IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

<>
  • 特許-内視鏡処置具 図1
  • 特許-内視鏡処置具 図2
  • 特許-内視鏡処置具 図3
  • 特許-内視鏡処置具 図4
  • 特許-内視鏡処置具 図5
  • 特許-内視鏡処置具 図6
  • 特許-内視鏡処置具 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】内視鏡処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20240229BHJP
   A61B 17/128 20060101ALI20240229BHJP
   A61B 17/32 20060101ALI20240229BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B17/128
A61B17/32 528
A61B1/018 515
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020558155
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2019040419
(87)【国際公開番号】W WO2020105315
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2018219669
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前久保 尚武
(72)【発明者】
【氏名】岸田 学
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-221059(JP,A)
【文献】特開平08-280701(JP,A)
【文献】特開2007-244826(JP,A)
【文献】特開2012-200518(JP,A)
【文献】国際公開第2018/011847(WO,A1)
【文献】特開2011-206228(JP,A)
【文献】特開2001-299909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/29-17/295
A61B 17/128
A61B 17/94
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠近方向を有する外筒と、
前記外筒の内腔に配置されている内筒と、
前記内筒の内腔に配置されており、遠位端部に処置器具との接続部を有している線状物と、
前記内筒の近位端部に接続されているハンドルと、を有し、
前記外筒は、遠近方向の一部区間において、内径が小さい部分である小径部を有し、
前記内筒は、遠近方向の一部区間において、外径が大きい部分である大径部を有し、
前記外筒は、前記内筒に対して遠近方向に移動が可能であり、
前記外筒の可動域において、前記小径部の最も内径の小さい箇所は、前記大径部の最も外径の大きい箇所よりも近位側にあり、
前記小径部が存在している部分の前記外筒の外径は、前記小径部よりも遠位側の前記外筒の外径よりも小さい部分があることを特徴とする内視鏡処置具。
【請求項2】
遠近方向を有する外筒と、
前記外筒の内腔に配置されている内筒と、
前記内筒の内腔に配置されており、遠位端部に処置器具との接続部を有している線状物と、
前記内筒の近位端部に接続されているハンドルと、を有し、
前記外筒は、遠近方向の一部区間において、内径が小さい部分である小径部を有し、
前記内筒は、遠近方向の一部区間において、外径が大きい部分である大径部を有し、
前記外筒は、前記内筒に対して遠近方向に移動が可能であり、
前記外筒の可動域において、前記小径部の最も内径の小さい箇所は、前記大径部の最も外径の大きい箇所よりも近位側にあり、
前記ハンドルは、前記外筒の近位端に接する受け部を有しており、
前記受け部は、前記ハンドルの内部に配置されていることを特徴とする内視鏡処置具。
【請求項3】
前記外筒は、他の部材に固定されていない請求項1または2に記載の内視鏡処置具。
【請求項4】
前記小径部の内径は、前記小径部の内方に配置されている前記内筒の外径よりも大きく、前記大径部の外径よりも小さい請求項1~3のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項5】
前記小径部は、前記外筒の遠近方向の中点よりも近位側にあり、
前記大径部は、前記内筒の遠近方向の中点よりも近位側にある請求項1~のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項6】
前記小径部の遠近方向の中点よりも遠位側と、前記大径部の遠近方向の中点よりも近位側の少なくとも一方にテーパー部を有している請求項1~のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項7】
前記外筒の可動域において、前記小径部の遠位端は、前記大径部の近位端よりも近位側にある請求項1~6のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項8】
前記外筒は、外表面に把持部を有しており、
前記把持部は、前記外筒の遠近方向の中点よりも近位側に配置されている請求項1~7のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項9】
前記把持部は、前記外筒の外表面よりも凸である部分を有している請求項8に記載の内視鏡処置具。
【請求項10】
記ハンドルは、前記外筒の近位端に接する受け部を有している請求項1に記載の内視鏡処置具。
【請求項11】
前記受け部は、前記ハンドルの内部に配置されている請求項10に記載の内視鏡処置具。
【請求項12】
記内筒は、前記ハンドルに前記内筒の長軸を回転軸として回転可能に取り付けられている請求項1~11のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項13】
前記線状物の近位端部に接続されているスライダーを有し、
前記スライダーの前記線状物が接続されている部分は、前記ハンドルに対して遠近方向に移動が可能である請求項1~12のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項14】
