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▶ マッケ カーディオバスキュラー エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】血管採取装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240229BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20240229BHJP
   A61B 17/3209 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B18/14
A61B17/3209
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020538576
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 US2019012708
(87)【国際公開番号】W WO2019139905
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】15/870,823
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512300883
【氏名又は名称】マッケ カーディオバスキュラー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,ライミング
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0035487(US,A1)
【文献】特表2004-531327(JP,A)
【文献】米国特許第05053041(US,A)
【文献】特表2016-514016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
A61B 18/14
A61B 17/3209
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体から血管を採取するための装置であって、前記装置は、前記装置の長手方向の長さに沿って伸びる中心軸を有し、前記装置は、
遠位端、および、前記血管に沿って前進してトンネルを形成するための解剖器具を有するカニューレであって、前記解剖器具は、前記カニューレの遠位端に結合され、前記解剖器具は透明部を含み、前記解剖器具は、前記中心軸からずれた第1の長手方向軸に位置する、カニューレと、
前記カニューレに移動可能に結合されたエネルギーツールであって、前記エネルギーツールは、少なくとも前記血管の部分および前記血管の部分の周りの茎を有する有茎血管を周辺組織から分離するように構成され、前記エネルギーツールの少なくとも一部は、前記エネルギーツールの使用中、前記解剖器具の透明部を通して可視であり、前記エネルギーツールは、前記中心軸からずれた第2の長手方向軸に位置し、前記第2の長手方向軸は、前記第1の長手方向軸と異なる、エネルギーツールと、
第1の撮像デバイスであって、前記カニューレは、前記第1の撮像デバイスを収容する管腔を備え、前記第1の撮像デバイスは、前記解剖器具による組織解剖を可視化するように配置され、前記組織解剖の可視化は、前記解剖器具の透明部を通してのみ起こり得る、第1の撮像デバイスと、
遠位端を有する第2の撮像デバイスであって、前記第2の撮像デバイスの遠位端から前記エネルギーツールに伸びる軸は、前記エネルギーツールの使用中、前記解剖器具の透明部を横断し、前記第2の撮像デバイスは、前記エネルギーツールによって行われる手術を可視化するように配置され、前記手術の可視化は、前記解剖器具の透明部を通してのみ起こり得る、第2の撮像デバイスと、
を備える、装置。
【請求項2】
前記エネルギーツールは、後退位置および伸長位置を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記エネルギーツールは、前記エネルギーツールが前記後退位置から前記伸長位置に移動すると、前記装置の長手方向軸に向かって曲がるように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記エネルギーツールは、前記エネルギーツールが前記カニューレの長手方向軸に平行な方向に沿って摺動可能であるように、前記カニューレに摺動可能に結合される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記エネルギーツールは操縦可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記エネルギーツールは、鈍い先端部またはへら状先端部を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記エネルギーツールは、鉗子型ジョーを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記エネルギーツールは、前記カニューレの長手方向軸の周りの円周方向の曲線経路に沿って移動可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記エネルギーツールは、前記カニューレの長手方向軸に対するその配向を変更するように回転可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記エネルギーツールは、前記第2の撮像デバイスの遠位端より遠位の位置に移動可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、前記カニューレに移動可能に結合された鉤をさらに備え、前記鉤は、前記有茎血管と係合するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記鉤は、前記第1の撮像デバイスの遠位端より遠位の位置に移動可能である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記鉤は、前記鉤が後退位置から伸長位置に移動すると、前記装置の長手方向軸から離れるように曲がるように構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記鉤は、後退位置にある場合の低プロファイルから、伸長位置にある場合の高プロファイルに変化するように構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記エネルギーツールは、組織を切断するように構成されたエッジを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記エネルギーツールは環状構造を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