(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】射出成形用金型、樹脂製容器製造装置、およびプラグユニット
(51)【国際特許分類】
B29C 45/27 20060101AFI20240229BHJP
B29C 45/30 20060101ALI20240229BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240229BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B29C45/27
B29C45/30
B29C45/17
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2021509422
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012860
(87)【国際公開番号】W WO2020196462
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019058644
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹花 大三郎
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-172658(JP,A)
【文献】特開2004-255754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/27
B29C 45/30
B29C 45/17
B29C 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂が通過する流路と、
前記溶融樹脂を前記流路に導入するための導入部および前記溶融樹脂を前記流路からキャビティ型へ供給する供給部を有
し、かつ前記流路の一部である本体流路が形成されている本体部と、
前記流路の一部であるプラグ流路が形成されているとともに、前記本体部に対して取り付け可能なプラグユニットと、を備える射出成形用金型であって、
前記本体部のうち前記本体流路が形成されていない部分に、前記プラグユニットを前記本体部に取り付けるための空間が設けられており、
前記プラグ流路は、前記プラグユニットが前記空間に取り付けられることで、前記本体部のうち前記空間が設けられている部分に形成され、
前記プラグ流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が変化する部位には、前記溶融樹脂が前記流路を通過する際に圧力損失が発生することを抑制する抑制部が形成されている、射出成形用金型。
【請求項2】
前記プラグ流路は、前記溶融樹脂の進行方向が変化する湾曲部を有し、
前記抑制部は、前記湾曲部の内周面における内側部分に、湾曲面として形成されている、請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記抑制部は、さらに、前記湾曲部の内周面における外側部分に、湾曲面として形成されている、請求項2に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記プラグ流路は、少なくとも二つの異なる方向に分岐する分岐部を有し、
前記分岐部は、第一流路と第二流路を備え、
前記抑制部は、前記第一流路の内周面における内側部分および前記第二流路の内周面における内側部分に、湾曲面としてそれぞれ形成されている、請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項5】
前記抑制部は、さらに、前記第一流路の内周面における外側部分および前記第二流路の内周面における外側部分に、湾曲面としてそれぞれ形成されており、
前記第一流路の内周面における外側部分および前記第二流路の内周面における外側部分の境界部分は、尖状に形成されている、請求項4に記載の射出成形用金型。
【請求項6】
前記プラグユニットは、複数のベース部材から構成されている、請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項7】
前記複数のベース部材は、
前記流路のうち前記溶融樹脂が直進する直進部が形成された第一ベース部材と、
前記流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が変化する湾曲部が形成された第二ベース部材と、
前記流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が分岐する分岐部が形成された第三ベース部材と、
を有し、
前記第一ベース部材は、前記第二ベース部材と前記第三ベース部材との間に配置されている、請求項6に記載の射出成形用金型。
【請求項8】
請求項1に記載の射出成形用金型を含む、樹脂製容器製造装置。
【請求項9】
溶融樹脂が通過する流路
であって、前記流路の一部である本体流路を含む前記流路が形成された射出成形用金型の本体部に取り付け可能なプラグユニットであって、
前記プラグユニットは、前記流路の一部であるプラグ流路が形成されたプラグ本体部を有し、
前記本体部のうち前記本体流路が形成されていない部分に、前記プラグユニットを前記本体部に取り付けるための空間が設けられており、
前記プラグ流路は、前記プラグユニットが前記空間に取り付けられることで、前記本体部のうち前記空間が設けられている部分に形成され、
