滑油供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0008】
1)圧縮エア供給源から圧縮エア供給管路を介して工作機械の潤滑点まで圧縮エアを供給する圧縮エア供給装置と、
潤滑油タンクに貯留された潤滑油を潤滑油供給管路を介して前記圧縮エア供給管路に供給する潤滑油供給装置と、
前記潤滑油タンクおよび前記潤滑油供給管路の少なくとも一方に設けられて、潤滑油の温度を検出する温度センサと、
前記圧縮エア供給装置に設けられて、圧縮エアの流速および/または流量を調整する圧縮エア調整手段と、
前記温度センサから出力された検出信号に基づいて、前記潤滑点に所望の量の潤滑油が供給されうるように前記圧縮エア調整手段を制御する制御装置とを備えた潤滑油供給装置。
【0009】
2)前記圧縮エア調整手段が、前記圧縮エア供給管路に設けられた圧縮エア流速調整弁である、請求項1に記載の潤滑油供給装置。
【0010】
3)さらに、前記潤滑油タンクおよび前記潤滑油供給管路の少なくとも一方に設けられて潤滑油を加熱する加熱装置を備えており、前記温度センサが前記加熱装置よりも下流側に位置するように設けられている、上記1)または2)の潤滑油供給装置。
【発明の効果】
【0011】
上記1)の潤滑油供給装置によれば、温度センサによって検出された潤滑油の温度に基づき、圧縮エアの流速および/または流量を適宜調整することにより、潤滑点へ安定して所望の量の潤滑油を供給することができ、潤滑不良や機械の損傷を未然に回避することができる。
【0012】
上記2)の潤滑油供給装置によれば、圧縮エアの流速および/または流量を調整するための圧縮エア調整手段の設置スペースおよびコストを最小限に抑えることができ、効率的に潤滑点へ安定して所望の量の潤滑油を供給することができ、潤滑不良や機械の損傷を未然に回避することができる。
【0013】
上記3)の潤滑油供給装置によれば、温度センサによって検出された潤滑油の温度が低下した場合に、加熱装置によって潤滑油を加熱することにより、圧縮エアと共に潤滑点に供給される潤滑油の粘度が下がり、それによって潤滑油の搬送が正常に行われるようになる。従って、上記3)の潤滑油供給装置によれば、圧縮エア調整手段による圧縮エアの流速および/または流量の調整と合わせて、より効率的に潤滑点へ安定して所望の量の潤滑油を供給することができ、潤滑不良や機械の損傷を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の第1の実施形態に係る潤滑油供給装置の全体概略を模式的に示す図である。
図2】この発明の第2の実施形態に係る潤滑油供給装置の全体概略を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態に係る潤滑油供給装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、この発明を、工作機械における主軸装置の軸受や歯車の噛合部等の潤滑点に潤滑油を供給する潤滑油供給装置に適用したものである。
図1に示すように、潤滑油供給装置(1A)は、工作機械の潤滑点まで圧縮エアを供給する圧縮エア供給装置(3)と、潤滑油を供給する潤滑油供給装置(2)を備えている。
【0017】
詳細には、圧縮エア供給装置(3)は、圧縮エアを生成するコンプレッサ(31)から主軸装置(5)における軸受等の1以上(ここでは2つ)の潤滑点(51)まで圧縮エアを供給する圧縮エア供給管路(32)と、圧縮エア供給管路(32)上に設けられて潤滑油供給装置(2)からの潤滑油を供給するミキシングバルブ(33)とを備えている。
【0018】
圧縮エア供給管路(32)は、ミキシングバルブ(33)の上流側に位置する一次側管路部(32a)と、ミキシングバルブ(33)の下流側に位置する二次側管路部(32b)とを備えている。
二次側管路部(32b)は、オイルエアを供給すべき主軸装置(5)の潤滑点(51)の数に対応した数(ここでは2つ)だけ設けられている。二次側管路部(32b)は、例えばナイロンチューブ等によって構成されている。潤滑油は、二次側管路部(32b)の内壁面に付着した状態で、同管路部(32b)内を流れる圧縮エアに連行されて潤滑点(51)まで搬送される。
【0019】
圧縮エア供給管路(32)の一次側管路部(32a)には、さらに、圧縮エアの流速および/または流量を調整する圧縮エア調整手段(7)として、圧縮エア流速調整弁が設置されている。
なお、圧縮エア調整手段(7)は、コンプレッサ(31)もしくは圧縮エア供給管路(32)の二次側管路部(32b)に設置されていてもよい。
また、圧縮エア調整手段(7)は特に限定されず、可変レギュレータ等を設置して圧縮エア供給管路(32)を流れる圧縮エアの流速および/または流量を調整してもよい。
【0020】