記環状構造はロッドに取り付けられる、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記エネルギーツールは、前記環状構造の先端の第1の加熱要素、および出血を制御するエネルギーを提供するための、前記環状構造の円周外面の第2の加熱要素を備える、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記エネルギーツールは、組織分離および/または封止のための超音波エネルギーを提供するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記エネルギーツールは、組織分離および/または封止のための熱を提供するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記エネルギーツールは、組織分離および/または封止のための高周波エネルギーを提供するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記エネルギーツールは、前記カニューレに取り外し可能に結合されるエネルギー器具を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記エネルギーツールは、前記管腔の遠位端遠位に位置する、請求項に記載の装置。
【請求項24】
前記第1の撮像デバイスは内視鏡を備える、請求項に記載の装置。
【請求項25】
前記第1の撮像デバイスは電子イメージセンサを備える、請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、手術器具およびその使用に関し、より具体的には、血管採取手術で使用するための手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈バイパス術(CABG)は、自己血管(以下、バイパス導管と呼ぶ)を使用して心臓の動脈閉塞を迂回する確立された外科手術である。バイパスによく使用される自己血管としては、内胸動脈、橈骨動脈、および大伏在静脈が挙げられる。グラフトの開存性は、バイパス導管の選択、手術方針および吻合技術、病状および併存疾患などの患者の特性、加えて多数の他の因子に大きく影響される。
【0003】
バイパス導管の開存性を改善するための努力は、使用される血管の種類(動脈または静脈)および採取方法(直視下または内視鏡下)などの側面に焦点を合わせてきた。取り付けられた内胸動脈グラフトは、依然として長期開存性に関する至適基準であるが、長さが限られ、したがって、各内胸動脈で完成され得るバイパスの数が限られる。1回の手術で複数のバイパス形成を受けるか、または再バイパス手術を受ける患者では、橈骨動脈および/または大伏在静脈遊離グラフトがしばしば必要とされる。これらの血管は、採取される血管の全長にわたって皮膚を切開することによる直視下手術アクセスを介して、または内視鏡デバイスを使用してより低侵襲的に、採取される。
【0004】
内視鏡下血管採取(EVH)は、血管採取部位の病的状態の大幅な低減および対応する経済的利益、ならびに美容的改善などの他の利点のために、世界各地で標準治療として採用されてきた。しかしながら、一部の臨床医の間で、EVHの導管品質への影響、および長期CABG開存性での静脈導管の使用についての懸念が、依然として存在する。内視鏡下採取されたバイパス導管の品質は、EVHデバイスの選択、内視鏡下採取技術、および採取後の導管の取り扱いに影響され得る。その結果、先進デバイス、洗練された技術、および改善されたユーザ訓練プログラムが、初期のEVH経験の弱点に取り組むために開発されてきた。一方、現行のskeletonize法による血管としてよりもむしろその周辺の血管周囲組織(以下、組織茎(tissue pedicle)と呼ぶ)とともに採取された静脈導管が、改善された長期バイパスグラフト開存性をもたらし得ることを示唆する臨床的証拠も現れた。これらの有茎(pediculated)または「no-touch」採取技術は、内胸動脈採取にすでに用いられており、採取中の機械的外傷から血管を保護すること、導管に構造的支持を提供し、動脈化時に導管壁の灌流を可能とすること、および一酸化窒素放出などの有益な生化学的過程を促進することによって、静脈導管の長期性能を改善すると考えられている。
【0005】
有茎血管採取は、VASOVIEW HEMOPRO(Getinge AB、スウェーデン)などの市販のEVH用デバイスを使用して実施され得るが、既存のデバイス設計および公開されている使用説明書は、組織茎の除去を達成するように特に最適化されておらず、有茎静脈バイパス導管について発表されている臨床データは、直視下手術アクセスを介して採取された導管を用いている。初期または現在のEVH技術の弱点に取り組む血管採取のための新規装置および方法が、本明細書に記載される。
【発明の概要】
【0006】
身体から血管を採取するための装置は、血管に沿って前進してトンネルを形成するための解剖器具を有するカニューレであって、解剖器具は透明部を有する、カニューレと、カニューレに移動可能に結合されたエネルギーツールであって、エネルギーツールは、少なくとも血管の部分および血管の部分の周りの茎を有する有茎血管を周辺組織から分離するように構成され、エネルギーツールの少なくとも一部は、エネルギーツールの使用中、解剖器具の透明部を通して見ることができる、エネルギーツールとを含む。
【0007】
任意選択で、エネルギーツールは、後退位置および伸長位置を有する。
【0008】
任意選択で、エネルギーツールは、エネルギーツールが後退位置から伸長位置に移動すると、装置の長手方向軸に向かって曲がるように構成される。
【0009】
任意選択で、エネルギーツールは、エネルギーツールがカニューレの長手方向軸に平行な方向に沿って摺動可能であるように、カニューレに摺動可能に結合される。
【0010】
任意選択で、エネルギーツールは操縦可能である。
【0011】
任意選択で、エネルギーツールは、弓状先端部、鈍い先端部、またはへら状先端部を有する。
【0012】
任意選択で、エネルギーツールは、鉗子型ジョーを有する。
【0013】
任意選択で、エネルギーツールは、カニューレの長手方向軸の周りの円周方向の曲線経路に沿って移動可能である。
【0014】
任意選択で、エネルギーツールは、カニューレの長手方向軸に対するその配向を変更するように回転可能である。
【0015】
任意選択で、装置は、撮像デバイスをさらに含み、エネルギーツールは、撮像デバイスの遠位端より遠位の位置に移動可能である。
【0016】
任意選択で、装置は、カニューレに移動可能に結合された鉤をさらに含み、鉤は、有茎血管と係合するように構成される。
【0017】
任意選択で、装置は、撮像デバイスをさらに含み、鉤は、撮像デバイスの遠位端より遠位の位置に移動可能である。
【0018】
