(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】複合アノードを備える、再充電可能なリチウム電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20240229BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240229BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240229BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 E
H01M4/36 B
H01M4/48
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2021512687
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2019073687
(87)【国際公開番号】W WO2020049093
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】102018215071.0
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517346602
【氏名又は名称】アルベマール・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビーテルマン,ウルリヒ
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-503928(JP,A)
【文献】特表2013-524423(JP,A)
【文献】国際公開第2009/101815(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105895881(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/58
H01M 4/36
H01M 4/48
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再充電可能なリチウム電池であって、前記再充電可能なリチウム電池が、
複合アノードの電気化学的活性成分としての1以上の電気化学的活性な金属窒素化合物を含む複合アノードであって、前記金属窒素化合物が一般式(I)及び/または(II)
Li
xM
2
z(NH)
0.5x+z (I)
Li
mM
2
n(NH
2)
1+n (II)
の金属窒素化合物であって、ここで、
(I)及び(II)は任意の混合比で存在しており、M
2はMg、Ca、Sr、Ba及
びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるアルカリ土類元素であり、
ここで、xは0~4であり、zは0~2であり、mは1または0であり、nは1または0であり、(m+n)は1であり、且つ、前記金属窒素化合物が完全に放電しておりリチウムが最も充填されていない状態に対応している、
である、前記複合アノードと、
セパレータによって前記アノードから分離されたカソードであって、金属酸化物、リチウム金属酸化物、酸化リチウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される1以上のリチウム挿入可能な化合物と、非プロトン性リチウム電解質と、を含有する、前記カソードと、
を含み、
前記複合アノードの電気化学的に活性な金属窒素化合物は、
純粋に電子導電性であるか或いはイオン導電性及び電子導電性の両方である、遷移金属含
有ネットワークに埋め込まれており、
前記ネットワークは1以上の遷移金属及び/または1以上の電子導電性もしくは混合導電性介在型遷移金属化合物からなり、前記介在型遷移金属化合物はLi/Li
+
に対して2.5V未満の電気化学的電位を有し、前記ネットワークを形成する成分と前記金属窒素化合物I及び/またはIIとの間の重量比が1:100~1:2の範囲であることを特徴とする、前記リチウム電池。
【請求項2】
前記遷移金属含有電子導電性または混合導電性ネットワークが
、Sc、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及び前述の2以上の任意の組み合わせの群から選択される遷移金属粉
末を含有することを特徴とする、請求項1に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項3】
前記複合アノードが、元素周期表の第3族から第12族までの元素を遷移金属粉末として含有することを特徴とする、請求項1~2のいずれか1に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項4】
前記複合アノードが、元素周期律表の第3族から第12族までの少なくとも1つの元素の遷移金属窒化物及び遷移金属炭化物と、元素周期律表の第3族から第10族までの少なくとも1つの元素の遷移金属水素化物と、これらの2種以上のいずれかの組み合わせ物からなる群から選択される、電子導電性または混合伝導性の介在型遷移金属化合物を含有することを特徴とする、請求項1~2のいずれか1に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項5】
前記遷移金属粉末及び/または前記混合導電性の介在型遷移金属化合物、ならびに前記電気化学的に活性な金属窒素化合物が、0.1~100nmの範囲の粒径を有する、微細に分割された非晶質またはナノ粒子の形態で均一に混合されて存在することを特徴とする、請求項3に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項6】
