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特許7445650方向性電磁鋼板およびその磁区微細化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】方向性電磁鋼板およびその磁区微細化方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 8/12 20060101AFI20240229BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20240229BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20240229BHJP
【FI】
C21D8/12 D
H01F27/245
B23K26/364
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021516437
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 KR2019006220
(87)【国際公開番号】W WO2020059999
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0114110
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,セ‐ミン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ソン‐チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョン‐チョル
(72)【発明者】
【氏名】カン,ジョン‐ムン
(72)【発明者】
【氏名】キム,チャン‐ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ウォン‐ゴル
(72)【発明者】
【氏名】ミン,キ‐ヨン
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125250(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171117(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0073306(KR,A)
【文献】国際公開第2016/171124(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0019919(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0128214(KR,A)
【文献】米国特許第04904312(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 8/12, 9/46
H01F 1/12- 1/38, 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板の一面または両面に、圧延方向と交差する方向に形成された線状のグルーブを含み、前記グルーブは、グルーブの長手方向および鋼板の圧延面法線方向を含む断面において、グルーブ両端部に傾斜部(GS)およびグルーブ中央部に平坦部(US)を含み、傾斜部の長さおよび平坦部の長さが下記式1を満足することを特徴とする方向性電磁鋼板。
〔式1〕
0.1≦[GSL]/[USL]≦0.5
(式1中、[GSL]は、鋼板表面と平行な面に投影した傾斜部の長さ(μm)を示し、[USL]は、平坦部の長さ(mm)を示す。
傾斜部は、グルーブの長手方向および鋼板の圧延面法線方向を含む断面において、グルーブおよび鋼板の境界地点の溝の長手方向で左側1μmおよび右側1μmの直線を連結した仮想の線と鋼板表面とのなす角度が30~90°の部分を意味し、平坦部は、仮想の線と鋼板表面とのなす角度が0°以上および30°未満の部分を意味する。)
【請求項2】
前記傾斜部(GS)の長さは、15~100μmであることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項3】
前記平坦部(US)の長さは、100~250mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項4】
前記鋼板表面と前記傾斜部とのなす平均角度(θGA)は、25~50°であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項5】
前記グルーブの深さは、3~30μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項6】
前記グルーブの長手方向と前記鋼板の圧延方向とは、75~88°の角度をなすことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項7】
グルーブと1mm以下の範囲で、鋼板の幅方向に対して、100μmあたりヒルアップの個数が3以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項8】