任意選択で、カニューレは、第1の側、および第1の側と反対の第2の側を有し、鉤は、カニューレの第2の側よりもカニューレの第1の側の近くに位置し、エネルギーツールは、カニューレの第1の側よりもカニューレの第2の側の近くに位置する。
【0019】
任意選択で、鉤は、鉤が後退位置から伸長位置に移動すると、装置の長手方向軸から離れるように曲がるように構成される。
【0020】
任意選択で、鉤は、後退位置にある場合の低プロファイルから、伸長位置にある場合の高プロファイルに変化するように構成される。
【0021】
任意選択で、エネルギーツールは、組織を切断するように構成されたエッジを備える。
【0022】
任意選択で、エネルギーツールは環状構造を備える。
【0023】
任意選択で、環状構造はロッドに取り付けられる。
【0024】
任意選択で、エネルギーツールは、環状構造の先端の第1の加熱要素、および出血を制御するエネルギーを提供するための、環状構造の円周外面の第2の加熱要素を備える。
【0025】
任意選択で、エネルギーツールは、組織分離および/または封止のための超音波エネルギーを提供するように構成される。
【0026】
任意選択で、エネルギーツールは、組織分離および/または封止のための熱を提供するように構成される。
【0027】
任意選択で、エネルギーツールは、組織分離および/または封止のための高周波エネルギーを提供するように構成される。
【0028】
任意選択で、エネルギーツールは、カニューレに取り外し可能に結合される市販のエネルギー器具を備える。
【0029】
任意選択で、カニューレは、第1の撮像デバイスを収容するように構成された管腔を備える。
【0030】
任意選択で、エネルギーツールは、管腔の遠位端より遠位に位置する。
【0031】
任意選択で、装置は、第1の撮像デバイスをさらに含む。
【0032】
任意選択で、第1の撮像デバイスは内視鏡を備える。
【0033】
任意選択で、第1の撮像デバイスは電子イメージセンサを備える。
【0034】
任意選択で、第1の撮像デバイスは遠位端を備え、撮像デバイスの遠位端からエネルギーツールに伸びる軸は、解剖器具の透明部を横断する。
【0035】
任意選択で、装置は、第2の撮像デバイスをさらに含み、第1の撮像デバイスは、解剖器具による組織解剖の可視化用に構成され、第2の撮像デバイスは、エネルギーツールで実施している手術の可視化用に構成される。
【0036】
任意選択で、装置は、装置の長手方向の長さに沿って伸びる中心軸を有し、解剖器具は、中心軸からずれた第1の長手方向軸に位置し、エネルギーツールは、中心軸からずれた第2の長手方向軸に位置し、第2の長手方向軸は、第1の長手方向軸と異なる。
【0037】
身体から血管を採取するための方法は、血管を採取するために、装置によって、皮膚切開部からトンネルを形成することと、少なくとも血管の部分および血管の部分の周りの茎を有する有茎血管を、エネルギーツールによって分離することであって、エネルギーツールの少なくとも一部は、エネルギーツールの使用中、装置の透明部を通して見ることができることとを含む。
【0038】
他のおよびさらなる態様および特徴は、添付図面を含む、以下の実施形態の詳細な説明を読むことによって明らかとなるであろう。
【0039】
図面は実施形態の設計および有用性を示し、図中、類似の要素は共通の参照番号によって参照される。これらの図面は、必ずしも正確な比率ではない。上記および他の利点および対象物がどのように得られるかをよりよく理解するために、添付図面中に示される実施形態のより具体的な説明が与えられる。これらの図面は、例示的実施形態を示し、したがって、特許請求の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】血管を採取するための装置を示す。
図2A】後退した構成の鉤およびエネルギーツールを有する装置を特に示す、血管を採取するための別の装置を示す。
図2B】部分的に伸長した構成の鉤およびエネルギーツールを特に示す、図2Aの装置を示す。
図2C】完全に伸長した構成の鉤およびエネルギーツールを特に示す、図2Aおよび図2Bの装置を示す。
図2D】後退位置にある場合、低プロファイルを有する鉤を示す。
図2E】伸長位置にある場合、高プロファイルを有する鉤を示す。
図3】鉤およびエネルギーツールが後退した構成にある場合の、図2Aの装置の解剖器具を通して見る撮像デバイスからの画像を示す。
図4】鉤およびエネルギーツールが伸長した構成にある場合の、図2Bの装置の解剖器具を通して見る撮像デバイスからの画像を示す。
図5図2Aの装置の正面図を示す。
図6図2Bの装置の正面図を示す。
図7】血管採取手術中の、図2の装置の解剖器具を通して見る撮像デバイスからの画像を示す。
図8】血管採取手術中の、図2の装置の解剖器具を通して見る撮像デバイスからの画像を示す。
図9】血管採取手術中の、図2の装置の解剖器具を通して見る撮像デバイスからの画像を示す。
図10A】血管採取手術中の、鉤による血管の係合を示す。
図10B】血管採取手術中の、鉤による血管の係合を示す。
図10C】血管採取手術中の、図2の装置の解剖器具を通して見る撮像デバイスからの追加の画像を示す。
図11】血管採取手術中の、図2の装置の解剖器具を通して見る撮像デバイスからの追加の画像を示す。
図12】血管採取手術中の、図2の装置の解剖器具を通して見る撮像デバイスからの追加の画像を示す。
図13】血管採取の方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
様々な実施形態が、図面を参照して以下に記載される。図面は正確な比率ではなく、類似の構造または機能の要素は、図面を通して同様の参照番号によって表されることに留意すべきである。図面は、単に実施形態の説明を容易にすることを意図するものであることにも留意すべきである。それらは、開示の実施形態の網羅的な説明として、または本明細書に開示された発明の範囲の限定として意図されたものではない。加えて、説明される実施形態は、示されるすべての態様または利点を有する必要はない。特定の実施形態と併せて記載される態様または利点は、そのように説明されるか、または明示的に記載されていなくても、必ずしもその実施形態に限定されず、任意の他の実施形態で実行され得る。
【0042】
図1は、血管を採取するための装置10を示す。装置10は、シース12、およびシース12の一方の端部の解剖器具先端部14を有する。解剖器具先端部14は、皮膚切開部を通して患者に挿入され、標的血管15に沿って前進するように構成される。装置10は、環状切断要素16も有する。環状切断要素16は、標的血管15の周りの円周方向に配置され、シース12が標的血管15に沿って順(または遠位)方向に前進すると、切断要素16によって囲まれた組織をその周辺組織から分離するように構成される。装置10は、シース12に収容された内視鏡18も有する。内視鏡18は、先端部14の透明部を通した前方視を有する。装置10は、その臨床安全性および有効性に関して、いくつかの欠点を有する。