前記複合アノード中の遷移金属及び/または前記電子導電性もしくは前記混合伝導性介在型遷移金属化合物と前記窒素含有活性材料との重量比が、1:50~1:5の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項7】
前記複合アノードが、遷移金属を含有する電子導電性または混合導電性ネットワークとして、Sc、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及び前記の2以上のいずれかの組み合わせからなる群から選択される、遷移金属粉末を含有することを特徴とする、請求項3に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項8】
前記複合アノードが、(a)TiN
n、ZrN
n、HfN
n、VN
n、NbN
n、TaN
n、CrN
n、MoN
n、WN
n、MnN
n、FeN
n、CoN
n、NiN
n、ZnN
n;Cr
1-nF
e
nN(ここで、nは0.3~1である)と、(b)Li
7MnN
4;LiMoN
2;Li
2.6Co
0.2Cu
0.15Fe
0.05N;Li
2.7Fe
0.3N;Li
3FeN
2;Li
2.5Co
0.2Cu
0.1Ni
0.1N;Li
2.6C
0.2Cu
0.2N;Li
2.6Co
0.4Nと、(c)TiC、WC;Zr
C
1-m、HfC
1-m、VC
1-m、NbC
1-m、TaC
1-m、Cr
3C
2、Mo
2C、Fe
3C(こ
こで、mは0~0.5である)と、(d)ScH
2、YH
o、LaH
o、CeH
2、PrH
o
、NdH
o、SmH
o、EuH
o、GdH
o、TbH
o、DyH
o、HoH
o、ErH
o、TmH
o、YbH
o、LuH
o、TiH
2、ZrH
2、HfH
2、VH、VH
2、TaH
0.5、MnH(ここで、oは2または3である)とからなる群より選択される、少なくとも1つの微細に分割された介在型化合物を含有することを特徴とする、請求項4に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項9】
前記複合アノードが、電子導電性または混合導電性遷移金属含有材料からなるマトリックスに埋め込まれた、少なくとも1つの電気化学的に活性な材料を含み、かつ、前記少なくとも1つの電気化学的に活性な材料が、Li
2NH、MgNH、CaNH、Li
2Mg(NH)
2、Li
2Ca(NH)
2、MgCa(NH)
2、Li
4Mg(NH)
3、Li
2Mg
2(NH)
3及びLiNH
2からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項10】
前記複合アノードが、非金属系導電性増強剤、リチウム供与添加剤及び結合剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項11】
前記複合アノードが、プレス加工またはカレンダー加工されていることを特徴とする、請求項1に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項12】
前記カソードが、水酸化リチウム、酸化リチウム、過酸化リチウム及び超酸化リチウム及び水素化リチウムからなる群から選択される、リチウム酸素化合物の形態の少なくとも1つのアニオン酸化還元活性材料を含有することを特徴とする、請求項1に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項13】
前記カソードが、LiCoO
2、LiNiO
2、Li(Ni,Mn,Co)O
2、LiN
i
0.80Co
0.15Al
0.05O
2からなる群から選択される層状材料、LiMn
2O
4及びLi
Ni
0.5Mn
1.5O
4からなる群から選択されるスピネル構造材料、LiFePO
4及びLiMnPO
4からなる群から選択されるオリビン構造材料、電解二酸化マンガンまたは酸化
バナジウム、金属フッ化物及び金属オキシフッ化物からなる群から選択される非リチオ化金属挿入化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項14】
前記アノード中の微細に分割された遷移金属及び/または少なくとも微細に分割された介在型遷移化合物の重量割合が、1重量%~33重量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の再充電可能なリチウム電池。
【請求項15】
前記遷移金属、及び/または混合導電性介在型遷移金属化合物及び電気化学的に活性な金属窒素化合物が、1から30nmまでの範囲内の粒子サイズを備えた微細に分割され、非晶質またはナノ粒子の形態で均質に混合された状態で存在することを特徴とする、請求項1に記載の再充電可能なリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合アノード中の電気化学的活性成分として、金属窒素化合物を含有する複合アノードと、セパレータによってそこから分離されたカソードと、を備え、前記カソードが、リチウム挿入可能な化合物と、非プロトン性リチウム電解質と、を含有する、再充電可能なリチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術