前記グルーブの下部に形成された凝固合金層を含み、前記凝固合金層は、平均粒径が1~10μmの再結晶を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項9】
前記傾斜部(GS)の幅および平坦部(US)の幅が下記式2を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
〔式2]
1.5≦[GSW]/[USW]≦2.0
(式2中、[GSW]は、傾斜部の幅(μm)を示し、[USW]は、平坦部の幅(μm)を示す。)
【請求項10】
前記平坦部(US)の幅は、10~100μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項11】
前記傾斜部(GS)の幅は、50~150μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項12】
鋼板の圧延面を観察した場合、前記グルーブの長手方向と傾斜部とのなす平均角度は、25~50°であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項13】
鋼板の圧延面を観察した場合、前記グルーブの長手方向と平坦部とのなす平均角度は、0~5°であることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項14】
方向性電磁鋼板を用意する段階;および
前記方向性電磁鋼板の一面に、圧延方向と交差する方向にレーザを照射して、グルーブを形成する段階を含み、
前記グルーブを形成する段階は、グルーブ両端部に傾斜部を形成する段階およびグルーブ中央部に平坦部を形成する段階を含み、前記傾斜部を形成する段階は、平均エネルギー密度が0.05~0.5J/mmのレーザを照射し、
前記平坦部を形成する段階は、平均エネルギー密度が0.5J/mm超過~5J/mmのレーザを照射し、前記傾斜部および前記平坦部の長さは、下記式1を満足することを特徴とする方向性電磁鋼板の磁区微細化方法。
〔式1〕
0.1≦[GSL]/[USL]≦0.5
(式1中、[GSL]は、鋼板表面と平行な面に投影した傾斜部の長さ(μm)を示し、[USL]は、平坦部の長さ(mm)を示す。傾斜部は、グルーブの長手方向および鋼板の圧延面法線方向を含む断面において、グルーブおよび鋼板の境界地点の溝の長手方向で左側1μmおよび右側1μmの直線を連結した仮想の線と鋼板表面とのなす角度が30~90°の部分を意味し、平坦部は、仮想の線と鋼板表面とのなす角度が0°以上および30°未満の部分を意味する。
【請求項15】
前記傾斜部を形成する段階で、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、レーザのエネルギー密度が増加することを特徴とする請求項14に記載の方向性電磁鋼板の磁区微細化方法。
【請求項16】
前記傾斜部を形成する段階で、レーザのエネルギー密度は、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、1mmあたり0.01~0.08J/mmの範囲で増加することを特徴とする請求項14に記載の方向性電磁鋼板の磁区微細化方法。
【請求項17】
前記レーザビームの形状は、幅10~200μm、長さ300~5000μmであることを特徴とする請求項14乃至請求項16のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板の磁区微細化方法。
【請求項18】
前記傾斜部を形成する段階は、レーザの焦点深度が150μm超過~500μmであり、前記平坦部を形成する段階は、レーザの焦点深度が0~150μmであることを特徴とする請求項14乃至請求項17のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板の磁区微細化方法。
【請求項19】
前記傾斜部を形成する段階で、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、レーザの焦点深度が減少することを特徴とする請求項18に記載の方向性電磁鋼板の磁区微細化方法。
【請求項20】
前記傾斜部を形成する段階で、レーザの焦点深度は、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、1mmあたり1~10μmの範囲で減少することを特徴とする請求項19に記載の方向性電磁鋼板の磁区微細化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向性電磁鋼板およびその磁区微細化方法に係り、より詳しくは、鋼板に形成されるグルーブの形状を調節した方向性電磁鋼板およびその磁区微細化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
方向性電磁鋼板は、変圧器などの電磁製品の鉄心材料として用いられ、機器の電力損失を低減することによってエネルギー変換効率を向上させることができる。このため、鉄心素材の鉄損に優れ、積層および巻取の際に占積率が高い鋼板が要求される。