前記プラグ流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が変化する部位には、前記溶融樹脂が前記プラグ流路の一部を通過する際に圧力損失が発生することを抑制する抑制部が形成されている、プラグユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形用金型、樹脂製容器製造装置、およびプラグユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ホットパリソン式のブロー成形方法はプリフォームの射出成形時の保有熱を利用してブロー成形する方法であり、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた容器の製造が可能である。ホットパリソン式のブロー成形機には、射出成形部とブロー成形部との間に温調部が設けられた機種(4ステーション式)と設けられない機種(2ステーション式と3ステーション式)が存在する。温調部が存在すると、一般的に、ブロー前のプリフォームの温度条件を最終容器の賦形に適したものに調整しやすい。また、ホットパリソン式のブロー成形機において、成形サイクルの短縮を目的とした種々の方法・装置が開発されている。例えば、特許文献1及び特許文献2では射出成形型の型開閉動作や延伸装置の昇降動作に係る時間の短縮、特許文献3では射出装置の制御方法の変更、特許文献4では早期離型可能なプリフォーム形状とその射出成形型の採用、等を行い、成形サイクルの短縮を図っている。
また、特許文献5では、マニホールド(ホットランナー型)本体内に、分岐しかつ屈曲したランナーが形成されたホットランナー金型のマニホールド装置が開示されている。特許文献6では、いわゆる拡散接合により、滑らかに曲げて形成される溶融材料通路を備えるマニホールドが開示されている。なお、特許文献5や特許文献6のマニホールドは、射出成形法(射出成形機)で用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2005-007797号公報
【文献】国際公開第2016-148189号
【文献】国際公開第2017-002150号
【文献】国際公開第2017-098673号
【文献】日本国特開平5-212758号公報
【文献】日本国特開平8-039640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ホットパリソン式のブロー成形機の更なる生産性の向上、具体的には、成形サイクル時間の一層の短縮化が切望されている。
【0005】
ホットパリソン式のブロー成形法の高速化(成形サイクルの短縮化)には、プリフォームの射出成形時間を短縮することが考えられる。通常、射出装置と射出キャビティ型との間には、ホットランナー型が設けられる。ここで、例えば、溶融樹脂の流動速度を上げるために、射出装置の射出圧力を上げてしまうと、ホットランナー内部の流路の構成に大きく影響し、プリフォームの品質が低下する虞があった。
【0006】
そこで、本開示は、プリフォームの品質を維持しつつ、射出成形時間を短縮することが可能な射出成形用金型(ホットランナー型)、樹脂製容器製造装置およびプラグユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本開示の射出成形用金型は、
溶融樹脂が通過する流路と、
前記溶融樹脂を前記流路に導入するための導入部および前記溶融樹脂を前記流路からキャビティ型へ供給する供給部を有する本体部と、
前記流路の一部であるプラグ流路が形成されているとともに、前記本体部に対して取り付け可能なプラグユニットと、を備える射出成形用金型であって、
前記プラグ流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が変化する部位には、前記溶融樹脂が前記流路を通過する際に圧力損失が発生することを抑制する抑制部が形成されている。
【0008】
上記構成によれば、射出成形用金型は、流路と、本体部と、本体部に対して取り付け可能なプラグユニットと、を備えている。プラグユニットに形成されたプラグ流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が変化する部位には、溶融樹脂が流路を通過する際に圧力損失が発生することを抑制する抑制部が形成されている。このため、例えば、溶融樹脂の流動速度を上げるべく、射出装置の射出圧力を上げたとしても、溶融樹脂の劣化が生じにくく、プリフォームの品質が維持される。また、射出装置の射出圧力を上げることで、溶融樹脂が導入部から流路を介してキャビティ型に供給されるまでの時間も短縮される。
このように、上記構成によれば、プリフォームの品質を維持しつつ、射出成形時間を短縮することが可能な射出成形用金型を提供することができる。
【0009】
また、上記課題を解決することのできる本開示の樹脂製容器製造装置は、
上記本開示に係る射出成形用金型を含む。
【0010】
また、上記課題を解決することのできる本開示のプラグユニットは、
溶融樹脂が通過する流路が形成された射出成形用金型の本体部に取り付け可能なプラグユニットであって、
前記プラグユニットは、前記流路の一部であるプラグ流路が形成されたプラグ本体部を有し、
前記プラグ流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が変化する部位には、前記溶融樹脂が前記プラグ流路の一部を通過する際に圧力損失が発生することを抑制する抑制部が形成されている。
【0011】