【0043】
まず、装置10では、内視鏡18の遠位端が切断要素16より遠位に位置するため、切断要素16は、完全に内視鏡18の視野外にある。したがって、組織を分離するために切断要素16を使用している間、装置10のユーザは、切断されている組織を見ることができず、切断要素16を見ることもできない。したがって、装置10は、臨床安全性および有効性の観点からかなりのリスクをもたらす。具体的には、ユーザは手術している組織を見ることができないため、標的血管の不注意な切断を含む、標的血管および周辺組織への意図しない機械的または熱的損傷のリスクがかなりある。
【0044】
加えて、装置10の環状切断要素16は、内視鏡18の視野と切断要素16の一部との間の標的血管を常に保持するように構成される。したがって、装置10が内視鏡18を近位に移動するように変更し、内視鏡18のレンズが切断要素16の近位にあっても、上記の可視化問題は依然として存在する。具体的には、切断要素16の形状、およびそれが組織を分離するように構成される態様のため、内視鏡18では、標的血管の下側を見ることはできず、切断要素16の下半分を見ることもできない(標的血管が内視鏡18の視野を遮るため)。
【0045】
また、装置10の使用時、切断要素16のエネルギーは、解剖中、常時、作動している。もし切断要素16が、解剖中、作動していなかった場合には、組織は、切断要素に加えられた圧力によって、単に鈍く解剖されることになり、組織内で接したすべての血管が剥離され、出血してしまう。したがって、装置10の使用は、解剖器具先端部14を前進させながら、標的血管から伸びる血管枝を同時に切断および封止する必要があるだろう。加えて、切断要素16は、常時、作動しているため、標的血管への熱傷のリスクを低減させるためには、装置10は、切断要素16が連続的に遠位に常に移動する単一パス手技を必要とするであろう。しかしながら、EVH手術では、血管の上/前面を露出させるためでさえ、解剖プロセスが、局所領域で繰り返される小規模な前後移動を伴う場合がある。ユーザはまた、組織を識別し、デバイスを前進させる正しい方向を確認するために、頻繁に一時停止させる場合がある。したがって、装置10の連続的に作動している加熱要素16を使用するEVH手術は、(標的血管に接して前後移動するか、または一時停止する、連続的に作動している切断要素16に起因して)熱曝露の増加をもたらしやすく、その結果、標的血管への不注意な熱的損傷のリスクが増加する。
【0046】
また、切断要素16によって分離中の組織は、装置10のユーザには見えないため、ユーザは、切断要素16の移動速度の任意の調節、および/または切断要素16のエネルギーパラメータの任意の調節を行うのに十分な情報を有し得ないであろう。例えば、標的血管の下に大きい血管枝がある場合、標的血管によって視野が遮られるため、ユーザは、大きい枝を見ることができないであろう。切断要素16と標的血管の下の大きい枝との間の接点は、同様に内視鏡18の視野からは不明瞭なため、ユーザは、大きい枝を処置する切断要素16を見ることもできないであろう。したがって、ユーザは、切断要素16を前進させる前進速度を低下させて、大きい血管枝をよりゆっくりと凝固(封止)させるための調節を行うことができないであろう。これは、標的部位で制御不能な出血をもたらし得る。
【0047】
さらに、装置10の切断要素16の環形状は、別の問題をもたらす。場合によっては、手術中、ユーザは、大きい血管枝に接し得る。そのような場合、ユーザは、それに応じて、切断要素16の移動速度を低下させて大きい枝の封止を試みてよい。しかしながら、切断される組織のすべてが、切断要素16のエネルギーを与えられた環状領域と接触するため、標的血管を含む、切断要素16に取り囲まれた組織のすべては、(切断要素16のよりゆっくりとした移動により)熱曝露が増えてしまうことになる。これは、採取された血管に意図しない熱傷を生じさせるであろう。上記は、装置10のユーザが、大きい血管枝を見ることができると仮定している。血管枝が内視鏡の視野外にある場合には、ユーザは、エネルギー送達パラメータの任意の調節を行うときに血管枝を見ることさえできない。これは、血管枝の不十分な封止をもたらし得、血管枝の不十分な封止によって内視鏡視野中に過剰な血液による視認性の低下を招き、内視鏡手術を直視下手術に切り替えることになる場合さえあり得る。
【0048】
最後に、切断要素16の環形状は、解剖される組織を固定された所定の断面寸法を有するように制限する、固定された断面開口を有する。平行静脈部分など、個々の解剖的差異が存在し得、これらに対し、装置10は、意図しない組織損傷または手術ミスの重大なリスクなく対応することはできない。
【0049】
図2Aおよび図2Bは、身体(例えば、ヒト患者)から血管を採取するための別の装置200を示す。装置200は、遠位端204を有するカニューレ202、およびカニューレ202の遠位端204に結合された解剖器具210を含む。解剖器具210は、標的血管に沿って前進して、血管に接して、例えば、患者の皮膚切開部から、採取される血管に隣接して、トンネルを形成するように構成される)。解剖器具210は透明部を有しており、カニューレ202に収容された撮像デバイス260はそこを通して見ることができる。一実装では、解剖器具210は円錐形であり、円錐形解剖器具210の全体が透明であってよい。
【0050】
図に示すように、装置200は、カニューレ202に移動可能に結合されたエネルギーツール220も含む。エネルギーツール220は、少なくとも血管の部分および血管の部分の周りの茎を有する有茎血管を分離するように構成される。いくつかの実施形態では、エネルギーツール220は、組織分離および/または封止のためのモノポーラまたはバイポーラ高周波(RF)エネルギーを提供するように構成されてよい。他の実施形態では、エネルギーツール220は、組織分離および/または封止のための熱(例えば、誘導加熱、抵抗加熱、ジュール加熱等)を提供するように構成されてよい。さらなる実施形態では、エネルギーツール220は、組織分離および/または封止のための超音波エネルギーを提供するように構成されてよい。
【0051】
図示された実施形態では、装置200は、ユーザが、エネルギーツール220上のエネルギー送達要素225への電力の送達を制御することを可能とするための制御装置224を備える近位ハンドル223を有する。例えば、制御装置224は、ユーザが、エネルギーを送達するためにエネルギー送達要素225をオンにし、エネルギーの送達を停止するためにエネルギー送達要素225をオフにすることを可能とするための、1つ以上のボタンを含んでよい。制御装置224は、ユーザが、エネルギー送達要素225によって送達されているエネルギーの量を調節することを可能とするためのボタンも含んでよい。使用中、ハンドル223は、装置200に電力を供給する電源(図示せず)に結合される。一実装では、エネルギー送達要素225は、RFエネルギーを提供する1つ以上の電極であってよい。別の実装では、エネルギー送達要素225は、熱を提供する1つ以上のヒータ要素であってよい。そのような場合、電力は、DC源を使用してヒータ要素(複数可)に供給されてよく、ヒータ要素(複数可)は、送達された直流電流に応じて熱くなる抵抗要素(複数可)として機能する。別の実装では、エネルギー送達要素225は、1つ以上の超音波アプリケータであってよい。他の実施形態では、ハンドル223に制御装置224を実装する代わりに、制御装置224は、足踏みスイッチであってよい。