市販の再充電可能なリチウムイオン電池の機能原理は、負極(アノード)と正極(カソード)の両方とも、微細構造を根本的に変えることなく、リチウムイオンを貯蔵(挿入)できる材料から作製されるという、挿入機構に基づいている。アノード材料がグラファイトや硬質炭素などの炭素系材料を使用するのに対し、カソード活性材料は遷移金属酸化物からなる。前述の酸化物の遷移金属は、酸化還元活性である。すなわち、充電や放電の際に酸化状態を変化させる。これは、以下の代表的な反応で示される。
【化1】
【0003】
現在使用されているカソード材料では、電池の充電/放電の際に酸化還元活性金属中心の酸化状態が1段階しか変化せず、前述の場合は+IIIと+IVの間で酸化状態が変化する。このため、カソード材料の静電容量は比較的低い。従来のカソード材料であるLiCoO2の場合、理論上の静電容量は274mAh/gであるが、そのうち実際に使用できるのは約135mAh/gに過ぎない。アノードに使用されているグラファイト材料も、372mAh/gの限界化学量論のLiC6に対して比較的低い静電容量を有する。したがって、グラファイト(C6)/LiCoO2系の理論エネルギー密度は不十分なほど低く、それは約380Wh/gである。リチウムイオン電池の別の欠点は、カソード材料にコバルトやニッケルなどの金属を使用していることであり、これらの金属は入手可能な範囲が限られている。前述した金属は、世界的なエレクトロモビリティや定置エネルギー貯蔵のためのリチウム電池の包括的な供給を提供するのに、十分な量が得られないという根本的な懸念がある。
【0004】
グラファイトの代替品としてのリチウム金属(3860mAh/g)のはるかに高い貯蔵容量は、そのような電池が安全でもなくサイクル的に安定してもいないので、実用的な電池のアノードを製造するために利用できない。サイクル中、リチウム金属は平面的に堆積するのではなく、針状の増殖物(デンドライト)の形で堆積することがある。これらの増殖物は、金属アノードとの物理的な接触を失い、電気化学電池の容量が低下する原因となり得る。更に深刻なのは、このような先の尖ったデンドライトがセパレータを貫通した場合の影響である。これによって、電池セルが短絡して、熱暴走、電池筐体の開放、流出したガスが着火する可能性があるなど、しばしば悲惨な結果を招くことがあり得る。
【0005】
そのため、純リチウム金属の代わりにリチウム合金をアノード材料として使用する試みが行われている。しかし、リチウム合金は、リチウムの貯蔵と抽出の間に顕著な体積変動を示す(時には数回で100%、例えばLi9Al4で238%)。このため、合金アノードは、スズ-グラファイト複合材料を除いて、これまでのところ、市場での地位を確立することができていない。スズは有毒であり、希少で高価な元素であるため、スズを含有
する材料の普及が阻まれている。
【0006】
カチオン酸化還元活性正極材料に代わるものとして、開放型電池系の研究が進められている。これは、環境に開放された多孔質構造体を含有し、炭素から主になり、その表面を貴金属を含有する触媒で被覆することで、拡散した酸素をリチウム酸化物に結合させ得る(酸素還元反応)ものである。
Li++e-+O2 -> LiO2
【0007】
最初に形成された生成物である超酸化リチウム(LiO2)では、酸素の平均酸化数は-0.5である。リチウムを更に取り込むと、酸素の酸化数が-1の過酸化リチウム(Li2O2)を生成する。後者の酸化リチウムは、酸素の酸化を触媒する金属触媒の存在下にて、形成反応が逆転して、リチウムと元素状酸素に変換することができる。
Li2O2 -> 2Li++2e-+O2
【0008】
その欠点は、前述した空気電極が非常に低い電力密度しか持たず、何よりも可逆性が非常に限られているため、このカソード形状は市販の電池として使用するには程遠いということである。そのうえ、充電電位と放電電位の間には、通常は0.5~1Vの大きな差があるため、エネルギー効率(「往復効率」)はまったく満足のいくものではない。現在の克服できない技術的な課題が原因で、リチウム/空気電池の商業化が早くても10~20年後になることが予想される。考察については、K.Amine et al.,Chem.Reviews2014,5611-40,114を参照のこと。
【発明の概要】
【0009】
目的
本発明の目的は、500Wh/kg以上の高いエネルギー密度を有し、かつLi金属アノードが注入された安全性の高いリチウム電池を提供することである。更に、希少金属や入手困難な金属の含有量が可能な限り低い、活性材料を使用すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
目的の達成
本発明の目的は、電気化学的活性成分として、一般式(I)及び/または(II)
LixM2
z(NH)0.5x+z (I)
LimM2
n(NH2)1+n (II)
の金属窒素化合物であって、ここで
(I)及び(II)は任意の混合比で存在しており、
M2=Mg、Ca、Sr、Baまたはこれらの任意の混合物からなる群から選択されるアルカリ土類元素であり、
x=0~4、z=0~2であり、
m=1または0、n=1または0、ここで(m+n)=1であり、これが、前記金属窒素化合物の完全に放電した、リチウムが最も充填されていない状態に対応している、前記金属窒素化合物を含有する複合アノード(負極)と、
セパレータによってそこから分離されたカソード(正極)と、を備え、前記カソードが、金属酸化物、リチウム金属酸化物、酸化リチウム及び水酸化リチウムから選択されるリチウム挿入可能な化合物と、非プロトン性リチウム電解質と、を含有し、複合アノードの電気化学的に活性な金属窒素化合物は、遷移金属を含有する、微細に分散した遷移金属及び/または電子導電性または混合導電性介在型遷移金属化合物からなる、電子導電性または混合導電性ネットワークに埋め込まれており、ネットワークを形成する成分と窒素含有化合物I及び/またはIIとの間の重量比が1:100~1:2の範囲である、再充電可能なリチウム電池によって達成される。