方向性電磁鋼板とは、熱延、冷延および焼鈍工程により2次再結晶された結晶粒が圧延方向に対し{110}<001>方向に配向された集合組織(「Goss Texture」ともいう)を有する機能性鋼板をいう。
【0003】
方向性電磁鋼板の鉄損を低くする方法として、磁区微細化方法が知られている。つまり、磁区をスクラッチやエネルギー的な衝撃を与えることにより方向性電磁鋼板を有する大きな磁区のサイズを微細化させることである。この場合、磁区が磁化され、その方向が変わる時、エネルギー的消耗量を磁区のサイズが大きい場合に比べ低減させることができる。磁区微細化方法としては、熱処理後にも改善効果が維持される永久磁区微細化と、そうでない一時磁区微細化とがある。
【0004】
回復(Recovery)が現れる熱処理温度以上での応力緩和熱処理後にも鉄損改善効果を示す永久磁区微細化方法は、エッチング法、ロール法およびレーザ法に区分することができる。エッチング法は、溶液内の選択的な電気化学反応で鋼板表面に溝(グルーブ、groove)を形成させるため、溝の形状を制御しにくく、最終製品の鉄損特性を幅方向に均一に確保することが困難である。これとともに、溶媒として用いる酸溶液によって環境に負荷をかけるという欠点を有する。
【0005】
ロールによる永久磁区微細化方法は、ロールに突起形状を加工してロールや板を加圧することによって、板表面に一定の幅と深さを有する溝を形成した後、焼鈍することによって、溝下部の再結晶を部分的に発生させ、鉄損改善効果を示す磁区微細化技術である。ロール法は、機械加工に対する安定性、及び厚さに応じた安定した鉄損の確保が得にくく、信頼性に乏しく、またプロセスが複雑であり、溝形成直後(応力緩和焼鈍前)に鉄損と磁束密度特性が劣化するという欠点を有する。
【0006】
レーザによる永久磁区微細化方法は、高出力のレーザを高速で移動する電磁鋼板の表面部に照射し、レーザ照射により基地部の溶融を伴うグルーブ(groove)を形成させる方法である。欠点としては、一定深さ以上のグルーブを形成した場合、鉄粉が多量に発生して一部固着化され、一部に粉塵として飛散し、更に一部は粉末として鉄板に落ちて表面欠陥を誘発するという点である。グルーブの深さが増加するほど、鉄損が減少するが、自由面がグルーブのない時に比べて広くなるため、磁束密度つまり、単位面積あたりに通る磁力線の量が減少する。つまり、エネルギー伝達量が従来に比べて減少する。鉄損の減少によるエネルギー効率が増加しても一定以上に磁束密度が減少する場合、変圧器としての効用性を失ってしまう問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的とするところは、方向性電磁鋼板およびその磁区微細化方法を提供することにある。具体的には、鋼板に形成されるグルーブの形状を調節して鉄損を改善すると同時に磁束密度の劣化を抑制した方向性電磁鋼板およびその磁区微細化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板は、電磁鋼板の一面または両面に、圧延方向と交差する方向に形成された線状のグルーブを含み、グルーブは、グルーブの長手方向および鋼板の圧延面法線方向を含む断面において、傾斜部および平坦部を含み、傾斜部(GS)の長さおよび平坦部(US)の長さが下記式1を満足することを特徴とする。
〔式1〕
0.1≦[GSL]/[USL]≦0.5
式1中、[GSL]は、傾斜部の長さ(μm)を示し、[USL]は、平坦部の長さ(mm)を示す。
傾斜部は、グルーブの長手方向および鋼板の圧延面法線方向を含む断面において、グルーブおよび鋼板の境界地点の左側1μmおよび右側1μmの直線を連結した仮想の線と鋼板表面とのなす角度が30~90°の部分を意味し、平坦部は、仮想の線と鋼板表面とのなす角度が0°以上および30°未満の部分を意味する。
【0009】
傾斜部(GS)の長さは、15~100μmであることがよい。
平坦部(US)の長さは、100~250mmであることがよい。
鋼板表面と傾斜部とのなす平均角度(θGA)は、25~50°であることができる。
【0010】
鋼板表面と平坦部とのなす平均角度は、0~10°であることがよい。
グルーブの深さは、3~30μmであることができる。
グルーブの長手方向と鋼板の圧延方向とは、75~88°の角度をなすことが好ましい。
【0011】
グルーブと1mm以下の範囲で、鋼板の幅方向に対して、100μmあたりヒルアップの個数が3以上であることができる。
グルーブの下部に形成された凝固合金層を含み、凝固合金層は、平均粒径が1~10μmの再結晶を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板は、電磁鋼板の一面または両面に、圧延方向と交差する方向に形成された線状のグルーブを含み、グルーブは、グルーブの長手方向および鋼板の圧延面法線方向を含む断面において、傾斜部および平坦部を含み、前記傾斜部(GS)の幅および前記平坦部(US)の幅が下記式2を満足することを特徴とする。
〔式2〕
1.5≦[GSW]/[USW]≦2.0
式2中、[GSW]は、傾斜部の幅(μm)を示し、[USW]は、平坦部の幅(μm)を示す。
傾斜部は、グルーブの長手方向および鋼板の圧延面法線方向を含む断面において、グルーブおよび鋼板の境界地点の左側1mmおよび右側1mmの直線を連結した仮想の線と鋼板表面とのなす角度が30~90°の部分を意味し、平坦部は、仮想の線と鋼板表面とのなす角度が0°以上および30°未満の部分を意味する。