上記構成によれば、プラグユニットは、プラグ流路が形成されたプラグ本体部を有しており、プラグ流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が変化する部位には、溶融樹脂がプラグ流路の一部を通過する際に圧力損失が発生することを抑制する抑制部が形成されている。また、プラグユニットは、射出成形用金型の本体部に対して取り付け可能である。
このように、上記構成によれば、射出成形用金型が、例えば、ガンドリル加工式の射出成形用金型であったとしても、流路の一部に抑制部を設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、プリフォームの品質を維持しつつ、射出成形時間を短縮することが可能な射出成形用金型(ホットランナー型)、樹脂製容器製造装置およびプラグユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図2は、射出成形部を例示する断面模式図である。
【
図3】
図3は、本開示に係る射出成形用金型(ホットランナー型)の断面図である。
【
図4A】
図4Aは、従来のプラグユニットを用いて形成された流路の断面図である。
【
図4B】
図4Bは、従来のプラグユニットを用いて形成された流路の断面図である。
【
図4C】
図4Cは、本開示に係るプラグユニットを用いて形成された流路の断面図である。
【
図5】
図5は、樹脂製の容器の製造方法のフローチャートを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0015】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。これらの方向は、各図において共通的に設定された方向である。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。例えば、
図1における前後方向は、成形機20の長手方向に対応している。
図2における各方向は、射出成形部21を右側面から観察した場合における方向である。
図3における各方向は、ホットランナー型60を上方向から観察した場合における方向である。また、
図4A~
図4Cにおける各方向は、プラグユニット62,162,262を外部正面から観察した場合における方向である。ただし、本開示に係る射出成形用金型、樹脂製容器製造装置、およびプラグユニットの構成は、
図1~
図4Cにおける方向の定義に限定されない。
【0016】
まず、
図1を参照して、樹脂製の容器を製造するための成形機20について説明する。
図1は成形機20のブロック図である。
図1に例示するように、成形機20は、プリフォーム11を製造するための射出成形部21を少なくとも備えており、原材料である樹脂材料を供給する射出装置25が接続されている。射出装置25は、樹脂材料を射出成形部21に射出するためのノズルを有している。また、成形機20は必要に応じて、射出成形部21の下流工程側に、製造されたプリフォーム11の温度を調整または冷却するための温調部(後冷却部)22と、プリフォーム11をブローして容器を製造するためのブロー成形部(ブロー装置の一例)23と、製造された容器を取り出すための取出部24とを備えている。本開示の射出成形用金型(ホットランナー型60)は、例えば、成形機20がコールドパリソン式の射出成形機や、ホットパリソン式のブロー成形機である場合に、利用可能である。
【0017】
以下では、本開示の射出成形用金型を、ホットパリソン式のブロー成形で用いた場合について詳述する。成形機20は、射出成形部21とブロー成形部23と取出部24とを有し、さらに温調部22を備えていても構わない。これらの成形部は、搬送手段26を中心として所定角度90度または120度ずつ回転した位置に設けられている。搬送手段26は回転板等で構成されており、
図2に例示するように、搬送手段26の回転板に取付けられているネック型50によりネック部12が支持された状態のプリフォーム11又は容器が、回転板の回転に伴って各部に搬送されるように構成されている。
【0018】
図2に例示するように、射出成形部21は、射出キャビティ型30(以下、単にキャビティ型30という。)と、射出コア型40と、ネック型50と、を含むプリフォーム用射出成形型ユニット21Aと、ランナーブロック型60A(ホットランナー型60の一部)と、を備えている。ランナーブロック型60Aを含むホットランナー型60は、プリフォーム用射出成形型ユニット21Aに溶融樹脂を供給するための射出成形用金型である。なお、ランナーブロック型60Aの側面には、導入口64(導入部の一例)が設けられている。導入口64は、射出装置25のノズルを当接可能に構成されている。また、ランナーブロック型60Aの内部には、導入口64からランナーブロック型60Aの内部に延びる導入流路68が設けられている。導入流路68は、射出装置25から射出される溶融樹脂をランナーブロック型60A内の流路に導入する流路である。なお、導入口64はランナーブロック型60Aの下面に設けられても良い。射出キャビティ型30の下面には、中空状のゲート部31が設けられている。ランナーブロック型60Aの上面には、後述する供給部65に連設した中空状のランナーブロックノズル孔65Aが設けられている。ゲート部31とランナーブロックノズル孔65Aは連通する。
【0019】
これらの型が型締めされることで形成されるプリフォーム形状の空間内に、射出装置25からポリエステル系樹脂(例えばPET:ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂材料を流し込むことにより、有底のプリフォーム11が製造される。樹脂材料は、例えば熱可塑性樹脂であり、用途に応じ適宜選定できる。なお、射出装置25から射出成形部21へ射出される樹脂材料は、溶融状態の樹脂(溶融樹脂)である。プリフォーム11は容器に応じ最適な肉厚分布(形状)を有しており、その胴部の厚み(平均厚、肉厚)としては例えば1.0~5.0mm、好ましくは1.5~3.0mmに設定される。