前記内筒に対する前記外筒の可動域において、前記外筒を前記内筒に対する可動域において最も遠位側に配置すると、前記小径部の遠位端が前記大径部の近位端に接する位置に配置され、前記外筒を前記内筒に対する可動域において最も近位側に配置すると、前記小径部の近位端が前記受け部に接する位置に配置される請求項2、10および11のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を用いた手術や処置において、止血、体内組織の採取や切除、体内組織への薬液の注射等を目的として使用される内視鏡処置具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)等の内視鏡を用いた処置において、病変部の切除によって出血した際の止血や病変部を縫縮するためのクリップ、病変部を切除するためのスネアやナイフ、体内組織を採取するための鉗子、体内組織へ薬液を注入するための局注針等の処置器具である内視鏡処置具が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、内筒に操作ワイヤが結束され、さらに外筒を備える挿入チューブであり、体内挿入時に被検体の組織に損傷を与えることなく、挿入チューブの先端面を的確に観察対象部に対峙させることを可能とした医療用内視鏡装置が記載されている。特許文献2には、内視鏡先端に位置する検体採取具が前後移動自在に収容されたチューブを有し、チューブはシース太径部とシース細径部とを具備している内視鏡用処置具が記載されている。特許文献3には、外筒と内筒の材質を摩擦係数の少ないものにし、処置具先端に取り付けられた内視鏡用穿刺針の座屈を防ぎ、外筒チューブの先端から円滑に出没させるようにした内視鏡用穿刺針装置が記載されている。特許文献4には、外筒部の内側に係止歯車、内筒部の側面に係合突起を備えることによって内視鏡処置具の進退操作を可能とし、外筒先端部から外部に突出する突出長を多段階に変更させる内視鏡用処置具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-83270号公報
【文献】国際公開第2013/168498号
【文献】特開2013-172842号公報
【文献】特開2000-37455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クリップ等の処置器具は、内視鏡処置具の先端側に取り付けられ、外筒内に収納された状態で内視鏡に挿通される。特許文献1~4のような内視鏡処置具では、外筒内における処置器具の位置が不明確であるという問題があった。外筒内での処置器具の位置が適切でなければ、体内に配置された内視鏡の処置具孔から処置具を体内へ挿入する際に、処置器具を外筒から突出させることができないおそれや、処置具孔から過剰に外筒を突出させて体内組織を傷付けるおそれがある。
【0006】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外筒内における処置器具の位置を制限することができる内視鏡処置具およびその作動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 遠近方向を有する外筒と、外筒の内腔に配置されている内筒と、内筒の内腔に配置されており、遠位端部に処置器具との接続部を有している線状物と、を有し、外筒は、遠近方向の一部区間において、内径が小さい部分である小径部を有し、内筒は、遠近方向の一部区間において、外径が大きい部分である大径部を有し、外筒は、内筒に対して遠近方向に移動が可能であり、外筒の可動域において、小径部の最も内径の小さい箇所は、大径部の最も外径の大きい箇所よりも近位側にあることを特徴とする内視鏡処置具。
[2] 前記外筒は、他の部材に固定されていないことが好ましい。
[3] 前記小径部の内径は、小径部の内方に配置されている内筒の外径よりも大きく、大径部の外径よりも小さいことが好ましい。
[4] 前記小径部は、外筒の遠近方向の中点よりも近位側にあり、大径部は、内筒の遠近方向の中点よりも近位側にあることが好ましい。
[5] 前記小径部の遠近方向の中点よりも遠位側と、大径部の遠近方向の中点よりも近位側の少なくとも一方にテーパー部を有していることが好ましい。
[6] 前記小径部が存在している部分の外筒の外径は、小径部よりも遠位側の外筒の外径よりも小さい部分があることが好ましい。
[7] 前記外筒の可動域において、小径部の遠位端は、大径部の近位端よりも近位側にあることが好ましい。
[8] 前記外筒は、外表面に把持部を有しており、把持部は、外筒の遠近方向の中点よりも近位側に配置されていることが好ましい。
[9] 前記把持部は、外筒の外表面よりも凸である部分を有していることが好ましい。
[10] 前記内筒の近位端部に接続されているハンドルを有し、ハンドルは、外筒の近位端に接する受け部を有していることが好ましい。
[11] 前記受け部は、ハンドルの内部に配置されていることが好ましい。
[12] 前記内筒の近位端部に接続されているハンドルを有し、内筒は、ハンドルに内筒の長軸を回転軸として回転可能に取り付けられていることが好ましい。
[13] 前記線状物の近位端部に接続されているハンドルを有し、ハンドルの線状物が接続されている部分は、ハンドル本体に対して遠近方向に移動が可能であることが好ましい。
[14] 前記内筒に対する外筒の可動域において、外筒を内筒に対する可動域において最も遠位側に配置すると、小径部の遠位端が大径部の近位端に接する位置に配置され、外筒を内筒に対する可動域において最も近位側に配置すると、小径部の近位端が受け部に接する位置に配置されることが好ましい。
[15] [1]~[14]のいずれかに記載の内視鏡処置具の作動方法であって、外筒を近位側に移動させる工程と、接続部に処置器具を接続する工程と、外筒を遠位側に移動させて、処置器具を外筒の内腔に配置する工程と、内視鏡に内視鏡処置具を挿通し、処置器具を目的部位に送り込む工程と、外筒を近位側に移動させ、処置器具を外筒から露出させる工程と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の内視鏡処置具によれば、外筒の小径部と内筒の大径部とが、内筒に対して遠近方向に移動が可能である外筒の可動域を制限することにより、外筒内における処置器具の位置を制限することができる。そのため、体内に配置されている内視鏡の処置具孔から処置器具を体内へ挿入する際に、体内において処置器具を外筒から突出させることができないことや、体内で内視鏡の処置具孔から過剰に外筒を突出させて体内組織を傷付けることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態における内視鏡処置具の全体の平面図を表す。
図2図1に示した内視鏡処置具の、外筒を可動域の最も近位側に配置した状態の遠近方向に沿った断面模式図を表す。
図3図1に示した内視鏡処置具の、外筒を可動域の最も遠位側に配置した状態の遠近方向に沿った断面模式図を表す。
図4図1に示した内視鏡処置具の遠近方向に沿った部分拡大断面図を表す。
図5】本発明の別の実施の形態における内視鏡処置具の遠近方向に沿った部分拡大断面図を表す。
図6】本発明の別の実施の形態における内視鏡処置具の遠近方向に沿った断面模式図を表す。
図7】本発明の他の実施の形態における内視鏡処置具の遠近方向に沿った断面模式図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
図1は本発明の実施の形態における内視鏡処置具の全体の平面図であり、図2図3図6および図7は内視鏡処置具の遠近方向に沿った断面模式図であり、図4および図5は内視鏡処置具の遠近方向に沿った部分拡大断面図である。