【0013】
平坦部(US)の幅は、10~100μmであることがよい。
傾斜部(GS)の幅は、50~150μmであることがよい。
グルーブの長手方向と傾斜部とのなす平均角度は、25~50°であることができる。
グルーブの長手方向と平坦部とのなす平均角度は、0~5°であることが好ましい。
【0014】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の磁区微細化方法は、方向性電磁鋼板を用意する段階、および方向性電磁鋼板の一面に、圧延方向と交差する方向にレーザを照射して、グルーブを形成する段階を含み、グルーブを形成する段階は、傾斜部を形成する段階および平坦部を形成する段階を含み、傾斜部を形成する段階は、平均エネルギー密度が0.05~0.5J/mmのレーザを照射し、平坦部を形成する段階は、平均エネルギー密度が0.5J/mm超過~5J/mmのレーザを照射し、
傾斜部(GS)の長さおよび平坦部(US)の長さが下記式1を満足することを特徴とする。
〔式1〕
0.1≦[GSL]/[USL]≦0.5
式1中、[GSL]は、傾斜部の長さ(μm)を示し、[USL]は、平坦部の長さ(mm)を示す。
【0015】
傾斜部を形成する段階で、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、レーザのエネルギー密度が増加することができる。
傾斜部を形成する段階で、レーザのエネルギー密度は、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、1mmあたり0.01~0.08J/mmの範囲で増加することがよい。
レーザビームの形状は、幅10~200μm、長さ300~5000μmでああることが好ましい。
【0016】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の磁区微細化方法は、方向性電磁鋼板を用意する段階、および方向性電磁鋼板の一面に圧延方向と交差する方向にレーザを照射してグルーブを形成する段階を含み、グルーブを形成する段階は、傾斜部を形成する段階および平坦部を形成する段階を含み、前記傾斜部を形成する段階は、レーザの平均焦点深度が150μm超過~500μmであり、平坦部を形成する段階は、レーザの平均焦点深度が0~150μmであることが好ましい。
【0017】
傾斜部を形成する段階で、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、レーザの焦点深度が減少することがよい。
傾斜部を形成する段階で、レーザの焦点深度は、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、1mmあたり1~10μmの範囲で減少することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明よると、本発明の方向性電磁鋼板は、グルーブの形状を適切に制御することによって、鉄損を改善すると同時に磁束密度の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の圧延面(ND面)の模式図である。
図2】本発明の一実施例による方向性電磁鋼板のND方向-X方向の面の模式図である。
図3図2における傾斜部の部分拡大図である。
図4図2における平坦部の部分拡大図である。
図5】鋼板表面と傾斜部とのなす平均角度(θGA)を示す図である。
図6】本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の圧延面(ND面)の模式図である。
図7】本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の圧延面(ND面)の模式図である。
図8】照射位置とレーザのエネルギー密度との関係を示すグラフである。
図9】照射位置とレーザの焦点深度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下に述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及される。
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文章がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0021】
ある部分が他の部分の「上に」あると言及した場合、これは直に他の部分の上にあるか、その間に他の部分が伴ってもよい。対照的に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言及した場合、その間に他の部分が介在しない。
特に定義しないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、特別に定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味で解釈されない。
以下、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0022】