【0020】
温調部22は、射出成形部21で製造されたプリフォーム11の温度を、最終ブローするための適した温度に調整するように構成されている。
【0021】
ブロー成形部23は、温調部22で温度調整されたプリフォーム11に対してブロー成形を行い、容器を製造するように構成されている。ブロー成形部23は、底型と、開閉可能な一対の割型(ブロー成形用キャビティ型)と、により構成されている。底型および割型が型締めされることにより、容器の側面及び底面の外形が規定される。
【0022】
ここで、
図3および
図4A~
図4Cを参照して、ホットランナー型60について詳細に説明する。
図3に例示するように、ホットランナー型60は、ランナーブロック型60Aと、ベース部材60Bと、複数の側壁部材60Cと、を備えている。ランナーブロック型60Aは、ホットランナー型60に含まれるブロック部材である。ランナーブロック型60Aは、ベース部材60Bに取り付けられており、かつ複数の側壁部材60Cに囲まれるように配置されている。ランナーブロック型60Aは、本体部61と、複数のプラグユニット62と、複数のプラグユニット69と、を有する。本実施形態に係るランナーブロック型60Aは、合計で6つのプラグユニットを有しているが、プラグユニットの数はこれに限られない。
【0023】
本体部61は、略直方体または略円柱体である。本体部61は、流路63と、導入口64と、供給部65と、を備えている。また、本体部61の上面および各側面には、ランナーブロック型60A用の各種部品をランナーブロック型60Aに装着するための穴が設けられている。例えば、本体部61の上面には、供給部65として機能する穴が設けられている。また、例えば、本体部61の側面には、プラグユニット62,69を挿入するための穴601が設けられている。穴601は、前後方向の断面視でT字型であることが好ましいが、これに限定されない。例えば、断面視で略四角型の形状でも良い。さらに、樹脂材料の溶融状態を維持するため、不図示のヒーターが搭載されている。
【0024】
プラグユニット62は、内側が中空になっている略筒状である。また、プラグユニット62はランナーブロック型60Aに装着できれば良く、上下方向の断面視の外形は略円柱体でも略角柱体でも構わない。プラグユニット62は、前後方向の断面視でT字型であることが好ましいが、略四角型でも構わない。プラグユニット62は、本体部61に対して取り付け可能である。プラグユニット62は、プラグ本体部621と、固定部622と、を備える。プラグ本体部621は、略筒状であり、断面視で略長方形である。プラグ本体部621の前後方向の長さは、プラグ本体部621の左右方向の長さよりも長い。固定部622は、前後方向の断面視で略長方形である。固定部622の前後方向の長さは、固定部622の左右方向の長さよりも短い。プラグユニット62は、穴601に挿入された後、固定部622において、ピン留めされることによって穴601に対して回転不能な様態で固定される。
【0025】
プラグユニット69は、プラグ本体部691と、固定部692と、を備える。プラグユニット69はプラグユニット62と略同様の構成であるが、プラグユニット69の内部に形成されている直線状の流路が、プラグユニット62の内部に形成されている直線状の流路よりも長い点で異なる。
【0026】
流路63は、導入口64から導入された溶融樹脂が通過可能な通路である。流路63は、本体部61の内部に形成されている本体流路66と、プラグ本体部621,691の内部に形成されているプラグ流路67と、を含む。つまり、本体流路66とプラグ流路67は、流路63の一部である。
【0027】
本体流路66は直線状である。したがって、本体流路66を通る溶融樹脂の進行方向は変化しない。一方、プラグ流路67は、直線状の流路のみならず、曲線状の流路や、二股状の流路も含む。
【0028】
ところで、プラグユニットがランナーブロック型の本体部に取り付けられるのは、一般的に、ランナーブロック型の流路がガンドリル加工により作製される場合である。この理由としては、主に二つの理由がある。一つ目の理由は、例えば、ランナーブロック型の流路が拡散接合加工により製造される場合、流路を比較的自由に設計することができるため、プラグユニットを用いなくても流路を曲げることができるからである。二つ目の理由は、プラグユニットをランナーブロック型の本体部に取り付ける場合、プラグユニットを挿入するための空間をランナーブロック型の内部に設ける必要があり、空間的な制約が生じてしまうからである。つまり、例えば、拡散接合加工によりランナーブロック型の流路を作製する場合に、わざわざプラグユニットをランナーブロック型の本体部に取り付けるための空間(例えば、挿入穴)をランナーブロック型の本体部に設けることはしない。これらの理由により、プラグユニットが用いられるのは、一般的に、ランナーブロック型の流路がガンドリル加工により作製される場合である。本実施例に係るランナーブロック型60Aの流路63は、ガンドリル加工を用いて作製されるため、プラグユニット62,69が用いられている。
【0029】
次に、
図4A~
図4Cを用いて、プラグユニット62について説明する。
図4Aおよび
図4Bは従来のプラグユニット162を用いて形成された流路およびプラグユニット262を用いて形成された流路の断面図であり、
図4Cは本開示に係るプラグユニット62を用いて形成された流路の断面図である。
【0030】