【0012】
図1図3に示すように、本発明の内視鏡処置具1は、遠近方向を有する外筒10と、外筒10の内腔に配置されている内筒20と、内筒20の内腔に配置されており、遠位端部に処置器具との接続部31を有している線状物30と、を有している。外筒10は、遠近方向の一部区間において、内径が小さい部分である小径部11を有し、内筒20は、遠近方向の一部区間において、外径が大きい部分である大径部21を有している。
【0013】
本発明において、近位側とは外筒10や内筒20の延在方向に対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、すなわち処置対象側を指す。また、外筒10や内筒20の延在方向を遠近方向と称する。径方向とは外筒10や内筒20の半径方向を指し、径方向において内方とは外筒10や内筒20の軸中心側に向かう方向を指し、径方向において外方とは内方と反対側に向かう方向を指す。なお、図1図7において、図の右側が近位側であり、図の左側が遠位側である。
【0014】
内視鏡処置具1は、ESDやEMR等の内視鏡を用いた処置において、処置器具との接続部31に処置器具を接続する。処置器具は、病変部の切除、止血、病変部の縫縮、体内組織の採取、体内組織への薬液の注入等に用いられる。処置器具の具体例としては、止血や病変部の縫縮にはクリップ、体内組織への薬液の注入には局注針、体内組織の採取には鉗子、病変部の切除にはスネアやナイフ等が挙げられる。
【0015】
外筒10は、内筒20に対して遠近方向に移動が可能である。つまり、外筒10を内視鏡処置具1全体に対して相対的に移動させ、外筒10と内筒20の位置関係を動かすことができる。例えば、内筒20を動かさずに外筒10を遠近方向に移動させることが可能であってもよく、外筒10を動かさずに内筒20を遠近方向に移動させることが可能であってもよい。
【0016】
図2に示すように、本発明の内視鏡処置具1は、外筒10の可動域において、外筒10の小径部11の最も内径の小さい箇所が、内筒20の大径部21の最も外径の大きい箇所よりも近位側にあることを特徴とする。内視鏡処置具1において、外筒10の小径部11の最も内径の小さい箇所が内筒20の大径部21の最も外径の大きい箇所よりも近位側にあることにより、内視鏡処置具1に対する外筒10の遠近方向の可動域を制御することができ、外筒10内における処置器具との接続部31の位置を制限することができる。その結果、体内に配置された内視鏡の処置具孔から処置具を体内へ挿入する際に、処置器具を体内において外筒10から突出させることができないということや、体内で内視鏡の処置具孔から過剰に外筒10を突出させて体内組織を傷付けるということを防止できる。外筒10の可動域は、可動域の一方端が大径部21と小径部11との接触部であり、可動域の他方端が外筒10の近位端とハンドル50との接触部であることによって定められる。
【0017】
外筒10は、遠近方向を有し、遠近方向に延在する内腔を有している。また、外筒10の内腔に内筒20が配置されている。さらに、外筒10は、内腔に接続部31を配置可能である。外筒10が内腔に接続部31を配置可能であることにより、接続部31に接続された処置器具の少なくとも一部を外筒10内に配置することができる。そのため、外筒10は、他の部材に固定されていないことが好ましい内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内を通って処置器具を処置対象部位付近に搬送するまでの間に、処置器具が内視鏡内の鉗子口や鉗子チャンネル内、処置対象部位以外の体内組織等を傷付けることを防ぐことができる。
【0018】
内筒20は、遠近方向を有し、遠近方向に延在する内腔を有している。内筒20の内腔に線状物30が配置されており、線状物30は、内筒20に対して遠近方向に移動が可能であることが好ましい。線状物30が内筒20に対して遠近方向に移動可能であることにより、接続部31に接続された処置器具を容易に動作させることができる。具体的には、処置器具がクリップである場合、線状物30を内筒20に対して遠近方向に移動させることにより、クリップを開閉することやクリップの開閉度を調整することができる。処置器具が鉗子である場合、線状物30を内筒20に対して遠近方向に移動させることにより、クリップと同様に、鉗子カップを開閉することや鉗子カップの開閉度を調整することができる。処置器具がスネアである場合、線状物30を内筒20に対して遠近方向に移動させることにより、スネアの環状部分のサイズや広がり度合いを調整することができる。
【0019】
外筒10および内筒20は、例えば、金属線材や板材がらせん状に巻回されているコイル状の筒体、金属や合成樹脂から形成された短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、合成樹脂から形成された筒体等を含むことができる。
【0020】
外筒10および内筒20を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。外筒10および内筒20を構成する金属は、中でも、Ni-Ti合金であることが好ましい。外筒10や内筒20を構成する金属がNi-Ti合金であることにより、外筒10や内筒20を形状記憶性や高弾性に優れたものとすることができる。
【0021】
外筒10および内筒20を構成する樹脂としては、例えば、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。
【0022】
外筒10を構成する材料は、例えば、フッ素系樹脂であることが好ましく、PTFEであることがより好ましい。外筒10を構成する材料がフッ素系樹脂であることにより、外筒10の内腔に配置されている内筒20との摺動性が高まり、外筒10の内筒20に対する遠近方向の移動が行いやすくなる。また、内筒20を構成する材料は、外筒10を構成する材料と異なるものであることが好ましく、例えば、外筒10を構成する材料がフッ素系樹脂である場合、内筒20を構成する材料はポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、ポリエチレンであることがより好ましい。内筒20を構成する材料が外筒10を構成する材料と異なるものであることにより、外筒10との摺動性を高めることができ、外筒10と内筒20との遠近方向の移動が容易となる。
【0023】
外筒10を構成する材料は、透明または半透明であることが好ましい。外筒10を構成する材料が透明または半透明であることにより、外筒10の内腔に配置されている内筒20と外筒10との位置関係を目視にて確認することができ、内視鏡処置具1の操作性を向上させることができる。
【0024】
内筒20は、金属製のコイル状の筒体であってもよい。内筒20が金属製のコイル状の筒体であることにより、剛性と可撓性とのバランスがとれた内筒20とすることができ、内視鏡処置具1を内視鏡の鉗子口から処置対象部位まで挿通しやすくなり、また、外筒10と内筒20との遠近方向の移動や、内筒20と線状物30との遠近方向の移動が行いやすくなる。