【0011】
本発明に関連して、電子導電性または混合導電性ネットワークは、純粋に電子導電性の材料、またはイオン導電性及び電子導電性の両方である材料を意味すると理解される。金属窒素化合物の完全に充電された、リチウムが最も多い状態で、それらは一般式(III)及び/または(IV)
Li2z+xM2
z(NH)0.5x+z (III)
Li3N・n(LiM2N)・(4-2m)LiH (IV)
に対応しており、ここで
(III)及び(IV)は任意の混合比で存在しており、
M2=アルカリ土類元素(Mg、Ca、Sr、Ba、またはこれらの任意の混合物)であり、
x=0~4、z=0~2であり、
m=1または0であり、n=1または0であり、ここで(m+n)=1である。
【0012】
カソードとして、電気化学的電位がLi/Li+に対して約2Vの値を超える、カソード材料を使用できる。ナノ粒子状のリチウム酸素化合物は、水酸化リチウム(LiOH)、酸化リチウム(Li2O)、過酸化リチウム(Li2O2)及び超酸化リチウム(LiO2)から選択された、電子導電性または混合導電性ネットワークに埋め込まれたものが好ましく使用される。LiOHを使用する場合、カソードは、少なくとも最初に充電された後に、水素化リチウム(LiH)を追加的に含有する。本発明に従った再充電可能なリチウム電池は、リチウム金属、またはアノードとして使用されなければならないリチウムとの合金を形成できる材料(例えば、スズ、シリコン、またはアルミニウム)がなくても、高い可逆性の貯蔵容量を有する。本発明に従った電気化学活性アノード材料の機能原理について、以下に説明する。
【0013】
本発明に従った窒素含有活性材料を含有するガルバニ電池を充電/放電する際の一般的なアノード半反応は、以下の2つの式のうちの少なくとも1つに対応する。
【化2】
【0014】
特に高い比容量を達成するために、M2は、可能な限り低い原子質量を有することが好ましく、すなわち、M2は、マグネシウム(Mg)またはカルシウム(Ca)またはそれらの混合物であることが好ましい。
【0015】
好ましくは、放電状態(リチウムプア状態)のガルバニ素子は、活性アノード材料として、一般式(I)に従い、以下の化合物、Li2NH、MgNH、CaNH、Li2Mg(NH)2、Li2Ca(NH)2、MgCa(NH)2、Li4Mg(NH)3、Li2Mg2(NH)3のうちの1つ以上、及び/または一般式(II)に従い、以下の化合物、LiNH2、Ca(NH2)2もしくはMg(NH2)2のうちの1つ以上を含有する。
【0016】
本発明に従ったガルバニ電池を外部電圧を印加して充電すると、活性N含有アノード材料はリチウム過剰状態に入る。完全に充電されると、リチウム過剰化合物は、一般式(III)により、好ましくはLi4NH、Li2CaNH、Li2MgNH、Li6Mg(NH)2、Li6Ca(NH)2、Li4MgCa(NH)2、Li10Mg(NH)3、Li8Mg2(NH)3により形成され、及び/または一般式(IV)により、好まし
くはLi3N、CaLiN、MgLiN、及びLiHにより形成される。
【0017】
1つ以上の金属を含有するイミド化合物は、例えば、Li4M2(NH)3またはLi2M2
2(NH)3(M2=Mg、Ca、SrまたはBa)のような相が同質の化合物でもよく、または対応する単一金属からなる化合物の物理的混合物でもよい。例えば、正式にはLi2Mg(NH)2とLi2NHとの混合物である、Li4Mg(NH)3(K.J.Michel,A.R.Akbarzadeh,V.Ozolins,J.Phys.Chem.C.2009,113,14551-8を参照)や、Li2Mg(NH)2とMgNHの混合物であるLi2Mg2(NH)3(E.Weidner et al.,J.Phys.Chem.C2009,113,15772-7を参照)が文献で知られている。
【0018】
一般式(I)の4つの代表的な化合物の電気化学的酸化還元半反応は、以下のように記載できる。
【化3】
【0019】
前述した7つの特に好ましいアノード系の理論上の容量は、放電形態(リチウムプア)に基づいて以下のように算出される。
【表1】
【0020】
したがって、一般式(I)または(II)に従って特に好ましく使用される、すべての
アノード材料は、先行技術(グラファイト)と比較して少なくとも3倍の理論上の容量を有する。
【0021】
一般式(I)~(IV)による前述の化合物に加えて、M2=Mg、Ca、Sr、Baまたはそれらの任意の所望の混合物を有する、一般組成物M2
2LiNH2の窒化水素化物を使用することができる。典型的な例は、Sr2LiNH2(D.M.Liu,Q.Q.Liu,T.Z.Si,Q.A.Zhang,Journal of Alloys and Compounds,495,9April2010,272-274を参照)であり、これは、本発明の目的のために、高容量のリチウム窒素系アノード材料として利用することができる。
【0022】
リチウムアミドは、本発明に従ったリチウムプアなアノード活性材料の中で最も高いリチウム吸収能を有する(表1を参照)。したがって、リチウムアミドと一般式(I)に従うアノード材料との混合物を使用することにより、比電気化学容量を増大させることができる。例えば、リチウムアミドとリチウムイミドとの1:1の混合物Li
2NHを使用する場合、混合アノード材料の理論上の比容量3103Ah/kgが得られる。この混合物の電気化学的半反応は、次の式で表される。
【化4】
【0023】