図4Aに例示するように、プラグユニット162の内部には、流路163が設けられている。流路163は、複数の直線状の流路から構成されており、略L字型である。各直線状の流路の接点には角部164,165が形成されている。角部164は、端部164Aと、端部164Bと、傾斜部164Cと、を有する。流路163内における端部164Aと端部164Bの角度は、それぞれ略135度である。流路163内における角部164の角度は略90度である。流路163内における角部165の角度は略270度である。つまり、角部165では、プラグユニット162の略直角状の金属部分が流路側に出っ張っているとも言える。さらに、角部165は、角部164のように傾斜部または曲線部(R値が大きい状態)に加工させることは実質的に不可能である。
【0031】
図4Bに例示するように、プラグユニット262の内部には、流路263が設けられている。流路263は、複数の直線状の流路から構成されており、略T字型である。各直線状の流路の接点には角部265が形成されている。流路263内における角部265の角度は略270度である。つまり、角部265では、プラグユニット262の略直角状の金属部分が流路側に出っ張っているとも言える。さらに、角部265は、プラグユニット162の角部164のように傾斜部または曲線部(R値が大きい状態)に加工させることは実質的に不可能である。このため、溶融樹脂が角部164,165,265付近の流路を通過すると、角部164,165,265において、溶融樹脂の滞留や偏流が生じやすい。さらに、角部164,165,265付近の流路では、溶融樹脂に対する流動抵抗が大きくなり、ひいては圧力損失が大きくなる。特に、傾斜部や曲線部が形成できない角部165,265では、溶融樹脂の滞留や偏流が生じ易く、圧力損失も大きいものとなる。なお、従来のプラグユニット162およびプラグユニット262において、略L字型の流路と略T字型の流路を、それらの内部に一体的に形成することはできない。このため、従来のプラグユニット162およびプラグユニット262を用いる場合、本体流路66は
図3とは異なる場合がある。
【0032】
一方、
図4Cに例示するように、プラグユニット62は、第一ベース部材62Aと、第二ベース部材62Bと、第三ベース部材62Cと、を備えている。第一ベース部材62A、第二ベース部材62B、第三ベース部材62Cは、それぞれが独立している。このため、プラグユニット62は、例えば、第一ベース部材62Aと第三ベース部材62Cのみを備えていてもよい。第一ベース部材62Aには、溶融樹脂が直進する直進部70が形成されている。第二ベース部材62Bには、溶融樹脂の進行方向が変化する部位である湾曲部71が形成されている。第三ベース部材62Cには、溶融樹脂の進行方向が分岐(変化)する部位である分岐部72が形成されている。直進部70、湾曲部71、および分岐部72は、プラグ流路67の一部として機能し得る。なお、プラグユニット69についても、プラグユニット62と同様に、直進部が形成された第一ベース部材と、湾曲部が形成された第二ベース部材と、分岐部が形成された第三ベース部材と、を備えている。
【0033】
直進部70は、第一ベース部材62Aに対し、ドリル加工を施すことにより形成される。湾曲部71は、第二ベース部材62Bに対し、マシニング加工を施すことにより形成される。分岐部72は、第三ベース部材62Cに対し、マシニング加工を施すことにより形成される。
【0034】
湾曲部71の内周面における外側部分(プラグ流路67の中点の集合である中心線Mの外側部分)には、湾曲面73が形成されている。湾曲部71の内周面における内側部分(中心線Mの内側部分)には、湾曲面74が形成されている。したがって、湾曲面73の曲率半径は、湾曲面74の曲率半径よりも大きい。
【0035】
分岐部72は、第一流路72Aと、第二流路72Bと、を少なくとも備えている。したがって、分岐部72において、プラグ流路67は少なくとも二つの異なる方向に分岐している。第一流路72Aの内周面における外側部分(中心線Mの外側部分)には、湾曲面75が形成されている。第一流路72Aの内周面における内側部分(中心線Mの内側部分)には、湾曲面76が形成されている。このため、湾曲面75の曲率半径は、湾曲面76の曲率半径よりも大きい。同様に、第二流路72Bの内周面における外側部分(中心線Mの外側部分)には、湾曲面77が形成されている。第二流路72Bの内周面における内側部分(中心線Mの内側部分)には、湾曲面78が形成されている。したがって、湾曲面77の曲率半径は、湾曲面78の曲率半径よりも大きい。
【0036】
湾曲面75と湾曲面77の境界部分には、尖り部79が形成されている。尖り部79の尖頂は、プラグユニット62の前方向(直進部70における溶融樹脂の進行方向に対して逆向きの方向)に向かって尖っている。換言すると、湾曲面75と湾曲面77の境界部分は、尖状に形成されている。尖り部79は、直進部70の幅方向の中点から溶融樹脂の進行方向に向かって延びる線上にある。また、尖り部79は、第三ベース部材62Cの短辺の中点と直進部70の幅方向の中点とを結ぶことにより形成される直線上にある。
【0037】
上述のように、本開示のプラグユニット62において、従来の
図4Aに例示されるプラグユニット162の角部165や
図4Bに例示されるプラグユニット262の角部265に相当する領域は、全て湾曲面(曲路状)で構成されている。したがって、角部165,265で生じていた溶融樹脂の滞留や偏流、圧力損失の抑止や低減が図れる。ここで、直進部70の内径と湾曲部71の内径は等しい。第一流路72Aの内径と第二流路72Bの内径は等しい。第一流路72Aの内径および第二流路72Bの内径は、直進部70の内径および湾曲部71の内径よりも小さい。なお、分岐部72には必要に応じて、第三流路(不図示)や第四流路(不図示)が設けられていても構わない。