【0025】
外筒10および内筒20の遠近方向の長さは、内視鏡の鉗子口から処置対象部位までの距離等を考慮し、線状物30や外筒10、内筒20の遠近方向の長さ等に応じて適切な長さを選択することができる。外筒10および内筒20の遠近方向の長さとしては、例えば、1000mm以上3000mm以下とすることができる。
【0026】
内筒20の遠近方向の長さは、外筒10の遠近方向の長さよりも長いことが好ましい。内筒20の遠近方向の長さが外筒10の遠近方向の長さよりも長いことにより、外筒10の内筒20に対する遠近方向の移動が行いやすくなり、体内において外筒10を過剰に突出させて処置対象部位以外の体内組織等を傷付けることを防止できる。なお、内筒20の遠近方向の長さは、外筒10の遠近方向の長さの1.2倍以下であることが好ましく、1.1倍以下であることがより好ましく、1.05倍以下であることがさらに好ましい。内筒20の遠近方向の長さと外筒10の遠近方向の長さとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10の内腔に内筒20と接続部31とを十分に収めることができる。その結果、処置器具を処置対象部位へ搬送するまでの間に、処置器具が内視鏡内の鉗子口や鉗子チャンネル内、処置対象部位以外の体内組織等を傷付けにくくすることができる。
【0027】
外筒10および内筒20のサイズは、内視鏡の鉗子孔のサイズや接続部31等、内視鏡処置具1の他の部材のサイズに応じて適宜選択することができる。例えば、外筒10および内筒20の厚みは、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。外筒10および内筒20の厚みの下限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10および内筒20の剛性を適度なものとすることができ、内筒20に対する外筒10の遠近方向の移動が行いやすくなる。また、外筒10および内筒20の厚みは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。外筒10および内筒20の厚みの上限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10および内筒20の可撓性を高めることができ、内視鏡の鉗子口から処置対象部位へ内視鏡処置具1を送り込むことが容易となる。
【0028】
外筒10は、遠近方向の一部区間において、内径が小さい部分である小径部11を有している。すなわち、小径部11の内径は、外筒10の小径部11ではない部分の内径よりも小さい。外筒10が小径部11を有し、内筒20が大径部21を有することにより、外筒10を内筒20に対して遠位側へ移動させる際に、小径部11と大径部21とが接触することによって、外筒10の遠位側への可動域を制限することができる。外筒10の小径部11が設けられた区間の外径は、小径部11が設けられていない区間と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0029】
外筒10に小径部11を形成する方法としては、例えば、外筒10の任意の場所において、外筒10の内腔に筒状部材を挿入して接着剤等を用いて外筒10と筒状部材とを固定する、外筒10を熱収縮性樹脂にて構成し、外筒10の任意の場所に熱を加えて縮径する、外筒10の任意の場所に筒状部材を被せてかしめる等して外筒10を縮径する等の方法が挙げられる。中でも、外筒10を加熱して縮径することによって小径部11を形成することが好ましい。外筒10を加熱して縮径することによって小径部11を形成することにより、外筒10に小径部11を形成することを容易に行うことができ、内視鏡処置具1の生産の効率が高まる。
【0030】
内筒20は、遠近方向の一部区間において、外径が大きい部分である大径部21を有している。すなわち、大径部21の外径は、内筒20の大径部21ではない部分の外径よりも大きい。前述の通り、小径部11を有する外筒10を、大径部21を有する内筒20に対して遠位側へ移動させる際に、小径部11と大径部21とが接触することによって、外筒10の遠位側への可動域を制限することができる。
【0031】
内筒20に大径部21を形成する方法としては、例えば、内筒20の任意の場所に、筒状部材を被せて接着剤等を用いて内筒20と筒状部材とを固定する、筒状部材の内腔に内筒20を挿通して筒状部材をかしめる等して内筒20と筒状部材とを密着させる、熱収縮チューブを被せて加熱して内筒20に熱収縮チューブを密着させる等の方法が挙げられる。中でも、内筒20に筒状部材を被せ、接着剤等を用いて内筒20と筒状部材とを固定することによって大径部21を形成することが好ましい。内筒20に筒状部材を被せて内筒20と筒状部材とを固定することによって大径部21を形成することにより、大径部21の形成が容易となり、内視鏡処置具1の生産効率を高めることができる。
【0032】
線状物30は、遠近方向を有しており、遠位端部に接続部31を有している。線状物30は、遠近方向に延在する内腔を有している筒状であってもよいが、中実状であることが好ましい。線状物30が中実状であることにより、線状物30の外径を過度に大きくすることなく剛性を高めることができ、内視鏡処置具1の外径を小さく、かつ、内視鏡処置具1の挿通性を高めることができる。
【0033】
線状物30を構成する材料は、ステンレス鋼、炭素鋼等の金属線材や、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PP、PE等のポリオレフィン系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂繊維等が挙げられる。中でも、線状物30を構成する材料は、ステンレス鋼の線材であることが好ましい。線状物30を構成する材料がステンレス鋼の線材であることにより、必要な強度を備えつつ、生体適合性を高めることができる。
【0034】
図示していないが、線状物30は、線状物30の表面にコーティング層を有していてもよい。線状物30がコーティング層を有していることにより、線状物30と内筒20との間の摩擦を低減して摺動性を高めることや、線状物30の強度を高めることが可能となる。コーティング層としては、例えば、PTFE、PFA、ETFE、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0035】
線状物30へのコーティング層の形成方法としては、例えば、コーティング層を形成する材料を線状物30へ被覆すればよく、例えば、浸漬法、スプレー法、流動床法、ニーダーコーター法等を用いることができる。
【0036】
線状物30の遠近方向の長さは、外筒10や内筒20の遠近方向の長さと同様に、内視鏡の鉗子口から処置対象部位までの距離等を考慮し、外筒10や内筒20の遠近方向の長さに応じて適切な長さを選択することができる。線状物30の遠近方向の長さとしては、例えば、1000mm以上3000mm以下とすることができる。