LiNH2の添加は、純粋な成分を混合することによって達成されるが、例えば、Li3Nを所望のH含有量に水素添加することによって、構造的に均一な混合相Li2-xNH1+xを合成することも可能である(D.Chandra et al.,DOE Hydrogen Program,FY2009Ann.Prog.Rep.477-482を参照)。
【0024】
リチウム窒素系アノード活性材料は、国際特許第WO2011/051290A1号及び同第WO2011/121084A1号それぞれに記載されている、合成経路によって調製できる。
【0025】
高容量アノード材料として一般式(I)、(II)、(III)、(IV)に従うリチウム窒素化合物を使用することは、国際特許第WO2011/051290A1号及び同第WO2011/121084A1号それぞれに開示されており、既知である。両方の明細書は、このようにして製造された電池アノードが遷移金属を含有してはならないことを具体的に明示している。国際特許第WO2011/051290A1号では、更に「式LioNH3-oの遷移金属を含まないリチウム窒素化合物、ここでo=1、2または3である」と記載している。
【0026】
国際特許第WO2011/121084A1号は、アノードに遷移金属が存在しないことを明確には指摘していないが、負極(アノード)に遷移金属または遷移金属化合物が存在する可能性があることを示唆してはいない。
【0027】
本発明者らは、国際特許第WO2011/121084A1号及び同第WO2011/051290A1号からの技術教示に従って、アノード材料として使用される一般的な一般式(I)~(IV)に従うリチウム窒素化合物は、非常に低い電気化学容量を有し、それによって製造されたガルバニ電池をサイクル化しようとすると、可逆性がほとんど存在しないことを見いだした。
【0028】
驚くべきことに、Li/Li+に対して2.5V未満の電気化学的電位を有する微細に分散した遷移金属粉末及び/または微細に分散した導電性遷移金属化合物を添加することにより、電気化学的活性及びサイクル性を大幅に増加させる得ることがわかってきた。リチウム窒素系アノード材料と微細に分散した遷移金属粉末または導電性遷移金属化合物との間の接触を、可能な限り密接に確保することが重要である。そのうえ、一般式(I)~(IV)を特徴とするリチウム窒素化合物、及び遷移金属粉末、ならびにLi/Li+に対して2.5V未満の電気化学的電位を有する電子導電性または混合導電性遷移金属化合物が、可能な限り微細に分散した非晶質またはナノ粒子状の形態で存在することが有利である。好ましいナノ粒子形態の正確な寸法は、機械的なフォームファクタ(すなわち、粒子の三次元形状)に依存する。球状(または類似の)粒子形態の場合、これらの直径は0.1~100nm、好ましくは1~30nmである。微細に分散した遷移金属粉末及び/または微細に分散した導電性遷移金属化合物の電気化学的電位がLi/Li+に対して2.5V未満である場合の電子導電度は、室温で少なくとも10-7秒/cm、好ましくは少なくとも10-6秒/cm、特に好ましくは少なくとも10-5秒/cmである。
【0029】
好ましくは元素周期表の第3族から第12族の元素、特に好ましくは、M=Sc、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、及び希土類金属La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、または前記遷移金属の任意の所望の混合物が、遷移金属粉末Mとして利用される。
【0030】
遷移金属化合物としては、電気化学的電位がLi/Li+に対して2.5V未満である電子導電性介在型化合物が用いられる。これらの介在型化合物は好ましくは、M=元素周期表の第3族から第12族の金属を有する遷移金属窒化物(ニトリドメタレート)及び/または遷移金属炭化物、及び/またはM=元素周期表の第3族から第10族の金属を有する遷移金属水素化物である。二元(MNx、MCx、MHx)及び三元(MM’yNx;MM’yCx;MM’yHx)の両方、ならびにそれ以上の混合相を使用することができ、ここで、更なる金属M’は、周期表の第3族から第12族の少なくとも1つの更なる遷移金属(MxM’yNz)及び/またはリチウム元素(LiyMNx;LiyMCx;LiwMxM’yNz;LiwMxM’yHz;など)である。ここで、w、y=0~8、x=0.5~1、z=0~3である。
【0031】
ナノ粒子状ニトリドメタレートは、例えば、高エネルギーミル(遊星ボールミル)を用いて結晶性前駆体を粉砕することによって調製することができる(D.H.Gregory,The Chemical Record,Vol.8,229-239,2008)。しかし、物理蒸着法、プラズマ法及びレーザー法などの他の物理的処理、または化学的処理によっても調製することができる。化学的処理は通常、元素金属または対応する化合物(酸化物、水素化物など)に基づいており、通常、高温で窒素源(例えば、アンモニア、シアナミド、尿素または気体窒素)との反応を提供する(S.Dong et al.,Coordination Chem.Reviews257(2013)1946-56)。高導電性ナノ多孔質遷移金属窒化物は、例えば、Zn及びCd含有酸化物前駆体のアンモノリシスによって調製することができる(M.Yang,J.DiSalvo,Chem.Materials2012,24,4406-9)。特に好ましくは、以下の遷移金属窒化物化合物、TiNn、ZrNn、HfNn、VNn、NbNn、TaNn、CrNn、MoNn、WNn、MnNn、FeNn、CoNn、NiNn、ZnNn;Cr1-nFenN(ここで、n=0.3~1)、及びLi7MnN4;LiMoN2;Li2.6Co0.2Cu0.15Fe0.05N;Li2.7Fe0.3N;Li3FeN2;Li2.5Co0.2Cu0.1Ni0.1N;Li2.6Co0.2Cu0.2N;Li2.6Co0.4Nが使用される。