【0038】
続いて、樹脂製の容器の製造方法について説明する。
図5は、4ステーション式の射出ブロー成形装置で本開示を利用した場合の一例であり、樹脂製の容器の製造方法のフローチャートを例示する図である。当該容器は、プリフォーム11を射出成形する射出成形工程S1と、プリフォーム11を温調する温調工程S2と、温調されたプリフォーム11をブロー成形して容器を製造するブロー成形工程S3と、を経て製造され、容器のネック部12をネック型50から開放することで容器が取り出される。
【0039】
まず、射出成形工程S1について説明する。射出成形工程S1において、射出装置25から導入口64に樹脂材料(溶融樹脂)が射出される。
図3に例示するように、導入口64に向けて射出された溶融樹脂は、導入流路68を介して本体部61に形成されている本体流路66に導入される。本体流路66に流入した溶融樹脂は、本体流路66を介してプラグユニット69に形成されているプラグ流路67に流入する。
【0040】
プラグ流路67に流入した溶融樹脂は、湾曲部71、直進部70、分岐部72の順に通過する。湾曲部71の内周面に形成される各湾曲面73,74は、溶融樹脂の進行方向が徐々に変化するように湾曲した形状であるため、溶融樹脂が湾曲部71を通過するとき、湾曲部71での溶融樹脂の滞留や偏流は生じにくい。また、湾曲部71においては、溶融樹脂に対する流動抵抗が小さくなり、ひいては圧力損失も小さくなる。このように、各湾曲面73,74は、圧力損失が発生および溶融樹脂の滞留や偏流を抑制する抑制部80として機能し得る。
【0041】
溶融樹脂は、湾曲部71を通過すると、直進部70に流入する。直進部70において、溶融樹脂は、一定の方向に直進する。したがって、直進部70において、溶融樹脂の滞留や偏流はほとんど生じない。
【0042】
溶融樹脂は、直進部70を通過すると、分岐部72に流入する。分岐部72に流入した溶融樹脂は、二つの異なる方向に分岐して進む。このとき、各湾曲面75~78は、湾曲状であるため、溶融樹脂が分岐部72を通過するとき、分岐部72での溶融樹脂の滞留や偏流は生じにくい。また、分岐部72において、溶融樹脂に対する流動抵抗が小さくなり、ひいては圧力損失も小さくなる。このように、各湾曲面75~78は、圧力損失が発生することを抑制する抑制部80として機能し得る。また、湾曲面75と湾曲面77の各々が接続する部分には尖り部79が形成されているため、尖り部79付近においても、溶融樹脂の滞留や偏流、圧力損失は生じにくい。
【0043】
溶融樹脂は、分岐部72を通過すると、再び本体流路66に流入し、供給部65に到達する。供給部65に到達した溶融樹脂は、キャビティ型30に供給される。このようにして、樹脂材料(溶融樹脂)が、射出キャビティ型、射出コア型、ネック型等が型締めされることで形成されるプリフォーム形状の空間内に流し込まれ、プリフォーム11が製造される。樹脂充填工程の終了直後または樹脂充填工程後に設けられた一定時間(最小限)の冷却工程後に、成形機20は、プリフォーム11を射出成形部21から後工程、例えば、温調部(後冷却部)22やブロー成形部へ移動させる。
【0044】
このように、ランナーブロック型60Aを備えたホットランナー型60を含む射出成形部21を用いることによって、溶融樹脂が湾曲部71や分岐部72を通過する際に生じる圧力損失が発生することを抑制することができ、溶融樹脂の滞留や偏流も低減することができる。このため、プリフォームの射出成形時間を短縮しても、高品質なプリフォームを製造することができる。その結果、成形機20の成形サイクル全体での所要時間も短縮化される。
【0045】
次に、
図5に戻り、温調工程(後冷却工程)S2について説明する。まず、プリフォーム11をキャビティ型30のプリフォーム形状の空間内に収容する。続いて、キャビティ型30に収容されたプリフォーム11の内部にエアを送り、プリフォーム11をキャビティ型30の内壁に密着させる予備ブローおよびクーリングブローを行う。一定時間の冷却の後に、冷却されたプリフォーム11をブロー成形部23に移動させる。ランナーブロック型60Aにより、高品質なプリフォームが形成可能なため、温調工程(後冷却工程)S2も短時間で完了できる。なお、温調工程(後冷却工程)S2の処理方法は、上記に限定されない。
【0046】
次に、ブロー成形工程S3について説明する。まず、底型が静止しており、割型が開いている状態のブロー成形部23にプリフォームを収容する。続いて、ロッド部材によりプリフォーム11を下方向に延伸する。そして、プリフォーム11の内部にエアを送る最終ブローにより、プリフォーム11を容器の形状まで膨らませ、容器を製造する。その後、割型を開き容器をブロー成形部23から開放する。
【0047】
ブロー成形部23から引き抜かれた容器を、取出部24(
図1)に移動し、容器のネック部12をネック型50(
図2)から開放することで容器を取り出す。以上の方法により、容器が製造される。
【0048】
ところで、ホットパリソン式のブロー成形法の高速化(成形サイクルの短縮化)には、プリフォームの射出成形時間、特に冷却時間を短縮する必要がある。しかし、冷却時間を短縮すると、プリフォームの品質が低下する虞がある。このため、プリフォームの品質を低下させずに射出装置の射出圧力を上げることは、困難であった。
【0049】