図1には、本発明の一実施例により磁区微細化された方向性電磁鋼板10の模式図を示した。
図1に示したとおり、本発明の一実施例による方向性電磁鋼板10は、電磁鋼板10の一面または両面に、圧延方向(RD方向)と交差する方向に形成された線状のグルーブ20を含む。
【0023】
図1に示したとおり、線状のグルーブは、圧延垂直方向(TD方向、鋼板の幅方向)に沿って2~10個断続的に形成される。図1は、線状のグルーブは、圧延垂直方向(TD方向、鋼板の幅方向)に沿って3個断続的に形成された場合を示す。
図1に示したとおり、グルーブの長手方向(X方向)と鋼板の圧延方向(RD方向)とは、75~88°の角度(θ)をなすことができる。前述した角度を形成する時、方向性電磁鋼板の鉄損を改善するのに寄与することができる。
【0024】
図1に示していないが、グルーブと1mm以下の範囲で、鋼板の幅方向に対して、100μmあたりヒルアップの個数が3以上形成される。これは、本発明の一実施例において、グルーブがレーザ照射により形成されることに起因する。グルーブと1mm以下の範囲とは、圧延面(ND面)に対して、圧延方向(RD方向)に上および下に1mm以下の範囲を意味する。ヒルアップの個数は、ヒルアップの高さが1μm以上、直径が1μm以上のヒルアップをその対象とする。ヒルアップの個数が適切に形成されている場合、方向性電磁鋼板の積層に際して、方向性電磁鋼板間の密着性を向上させるのに寄与することができる。
【0025】
図1に示していないが、グルーブの下部に形成された凝固合金層を含み、凝固合金層は、平均粒径が1~10μmの再結晶を含むことができる。これは、本発明の一実施例において、グルーブがレーザ照射により形成されることに起因する。凝固合金層および凝固合金層内の再結晶が適切に形成されている場合、方向性電磁鋼板の鉄損を改善するのに寄与することができる。
【0026】
図2は、図1の30で表示したグルーブの一部分を拡大した図であって、本発明の一実施例による方向性電磁鋼板のND方向-X方向の面の模式図を示した。
図2に示したとおり、グルーブは、グルーブの長手方向および鋼板の圧延面法線方向を含む断面において、傾斜部(GS)および平坦部(US)を含む。
傾斜部(GS)は、グルーブの長手方向(X方向)および鋼板の圧延面法線方向(ND方向)を含む断面において、グルーブおよび鋼板の境界地点の左側1μmおよび右側1μmの直線を連結した仮想の線と鋼板表面とのなす角度(θG)が30~90°の部分を意味し、平坦部は、仮想の線と鋼板表面とのなす角度(θU)が0°以上および30°未満の部分を意味する。
【0027】
図3には、傾斜部(GS)の部分拡大図を示した。図3に示したとおり、グルーブおよび鋼板の境界地点の左側1μmおよび右側1μmの直線を連結した仮想の線と鋼板表面とのなす角度(θG)が30~90°になる。グルーブの両端部から1μm未満で離れた部分の場合、前述した傾斜部(GS)および平坦部(US)の定義による区分が不可能であり、傾斜部(GS)に相当するとみなす。
【0028】
図4には、平坦部(US)の部分拡大図を示した。図4に示したとおり、グルーブおよび鋼板の境界地点の左側1μmおよび右側1μmの直線を連結した仮想の線と鋼板表面とのなす角度(θU)が0°以上および30°未満になる。平坦部(US)の両端部は傾斜部(GS)と当接しており、平坦部(US)および傾斜部(GS)が当接している部分を境界部という。
【0029】
本発明の一実施例では、平坦部(US)の長さおよび傾斜部(GS)の長さの間の関係を制御することによって、鉄損を改善すると同時に磁束密度の劣化を抑制することができる。レーザを数台用いてグルーブを形成する場合、「∪」字状のように、傾斜部(GS)がほとんど形成されず、平坦部(US)だけが形成される。しかし、このように傾斜部(GS)なしに平坦部(US)だけを形成した場合、グルーブの深さによって磁束密度が劣化する問題が発生する。本発明の一実施例では、傾斜部の長さおよび平坦部の長さが下記式1を満足するように形成することによって、鉄損を改善すると同時に磁束密度の劣化を抑制することができる。
〔式1〕
0.1≦[GSL]/[USL]≦0.5
(式1中、[GSL]は、傾斜部の長さ(μm)を示し、[USL]は、平坦部の長さ(mm)を示す。)
【0030】
式1の値が小さすぎる場合、つまり、傾斜部を相対的に適切に確保できない場合、前述のように、グルーブの深さによって磁束密度が劣化する問題が発生する虞があるる。式1の値が大きすぎる場合、つまり、傾斜部が相対的に過度に長く形成された場合、全体的なグルーブの深さを確保できず、鉄損の改善が不十分になる虞がある。さらに具体的には、式1の値が0.2~0.4になることがよい。
図2に示したとおり、傾斜部または平坦部が連続的につながらず、断絶することも可能であり、この場合、傾斜部の長さまたは平坦部の長さは、グルーブ内のすべての傾斜部または平坦部の長さの合計を意味する。
【0031】
傾斜部(GS)の長さは、15~100μmであることがよい。傾斜部(GS)の長さが短すぎる場合、グルーブの深さによって磁束密度が劣化する問題が発生する。傾斜部(GS)の長さが長すぎる場合、全体的なグルーブの深さを確保できず、鉄損の改善が不十分になる。さらに具体的には、傾斜部(GS)の長さは、30~75μmであることがよい。