【0032】
遷移金属炭化物は、炭素熱還元法、共還元法、水熱法、ゾルゲル法、及びCVDによっ
て調製することができる。1Dまたは2Dの形態を有するナノ粒子状炭化物は、一般にテンプレート法により合成される(Y.Zong,Adv.Sci.2016,3,1500286)。特に好ましくは、以下の遷移金属炭化物、TiC、WC;ZrC1-m、HfC1-m、VC1-m、NbC1-m、TaC1-m、Cr3C2、Mo2C、Fe3C(ここでm=0~0.5)が用いられる。
【0033】
遷移金属水素化物は一般に、通常、高温及び高水素圧力での、下地金属の水素化により調製される(U.Wietelmann,M.Felderhoff,P.Rittmeyer,in:Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,”Hydrides”,A13,2016,Wiley-VCH,Weinheim)。特に好ましくは、以下の遷移金属水素化物化合物、ScH2、YHo、LaHo、CeH2、PrHo、NdHo、SmHo、EuHo、GdHo、TbHo、DyHo、HoHo、ErHo、TmHo、YbHo、LuHo、TiH2、ZrH2、HfH2、VH、VH2、TaH0.5、MnH(ここで、o=2または3)が用いられる。
【0034】
定性組成LiwMxM’yEz(E=N、C、H;w、y=0~8;x=0.5~1;z=0~3)を有する、前述した遷移金属化合物は、いわゆる介在型金属化合物または合金の群に属しており、すなわち、組み込まれた異元素E(すなわち、炭素、窒素または水素)が、下地金属格子の介在層(介在部位)上に配置されている。明記した化学量論は、炭素、窒素または水素の最高含有量(限界化学量論)を示す。しかし、介在型化合物は正確には化学量論的化合物ではなく、すなわち、純金属から明記した限界化学量論までのすべての組成が通常可能であり、ほとんどは安定している。質的にLiwMxM’yEz-δ(δは0とzの間の任意の値をとることができる)で表される、異元素の含有量が低い、すべての化合物はまた、電子導電性または混合導電性材料であり、したがって、窒素含有活性材料を有する本発明に従った複合アノードの調製に適している。
【0035】
本発明によれば、ナノ粒子状の電子導電性遷移金属及び/またはそれに類似するナノ粒子状窒化物、炭化物もしくは水素化物化合物は、同様のナノ粒子状リチウム窒素含有アノード材料と物理的混合処理によって可能な限り均一に混合され、そこで、アノードライン製造にて、個々の粒子の良好な接触は、後続のプレス(技術的大量製造のカレンダー処理の場合)によって保証され、完全に機能的な窒素及び遷移金属含有複合アノードが得られる。本発明に従った複合アノード材料はまた、化学的処理、例えば窒素源との反応によって調製することができる。好ましい窒素源は、元素状窒素(N2)、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)、尿素(CH4N2O)である。NH3を使用するアンモノリシスでは、金属、すなわちリチウム及び対応する遷移金属を、高温及び圧力下でアンモニアと反応させるのが好ましい。得られたアミド化合物は、その後の熱分解によって、例えば、イミド化合物及び/または窒化物を形成するために、更に変化させることができる。非窒化物導電性増強剤が望まれる場合には、適切な遷移金属水素化物及び/または遷移金属炭化物(選択は前述を参照)を、アンモノリシスの前または後に添加することができる。余分なアンモニアを除去した後、残りの固体を粉砕することができる。この処理は、粒径を小さくして、接触を改善する。おおむね上昇した温度及び圧力での窒素との反応で、窒化物相が直ちに形成される。また、この場合には、所望の非窒化物導電性増強剤を添加することができる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態で、本発明に従ったリチウム窒素含有アノード材料は、導電性を増強する遷移金属またはその窒化物、炭化物もしくは水素化物と共研削される。粉砕には、高エネルギーミル(例えば、遊星ボールミル)が使用される。
【0037】
本発明に従った窒素含有複合アノード材料には、アノードの機能性を改善する、他の材
料を添加することができる。これらの材料には主に、非金属系導電性増強剤、リチウム供与添加剤、及び結合剤が含まれる。可能性のある非金属系導電性増強剤は特に、元素状炭素の導電性形態(グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ)を含む。リチウム金属(好ましくはコーティングされた、すなわち、表面不動態化された及び粉末状または薄膜として)またはリチウム過剰化合物(例えば、リチウムグラファイト(LiC6-δ、δ=0~5)またはコーティングされたリチウムケイ化物(LinSiOx@Li2O、n=0.5~4.4、x=0~1))をリチウム供与添加剤として使用することができる。結合剤としては、通常電極製造に用いられる有機ポリマーを使用できる。これらのポリマーには、PTFE、PVdF、ポリイソブチレン(例えば、BASF製Oppanol(登録商標))、及び類似の材料が含まれる。
【0038】
本発明に従った窒素及び遷移金属含有の複合アノード材料にて、一方の微細に分散した遷移金属または電子導電性または混合導電性遷移金属化合物LiwMxM’yEz(E=N、C、H;w、y=0~8;x=0.5~1;z=0~3)と他方の窒素含有電気化学的に活性な窒素含有アノード材料との重量比は、1:100~1:2の範囲である。好ましくは、1:50~1:5の範囲である。
【0039】