ガンドリル加工式のホットランナーは、極めて高い寸法精度の加工が要求される拡散接合加工式のホットランナーと比べて、コストの面等で有利である。このため、ガンドリル加工式のホットランナーは、ホットパリソン式のブロー成形法を用いる場合において、一般的に採用されている。しかし、ガンドリル加工式のホットランナーを採用した場合、ランナー(流路)は直線状にしか加工することができない。このため、ランナー同士の交点である角部や、流路が二つに分岐するランナーの分岐部の形状は、略直角形状のL字状またはT字状に限定されてしまう。つまり、ガンドリル加工式のホットランナーを採用した場合、一般的に、拡散接合加工式のホットランナーにおける角部や分岐部のように、圧力損失が小さい湾曲した形状の角部や分岐部を形成することができない。これは、ランナーブロック型の流路をガンドリル加工により作製する場合、ガンドリルはランナーブロック型に対して直線状に移動させることしかできないためである。
【0050】
略直角状である角部や分岐部のランナー領域では、樹脂材料の偏流や滞留が生じやすい。また、樹脂材料に及ぶ流動抵抗が高くなり、ひいては圧力損失が大きくなる。
【0051】
従来、この圧力損失を補うには、射出装置の射出圧を高くせざるを得なかった。しかし、射出装置の射出圧を高くする方法では、角部、分岐部、狭隘部といったランナー領域において、せん断発熱の誘発等による樹脂材料の温度ムラが引き起こされ、その結果、樹脂材料の品質劣化やプリフォームの偏温が増大してしまう傾向があった。また、射出コア型の偏芯も生じやすくなり、プリフォームの偏肉増大を招く一因にもなっていた。
【0052】
プリフォームの偏温および/または偏肉が大きいと、高速成形における短い温調処理時間では、プリフォームの偏温および/または偏肉を解消することができない。
【0053】
以上の理由により、樹脂材料の滞留や偏流を減少させ、圧力損失が低減でき、短時間でも偏温および偏肉が小さい高品質なプリフォームを製造することが可能になるよう、従来のガンドリル加工式のホットランナーを改良する必要がある。
【0054】
ここで、本実施形態に係るランナーブロック型60Aは、本体部61とは別体のプラグユニット62,69を有している。プラグユニット62,69は、ランナーブロック型60Aの大きさの約40分の1の大きさであり、本体部61の外部の穴601から挿入し保持させることができる。このため、ランナーブロック型60Aに直線状の流路に加えて緩やかな曲線状の湾曲部や分岐部といった流路を形成させたい場合、直線状の流路は本体部61に設け、湾曲部や分岐部は別体のプラグユニット62,69に設けることができる。直線状の流路は従来通り本体部61にガンドリル加工を施すことで容易に形成できる。一方、湾曲部や分岐部は、マシニング加工等でプラグユニット62,69の内部を切削することで、流路を所望の直径や形状に容易に形成させることができる。このため、湾曲部71または分岐部72を含むプラグ流路67を形成したプラグユニット62,69を本体部61とは別体の部材にさせたことで、拡散接合加工式に頼らなくても、最適な流路が構成されたランナーブロック型60Aを容易に実現させることができる。
【0055】
また、本実施形態に係るプラグユニット62は、第一ベース部材62Aと、第二ベース部材62Bと、第三ベース部材62Cと、を備えている。また、プラグユニット69も、直進部が形成された第一ベース部材と、湾曲部が形成された第二ベース部材と、分岐部が形成された第三ベース部材と、を備えている。このため、例えば、プラグユニット62の内部に流路を作製しようとする場合、ベース部材ごとに、マシニング加工で各ベース部材の内部を切削すればよいので、容易に、プラグユニット62の内部に、湾曲部71および分岐部72を含むプラグ流路67を作製することができる。
【0056】
本実施形態の射出成形用金型(ホットランナー型60)および樹脂製容器製造装置(成形機20)によれば、ランナーブロック型60Aは、流路63と、本体部61と、プラグユニット62,69と、を備えている。例えば、プラグユニット62において、プラグユニット62のプラグ流路67のうち溶融樹脂の進行方向が変化する部位である湾曲部71や分岐部72には、抑制部80が形成されている。このため、溶融樹脂が湾曲部71や分岐部72を通過する際に圧力損失が発生することや溶融樹脂の劣化が抑制される。また、従来のホットランナー型の場合と異なり、射出圧を必要以上に高くさせなくても良い。よって、滞留による樹脂の劣化(ヤケ)が抑制されて、圧力損失を補う高い射出圧による偏温や偏肉も低減された、高品質なプリフォームを製造することができる。
【0057】
本実施形態の射出成形用金型(ホットランナー型60)および樹脂製容器製造装置(成形機20)によれば、湾曲部71や分岐部72の内周面における内側部分および外側部分に、湾曲面として形成されているので、湾曲部71や分岐部72を通過する際に発生する圧力損失を抑制することができ、樹脂材料が劣化しにくい。
【0058】
本実施形態の射出成形用金型(ホットランナー型60)および樹脂製容器製造装置(成形機20)によれば、湾曲面75と湾曲面77の境界部分には尖り部79が形成されている。換言すると、湾曲面75と湾曲面77の境界部分は尖状に形成されている。このため、尖り部79付近においては、溶融樹脂の滞留や偏流が生じにくい。その結果、溶融樹脂が分岐部72を通過する際に発生する圧力損失を低減させることができ、樹脂材料が劣化しにくい。
【0059】
本実施形態の射出成形用金型(ホットランナー型60)、樹脂製容器製造装置(成形機20)およびプラグユニット62,69によれば、プラグユニット62,69は、複数のベース部材から構成されているため、例えば、ホットランナー型60の設計が変更されたとしても、迅速かつ簡便に、プラグ流路67の長さの調整や、プラグ流路67の直径や曲率半径の加工および/または調整等を行うことができる。
【0060】