平坦部(US)の長さは、100~250mmであることがよい。平坦部(US)の長さが短すぎる場合、全体的なグルーブの深さを確保できず、鉄損の改善が不十分になる。平坦部(US)の長さが長すぎる場合、グルーブの深さによって磁束密度が劣化する問題が発生する。さらに具体的には、傾斜部(GS)の長さは、150~200μmであることがよい。
【0032】
鋼板表面と傾斜部とのなす平均角度(θGA)は、25~50°であることがよい。この時、鋼板表面と傾斜部とのなす平均角度(θGA)とは、傾斜部の両端部を通過する仮想の線と鋼板表面とのなす角度(θGA)を意味する。さらに具体的には、グルーブの端部および傾斜部および平坦部の境界部を通過する仮想の線と鋼板表面とのなす角度(θGA)を意味する。図5にはこれについて説明している。傾斜部が複数形成された場合、複数の傾斜部それぞれに対する平均角度(θGA)が25~50°であることがよい。
【0033】
鋼板表面と平坦部とのなす平均角度は、0~10°であることがよい。この時、鋼板表面と平坦部とのなす平均角度とは、平坦部の両端部を通過する仮想の線と鋼板表面とのなす角度を意味する。さらに具体的には、傾斜部および平坦部の両境界部を通過する仮想の線と鋼板表面とのなす角度を意味する。平坦部が複数形成された場合、複数の平坦部それぞれに対する平均角度が0~10°であることがよい。
グルーブの深さ(G)は、3~30μmであることがよい。グルーブの深さ(G)については図2に説明したグルーブ内において、鋼板の表面とND方向に最も遠い長さを意味する。グルーブの深さ(G)が浅すぎると、鉄損改善効率が低下することになる。逆に、グルーブの深さ(G)が深すぎると、磁束密度が大きく劣化することになる。
【0034】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板は、電磁鋼板の一面または両面に、圧延方向と交差する方向に形成された線状のグルーブを含み、グルーブは、グルーブの長手方向および鋼板の圧延面法線方向を含む断面において、傾斜部および平坦部を含み、傾斜部(GS)の幅および平坦部(US)の幅が下記式2を満足する。
〔式2〕
1.5≦[GSW]/[USW]≦2.0
式2中、[GSW]は、傾斜部の幅(μm)を示し、[USW]は、平坦部の幅(μm)を示す。
このように傾斜部の幅を平坦部の幅に比べて長くすることによって、鉄損を改善すると同時に磁束密度の劣化を抑制することができる。傾斜部の幅とは、圧延面(ND面)に対して、傾斜部のうちグルーブを形成する線の間隔が最も遠い部分の長さを意味する。
【0035】
図6には、本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の圧延面(ND面)の模式図を示した。図6には、傾斜部(GS)の幅および平坦部(US)の幅を表示している。図6には、傾斜部(GS)の幅がグルーブ端部におけるグルーブ幅として表示しているが、これに限定されるものではない。
式2の値が少なすぎるか、大きすぎる場合、鉄損および磁束密度の面で劣位となる。さらに具体的には、式2の値は、1.65~1.85になる。
平坦部(US)の幅は、10~100μmであることがよい。平坦部の幅が過度に小さいか、大きい場合、前記式2の値を満足しにくく、鉄損および磁束密度の面で劣位となる。さらに具体的には、平坦部(US)の幅は、30~70μmであることが好ましい。
【0036】
傾斜部(GS)の幅は、50~150μmであることがよい。平坦部の幅が過度に狭いか、広い場合、上記の式2の値を満足しにくく、鉄損および磁束密度の面で劣位となる。さらに具体的には、傾斜部(GS)の幅は、80~100μmであることが好ましい。
グルーブの長手方向(X方向)と傾斜部とのなす平均角度(θGB)は、25~50°であることがよい。グルーブの長手方向と傾斜部とのなす平均角度(θGB)とは、傾斜部の両端部を通過する仮想の線とグルーブの長手方向とのなす角度(θGB)を意味する。さらに具体的には、グルーブの端部および傾斜部および平坦部の境界部を通過する仮想の線とグルーブの長手方向とのなす角度(θGB)を意味する。図7にはこれについて説明している。傾斜部が複数形成された場合、複数の傾斜部それぞれに対する平均角度(θGB)が25~50°であることがよい。
【0037】
グルーブの長手方向(X方向)と平坦部とのなす平均角度は、0~5°であることがよい。この時、グルーブの長手方向と平坦部とのなす平均角度とは、平坦部の両端部を通過する仮想の線と鋼板表面とのなす角度を意味する。さらに具体的には、傾斜部および平坦部の両境界部を通過する仮想の線とグルーブの長手方向とのなす角度を意味する。平坦部が複数形成された場合、複数の平坦部それぞれに対する平均角度が0~5°であることがよい。
【0038】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の磁区微細化方法は、方向性電磁鋼板10を用意する段階、および方向性電磁鋼板の一面に、圧延方向と交差する方向にレーザを照射して、グルーブを形成する段階を含む。
まず、方向性電磁鋼板10を用意する。本発明の一実施例では、磁区微細化方法および形成されるグルーブ20の形状にその特徴があるものであって、磁区微細化の対象になる方向性電磁鋼板は制限なく使用可能である。特に、方向性電磁鋼板の合金組成とは関係なく本発明の効果が発現する。したがって、方向性電磁鋼板の合金組成に関する具体的な説明は省略する。