【0052】
エネルギーツール220は、後退位置(図2A)と伸長位置(図2B)との間を移動するように構成される。後退位置では、エネルギーツール220の少なくとも遠位部は、カニューレ202内に収容される。伸長位置では、エネルギーツール220の遠位部は、カニューレ202の外側にある。装置200は、ハンドル223に、エネルギーツール220を後退位置から伸長位置に、およびその逆に移動させるように構成された制御装置236を含んでよい。例えば、制御装置236は、カニューレ202からエネルギーツール220を伸ばすために遠位に押すことができ、エネルギーツール220を後退させてカニューレ202中に戻すために近位に引くことができる、ボタンであってよい。
【0053】
また、いくつかの実施形態では、エネルギーツール220は、カニューレ202に対して回転するように構成され、その結果、エネルギーツール220の配向は、カニューレ遠位端204に対して調節されてよい。エネルギーツール回転の制御は、制御装置236に組み込まれてよいか、または装置200は、ハンドル223に、エネルギーツール220を回転させるために構成された別の制御装置(図示せず)を含んでよい。他の実施形態では、エネルギーツール220は、カニューレ202の外に展開された後、エネルギーツール220が後退位置から伸長位置に移動すると、装置200/カニューレ202の長手方向軸240(複数の図中の破線を参照)に向かって曲がるように構成されてよい。例えば、エネルギーツール220は、曲がった構成を有する弾性の細長い本体を含んでよい。そのような場合、エネルギーツール220は、エネルギーツール220が遠位に展開されると、装置200の長手方向軸240に向かって半径方向内側に曲がるように構成され、カニューレ202内に後退して戻った後、比較的より直線的な構成に戻るように構成される。この構成は、カニューレ202の内部に収容された撮像デバイス260を介したエネルギーツール220の視認性を改善するため、有利である。撮像デバイス260を、以下にさらに詳細に記載する。他の実施形態では、(エネルギー送達要素225を備える)エネルギーツールの遠位端は、撮像デバイス260による視認性の改善のため、長手方向軸240に向かって内側に湾曲しているか、または角度がついていてよい。他の実施形態では、エネルギーツール220の遠位先端部(複数可)は、組織を鈍く解剖しやすくするために、先細になっていてよい。他の実施形態では、エネルギーツール220は、カニューレに摺動可能に結合されてよく、その結果、エネルギーツール220がカニューレ202の外に展開された後、エネルギーツール220は、長手方向軸240に平行な経路に沿って移動できる。
【0054】
図示された実施形態では、エネルギーツール220はまた、長手方向軸240の周りの円周方向の曲線経路に沿って移動可能である。具体的には、図5に示すように、エネルギーツール220は、曲線スロット250に収容される。エネルギーツール220は、曲線スロット250の外に伸ばされてよく(図6)、軸240の周りに円周方向に移動可能であってよい。この特徴は、ユーザが、手術している標的組織に対して所望の円周方向位置にエネルギーツール220を配置することを可能とする。この構成は、エネルギーツール220が、標的血管を取り囲む組織の周りに円周方向に移動させ、そのような組織をその周辺組織構造から分離することも可能とする。装置200のハンドル223は、装置200のユーザが、エネルギーツール220を、組織の周りの長手方向軸240(または別の軸)の周りに円周方向に移動させることを可能とするための制御装置を有してよい。例えば、制御装置は、ハンドルの回転可能ノブであってよく、エネルギーツール220の円周方向移動の量を制御する。一実装では、制御装置は、制御装置236であってよく、ハンドル223の長手方向軸の周りに摺動(例えば、円周方向に摺動)され、それによりスロット250内のエネルギーツール220を移動させ得るボタンまたはノブを含んでよい。円周方向に移動可能なことに加え、エネルギーツール220はまた、長手方向軸240(または別の軸)に対するその配向が組織採取用に最適化され得るように、回転可能であってよい。エネルギーツール220がその周りに回転する軸は、エネルギーツール220の長手方向軸(例えば、エネルギーツール220を通って伸びる軸)であってよく、またはエネルギーツール220の長手方向軸と平行かつ離隔した軸であってよい。回転の制御は、制御装置236に組み込まれてよいか、またはハンドル上の別の制御装置(図示せず)であってよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、エネルギーツール220を移動させる(および、いくつかの実施形態では、回転させる)ための制御装置236、ならびにエネルギーツール220を作動させるための制御装置224は、ハンドル223の別の部分で動かすように構成して、ハンドル223のハンドル部上に統合されてよい。そのような場合、制御装置236を動かすと、制御装置224も動く。他の実施形態では、制御装置236を動かしても制御装置224が対応して動かないように、制御装置236および制御装置224は、ハンドル223上に別々に実装されてよい。
【0056】
議論されたように、いくつかの実施形態では、エネルギーツール220は、カニューレ102の外に展開されると、長手方向軸240に向かって曲がるように構成されてよい。そのような特徴は、エネルギーツール220の円周方向移動(およびいくつかの実施形態では、エネルギーツール220の回転)と組み合わされると、特に有利である。これは、エネルギーツール220の移動が、(標的血管を取り囲む組織を有する)有茎血管の単離を可能とする一方、エネルギーツール220の曲がりが、標的血管を取り囲む有茎血管中の組織の厚さをユーザが制御することを可能とし得るためである。例えば、場合によっては、曲がりの量は、エネルギーツール220がカニューレ202の外に伸ばされる程度に基づいて制御されてよい。エネルギーツール220がカニューレ202からさらに外に伸ばされると、エネルギーツール220の端部は、長手方向軸240のより近くに移動してよく、逆も同様である。
【0057】