潤滑油供給装置(2)は、潤滑油タンク(21)と、ポンプ(22)と、潤滑油供給管路(23)とを備えている。潤滑油タンク(21)に貯留されている潤滑油は、ポンプ(22)で圧送されて、潤滑油供給管路(23)を流通して、ミキシングバルブ(33)まで供給される。
ミキシングバルブ(33)では、圧縮エア供給管路(32)を流れる圧縮エアと、潤滑油タンク(21)から供給された潤滑油とが混合されて、オイルエアが生成される。
【0021】
潤滑油供給管路(23)には、温度センサ(6)が設けられている。この温度センサ(6)により、潤滑油供給管路(23)を流通する潤滑油の温度が検出されるようになっている。
なお、温度センサ(6)は、潤滑油タンク(21)に設置してもよい。
【0022】
潤滑油供給装置(1A)は、さらに、温度センサ(6)から出力された検出信号に基づいて、圧縮エア流速調整弁(7)を制御する制御装置(8)を備えている。
制御装置(8)は、温度センサ(6)から出力された潤滑油の温度の検出信号を、配線を通じてまたはワイヤレスで受信するようになっている。
この制御装置(8)は、温度センサ(6)によって検出された潤滑油の温度に基づいて、圧縮エア流速調整弁(7)を制御して圧縮エア供給管路(32)を流れる圧縮エアの流速および/または流量を調整するようにプログラムされている。これにより、潤滑油の温度の変化による潤滑油の粘度の変化に対応して、潤滑点(51)へ安定して所望の量の潤滑油が供給される。
【0023】
また、制御装置(8)を主軸装置(5)と配線を通じてまたはワイヤレスで接続して、主軸装置(5)の運転を制御しうるようにしてもよい。そして、温度センサ(6)によって検出された潤滑油の温度に基づいて主軸装置(5)の運転を制御するようにプログラムすることで、より安全に工作機械を使用することができる。
【0024】
[第2の実施形態]
図2には、この発明の第2の実施形態に係る潤滑油供給装置が示されている。
この実施形態の潤滑油供給装置(1B)は、以下の点を除いて、図1に示す第1の実施形態の潤滑油供給装置(1A)と実質的に同じである。すなわち、潤滑油供給装置(1B)は、さらに、潤滑油供給管路(23)に設けられて同管路(23)を流通する潤滑油を加熱する加熱装置(9)と、温度センサ(6)から出力された検出信号に基づいて加熱装置(9)による加熱を制御する加熱制御装置(10)とを備えている。
【0025】
加熱装置(9)としては、潤滑油供給管路(23)を流通する潤滑油を加熱しうるものであれば特に限定されないが、例えば電気ヒータ等が用いられる。
なお、加熱装置(9)は、潤滑油タンク(21)に設置してもよい。
【0026】
加熱制御装置(10)は、温度センサ(6)から出力された圧縮エアの温度の検出信号を、配線を通じてまたはワイヤレスで受信するようになっている。
この加熱制御装置(10)は、温度センサ(6)によって検出された温度が予め設定した下限温度よりも低くなった場合に加熱装置(9)を作動させるとともに、温度センサ(6)によって検出された温度が予め設定した上限温度よりも高くなった場合に加熱装置(9)を停止させるようにプログラムされている。下限温度は、潤滑油の粘度を考慮して、圧縮エアによる潤滑油の搬送が正常に行われる温度の下限値に設定される。上限温度は、オイルエアの吹き付けによる潤滑点の冷却効果を考慮して、適宜設定される。この実施形態の加熱制御装置(10)によれば、必要以上に潤滑油が加熱されるのが回避されるため、加熱に使用するエネルギーの無駄が軽減される上、潤滑油が高温になって潤滑点の冷却効果が低減するのを抑制することができる。
なお、加熱制御装置(10)による加熱装置(9)の停止は、上記手段に限らず、例えばタイマーを設定して、加熱装置(9)を一定時間作動させた後に停止させるようにしてもよい。
また、加熱制御装置(10)は制御装置(8)と一体の装置としてもよい。
【0027】
上記の各実施形態では、この発明をオイルエア潤滑方式の潤滑油供給装置に適用した例を示したが、その他、オイルミスト潤滑方式の潤滑油供給装置についても、上記と同様にこの発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、例えば工作機械の主軸装置等において、圧縮エアを用いて潤滑油を軸受や歯車の噛合部等の潤滑点へ供給するための潤滑油供給装置として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0029】
(1A)(1B):潤滑油供給装置
(2):潤滑油供給装置
(21):潤滑油タンク(潤滑油供給源)
(22):ポンプ
(23):潤滑油供給管路
(3):圧縮エア供給装置
(31):コンプレッサ(圧縮エア供給源)
(311):エア入口
(32):圧縮エア供給管路
(32a):一次側管路部
(32b):二次側管路部
(33):ミキシングバルブ
(5):主軸装置
(51):潤滑点
(6):温度センサ
(7):圧縮エア調整手段(圧縮エア流速調整弁)
(8):制御装置
(9):加熱装置
(10):加熱制御装置
図1
図2