【0037】
線状物30の遠近方向の長さは、外筒10の遠近方向の長さと内筒20の遠近方向の長さの両方よりも長いことが好ましい。線状物30の遠近方向の長さが外筒10の遠近方向の長さと内筒20の遠近方向の長さの両方よりも長いことにより、外筒10の内筒20に対する遠近方向の移動が行いやすくなり、体内において外筒10を過剰に突出させて処置対象部位以外の体内組織等を傷付けることを防止できる。なお、線状物30の遠近方向の長さは、スライダー52の可動域に応じて設定することができ、例えば内筒20の遠近方向の長さの1.15倍以下であることが好ましく、1.1倍以下であることがより好ましく、1.05倍以下であることがさらに好ましい。線状物30の遠近方向の長さと内筒20の遠近方向の長さとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、線状物30の遠近方向の移動を行いやすく、接続部31に接続された処置器具を動作させることが容易となる。
【0038】
線状物30の外径は、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることがさらに好ましい。線状物30の外径の下限値を上記の範囲に設定することにより、線状物30の剛性を高めることができ、内視鏡処置具1の挿通性を向上させることができる。線状物30の外径は、内筒20の内径の0.8倍以下であることが好ましく、0.5倍以下であることがより好ましく、また、0.15倍以上であることが好ましく、0.3倍以上であることがより好ましい。つまり、線状物30の外径は、内筒20の内径の0.8倍から0.15倍の範囲内であることが好ましく、0.5倍から0.3倍の範囲内であることがより好ましい。線状物30の外径の上限値を上記の範囲に設定することにより、線状物30の剛性を保ちつつ外径を小さくすることができ、内視鏡処置具1を細径化することができる。線状物30の外径は、全長にわたって同じでもよく、異なっていてもよい。例えば、線状物30のハンドル50の内部に配置される部分や近位側の部分を補強のために太くすることができる。補強部材として、線状物30の外側面にチューブを配置することができる。
【0039】
接続部31は、線状物30の遠位端部に設けられている。接続部31は、内視鏡処置具1に処置器具を接続するための部位である。接続部31は、線状物30の一部であってもよく、線状物30の遠位端部に処置器具を接続するための別部品であってもよい。接続部31が線状物30の遠位端部に設けられていることにより、線状物30への処置器具の接続や線状物30からの処置器具の取り外しが容易となり、内視鏡処置具1を用いた処置が行いやすく、また、処置時間も短縮することができる。
【0040】
接続部31が、線状物30の遠位端部に配置される線状物30とは別の部材である場合、接続部31である、処置器具を接続するための別部品を構成する材料は、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の金属や、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PP、PE等のポリオレフィン系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。中でも、処置器具を接続するための別部品を構成する材料は、線状物30を構成する材料と同一であることが好ましい。接続部31が線状物30と別部材である場合に、その材料と、線状物30を構成する材料とが同一であることにより、接続部31と線状物30との接合を強固なものとすることができる。そのため、接続部31が線状物30から外れにくくすることができ、内視鏡処置具1の耐久性を高めることが可能となる。
【0041】
接続部31が、線状物30の遠位端部に配置される線状物30とは別の部品である場合、線状物30へ処置器具を接続するための別部品を固定する方法は、例えば、ねじ、かしめ、嵌合、圧入等の接続部材による機械的な固定、レーザーや熱による溶接や接着剤やテープによる接着等を用いることができる。中でも、処置器具を接続するための別部品である接続部31は、線状物30へ溶接により固定されていることが好ましい。処置器具を接続するための別部品が線状物30へ溶接により固定されていることにより、接続部31と線状物30との接合強度を容易に高めることができ、内視鏡処置具1が破損する可能性を低減することができる。
【0042】
接続部31の外径は、内筒20の内径よりも小さいことが好ましい。つまり、接続部31は、内筒20の内腔に配置可能であることが好ましい。接続部31の外径が内筒20の内径よりも小さいことにより、内視鏡の鉗子口から処置対象部位まで内視鏡処置具1を送り込む際に、接続部31を内筒20の内腔に収納することができる。その結果、接続部31を外筒10の内腔に収めることとなり、接続部31や処置器具が内視鏡内の鉗子口や鉗子チャンネル内、処置対象部位以外の体内組織等を傷付けることを防止できる。処置器具を外筒10内に配置するために、接続部31の外径は、外筒10の内径よりも小さいことが好ましい。
【0043】
図4および図5に示すように、外筒10の小径部11の内径は、小径部11の内方に配置されている内筒20の外径よりも大きく、内筒20の大径部21の外径よりも小さいことが好ましい。内視鏡処置具1において、外筒10の小径部11の内径が、小径部11の内方に配置されている内筒20の外径よりも大きく、内筒20の大径部21の外径よりも小さいことにより、外筒10の内筒20に対する遠近方向の移動は妨げずに、外筒10が過度に遠位側へ移動することを防止することができる。そのため、外筒10内での処置器具の位置を適切な位置に制限し、体内において処置器具を外筒10から突出させることができないことや、内視鏡から過剰に外筒10を突出させて体内組織を傷付けることを防ぐことができる。
【0044】
外筒10の小径部11の内径は、小径部11の内方に配置されている内筒20の外径の1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.2倍以上であることがさらに好ましい。小径部11の内径と、小径部11の内方に配置されている内筒20の外径との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10の内筒20に対する遠近方向の移動を円滑に行うことができ、内視鏡処置具1を用いた処置が行いやすくなる。また、小径部11の内径は、小径部11の内方に配置されている内筒20の外径の1.2倍以下であることが好ましく、1.1倍以下であることがより好ましく、1.05倍以下であることがさらに好ましい。小径部11の内径と、小径部11の内方に配置されている内筒20の外径との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10の外径が過度に大きくなることを防ぎ、挿通性のよい内視鏡処置具1とすることができる。