いくつかの実施形態では、エネルギーツール220は、カニューレ202と統合され、装置200の構成要素として提供される。他の実施形態では、装置200は、エネルギーツール220を含まない場合がある。そのような場合、カニューレ202は、エネルギーツールを収容する大きさの管腔を有してよく、エネルギーツールは、カニューレ202に取り外し可能に結合され得る市販のエネルギー器具であってよい。例えば、装置200のユーザは、エネルギーツール220として、バイポーラRFメリーランド把持鉗子、VasoView HemoPro(商標)等を選択してよく、そのようなエネルギーツール220を、血管採取手術のためのカニューレ202に挿入してよい。
【0058】
エネルギーツール220は、弓状先端部、鈍い先端部、鋭い先端部、へら状先端、先細先端部、鉗子式先端部(例えば、直線、湾曲、もしくは角度のついたジョー)、または他の構成のいずれかを有する先端部を有してよい。これらの先端部構成のいずれかは、組織の鈍い解剖を容易にするために、その遠位端に向かって先細になっていてよい。代替として、または追加として、エネルギーツール220は、組織を切断するように構成されたエッジを有してよい。例えば、エネルギーツール220は、ブレードを含んでよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、エネルギーツール220は操縦可能であってよい。例えば、エネルギーツール220の遠位端は、エネルギーツール220の遠位端を引く張力をかけ、それによりエネルギーツール220を1つ以上の方向に操縦するように構成された1つ以上の操縦ワイヤを含んでよい。そのような場合、装置200のハンドルは、装置200のユーザがエネルギーツール220の遠位端を所望の方向に曲げること可能とする操縦制御装置を含んでよい。
【0060】
図2A図2B、および図2Cに示すように、装置200は、カニューレ202に移動可能に結合された鉤230をさらに含む。鉤230は、有茎血管の一部と係合するように構成され、エネルギーツール220が、有茎血管の他の部分を形成するように組織を手術するのに使用されている間、有茎血管の一部を操作するのに使用されてよい。いくつかの実施形態では、鉤230は、標的血管を、装置200の下側から撮像デバイス260を介して標的血管および処置される領域(採取される組織)の可視化が改善される位置に、持ち上げるように構成されてよい。これにより、先に採取された標的血管の部分によって視野が遮られるのではなく、(エネルギーツール220で手術する)標的組織が、撮像デバイス260の視野内で見えるようになる。
【0061】
鉤230は、後退位置(図2A)から、部分的に伸長した位置(図2B)および完全に伸長した位置(図2C)に、またはその逆に移動するように構成される。後退位置では、鉤230の少なくとも遠位部は、カニューレ202内に収容される。伸長位置では、鉤230の遠位部は、カニューレ202の外側にある。装置200は、ハンドル223に、鉤230を後退位置から伸長位置に、およびその逆に移動させるように構成された制御装置238を含んでよい。例えば、制御装置238は、カニューレ202から鉤230を伸ばすために遠位に押すことができ、鉤230を後退させてカニューレ202中に戻すために近位に引くことができる、ボタンであってよい。
【0062】
図に示すように、カニューレ202は、第1の側232、および第1の側232と反対の第2の側を234有し、鉤230は、カニューレ202の第2の側234よりもカニューレ202の第1の側232の近くに位置し、エネルギーツール220は、カニューレ202の第1の側232よりもカニューレ202の第2の側234の近くに位置する。
【0063】
図示された実施形態では、鉤230は、鉤230がその後退位置からその伸長位置に移動すると、装置200/カニューレ202の長手方向軸240に平行な経路に沿って平行移動するように構成される。他の実施形態では、鉤230は、鉤230がその後退位置からその伸長位置に移動すると、長手方向軸240から離れるように曲がるように構成される。他の実施形態では、鉤230は、鉤を受け取るスロット231中で後退位置にある場合(図2D)の(例えば、折りたたまれた形状の)低プロファイルから、鉤230がカニューレ202から伸びている伸長位置にある場合(図2E)の(例えば、拡張された形状の)高プロファイルに変化するように構成されてよい。場合によっては、鉤230は、ニチノールまたは形状記憶合金などの弾性材料を含んでよい。一実装では、鉤230は、ばねワイヤを含んでよい。
【0064】
他の実施形態では、鉤230は任意選択であり、装置200は、鉤230を含まない場合がある。
【0065】
図2Aに示すように、鉤230およびエネルギーツール220の両方は、後退した構成にある。この配置では、カニューレ202は、皮膚切開部を通して患者により容易に挿入され得る。図3は、鉤230およびエネルギーツール220が後退した構成にある場合の、装置200の解剖器具210を通して見る撮像デバイス260からの画像を示す。カニューレ202の遠位端204が患者に挿入され、短い長さのトンネルが標的血管に隣接して解剖された後、鉤230および/またはエネルギーツール220は、伸長した構成(図2C)に展開され得る。図4は、鉤およびエネルギーツールが伸長した構成にある場合の、図2Bの装置の解剖器具を通して見る撮像デバイスからの画像を示す。図2Bに示す構成では、鉤230の少なくとも一部および/またはエネルギーツール220の少なくとも一部は、解剖器具210の透明部を通して見ることができる。
【0066】
図2Aに示すように、装置200は、撮像デバイス260を収容するように構成されたカニューレ202中に管腔262をさらに含む。管腔262は、遠位端264を有し、エネルギーツール220のエネルギー送達要素225は、管腔遠位端264および撮像デバイス260の遠位端268の遠位に伸ばすことができる。エネルギーツール220の使用中、エネルギーツール220を撮像デバイス260より遠位に位置させることは、エネルギーツール220で組織を手術している間、エネルギーツール220を撮像デバイス260から見ることができるようになるため、有利である。図2Bに示すように、撮像デバイス260は、遠位端268を有し、エネルギーツール220(すなわち、エネルギーツール220の手術部)は、撮像デバイス260の遠位端268より遠位に伸びている。また、図2Bに示すように、撮像デバイス260の遠位端268からエネルギーツール220に伸びる軸270は、解剖器具210の透明部を横断する。これにより、解剖器具210の透明部を通して撮像デバイス260からエネルギーツール220を見ることができる。撮像デバイス260は、(レンズおよび/または光ファイバを有する)内視鏡であってよく、または電子イメージセンサ(CMOSデバイスなど)であってよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、装置200は、任意選択で、第2の撮像デバイスをさらに含む。そのような場合、第1の撮像デバイス(撮像デバイス260)は、解剖器具210による組織解剖の可視化用に構成されてよく、第2の撮像デバイスは、エネルギーツール220で実施している手術の可視化用に構成されてよい。第1および第2の撮像デバイスは、(例えば、ロッドレンズまたは光ファイバを有する)2つの内視鏡であってよい。あるいは、第1および第2の撮像デバイスの1つまたは各々は、電子イメージセンサ(例えば、CMOSデバイス)を含んでよい。