【0039】
本発明の一実施例において、方向性電磁鋼板は、スラブから熱間圧延および冷間圧延により所定の厚さに圧延された方向性電磁鋼板である。あるいは冷間圧延後、最終焼鈍過程でベースコーティング層が形成された方向性電磁鋼板、ベースコーティング層上に絶縁被膜層がさらに形成された方向性電磁鋼板を用いることも可能である。
【0040】
上記のとおり、本発明の一実施例では、グルーブの形状を制御することによって、鉄損を改善すると同時に磁束密度の劣化を抑制しようとするものである。その具体的な方法として、方向性電磁鋼板の一面に、圧延方向と交差する方向にレーザを照射して、グルーブを形成する段階を含み、グルーブを形成する段階は、傾斜部を形成する段階および平坦部を形成する段階を含む。傾斜部および平坦部を形成する時、レーザのエネルギー密度を異なるよう調節することによって、傾斜部および平坦部を上記の形状に形成することができる。傾斜部および平坦部の形状については上記の説明と同一であるので、重複する説明は省略する。
具体的には、傾斜部を形成する段階は、平均エネルギー密度が0.05~0.5J/mmのレーザを照射し、平坦部を形成する段階は、平均エネルギー密度が0.5J/mm超過~5J/mmのレーザを照射する。図2に示したとおり、傾斜部を形成する段階または平坦部を形成する段階は、2回以上の複数回含むことができる。図2は、傾斜部を形成する段階、平坦部を形成する段階、および傾斜部を形成する段階で行われた例である。
【0041】
傾斜部を形成する段階は、平均エネルギー密度が0.05~0.5J/mmのレーザを照射することが好ましい。エネルギー密度が過度に低いか、高い場合、適切な傾斜部が形成されなくなる。さらに具体的には、傾斜部を形成する段階は、平均エネルギー密度が0.1~0.3J/mmのレーザを照射することが好ましい。
平坦部を形成する段階は、平均エネルギー密度が0.5J/mm超過~5J/mmのレーザを照射することが好ましい。エネルギー密度が過度に低いか、高い場合、適切な平坦部が形成されなくなる。さらに具体的には、平坦部を形成する段階は、平均エネルギー密度が1~3J/mmのレーザを照射することが好ましい。
【0042】
図8には、照射位置とレーザのエネルギー密度との関係を示すグラフを示した。図8に示したとおり、傾斜部を形成する段階で、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、レーザのエネルギー密度が増加することができる。さらに具体的には、傾斜部を形成する段階で、レーザのエネルギー密度は、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、1mmあたり(GSL)0.01~0.08J/mmの範囲で増加することができる。
増加度が小さすぎる場合、傾斜部の長さが相対的に長くなる問題が発生する。増加度が大きすぎる場合、傾斜部の長さが相対的に短くなる虞がある。本発明の一実施例において、平均エネルギー密度とは、傾斜部または平坦部の長さに対するエネルギー密度の平均を意味する。
【0043】
レーザビームの形状は、幅10~200μm、長さ300~5000μmであることがよい。レーザビームの幅および長さを適切に制御することによって、適切な形状のグルーブを形成することができる。レーザビームの形状は楕円形であり、長さはグルーブの長手方向への楕円の長軸、幅は長手方向と垂直な方向の楕円の短軸を意味する。
【0044】
上記のとおり、本発明の一実施例では、グルーブの形状を制御することによって、鉄損を改善すると同時に磁束密度の劣化を抑制しようとするものである。その具体的な方法として、方向性電磁鋼板の一面に、圧延方向と交差する方向にレーザを照射して、グルーブを形成する段階を含み、グルーブを形成する段階は、傾斜部を形成する段階および平坦部を形成する段階を含む。傾斜部および平坦部を形成する時、レーザの焦点深度が異なるように調節することによって、傾斜部および平坦部を上記の形状に形成することができる。傾斜部および平坦部の形状については上記の説明と同一であるので、重複する説明は省略する。
【0045】
具体的には、傾斜部を形成する段階は、平均焦点深度が150μm超過~500μmのレーザを照射し、平坦部を形成する段階は、平均焦点深度が0~150μmのレーザを照射する。図2に示したとおり、傾斜部を形成する段階または平坦部を形成する段階は、2回以上の複数回行うことができる。図2は、傾斜部を形成する段階、平坦部を形成する段階、および傾斜部を形成する段階で行われた例である。
焦点深度とは、レーザの焦点と方向性電磁鋼板の表面との距離を意味する。焦点深度が0に近いほど、焦点が方向性電磁鋼板の表面に正確に結ばれることを意味する。レーザの焦点は、方向性電磁鋼板の内部に形成されるか、または方向性電磁鋼板の外部に形成されることも可能である。
【0046】
傾斜部を形成する段階は、平均焦点深度が150μm超過~500μmのレーザを照射することができる。平均焦点深度が過度に浅いか、深い場合、適切な傾斜部が形成されなくなる。さらに具体的には、傾斜部を形成する段階は、焦点深度が200~500μmのレーザを照射することができる。