【0045】
小径部11の内径は、大径部21の外径の0.9倍以下であることが好ましく、0.85倍以下であることがより好ましく、0.8倍以下であることがさらに好ましい。小径部11の内径と大径部21の外径との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10の小径部11が内筒20の大径部21を越えて遠位側に移動することを防止し、体内において外筒10を突出させすぎることによって体内組織等を傷付けることを防ぐことが可能となる。また、小径部11の内径は、大径部21の外径の0.5倍以上であることが好ましく、0.6倍以上であることがより好ましく、0.7倍以上であることがさらに好ましい。小径部11の内径と大径部21の外径との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10の小径部11における柔軟性を十分なものとし、内視鏡処置具1を処置対象部位付近へ搬送する際に搬送経路が湾曲した状態であっても、外筒10の内筒20に対する遠近方向への移動を円滑に行うことが可能となる。
【0046】
小径部11は、外筒10の遠近方向において任意の場所に設けられていればよいが、外筒10の遠近方向の中点よりも近位側にあることが好ましい。小径部11が外筒10の遠近方向の中点よりも近位側にあることにより、外筒10に小径部11を形成することが容易となり、内視鏡処置具1の製造が行いやすくなる。また、小径部11に、後述する小径部11のテーパー部12を形成することも容易となる。
【0047】
小径部11は、外筒10の遠近方向の中点よりも近位側にあることが好ましいが、外筒10の遠近方向の中点と外筒10の近位端との中点よりも近位側にあることがより好ましく、外筒10の近位端部にあることがさらに好ましい。小径部11が外筒10の遠近方向の中点と外筒10の近位端との中点よりも近位側にあることにより、外筒10への小径部11の形成をより容易にすることができ、内視鏡処置具1の製造効率を高めることできる。
【0048】
大径部21は、内筒20の遠近方向において任意の場所に設けられていればよいが、内筒20の遠近方向の中点よりも近位側にあることが好ましい。大径部21が内筒20の遠近方向の中点よりも近位側にあることにより、大径部21を内筒20に形成しやすく、内視鏡処置具1の製造を行いやすくすることができる。また、後述する大径部21のテーパー部22を大径部21に形成しやすくなるという効果も有している。
【0049】
大径部21は、内筒20の遠近方向の中点よりも近位側にあることが好ましいが、内筒20の遠近方向の中点と内筒20の近位端との中点よりも近位側にあることがより好ましい。大径部21が内筒20の遠近方向の中点と内筒20の近位端との中点よりも近位側にあることにより、内筒20へ大径部21を形成することが容易となり、内視鏡処置具1の製造における効率を高めることが可能となる。
【0050】
図5および図6に示すように、外筒10の小径部11の遠近方向の中点P1よりも遠位側と、大径部21の遠近方向の中点P2よりも近位側の少なくとも一方にテーパー部12、22を有していることが好ましい。内視鏡処置具1が外筒10の小径部11の遠近方向の中点P1よりも遠位側と大径部21の遠近方向の中点P2よりも近位側の少なくとも一方にテーパー部12、22を有していることにより、外筒10を内筒20に対して遠近方向に移動させ、小径部11と大径部21とが接触した際に、小径部11および大径部21が破損することを防止できる。例えば、外筒10の小径部11の遠位側に設けられたテーパー部12は、遠位側に向かって外筒10の内径が大きくなるテーパーであることが好ましい。この場合、テーパー部12の遠位端部の内径は、テーパー部12や小径部11の設けられていない外筒10の内径と同じ大きさであってもよく、異なっていてもよい。内筒20の大径部21の端部がテーパー部12の途中部分と接触することにより、外筒10の可動域が定められてもよい。
【0051】
図5および図6に示すように、小径部11は、小径部11の遠近方向の中点P1よりも遠位側にテーパー部12を有しており、外筒10を内筒20に対する可動域において最も遠位側に配置すると、小径部11のテーパー部12の表面が内筒20の大径部21の表面と接していることが好ましい。また、大径部21は、大径部21の遠近方向の中点P2よりも近位側にテーパー部22を有しており、外筒10を内筒20に対する可動域において最も遠位側に配置すると、大径部21のテーパー部22の表面が外筒10の小径部11の表面と接していることが好ましい。内視鏡処置具1において、外筒10を内筒20に対する可動域において最も遠位側に配置すると、小径部11のテーパー部12の表面が内筒20の大径部21の表面と接し、大径部21のテーパー部22の表面が外筒10の小径部11の表面と接することにより、外筒10と内筒20とが互いに固定され、外筒10の遠位端10aが過度に遠位側へ移動することをより効果的に防止することができる。
【0052】
小径部11の遠近方向の中点P1よりも遠位側と、大径部21の遠近方向の中点P2よりも近位側の少なくとも一方にテーパー部12、22を有していることが好ましいが、小径部11の遠近方向の中点P1よりも遠位側と、大径部21の遠近方向の中点P2よりも近位側の両方にテーパー部12、22を有していることがより好ましい。つまり、小径部11の遠近方向の中点P1よりも遠位側にテーパー部12を有し、かつ、大径部21の遠近方向の中点P2よりも近位側にテーパー部22を有していることがより好ましい。内視鏡処置具1において、小径部11の遠近方向の中点P1よりも遠位側と、大径部21の遠近方向の中点P2よりも近位側の両方にテーパー部12、22を有していることにより、外筒10をその可動域において最も遠位側に配置した際に、小径部11のテーパー部12と大径部21のテーパー部22とが接触するため、外筒10と内筒20とをより強固に固定することができ、外筒10の遠位端10aの遠位側への過度な移動をより妨げることができる。
【0053】
外筒10が透明または半透明である場合、小径部11は着色されており、外筒10の外方から小径部11が視認可能であることが好ましい。つまり、小径部11の色は、外筒10の色とは互いに異なっていることが好ましい。色が互いに異なるとは、小径部11の色と外筒10の色とで、JIS Z8721で定める色相、明度、および彩度の少なくとも1つが異なっていることを指す。小径部11が外筒10の外方から視認可能であることにより、外筒10の可動域を目視にて確認することができる。
【0054】
外筒10は、他の部材に固定されていないことが好ましい。外筒10が他の部材に固定されていないことにより、内視鏡処置具1を用いて処置を行う際に、処置器具の内視鏡処置具1内への収納や内視鏡処置具1からの露出を、内視鏡処置具1の径方向における最も外側面に配置されている外筒10を遠近方向に移動させることによって行うため、内視鏡処置具1の操作性を向上させることができる。
【0055】