【0068】
上記の実施形態では、装置200/カニューレ202の長手方向軸240は、解剖器具210と一致するものとして示されている。他の実施形態では、装置200/カニューレ202は、解剖器具210からずれた長手方向軸を有してよい。例えば、いくつかの実施形態では、装置200/カニューレ202は、装置200の長手方向の長さに沿って伸びる中心軸を有してよく、解剖器具210は、中心軸からずれた第1の長手方向軸に位置し、エネルギーツール220は、中心軸からずれた第2の長手方向軸に位置し、第2の長手方向軸は、第1の長手方向軸と異なる。そのような場合、装置200は、それぞれ解剖器具210およびエネルギーツール220と関連した2つの撮像デバイスを有してよい。例えば、装置200は、解剖器具210で組織を手術している間、解剖器具210を見るのに使用され得るように、第1の撮像デバイスを第1の長手方向軸に位置させるか、またはその近くに位置させてよい。同様に、エネルギーツール220で組織を手術している間、エネルギーツール220を見るのに使用され得るように、第2の撮像デバイスを第2の長手方向軸に位置させるか、またはその近くに位置させてよい。上記の特徴は、茎の単離中、エネルギーツール220および手術している組織が、それらの間に解剖先端部210材料を挟まずに可視化され得るため、有利であり、エネルギーツール220による手術中、内視鏡空間のより鮮明な画像を提供する。
【0069】
次に、血管を採取するための方法が、装置200に関連して記載される。方法は、血管採取手術中の、図2Aの装置の解剖器具210を通して見る撮像デバイス260から提供された画像を示す図7図12に関連して記載される。
【0070】
まず、侵入点を形成し、侵入点(内視鏡トンネルの近位端)に標的血管を露出させるために、患者の皮膚を切開する。
【0071】
次に、侵入点の血管の短い長さを授動する。例えば、そのようなことは、標準的な外科的手法を使用して、侵入点の血管の全周を解剖することによって達成されてよい。
【0072】
次に、装置200を、侵入点に挿入する。
【0073】
次に、解剖器具210を使用して標的血管の上側に沿って組織700の短い長さを解剖しながら、装置200を前進させる。標的血管の上側に沿った組織700の短い長さを特に示す、解剖器具210を通して見る撮像デバイス260によって得られた画像を、図7に示す。装置200を前進させる間、エネルギーツール220および鉤230は、カニューレ202内に後退している。図8に示すように、解剖器具210をさらに遠位に前進させると、画像は、解剖の範囲710を示すであろう。
【0074】
次に、侵入点の組織700の露出した長さおよび血管の授動部が、解剖器具210の透明部を通して見えるように、装置200を近位に後退させる。解剖の範囲710、血管の上側に沿った組織700、および血管の授動された長さ720を特に示す、解剖器具210を通して見る撮像デバイス260によって得られた画像を、図9に示す。
【0075】
次に、鉤230を伸ばし、侵入点の血管の授動された長さ720に対して係合するように位置付ける。鉤230は、血管を上方に牽引するのに使用されてよい。したがって、血管の位置付けは、鉤230の操作に影響され得る。場合によっては、鉤230の伸長の程度は、血管の位置を変えるように調節されてよい。図10Aおよび図10Bに示すように、鉤230が血管を「持ち上げている」一方、エネルギーツール220も、カニューレ202から伸ばされ、血管の下側に沿って位置付けられる。カニューレ202から伸ばされた鉤230およびエネルギーツール220の両方を特に示す、解剖器具210を通して見る撮像デバイス260によって得られた画像を、図10Cに示す。図に示すように、伸長した構成では、エネルギーツール220は、解剖器具210の透明部を通して撮像デバイス260によって見ることができる。これは、装置200のユーザが、エネルギーツール220で手術している組織を見ることを可能とする。鉤230で血管の授動された長さ720を持ち上げている間、血管の授動された長さ720の下側730を、解剖器具210を通して撮像デバイス260によって見ることができる。ユーザは、(標的血管752を含有する)組織750をその周辺組織754から分離する円周方向組織分離740(および組織分離中に接した血管の封止)を行うために、エネルギーデバイス220を動作させてよい。具体的には、エネルギーツール220は、標的血管752を取り囲んでいる組織750の周りに実質的に円周方向に(例えば、150°超、または180°超、または270°超、300°超等、または360°の円周範囲で)移動され、それにより血管の有茎部分を円周方向に分離してよい。場合によっては、エネルギーツール220はまた、エネルギー送達要素225の配向を組織採取用に最適化するように回転させてよい。
【0076】
エネルギーツール220は、血管752の下の組織を鈍く解剖するのに使用されてよい。場合によっては、エネルギーツール220がブレードを有するならば、ブレードは、血管752の下の組織を鋭く解剖するのに使用されてよい。代替として、または追加として、エネルギーツール220は、血管752を取り囲む組織を分離するために作動させてよい。また、エネルギーツール220は、標的血管の枝を封止および切断するために、および/または組織採取中の局所的な出血を制御するために作動させてよい。場合によっては、エネルギーツール220はまた、標的組織に対して所望の位置(複数可)および/または配向にエネルギーツール220の配置を最適化するために、前進、および/または後退、および/または回転、またはその他の方法で操作されてよい。エネルギーツール220は、有茎血管の所望の長さが周辺組織から完全に分離されるまで、選択的に操作および/または選択的に作動させてよい。例えば、エネルギーツール220を、標的血管752を取り囲む組織750を周辺組織754から分離するのに使用している間、カニューレ202および/またはエネルギーツール220を、組織750の(血管の長手方向軸に沿った)長さを周辺組織754から分離するために前進させてよい。標的血管752を取り囲む組織750を含む有茎血管778の長さを特に示す、解剖器具210を通して見る撮像デバイス260によって得られた画像を、図11に示す。トンネル入口の血管の授動された長さ720も示されている。また、そこから組織752が解剖される(チャネル780の形態の)周辺組織754が、画像中に見える。チャネル780は、その周辺組織754から分離した有茎血管778の長さの結果である。
【0077】