平坦部を形成する段階は、焦点深度が0~150μmのレーザを照射することができる。焦点深度が深すぎる場合、適切な平坦部が形成されなくなる。さらに具体的には、平坦部を形成する段階は、焦点深度が50~130μmのレーザを照射することができる。
【0047】
図9には、照射位置と焦点深度との関係を示すグラフを示した。図9に示したとおり、傾斜部を形成する段階で、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、レーザの焦点深度を浅くすることができる。さらに具体的には、傾斜部を形成する段階で、レーザの焦点深度は、グルーブの端部から傾斜部および平坦部の境界部へいくほど、1mmあたり(GSL)1~10μmの範囲で浅くすることができる。
減少幅が過度に小さいか、大きい場合、適切な形状の傾斜部が形成できない虞がある。本発明の一実施例において、平均焦点深度とは、傾斜部または平坦部の長さに対する焦点深度の平均を意味する。
【0048】
レーザビームの形状は、幅10~200μm、長さ300~5000μmであることがよい。レーザビームの幅および長さを適切に制御することによって、適切な形状のグルーブを形成することができる。レーザビームの形状は楕円形であり、長さはグルーブの長手方向への楕円の長軸、幅は長手方向と垂直な方向の楕円の短軸を意味する。
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、このような実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0049】
実験例1:傾斜部および平坦部の長さ制御
冷間圧延した厚さ0.20mmの方向性電磁鋼板を用意した。この電磁鋼板の一面にファイバー(Fiber)連続化レーザを用いて、カッパー(copper)ミラーを用いてレーザを照射して、グルーブを形成した。この時、レーザビームの幅(W)は25μmであり、レーザビームの長さ(L)は400μmであった。グルーブの深さ(G)は10μmであった。
レーザのエネルギー密度を傾斜部の平均エネルギー密度を0.107J/mm、平坦部の平均エネルギー密度を1.07J/mmに調節して傾斜部および平坦部を形成し、傾斜部の形成時には平均エネルギー密度を次第に増加させて形成した。また、傾斜部および平坦部の長さをそれぞれ異なるよう制御した。表1に結果をまとめた。
【0050】
下記表1に鉄損改善率および磁束密度劣化率を示した。鉄損改善率は、レーザを照射してグルーブを形成する前の電磁鋼板の鉄損(W)と、レーザを照射してグルーブを形成した後の鉄損(W)を測定して、(W-W)/Wで計算した。鉄損は、磁束密度の値が1.7テスラ(Telsa)の時、周波数が50Hzの場合の鉄損値(W17/50)で測定した。磁束密度減少率は、レーザを照射してグルーブを形成する前の電磁鋼板の磁束密度(B)と、レーザを照射してグルーブを形成した後の磁束密度(B)を測定して、(B-B)/Bで計算した。磁束密度は800A/mでの磁束密度(B)を測定した。
【0051】
【表1】
【0052】
実験例2:傾斜部および平坦部の幅制御
冷間圧延した厚さ0.20mmの方向性電磁鋼板を用意した。この電磁鋼板の一面にファイバー(Fiber)連続化レーザを用いて、カッパー(copper)ミラーを用いてレーザを照射して、グルーブを形成した。この時、レーザビームの幅(W)は25μmであり、レーザビームの長さ(L)は400μmであった。グルーブの深さ(G)は10μmであった。
【0053】
レーザのエネルギー密度を前記実施例5と同一に調節して傾斜部および平坦部を形成し、傾斜部の長さを90μmおよび平坦部の長さを180mmに制御した。同時に、レーザの焦点深度を平坦部の形成時には125μmに固定し、傾斜部の形成時には下記表2のように平均焦点深度を調節し、減少幅を調節して、傾斜部の幅をそれぞれ異るよう制御した。表2に結果を示した。
前述したものと同様の方法で鉄損および磁束密度を測定して、下記表2にまとめた。
【0054】
【表2】
【0055】
本発明は、実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解するであろう。そのため、上記の実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0056】
10:方向性電磁鋼板
20:グルーブ
30:グルーブの拡大部分
:グルーブを形成する前の電磁鋼板の磁束密度
:グルーブを形成した後の電磁鋼板の磁束密度
:グルーブの深さ
GS:傾斜部
GSL:傾斜部の長さ
GSW:傾斜部の幅
L:レーザビームの長さ
ND面:圧延面
RD方向:圧延方向
TD方向:圧延垂直方向、鋼板の幅方向
US:平坦部
USL:平坦部の長さ
USW:平坦部の幅
X方向:グルーブの長手方向
W:レーザビームの幅
:グルーブを形成する前の電磁鋼板の鉄損
:グルーブを形成した後の電磁鋼板の鉄損
θ:角度
θ:傾斜部における仮想の線と鋼板表面とのなす角度
θGA:鋼板表面と傾斜部とのなす平均角度
θGB:グルーブの長手方向(X方向)と傾斜部とのなす平均角度
θ:平坦部における仮想の線と鋼板表面とのなす角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9