外筒10が他の部材に固定されていない場合、内筒20は他の部材に固定されていることが好ましい。内筒20を固定する部材としては、例えば、図1図3に示すように、内視鏡処置具1のハンドル50等が挙げられる。内視鏡処置具1において、外筒10が他の部材に固定されておらず、内筒20が他の部材に固定されていることにより、外筒10の内筒20に対する遠近方向の移動が行いやすく、内視鏡処置具1内への処置器具の収納や露出の操作が行いやすくなる。なお、ハンドル50の詳細については後述する。
【0056】
図5に示すように、小径部11が存在している部分の外筒10の外径は、小径部11よりも遠位側の、外筒10の外径よりも小さい部分があることが好ましい。小径部11が存在している部分の外筒10の外径において、小径部11よりも遠位側の外筒10の外径よりも小さい部分があることにより、外筒10をハンドル50等の他物の内腔に引き入れやすくなり、内視鏡処置具1の遠近方向の長さが過度に長くなることを防止できる。
【0057】
小径部11が存在している部分の全体の外筒10の外径は、小径部11よりも遠位側の外筒10の外径よりも小さいことがより好ましい。また、小径部11が存在している部分から外筒10の近位端までの外筒10の外径は、小径部11よりも遠位側の外筒10の外径よりも小さいことがさらに好ましい。小径部11が存在している部分の全体の外筒10の外径が、小径部11よりも遠位側の外筒10の外径よりも小さいことにより、外筒10の近位端部の外径を小さくすることができ、外筒10をハンドル50等の他物の中に引き込むことがさらに容易となる。
【0058】
図2図3および図7に示すように、外筒10の可動域において、小径部11の遠位端11aは、大径部21の近位端21bよりも近位側にあることが好ましい。外筒10の可動域において、小径部11の遠位端11aが大径部21の近位端21bよりも近位側にあることにより、外筒10の小径部11が内筒20の大径部21を超えて遠位側に移動しにくくすることができ、外筒10の遠近方向の可動域をより制限することができる。
【0059】
図1および図7に示すように、外筒10は、外表面に把持部40を有していることが好ましい。外筒10が外表面に把持部40を有していることにより、外筒10を内筒20に対して遠近方向に移動させる際に、外筒10を十分に把持しやすくなり、内視鏡処置具1の操作性を向上させることが可能となる。
【0060】
把持部40は、外筒10の遠近方向の中点よりも近位側に配置されていることが好ましい。把持部40が外筒10の遠近方向の中点よりも近位側に配置されていることにより、外筒10がより把持しやすくなり、接続部31や処置器具を外筒10の内腔に収める操作を行いやすくすることができる。
【0061】
把持部40を構成する材料は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂、ステンレス鋼、炭素鋼等の金属等が挙げられる。把持部40を構成する材料は、外筒10を構成する材料と同じ材料であることが好ましい。把持部40を構成する材料が外筒10を構成する材料と同じ材料であることにより、把持部40を外筒10へ強固に固定しやすくなり、内視鏡処置具1の使用中に把持部40が外筒10から外れてしまうことを防止できる。
【0062】
把持部40の色は、外筒10の色とは互いに異なっていることが好ましい。色が互いに異なるとは、把持部40の色と外筒10の色とで、JIS Z8721で定める色相、明度、および彩度の少なくとも1つが異なっていることを指す。把持部40の色が外筒10の色とは互いに異なっていることにより、把持部40の視認性が高まり、操作が容易である内視鏡処置具1とすることができる。また、外筒10が透明または半透明である場合、把持部40は不透明であることが好ましい。把持部40が不透明であることにより、把持部40の視認性をさらに高めることが可能となる。把持部40の色としては、例えば、不透明の黒色とすることができる。
【0063】
把持部40を外筒10へ固定する方法としては、例えば、接着剤による接着、熱溶着による固定、把持部40を外筒10へ嵌合、圧入、かしめ等による機械的な固定等が挙げられる。把持部40を外筒10へ固定する方法は、中でも、接着剤を用いた固定が好ましい。把持部40が接着剤を用いて外筒10へ固定されていることにより、容易に把持部40を外筒10へ強固に固定することができる。
【0064】
把持部40は、外筒10の外表面よりも凸である部分を有していることが好ましい。把持部40が外筒10の外表面よりも凸である部分を有していることにより、外筒10を内筒20に対して遠近方向に移動させる際に、把持部40を把持しやすく、外筒10の遠近方向への移動が容易となる。
【0065】
把持部40の数は、1つであってもよいが、複数であることが好ましい。把持部40が複数であることにより、外筒10をより把持しやすくなる。把持部40の数は、5個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましく、2個であることがさらに好ましい。
【0066】
内視鏡処置具1は、内筒20の近位端部に接続されているハンドル50を有していることが好ましい。ハンドル50は、内視鏡処置具1を作動させる際に使用者が把持する部材である。内視鏡処置具1がハンドル50を有していることにより、内視鏡処置具1の操作が容易となる。
【0067】
ハンドル50は、外筒10の近位端に接する受け部51を有していることが好ましい。ハンドル50が外筒10の近位端に接する受け部51を有していることにより、外筒10の内筒20に対する遠近方向の移動において、外筒10が過度に近位側へ移動することを防ぎ、内視鏡処置具1の操作性を高めることができる。ハンドル50に受け部51を設けることにより、受け部51によって外筒10の近位側への可動域を制限することができる。また、外筒10の遠位側への可動域を制限する小径部11と大径部21とが接触する箇所の大径部を第1大径部とした場合、内筒20の第1大径部よりも近位側の内筒20に第2大径部を設け、小径部11と第2大径部とが接触する箇所によって、外筒10の近位側の可動域を制限することができる。
【0068】
受け部51は、図2および図3に示すように、ハンドル50の遠位端部に配置されていてもよいが、図7に示すように、ハンドル50の内部に配置されていることが好ましい。ハンドル50の内部に受け部51が配置されていることにより、接続部31に処置器具を接続する場合や、処置器具を動作させるために外筒10から処置器具を露出させる場合等において、外筒10を内筒20に対して近位側に移動させる際に、外筒10の近位側をハンドル50内に収納することができる。そのため、内視鏡処置具1の遠近方向の長さが過度に長くなることを防ぎ、操作しやすい内視鏡処置具1とすることができる。
【0069】