本発明に従い完成した窒素及び遷移金属含有複合アノードは更に、導電性増強剤(0~30重量%)、結合剤(0~20重量%)及び/またはプレリチオ化剤(0~20重量%)を含むことができる。
【0040】
本発明に従った窒素及び遷移金属含有複合アノード材料は、原則として、任意の対電極を備える再充電可能なリチウム電池の製造に使用することができる。しかし、使用されるカソード活性材料の電気化学的電位は、Li/Li+基準電極に対して少なくとも2.0V、好ましくは少なくとも2.5Vであることが望ましい。使用可能なカソード材料としては、特に、リチオ化金属酸化物挿入材料、好ましくは、LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni,Mn,Co)O2、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2などの層状化合物、及びLiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4及びLiNi0.5Mn1.5O4などのスピネル構造材料が挙げられる。LiFePO4、LiMnPO4のようなオリビン構造を有するものも使用できる。また、電解二酸化マンガン(MnO2)や酸化バナジウム(V2O3)のような非リチオ化金属挿入化合物を使用することもできる。前述の分子式は、塩基性化合物の理想的な組成を示している。しかし、実際には、それらはわずかにまたはより大量に改質された形で使用される。それらは、構造安定化ドーピング(例えば、Al安定化Li-ニッケルコバルト酸化物、「NCA」)を有する材料、または導電性を増加させる目的のために異金属または非金属でドープされた化合物を含む。ドーピングによって改質された親化合物のこのような変異型も、本発明に従って使用することができる。本発明によれば、異なるカソード材料の混合物を使用することも可能である。
【0041】
好ましいのは、電気化学的活性成分が、水酸化リチウム(LiOH)、酸化リチウム(Li2O)、過酸化リチウム(Li2O2)及び超酸化リチウム(LiO2)から選択される、リチウム酸素化合物の形態の少なくとも1つのアニオン酸化還元活性材料である、正極(カソード)の使用である。
【0042】
好ましいアニオン酸化還元活性材料を用いて本発明に従ったガルバニ電池を充電/放電する際の一般的なカソード半反応は、以下の式のうちの少なくとも1つに対応する。
【化5】
【0043】
好ましくは使用されるカソード材料は、例えばLiCoO
2の理論上の容量と比較して、少なくとも4倍の容量を有する。
【表2】
【0044】
前述したリチウム酸素化合物はすべて電子絶縁体であるので、それらは微細に分散した(非晶質またはナノ粒子状の)形態で存在しなければならず、個々の粒子は、電子導電性または混合導電性ネットワークを用いて接触されなければならない。この例で、微細に分散した導電性金属、ならびに多くの金属酸化物及びリチウム金属酸化物を使用できる可能性が高い。このようなシステムは文献で公知であり、ここでは代表的な実施形態のみを示す。過酸化リチウム(Li2O2)は、混合導電性LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2との共粉砕によって接触されて、カソード的に完全に分解されることができる(Y.Bie et al.,Chem.Commun.2017,53,8324-7)。両方ともナノ粒子形態のCo金属及びLi2Oの混合物からなる複合体もまた、カソード的に完全に分解することができる(Y.Sun,Nature Energy,January2016,15008)。本発明の目的のために、充電電圧は、酸素の放出が始まる一定のレベルを超えてはならない。酸化リチウムの場合、この電圧はLi/Li+に対して約3~3.5Vである。Co3O4のマトリックスに埋め込まれたナノ粒子状の酸化リチウム(Li2O、Li2O2及びLiO2の混合物)を含有する、完全な電池の実際の機能は公知である(Z.Zhi,Nature Energy,25July2016,16111)。
【0045】
窒素及び遷移金属含有複合アノードを備える、本発明に従ったアニオン酸化還元電池の電解質としては、当業者には周知の種類(液体、ゲル、ポリマー及び固体電解質)を使用することができる。使用されるマトリックスで、弱配位で酸化安定性アニオンを有する可溶性リチウム塩は、液体ポリマー系及びゲルポリマー系の導電性塩として使用される。これらのリチウム塩には、例えば、LiPF6、リチウムフルオロアルキルリン酸塩、LiBF4、イミド塩(例えば、LiN(SO2CF3)2)、LiOSO2CF3、メチド塩(例えば、LiC(SO2CF3)3)、LiClO4、リチウムキレートホウ酸塩(
例えば、LiB(C2O4)2、「LiBOB」と呼ばれる)、リチウムフルオロキレートホウ酸塩(例えば、LiC2O4BF2、「LiDFOB」と呼ばれる)、リチウムキレートリン酸塩(例えば、LiP(C2O4)3、「LiTOP」と呼ばれる)、リチウムフルオロキレートリン酸塩(例えば、Li(C2O4)2PF2)などが挙げられる。アニオンの解離に対して安定しており、フッ素を含まないアニオンを有する塩が、特に好ましい。
【0046】
固体電解質、すなわち、Liイオン導電性ガラス、セラミックまたは結晶性無機固体も特に好ましい。そのような材料の例としては、チオリン酸リチウム(例えば、Li3PS4)、アルジロダイト(X=Cl、Br、Iを有するLi6PS5X)、ホスフィドケイ酸塩(例えば、Li2SiP2)、ニトリドリン酸塩(例えば、Li2.9PO3.3N0.36)、ニトリドホウリン酸塩(例えば、Li47B3P14N42)、金属硫化物リン酸塩(例えば、Li10GeP2S11)、ガーネット(例えば、Li7La3Zr2O12)、チタンリン酸塩(Li1.5Al0.5Ti1.5(PO4)3)、及び水素化ホウ素化合物(例えば、LiBH4、Li2B12H12)が挙げられる。