本実施形態の射出成形用金型(ホットランナー型60)、樹脂製容器製造装置(成形機20)およびプラグユニット62,69によれば、プラグユニット62は、直進部70が形成された第一ベース部材62Aと、湾曲部71が形成された第二ベース部材62Bと、分岐部72が形成された第三ベース部材62Cと、を有している。そして、第一ベース部材62Aは、第二ベース部材62Bと第三ベース部材62Cとの間に配置されている。また、プラグユニット69もプラグユニット62と同様に、直進部が形成された第一ベース部材と、湾曲部が形成された第二ベース部材と、分岐部が形成された第三ベース部材と、を有しており、第一ベース部材は、第二ベース部材と第三ベース部材との間に配置されている。このため、ホットランナー型60、成形機20およびプラグユニット62,69によれば、プラグユニット62,69内に形成される流路63の長さや、流路63の進行方向を調整することができる。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本開示の目的を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0062】
上記実施形態の射出成形用金型(ホットランナー型60)において、湾曲部71や分岐部72の内周面の外側および内側に形成されている面の形状は湾曲状であるがこれに限られない。例えば、略正多角形の周の一部の形状であってもよい。
【0063】
上記実施形態では、プラグユニット62は、第一ベース部材62Aと、第二ベース部材62Bと、第三ベース部材62Cと、を備えているが、この例に限られない。プラグユニット62は、例えば、第二ベース部材62Bと第三ベース部材62Cを備える構成、第一ベース部材62Aと第二ベース部材62Bを備える構成、または第一ベース部材62Aと第三ベース部材62Cを備える構成であってもよい。なお、プラグユニット69においてもプラグユニット62と同様に、第二ベース部材と第三ベース部材を備える構成、第一ベース部材と第二ベース部材を備える構成、または第一ベース部材と第三ベース部材を備える構成であってもよい。
【0064】
上記の実施形態において、成形機20は、射出成形部21とブロー成形部23との間に温調部22が設けられた、いわゆる4ステーション式の成形機であるが、例えば、温調部22が設けられていない、いわゆる2ステーション式や3ステーション式のブロー成形機、もしくは、ブロー成形部23が設けられない射出成形装置であってもよい。
【0065】
以下、上述した実施形態およびその変形から抽出される態様を列記する。
[1] 溶融樹脂が通過する流路と、
前記溶融樹脂を前記流路に導入するための導入部および前記溶融樹脂を前記流路からキャビティ型へ供給する供給部を有する本体部と、
前記流路の一部であるプラグ流路が形成されているとともに、前記本体部に対して取り付け可能なプラグユニットと、を備える射出成形用金型であって、
前記プラグ流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が変化する部位には、前記溶融樹脂が前記流路を通過する際に圧力損失が発生することを抑制する抑制部が形成されている、射出成形用金型。
[2] 前記プラグ流路は、前記溶融樹脂の進行方向が変化する湾曲部を有し、
前記抑制部は、前記湾曲部の内周面における内側部分に、湾曲面として形成されている、[1]に記載の射出成形用金型。
[3] 前記抑制部は、さらに、前記湾曲部の内周面における外側部分に、湾曲面として形成されている、[2]に記載の射出成形用金型。
[4] 前記プラグ流路は、少なくとも二つの異なる方向に分岐する分岐部を有し、
前記分岐部は、第一流路と第二流路を備え、
前記抑制部は、前記第一流路の内周面における内側部分および前記第二流路の内周面における内側部分に、湾曲面としてそれぞれ形成されている、[1]から[3]のいずれか一つに記載の射出成形用金型。
[5] 前記抑制部は、さらに、前記第一流路の内周面における外側部分および前記第二流路の内周面における外側部分に、湾曲面としてそれぞれ形成されており、
前記第一流路の内周面における外側部分および前記第二流路の内周面における外側部分の境界部分は、尖状に形成されている、[4]に記載の射出成形用金型。
[6] 前記プラグユニットは、複数のベース部材から構成されている、[1]から[5]のいずれか一つに記載の射出成形用金型。
[7] 前記複数のベース部材は、
前記流路のうち前記溶融樹脂が直進する直進部が形成された第一ベース部材と、
前記流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が変化する湾曲部が形成された第二ベース部材と、
前記流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が分岐する分岐部が形成された第三ベース部材と、
を有し、
前記第一ベース部材は、前記第二ベース部材と前記第三ベース部材との間に配置されている、[6]に記載の射出成形用金型。
[8][1]から[7]のいずれか一つに記載の射出成形用金型を含む、樹脂製容器製造装置。
[9] 溶融樹脂が通過する流路が形成された射出成形用金型の本体部に取り付け可能なプラグユニットであって、
前記プラグユニットは、前記流路の一部であるプラグ流路が形成されたプラグ本体部を有し、
前記プラグ流路のうち前記溶融樹脂の進行方向が変化する部位には、前記溶融樹脂が前記プラグ流路の一部を通過する際に圧力損失が発生することを抑制する抑制部が形成されている、プラグユニット。
【0066】
本出願は、2019年3月26日出願の日本国特許出願(特願2019-058644号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。