内視鏡処置具1にハンドル50が設けられており、内筒20の近位端部にハンドル50が接続されている場合、内筒20はハンドル50に、内筒20の長軸を回転軸として回転可能に取り付けられていることが好ましい。内筒20が、ハンドル50に内筒20の長軸を回転軸として回転可能に取り付けられていることにより、内視鏡処置具1を内視鏡の鉗子孔内で回転させた場合や、内視鏡処置具1にねじりやひねりを加えた場合にも、操作性を確保することができる。特に、線状物30を、遠近方向に移動可能かつ独立して回転しないようにハンドル50に取り付け、さらに、内筒20を、遠近方向に移動しないようにかつ回転可能にハンドルに取り付けた場合に操作性を確保することができ、ハンドル50の動きに対する処置器具の追従性が高い内視鏡処置具1とすることができる。この場合、線状物30は、ハンドル50の回転と一致して回転することが好ましい。
【0070】
ハンドル50は、線状物30の近位端部が接続されており、遠近方向に移動が可能なスライダー52を有していてもよい。ハンドル50がスライダー52を有していることにより、接続部31に処置器具を接続する際や、接続部31に接続されている処置器具を動作させる際等の線状物30を遠近方向に移動させることが容易となり、内視鏡処置具1の操作性を向上させることが可能となる。
【0071】
図3に示すように、外筒10を内筒20に対する可動域において最も遠位側に配置すると、小径部11の遠位端11aが大径部21の近位端21bに接する位置に配置されることが好ましい。外筒10を最も遠位側に配置することによって、小径部11の遠位端11aが大径部21の近位端21bに接する位置に配置されることにより、外筒10の遠位側の可動域を小径部11および大径部21が制限することができ、外筒10が必要以上に遠位側へ移動し、体内において処置器具を外筒10から突出させることができないことや、過剰に外筒10を突出させて体内組織を傷付けることを防止できる。
【0072】
図2に示すように、外筒10を内筒20に対する可動域において最も近位側に配置すると、小径部11の近位端11bが受け部51に接する位置に配置されることが好ましい。外筒10を最も近位側に配置すると、小径部11の近位端11bが受け部51に接する位置に配置されることにより、外筒10の近位側の可動域を小径部11および受け部51が制限することができる。そのため、外筒10が過度に近位側へ移動し、接続部31に接続された処置器具を外筒10内に収める動作が行いにくくなることを防ぐことができる。
【0073】
本発明の内視鏡処置具1の作動方法は、外筒10を近位側に移動させる工程と、接続部31に処置器具を接続する工程と、外筒10を遠位側に移動させて、処置器具を外筒10の内腔に配置する工程と、内視鏡に内視鏡処置具1を挿通し、処置器具を目的部位に送り込む工程と、外筒10を近位側に移動させ、処置器具を外筒10から露出させる工程と、を有するものである。
【0074】
始めに、病変部等の目的部位の位置を特定しやすくするために、目的部位に色素を散布する工程や、目的部位の周辺にマーキングを施す工程を行ってもよい。マーキングは、例えば、高周波器具を用いて目的部位の周辺を焼灼することにより行うことができる。また、病変部を切除する場合には、病変部の筋層と粘膜下層との間に生理食塩水またはヒアルロン酸を注入して、病変部を隆起させる工程を行ってもよい。病変部を隆起させる工程を行うことにより、病変部の切除が行いやすくなる。
【0075】
まず、外筒10を近位側に移動させ、内筒20を外筒10から露出させる。この際、線状物30を遠位側に移動させ、接続部31を内筒20から露出させることが好ましい。接続部31を内筒20から露出させることにより、接続部31に処置器具を取り付ける工程が行いやすくなる。
【0076】
次に、接続部31に処置器具を接続する。処置器具としては、スネア、ナイフ、クリップ、鉗子、局注針等が挙げられ、行う処置に応じて選択する。接続部31に処置器具を接続した後、外筒10を遠位側に移動させ、処置器具を外筒10の内腔に配置する。接続部31に処置器具を接続した後に処置器具を外筒10の内腔に配置することにより、処置器具を目的部位に搬送するまでの間に、処置器具が内視鏡内の鉗子口や鉗子チャンネル内、目的部位以外の体内組織等を傷付けることを防ぐことができる。
【0077】
そして、内視鏡に内視鏡処置具1を挿通し、処置器具を目的部位に送り込む。具体的には、内視鏡処置具1の遠位端を内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネルに挿入し、鉗子チャンネル内を通って処置器具を目的部位に搬送する。この際、術者は内視鏡から取得した映像を用いて、目的部位の位置や状況等を観察しながら内視鏡処置具1の移動を行う。
【0078】
処置器具を目的部位まで搬送した後、外筒10を近位側に移動させ、処置器具を外筒10から露出させる。処置器具を目的部位まで搬送した後に処置器具を外筒10から露出させることにより、処置器具を目的部位へ搬送するまでは、処置器具が外筒10内に収納されているため、内視鏡の鉗子口や鉗子チャンネル内、目的部位以外の体内組織等を傷付けることを防ぎ、処置器具が目的部位に到達した後には、外筒10から処置器具を露出させるため、処置器具の動作を妨げない。その後、必要に応じて、線状物30を近位側に移動させる等を行うことにより、処置器具を動作させる。
【0079】
以上のように、本発明の内視鏡処置具は、遠近方向を有する外筒と、外筒の内腔に配置されている内筒と、内筒の内腔に配置されており、遠位端部に処置器具との接続部を有している線状物と、を有し、外筒は、遠近方向の一部区間において、内径が小さい部分である小径部を有し、内筒は、遠近方向の一部区間において、外径が大きい部分である大径部を有し、外筒は、内筒に対して遠近方向に移動が可能であり、外筒の可動域において、小径部の最も内径の小さい箇所は、大径部の最も外径の大きい箇所よりも近位側にあることを特徴とする。本発明の内視鏡処置具がこのような構成であることにより、外筒の小径部と内筒の大径部とが、内筒に対して遠近方向に移動が可能である外筒の可動域を制限するため、外筒内における処置器具の位置を制限することができ、体内に配置された内視鏡の処置具孔から処置具を体内へ挿入する際に、体内において処置器具を外筒から突出させることができないことや、体内で内視鏡の処置具孔から過剰に外筒を突出させて体内組織を傷付けることを防止できる。
【0080】
本願は、2018年11月22日に出願された日本国特許出願第2018-219669号に基づく優先権の利益を主張するものである。2018年11月22日に出願された日本国特許出願第2018-219669号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0081】
1:内視鏡処置具
10:外筒
10a:外筒の遠位端
11:小径部
11a:小径部の遠位端
11b:小径部の近位端
12:小径部のテーパー部
20:内筒
20a:内筒の遠位端
21:大径部
21b:大径部の近位端
22:大径部のテーパー部
30:線状物
31:接続部
40:把持部
50:ハンドル
51:受け部
52:スライダー
P1:小径部の遠近方向の中点
P2:大径部の遠近方向の中点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7