【0047】
本発明に従った窒素及び遷移金属含有複合アノード材料は、本発明に従ったガルバニ電池を構築するために使用できる。対極(カソード)の種類に応じて、それらは、(部分的に)リチウム充電した形態または(部分的に)放電した(脱リチオ化された)形態のいずれかで、この目的のために利用することができる。リチウムを充填したカソード材料を使用する場合に、脱リチオ化したアノード形態が使用されるが、逆はリチオ化したアノード形態に適用される。これについて、いくつかの例を挙げて以下で説明する。
【0048】
好ましくはLi
2O及びLi
2O
2から選択される以下の化合物のうちの少なくとも1つであるリチウム過剰なカソード材料に対して、例えばリチウムイミド(Li
2NH)のような脱リチオ化したアノード形態は、電気化学電池を形成するために構築することができる。そうすると、電気化学的な酸化還元反応は、次のようになる。
【化6】
【0049】
対照的に、好ましいアノード材料のリチウム過剰な形態、例えばLi
2MgNHまたはLi
4NHは、本発明に従ったカソード材料のリチウムプアな形態(例えばLiOH、LiO
2)の対極として好適である。また、リチウム過剰なアノード材料と組み合わせて、より多くのリチウムを吸収することができる、過酸化リチウムも使用できる。中程度のリチウム含有量を有する過酸化リチウムは、したがって、リチウム過剰なアノード活性材料とリチウムプアなアノード活性材料との組み合わせの両方で使用できる。電気化学反応は、以下のように述べることができる。
【化7】
【0050】
リチウムアミドを使用する場合、充電/放電反応は、例えば次のようになる。
【化8】
【0051】
部分的にリチオ化した形態のアノード材料を使用する場合、リチウムを吸収するのに十分な量のカソード材料が、部分的にリチオ化した形態でも使用される、またはリチウム充電した形態及びそれを放電した形態の別個の粒子の混合物として使用される。電極のバランスをとるこの方法は、当業者には周知である。完全なリチオ化に必要なリチウムを、例えば、リチウム金属粉末またはリチウム過剰な金属合金粉末(例えば、Li-SiまたはLi-Sn合金)のような、別途添加されたリチウム過剰な材料の形態で提供することも可能である(F.Holtstiege,P.Barmann,R.Nolle,M.Winter,T.Placke,Batteries2018,4,4-39)。
【0052】
以下の実施例により、本発明を説明する。
【0053】
比較実施例:
リチウム窒素を含有する微結晶粉末状のアノード材料LiNH2またはLi2NHを、遷移金属を含まない導電性増強剤(カーボンブラックAB100)とPTFE粉末(供給元Aldrich)とArを充填したグローブボックスで混合し、メノウ乳鉢を用いて短時間に均質化した。重量比は、活性材料60重量%、カーボンブラック25重量%、PTFE15重量%だった。次いで、電極材料を面積1cm2のニッケル集電体上に適用し、10tの圧力で1分間均等に圧縮した。
【0054】
このようにして作製したアノードを、3電極配置のガラス電池内で試験した。リチウム窒素含有電極に加えて、リチウムシートから作製した2つの電極を対極及び参照電極として使用した。電解質としては、EC/DMC(1:1)中の11%LiPF6溶液を使用した。
【0055】
LiNH2入り電池は1300mVの静止電位を有し、Li2NH入り電池は700mVの静止電位を有した。どちらの場合も、最大5mVの電位の非常に低い供給電圧で分極を実施した。この目的のために消費された電荷量は、それぞれほぼ0.1当量のリチウムに相当する。その後、極性を反転させて、リチウムを除去した。LiNH2の場合は約0.3のLi、Li2NHの場合は約0.55のLiしか抽出できなかった。
【0056】
実施例1:粉砕による窒素及び遷移金属含有複合アノード材料の調製(水素化物系導電性増強剤)
Arを充填したグローブボックスの中で、X線純度100%のリチウムイミド(Li2NH)4.2g、水素化ジルコニウム(独Albemarle製グレードS、H含有量1.9%)2.1g、及びカーボンブラック(AB100)0.7gをビーカーで予め混合した。均質化した混合物を、約27gの3mmジルコニウムセラミックボールと一緒に50mLのジルコニウムセラミック粉砕ジャーに充填して、密封した。次いで、混合物を遊星ボールミル(Fritsch製PulverisetteP7)で毎分800回転で90分間粉砕した。
【0057】
粉砕ジャーをAr充填グローブボックスの中に戻し、そこで開けた。粉砕物をふるいにかけて、粉砕媒体から分離した。
【0058】
収量:灰黒色の微粉末6.3g
【0059】
実施例2:粉砕による窒素及び遷移金属含有複合アノード材料の調製(窒化物系導電性増強剤)
Arを充填したグローブボックスの中で、4.0gのリチウムイミド(Li2NH)(X線純度100%)、0.75gの窒化チタン(Sigma-Aldrich製3μm未満)、及び0.25gのカーボンブラック(AB100)をビーカーで混合した。予め均質化した混合物を、約27gの3mmジルコニウムセラミックボールと一緒に50mLのジルコニウムセラミック粉砕ジャーに充填して、密封した。次いで、混合物を遊星ボールミル(Fritsch製PulverisetteP7)で、逆方向動作モードにて毎分800回転で240分間粉砕した。
【0060】
粉砕ジャーをAr充填グローブボックスの中に戻し、そこで開けた。粉砕物をふるいにかけて、粉砕媒体から分離した。
【0061】
収量:灰黒色の微粉末4.1g