有茎血管の部分を周辺組織754から完全に分離した後、採取された組織への不注意な損傷を避けるために、エネルギーツール220および鉤230をカニューレ202中に後退させる。
【0078】
上記の行為(すなわち、カニューレ202を前進させて標的血管の長さの組織を露出させ、カニューレ202を後退させ、鉤230を伸ばし、エネルギーツール220を伸ばし、エネルギーツール220を使用して組織を分離し、鉤230およびエネルギーツール220を後退させること)を、有茎血管778の所望の長さが単離されるまで繰り返す。採取された有茎血管778の所望の長さを特に示す、解剖器具210を通して見る撮像デバイス260によって得られた画像を、図12に示す。有茎血管778は、標的血管752を取り囲む組織750を含む。
【0079】
次に、単離された有茎血管の反対側の端部を切断し、採取された有茎血管を内視鏡トンネルから除去する。
【0080】
装置200および上記の採取技術は、いくつかの側面で有利である。まず、鉤230およびエネルギーツール220は、カニューレ202に対して遠位に伸ばしたときに、解剖器具210を通して撮像デバイス260によって見ることができる。したがって、処置する領域、すなわちエネルギーツールによって封止および切断される組織全体が、この部分の手術の間、装置200のユーザから見えることになる。これは、図1の装置10に存在する主な安全性への懸念の1つを克服する。
【0081】
また、エネルギーツール220は、ユーザによってハンドル223の制御装置224を介して、または他の方法(例えば、足踏みスイッチ)によって選択的に作動されるため、ユーザは、いつ熱エネルギーを組織に加えるか(または加えないか)を制御することができる。したがって、ユーザは、図1の装置10の切断要素と接触したすべての組織に連続的かつ無差別にエネルギーを送達するのではなく、手術する組織を正確に特定する(すなわち、組織を見る撮像デバイス260を介する)こと、および標的組織へのエネルギー送達の時間を決める(すなわち、制御装置224を介する)ことの両方を行うことができる。エネルギー送達のタイミングの制御を可能とする能力は、有利である。細胞壊死の誘導を意図する手術(例えば、組織アブレーション)を除いて、標的組織および隣接組織の両方の温熱曝露を制限することが、安全性および有効性にとって望ましい。EVHの場合、エネルギー送達のタイミングを制御する能力は、グラフト開存性および血行再建有効性に悪影響を及ぼし得る損傷である、CABGグラフトへの熱傷のリスクを最小限にする。
【0082】
加えて、処置する領域の視認性、ならびにエネルギーツール220によって提供されるエネルギー送達のタイミングおよび場所の制御を有することによって、ユーザは、組織封止および切断を最適化することができる。例えば、透明解剖器具210を通してユーザが見ることができるものに基づいて、ユーザは、必要に応じて、エネルギーツール220でエネルギーを加えずに、エネルギーツールで組織を鈍くおよび/または鋭く解剖することを決定してよい。これは、採取された血管への不注意な熱傷のリスクを最小限にする。
【0083】
さらに、装置200および方法1300は、ユーザが、組織750の層によって取り囲まれた採取された血管752を含む有茎血管778を得ることを可能とするため、有利である。周辺の血管周囲組織(組織茎)を含む採取された血管752は、改善された長期バイパスグラフト開存性をもたらし得、したがって、任意の組織茎を有しないskeletonize法による血管に対して有利である。有茎または「no-touch」採取技術およびその結果得られる有茎血管は、採取中の機械的外傷から血管を保護すること、導管に構造的支持を提供し、動脈化時に導管壁の灌流を可能とすること、および一酸化窒素放出などの有益な生化学的過程を促進することによって、CABGに使用される静脈導管の長期性能を改善し得る。
【0084】
図13は、身体から血管を採取するための方法を示す。まず、採取する血管に隣接する内視鏡空間を、透明部を有する解剖器具によって形成する(項目1304)。いくつかの実施形態では、解剖器具は、本明細書に記載の解剖器具210であってよい。次に、(少なくとも血管の部分および血管の部分の周りの茎を有する)有茎血管を、エネルギーツールによって分離し、エネルギーツールの少なくとも一部は、エネルギーツールの使用中、解剖器具の透明部を通して見ることができる(項目1306)。いくつかの実施形態では、エネルギーツールは、本明細書に記載のエネルギーツール220であってよい。
【0085】
エネルギーツール220は、先に議論された構成の例に限定されず、エネルギーツール220は、他の実施形態の他の構成を有してよいことに留意すべきである。図7図12のエネルギーツール220は、簡単にするために、モノポーラRF電極先端部(直視下アクセスの内胸動脈の有茎採取に使用されるものと同様)として示されているが、VasoView HemoProなどの鉗子型器具、または組織凝固および分離に適した任意の他の種類の器具構成にすることもできる。例えば、他の実施形態では、エネルギーツール220は、環状構造(例えば、図1の装置10に関連して記載された切断要素16)を含んでよい。環状構造はロッドに取り付けられてよい。また、場合によっては、エネルギーツール220は、環状構造の先端の第1の加熱要素、および出血を制御するエネルギーを提供するための、環状構造の円周外面の第2の加熱要素も含んでよい。第2の加熱要素は、第1の加熱要素の近位にあってよい。第1および第2の加熱要素は、異なる機能を実行するために選択的に作動させてよい。例えば、第1の加熱要素は、環状構造を遠位に前進させながら、環状構造の先端が接触している組織を切断するために、(例えば、ハンドル223の第1の制御装置の作動によって)選択的に作動させてよく、第2の加熱要素は、環状構造の先端によって切断された組織からの出血を制御するために、(例えば、ハンドル223の第2の制御装置の作動によって)選択的に作動させてよい。
【0086】
開示された実施形態では、(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)2000年8月25日に出願された米国特許第6811546号、特許出願番号09/648660に記載されたような、鈍い先端部のトロカールなどのトロカールが利用されてよく、装置を患者に導入する前に、切開部または挿入点を通して挿入されてよい。
【0087】
特定の実施形態が示され、説明されているが、特許請求される発明を限定することを意図するものではないことが理解され、特許請求される発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正が行われてよいことを、当業者なら理解するであろう。特許請求される発明は、代替物、修正形態、および均等物を含むことを意図する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13